説明

荷重超過警報装置付きベルトスリング

【課題】ベルトスリングの扱い易さを損ねることなく、ベルトスリングにかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはその旨を作業者に知らせることができ、これによって引っ張り荷重超過時のベルトスリングの破断による被吊上物の落下などの危険を回避することができる荷重超過警報装置付きベルトスリングを提供する。
【解決手段】荷重超過警報装置付きベルトスリング1は、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリット5が形成されたベルトスリング2と、スリット5に差し込まれ、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重超過警報装置付きベルトスリングに関する。さらに詳述すると、本発明は、資材や荷物などを安全に吊り上げる荷重超過警報装置付きベルトスリングに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどを利用して建築資材や重い荷物などを吊り上げるときにはクレーンのフックと荷物とを接続するベルトスリングが使用される。ベルトスリングの両端には一般的にフックが取り付けられているかあるいは輪が形成されている。ベルトスリングは例えば一端のフックあるいは輪をクレーンのフックに引っ掛けるとともに、他端のフックあるいは輪を吊り上げる対象物(以下、被吊上物と称する)に取り付けられたフックあるいはアイボルトなどの取り付け用金具に接続して使用される。
【0003】
ところで、ベルトスリングには被吊上物を安全に吊り上げることができる重さの上限である耐荷重が定められている。その耐荷重は例えば特許文献1に示すようにベルト表面に記されている。ベルトスリングを使用したクレーンなどによる吊り上げ作業を安全に行うには、通常、作業者は被吊上物の重さを調べた後、その重さに見合ったベルトスリング即ち耐荷重が被吊上物の重さよりも大きいベルトスリングを選択して使用する。
【特許文献1】特開平7−97171号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被吊上物の重さを吊り上げ作業を行なう度に逐一調べることは作業者にとって煩わしい作業となる。その上、ベルト表面に記されている耐荷重を示す表示は一般的に小さく、場合によっては汚れや磨耗などによって読み取り難くなっているということもあり、一見しただけでは耐荷重を読み取ることは困難である。このような事情から作業者は耐荷重を確認することなく、扱いが楽なベルトスリング例えば軽くて細いベルトスリングのように軽くて柔軟性に富んだものを自ずと選んでしまうようになる。したがって、ベルトスリングを使用した吊り上げ作業においては、常に安全な吊り上げ作業が行なわれているとは言い難い現状がある。
【0005】
そこで、本発明は、ベルトスリングの耐荷重や被吊上物の重量を確認せずに吊り上げ作業を行ったとしてもベルトスリングにかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはその旨を作業者に確実に知らせることができ、これによって引っ張り荷重超過時のベルトスリングの破断による被吊上物の落下などの危険を回避することができる荷重超過警報装置付きベルトスリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる荷重超過警報装置付きベルトスリングは、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリットが形成されたベルトスリングと、スリットに差し込まれ、ベルトスリングに作用する引っ張り荷重に伴ってスリットが閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置とを備えるようにしている。
【0007】
したがって、引っ張り荷重がスリットにおいてスリットが閉じる方向への圧力に変換されて荷重超過警報装置に作用し、その圧力が予め定められた大きさを超えると引っ張り過重が過剰であることを知らせる警報が発せられる。ここでベルトスリングの耐荷重以上の引っ張り荷重がベルトスリングに掛けられたときのスリットの閉じ方向にかかる圧力を事前に計算しておき、それを「予め定められた大きさ」とすることで作業者は警報により引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおいて、荷重超過警報装置は、スリットを開く方向に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、この付勢部材が予め定められた位置まで弾性変形したことを契機に警報音及び光の少なくともいずれか一方を発する警報手段とを備えるようにしている。この場合、ベルトスリングを利用して被吊上物を吊り上げて行くと、スリットは付勢部材の付勢力に抗して徐々に閉じられて行く。そして、閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると付勢部材が予め定められた位置まで弾性変形する。付勢部材が予め定められた位置まで弾性変形すると警報手段が警報音及び光の少なくともいずれか一方を発する。これにより作業者は聴覚及び視覚を通じて引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおいて、荷重超過警報装置は、スリットから露呈する開口と、この開口を塞ぐ蓋体とを有する中空体であり、圧力が中空体に対して予め定められた大きさ以下で作用しているときには蓋体で開口を塞いで中空体を密封状態にし、圧力が中空体に対して予め定められた大きさを超えて作用したときには中空体が圧縮され、中空体内で圧縮された空気によって蓋体が開口から外れるようにしている。この場合、ベルトスリングを利用して被吊上物を吊り上げて行き、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると中空体が圧縮される。即ち中空体内の空気が圧縮される。この圧縮空気が中空体の内側から開口を塞いでいる蓋体を圧迫することによって蓋体は発砲音を発しながら開口から外れる。作業者は発砲音を聞くとともに蓋体が開口から外れたことを視認することによって引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおいて、中空体において開口を互いに背向く位置に1つずつ形成するとともに、開口のそれぞれを塞ぐ蓋体間を連結部材で連結し、蓋体が開口から外れたときに蓋体が連結部材によって開口から吊り下げられた状態になるようにしている。この場合、ベルトスリングを利用して被吊上物を吊り上げて行き、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると中空体が圧縮され、各開口を塞いでいる蓋体が少なくとも1つ発砲音を発しながら外れる。これにより作業者は発砲音を聞くとともに開口から外れた蓋体を視認することで引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。また、吊り上げ作業を行って蓋体が開口から外れた場合には、蓋体が連結部材によって開口から吊り下げられた状態になるので、作業者は開口から蓋体が外れたことを見落とすことがなくなる。さらに、中空体が圧縮されることによって各開口の蓋体が外れても蓋体間を連結している連結部材によって開口から外れた蓋体は中空体の本体部から一定の範囲内までしか離れないので、蓋体が散乱することを防止することができる。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおいて、荷重超過警報装置は、圧力が作用することにより閉じ方向に弾性変形する弾性変形体と、この弾性変形体の内部に設けられており、弾性変形体の弾性変形に伴って閉じ方向に移動する楔状部と、圧力が弾性変形体に対して閉じ方向に前記予め定められた大きさを超えて作用することによって楔状部の閉じ方向の移動に伴って内部から外部に向けて突出する突出部材とを備えるようにしている。この場合、ベルトスリングを利用して被吊上物を吊り上げて行くと、スリットは弾性変形体の弾性的な付勢力に抗して徐々に閉じられて行く。この閉じ方向の圧力によって弾性変形体が弾性変形して行くとこの弾性変形に同期して楔状部がスリットの閉じ方向に移動して行く。やがて閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると楔状部の閉じ方向の移動に伴って楔状部の傾斜面が突出部材を弾性変形体の外部に向けて押し出す。作業者は弾性変形体から突出した突出部材を視認することによって引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。
【0012】
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおいて、荷重超過警報装置は、液体が封入された容器と、液体が浸透して発色する発色体とを備え、圧力が予め定められた大きさを超えたときに容器の少なくとも一部が破損して、その破損した箇所から漏れ出た液体が発色体に浸透するようにしている。この場合、ベルトスリングを利用して被吊上物を吊り上げて行くと、容器はスリットの閉じ方向の圧力によって圧縮され、圧力が予め定められた大きさを超えるとその一部が破損することになる。そして、その破損した箇所から漏れ出た液体が発色体に浸透すると発色体が色付く。作業者は発色体が色付いたことを視認することによって引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。なお、発色体としてはリトマス紙が考えられる。発色体として酸性の液体に対して発色するリトマス紙を採用する場合には酸性の液体を容器に封入し、発色体としてアルカリ性の液体に対して発色するリトマス紙を採用する場合にはアルカリ性の液体を容器に封入すれば良い。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、ベルトスリングを利用した吊り上げ作業を行うにあたってベルトスリングのスリットの閉じ方向に予め定められた大きさ以上の圧力が加わると荷重超過警報装置が警報を発するので、作業者はベルトスリングにかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはそのことを直ぐに知ることができ、吊り上げ作業の中止とベルトスリングの交換を作業者に促すことができる。これによりベルトスリングを利用した吊り上げ作業を行うにあたって引っ張り荷重超過時のベルトスリングの破断による被吊上物の落下などの危険を回避することができ、吊り上げ作業の安全性を向上させることができる。また、荷重超過警報装置をベルトスリングのスリットに差し込み、スリットの閉じ方向にかかる圧力に応じて荷重超過警報装置から警報を発するようにしたので、ベルトスリングの機能性を損ねることなく、ベルトスリングにかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはその旨を作業者に知らせることができる。
【0014】
請求項2記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、付勢部材の弾性変形の度合いに応じて警報を発するようにしたので、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを簡素な構造で検出することができる。また、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えた場合には警報音あるいは光が発せられるので、作業者はスリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ちベルトスリングにかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを容易に感知することができる。
【0015】
請求項3記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、吊り上げ作業を行った際にスリットが閉じられて中空体が潰されたときに中空体の開口を塞いでいる蓋体が発砲音を発しながら開口から外れるようにしたので、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを簡素な構造で検出することができる。また、開口から蓋体が外れる態様と蓋体が開口から外れたときに生じる発砲音とから作業者はスリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ち引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを容易に感知することができる。
【0016】
請求項4記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、被吊上物が空中に吊り上げられた状態で蓋体が開口から外れた場合には、その蓋体が開口から吊り下げられた状態になるので、作業者は開口から蓋体が外れたことを見落とすことがなくなる。また、各開口の蓋体が外れても蓋体間を連結している連結部材によって開口から外れた蓋体は中空体の本体部から一定の範囲内までしか離れないので、蓋体が散乱することを防止することができる。
【0017】
請求項5記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、吊り上げ作業を行った際にスリットが閉じられて弾性変形体が弾性変形したときに弾性変形体から突出部材が突出するので、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを簡素な構造で検出することができる。また、作業者は突出部材が弾性変形体から突出する態様を視認することによってスリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ち引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを容易に感知することができる。
【0018】
請求項6記載の荷重超過警報装置付きベルトスリングによれば、吊り上げ作業を行った際にスリットが閉じられて容器が潰されたときに破損した箇所から漏れ出た液体が発色体に浸透すると発色体が色付くようにしたので、スリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを簡素な構造で検出することができる。また、作業者は発色体が発色したことを視認することによってスリットの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ち引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを容易に感知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1〜図5に本発明の荷重超過警報装置付きベルトスリングの第1の実施形態を示す。本実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリング1は、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリット5が形成されたベルトスリング2と、スリット5に差し込まれ、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置6とを備えている。
【0021】
図1に示すようにベルトスリング2は無端ベルトを折り合わせて2層構造にした状態で縫い合わせることによって形成される。ベルトスリング2の両端部にはクレーンのフック3などに引っ掛けるための輪4が形成されている。本実施形態ではベルトスリング2の両端部に輪4を形成した例を挙げて説明するが、輪4でなくともフックであっても良く、ベルトスリング2の両端部の形態はクレーンのフック3などに引っ掛けられるように形成されていれば適宜に変更可能である。
【0022】
ベルトスリング2の一方の輪4の付け根近傍にはベルトスリング2を使用したときの引っ張り荷重がかかる方向に沿って且つベルトスリング2の幅方向に沿ってスリット5が形成されている。ベルトスリング2を形成するにあたって、輪4は無端ベルトを折り合わせて2層構造にした状態で縫い合わせるときに無端ベルトを折り合わせたときの両端部を縫い合わさないことによって形成され、スリット5は一方の輪4の付け根近傍を縫い合わさないことによって形成される。したがって、スリット5はベルトスリング2を幅方向に貫通している。このスリット5には荷重超過警報装置6が差し込まれて固定される。なお、本実施形態では2つの輪4のうちの一方をクレーンのフック3に引っ掛け、他方を被吊上物に取り付けた取り付け金具(例えばフック)に引っ掛けて被吊上物を吊り上げる形態(所謂ストレート吊り)と、2つの輪4をクレーンのフック3に引っ掛けてベルトスリング2の両端間で被吊上物を支持する形態(所謂2点吊り)とを想定してベルトスリング2の一方の輪4の付け根近傍にスリット5を形成するようにしているが、スリット5の形成箇所はこれに限ることなく適宜に変更可能である。例えばベルトスリング2がストレート吊りにだけ使用されるものであればスリット5をベルトスリング2の中央部に形成しても良い。
【0023】
図2に示すように、荷重超過警報装置6は、荷重超過警報装置本体7と1対の付勢部材8、9とから構成されている。荷重超過警報装置本体7の筐体10の外形は板状に形成されている。この筐体10の一端面には表示窓10a、10bが形成されている。この表示窓10a、10bは荷重超過警報装置6がスリット5に差し込まれた際にスリット5から露呈される。また、筐体10において、荷重超過警報装置6がスリット5に差し込まれた際にベルトスリング2の裏面2aに対向する面、即ち筐体10の表面と裏面のそれぞれには第1、第2プッシュ式スイッチ11、12が露呈されており、スイッチ11、12の上には複数の孔13(図3参照)が形成されている。
【0024】
付勢部材8、9はスリット5を開く方向に向けて弾性的に付勢するものであって、金属製の薄板を略C形状に折り曲げて形成された板ばねからなる。この付勢部材8、9は第1、第2プッシュ式スイッチ11、12及び孔13を跨ぐようにして筐体10の表面と裏面のそれぞれに固定されている。また、ベルトスリング2の裏面2aとこの裏面2aに対向する付勢部材8、9の面とは接着剤などの固定手段で固定されている。つまり、ベルトスリング2と荷重超過警報装置6とは一体化された状態になっている。
【0025】
付勢部材8、9はベルトスリング2の裏面2aと筐体10との間に配置され、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときにはその閉じ方向(図2中の破線矢印A方向)に沿って徐々に弾性変形して行き、その閉じ方向の圧力の大きさが予め定められた大きさに達したときには予め定められた位置にまで弾性変形し、そこで第1、第2プッシュ式スイッチ11、12をオンするように構成されている。つまり、ここで述べる「予め定められた大きさ」とはベルトスリング2にその耐荷重を超えて作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときのその閉じ方向の圧力の大きさのことを示し、「予め定められた位置」とは、付勢部材8、9が第1、第2プッシュ式スイッチ11、12をオン操作する位置のことを示す。
【0026】
図4に示すように、荷重超過警報装置本体7は、第1、第2プッシュ式スイッチ11、12、電源スイッチ14、電源装置15、制御装置16、動作状態確認手段17及び警報手段18から構成されている。電源装置15は第1、第2プッシュ式スイッチ11、12、制御装置16、動作状態確認手段17及び警報手段18に電力を供給するものであり、電池15aを備えている。この電池15aは例えばボタン電池あるいは単三型のアルカリ電池などである。
【0027】
制御装置16は荷重超過警報装置本体7をシーケンス制御するものであり、例えばCPUあるいはMPUなどで構成されている。制御装置16は、第1、第2プッシュ式スイッチ11、12、電源装置15、動作状態確認手段17及び警報手段18のそれぞれに電気的に接続されている。第1、第2プッシュ式スイッチ11、12は、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用したときに、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力を検出する検出部として機能するものである。つまり、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力によって付勢部材8、9が予め定められた位置まで弾性変形したことを検出するものである。第1、第2プッシュ式スイッチ11、12が付勢部材8、9によってオンされると第1、第2プッシュ式スイッチ11、12から制御装置16に電気信号が出力される。制御装置16は第1、第2プッシュ式スイッチ11、12の双方から電気信号が入力されたことを契機に第1、第2プッシュ式スイッチ11、12がオンされたことを示す電気信号を警報手段18に出力する。なお、本実施形態では第1、第2プッシュ式スイッチ11、12を用いて予め定められた圧力を検出するようにしているが、第1、第2プッシュ式スイッチ11、12の代わりにフォトセンサや磁気センサなどを利用しても良く、付勢部材8、9が予め定められた位置にまで弾性変形したときにそれを検出して、その検出信号を警報手段18に出力することができるようなものであればどのようなものであっても良い。
【0028】
警報手段18はドライバ19、20と青色LED21とスピーカー22とから構成されている。ドライバ19、20に制御装置16から第1、第2プッシュ式スイッチ11、12がオンされたことを示す電気信号が入力されると、ドライバ19は青色LED21を発光させ、ドライバ20はスピーカー22から警報音を発生させる。青色LED21の発光は筐体9の表示窓10aを通して視認される。スピーカー22の警報音は筐体9の孔13を通して筐体9の外部に発散される。
【0029】
制御装置16は電池15aの電圧の出力レベルを常時監視している。そして、その出力レベルが予め定められた閾値を下回ったことを契機に電池15aの電圧の出力レベルが予め定められた閾値を下回ったことを示す電気信号を動作状態確認手段17に出力する。
【0030】
動作状態確認手段17はドライバ23と白色LED24と赤色LED25とから構成されている。電源スイッチ14がオンされているときには制御装置16はドライバ23を介して白色LED24を常時発光させている。ドライバ23に制御装置16から電池15aの電圧の出力レベルが予め定められた閾値を下回ったことを示す電気信号が入力されると、ドライバ23は白色LED24を消灯させるとともに赤色LED25を発光させる。白色LED24及び赤色LED25の発光は筐体9の表示窓10bを通して視認される。したがって、作業者は表示窓10bからの発光色に基づいて電池15aの交換が必要か否かを判断することができる。つまり、表示窓10bから白色光が視認されるときは電池15aの交換が不必要であり、表示窓10bから赤色光が視認されるときは電池15aの交換が必要であると判断することができる。
【0031】
以上のように構成された荷重超過警報装置付きベルトスリング1を利用して被吊上物を吊り上げて行くと、スリット5は付勢部材8、9の弾性的な付勢力に抗して徐々に閉じられて行く。そして、スリット5の閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えるとやがて付勢部材8、9が予め定められた位置まで弾性変形する。付勢部材8、9が予め定められた位置まで弾性変形すると、付勢部材8、9が第1、第2プッシュ式スイッチ11、12をオンする。図5のフローチャートに示すように、第1、第2プッシュ式スイッチ11、12の少なくともいずれか一方がオフのとき、制御装置16は待機状態であり(S1;N)、第1、第2プッシュ式スイッチ11、12の双方がオンされると(S1;Y)、青色LED21を発光させるとともにスピーカー22から警報音を発生させる(S2)。したがって、作業者はベルトスリング2にかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはそのことを青色LED21の発光とスピーカー22の警報音によって直ぐに知ることができる。これにより吊り上げ作業を中止することを作業者に促すことができ、吊り上げ作業を行うにあたって引っ張り荷重超過時のベルトスリングの破断による被吊上物の落下などの危険を回避することができる。また、荷重超過警報装置6をベルトスリング2のスリット5に差し込み、スリット5の閉じ方向にかかる圧力に応じて警報を発するようにしたので、ベルトスリング2本来の扱い易さを損ねることなく、ベルトスリング2にかかる引っ張り荷重が耐荷重を超えた場合にはその旨を作業者に知らせることができる。
【0032】
次に図6〜図8に本発明の荷重超過警報装置付きベルトスリングの第2の実施形態を示す。なお、本実施形態において第1の実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
本実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリング30は、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリット5が形成されたベルトスリング2と、スリット5に差し込まれ、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置31とを備えたものである。この荷重超過警報装置31は、スリット5から露呈する開口33a、33bと、この開口33a、33bを塞ぐ蓋体34、35とを有する中空体32であり、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が中空体32に対して予め定められた大きさ以下で作用しているときには蓋体34、35で開口33a、33bを塞いで中空体32を密封状態にし、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が中空体32に対して予め定められた大きさを超えて作用したときには中空体32が圧縮され、中空体32内で圧縮された空気によって蓋体34、35が開口33a、33bから外れるようにしている。
【0034】
図6及び図7に示すように中空体32は、両端に開口33a、33bを有する円筒33と蓋体34、35とから構成されている。円筒33は中空体32の本体部を成すものであり、その外周面33cがベルトスリング2の裏面2aに対向し且つ開口33a、33bがスリット5から露呈するようにスリット5に差し込まれて使用される(図8参照)。円筒33は、ベルトスリング2に作用している引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを検出する検出部として機能するものであって、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用したときに圧潰されるように構成されている。
【0035】
開口33a、33bは蓋体34、35によって塞がれている。蓋体34、35は、開口33a、33bの内径よりも大きい外径を有する円盤状のフランジ34a、35aと、このフランジ34a、35aの裏面に突設され、開口33a、33bに圧入可能な大きさに形成されている円柱状のコルク栓34b、35bとから構成されている。
【0036】
蓋体34、35間は円筒33内を通じて連結部材36によって連結されている。この連結部材36は例えば紐からなる。コルク栓34bにはその紐の一端が例えば接着剤によって固定されており、他端は円筒33の開口33aから円筒33内を介して開口33bから取り出され、コルク栓35bに例えば接着剤によって固定されている。紐の長さは円筒33の高さに対して十分に長いものである。したがって、蓋体34、35が開口33a、33bから外れたときには連結部材36によって開口33a、33bから吊り下げられた状態になる。なお、本実施形態では連結部材36として紐を例に挙げて説明しているが、紐に代えて例えばフィルム状部材や圧縮コイルばねなどで蓋体34と蓋体35とを連結するようにしても良く、蓋体34、35が開口33a、33bから外れたときに開口33a、33bから吊り下げられた状態になるようなもので連結されていれば良い。
【0037】
コルク栓34b、35bは連結部材36が中空体32内に収容されるように開口33a、33bに圧入される。これによって中空体32内は密封状態となる。図7及び図8に示すように、中空体32は円筒33の外周面33cがベルトスリング2の裏面2aに対向し且つ蓋体34、35がスリット5から露呈するようにスリット5に差し込まれ、スリット5内において円筒33の外周面33cとベルトスリング2の裏面2aの一部とは接着剤などの固定手段で固定される。つまり、中空体32とベルトスリング2とは一体化された状態になっている。
【0038】
コルク栓34b、35bは、ベルトスリング2に作用している荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が円筒33の外周面33cに対して予め定められた大きさ以下で作用しているとき、即ちベルトスリング2の耐荷重以下の引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向(図7中の破線矢印A方向)の圧力が円筒33の外周面33cに対して作用しているときには中空体32内を密封状態に保持する一方で、ベルトスリング2に作用している引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が円筒33の外周面33cに対して予め定められた大きさを超えて作用したとき、即ちベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が円筒33の外周面33cに対して作用したときには円筒33が圧潰され、中空体32内で圧縮された空気によって開口33a、33bから発砲されるように開口33a、33bに圧入されている。
【0039】
以上のように構成された荷重超過警報装置付きベルトスリング30を利用して吊り上げ作業を行うと、スリット5の閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると円筒33が圧縮される。即ち中空体32内の空気が圧縮される。そして、この圧縮空気によってコルク栓34b、35bが開口33a、33bから発砲される。このとき発砲音が発せられる。したがって、作業者は発砲音を聞くとともに蓋体34、35が開口33a、33bから外れたことを視認することによってスリット5の閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ちベルトスリング2に耐荷重を超える引っ張り荷重が加わっていることを容易に感知することができる。また、蓋体34、35が開口33a、33bから外れると、蓋体34、35が連結部材36によって開口33a、33bから吊り下げられた状態になるので、作業者は開口33a、33bから蓋体34、35が外れたことを見落とすことがなくなる。さらに、円筒33が圧潰されることによって蓋体34、35が開口33a、33bから外れても蓋体34、35間を連結している連結部材36によって開口33a、33bから外れた蓋体は円筒33から一定の範囲内までしか離れないので、蓋体34、35が散乱することを防止することができる。
【0040】
次に図9〜図11に本発明の荷重超過警報装置付きベルトスリングの第3の実施形態を示す。なお、本実施形態において第1及び第2の実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
本実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリング40は、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリット5が形成されたベルトスリング2と、スリット5に差し込まれ、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置41とを備えたものである。この荷重超過警報装置41は、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用することにより閉じ方向に弾性変形する弾性変形体42と、この弾性変形体42の内部に設けられており、弾性変形体42の弾性変形に伴って閉じ方向に移動する楔状部59、60と、圧力が弾性変形体42に対して閉じ方向に予め定められた大きさを超えて作用することによって楔状部59、60の閉じ方向の移動に伴って内部から外部に向けて突出する突出部材46、47とを備えている。
【0042】
弾性変形体42はスリット5に差し込まれ且つベルトスリング2に固定されて使用されるものであり、図9に示すように四角い板状のベース43と、このベース43の両端面において、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向(図9中の破線矢印A方向)に相対的にスライドするように取り付けられているスライド部材44、45と、スライド部材44、45が予め定められた位置までスライドするとベース43から突出する突出部材46、47と、スリット5を開く方向に向かってスライド部材44、45を弾性的に付勢する付勢部材48〜51とを備えている。
【0043】
ベース43の両端面には長手方向に沿って長溝52、53が形成されている。この長溝52、53にはスライド部材44、45の一部がスライド自在に挿入される。図9及び図10に示すようにベース43の表面には長溝52と長溝53との間で互いに背くように横断面T字状の長溝54、55が中央部から長溝52、53が形成されている端面以外の端面にかけて直線状に形成されている。長溝54、55には横断面略H状で長溝54、55の長さよりも僅かに短い突出部材46、47がスライド自在に挿入される。即ち、突出部材46、47の下部である横断面T字状の部分がスライド自在に挿入される。したがって、長溝54、55に挿入されていない突出部材46、47の残りの部分即ち突出部材46、47の上部である横断面I字状の部分がベース43の表面に突出した状態になる。ベース43の表面に突出している突出部材46、47の上部の基端は角がとれた形状になっている。
【0044】
図11に示すように、長溝54、55の内部において、ベース43と突出部材46との間、ベース43と突出部材47との間のそれぞれには引っ張りコイルばね56が配置されている。この引っ張りコイルばね56の基端は長溝54、55の奥壁に、先端は突出部材46、47の下部の基端に固定されている。これにより突出部材46、47は引っ張りコイルばね56の弾性的な付勢力によって長溝54、55内に引っ張り込まれた状態になる。
【0045】
スライド部材44、45は、ベルトスリング2の裏面2aの一部に接着剤などの固定手段で固定され且つベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときにその閉じ方向に沿ってベルトスリング2から圧力を受ける圧力受け部57、58と、互いの頂点がベース43側に向けられ且つ互いに斜向かいとなるように圧力受け部57、58に突設された楔状部59、60と、長溝52、53に対して対向するように圧力受け部57、58に突設され、長溝52、53に挿入される四角い板状の挿入部61、62とを備えている。
【0046】
長溝52、53の内部において、ベース43と挿入部61との間には付勢部材48、49が、ベース43と挿入部62との間には付勢部材50、51が配置されている。付勢部材48〜51は、金属製の薄板を略V形状に折り曲げて形成された板ばねからなる。付勢部材48、49の一端は挿入部61の先端に、他端は長溝52の奥壁に固定されている。付勢部材50、51の一端は挿入部62の先端に、他端は長溝53の奥壁に固定されている。そして、挿入部61の先端部はベース43との間に付勢部材48、49を介在させた状態で長溝52に、挿入部62の先端部はベース43との間に付勢部材50、51を介在させた状態で長溝53に挿入されている。したがって、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が圧力受け部57、58に作用すると、スライド部材44、45は付勢部材48〜51の弾性的な付勢力に抗してベース43に向かって徐々にスライドして行き、やがて楔状部59、60がベース43の表面に突出している突出部材46、47の上部の基端に接触する。そして、スライド部材44、45がベース43に向かって更にスライドして行くと、楔状部59、60の傾斜面59a、60aが突出部材46、47の上部の基端を押圧する。傾斜面59a、60aが突出部材46、47の上部の基端を押圧すると突出部材46、47が引っ張りコイルばね56の弾性的な付勢力に抗してベース43の内部から外部(図9中の破線矢印B方向)に向けて突出する。
【0047】
付勢部材48〜51の弾性力は、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力の大きさが予め定められた大きさに達したときに楔状部59、60が予め定められた位置にまで移動し、ベース43の表面に突出している突出部材46、47の上部の基端に接触するように設定されている。つまり、ここで述べる「予め定められた大きさ」とはベルトスリング2にその耐荷重で作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときのその閉じ方向の圧力の大きさのことを示し、「予め定められた位置」とは、傾斜面59a、60aがベース43の表面に突出している突出部材46、47の基端に接触する位置のことを示す。
【0048】
以上のように構成された荷重超過警報装置付きベルトスリング40を利用して吊り上げ作業を行うと、スリット5は弾性変形体42の弾性的な付勢力に抗して徐々に閉じられて行く。この閉じ方向の圧力によって弾性変形体42が弾性変形して行くとこの弾性変形に同期して楔状部59、60がスリット5の閉じ方向に移動して行く。やがて閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えると楔状部59、60の閉じ方向の移動に伴って傾斜面59a、60aが突出部材46、47をベース43の外へ押し出す。したがって、スリット5の閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを簡素な構造で検出することができる。また、作業者は弾性変形体42から突出した突出部材46、47を視認することによって閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ちベルトスリング2に耐荷重を超える引っ張り荷重が加わっていることを容易に感知することができる。
【0049】
次に図12に本発明の荷重超過警報装置付きベルトスリングの第4の実施形態を示す。なお、本実施形態において第1〜第3の実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
本実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリング70は、引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリット5が形成されたベルトスリング2と、スリット5に差し込まれ、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置71とを備えたものである。この荷重超過警報装置71は、液体72が封入された容器73と、液体72が浸透して発色する発色体75とを備え、ベルトスリング2に作用する引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに容器73の少なくとも一部が破損して、その破損した箇所から漏れ出た液体72が発色体75に浸透するようになっている。
【0051】
図12に示すように荷重超過警報装置71は、酸性の液体72が封入されている例えばビニール袋からなる容器73と、両端に開口74a、74bを有し且つ容器73を収容する円筒状の収容体74と、開口74a、74bを塞ぎ、液体72が浸透したときには発色するリトマス紙からなる発色体75とから構成されている。なお、本実施形態では容器73に酸性の液体72を封入する例を挙げて説明するが、容器73にはアルカリ性の液体を封入しても良い。この場合、発色体75としてアルカリ性の液体に反応するリトマス紙を使用すれば良い。この他にも容器73に封入する液体を着色水としても良い。この場合には、浸透性に富んだ紙であって且つ着色水が浸透したときにその色を目立たせることができるような紙を発色体75として使用すれば良い。例えば着色水が黒の場合には発色体75として用いる紙の色を白にすることが好ましい。
【0052】
容器73の一部は収容体74の内周面74cに接着剤で接着されている。また、収容体74に収容された容器73の表面において、開口74a、74bに対向している箇所には半円状の切り欠き73aが形成されている。したがって、その部分の肉厚だけは他の部分の肉厚に比べて薄くなっているため、容器73は圧縮されると切り欠き73aの部分から破裂することになる。
【0053】
荷重超過警報装置71は、収容体74の外周面74dがベルトスリング2の裏面2aに対向し且つ開口74a、74bがスリット5から露呈するようにスリット5に差し込まれて使用される。収容体74の外周面74dの一部とベルトスリング2の裏面2aとは接着剤などの固定手段によって固定されている。つまり、ベルトスリング2と荷重超過警報装置71とは一体化された状態になっている。
【0054】
収容体74は、ベルトスリング2に作用している引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたか否かを検出する検出部として機能するものである。つまり、収容体74は、ベルトスリング2に作用している引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が収容体74の外周面74dに対して予め定められた大きさ以下で作用しているとき、即ちベルトスリング2の耐荷重以下の引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向(図12中の破線矢印A方向)の圧力が収容体74の外周面74dに対して作用しているときには液体72が容器73に封入されている状態を保持する一方で、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用したときには圧潰され、これによって容器73を圧縮して切り欠き73aの部分から破裂させる。容器73が切り欠き73aの部分から破裂すると、そこから液体72が噴き出し、発色体に浸透する。
【0055】
以上のように構成された荷重超過警報装置付きベルトスリング70を利用して吊り上げ作業を行うと、収容体74はスリット5の閉じ方向の圧力によって圧縮される。やがて圧力が予め定められた大きさを超えると圧潰される。これに伴って容器73も圧縮され、切り欠き73aの部分から破裂する。そして、その破裂した箇所から噴き出た液体72が発色体75に浸透すると発色体75が色付く。作業者は発色体75が色付いたことを視認することによってスリット5の閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたこと即ちベルトスリング2に耐荷重を超える引っ張り荷重が加わっていることを容易に感知することができる。
【0056】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した第1の実施形態では、青色LED21の発光とスピーカー22からの警報音との双方によってベルトスリング2に掛かっている引っ張り荷重がベルトスリング2の耐荷重を超えたことを作業者に知らせるようにしたが、青色LED21とスピーカー22の少なくともいずれか一方を作動させれば良い。また、第1の実施形態では警報用の発光として青色LED21の発光を利用しているが、発光色は動作状態確認手段17のLEDの発光色と差別化することができれば適宜に変更可能である。
【0057】
また、第1の実施形態では、付勢部材8、9を板ばねを用いたが、板ばねの代わりに圧縮コイルばねを用いても良い。この場合、圧縮コイルばねの弾性変形に伴って移動する移動部材を設け、この移動部材で第1及び第2プッシュ式スイッチ11、12をオンすれば良い。
【0058】
また、第2の実施形態では、コルク栓34b、35bを開口33a、33bに圧入するようにしたが、凹凸の嵌合を利用して開口33a、33bを蓋体34、35で塞ぐようにしても良い。この場合、円筒33が圧潰されたときに中空体32内の圧縮空気によって凹凸の嵌合状態を解除して蓋体34、35を開口33a、33bから外すようにすれば良い。
【0059】
また、第2の実施形態では、中空体32を両端に開口33a、33bを有する円筒33と開口33a、33bを塞ぐ蓋体34、35とから構成したが、図13に示すように、中空体32の本体部である円筒33の代わりに両端が貫通されている四角柱体76を、蓋体34、35の代わりに四角柱体76の両端の開口を塞ぐ蓋体77、78を用いて中空体32を構成しても良い。また、円筒33の代わりに両端が貫通されている楕円体79を、蓋体34、35の代わりに楕円体79の両端の開口を塞ぐ蓋体80、81を用いて中空体32を構成しても良い。このように中空体32は、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用したときに圧潰される中空体32の本体部と、中空体32内の圧縮空気によって本体部の開口から外れる蓋体とから構成されていればその形態は適宜に変更可能である。
【0060】
また、第2の実施形態では、中空体32を両端に開口33a、33bを有する円筒33と開口33a、33bを塞ぐ蓋体34、35とから構成するとともに、蓋体34と蓋体35との間を連結部材36で連結するようにしたが、図15に示すように中空体32を有底の円筒82とこの円筒82の開口82aを塞ぐ蓋体83とから構成しても良い。この場合、蓋体83にコイル栓84を一体的に取り付け、このコイル栓84を開口82aに圧入することによって中空体32内を密封状態にする。また、コイル栓84と円筒82の内周面82bとを連結部材36で連結する。このように構成された中空体32はスリット5に差し込まれ、円筒82の外周面82cをベルトスリング2の裏面2aに接着剤などの固定手段で固定して使用される。したがって、円筒82は、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用したときに圧潰される。そして、この圧潰に伴ってコルク栓84が中空体32内で圧縮された空気によって開口82aから発砲される。このとき発砲音が発せられる。作業者は発砲音を聞くとともに蓋体83が開口82aから外れたことを視認することによって引っ張り荷重が耐荷重を超えたことを認識することができる。また、蓋体83が開口82aから外れると、蓋体83が連結部材36によって開口82aから吊り下げられた状態になるので、作業者は開口82aから蓋体83が外れたことを見落とすことがなくなる。さらに蓋体83が開口82aから外れても連結部材36によって開口82aから外れた蓋体83は円筒82から一定の範囲内までしか離れないので、蓋体83が散乱することを防止することができる。
【0061】
また、第3の実施形態では、楔状部59、60を利用して突出部材46、47をベース43の外へ押し出すようにしたが、楔状部59、60のうちのいずれか一方で突出部材46、47をベース43の外へ押し出すようにしても良い。この場合、楔状部59、60のいずれか一方における互いに背く2つの傾斜面で突出部材46、47の基端を押圧して突出部部材46、47をベース43の外へ押し出すようにすれば良い。
【0062】
また、第4の実施形態では、容器73を収容体74内に収容してからスリット5に差し込むようにしたが、容器73を収容体74に収容せずに、容器73をそのままスリット5に差し込むようにしても良い。この場合、容器73は、ベルトスリング2の耐荷重を超える引っ張り荷重がベルトスリング2に作用し、この引っ張り荷重に伴ってスリット5が閉じられたときの閉じ方向の圧力が作用したときに切り欠き73aから破裂するように構成されていれば良い。そして、切り欠き73aをスリットから露呈させ、そのスリットから露呈させた切り欠き73aを発色体75で被覆すれば良い。
【0063】
また、第1〜第4の実施形態では、荷重超過警報装置6、31、41、71をスリット5に差し込み、各荷重超過警報装置をベルトスリング2の裏面2aに接着剤などの固定手段で固定する例を挙げて説明したが、スリット5に差し込んだ荷重超過警報装置6、31、41、71のそれぞれをベルトスリング2の裏面2aに例えばマジックテープ(登録商標)などを用いて着脱自在に取り付けるようにしても良い。
【0064】
また、第1〜第4の実施形態では、ベルトスリング2を幅方向に貫通するようにスリット5を形成し、そのスリット5に荷重超過警報装置6、31、41、71を差し込み固定するようにしたが、ベルトスリング2を厚さ方向に貫通するようにスリット5を形成し、そのスリット5に荷重超過警報装置6、31、41、71を差し込み固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリングを示す分解斜視図である。
【図2】荷重超過警報装置付きベルトスリングにおける要部の構成を示す正面図である。
【図3】荷重超過警報装置本体の外観を示す斜視図である。
【図4】荷重超過警報装置本体の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】警報手段を作動させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおける中空体の外観を示す斜視図である。
【図7】中空体の構成を示す縦断面図である。
【図8】蓋体が開口から外れたときの態様を示す荷重超過警報装置付きベルトスリングの側面図である。
【図9】第3の実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリングにおける弾性変形体の構成を示す平面図である。
【図10】ベースの一部と突出部材の外観を示す斜視図である。
【図11】突出部材が引っ張りコイルばねによって長溝内に引っ張り込まれている態様を示す弾性変形体の一部の縦断面図である。
【図12】第4の実施形態の荷重超過警報装置付きベルトスリングおけるスリット部分の横断面図と荷重超過警報装置の縦断面図である。
【図13】第2の実施形態における中空体の別の形態を示す斜視図である。
【図14】第2の実施形態における中空体の別の形態を示す斜視図である。
【図15】第2の実施形態における中空体の別の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1、30、40、70 荷重超過警報装置付きベルトスリング
2 ベルトスリング
5 スリット
6、31、41、71 荷重超過警報装置
8、9 付勢部材
18 警報手段
32 中空体
33a、33b、82a 開口
34、35、77、78、80、81、83 蓋体
36 連結部材
42 弾性変形体
46、47 突出部材
59、60 楔状部
72 液体
73 容器
75 発色体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引っ張り荷重がかかる方向に沿ってスリットが形成されたベルトスリングと、前記スリットに差し込まれ、前記ベルトスリングに作用する前記引っ張り荷重に伴って前記スリットが閉じられたときの閉じ方向の圧力が予め定められた大きさを超えたときに警報を発する荷重超過警報装置とを備えたことを特徴とする荷重超過警報装置付きベルトスリング。
【請求項2】
前記荷重超過警報装置は、前記スリットを開く方向に向けて弾性的に付勢する付勢部材と、この付勢部材が予め定められた位置まで弾性変形したことを契機に警報音及び光の少なくともいずれか一方を発する警報手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリング。
【請求項3】
前記荷重超過警報装置は、前記スリットから露呈する開口と、この開口を塞ぐ蓋体とを有する中空体であり、前記圧力が前記中空体に対して前記予め定められた大きさ以下で作用しているときには前記蓋体で前記開口を塞いで前記中空体を密封状態にし、前記圧力が前記中空体に対して前記予め定められた大きさを超えて作用したときには前記中空体が圧縮され、前記中空体内で圧縮された空気によって前記蓋体が前記開口から外れることを特徴とする請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリング。
【請求項4】
前記中空体において前記開口を互いに背向く位置に1つずつ形成するとともに、前記開口のそれぞれを塞ぐ前記蓋体間を連結部材で連結し、前記蓋体が前記開口から外れたときに前記蓋体が前記連結部材によって前記開口から吊り下げられた状態になることを特徴とする請求項3記載の荷重超過警報装置付きベルトスリング。
【請求項5】
前記荷重超過警報装置は、前記圧力が作用することにより前記閉じ方向に弾性変形する弾性変形体と、この弾性変形体の内部に設けられており、前記弾性変形体の弾性変形に伴って前記閉じ方向に移動する楔状部と、前記圧力が前記弾性変形体に対して前記閉じ方向に前記予め定められた大きさを超えて作用することによって前記楔状部の前記閉じ方向の移動に伴って前記内部から外部に向けて突出する突出部材とを備えることを特徴とする請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリング。
【請求項6】
前記荷重超過警報装置は、液体が封入された容器と、前記液体が浸透して発色する発色体とを備え、前記圧力が前記予め定められた大きさを超えたときに前記容器の少なくとも一部が破損して、その破損した箇所から漏れ出た前記液体が前記発色体に浸透することを特徴とする請求項1記載の荷重超過警報装置付きベルトスリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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