説明

荷揚げ用パイプライン

低温流体を輸送するためのシステムであって、キャリアパイプ(2)と、キャリアパイプ(2)内に配置され、かつキャリアパイプから断熱された少なくとも1つの内側製品フローパイプ(1)とを備え、製品パイプ(1)の温度変化による製品パイプ(1)の熱収縮が製品パイプ(1)の弾性的な幾何学的歪みによって受容されるように、製品パイプ(1)がキャリアパイプ(2)よりも長い長さを有し、かつ非線形の経路に従うことによってキャリアパイプ(2)の全長内に組み込まれるシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(LNG)などの低温流体を移送するためのパイプラインシステムに関する。特に沖合ターミナルと沿岸施設との間の海底に沿って流体を輸送するためのパイプラインシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の天然ガスが生産される場所では、遠く離れた市場にガスを輸送するための一般的な技術は、ガス源の近辺の沿岸の場所でガスを液化し、次に、航洋船に搭載した特別設計の貯蔵タンクで液化天然ガス(LNG)を輸送することを含む。LNGを形成するために、天然ガスは圧縮され、極低温、すなわち−160℃に冷却され、貯蔵タンクで運ぶことができる量を増大する。航洋船がその目的地に到着すると、LNGは、陸上の貯蔵タンク内に荷揚げされ、次にこのタンクからLNGを必要に応じて再気化し、パイプライン等を通して最終使用者に輸送することができる。海底が海岸から緩やかに浅瀬を形成する場合に大型LNGタンカの竜骨の下に隙間を得ること、及び沿岸の環境から十分に離れて荷積み/荷揚げ施設を位置させることによって、健康、安全性及び/又は環境上の利点を得ることが必要な場合、沖合から遠くにLNGの輸入又は荷積みターミナルを配置することが望ましい。
【0003】
現在公知の極低温流体移送システムは、沿岸のタンクと沖合の受入れ/荷積み施設との間に特別に建設された土手道又はトレッスル突堤に設置されたシステムを含む。このような長い土手道又は突堤のLNG荷積みラインを支持することは費用がかかる。トレッスルは、移送ラインが水に浸水することのないように、また場合によっては、既存の海上交通の邪魔にならないように、水面から十分な高さを必要とする。建設に関するコストから、沖合施設は海岸の近くに設置する必要がある。このため、深い喫水のLNG輸送船用の通路の安全確保のため、新たな進入航路の浚渫及び追加の港湾施設の建設が必要となる可能性がある。同様に、アイドル期間中にLNGを循環させるための戻りラインをフローシステムの主移送ラインから別個に構成し、かつ断熱する場合には、コスト、複雑さ、及び移送システムの安全性の懸念が大幅に増大する。しかし、極低温流体輸送システムを海底によって支持されたパイプラインとして水中に浸漬した場合、沿岸からより大きな距離に受入れ/荷積みステーションを配置することが可能となるので、土手道又はトレッスル突堤の必要はなくなり、領域に深い喫水のLNG船舶に対処するために必須とされた領域に進入航路を浚渫しかつ高価な港湾施設を建設することも不要となる。
【0004】
パイプラインによる流体の極低温輸送の輸送に関する問題は、低温流体がパイプラインに入るときに、大部分のパイプ材料の実質的な収縮をもたらし、これによって、相当の熱応力が発生されることにある。
【0005】
海底に配置された流体移送システムでは、輸送中のLNGを極低温に維持するために、LNGの荷積み/荷揚げ用の断熱「パイプインパイプ」構成を有することが好ましく、ここで1つ又は複数の製品パイプと外側キャリアパイプとの間の環状空間は負圧である。製品パイプの熱収縮は、トレッスル突堤又は土手道によって支持されたパイプラインシステムの多数の及び/又は大きな膨張ループによって受容することができる。膨張ループを有するこれらのパイプラインシステムは、なお実質的に直線的であり、湾曲部を直線的な製品パイプに組み込むために直角を有する。主に直線的なパイプラインをシステムに有することにより、温度変化が生じるときに製品パイプの長さになお本質的に僅かな変化があり、熱収縮は、膨張ループを組み込むために製品パイプに沿って位置決めされた湾曲部のため、局所的な応力を発生する可能性がある。さらに、海底に敷設された海底の「パイプインパイプ」構成のこのような膨張ループの性能は、堆積物によって損なわれるおそれがあり、また海底「パイプインパイプ」パイプラインのこのような大きな膨張ループは、製造及び取り付けが困難である。代わりに、流体を運ぶ内側パイプを製造するために、INVAR(商標)(36%のニッケル鋼)などの非常に低い熱膨張係数を有する材料を使用できるが、これは比較的高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、海底流体輸送システム用の製品パイプの熱収縮を受容することである。特に、本発明は、製品パイプを非線形の経路に形成して、キャリアパイプの中に製品パイプの長さを追加させて、熱収縮が生じたときに実質的に製品パイプの長さ全体に沿って形状及び長さの変化が発生するようにした、沖合と沿岸施設との間で極低温流体を移送するための流体輸送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、低温流体を輸送するためのシステムであって、キャリアパイプと、キャリアパイプの内部に配置され、かつキャリアパイプから断熱された少なくとも1つの内側製品フローパイプとを備え、製品パイプの温度変化による製品パイプの熱収縮が製品パイプの弾性的な幾何学的歪みによって受容されるように、製品パイプがキャリアパイプよりも長い展開長さを有し、かつキャリアパイプの全長内に非線形の経路で組み込まれるシステムを備える。
【0008】
システムが輸送できる特に好ましい低温流体は、極低温流体、例えば、LNGなどの約−160℃の温度を有する流体である。
【0009】
キャリアパイプと比較した場合の製品パイプの余剰の長さは、製品パイプがキャリアパイプの全長にわたって従う異なる経路によって受容される。製品パイプは、極低温流体がパイプを流れる前など、実質的に等しい温度においてキャリアパイプよりも長い長さを有し、かつ製品パイプは、温度変化が生じた場合でもキャリアパイプより決して短くならない。製品パイプの形状は、製品パイプを通して極低温流体が流れる前はキャリアパイプの形状とは異なり、この結果、製品パイプが極低温流体の導入によって冷却されるとき、熱収縮は、実質的に直線的なパイプラインシステムに生じる製品パイプの長さの減少のみによるよりもむしろ、主に製品パイプの形状、したがって、キャリアパイプを通したその経路の形状の変化によって受容される。
【0010】
好ましくは、製品パイプはキャリアパイプの全長にわたり負圧によって断熱される。負圧は、キャリアパイプと製品パイプとの間の環状空間に形成される。
【0011】
好ましくは、非線形の経路は実質的に連続して湾曲した経路である。製品パイプは、実質的に直線部分を有しないその長さ全体に実質的に沿って曲線経路に従うことができる。
【0012】
実質的に非線形の製品パイプは、温度変化による熱収縮を受ける実質的に直線的なパイプラインシステムに確認される長さの変化のみよりもむしろ、製品パイプの長さの変化及び形状の変化をもたらし、熱収縮を受容する。連続的に湾曲した製品パイプにより、膨張ループを組み込んだ主に直線的なパイプラインシステムと比較して、熱収縮の間に製品パイプ全体にわたって応力が分散される。主に直線的なパイプラインシステムでは、熱収縮は、製品パイプ内にループを含めるために存在する直角の湾曲部に、およびこれらを嵌合し得る中間隔壁おいても局所的な応力を生じることがある。
【0013】
好ましくは、製品パイプは、製品パイプが温度変化にさらされる前に、正弦曲線形状又は急角度の螺旋形状などの規則的な形状を有する。この温度変化は、製品パイプを通した極低温流体の流れによって引き起こされる可能性がある。
【0014】
好ましくは、システムは、キャリアパイプの内部に配置された2つ以上の製品パイプを備える。これにより、システムを通した流体輸送量を増加させることが可能になる。
【0015】
システムは、製品パイプを支持するためのスペーサを含むことができる。スペーサは、製品パイプがキャリアパイプの内部で真直線になるのを防止するように配置することができる。好ましくは、製品パイプが平坦な波形で構成される場合、スペーサは製品パイプの約半波長毎に配置される。
【0016】
隔壁は、キャリアパイプ及び製品パイプの端部に取り付けることができる。隔壁は、パイプのいずれかの端部に配置して、断熱シールを形成することができる。
【0017】
システムは、例えば、LNG供給が行われないときにケーシングパイプ内部の極低温を維持するために製品流体の再循環を達成できるように、製品パイプを通した流れを調整するためのバルブをさらに備えることができる。
【0018】
システムは、キャリアパイプの内部を負圧に吸引することを可能にするために、キャリアパイプを貫通するタッピングをさらに備えることができる。これにより、製品の温度上昇を引き起こす製品内への熱流を防止するために、1つ又は複数の製品パイプの周りの負圧の精製が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】周囲温度におけるキャリアパイプの内部の正弦曲線形状の製品パイプの図面である。
【図2】周囲温度におけるキャリアパイプの内部の螺旋形状に形成された単一の製品パイプの図面である。
【図3】キャリアパイプの内部に4つの螺旋形状の製品パイプを有する流体輸送システムの平面図である。
【図4】流体輸送システムの沿岸終端部の図面である。
【図5】流体輸送システムの沖合終端部の図面である。
【図6】流体パイプラインの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図を参照して説明する。流体、特にLNGなどの極低温流体を輸送するための流体移送システムは、キャリアパイプ2内部に配置された製品パイプ1を備える「パイプインパイプ」構成を有する。パイプインパイプ構成のいずれかの端部において、隔壁6の構成部が、キャリアパイプの周りに断熱された気密シールを形成する。図1に、本発明の一実施の形態を示す。図1の製品パイプ1は、正弦曲線形状を有するが、製品パイプは他の同様の規則的で反復する形状を有してもよい。正弦曲線形状により、製品パイプの余剰の長さを、より短いキャリアパイプの中に収容することができる。パイプ1は、製品パイプが周囲温度にあるときに、すなわち、製品パイプ及びキャリアパイプが実質的に等しい温度にあるときに流体輸送システムを通して極低温流体が流れる前に、製品パイプがキャリア内部に正弦曲線形状を有するように、軸方向バッキング又は塑性変形によって正弦曲線形状に予備成形することができる。LNGなどの極低温流体が製品パイプ1を通して流れるとき、LNGは、製品パイプを冷却して、熱収縮させる。製品パイプ1が冷えるときの製品パイプ1の長さの低減は、熱によって誘発される材料の軸方向の歪みによってではなく、パイプの屈曲を真っ直ぐにすることによる、主に製品パイプの形状の変化によって受容され、キャリアパイプを通した製品パイプの経路の変化を引き起こす。製品パイプは、パイプの弾性限界内で真っ直ぐになる。製品パイプを最初に直線とした場合、延在する長さの低減は、軸方向の塑性変形によって受容されることになる。製品パイプの形状の変化に加えて、製品パイプは長さの変化も有し得るが、製品パイプの長さは、キャリアパイプの長さよりも決して短くなることはない。製品パイプ1が冷えるときに製品パイプ1を真っ直ぐにすることは、補助スペーサ11にあるスロットによって補助される。スペーサ及びスロットは、極低温にあるときに製品パイプが真に直線になることを可能にしないように位置決めされる。例えば極低温流体がパイプを通してもはや流れなくなるなどして、製品パイプが周囲温度に戻るとき、製品パイプ1がその元の構成に戻ることを可能にするために、製品パイプが十分に真でない直線性を保持することが有用である。
【0021】
スペーサが設けられることにより、製品パイプがキャリアパイプの内面と接触しないように保たれ、それにより真空断熱を迂回する熱の短絡が防止され、製品パイプの管理された屈折を適度な軸方向の圧縮のもとに選択された波長へと促し、そして、製品ラインの温度が周囲温度に戻るときに、すべての要求された管理された屈折すなわち形状が回復して初期構成へ戻るように、ラインが低温で真に直線になることが防止される。
【0022】
スペーサは、ナイロンなど、任意の適切な材料から生成することができ、製造のために、製品パイプ又はキャリアパイプに取り付けることができる。好ましくは、パイプは、製品パイプに取り付けられたスペーサを備える完成した製品パイプをキャリア内部で上方に滑らせることによって組み立てられる。スペーサの軸方向間隔は、半波長毎でもよく、又は必要な製品の形状を達成するために必要なその他の任意の間隔でもよい。
【0023】
歪んだ製品パイプの形状は、パイプラインシステムの製造中に外部から加えられる軸方向負荷の下で製品パイプをキャリアパイプの内部で屈折させることによって、又は予備塑性加工によって、あるいは、それらの2つの組み合わせによって形成することができる。周囲温度で製品パイプに加えられる軸方向の圧縮力負荷は、キャリア内の対応する張力と作用して、端部隔壁によって伝達される。この軸方向の負荷は、従来の直線構成であった製品パイプの軸方向の熱収縮によって加えられたであろう負荷よりもはるかに小さい。
【0024】
歪んだ形状の波長はキャリアの内径に依存する。製品パイプは、極低温において過大応力がかからないようにキャリアに対する製品パイプの熱収縮を受容する程度に十分な展開長さを有するので、この結果、極低温と周囲温度との間を反復する熱循環を受けるとき、製品パイプの極低温の構成には元の形状に戻る程度に十分な余剰の歪みがある。
【0025】
同様に、正弦曲線形状の製品パイプの波長は、室温でキャリアパイプの内部で製品パイプを誘発して屈折させるために必要な任意の予負荷が得られ、かつこの予負荷が適度な応力及び/又は歪みのみを誘発するように許容される、曲率半径の範囲内に製品パイプを維持するように選択される。
【0026】
製品パイプの形状は、冷却されたときに、熱によって誘発される材料の軸方向歪みによるよりも、むしろ形状の変化により熱収縮を受容するようなものであり、海底LNGパイプラインの製品パイプの製造用に、ステンレス308又は9%のニッケル鋼などの材料を使用することができる。
【0027】
キャリアパイプ2は、断熱を行うために負圧で満たされ、さらに静水圧の外部の圧力差も受容する程度に十分に強い。キャリアパイプ2は、それ自体をさらなるパイプの中に配置してもよい。このさらなる外側のパイプは、追加の断熱を行うことができる、バックアップの断熱層として作用し、かつ損傷保護層ともなる。
【0028】
キャリアパイプは、例えばキャリアパイプが位置する海底の起伏のため直線から逸脱していてもよい。キャリアパイプのこのような真直度は、周囲温度の製造条件の間に製品パイプの所望の初期の座屈を達成するために、かつ製品ラインが極低温から周囲条件に戻るときに座掘形状の回復を達成するために、どの程度の偏心度が必要とされるかに影響を及ぼす。
【0029】
製品ラインの正弦曲線の「波形」はいずれも、水平又は垂直の面にあってもよく、又はそれらの中間の角度でもよい。向きは、平面又は立面でより逸脱するか否かに応じてキャリアパイプの真直度を受容するように選択されることが好ましい。
【0030】
本発明の代替の実施の形態では、製品パイプ1は、図2に示す、周囲温度で予め成形された螺旋状構成を有することができる。流体移送システムは、キャリアパイプ2の内部の負圧の中に角度の急な螺旋として予め成形された製品パイプ1を含む。螺旋の製品パイプ1は、端部隔壁6によってキャリアパイプ2に固定される前に、ばねのように予め圧縮することができ、この結果、製品パイプ1が極低温に冷却するときの製品パイプ1の展開長さの低減は、従来のばねのように、製品パイプの螺旋の弾性的な伸長によって受容される。
【0031】
キャリアパイプは、2つ以上の螺旋状の製品パイプを支承することができる。複数の製品パイプは、多条のねじ山に挟み込むことができる。図3に、4つの製品パイプ1をキャリアパイプ2に配設した1つの構成を示す。スペーサ11は、製品パイプの各々がキャリアパイプの内面に接触しないように補助し、パイプが低温で真に直線になることを防止することを補助する。キャリアパイプに4つの製品パイプを配設したマルチ製品パイプシステムが例示されているが、任意の数の適切なパイプを使用することができる。
【0032】
螺旋の製品パイプは、従来の方法のシーム溶接を行い、さらに、シームを形成するプレートの噛合(mating)縁部に平行にかつそれらの間にオフセットを引き、このように、永続的な急角度の螺旋を製品パイプに誘発することによって製造することができる。
【0033】
キャリア内部に螺旋の製品パイプを製造するための代替の方法は、スペーサリングを製品パイプにすでに固定した状態で、製品パイプを予め製造された束として遠隔の端部からキャリアの内部に、キャリアに対して長さ方向にわたってまっすぐに挿入し、隔壁アセンブリを有するキャリアに固定することである。キャリアパイプの近端部において、キャリアの直径よりも小さい直径を有する円で、各々の製品パイプの自由端が撚られ、同時に、各々の製品パイプが独自の軸を中心に従って回転し、製品パイプが交互に渦巻きを形成するように巻き込まれる。渦巻形状が形成されると、製品パイプを近端部の隔壁に固定することができる。これによって、製品パイプがそれらの局所的な個々の軸方向中心線を中心に解かれることが防止される。次に、製品パイプは、キャリア上の噛合フランジに向かって隔壁を押圧することによって予め圧縮され、追加の熱収縮能力を提供してから、隔壁をキャリア上のその噛合フランジに適切に断熱して固定される。次に、キャリアは、張力の軸方向の予圧縮負荷と、キャリア中心線を中心に解けようとする製品パイプのねじりの軸方向回転モーメントとに作用する。製品パイプにLNGが充填されるとき、製品パイプラインが収縮してキャリアを圧縮させるにつれ、軸方向の予圧縮負荷は張力に変わる。製品パイプが撚られ、このようにして挟み込まれたばねの構成に圧縮されると、摩擦力がスペーサとキャリアパイプの内側との間に蓄積することが想定される。これらの摩擦力は、近端部の隔壁に加えられたトルク及び圧縮が近端部の隔壁の直後の製品パイプに最大許容応力を誘発するが、この製品パイプとキャリアとの間に誘引される相対運動は、キャリアパイプの長さにわたって固定ポイントに到達するまで減衰をして、固定ポイントを超えると、製品パイプとキャリアとの間の軸方向の相対運動はなくなり、もう一つの固定ポイントでは、キャリアパイプの内部に対する円周方向の製品パイプの動きもなくなる状態が生じるように、印可される。この「ロックされた応力」の発生により、製品パイプがさらに巻き込まれ、ばねとなるような圧縮が一時的に妨げられる。しかし、LNGパイプライン全体が数キロメートルの長さで製造され、全長を海中に牽引することができる沿岸ローラ経路に支持される場合、このローラ経路によっても、LNGパイプライン全体をその長軸を中心に回転させることができる。製品パイプを撚って圧縮しながら回転させる工程は、製品パイプが、近端部の製品パイプに螺旋形状を形成するように誘引してキャリアの全長を遠端部まで安全に緩和していき、順次摩擦固定点を「ロック解除」する。パイプラインが転がることのないように、敷設船から海底にLNGパイプラインの敷設を行う場合、キャリアパイプが海水で満たされて、適切に設計された製品パイプがケーシングパイプの内部で中立の浮力を有し、製品パイプが回転して圧縮されることを妨げる摩擦力が形成することを防止することができるようにして、摩擦固定ポイントの形成を緩和することができる。ケーシングパイプを引き続き脱水して乾燥するために適切な施設が、場合によっては必要とされる。
【0034】
特に製品パイプが正弦曲線又は螺旋形状を有するフローシステムを例示して説明したが、周囲温度において製品パイプの長さがキャリアパイプの長さより大きくなり、極低温に冷却した時に製品パイプに熱収縮が起こるのであれば、製品パイプにはその他の形状を用いてもよい。
【0035】
キャリアパイプ及び製品パイプの各端部は隔壁構成部に固定される。図4と図5に、沿岸の端部及び沖合の端部用の隔壁構成部の詳細を示す。
【0036】
図4に、流体移送システム用の沿岸終端構成部を示す。キャリアパイプ2に配設された製品パイプ1は隔壁6で、キャリアパイプ2と断熱気密シールを形成して終端する。キャリアパイプ2に溶接されたフランジ3は、沿岸端部終端フランジ5に取り付けられる。フランジは、ナット及びボルト構成部4などの任意の従来の取付け手段で行うことができる。適切な断熱材料7、8を用いて、キャリアパイプ2、フランジ3、5及びボルト4などからの熱が隔壁6及び製品パイプ1、及び極低温にある製品パイプ内部の流体の内部に流れることを防止する。気密シールは、キャリアパイプ2の環状空間9内部の負圧を維持するために設けられる。水がキャリアパイプに入るのを防止するためにシールは水密であることが好ましい。キャリアパイプ2の内部へのタッピング構成部10は、環状空間9へのアクセスを可能とし、外部の真空ポンプを用いてキャリアパイプ2の内側に負圧を生成することができる。あるいは、タッピング構成部を隔壁の内部に設けてもよい。製品パイプ1は、隔壁6に溶接されて、構造的な気密シールを形成する。図4は、分かりやすくするためにキャリアの内部に製品パイプが一つのみの場合を示しているが、隔壁に全てが終端する製品ラインを複数用いてもよい。さらに、隔壁からさらに沿岸で、LNGなどの流体が、従来の構成部を使用して沿岸貯蔵施設に輸送され、従来の断熱材料13を使用して極低温で維持される。
【0037】
図5に、システムの沖合終端部の実施の形態を示す。さらなる隔壁6は、フローラインシステムの沿岸終端部で、上述したようなパイプの沖合端部のキャリアパイプ2に断熱気密シールを形成する。断熱材料16、12は、キャリアパイプ2から隔壁6及び製品パイプ23、24、25、26への熱伝達を防止する。隔壁6は、断熱された極低温のタンカ連結ターミナル14に取り付けることができる。さらに、隔壁からさらに沖合で、LNGは、従来の構成部を使用してLNGタンカ及び荷揚げガントリの内部の極低温に維持される。
【0038】
単一のキャリアパイプの内部に複数の製品パイプがある場合、及びLNGが製品パイプを通して実際に荷揚げ又は荷積みされない時間の間、例えば、LNGタンカ船舶の到着時間の間の時間などで、流体輸送システムの沖合終端部及び沿岸終端部のバルブ構成部を用いて、LNGを1つ以上の製品パイプに連続的に循環させ、次に他の製品パイプを介して戻すことによって、キャリアの真空断熱された環状空間の内部で極低温を維持することができる。LNGパイプラインの沖合終端部に4つの製品パイプを備えるキャリアパイプ用のバルブ構成部の実施例を、図5に示す。バルブ17と19を閉じ、方向転換バルブ21を開いてLNGを製品23から製品パイプ26に導くことによって、沿岸施設からのLNGを製品パイプ23を通して流出させ、次に、製品パイプライン26を介して戻す、単一のフローループを確立することができる。沿岸ターミナルから製品ライン24を貫流させ、製品ライン25を介して戻す第2のLNGループを確立することができる。この場合バルブ18と20が閉鎖されかつ方向転換バルブ22が開く。しかし、タンカが到着したとき、方向転換バルブ21、22を閉じ、バルブ17、18、19、20を開くことによって、すべての製品パイプを用いて流体を迅速に荷揚げして、短時間でタンカを帰すこともできる。
【0039】
LNGが沿岸のタンカ端部に保持されるとき、沖合の端部について説明したバルブ構成部と同様に、バルブ構成部を用いてLNGを、製品パイプラインを介して流出させてまた戻すように循環させて、1つの製品パイプラインからパイプラインの沿岸終端部の他の製品パイプラインに流体の流れを方向転換させて、フローループを確立することができる。
【0040】
図6は、完全なLNGパイプラインの断面図である。キャリアパイプ2に配設された製品パイプ1は、パイプ1の長さに沿って適切な位置においてキャリアパイプに取り付けられた間隔リング11などのスペーサによって支持される。スペーサ11の間の距離は、スペーサがキャリア内部の製品ラインを支持し、製品パイプとキャリアとの間の真空断熱材にわたって熱短絡回路を防止し、またLNGがパイプに導入されるときに製品ラインが極低温に冷えて熱収縮を受けるときにキャリア内部の製品パイプのすべての軸方向移動を促進するように、流体輸送システムが配置される状態に依存する。周囲の海水の現在の流れ及び機械的保護の下で、コンクリートの重量被覆15を完成したパイプラインに適用して、海底のパイプラインに安定性を提供することができる。パイプラインの長さ全体又はある部分に沿った溝掘削により、パイプラインアセンプリに保護を提供することができる。
【0041】
完成したLNGパイプラインは、沖合のタンカターミナルから海床の傾斜に、また沿岸ターミナルから海底に海岸の下方に徐々に傾く溝に支持することができる。流体輸送システムは、流体をタンカから沿岸ターミナルに荷揚げするために使用する、あるいは沿岸施設から流体を輸送して、流体をタンカに荷積みするために使用することができる。
【0042】
LNGパイプラインは、敷設船に生成してもよく、又は完全に沿岸に製造してもよく、その後、従来の海底パイプラインによって牽引される施設技術を使用して、適所に牽引することができる。あるいは、LNGパイプラインを部分的に製造し、各々の部分を適所に牽引して、共に接合して完全なラインを形成する。
【0043】
極低温流体、特にLNGの移送を参照して本発明について説明したが、システムは、製品パイプの温度変化を引き起こす他の流体を輸送するためにも好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温流体を輸送するためのシステムであって、
キャリアパイプと、
前記キャリアパイプの内部に配置され、かつ前記キャリアパイプから断熱された少なくとも1つの内側製品フローパイプと、
を備え、前記製品パイプの温度変化による前記製品パイプの熱収縮が前記製品パイプの弾性的な幾何学的歪みによって受容されるように、前記製品パイプが前記キャリアパイプよりも長い長さを有し、かつ非線形の経路に従うことによって前記キャリアパイプの全長内に組み込まれるシステム。
【請求項2】
前記製品パイプが前記キャリアパイプの全長にわたって負圧によって断熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非線形の経路が実質的に連続して湾曲した経路である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記製品パイプが温度変化にさらされる前に正弦曲線の形状を有する、請求項1〜3のいずれか一項のシステム。
【請求項5】
前記製品パイプが温度変化にさらされる前に螺旋形状を有する、請求項1〜3のいずれか一項のシステム。
【請求項6】
前記キャリアパイプの内部に配置された2つ以上の製品パイプを備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記キャリアパイプが、前記製品パイプを支持するための少なくとも1つのスペーサを備える、請求項1〜6のいずれか一項のシステム。
【請求項8】
前記スペーサが、前記製品パイプの約半波長毎に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記キャリアパイプ及び前記製品パイプの各々の端部に取り付けられた隔壁を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記製品パイプを通る流れを調整するための少なくとも1つのバルブをさらに備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記キャリアパイプの内部の負圧の形成を可能にするための前記キャリアパイプを貫通するタッピングをさらに備える、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−526256(P2010−526256A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504865(P2010−504865)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050312
【国際公開番号】WO2008/135780
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509260042)ヴァーダーグ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】