説明

荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法及び荷電粒子ビーム装置

【課題】本発明は荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法及び荷電粒子ビーム装置に関し、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことを目的としている。
【解決手段】荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率とエミッタ先端電位変化量とを選択し、エミッタ先端の電位を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法及び荷電粒子ビーム装置に関し、更に詳しくは荷電粒子ビームを用いる荷電粒子ビーム装置において、レンズの軸ずれを自動的に補正するようにした荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法及び荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子を用いた試料表面観察装置における軸合わせの一例として、走査型電子顕微鏡(SEM)における軸合わせを例に、図面を元に説明する。図3は従来の走査型電子顕微鏡の構成例を示す図である。EBは電子ビームである。対物レンズ2によって試料面3上にフォーカスする電子ビームをスキャンコイル(図示せず)で試料面上に走査することにより、各点で発生した二次電子7を二次電子検出器8で検出して走査信号に同期してディスプレイ9に表示する。
【0003】
ウォブル器14を用いてエミッタ13の電位を変化させ、画像が動かなくなるように偏向器制御器10を手動で操作する、のが従来の軸合わせの方法である。簡単のために、対物レンズ2にビームが平行に入射している時で説明すると、以下の通りである。
【0004】
エミッタ13の電位を変化させた時に像が動くのは、5に示すように電子ビームが対物レンズ2の外側を通っている時である。エミッタ電位の変化に伴って焦点面位置が3から4へと変化した時に試料面位置3ではビームの位置がずれるためである。エミッタ電位を変化させる前のビーム位置をPとすると、エミッタ電位を変化させた後のビーム位置はP´となり、ビーム位置がずれる。このため、像が動くことになる。
【0005】
この時、電子ビームは対物レンズ2の外側を通っているために、対物レンズの収差の影響を強く受けて、電子ビームはぼける。一方、対物レンズの強度を変化させた時に像が動かないのは、6に示すように電子ビームEBが対物レンズ2の中心L1を通っている時であり、対物レンズ強度の変化に伴って焦点面位置が3から4に変化しても、対物レンズの中心を通っているビーム中心は直進するため、試料面位置3においては電子ビームEBの位置はずれない。この時、電子ビームEBが受ける対物レンズ2の収差の影響は最小限となり、最適な画像が得られる。
【0006】
しかしながら、ウォブルによって像が動いたとしても、偏向器1をどちらの方向にどれだけ動かせばいいのか分からないため、像が動かなくなる条件を探す作業は時間がかかる。そこで、軸合わせを自動的に行なう様々な技術が提案されている。例えば、ウォブル前後の画像データを複数の領域に分割し、分割された領域毎の移動量を求めることにより、ウォブル前後の画像間に平行移動成分だけでなく、回転や拡大縮小の成分があっても、回転や拡大縮小の中心位置を求めることができるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、画像メモリ上の座標での任意の対物レンズ電流(又は加速電圧)における画像データと、対物レンズ電流(又は加速電圧)を変化させた後の画像データとの差分を求め、座標と差分データとの関係を表す近似関数を求め、該近似関数が最小値をとる座標から常に正確な電流(電圧)中心を求めることにより照射レンズ系と結像レンズ系の軸合わせを行なうようにした技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−210261号公報(段落0015〜0023、図2〜図15)
【特許文献2】特開平4−192244号公報(第3頁左上欄第6行〜第4頁右下欄第4行、第1図〜第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1記載の発明では、画像データを複数の領域に分割しているため、移動量を求める相関演算において精度が不足しやすいという問題があった。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法及び荷電粒子ビーム装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1記載の発明は、荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率とエミッタ先端電位変化量とを選択し、エミッタ先端の電位を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、ことを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、前記エミッタ先端の電位を、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する、エミッタ先端の電位を変化させた後の荷電粒子ビーム走査像に対する像回転が2.5度以下となるように設定することを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率と対物レンズ励磁電流変化量とを選択し、対物レンズ励磁電流を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、対物レンズ励磁電流を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、ことを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、荷電粒子ビームの光学系を構成する何れかのレンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率と前記レンズの強度の変化量とを選択し、前記レンズの強度を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、前記レンズ強度を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から前記レンズの軸ずれ量を算出し、前記レンズ前方に置かれた偏向器に対して前記レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、ことを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、荷電粒子ビームを放出するエミッタと、該エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流を変化させる手段と、荷電粒子ビームを試料上で2次元走査するための走査手段と、荷電粒子ビームを試料上に集束させるための対物レンズと、該対物レンズを通る荷電粒子ビームの軸を調整するための偏向器と、を備え、エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流の変化の前後における画像から走査像の移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するように前記偏向器にフィードバックをかけることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の発明によれば、エミッタ先端の電位を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、エミッタ先端の電位を、像回転が2.5度以下となるように設定することで、画像移動量を十分によい精度で求めることができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、対物レンズ励磁電流を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、対物レンズ励磁電流を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(4)請求項4記載の発明によれば、レンズの強度を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、前記レンズ強度を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から前記レンズの軸ずれ量を算出し、前記レンズ前方に置かれた偏向器に対して前記レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流の変化の前後における画像から走査像の移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するように前記偏向器にフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の走査型電子顕微鏡の構成例を示す図である。図は電子ビームの一部をプローブとして試料に照射する走査型電子顕微鏡を示している。図3と同一のものは、同一の符号を付して示す。
【0012】
本発明装置は、電子ビームを放出するエミッタ13と、該エミッタ13の電位を変化させるためのウォブル器14と、対物レンズ2と、該対物レンズ2の前方に置かれた偏向器1と、前記対物レンズ2を制御する対物レンズ制御器11と、前記偏向器1を制御する偏向器制御器10と、試料3から放出された二次電子7を検出する二次電子検出器8と、該二次電子検出器8からの信号を画像として表示するディスプレイ9と、前記ウォブル器14に自動的に信号を出しながら、それと同期して前記二次電子検出器8からの画像信号を取得して、エミッタ電位変化時の画像の移動量を求め、対物レンズ2の中心に電子ビームを通すために必要な偏向量を求めて、前記偏向器制御器10に指示を出す自動軸合わせ装置12とが備えられている。
【0013】
レンズの軸ずれが像質の劣化に及ぼす効果としては対物レンズが最も大きいため、ここでは簡単のために対物レンズのみの軸がずれていて、その他のレンズの軸ずれはないものとして説明する。図1において、初め電子ビームEBは5に示すように対物レンズ2の外側を通っていて、自動軸合わせ装置12によって6のように対物レンズ2の中心を通るようになる過程を説明する。図において、L1が対物レンズの中心、L2が光軸である。
【0014】
以下の動作は主に自動軸合わせ装置12の動作である。自動軸合わせ装置12は、先ず二次電子検出器8からの信号を画像として記録する。この時の画像を以後画像1と呼ぶ。自動軸合わせ装置12はウォブル器14に指示を出し、エミッタ13の電位を僅かに変化させる。この変化に伴って焦点距離はfからf+Δfに変化する。自動軸合わせ装置12は、再びこの状態での二次電子検出器8からの信号を画像として記録する。この画像を以後画像2と呼ぶ。
【0015】
自動軸合わせ装置12は、画像1と画像2の移動量pを求める。ビーム中心L2の対物レンズ中心L1からのずれ量をxとおくと、図より
p=Δf・x/(f+Δf)
であることから、ずれ量xが求まる。次に、自動軸合わせ装置12は、偏向器制御器10に指示を出し、偏向器1と対物レンズ2との距離をlとして、偏向器1で角度x/lだけ電子ビームEBを曲げれば、電子ビームEBは6に示すように対物レンズ2の中心L1を通るようになる。
【0016】
ここで、前記移動量pの求め方について説明する。画像の移動量pを求めるには、公知の技術、相互相関法又は位相差限定相関法又はデコンボリーション法を用いればよい。前記画像1をg1、画像2をg2とおき、これらのフーリエ変換をそれぞれG1、G2とおく。相互相関法では
【0017】
【数1】

を求め、位相限定相関法では
【0018】
【数2】

を求め、デコンボリーション法では
【0019】
【数3】

を求めて、これらの逆フーリエ変換を求め、そのピーク位置の中心からのずれ量が画像1と画像2の移動量を表すというものである。ここで、−は複素共役を表し、||は複素数の絶対値を表す。
【0020】
また、逆フーリエ変換をとる前にガウス関数等でスムージングをしておくと元の画像に含まれるノイズに強くなる。また、実際に使われる画像は、有限の範囲(通常は長方形)で切り取られた画像であるため、この四辺で試料の構造が切り取られた影響を受け、画像の移動量を求める際に誤差を生む。
【0021】
公知の技術である、四辺をぼかす操作をすることにより、この誤差を軽減し、より正確に画像の移動量を測定することができる。ちなみに、位相限定相関法は相互相関法よりも急峻なピークが得られるため、ピーク位置の測定が容易であるという特徴がある。また、
|G1|=|G2|の時は、デコンボリーション法は位相相関限定法と等価な操作になる。
【0022】
画像の移動量を求めるこれらの方法では、画像が平行移動している時の移動量は求まるが、平行移動以外に、画像間に回転の成分も含まれている時にはうまく求まらない。しかしながら、回転の成分が十分小さい時は平行移動の成分のみを抽出することが可能である。以下、このことを説明する。
【0023】
図2は画像間に回転成分があるときのデコンボリーション法による平行移動成分の抽出を示す図である。(a)の画像を基準画像として、(b)には20ピクセルの平行移動成分と2.5度の回転成分がある。これらの画像間の移動量を求めるためにデコンボリーション法を用いると、(c)に示すように画像の中心から20ピクセル離れた位置に鋭いピークが得られ、移動量を十分によい精度で求めることができる。(c)において、Cは中心、pは移動量である。
【0024】
(a)を基準画像として、(d)には20ピクセルの平行移動成分と5度の回転成分がある。これらの画像間の移動量を求めるためにデコンボリーション法を用いると、(e)に示すように、画像の中心から20ピクセル離れた位置にピークが観測されるものの、ピーク位置から離れたところのノイズが大きくなっており、精度よく移動量を求めることが困難になってくる。
【0025】
これらの結果から、画像間に回転成分があったとしても、2.5度以下であれば、デコンボリーション法を用いて平行成分のみを抽出することが可能であることが分かる。
対物レンズとして磁界型あるいは電磁界重畳型のレンズを用いることが多いが、その際の磁界による回転の影響で、ウォブルの前後の画像間には回転の成分が入ってしまう。しかしなから、上記の結果から、画像間の回転成分が2.5度以下になるようにウォブル量を調節すれば、デコンボリーション法によって平行移動成分のみを抽出することができるる。
【0026】
以下、ウォブル量と観察倍率をどう選択すればよいかについて説明する。エミッタの電位の変化量を加速電圧で規格化してκとおく。図1での焦点距離の変化量Δfは、対物レンズの色収差係数をCCとおいて、
Δf=CCκ (1)
と表すことができる。図1に示すように、対物レンズ2の軸L1が光軸L2に対してxだけずれている時は、ウォブル前後の画像間の移動量はΔfを微小量とみなして、
C・κ・x/f (2)
と表せる。(2)式の移動量が、画像において、1ピクセル以上の移動として認識できるような観察倍率を選択すればよい。
【0027】
画像の1ピクセルの大きさは、観察倍率をM、写真サイズをh、画像の画素数をnとおけば
h/M・n (3)
であるので、ウォブル量は、(2)>(3)より
κ>h・f/M・n・CC・x (4)
であればよい。一方、対物レンズ2の回転色収差係数をCθとおくと、ウォブル量κでの画像の回転がθ=2.5度以下であれば、回転の影響は無視できるので、
Cθ・κ<θ (5)
となるようにウォブル量を調整すればよい。(4)式と(5)式より
h・f/M・n・CC・x<κ<θ/Cθ (6)
の範囲にウォブル量があればよいことになる。(6)式の最左辺と最右辺の比較から、観察倍率が
M>h・f・Cθ/n・CC・x・θ (7)
であれば、(6)式を満たすウォブル量が存在する。
【0028】
具体例として、半値半幅2mmのBell Shape型磁場分布を仮定し、平行ビームをこの磁場分布の中心にフォーカスさせる場合を考えると、f=2mm、Cθ=78度、CC=1.2mmである。また、集束半角10mradとすると、1μmの軸ずれで生じるコマ収差によるぼけが0.03nmであるので、1μmの軸ずれまで認識できれば十分であるとしてx=1μmとおく。また、l=120mm、n=1280ピクセルとすると、(7)式から4900倍以上の観察倍率を選べば(6)式を満たすようなウォブル量が存在することが分かる。
【0029】
以上、説明したように、(7)式の条件を満たす観察倍率を選び、(6)式の条件を満たすウォブル量を選ぶことにより、最適な条件で軸ずれ量xを求めることができる。
前述の実施の形態では、対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率とエミッタ先端電位変化量を選択し、エミッタ先端電位を変化させる場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限るものではなく、対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率と対物レンズ励磁電流変化量とを選択して、対物レンズ励磁電流を変化させる場合についても同様に適用することができる。
【0030】
また、上述の実施の形態では、対物レンズの軸ずれを補正する場合について説明したが、荷電粒子ビーム光学系を構成する何れかのレンズの軸ずれを補正する場合についても同様に適用することができる。
【0031】
また、前述の実施の形態では、荷電粒子ビームとして電子ビームを用いた場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限るものではなく、他の種類の荷電粒子ビームを用いる場合についても同様に適用することができる。
【0032】
本発明の効果を列挙すれば、以下の通りである。
(1)エミッタ先端の電位を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(2)エミッタ先端の電位を、像回転が2.5度以下となるように設定することで、画像移動量を十分によい精度で求めることができる。
(3)対物レンズ励磁電流を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、対物レンズ励磁電流を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(4)レンズの強度を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、前記レンズ強度を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、算出された移動量から前記レンズの軸ずれ量を算出し、前記レンズ前方に置かれた偏向器に対して前記レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
(5)エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流の変化の前後における画像から走査像の移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するように前記偏向器にフィードバックをかけることにより、画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
【0033】
このように、本発明によれば、軸合わせの手順を自動化したので、高速かつ正確に軸合わせを行なうことができるようになったため、誰でも手軽に高分解能の像が観察できるようになる。また、適切な観察倍率とエミッタ電位変化量を自動的に選択するため、磁界型対物レンズによる回転の影響を無視できる条件で、対物レンズの軸ずれ量のみを検出することができる。従って、本発明によれば画像データの分割をせずに高精度な軸合わせを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の走査型電子顕微鏡の構成例を示す図である。
【図2】画像間に回転成分があるときのデコンボリーション法による平行移動成分の抽出を示す図である。
【図3】従来の走査型電子顕微鏡の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 偏向器
2 対物レンズ
3 試料面
4 エミッタ電位変化後の焦点面
5 対物レンズの外側を通る電子ビーム
6 対物レンズの中心を通る電子ビーム
7 二次電子
8 二次電子検出器
9 ディスプレイ
10 偏向器制御器
11 対物レンズ制御器
12 自動軸合わせ装置
13 エミッタ
14 ウォブル器
EB 電子ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、
対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率とエミッタ先端電位変化量とを選択し、
エミッタ先端の電位を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、
算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、
対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法。
【請求項2】
前記エミッタ先端の電位を、エミッタ先端の電位を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する、エミッタ先端の電位を変化させた後の荷電粒子ビーム走査像に対する像回転が2.5度以下となるように設定することを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法。
【請求項3】
荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、
対物レンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率と対物レンズ励磁電流変化量とを選択し、
対物レンズ励磁電流を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、対物レンズ励磁電流を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、
算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、
対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法。
【請求項4】
荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、
荷電粒子ビームの光学系を構成する何れかのレンズの軸ずれを補正するために適切な観察倍率と前記レンズの強度の変化量とを選択し、
前記レンズの強度を変化させた時の荷電粒子ビーム走査像の、前記レンズ強度を変化させる前の荷電粒子ビーム走査像に対する移動量を算出し、
算出された移動量から前記レンズの軸ずれ量を算出し、
前記レンズ前方に置かれた偏向器に対して前記レンズの軸ずれを補正するようにフィードバックをかける、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置の自動軸合わせ方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームの一部をプローブとして試料に照射する荷電粒子ビーム装置において、
荷電粒子ビームを放出するエミッタと、
該エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流を変化させる手段と、
荷電粒子ビームを試料上で2次元走査するための走査手段と、
荷電粒子ビームを試料上に集束させるための対物レンズと、
該対物レンズを通る荷電粒子ビームの軸を調整するための偏向器と、
を備え、
エミッタの電位又は対物レンズ励磁電流の変化の前後における画像から走査像の移動量を算出し、算出された移動量から対物レンズの軸ずれ量を算出し、対物レンズ前方に置かれた偏向器に対して対物レンズの軸ずれを補正するように前記偏向器にフィードバックをかけることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−181778(P2008−181778A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14743(P2007−14743)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】