説明

荷電粒子ビーム装置

【課題】1台の装置で二次電子放出像及び透過電子像の双方の像の取得を行うことができる荷電粒子ビーム装置を提供する。
【解決手段】試料保持手段5に保持された試料6の表面に集束レンズ2を介して荷電粒子ビーム8が照射され、これにより試料6の裏面側から発生した二次電子9が加速電極7によって下流側に加速され、該加速された二次電子9が対物レンズ3及び結像レンズ4を介して検出手段10に到達し、これにより検出手段10上で結像された二次電子放出像の検出を行うことができるとともに、対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件を切り替えることによって、試料6からの透過電子を検出手段10上に結像させ、これによる試料6の透過電子像の検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム等の荷電粒子ビームの照射により試料から発生する二次電子によって結像される像(二次電子放出像)の取得を行う荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム等の荷電粒子ビームを用いて試料の検査を行う装置として、二次電子放出顕微鏡(SEEM:Secondary Electron Emission Microscope)がある。
【0003】
このような二次電子放出顕微鏡の構成の一例を図4に示す。同図において、二次電子放出顕微鏡100は、試料6への入射ビームとなる電子ビーム8を放出する電子ビーム源1と、電子ビーム8を集束するための少なくとも1段の集束レンズ2と、電子ビーム8を試料6の方向に偏向させるとともに試料6から発生した二次電子35を電子検出器34の方向に偏向させる磁場プリズム31と、試料6と対向して位置する対物レンズ32と、磁場プリズム31により偏向された二次電子35を電子検出器34上で結像させるための少なくとも1段の結像レンズ33とを備えている。
【0004】
電子ビーム源1から放出された電子ビーム8は、集束レンズ2によって集束されて磁場プリズム31に入射する。磁場プリズム31に入射した電子ビーム8は、試料6が位置する方向に偏向されて、対物レンズ32に入射する。対物レンズ32に入射した電子ビーム8は、対物レンズ32によって集束されて試料6に照射される。
【0005】
このようにして試料6に入射した電子ビーム8は、試料6内で散乱される。この散乱により試料6から放出された二次電子35は、対物レンズ32により集束されて磁場プリズム31に入射する。磁場プリズム31に入射した二次電子35は、磁場プリズム31によって電子検出器34の位置する方向に偏向され、結像レンズ33に入射する。結像レンズ33に入射した二次電子35は、結像レンズ33の集束作用によって、電子検出器34の検出面に結像される。この結果、電子ビーム8の入射に基づいて試料6から発生した二次電子35により結像された像(二次電子放出像)を取得することができる。
【0006】
このような構成からなる二次電子放出顕微鏡は、特許文献1にも開示されている。また、特許文献2には、二次電子放出顕微鏡の機能を備える化学分析用複合放出電子顕微鏡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−522054号公報
【特許文献2】特開2000−215841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
試料分析においては、同一の試料について、二次電子放出顕微鏡による二次電子放出像の取得と、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による透過電子像の取得とを行うことがある。
【0009】
この場合、双方の像を取得するためには、二次電子放出顕微鏡と透過電子顕微鏡とをそれぞれ用意する必要があり、高価な装置を2台用意しなければならず、高額な費用が発生してコストアップが生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、1台の装置で二次電子放出像及び透過電子像の双方の像の取得を行うことができる荷電粒子ビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム源と、荷電粒子ビーム源から放出された荷電粒子ビームを平行ビームにするための集束レンズと、集束レンズの下流側に配置された試料保持手段と、試料保持手段の下流側に配置された加速電極と、加速電極の下流側に配置された対物レンズと、対物レンズの下流側に配置された結像レンズと、結像レンズの下流側に配置された検出手段とを備えた荷電粒子ビーム装置であって、試料保持手段に保持された試料の表面に集束レンズを介して荷電粒子ビームが照射され、これにより試料の裏面側から発生した二次電子が加速電極によって下流側に加速され、該加速された二次電子が対物レンズ及び結像レンズを介して検出手段に到達し、これにより検出手段上で結像された二次電子放出像の検出を行うことができるとともに、対物レンズ及び結像レンズの励磁条件を切り替えることによって、試料からの透過電子を検出手段上に結像させ、これによる試料の透過電子像の検出を行うことができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明における荷電粒子ビーム装置においては、試料の下流側に位置する対物レンズ及び結像レンズの励磁条件を切り替えることにより、1台の装置で二次電子放出像と透過電子像の双方の像の取得を行うことができる。
【0013】
これにより、同一の試料おける二次電子放出像及び透過電子像を取得する際に、1台の装置の使用で済むこととなり、コストアップの発生を防ぐことができる。
【0014】
さらに、本装置においては、像取得の切換の際に、試料を装置内の真空雰囲気から取り出して別の装置に移送することなくこれらの像の取得ができるので、試料の取出しに起因する試料の汚染や変質が起きない。よって、観察者は、これら二種の像の観察及び対比を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例における荷電粒子ビーム装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施例における荷電粒子ビーム装置の要部を示す図である。
【図3】本発明の第3実施例における荷電粒子ビーム装置の要部を示す図である。
【図4】従来技術における装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1実施例における荷電粒子ビーム装置の構成を示す図である。
【0017】
電子銃(荷電粒子ビーム源)1から放出された電子ビーム(荷電粒子ビーム)8は、その下流側にある集束レンズ2の励磁作用によって平行ビームとされ、試料6の表面に照射(入射)される。試料6は、試料保持手段5に保持されている。試料保持手段5において、試料6が載置される部分には、試料6の裏面側から出てくる二次電子又は透過電子が通過するための孔(図示せず)が形成されている。
【0018】
試料6への電子ビーム8の入射により、試料6内において電子の散乱が生る。この散乱により試料6の裏面側から発生した二次電子9は、試料保持手段5の下流側に配置された加速電極7により下流側に加速される。この結果、二次電子9は、試料保持手段5の上記孔を通過し、さらに加速電極7の開口7aを通過する。
【0019】
加速電極7の下流側には、対物レンズ3、結像レンズ4及び電子検出器10がこの順序で配置されている。加速電極7の開口7aを通過した二次電子9は、対物レンズ3及び結像レンズ4を通過し、電子検出器10の検出面に到達する。このとき、対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件を設定することにより、試料6からの二次電子9が電子検出器10の検出面に結像される。
【0020】
ここで、電子銃1、集束レンズ2、試料保持手段5、加速電極7、対物レンズ3及び結像レンズ4は、本装置の鏡筒部に設置されている。該鏡筒部内において、電子銃1からの電子ビーム8及び試料6からの二次電子9(さらに、透過電子)が通過する空間は、真空雰囲気とされる。
【0021】
電子銃1、集束レンズ2、対物レンズ3及び結像レンズ4は、それぞれ対応する駆動部1a〜4aによって駆動される。また、試料保持手段5には、電源部5aが接続されている。試料保持手段5に保持された試料6には、試料保持手段5を介して、電源部5aにより所定の電圧(電位)が印加される。なお、集束レンズ2、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び電子検出器10は、グランド電位となっている。
【0022】
各駆動部1a〜4a及び電源部5aは、バスライン12を介して、CPU13によって個別に制御される。各駆動部1a〜4a及び電源部5aを制御する条件については、本発明において適用される主要な制御条件がメモリ14に格納されている。
【0023】
電子検出器10には、画像処理部11が接続されている。画像処理部11は、電子検出器10からの出力に基づく画像データを作成する。ここで、電子検出器10は、MCP等からなる二次元情報を取得できる電子検出器となっている。画像処理部11で作成された画像データは、バスライン12を介して、図示しない画像メモリに送られて格納される。
【0024】
該画像メモリに格納された画像データは、CPU13によって読み出され、バスライン12を介して表示部15に送られる。表示部15は、送られた画像データに基づく画像の表示を行う。
【0025】
なお、バスライン12には、入力部16が接続されている。入力部16は、マウス等のポインティングデバイス及びキーボード等のキーデバイスを備えている。本装置の操作を行うオペレータは、入力部16の操作を行うことにより、試料6の観察モードの選択や観察条件の設定・選択等を行うことができる。
【0026】
以上が、本装置の構成である。次に、本装置の動作について説明する。
【0027】
図1に示されたように、試料保持手段5に載置された試料6の二次電子放出像の取得を行う際には、所定の加速電圧で加速された電子ビーム8が電子銃1から放出され、集束レンズ2を介して該電子ビーム8が試料6の表面に照射される。このとき、試料6に入射する電子ビーム8は、集束レンズ2による集束作用によって平行ビームとなっている。電子銃1及び集束レンズ2の動作は、それぞれ対応する駆動部1a,2aを介して、CPU13により駆動制御される。
【0028】
試料6には、試料保持手段5を介して、電源部5aにより所定の負電位が印加されている。ここで、試料6に印加される負電位の絶対値(グランド電位に対する電位差の絶対値)をEsとすると、該電位Esは、試料6の下流側に位置する電子検出器10によって検出可能となる電子の加速電圧と同等もしくはそれ以上の値に設定される。すなわち、電子ビーム8の入射に応じて試料6の裏面側から発生する二次電子9が、グランド電位である加速電極7と試料6との電位差Esによって加速されて電子検出器10に到達するからである。
【0029】
また、電子銃1から放出される電子ビーム8の加速電圧(絶対値)をEb、試料6へ入射する電子ビーム8の試料6中における進入深さと試料6の厚さ(試料6における表面から裏面に至るまでの距離)とが一致する電子ビームエネルギーに対応する電圧(絶対値)をEsdとすると、Eb−Es≒Esd(「Eb−Es」がEsdとほぼ同じ)もしくはEb−Es>Esd(「Eb−Es」がEsdよりも大きい)となるように設定する。
【0030】
すなわち、加速電圧Ebによって加速されて試料6の表面に到達する電子ビーム8は、試料6への印加電位(絶対値:Es)によって減速され、試料表面への入射時には「Eb−Es」の加速電圧となる。
【0031】
従って、各電圧(電位)が上記条件を満たす状態となっていれば、当該減速後の加速電圧(「Eb−Es」)となった電子ビーム8は、試料6の表面に入射した後、試料6中で散乱していき、試料6の裏面側でも確実に散乱電子を発生させる。この散乱電子のうちで、仕事関数分のエネルギーを失って試料6の裏面側から発生した二次電子9が二次電子放出像の検出時における検出対象となる。
【0032】
このように電子ビーム8の入射に応じて試料6の裏面側から発生した二次電子9は、上記負電位が印加されている試料6とグランド電位とされた加速電極7との電位差によって加速される。
【0033】
すなわち、二次電子9は、試料6と加速電極7との間における等電位線に対して直交する方向に加速される。このようにして加速された二次電子9は、試料裏面側に位置する試料保持手段5の孔を通過し、下流側に配置されている加速電極7の方へ加速される。
【0034】
そして、該二次電子9は、加速電極7の開口7aを通過し、その下流側にある対物レンズ3及び結像レンズ4を通過して電子検出器10の検出面に到達する。該二次電子9による二次電子放射像の検出時(二次電子放出像の観察モード時)においては、対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件は、CPU13によって、二次電子9が電子検出器10の検出面で結像されるように駆動制御されている。
【0035】
すなわち、試料6からの二次電子9は、静電レンズとしての機能を有する加速電極7と対物レンズ3によって、一旦結像レンズ4の手前で集束し、その後、結像レンズ4によって電子検出器10の検出面に結像される。この結果、当該検出面には、二次電子9に基づく像(二次電子放出像)が結像される。
【0036】
電子検出器10は、該像を二次元での輝度情報として検出し、これに基づく輝度データを画像処理部11に出力する。画像処理部11は、該輝度データに基づき画像データを作成する。該画像データは、画像処理部11からバスライン12を介して画像メモリ(図示せず)に送られて格納される。
【0037】
画像メモリに格納された画像データは、CPU13によって読み出され、バスライン12を介して表示部15に送られる。表示部15は、該画像データに基づく画像の表示を行う。本装置のオペレータは、表示部15に表示された画像(二次電子放出像)を目視にて確認することにより、試料6についての二次電子放出像の観察を行うことができる。
【0038】
なお、各駆動条件等のデータは、メモリ14に記憶されている。CPU13は、適用される各駆動条件をメモリ14から読み出して、各駆動部1a〜4a及び電源部5aの制御を行う。
【0039】
以上が、本装置における試料の二次電子放出像の検出時における動作である。次に、本装置における試料の透過電子像の検出時における動作について説明する。
【0040】
上述の動作により、試料6の二次電子放出像の観察を行った後、オペレータは入力部16の操作を実行し、透過電子像の観察モードへの切換を行う。当該切換の指令信号は、入力部16からバスライン12を介してCPU13に送られる。
【0041】
CPU13は、当該切換指令に基づき、対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件の変更を行う。すなわち、CPU13は、メモリ14に記憶されている透過電子像検出時における対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件(このときの電子ビーム8の試料6への照射条件等に対応する透過電子像検出時での対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件)を読み出して、該励磁条件に基づき対物レンズ3及び結像レンズ4の駆動制御を行う。また、CPU13は、試料6への印加電位をグランド電位に変更する。このとき、電子銃8及び集束レンズ2の駆動条件を変える必要はない。
【0042】
これにより、電子検出器10の検出面には、電子ビーム8の照射に応じて試料6を透過した透過電子が結像される。この結果、当該検出面には、該透過電子に基づく像(透過電子像)が結像される。
【0043】
電子検出器10は、上記と同様に、該像を二次元での輝度情報として検出し、これに基づく輝度データを画像処理部11に出力する。画像処理部11は、該輝度データに基づき画像データを作成する。該画像データは、画像処理部11からバスライン12を介して画像メモリ(図示せず)に送られて格納される。
【0044】
画像メモリに格納された画像データは、CPU13によって読み出され、バスライン12を介して表示部15に送られる。表示部15は、該画像データに基づく画像の表示を行う。本装置のオペレータは、表示部15に表示された画像(透過電子像)を目視にて確認することにより、試料6についての透過電子像の観察を行うことができる。
【0045】
なお、当該画像メモリに格納されている二次電子放出像の画像データと透過電子像の画像データの双方をCPU13が読み出して、表示部15によりこれらの像を並べて表示するようにすることもできる。オペレータは、これらの像の観察・比較を容易に行うことができる。
【0046】
以上が、本発明における第1実施例の説明である。次に、本発明における第2実施例について説明する。
【0047】
図2は、本発明の第2実施例における荷電粒子ビーム装置の要部を示す図である。同図に示す荷電粒子ビームでは、図1に示す構成に加えて、集束レンズ2と試料保持手段5との間に偏向器21が備えられ、この偏向器21を駆動するための駆動部21aが設けられている。偏向器21は、バスライン12(図1参照)に接続されており、バスライン12を介してCPU13(図1参照)により駆動制御される。偏向器21は、電子銃1から試料6までの電子ビーム8の照射系の軸合せを行うために設置されている。
【0048】
この第2実施例では、試料6の二次電子放出像の検出時においては、集束レンズ2を通過した電子ビーム8を、偏向器21の偏向作用により、光軸20に対して斜め方向となるように試料6に入射させる。図中の8aは、当該偏向後の電子ビームを示している。試料6には、第1実施例と同様に、所定の負電位が印加されている。
【0049】
このような構成・動作によれば、偏向後の電子ビーム8aは、試料6の表面に対して斜めに入射し、これにより試料6の裏面側から発生した二次電子9は、上述と同様に下流側に加速されて電子検出器10の検出面上に結像される。
【0050】
この二次電子放出像の取得時において、試料6の裏面側から出てくる透過電子は、光軸20に対して斜め方向に進むこととなる。この透過電子は、二次電子9に比べて運動エネルギーが高いので、試料6と加速電極7との間の等電位線に対して直交する方向に進まずに、下流側の結像系の軸から外れていくこととなる。
【0051】
従って、試料6からの透過電子が電子検出器10の検出面に到達することを確実に防ぐことができ、より良好な二次電子放出像を取得することができる。
【0052】
なお、この第2実施例において、試料6の透過電子像を取得する際には、偏向器21による偏向条件を変えて、集束レンズ2から試料6に向かう電子ビーム8の進行方向を上記光軸20に合せるようにする。そして、第1実施例と同様の動作によって、透過電子像を取得することができる。
【0053】
さらに、図3を参照して、本発明における第3実施例について説明する。図3は、本発明の第3実施例における荷電粒子ビーム装置の要部を示す図である。同図に示す荷電粒子ビーム装置では、図1に示す構成に加えて、対物レンズ3と結像レンズ4との間にエネルギーアナライザ22が備えられ、このエネルギーアナライザ22を駆動するための駆動部22aが設けられている。駆動部22aは、上記と同様にバスライン12(図1参照)に接続されており、バスライン12を介してCPU13(図1参照)により駆動制御される。
【0054】
このような構成によれば、第1実施例と同様に、試料6に所定の負電位を印加した状態で二次電子放出像の取得を行う際に、試料6からの二次電子9は、対物レンズ3を通過後、エネルギーアナライザ22に入射する。
【0055】
該エネルギーアナライザ22では、入射した二次電子9の中で特定のエネルギーを有する二次電子を選択して、該選択された二次電子9aのみが結像レンズ4を介して電子検出器の検出面に到達して結像される。
【0056】
これによれば、選択された特定のエネルギーを有する二次電子9aのみに基づく二次電子放出像の取得を行うことができる。なお、該選択された二次電子9aの量が少ない場合には、電子検出器10からの出力信号を増幅するとともに、電子検出器10の検出面上での露光時間(二次電子9aに晒される時間)を長く設定するようにしてもよい。
【0057】
なお、このような構成によれば、透過電子像の取得時においても、透過電子を対象に別途設定された特定のエネルギーを有する透過電子に基づく透過電子像の取得を行うことも可能となる。
【0058】
以上、第1実施例から第3実施例について説明した。さらに、これら各実施例における変形例について、以下に説明する。
【0059】
上記各実施例では、二次電子放出像の取得時において、試料6には試料保持手段5を介して負電位が印加され、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び電子検出器10はグランド電位となっていた。
【0060】
これに対して、変形例として、二次電子放出像の取得時において、試料6を試料保持手段5を介してグランド電位とし、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び電子検出器10を所定の正電位とすることも考えられる。この場合には、グランド電位の試料6の裏面側から発生した二次電子9は、正電位の加速電極7によって下流側に加速されて、電子検出器10の検出面に到達して結像することとなる。
【0061】
また、この変形例において、透過電子像の取得時には、試料6には、試料保持手段5を介して当該正電位が印加されることとなる。
【0062】
当該変形例を達成すためには、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び電子検出器10に対する電圧印加手段を設置する必要がある。該電圧印加手段は、CPU13によって制御されることとなる。
【0063】
なお、上記各実施例及び変形例において、電子検出器10の検出面として、蛍光板を用いることも可能である。
【0064】
以上詳述したように、本発明における荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム源1と、荷電粒子ビーム源1から放出された荷電粒子ビーム8を平行ビームにするための集束レンズ2と、集束レンズ2の下流側に配置された試料保持手段5と、試料保持手段5の下流側に配置された加速電極7と、加速電極7の下流側に配置された対物レンズ3と、対物レンズ3の下流側に配置された結像レンズ4と、結像レンズ4の下流側に配置された検出手段10とを備え、試料保持手段5に保持された試料6の表面に集束レンズ2を介して荷電粒子ビーム8が照射され、これにより試料6の裏面側から発生した二次電子9が加速電極7によって下流側に加速され、該加速された二次電子9が対物レンズ3及び結像レンズ4を介して検出手段10に到達し、これにより検出手段10上で結像された二次電子放出像の検出を行うことができるとともに、対物レンズ3及び結像レンズ4の励磁条件を切り替えることによって、試料6からの透過電子を検出手段10上に結像させ、これによる試料6の透過電子像の検出を行うことができる。
【0065】
上記構成において、二次電子放出像の検出時に、試料6には試料保持手段5を介して負電位が印加され、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び検出手段10はグランド電位とすることができる(この場合、透過電子像の検出時においては、上述したように試料6はグランド電位とされることが望ましいが、当該負電位のままでも透過電子像の検出を行うことは可能である)。
【0066】
また一方、上記構成において、二次電子放出像の検出時に、試料6は試料保持手段5を介してグランド電位となっており、加速電極7、対物レンズ3、結像レンズ4及び検出手段10には正電位が印加されるようにすることもできる(この場合、透過電子像の検出時においては、上述したように試料6は当該正電位とされることが望ましいが、グランド電位のままでも透過電子像の検出を行うことは可能である)。
【0067】
さらに、集束レンズ2と試料保持手段5との間に偏向器21を配置し、二次電子放出像の検出時には、偏向器21による偏向作用によって、集束レンズ2を通過した荷電粒子ビーム8を、光軸20に対して斜め方向となるように試料6に入射させることもできる。
【0068】
そして、対物レンズ3と結像レンズ4との間にエネルギーアナライザ22を配置し、対物レンズ3を通過した試料6からの二次電子又は透過電子の中で特定のエネルギーを有する電子がエネルギーアナライザ22によって選択され、これにより選択された電子が結像レンズ4を介して検出手段10に到達して結像するようにすることもできる。
【0069】
本発明においては、上記の構成により、オペレータは1台の装置を用いて、試料の二次電子放出像及び透過電子像の二種類を取得し、同一装置で観察・比較ができるので、高価な装置を2台用意する必要がなく、高額な費用の発生を抑えることができる。
【0070】
また、一方の像の取得から他方の像の取得へと切り替える際に、試料を真空から取り出す必要がないので、試料の汚染や変質が生じる心配が少ない。
【符号の説明】
【0071】
1…電子銃(荷電粒子ビーム源)、2…集束レンズ、3…対物レンズ、4…結像レンズ、5…試料保持手段、6…試料、7…加速電極、8…電子ビーム(荷電粒子ビーム)、9…二次電子、10…電子検出器(検出器)、11…画像処理部、12…バスライン、13…CPU、14…メモリ、15…表示部、16…入力、21…偏向器、22…エネルギーアナライザ、1a〜4a…駆動部、5a…電源部、21a〜22a…駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム源と、荷電粒子ビーム源から放出された荷電粒子ビームを平行ビームにするための集束レンズと、集束レンズの下流側に配置された試料保持手段と、試料保持手段の下流側に配置された加速電極と、加速電極の下流側に配置された対物レンズと、対物レンズの下流側に配置された結像レンズと、結像レンズの下流側に配置された検出手段とを備えた荷電粒子ビーム装置であって、試料保持手段に保持された試料の表面に集束レンズを介して荷電粒子ビームが照射され、これにより試料の裏面側から発生した二次電子が加速電極によって下流側に加速され、該加速された二次電子が対物レンズ及び結像レンズを介して検出手段に到達し、これにより検出手段上で結像された二次電子放出像の検出を行うことができるとともに、対物レンズ及び結像レンズの励磁条件を切り替えることによって、試料からの透過電子を検出手段上に結像させ、これによる試料の透過電子像の検出を行うことができることを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
二次電子放出像の検出時において、試料には試料保持手段を介して負電位が印加され、加速電極、対物レンズ、結像レンズ及び検出手段はグランド電位となっていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
透過電子像の検出時において、試料はグランド電位となっていることを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
二次電子放出像の検出時において、試料は試料保持手段を介してグランド電位となっており、加速電極、対物レンズ、結像レンズ及び検出手段には正電位が印加されていることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
透過電子像の検出時において、試料は当該正電位となっていることを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
集束レンズと試料保持手段との間には偏向器が配置されており、二次電子放出像の検出時には、偏向器による偏向作用によって、集束レンズを通過した荷電粒子ビームを、光軸に対して斜め方向となるように試料に入射させることを特徴とする請求項1乃至5何れか記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
対物レンズと結像レンズとの間にはエネルギーアナライザが配置されており、対物レンズを通過した試料からの二次電子又は透過電子の中で特定のエネルギーを有する電子がエネルギーアナライザによって選択され、これにより選択された電子が結像レンズを介して検出手段に到達して結像することを特徴とする請求項1乃至6何れか記載の荷電粒子ビーム装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−3977(P2012−3977A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138352(P2010−138352)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】