説明

茸の栽培装置

【課題】
一般家庭の室内やベランダ等で手軽に茸を栽培できる栽培装置を提供する。
【解決手段】
底板に側板を周設した収容体1と、前記収容体1内に立設する培地体2と、前記収容体1内に敷き詰めた菌床材3とを備え、前記培地体2または菌床材3に茸菌4を接種していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茸の栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に茸の栽培には、原木に茸菌を接種して屋外等で栽培する原木栽培と、おが屑等の菌床に茸菌を接種して屋内等で栽培する菌床栽培等の方法がある。原木栽培は自然条件に近い条件で栽培されるので、天然の茸と同等の食味をもつ茸を生産できるといった特徴があり、菌床栽培は茸の生育が早く、害虫や有害菌等の外部要因の影響を受けにくいといった特徴がある。
【0003】
ところで、近年、家庭の室内等で野菜や果物を栽培する人々が増加してきている。しかしながら、室内における茸の栽培はほとんど行われてこなかった。この理由としては、茸栽培には、湿度や気温等の十分な管理が必要で、管理自体も煩雑であり、栽培が非常に難しいということが考えられる。しかも、原木栽培にあっては、原木を設置するために十分な設置空間を確保する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、一般家庭の室内やベランダ等で手軽に茸を栽培できる茸の栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、上記課題を解決するための手段について記載する。
請求項1記載の茸の栽培装置は、底板に側板を周設した収容体と、前記収容体内に立設する培地体と、前記収容体内に敷き詰められた菌床材とを備え、前記培地体または菌床材には茸菌が接種されていることを特徴とする。
【0006】
この構成によると、茸の栽培装置の小型化と軽量化を図ることができ、しかも、培地体と菌床材の両方に茸菌が繁殖して、それぞれから茸が発芽するので、発芽の確率が高くなり、安定的に茸を発芽させることができるので、一般家庭の室内等において茸を栽培することが可能となる。さらに、一定期間が経過すると培地体および菌床材の全域に茸菌が繁殖し、菌床材同士および菌床材と培地体が一体となって結合するので、特別な手段を用いることなく培地体の立設が保持されることとなる。
【0007】
ここで、前記収容体の材質としては、木材、金属またはプラスチック等が挙げられ、前記培地体としては、原木、または、天然もしくは人工の培養基材等が挙げられ、菌床材としては、おが屑、おが屑に添加物を混合した混合物、木材チップまたは人工の菌床等が挙げられる。ただし、これらのものは上記のものに限定されるものではなく、茸菌にあっても特に限定されるものではない。また、培地体の数は1つであっても、複数であってもかまわない。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記収容体が木材で形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによると、培地体および菌床材において茸菌の繁殖がさらに活性化する。また、培地体や菌床材に水分補給を行った場合には、木材の保水機能によって、茸にとって好適な環境である湿潤状態を作り出せると共に湿潤状態を長時間維持することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記培地体が原木であることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、原木部分に発芽した茸は、天然物に引けを取らない食味を有することとなる。また、原木も保水機能を有するため、前記収容体と同様に水分補給により湿潤状態を形成しつつ湿潤状態を長時間維持することができる。なお、原木は広葉樹であってもよいし、針葉樹であってもよい。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記菌床材が木材チップであることを特徴とする。
【0013】
これによると、培地体と木材チップにおいて茸菌の繁殖がさらに活性化することとなる。また、木材チップより発芽する茸も天然の茸と同様の食味を有するようになる。しかも、木材チップの保水機能は非常に優れているため、より一層、湿潤状態を維持させることができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記茸菌が、しいたけ、なめこ、舞茸または平茸より選択されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明に係わる茸の栽培装置は、以下に示す効果を有する。
まず、本発明のうち請求項1記載の発明については、栽培装置が小型で、かつ軽量であるので持ち運びが容易であり、一般家庭の室内やベランダ等においてわずかなスペースを確保すれば茸を栽培することができると共に、自分で茸を育てて収穫するという楽しさや喜びを提供することができる。また、茸が発芽する確率が非常に高いので、一般家庭の室内であっても安定的に茸を発芽させることができる。また、培地体および菌床材でそれぞれ単独で栽培した場合のそれぞれの収穫量の総和に比べ、本発明の栽培装置はより多くの収穫量を得ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、収容体を木材で形成したことによって、培地体や菌床材における茸菌の繁殖がさらに活性化し、より安定的に茸を発芽させられる。また、培地体や菌床材に水分補給を行った場合には、木材の保水機能によって、茸にとって好適な環境である湿潤状態を作り出せると共にこの状態を長時間維持することができる。したがって、水分補給を頻繁に行う必要は無く、手間をかけずに茸を栽培することが可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、培地体に原木を用いることで、天然の茸に引けをとらない食味を有する茸を栽培することができる。また、原木も保水機能を有するので、前記収容体と同様に保水機能等の効果が得られる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、菌床材として木材チップを用いることによって、茸菌の繁殖がさらに活性化することとなり、より安定的に茸を発芽させられる。また、木材チップより発芽する茸も天然のものと同様の食味を有するようになる。しかも、木材チップは非常に優れた保水機能を有しており、湿潤状態をより一層、長時間維持させることができるので、栽培の手間を更に軽減することができる。なお、木材チップを間伐材より形成すると、資源を有効利用することができると共に、栽培装置のコストを低く抑えることができる。

【0019】
また、請求項5記載の発明によると、請求項1、2、3または4記載の発明の効果に加えて、本発明の栽培装置で椎茸、なめこ、舞茸および平茸を栽培すると、優れた質の茸を提供することができる。
【0020】
以上の効果に加えて、茸の栽培装置の構成を全て木材で統一すると、木の温もりや香りを楽しめると共に、外観上の見栄えも良くなり商品としての体裁も整うこととなる。しかも、不要になった場合には、家庭ごみとして手軽に廃棄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。 本実施形態は、収容体1内に原木2を立設させ、さらに木材チップ3を敷き詰めて形成されている。
【0022】
収容体1は、木製の板により構成されており、底板に側板を周設して箱状に形成する。木材としては、ここではナラやスギ等が挙げられるが、その種類は問わない。
【0023】
原木2は、ここでは、ナラ、クヌギ等の広葉樹の丸太を短木かつ輪切状に切断して形成している。さらに、原木2には適当な大きさの孔(図示略)を複数設け、この孔には椎茸菌の駒木を詰め込むことによって茸菌4を接種している。なお、原木2は他の広葉樹であってもよいし、針葉樹であってもよい。また、茸菌4は、なめこ、舞茸または平茸としてもよいし、これら以外のものであってもよい。
【0024】
木材チップ3は、ナラまたはスギの間伐材を薄く削りだして、チップ状に形成している。なお、木材チップ3の素材は別の木材であってもよく、また、木材チップ3の変わりにおが屑、おが屑に添加剤を加えた混合物等を使用してもかまわない。また、本実施形態では木材チップ3に椎茸菌4を接種していないが、接種することも可能である。
【0025】
以上に記載した茸の栽培装置は、一週間程度で原木2の椎茸菌4が木材チップ3全体に繁殖し、木材チップ3同士、および木材チップ3と原木2が接着される状態となるので、特別な手段を用いることなく原木2の立設が保持されるようになる。
【0026】
栽培については、家庭の室内もしくはベランダ等のうち、日陰で涼しい場所に設置し、一日一回程度、水分補給を行えばよい。椎茸4であれば、通常は、数個から十数個程度発芽し、その後3、4ヶ月程度で収穫できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における茸の栽培装置の代表的な実施例を示す写真。
【符号の説明】
【0028】
1 収容体
2 培地体(原木)
3 菌床材(木材チップ)
4 茸(茸菌)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板に側板を周設した収容体(1)と、前記収容体(1)内に立設する培地体(2)と、前記収容体(1)内に敷き詰められた菌床材(3)と、を備え、前記培地体(2)または菌床材(3)には茸菌(4)が接種されていることを特徴とする茸の栽培装置。
【請求項2】
前記収容体(1)は、木材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の茸の栽培装置。
【請求項3】
前記培地体(2)は、原木であることを特徴とする請求項1または2記載の茸の栽培装置。
【請求項4】
前記菌床材(3)は、木材チップであることを特徴とする請求項1、2または3記載の茸の栽培装置。
【請求項5】
前記茸菌(4)は、しいたけ、なめこ、舞茸または平茸より選択されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茸の栽培装置。




【図1】
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【公開番号】特開2010−35485(P2010−35485A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202130(P2008−202130)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(597038998)富山交易株式会社 (1)
【Fターム(参考)】