説明

荷重分布記録装置、他動運動機器

【課題】足裏に作用する荷重を、センサを用いることなく積算量として計測し、足裏に作用する荷重の分布を容易に判断できるようにし、かつコスト増を抑制する。
【解決手段】他動運動機器の足置台と兼用される下敷き板53の上に、感圧複写シート55を介して加圧シート54が重ねられる。加圧シート54は、柔軟性材料により形成されたシートであって、荷重を受ける受圧面を上面に備え下面に多数個の押圧突起が配列された押圧面を備える。感圧複写シート55は、カーボン紙551と記録用紙552とを重ねてあり、加圧シート54の押圧突起から荷重を受ける部位ごとに荷重の積算量に反映する濃度で記録用紙552にマークを転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の特定部位に作用する荷重について積算量の分布を記録する荷重分布記録装置、および使用者の左右の足を載せる足置台を駆動源からの駆動力で変位させることにより、使用者に他動的に運動を行わせるとともに、荷重分布記録装置を用いて足置台に作用する荷重の分布を記録する他動運動機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の特定部位に作用する荷重の分布を計測する装置が提案されている。たとえば、歩行の美しさや健康度を判定するために、足裏の圧力分布(足圧分布)を計測する装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された装置は、自然な歩行で3〜5歩歩くことができるマット状の圧力センサを用いており、圧力センサにより計測した足圧をコンピュータに取り込んでいる。足圧は、圧力の強さを階調値とする足圧画像データとして毎秒30枚出力される。
【0003】
特許文献1に記載された装置は、足圧をリアルタイムで計測し、足圧画像データとしてコンピュータに取り込んでいるから、コンピュータに取り込まれた足圧画像データを解析することによって、歩行の美しさや健康度を判断することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−218754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では足圧分布の変化をリアルタイムで計測しているから、専門家でなければ荷重の分布を瞬時に判断することは難しいという問題がある。
【0006】
ところで、種々の身体的障害(骨折、神経障害、血行障害など)、手術、脳障害などにより左右の身体能力が不均衡になる場合があり、この種の障害に対する回復訓練(リハビリテーション)の際には、左右の身体能力の均衡を回復させる訓練が必要になる。この種の回復訓練は理学療法士の指導の下に行われ、理学療法士は訓練の対象者に適した運動メニュー(処方)を作成することが必要である。
【0007】
特許文献1に記載された装置は、対象者の歩行の状態をリアルタイムで計測しているから、得られる情報量が非常に多くなり、得られた情報から運動メニューを作成することは容易ではない。また、3〜5歩程度の歩行が可能な程度の大きさの圧力センサが必要であって、コスト高になりやすく、しかも、広い場所が必要になる。
【0008】
本発明は、足裏に作用する荷重をリアルタイムで計測するのではなく積算量として計測することによって足裏に作用する荷重の分布を容易に判断できるようにし、また、センサを用いないことによってコスト増を抑制することを可能にした荷重分布記録装置を提供することを目的とし、さらには、この荷重分布記録装置を備え、比較的狭い場所で足裏の荷重分布の計測を可能にする他動運動機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、下敷き板と、柔軟性材料により形成されたシートであって荷重を受ける受圧面を表裏の一面に備え表裏の他面に多数個の押圧突起が配列された押圧面を備える加圧シートと、加圧シートの押圧面と下敷き板との間に配置され押圧突起から荷重を受ける部位ごとに荷重の積算量に反映する濃度で発色する感圧複写シートとを備えることを特徴とする。
【0010】
この荷重分布記録装置において、感圧複写シートは、加圧された部位が加圧力に応じて転写される着色剤層を一面に備えたカーボン紙と、カーボン紙の着色剤層に重ねられる記録用紙とからなることが好ましい。
【0011】
この荷重分布記録装置において、記録用紙には、足裏の形状に合わせた第1の図形と、第1の図形に合わせて足を載せたときの望ましい重心位置の指標となる第2の図形とが印刷されていることが好ましい。
【0012】
この荷重分布記録装置において、押圧突起は、横断面の断面積が先端部において基部よりも小さくなる形状に形成されていることが好ましい。
【0013】
この荷重分布記録装置において、加圧シートと感圧複写シートとを抜き差し自在に収納する外袋を備えることが好ましい。
【0014】
本発明の他動運動機器は、左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台と、駆動源を備え各足置台を変位させる駆動手段と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷重分布記録装置とを備え、下敷き板が足置台ごとにそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば、足裏に作用する荷重をリアルタイムで計測するのではなく積算量として計測することによって足裏に作用する荷重の分布を容易に判断することができるという利点がある。また、センサを用いていないから、コスト増が抑制されるという利点がある。また、荷重分布記録装置を備えた他動運動機器を用いることによって、比較的狭い場所で足裏の荷重分布の計測が可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】同上を用いる他動運動機器を示す透視した平面図である。
【図3】同上を用いる他動運動機器を示す要部分解斜視図である。
【図4】同上を用いる他動運動機器の外観斜視図である。
【図5】同上に用いる加圧シートの押圧面側を示す斜視図である。
【図6】同上に用いる記録用紙を示す平面図である。
【図7】(a)(b)は同上の使用例を示す斜視図である。
【図8】同上において記録用紙に記録されたマークの例を示す図である。
【図9】同上において記録用紙に記録されたマークの例を示す図である。
【図10】同上において記録用紙に記録されたマークの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に説明する実施形態は、使用者が左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台と、各足置台を変位させる駆動手段とを備えた他動運動機器に、荷重分布記録装置を用いた例を示す。ただし、他動運動機器は、実施形態に示す構成に限定する趣旨ではなく、たとえば、1枚のジンバルの傾斜角度を変化させる構成でもよい。また、他動運動機器が、足置台に加えて使用者の臀部を支持する座席を備え、座席を変位させることによって、足置台と座席とで支持する荷重の配分を変化させる構成でもよい。後者の他動運動機器は、足置台と座席とにより使用者の荷重を支持し、座席で支持する荷重を変化させることによって、脚部の筋群の緊張と弛緩とを繰り返させる運動機器である。これらの他動運動機器は、一例であって、他の他動運動機器であっても、以下に説明する荷重分布記録装置は使用可能である。
【0018】
また、以下に説明する荷重分布記録装置は、他動運動機器だけではなく、歩行運動や足踏み運動を自発的に行う場合に、足裏に作用する荷重の分布を記録するために用いることもできる。さらには、足裏に作用する荷重だけではなく、座位や臥位において背中に作用する荷重、座位において臀部に作用する荷重、腕立て伏せの姿勢で手の平に作用する荷重などについて荷重の分布を記録することができる。荷重分布記録装置は、人の荷重だけではなく、後述する加圧シートの受圧面において荷重を受けることができる対象であれば、どのような対象についても荷重の分布を記録することができる。
【0019】
以下に説明する荷重分布記録装置は、荷重の分布に関して時間変化を記録するのではなく、荷重の分布を記録する各部位について荷重の積算値を記録する。したがって、荷重の瞬時値は計測することができないが、対象における荷重の偏りや荷重が作用している部位の形状などを求めることができる。
【0020】
本実施形態に示す他動運動機器は、図2および図3に示す構成を備える。本実施形態では、図4に示すように、床上に載置して使用する構成を想定するが、床に埋め込んで使用する構成を採用してもよい。また、図4に示すように、ハウジング10の周囲に手摺101を設けた構成を採用し、運動中に手摺101を持つことによってバランス感覚が衰えている場合でも転倒することなく運動を行うことを可能にしている。手摺101には、液晶表示器のようなフラットパネルディスプレイを用いて表示器102が設けられ、運動の指示や運動中の状態を表示器102に示すことができるようにしてある。ハウジング10は、床上に載置されるベース板11と、ベース板11の上方に配置される上板12とを結合して形成される。
【0021】
図示するベース板11および上板12は外周形状が長方形状であるが、ベース板11および上板12の外周形状についてはとくに制限はない。以下では、説明を簡単にするために、ベース板11を床上に載置した状態でハウジング10の上面が床面と平行になるものとする。したがって、図3における上下が使用時の上下になる。図示例は、ハウジング10を床に固定しておらず適宜の位置で使用できる場合を示しているが、ハウジング10を床に固定して定位置で使用する構成を採用してもよい。
【0022】
図示例では、ハウジング10は直方体状に形成されているが、内部に収納用の空間を備えるものであればハウジング10の外観形状として円筒状、多角筒状などを採用することもできる。なお、床に埋め込んで使用する構成では、ハウジング10として上板12を除く部材を軸組のみとした構造を採用することが可能である。
【0023】
図示する他動運動機器は、使用者が立位で使用することを想定しており、使用者が左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台211,212を備える。足置台211,212は、各足置台211,212を変位させる駆動手段30とともに、ハウジング10に配置される。以下では、図2および図3に示す矢印Xの向きを前方として説明する。
【0024】
上板12には、各足置台211,212をそれぞれ露出させる矩形状に開口した2個の開口窓131,132が貫設される。各開口窓131,132は、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい矩形状に形成される。また、各開口窓131,132の長手方向に沿った中心線は、ハウジング10の前後方向に対して交差する。
【0025】
左の開口窓131の長手方向に沿った中心線は前端部が後端部よりも左側に位置し、右の開口窓132の長手方向に沿った中心線は前端部が後端部よりも右側に位置する。すなわち、両開口窓131,132の長手方向に沿った中心線間の距離は、ハウジング10の前端側で後端側よりも大きくなる。
【0026】
開口窓131,132の長手方向がベース板11の前後方向に対してなす角度は、たとえば5〜15度の範囲で適宜に設定される。角度は、左側の開口窓131については後端を中心にして左回りの角度を採用し、右側の開口窓132については後端を中心にして右回りの角度を採用する。
【0027】
各足置台211,212は、それぞれ各開口窓131,132の長手方向に沿ってスライド可能である足置カバー22と、使用者が足を載せるための足置板23とにより構成される。図3には右側の足置カバー22および足置板23のみを記載している。各足置板23には、足置板23の下面周部を囲むカバー体241,242が取り付けられる。
【0028】
各足置カバー22は角筒状に形成され、内部には軸受板25が取り付けられる。軸受板25は各開口窓131,132の幅方向に沿った軸体26を支持し、軸体26は足置板23の下面に設けた軸受(図示せず)に通される。したがって、足置板23は足置カバー22に対して軸体26の回りで揺動可能になっている。
【0029】
足置板23に取り付けられたカバー体241,242は、各足置カバー22の内側に挿入される。したがって、足置板23が軸体26の回りで揺動して足置板23の前端部および後端部が上下に移動するのに伴ってカバー体241,242が上下に移動し、足置カバー22と足置板23との間に隙間が生じるのをカバー体241,242が防止する。
【0030】
足置カバー22の上端縁の周部には全周に亘ってフランジ部221が形成されている。一方、上板12の下面には、開口窓131,132の長手方向に沿った周部において、レール部材(図示せず)が取り付けられている。レール部材は、開口窓131,132の内向きに開口するレール溝(図示せず)を形成する。
【0031】
足置カバー22におけるフランジ部221の一部がレール溝に挿入されることにより、足置カバー22のハウジング10に対する移動範囲が制限される。フランジ部221とレール溝との間には余裕があり、フランジ部221がレール溝に挿入されている範囲内において足置カバー22が前後左右に移動する。また、フランジ部221は、足置カバー22の移動範囲において開口窓131,132の開口縁と足置板23との間に隙間を形成しない寸法に形成されている。
【0032】
足置カバー22の下面には台車41が取り付けられる。台車41の外側面には各2個ずつの車輪42が取り付けられる。ベース板11の上面には各足置台211,212に対してそれぞれ2本ずつのレール43が固定されており、レール43の上面において車輪42が転動するように、レール43上に台車41が載置される。また、レール43の上面には車輪42がレール43から脱落するのを防止するために、車輪42の側面に当接する脱輪防止板44が固定される。
【0033】
ところで、上述したように、左右の開口窓131,132は、長手方向に沿った中心線間の距離が前端側で後端側よりも大きくなるように形成してある。すなわち、開口窓131,132の中心線は、ハウジング10の前後方向に対して所定の角度をなしている。レール43も開口窓131,132の中心線と同様に、延長方向がハウジング10の前後方向に対して所定の角度をなしている。ここに、レール43は、延長方向がハウジング10の前後方向に対してなす角度が、開口窓131,132の中心線がハウジング10の前後方向に対してなす角度よりも大きくなるように配置されている。
【0034】
たとえば、開口窓131,132の中心線がハウジング10の前後方向に対してなす角度を10度とすれば、レール43の延長方向がハウジング10の前後方向に対してなす角度は45度などに設定される。
【0035】
上述の構成によって、足置台211,212はレール43の長手方向に沿って往復移動することが可能になる。このとき、足置台211,212の移動経路は、台車41と車輪42とレール43と脱輪防止板44とにより拘束される。ここに、レール43の延長方向と開口窓131,132の長手方向とが異なっているから、足置カバー22および足置板23は開口窓131,132の長手方向に交差する方向に移動する。
【0036】
すなわち、足置台211,212の長手方向に足の長手方向を一致させると、足置台211,212は、足の長手方向とは異なる方向に移動する。これは、足置台211,212をレール43の延長方向に移動させたときに、使用者の膝に大きな剪断力が作用するのを防止するためである。
【0037】
ところで、左右の各足置台211,212を変位させる駆動手段30は、駆動力を発生させる駆動源31を備える。駆動源31からの駆動力は、各足置台211,212にそれぞれ伝達されるように系統分離部32において2系統に分離される。さらに、系統分離部32で分離された各系統の駆動力は、往復駆動部33を介して左右の各台車41に伝達され、台車41をレール43に沿って往復移動させる。
【0038】
駆動手段30について、さらに具体的に説明する。駆動源31には回転モータ(以下、単にモータと略称し、符号31を用いる)を採用しており、モータ31の出力軸311には系統分離部32が連結される。
【0039】
系統分離部32は、モータ31の出力軸311に連結されたウォーム321と、ウォーム321に噛合する2個のウォームホイール322とを備える。ウォーム321および2個のウォームホイール322は、ベース板11に固定されるギアボックス34に収納される。ギアボックス34は、上面に開口を有するギアケース341と、ギアケース341の開口面に覆着される蓋板342とにより形成される。ギアケース341と蓋板342との間にはウォーム321の長手方向の両端部を回転可能に支持する一対の軸受323が取り付けられる。
【0040】
ウォームホイール322には、ギアケース341と蓋板342とに保持される回転軸35が挿通され、ウォームホイール322の回転に伴って回転軸35が回転するように、ウォームホイール322と回転軸35とを結合してある。
【0041】
モータ31は、ギアケース341に設けた口受部343とベース板11に固定した口受板111とに載置され、ギアケース341に覆着される蓋板342と口受け板111に結合される押さえ板112とによりベース板11に固定される。
【0042】
往復駆動部33は、回転軸35に一端部が一体に結合されるクランク板36と、クランク板36にクランク軸37を介して結合されたクランクロッド38とを備える。クランク板36は回転軸35とともに回転するように回転軸35に結合される。すなわち、ウォームホイール322は回転軸35に結合され、回転軸35にはクランク板36が結合されるから、ウォームホイール322とクランク板36とは一体に回転する。
【0043】
クランク軸37の一端部はクランク板36の他端部に固定され、クランク軸37の他端部はクランクロッド38の一端部に保持された軸受381に保持される。つまり、クランクロッド38の一端部はクランク板36に対して回動自在に結合される。クランクロッド38の他端部は台車41に対して軸体382を用いて結合される。つまり、クランクロッド38の他端部は台車41に対して回動自在に結合される。
【0044】
上述の構成から明らかなように、クランクロッド38は、ウォームホイール322の回転力を台車41の直進往復移動に変換する変換機構として機能する。また、クランクロッド38はウォームホイール322ごとに設けられ、台車41は各足置台211,212において個別に設けられている。それゆえ、各クランクロッド38は、各ウォームホイール322の回転力をそれぞれ足置台211,212の往復移動に変換する。
【0045】
台車41は上述のように移動経路が拘束されているから、ウォームホイール322の回転に伴って台車41がレール43の長手方向に沿って往復移動する。つまり、モータ31の回転がウォーム321およびウォームホイール322を介してクランク板36に伝達され、さらに、クランク板36に結合されたクランクロッド38により台車41がレール43に沿った直線上で往復移動を行うのである。その結果、台車41に結合されている足置カバー22がレール43に沿って往復移動する。つまり、両足置台211,212がレール43の長手方向において往復移動する。
【0046】
ここに、ウォーム321と2個のウォームホイール322とにより駆動力を2系統に分離し、各系統ごとに足置台211,212の駆動力として用いるから、両足置台211,212は駆動手段30により関連付けて駆動される。各ウォームホイール322はウォーム321に噛合する位置を180度異ならせてある。そのため、左側の足置台211が移動範囲の後端に位置するときには、右側の足置台212は移動範囲の前端に位置する。左側の足置台211の移動範囲における後端は左側の足置台211の移動範囲の右端であって、右側の足置台212の移動範囲における前端は右側の足置台212の移動範囲の右端であるから、左右方向においては、両足置台211,212は同じ向きに移動することになる。
【0047】
ところで、各足置台211,212にそれぞれ設けた足置板23は足置カバー22に対して軸体26の周りで回動可能であるから、足置板23の前端部と後端部との高さ位置を変化させることが可能になっている。つまり、足置板23の上に置いた足の爪先と踵との高さ位置を変化させることにより、足関節の底屈と背屈とが可能になっている。
【0048】
ここで、軸体26の周りでの足置板23の回動をレール43の延長方向に沿った往復移動に連動させるために、ベース板11には、足置板23の移動経路に沿って少なくとも一部に傾斜面を有したガイド面(図示せず)が形成され、足置板23の下面にはガイド面に当接する倣い突部231が設けられる。倣い突部231の先端部は、ガイド面に対する摩擦係数が小さくなるように材料および形状を選択しておけばよいが、本実施形態では、ガイド面の上で転動するローラ232を倣い突部231の先端部に設けている。
【0049】
上述のように、ガイド面に当接する倣い突部231を設けていることにより、モータ31の回転に伴って各足置台211,212が往復移動を行うと、倣い突部231がガイド面に沿って移動し、足置板23が軸体26の周りで回動する。すなわち、足置板23のベース板11に対する角度が変化し、結果的に足関節の底屈および背屈が行われる。
【0050】
ガイド面の形状についてはとくに制限はないが、本実施形態では、足置台211,212の1往復の間に足関節の底屈と背屈とを1回ずつ行うようにガイド面を形成する。したがって、ガイド面としては、全長に亘ってベース板11の上面に対して一定角度で傾斜する形状か、中間部において傾斜の向きが変化する形状(V字状、U字状、逆V字状、逆U字状など)を採用することが望ましい。
【0051】
上述した他動運動機器は、基本的には立位で使用する。この場合、足置台211,212が停止している初期位置において、左右の足をそれぞれ足置台211,212に載せて立ち、駆動手段30の運転を開始させる。足置台211,212の長手方向は前後方向(矢印Xの向き)に対して、10度程度の角度をなすように配置され、足置台211,212の上に立ったときに、使用者の脚部に捻れを生じることがなく、自然な立ち位置になるようにしてある。
【0052】
初期位置では、両足置台211,212は前後方向における同じ位置に停止する。すなわち、初期位置では両足置台211,212が左右方向の一直線上に並ぶ。したがって、初期位置で使用者が両足をそれぞれ左右の足置台211,212の上に載ると、使用者の重心から鉛直方向に下ろした直線は両足置台211,212の間でほぼ中央を通ることになる。
【0053】
モータ31の回転を開始すると、両足置台211,212はそれぞれ前後方向の位置を変化させるとともに、前後方向の位置変化に伴って左右方向の位置も変化させる。このとき、両足置台211,212はレール43に沿った一直線上を往復移動し、各足置台211,212は足の前後方向(長手方向)とは異なる方向に移動する。たとえば、ハウジング10の前後方向に対して45度をなす方向に移動する。
【0054】
また、足置台211,212がレール43に沿って往復移動すると同時に、足置板23が軸体26の周りに回動する。たとえば、足置板23が前方に移動する際に、倣い突起25が上方に移動するようにガイド面を形成しておけば、足置台211,212の前端位置において足関節を背屈させ、足置台211,212の後端位置において足関節を底屈させることができる。軸体26の位置は足裏において踵付近に設定し、底屈と背屈との角度はベース板11の上面に対してそれぞれ10度程度に設定する。
【0055】
なお、足置台211,212の前後の位置と底屈および背屈との関係は上述の例とは逆にすることが可能である。また、ベース板11の上面に対する底屈および背屈の角度は異ならせてもよい。これらの動作はガイド面の形状を適宜に設定することにより、容易に実現することができる。
【0056】
図2、図3に示す構成では、使用者の上体を支持する構成を設けていないが、使用者が把持する手摺を設けてもよい。手摺はハウジング10に一体に設けるほか、装置を使用する場所において造営物側に設けるようにしてもよい。手摺を設けておけば手摺によって使用者は身体を支えることができるからバランス機能が衰えている使用者でも利用しやすくなる。また、立位で使用することが基本であるが、障害の回復訓練などに用いる目的であって、立位が困難な場合には座席を設けて着座姿勢で利用してもよい。
【0057】
上述の構成例では、足置台211,212の移動軌跡は前方に開放されたV字状になるが、逆に、足置台211,212の左右方向の距離を前端側よりも後端側で広くなるようにして逆V字状の移動軌跡を採用してもよい。あるいは、足置台211,212の前端位置と後端位置とで距離が変化しない動作や、移動軌跡の左端と右端との位置が前後方向において変化しない動作を採用してもよい。
【0058】
上述した他動運動機器を用いて運動を行えば、足関節の底屈と背屈とが行われるから、ふくらはぎの筋群(腓腹筋等)への筋刺激が増加し、ふくらはぎの筋群の伸縮に伴って脚部からの静脈環流が促進される。このことは、全身の血行の向上につながる。また、足関節が回動することにより使用者は前後方向のバランスを維持する筋群が刺激され、とくに前後方向において転倒しないように姿勢を維持する神経系の反射によって、脚部だけではなく、腰背部の筋群の筋活動も誘発されることになる。
【0059】
モータ31の回転速度などの制御は、図示しない制御手段からの指示により行われる。制御手段は、もっとも単純にはモータ31への電源の入切を行う構成でよい。また、モータ31が直流モータであれば、モータ31に通電する電流をスイッチング素子によって断続させるとともに、スイッチングの際のオンデューティを変化させることにより、モータ31に供給する平均電力を調節するように制御手段を構成してもよい。さらには、使用者の身体状態に併せて、使用時間を設定する機能、モータ31の回転速度を経過時間に応じて変化させる機能などを制御手段に設けてもよい。
【0060】
ところで、上述した構成の他動運動機器を障害の回復訓練などに用いる場合、まず使用者の障害の状態を知ることが重要である。上述した他動運動機器は、使用者が足置台211,212に乗った状態で駆動手段30により足置台211,212が他動的に変位するから、足置台211,212により使用者に刺激を与えていることになる。したがって、この刺激に対する応答を計測すれば、使用者の障害の状態を知ることが可能になる。
【0061】
この目的のために、本実施形態では、左右の足置台211,212にそれぞれ荷重分布記録装置が設けられる。各足置台211,212に設ける荷重分布記録装置は、左右が反対であるが、基本的な構造は同様であるから、以下では、左右の区別をせずに説明する。
【0062】
荷重分布記録装置は、図1に示すように、硬質材料からなる下敷き板53と、柔軟性材料により形成された加圧シート54と、下敷き板53と加圧シート54との間に重ねて配置される感圧複写シート55とを備える。下敷き板53は、各足置台211,212に重ねられ、足置台211,212に対して位置ずれを生じないように固定される。下敷き板53は足置台211,212で代用してもよい。すなわち、足置台211,212が下敷き板53として兼用されていてもよい。加圧シート54を形成する柔軟性材料には、ゴム、発泡ゴムなどが用いられる。
【0063】
加圧シート54は、図5に示すように、荷重を受ける受圧面541を表裏の一面に備えており、多数個の押圧突起543が一体に突設された押圧面542を表裏の他面に備えている。受圧面541は凹凸のない面として形成される。押圧突起543は、規則的に配置されることが好ましく、たとえば、二次元正方格子、二次元六方格子などの交点に配置される。また、押圧突起543は、横断面の断面積が先端部において基部よりも小さくなる形状に形成されることが好ましい。すなわち、押圧突起543は、円錐状、角錐状、半球状などの形状から選択される。ただし、押圧突起543は、円柱状や角柱状であってもよい。
【0064】
感圧複写シート55は、加圧シート54の押圧面542と下敷き板53との間に配置され、押圧突起543から加重を受ける部位ごとに加重の積算量に反映する濃度で発色する。感圧複写シート55は、図示例では、加圧された部位が加圧力に応じて転写される着色剤層を一面に備えたカーボン紙551と、カーボン紙551の着色剤層に重ねられる記録用紙552とを用いて形成してある。着色剤層は、黒色、赤色、青色などの複数色から適宜に選択される。以下、着色剤層から記録用紙552に転写される着色剤をカーボンという。
【0065】
この構成の感圧複写シート55を用いる場合は、加圧シート54の押圧面542をカーボン紙551に接触させ、カーボン紙551と下敷き板53との間に記録用紙552を配置する。記録用紙552は、トレーシングペーパあるいはグラシン紙のような半透明の紙材を用いることが好ましい。記録用紙552が半透明であれば、複数の記録用紙552を重ねて比較することができるから、障害の回復訓練に用いた場合に、訓練前と訓練後との比較が容易になり、回復訓練の効果を判断しやすくなる。
【0066】
記録用紙552は、図6に示すように、足裏の形状に合わせた第1の図形554と、第1の図形554に合わせて足を載せたときの望ましい重心位置の指標となる第2の図形555とがあらかじめ印刷されていることが好ましい。印刷の濃度は、カーボン紙551により記録されるパターンの視認を妨げない程度に低濃度であることが好ましい。
【0067】
また、足のサイズは使用者によって異なるから、1枚の記録用紙552に足のサイズが異なる複数種類の第1の図形554を印刷しておくことが好ましい。この場合、足の長手方向のサイズについて2cm刻み程度で第1の図形554を印刷しておけばよい。1枚の記録用紙552に印刷する第1の図形554が多数になると、記録用紙552の記録内容の視認を妨げるから、1枚の記録用紙552には3種類程度の第1の図形554を印刷しておくことが好ましい。したがって、子供から大人までに対応する場合でも記録用紙552の種類は、高々5種類程度を用意しておけばよい。
【0068】
第2の図形555は、円形あるいは多角形状に表記される。第2の図形555の位置は、健常者が足裏を第1の図形554に合わせて記録用紙552の上に立ち、片足に作用する荷重から求められる重心の位置が、第2の図形555の中心位置付近に位置するように設定してある。したがって、後述するように、記録用紙552に記録された荷重分布について重心位置を求めたときに、第2の図形555との位置関係によって、荷重の偏りの有無および偏りの方向を評価することができる。
【0069】
ところで、記録用紙552は、下敷き板53と加圧シート54との間に配置されているから、使用者が足置台211,212に搭乗する際には、第1の図形554を確認することができない。加圧シート54と記録用紙552との位置合わせを行う構成を採用する場合は、加圧シート54の受圧面541に第1の図形554と同様の図形を表記しておくことによって、第1の図形554に足裏の位置を合わせることが可能になる。ただし、この構成を採用すると、記録用紙552と同様に、足のサイズ別に複数種類の加圧シート54が必要になり、コスト高になるという問題が生じる。
【0070】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、加圧シート54と感圧複写シート55とを外袋56に収納する構成を採用し、第1の図形555と同様に足裏の形状に合わせた第3の図形561を外袋56の外面に印刷した構成を採用している。外袋56の内寸は、記録用紙552(感圧複写シート55)および加圧シート54の外寸に一致させてある。したがって、外袋56に加圧シート54と感圧複写シート55とを収納すると、感圧複写シート55は外袋56に対して定位置に収納される。
【0071】
ここに、外袋56は、平面視において矩形状であって、4辺のうちの1辺のみが開放されたものを用いる。この構成の場合、加圧シート54および感圧複写シート55は、外袋56における開放された1辺から外袋56に出し入れされる。外袋56の形状としては、4辺のうちの隣り合う2辺が開放された形状や3辺が開放された形状のものを用いることも可能である。外袋56としてどの形状を用いる場合でも、外袋56における開放された辺には、開閉を可能にするための、ファスナを設けておくことが好ましい。この種のファスナとしては、線ファスナ(スライド付き、スライドなし)、面ファスナなどを用いることができる。
【0072】
上述したように、外袋56を用いると、第3の図形561によって足裏の位置を感圧複写シート55の位置に合わせることができる上に、複数の使用者が交代で加圧シート54に乗る場合であっても、外袋56を交換すれば、衛生的に使用することができる。すなわち、比較的安価に提供することができる外袋56を交換するだけで、使用者ごとに清潔な状態で使用することが可能になる。
【0073】
上述の例では、1枚の記録用紙552に複数種類の足のサイズに対応する第1の図形554を印刷する例を示したが、1枚の記録用紙552には1種類の足のサイズに対応する第1の図形554を印刷しておいてもよい。また、感圧複写シート55は、ノーカーボン紙や圧力測定シートのように記録用紙に発色用のインクを一体に備える構成としてもよい。圧力測定シートは、加圧した部位が発色し、圧力に応じて発色の濃度が変化するシート状の部材である。この構成では、感圧複写シート55が1枚になるから、取り扱いが容易である。
【0074】
以下では、他動運動機器を利用して回復訓練などを行う場合に、訓練前後の効果を比較することを目的として上述した荷重分布記録装置を用いる例について説明する。荷重分布記録装置を使用するにあたっては、図7(a)のように、加圧シート54および感圧複写シート55を外袋56に収納し、左右の足置台211,212の上面に取り付ける。外袋56を足置台211,212に取り付ける構成としては、たとえば、足置台211,212の上面に磁石を設けておき、外袋56の外周部を磁石と薄板状の鋼板との間で挟む構成などを採用することができる。また、足置台211,212にクリップを設けておき、外袋56をクリップで挟んでもよい。
【0075】
また、外袋56を足置台211,212に固定するには、面ファスナあるいは両面粘着テープを用いて外袋56と足置台211,212とを貼り合わせる構成、足置台211,212に額縁状の枠部材を設けて外袋56の周部を保持する構成を採用してもよい。あるいはまた、上述したいずれかの構成によって下敷き板53と外袋56とを固定し、下敷き板53と足置台211,212との一方に突設した複数本の突起を他方に設けた穴に圧入する構成を用いて外袋56を足置台211,212に固定してもよい。この場合、突起の先端部に基部よりも膨らんだ球状の圧入部を形成しておき、穴の内面には圧入部が押し込まれる空洞部を形成しておいてもよい。
【0076】
足置台211,212に加重分布記録装置が取り付けられた後、使用者が左右の足を足置台211,212(加重分布記録装置)に載せた状態で、他動運動機器が駆動される。他動運動機器が動作している間に、記録用紙552には、使用者が足置台211,212を踏み込む力の積算量を反映する濃度でカーボン紙51からカーボンが転写される。
【0077】
加圧シート54には多数個の押圧突起543が設けられているから、記録用紙552において押圧突起543に対応する部位には、足裏に作用した荷重に応じた濃度でカーボンが転写される。したがって、記録用紙552に転写されたカーボンの濃度分布が荷重の分布に対応することになる。すなわち、足裏において土踏まずなど平面に接触しない部位を除いて、荷重が作用した押圧突起543に対応する点群が記録用紙552に足の形で記録される。また、押圧突起543は先端に向かって横断面の断面積を小さくする形状に形成されているから、大きい荷重の作用した部位では、カーボンが転写される面積が大きくなる。
【0078】
いま、加圧シート54の押圧突起543の横断面の形状が円形であって、加圧シート54を踏み込んだときに転写されるカーボンの最大径(最大幅)が3mm程度であるものとする。この場合、図8のように、記録用紙552にカーボンが転写されることにより形成されるマーク556は、0(マーク556なし)〜3mm(最大径)の範囲で大きさが変化する。そこで、マーク556の大きさについて、複数段階(図示例では5段階)で評価点を設定する。ここでは、マーク556の直径が3mm程度である場合を5点(図8(a))、マーク556はあるが1mm以下である場合を2点(図8(b))、マーク556が形成されていない場合を1点とする(図8(c))。図8(c)における破線は、押圧突起543に対応する部位にマーク556が存在しないことを示す。3点と4点とは、直径が1〜3mmの間であるマーク556について、直径および濃度を総合して評価点を与える。すなわち、直径が大きいほど、また濃度が高いほど高い評価点を与える(図8(d)(e))。濃度を定量化する場合は、直径×濃度が閾値以上の場合に評価点を4点にすればよい。また、濃度を定量化しない場合には、経験者が目視によって評価点を決定すればよい。
【0079】
なお、目視ではなく、デジタルカメラやスキャナを用いて記録用紙552に記録されているマーク556を画像データに変換し、画像データに対する画像処理によって、各マーク556の直径や濃度を定量的に計測してもよい。画像データに変換した場合には、記録用紙552に記録されたマーク556を遠方で評価することが可能になる。
【0080】
上述のように、各押圧突起543に対応する部位に形成されたマーク556ごとに評価点を与えることによって、足裏に作用する荷重の分布だけではなく、作用した荷重の大きさの評価も可能になる。とくに、右足と左足とのそれぞれについてマーク556の評価点を合計すれば、左右の足の踏み込み力のバランスを評価することが可能になる。あるいはまた、親指の付け根、小指の付け根、外側、内側、踵側、爪先側などの領域を設定し、各領域ごとに荷重を評価することも可能になる。さらに、評価点が等しいマーク556を結ぶ等荷重線(等圧線や等高線のような線)を設定すれば、足裏における荷重の掛かり方を評価することができる。上述のよう評価を行えば、脚部の筋の使い方や歩様を推定できるから、他動運動機器を用いて機能の回復訓練などを行う際に、運動メニューの指針を与えることが可能になる。
【0081】
さらに、押圧突起543は横断面の面積が先端ほど小さくなる形状であるから、1つのマーク556において、押圧突起543の先端部に対応する部位の濃度が他の部位よりも高くなる。他動運動機器を使用せずに、加圧シート54の上に静止して立った状態では、図9(a)に示すように、マーク556の中心付近の濃度がもっとも高くなる(以下、高濃度部位557という)。一方、他動運動機器を使用すると、足置台211,212の傾斜角度が変化し、使用者は親指側に力を入れるから、図9(b)のように、高濃度部位557はマーク556の中心よりも後方に位置する傾向がある。
【0082】
このことから、図10(a)のように、各マーク556における高濃度部位557がマーク556の中心に対して同じ向きに偏移している場合には、体重移動ないし踏み込みが正常に行われていると言える。また、図10(b)のように高濃度部位557がマーク556の中心に対して不規則に偏移している場合や、図10(c)のように高濃度部位557がマーク556の中心に対して偏移していない場合には、体重移動ないし踏み込みが正常に行われていないと言える。
【0083】
上述のように記録用紙552に残されたマーク556を用いることにより、使用者の身体の状態を推定することができるから、身体の状態に応じて他動運動機器を用いて回復訓練を行う際の運動メニューを作成することができる。他動運動機器を用いて回復訓練を行う際には、図7(b)のように、外袋56の中に、加圧シート54および感圧複写シート55に代えて、弾力性ないし粘弾性を有する材料で形成された中敷き57を収納する。
【0084】
中敷き57は、エアキャップ、高分子ゲル、低反発素材、硬質スポンジなどの材料から選択される。使用者の足裏と下敷き板53(足置台211,212)との間に、この種の材料で形成された中敷き57を配置することによって、使用者は、他動運動機器の使用時において、指の付け根を意識して力を込めるようになり、踏み込みを意識付けることによって、踏み込む力の強化を効率よく行うことが可能になる。また、足裏に作用する荷重が大きい部位ほど中敷き57の沈み込む量が大きくなるから、使用者は踏み込んでいる部位を知覚することができ、運動を正しく行っているか否かを感覚的に知ることができる。その結果、運動の効果を高めることができる。
【0085】
他動運動機器を使用して回復訓練を行った後には、外袋56に加圧シート54および感圧複写シート55を収納すれば、訓練後における足裏の荷重の分布を確認することができる。すなわち、訓練前と同様にして訓練後にも記録用紙552に荷重分布を記録し、訓練前の結果と訓練後の結果とを比較することができる。訓練前後において荷重分布記録装置を用いる場合には、訓練の前後においてカーボン紙551におけるカーボンの色を異ならせておけば、訓練前と訓練後との記録用紙552を取り違える可能性を低減できる。なお、記録用紙552として訓練前用と訓練後用とを設け、訓練前用と訓練後用とを示す適宜の表記を設けてもよい。
【0086】
一例として、手術後の機能の回復訓練において、理学療法士の指導のもとに他動運動機器を用いる場合を例示する。まず、使用者の現状の状態を知るために、他動運動機器に使用者が乗った状態で他動運動機器を30秒間動作させる。この間において、使用者には足裏を意識させず、荷重分布記録装置によって足裏に作用する荷重の分布を記録する。
【0087】
その後、理学療法士は、記録用紙552に記録されたマーク556を評価し、足裏のどの部位を踏み込むようにすればよいかを使用者に指示し、外袋56に中敷き57を収納した状態で他動運動機器による運動を使用者に行わせる。この運動の間に、使用者は理学療法士に指示された部位を意識的に踏み込むことによって、機能の回復に必要な筋力やバランス感覚を修得することができる。
【0088】
使用者が他動運動機器を用いた運動を1〜数週間程度行った後、荷重分布記録装置を用いて足裏に作用する荷重の分布を再び記録する。このようにして訓練後の結果を記録した記録用紙552と、訓練前の結果を記録した記録用紙552とを比較すれば、訓練の効果を確認することができる。記録用紙552は半透明であるから、2枚の記録用紙552を重ねた状態でライトパネルなどの上に置けば、訓練の前後における荷重分布を容易に比較することができる。また、訓練の前後でカーボンの色を異ならせている場合には、2枚の記憶用紙552を重ねた状態でも、訓練の前後の記録を識別することができるから、訓練前後の結果の比較がさらに容易になる。しかも、訓練の前後における荷重分布を記録用紙552に記録しているから、理学療法士は、使用者に記録用紙552を見せて効果を説明することによって、機能訓練に対する使用者の意欲を引き出すことが可能になる。
【符号の説明】
【0089】
30 駆動手段
31 モータ(駆動源)
53 下敷き板
54 加圧シート
55 感圧複写シート
56 外袋
211,221 足置台
541 受圧面
542 押圧面
543 押圧突起
551 カーボン紙
552 記録用紙
554 第1の図形
555 第2の図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下敷き板と、柔軟性材料により形成されたシートであって荷重を受ける受圧面を表裏の一面に備え表裏の他面に多数個の押圧突起が配列された押圧面を備える加圧シートと、前記加圧シートの前記押圧面と前記下敷き板との間に配置され前記押圧突起から荷重を受ける部位ごとに荷重の積算量に反映する濃度で発色する感圧複写シートとを備えることを特徴とする荷重分布記録装置。
【請求項2】
前記感圧複写シートは、加圧された部位が加圧力に応じて転写される着色剤層を一面に備えたカーボン紙と、前記カーボン紙の着色剤層に重ねられる記録用紙とからなることを特徴とする請求項1記載の荷重分布記録装置。
【請求項3】
前記記録用紙には、足裏の形状に合わせた第1の図形と、前記第1の図形に合わせて足を載せたときの望ましい重心位置の指標となる第2の図形とが印刷されていることを特徴とする請求項2記載の荷重分布記録装置。
【請求項4】
前記押圧突起は、横断面の断面積が先端部において基部よりも小さくなる形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷重分布記録装置。
【請求項5】
前記加圧シートと前記感圧複写シートとを抜き差し自在に収納する外袋を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の荷重分布記録装置。
【請求項6】
左右の足をそれぞれ載せる一対の足置台と、駆動源を備え前記各足置台を変位させる駆動手段と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷重分布記録装置とを備え、前記下敷き板が前記足置台ごとにそれぞれ設けられていることを特徴とする他動運動機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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