説明

草塊集合体のカバー装置

【課題】圃場などの地面上において、雨水を避けながら多量の草塊を保管しようとする場合に、草塊の保管が容易かつ安価にできるようにする。
【解決手段】草塊集合体のカバー装置は、草2によりそれぞれ所定形状の複数の草塊3が形成された後、地面1上に集合されたこれら草塊3の集合体4を、その外方から一体的に被覆可能とするものである。草塊集合体のカバー装置は、水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて集合体4をその上方から被覆するシート材製のカバー本体13と、カバー本体13の長手方向における一端部の開口14を閉じる端部カバー体15とを備える。カバー本体13の上部19を防水材により形成する一方、下部21を通気性材により形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲、麦藁、牧草、および雑草などの草により形成された草塊の集合体を地面上で一体的に被覆可能とする草塊集合体のカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場や牧場などでは、稲、麦藁や牧草などの草が大量に発生する。そこで、近時、このような草をバイオマス資源としてバイオエタノールの生成などに有効活用することが提案されている。
【0003】
一方、広い地面上に散在している草を集めると共に、その体積を小さくさせ、かつ、その後の取り扱いが容易にできるようにするため、地面上の草を拾い集めて、これを所定形状の草塊(ロールベール)にする農業機械(ロールベーラ)が下記特許文献1,2のように従来より用いられている。
【0004】
ここで、前記したように草を有効活用しようとする場合、上記農業機械が用いられることがある。この場合、この農業機械によれば、まず、多数の草塊が次々と形成され、次に、このように形成された多数の草塊が、それぞれ地面上の所望位置にまで搬送されると共に、そこに集合させられて集合体とされる。そして、これら集合体とされた草塊が前記したように有効活用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−245275号公報
【特許文献2】実開昭61−66430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように草塊により集合体が形成され、その後に、これら草塊が種々の目的に供されるまでの間は、乾燥のためや湿気による変質の防止のために、雨水を避けながら所定期間保管されるが、このような草塊の集合体の保管には、従来、別途準備された建屋が用いられている。しかし、草塊の量は多量であるため、これら草塊の全てを建屋により保管させようとすると、大きな容量の建屋を準備することが要求される。この結果、これら草塊の保管は極めて煩雑かつ高価になるという不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、圃場などの地面上において、雨水を避けながら多量の草塊を保管しようとする場合に、これら草塊の保管が容易かつ安価にできるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、草2によりそれぞれ所定形状の複数の草塊3が形成された後、地面1上に集合されたこれら草塊3の集合体4を、その外方から一体的に被覆可能とする草塊集合体のカバー装置であって、
水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて上記集合体4をその上方から被覆するシート材製のカバー本体13と、このカバー本体13の長手方向における一端部の開口14を閉じる端部カバー体15とを備え、上記カバー本体13の上部19を防水材により形成する一方、下部21を通気性材により形成したことを特徴とする草塊集合体のカバー装置である。
【0009】
請求項2の発明は、上記カバー本体13の上部19側から垂下してこのカバー本体13の下部21をその外方から覆う防水カバー29を設けたことを特徴とする請求項1に記載の草塊集合体のカバー装置である。
【0010】
請求項3の発明は、上記カバー本体13の下端縁部に沿って延び、この下端縁部に着脱可能に取り付けられる長尺体38を設けたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の草塊集合体のカバー装置である。
【0011】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明による効果は、次の如くである。
【0013】
請求項1の発明は、草によりそれぞれ所定形状の複数の草塊が形成された後、地面上に集合されたこれら草塊の集合体を、その外方から一体的に被覆可能とする草塊集合体のカバー装置であって、
水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて上記集合体をその上方から被覆するシート材製のカバー本体と、このカバー本体の長手方向における一端部の開口を閉じる端部カバー体とを備え、上記カバー本体の上部を防水材により形成する一方、下部を通気性材により形成している。
【0014】
このため、地面上において、上記各草塊を保管する場合には、これら草塊を水平方向に長く延びるよう地面上に集合させ、その集合体を上記カバー装置で被覆すればよい。
【0015】
この場合、上記集合体をその上方から上記カバー本体で被覆すると共に、上記集合体の長手方向における一端部を上記端部カバー体で被覆し、その一方、上記集合体の長手方向における他端部は、上記カバー本体の長手方向における他端部を上記集合体の他端部の面に対し折り畳むことにより被覆すればよい。よって、上記集合体の長さが一定しなくても、上記カバー装置によって上記集合体を全体的に隙間なく被覆することが容易にでき、つまり、上記各草塊の保管が容易にできる。
【0016】
そして、上記のように集合体を上記カバー装置により被覆した場合には、上記カバー本体の上部の防水材により、上記集合体の防水ができると共に、上記カバー本体の下部の通気性材を通し、上記集合体において寸法が比較的短い幅方向で空気が容易に流通する。このため、上記集合体の各草塊を乾燥させて所望の干し草にしたり、各草塊の湿気による変質を防止したりすることができる。よって、上記集合体を収容する建屋を設けなくても、上記各草塊の適正な保管ができることから、これら各草塊の保管が、より容易かつ安価にできる。
【0017】
請求項2の発明は、上記カバー本体の上部側から垂下してこのカバー本体の下部をその外方から覆う防水カバーを設けている。
【0018】
このため、雨天時には、上記防水カバーによりカバー装置の防水性能が向上する一方、晴天時には、上記防水カバーを持ち上げて上記カバー本体の下部を外方に向けて開放してやれば、カバー装置内の通気性を、より向上させることができる。
【0019】
請求項3の発明は、上記カバー本体の下端縁部に沿って延び、この下端縁部に着脱可能に取り付けられる長尺体を設けている。
【0020】
このため、上記長尺体の剛性や自重により、上記カバー本体に全体的に適度の引張力を与えることができる。よって、上記カバー本体の見栄えが向上すると共に、このカバー本体が風などによりばたつくことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】草塊集合体のカバー装置の正面図である。
【図2】草塊集合体のカバー装置の側面部分破断図である。
【図3】草塊集合体のカバー装置の平面部分破断図である。
【図4】草塊集合体のカバー装置の部分斜視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の草塊集合体のカバー装置に関し、圃場などの地面上において、雨水を避けながら多量の草塊を保管しようとする場合に、これら草塊の保管が容易かつ安価にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0023】
即ち、草によりそれぞれ所定形状の複数の草塊が形成された後、地面上に集合されたこれら草塊の集合体を、その外方から一体的に被覆可能とする草塊集合体のカバー装置であって、
水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて上記集合体をその上方から被覆するシート材製のカバー本体と、このカバー本体の長手方向における一端部の開口を閉じる端部カバー体とを備える。上記カバー本体の上部が防水材により形成される一方、下部が通気性材により形成されている。
【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図において、符号1は地面で、この地面1上に散在していた草2により、公知の農業機械によって、所定形状の複数の草塊3が形成される。また、これら草塊3は地面1上で集合させられて集合体4とされ、この集合体4を、地面1上で、その外方から一体的に被覆して雨水を避けるようにするカバー装置5が設けられている。
【0026】
上記地面1は、田畑や農園を意味する圃場、牧場、および草原における地面などであり、舗装された面をも含む概念である。また、上記草2は、稲、麦藁や大豆の茎などの草、牧草、およびススキなどの雑草を含む。また、上記草塊3は、例えば、円柱形状をなし、1.2〜1.4m直径で、1.2〜2.5m長さ程度の大きさとされる。
【0027】
上記集合体4は、地面1上に載置された通気性のある敷台8上に集積されている。この敷台8は、上記地面1に沿い水平な一方向Aに向かって所定間隔を置き並設される複数の丸太製棒材9を備えている。
【0028】
上記集合体4は、上記敷台8上で、上記一方向Aに向かって列設された軸心11が縦向きの二列の草塊3,3と、これら二列の草塊3,3上で上記一方向Aに向かって列設された軸心11が横向きの一列の草塊3とで形成されている。
【0029】
上記カバー装置5は、上記一方向Aに延び、その長手方向に沿った視線で見た(図1)断面が倒立U字形状とされて上記集合体4をその上方から被覆するシート材製のカバー本体13と、このカバー本体13の長手方向(一方向A)における一端部の開口14を閉じる端部カバー体15とを備えている。また、上記カバー本体13の長手方向(一方向A)における他端部の開口16は、端部カバー体を備えず、その開口のままとされており、上記カバー本体13の内部を外方に向かって開放させている。
【0030】
上記カバー本体13と端部カバー体15との各上部19,20はそれぞれ全体的に防水材により形成され、上記カバー本体13と端部カバー体15との各下部21,22はそれぞれほぼ全体がメッシュ製の通気性材により形成されている。上記カバー本体13と端部カバー体15との各上部19,20は互いに結合されて一体的に形成されている。一方、上記カバー本体13と端部カバー体15との各下部21,22は互いに別体とされている。
【0031】
上記カバー本体13の下部21における上記一端部の開口14の開口縁部と、上記端部カバー体15の下部22の外側縁部とにはそれぞれハトメである被連結体24,25が形成され、これら両被連結体24,25はロープなど連結具26によって互いに着脱可能に連結されている。
【0032】
上記カバー本体13の上部19側から垂下してこのカバー本体13の下部21の上部側をその外方から覆うシート材製の防水カバー29が設けられている。
【0033】
上記カバー本体13と端部カバー体15との各下部21,22には、上記一方向Aで所定間隔を置いて縦向きの補強ベルト31が取り付けられている。また、これら各補強ベルト31の下端部を上記敷台8の各棒材9に連結させるバックル付の連結ベルト32が設けられている。この場合、上記棒材9の端部を迂回するようにこの棒材9に上記連結ベルト32を連結してもよく、この棒材9に打ち付けたステープルなどの金具33に上記連結ベルト32を連結してもよい。そして、上記連結ベルト32による連結によれば、上記カバー本体13と端部カバー体15とに適度の引張力を与えることができて、風などによるばたつきの発生が防止される。
【0034】
また、上記カバー本体13と端部カバー体15との各下端縁部35,36に沿ってそれぞれ延び、これら各下端縁部35,36にそれぞれ着脱可能に取り付けられる長尺体38が設けられている。具体的には、上記各下端縁部35,36は袋縫い部とされている。一方、上記各長尺体38,39はそれぞれ剛性がある金属製パイプ材とされている。そして、これら長尺体38,39が上記下端縁部35,36に挿抜されることにより、これら下端縁部35,36に着脱されるようになっている。
【0035】
上記防水カバー29の上、下縁部にそれぞれハトメなどの被連結体41,42が設けられている。これら被連結体41,42は、不図示のロープなどの連結具により上記敷台8の棒材9など地面1側に連結される。そして、この連結により、上記カバー本体13、端部カバー体15、および防水カバー29のそれぞれ上下方向の中途部に適度の引張力が与えられると共に、上記防水カバー29の外方への張り出し角度が定められる。また、上記上、下被連結体41,42のうち、下側の被連結体42を引き上げるようにして上記カバー本体13の上部19側に連結具などにより連結してやれば、上記カバー本体13の下部21を全体的に外方に開放させることができて、カバー装置5内の通気性が向上する。
【0036】
その他、符号44は上記カバー装置5の幅方向の中央部を示すセンターラインである。
【0037】
上記構成によれば、カバー装置5は、水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて上記集合体4をその上方から被覆するシート材製のカバー本体13と、このカバー本体13の長手方向における一端部の開口14を閉じる端部カバー体15とを備え、上記カバー本体13の上部19を防水材により形成する一方、下部21を通気性材により形成している。
【0038】
このため、地面1上において、上記各草塊3を保管する場合には、これら草塊3を水平な一方向Aに長く延びるよう、地面1上に図示の如くできるだけ整然と集合させ、その集合体4を上記カバー装置5で被覆すればよい。
【0039】
この場合、上記集合体4をその上方から上記カバー本体13で被覆すると共に、上記集合体4の長手方向における一端部を上記端部カバー体15で被覆する。また、上記集合体4の長手方向における他端部は、上記カバー本体13の長手方向における他端部(図2,3中二点鎖線)を上記集合体4の他端部の面に対し折り畳むことにより被覆(図2,3中実線)すればよい。よって、上記集合体4の長さが一定しなくても、上記カバー装置5によって上記集合体4を全体的に隙間なく被覆することが容易にでき、つまり、上記各草塊3の保管が容易にできる。
【0040】
そして、上記のように集合体4を上記カバー装置5により被覆した場合には、上記カバー本体13と端部カバー体15との各上部19,20の防水材により、上記集合体4の防水ができると共に、上記カバー本体13と端部カバー体15との各下部21,22の通気性材を通し、上記集合体4において寸法が比較的短い幅方向で空気が容易に流通する。このため、上記集合体4の各草塊3を乾燥させて所望の干し草にしたり、各草塊3の湿気による変質を防止したりすることができる。よって、上記集合体4を収容する建屋を設けなくても、上記各草塊3の適正な保管ができることから、これら各草塊3の保管が、より容易かつ安価にできる。
【0041】
なお、上記各下部21,22のそれぞれほぼ全体を通気性材にしてやれば、これら広い面積の通気性材を通し、上記カバー装置5内を空気がより円滑に流通することとなる。よって、上記集合体4の各草塊3の乾燥や変質防止が、より確実に達成される。
【0042】
一方、上記カバー本体13の長手方向の他端部の開口16は、その開口のままとされている。
【0043】
このため、上記集合体から上記カバー装置5を取り外すための取外作業をする場合には、まず、上記カバー本体13の他端部の折り畳みを解除して、この他端部の開口16を開放させる。次に、上記カバー本体13の一端部側を上記集合体4から離れる上記一方向Aに向かって引張Bしてやれば、上記カバー本体13は、上記集合体4の上面を摺動して、この集合体4から容易に離脱させることができる。つまり、上記集合体4からの上記カバー装置5の取外作業が容易にできる。
【0044】
また、前記したように、カバー本体13の上部19側から垂下してこのカバー本体13の下部21をその外方から覆う防水カバー29を設けている。
【0045】
このため、雨天時には、上記防水カバー29によりカバー装置5の防水性能が向上する一方、晴天時には、上記防水カバー29を持ち上げて上記カバー本体13の下部21を外方に向けて開放してやれば、カバー装置5内の通気性を、より向上させることができる。
【0046】
また、前記したように、カバー本体13の下端縁部に沿って延び、この下端縁部に着脱可能に取り付けられる長尺体38を設けている。
【0047】
このため、上記長尺体38の剛性や自重により、上記カバー本体13に全体的に適度の引張力を与えることができる。よって、上記カバー本体13の見栄えが向上すると共に、このカバー本体13が風などによりばたつくことが防止される。
【0048】
なお、以上は図示の例によるが、上記端部カバー体15はこれのほぼ全体を防水材により形成してもよい。また、上記他端部の開口16を閉じるように上記端部カバー体15と同構成のものを設けてもよい。また、上記カバー本体13と端部カバー体15との各下部21,22は、それぞれ少なくとも一部が通気性材により形成されておればよいが、図例のように、ほぼ全体が通気性材により形成されていることがより好ましい。また、上記端部カバー体15に上記防水カバー29を設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 地面
2 草
3 草塊
4 集合体
5 カバー装置
13 カバー本体
14 一端部の開口
15 端部カバー体
16 他端部の開口
19 上部
20 上部
21 下部
22 下部
29 防水カバー
35 下端縁部
36 下端縁部
38 長尺体
39 長尺体
A 一方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草によりそれぞれ所定形状の複数の草塊が形成された後、地面上に集合されたこれら草塊の集合体を、その外方から一体的に被覆可能とする草塊集合体のカバー装置であって、
水平方向に長く延び、その長手方向に沿った視線で見た断面が倒立U字形状とされて上記集合体をその上方から被覆するシート材製のカバー本体と、このカバー本体の長手方向における一端部の開口を閉じる端部カバー体とを備え、上記カバー本体の上部を防水材により形成する一方、下部を通気性材により形成したことを特徴とする草塊集合体のカバー装置。
【請求項2】
上記カバー本体の上部側から垂下してこのカバー本体の下部をその外方から覆う防水カバーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の草塊集合体のカバー装置。
【請求項3】
上記カバー本体の下端縁部に沿って延び、この下端縁部に着脱可能に取り付けられる長尺体を設けたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の草塊集合体のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−279323(P2010−279323A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137199(P2009−137199)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(509161521)特定非営利活動法人九州バイオマスフォーラム (1)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】