説明

荷電粒子測定装置および荷電粒子エネルギー校正方法

【課題】波高値(α線計測部3のパルス波高分析器3eの出力)とα線のエネルギーとの対応関係を自動的に算出できるようにすることにより、α線測定装置のエネルギー校正を自動化することで、人的労力を軽減させることを目的とする。
【解決手段】α線測定装置1内の計測容器10内の真空度と、α線が半導体検出器12に入射するまでに損失するエネルギーとの対応関係は、計算によって導出できることにより、予め、制御ユニット6に格納する。更に、排気装置4の計測容器10内の真空度を変化させることにより、真空度と計数率が最大となるときの波高値との対応関係を自動計測し、この計測結果を制御ユニット6に格納する。そして、真空度とα線が半導体検出器12に入射するまでに損失するエネルギーとの対応関係と、真空度と計数率が最大となるときの波高値との対応関係とに基づいて、波高値とα線のエネルギーとの対応関係を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α線等の荷電粒子を測定する荷電粒子測定装置および荷電粒子エネルギー校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α線等の荷電粒子を測定する荷電粒子測定装置では、荷電粒子を検出する半導体検出器の信頼性確保が重要である。また、荷電粒子測定装置は、放射線を検出する装置であることにより、人間が入り難い場所に設置される場合が多いと考えられるので、人手を介さないで荷電粒子のもつエネルギー(強度)を計測することが必要とされている。なお、荷電粒子のもつエネルギーを計測する際、通常、特許文献1に記載の通り、荷電粒子を検出したときの半導体検出器からの出力信号を波高分析することによって得られた波高値から荷電粒子のエネルギーを算出することにより、エネルギー計測を行っている。波高値から荷電粒子のエネルギーを算出するにあたり、即ち、エネルギー校正を行うにあたり、従来は、例えば、α線のエネルギー校正を行う場合、特許文献1の段落0045〜0047、特許文献1の図10に記載の通り、操作者が下記(1)〜(3)に示す手順に従って、行っている。
【0003】
(1)Po−212(8.78MeV)、Po−214(7.69MeV)、Po−212(6.00MeV)の3核種と標準線源であるAm−214で、それぞれ計数率がピークとなる波高値(放射線計測回路の出力)を導出する。
(2)上記(1)より得た各波高値からα線エネルギーと波高値(放射線計測回路の出力)との関係の線形近似式を導出する。
(3)上記(2)より得たα線エネルギーと波高値との関係の線形近似式を用いて、波高値(放射線計測回路の出力)からα線エネルギーを導出する。
【特許文献1】特開2003−50279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来の荷電粒子測定装置では、操作者自身が、測定により得られた各波高値(放射線計測回路の出力)とエネルギーとの対応関係を算出することにより、エネルギーの校正を行っていたが、このエネルギーの校正が煩わしいという問題がある。
そこで本発明では、エネルギーの校正を自動的に行えるようにすることにより、人的労力を大幅に削減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の目的を達成するために、本発明では、荷電粒子検出器と、該荷電粒子検出器に対向するように測定試料を保持する試料保持部とを内蔵する計測容器と、前記荷電粒子検出器と接続され前記荷電粒子検出器入射時の荷電粒子のエネルギーに対応するレベルの信号を出力する放射線計測部と、前記計測容器内に連通する配管を介して接続され、前記計測容器内の気体を排出する排気ポンプと、前記配管上に設けられ、前記計測容器内の真空度を調整する真空度調整バルブとを有する荷電粒子測定装置において、前記真空度と、前記荷電粒子検出器に前記荷電粒子が入射するまでに前記荷電粒子が損失するエネルギーとの対応関係を示す第1の対応関係情報を格納する記憶部と、前記真空調整バルブと前記排気ポンプを制御すると共に、該制御により、前記計測容器内の真空度をパラメータとしたときの前記放射線計測部の各出力から、前記真空度と、計数率が最大となるときの前記放射線計測部の出力レベルとの対応関係を示す第2の対応関係情報を算出し、更に、前記記憶部に格納された第1の対応関係情報と、前記第2の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部とを備えた。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、制御部により放射線計測部の出力レベルと荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出することにより、荷電粒子のエネルギーの校正を自動的に行うことができるため、操作者の労力を大幅に軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の第1、第2の実施形態の荷電粒子測定装置について、説明する。
≪1.第1の実施形態の荷電粒子測定装置≫
<1.1 第1の実施形態の荷電粒子測定装置の構成>
(1.1.1 第1の実施形態の荷電粒子測定装置の全体構成)
本発明の第1の実施形態の荷電粒子測定装置について、図1を用いて、説明する。図1は本発明の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置の構成を示すブロック図である。α線測定装置1は、α線検出部2、α線計測部3、真空排気装置4、ガス置換装置5、制御ユニット6、配管7a〜7c,電磁式ゲート弁8、信号線9、真空計14等から構成される。
【0008】
α線検出部2は、計測容器10内に測定試料11が設置されると共に、測定試料11と対向して設置され、α線を検出する半導体検出器12を有する。半導体検出器12は、α線を検出した際、検出信号をα線計測部3に出力する。なお、測定試料11は、計測容器10内に設けた試料トレイ13に設置される。
α線計測部3は、半導体検出器12からの検出信号よりα線のエネルギー分析を行い、波高値を制御ユニット6に出力する。なお、波高値とは、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーと対応する情報であるが、その詳細については、後述する。
【0009】
制御ユニット6は、真空排気装置4、ガス置換装置5を制御する。即ち、真空排気装置4は、制御ユニット6からの指令により、計測容器10内の空気を排気し、ガス置換装置5は、制御ユニット6からの指令により、計測容器10内の空気を排気後、ヘリウムガス、窒素ガス等、放射性ガスを含まない清浄ガスに置換する。具体的には、制御ユニット6は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動することにより、計測容器10内の空気を排気し、その後、電磁式ゲート弁4aを閉じさせると共に、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、計測容器10内の気体を空気から清浄ガスに置換する。
【0010】
この制御ユニット6の動作により、計測容器10内の真空度を変化させる。計測容器10内の真空度は真空計14で計測され、この計測結果は制御ユニット6に送出される。そして、制御ユニット6は、α線計測部3出力の波高値から半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーを算出する。
【0011】
以上の通り、制御ユニット6は、計測容器10内の真空度を変化させたときのそれぞれの波高値から、各真空度における半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーを算出している。即ち、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー校正を行っている。この制御ユニット6によるα線のエネルギー校正については、後述する。なお、本実施形態では、計測容器10内の空気を清浄ガスに置換するためのガス置換装置5を設けているが、このガス置換装置5を設けずに、真空排気装置4を制御することにより、計測容器10内への空気の排出を制御することで計測容器10内の真空度を変化させるようにしても良い。
【0012】
(1.1.2 計測容器の構成)
まず、測定試料11を設置してα線を測定するための計測容器10の構成について説明する。
計測容器10は、密閉構造の測定室であり、計測容器10の上部には、低レベルのα線を検出する平板型の半導体検出器12が図示しない固定台に荷電粒子入射面(以下、検出面と称する)を下向きにして固定されて設けられ、半導体検出器12の信号線9は、計測容器10の上部から取り出させる。
【0013】
測定試料11は、計測容器10の前面側に設けられた図示しない開閉可能な密封ドアを開閉して、計測容器10内の試料トレイ13に、半導体検出器12の検出面に対向して設置される。
なお、前記密封ドアの内面の縁部と、計測容器10の前記密封ドアに対応した開口のフランジ部の縁部外面とは密封構造になっている。例えば、前記密封ドアの内面の縁部に対応するフランジ部にはOリング溝が設けられ、このOリング溝に装着されるOリングと密封ドアの内面の縁部は鏡面状に形成されている。このように、密封ドアと対応する開口のフランジ部を構成することにより、計測容器10を密封構造にできる構成となっている。
【0014】
半導体検出器12と測定試料11の間には、バックグラウンド測定時に測定試料11から半導体検出器12に入射するα線を遮断するための自動開閉式の遮断シャッタを設けても良い。遮断シャッタの詳細は前記特許文献1の段落0016、0017に詳述されているので説明を省略する。また、計測容器10の内壁等から入射する妨害α線を遮断するため、半導体検出器12と測定試料11の周囲を囲むように遮蔽壁を設けても良い。この遮蔽壁は、測定試料11面以外の面から半導体検出器12に入射する妨害α線を遮断するためのものである。
【0015】
(1.1.3 真空排気装置、ガス置換装置の構成)
次に、計測容器10に配管7a、配管7c等を介して接続されている真空排気装置4とガス置換装置5について説明する。
計測容器10の下部には配管7aが設けられ、この配管7aは、2つの系統に分かれる。一方は、大気開放するために配管7b、電磁式ゲート弁8につながる大気開放系統である。他方は配管7cにつながる真空排気及びガス置換の系統である。配管7cは更に配管4cと配管5dとに分岐されて、一方は真空排気装置4へ、他方はガス置換装置5へ連結されている。
【0016】
真空排気装置4は、半導体検出器12と測定試料11の間に存在する気体によってα線が減衰するのを抑制するため、計測容器10内の気体を排気してα線の測定を減圧下で行うためのもので、配管7cから枝分かれした配管4cと、それに続く電磁式ゲート弁4aと、排気ポンプ4bにより構成されている。計測容器10は、配管7a、配管7c、配管4c、電磁式ゲート弁4aを介して排気ポンプ4bと連結されている。
【0017】
ガス置換装置5は、計測容器10内を清浄ガスに置換するためのものであり、即ち、放射性ガスを含まないガスに置換するためのものであり、配管7cから枝分かれした配管5dと、電磁式ゲート弁5aと、圧力調整器5bと、置換用ガスボンベ(図1中、Nボンベと表示)5cにより構成されている。計測容器10は、配管7a、配管7c、配管5d、電磁式ゲート弁5a、圧力調整器5bを介して置換用ガスボンベ5cへ連結されている。置換ガスは、窒素ガス(Nガス)の他に、ヘリウムガス(Heガス)等、放射性ガスを含まないガスである清浄ガスであれば適用できる。以下では、置換ガスは窒素ガスを利用しているとして説明を行う。
【0018】
(1.1.4 α線計測部の構成)
次に、信号線9を介して半導体検出器12から出力された検出信号からα線のエネルギーが分析されることにより、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーに対応する波高値を出力するα線計測部3について説明する。
α線計測部3は、半導体検出器12にバイアス電圧を印加するバイアス電源3a、半導体検出器12の電荷収集のためのカップリングコンデンサ3b、半導体検出器12の出力信号を増幅する前置増幅器3c、更に前置増幅器3cの出力信号を波高分析に整合するパルス整形のための線形増幅器3d、線形増幅器3dの後段に設けられるパルス波高分析器3eから構成されている。パルス波高分析器3eは、半導体検出器12に入射したα線のエネルギーに対応する波高値を出力する。
【0019】
(1.1.5 制御ユニット)
次に、前述の通り、真空排気装置4、ガス置換装置5を制御すると共に、半導体検出器12に入射するα線のエネルギー校正を行う制御ユニット6について、説明する。
この制御ユニット6によって、各電磁式ゲート弁4a、5aの開閉、排気ポンプ4bの起動、停止、図示しない前記遮蔽シャッタの開閉が制御される。
【0020】
制御ユニット6は、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーに対応する波高値を出力するα線計測部3と接続している。そして、制御ユニット6は、後述の通り、計測容器10内の真空度pと半導体検出器12に到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係を格納している。なお、計測容器10内の真空度pと半導体検出器10aに到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係については予め計算することによって導出し、制御装置6に格納しておく。
【0021】
更に、制御ユニット6は、真空度pを変化させたときの、α線計測部3のパルス波分析器3eの出力の波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpを測定することにより、計測容器10内の真空度pと計数率がピークになるときの波高値Chexpとの対応関係を算出する。以下、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpを、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと称する。
【0022】
そして、制御ユニット6に格納された真空度pと半導体検出器12に到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係と、制御ユニット6の動作により得られた真空度pと計数率がピークになるときの波高値(測定値)Chexpとの対応関係とを用いて、α線計測部3のパルス波高分析器3eが出力する波高値と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーとの対応関係を導出する。なお、波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出については、後述する。
【0023】
(1.1.6 波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出)
次に、波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出について、説明する。
α線の本来のエネルギーをE、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーをEn、計測容器10内の気体により半導体検出器12に入射するまでにα線が損失するエネルギーをElossとすると、これらのエネルギーの間には、下記(1)式で示す対応関係が成り立つ。なお、計測容器10内の気体により半導体検出器12に入射するまでにα線が損失するエネルギーElossを、以下、α線の損失エネルギーElossと称する。
【0024】
E=En+Eloss ・・・(1)
E:α線本来のエネルギー
En:半導体検出器12への入射時のα線エネルギー
Eloss:α線の損失エネルギー
【0025】
図2に、計測容器10内の真空度pとα線の損失エネルギーElossとの対応関係を示す。図2より、真空度pが高いとき、即ち、計測容器10内の気体が少ないとき、α線の損失エネルギーが小さく、逆に、真空度pが低いとき、即ち、計測容器10内の気体が多いとき、α線の損失エネルギーが大きくなる。なお、真空度pとα線の損失エネルギーElossとの対応関係については、前述の通り、計算で導出することができる。
【0026】
図3に、計測容器10内の真空度pをパラメータとしたときの波高値と計数率Rとの対応関係を示す。図3より、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、真空度pに応じて異なり、真空度pが高いほど、即ち、計測容器10内の気体が少ないほど、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは大きくなる。なお、真空度pと計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpとの対応関係については、前述の通り、測定により導出する。
【0027】
また、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、真空度pのみによって変化するだけでなく、α線の本来のエネルギーEによっても変化する。それは、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnと対応しており、このEnは、上記(1)式より、α線本来のエネルギーEとα線の損失エネルギーElossとの差となるからである。
【0028】
前述のように、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、真空度pだけでなく、α線の本来のエネルギーEによっても変化する。従って、α線の本来のエネルギーEが既知である場合には、詳細については後述するが、下記(1−1)から(1−4)までの処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を算出することができる。一方、α線の本来のエネルギーEが未知である場合には、詳細については後述するが、下記(2−1)から(2−7)までの処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を算出することができる。
【0029】
そして、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を算出することができると、波高値とα線のエネルギーとの対応関係を導出することができる。
【0030】
(1)α線の本来のエネルギーEが既知である場合
以下、α線の本来のエネルギーEが既知である場合での計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係の算出について説明する。
【0031】
(1−1)α線の損失エネルギーElossの演算
各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値を、それぞれ、設定する。なお、Mは、真空度パラメータmの個数である。設定後、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)のとき、α線の損失エネルギーEloss(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、それぞれ算出する。なお、前述の通り、真空度pとα線の損失エネルギーElossとは、図2に示す対応関係があることにより、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)からα線の損失エネルギーEloss(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、それぞれ算出する。なお、α線の損失エネルギーElossは、真空度pによって決まることにより真空度pの関数であるため、以下、α線の損失エネルギーElossをEloss(p)と記載する。
【0032】
(1−2)半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnの演算
上記(1−1)で算出したα線の損失エネルギーEloss(p)(ただし、m=0、1、2、3、・・・・、M−1)と、既知であるα線の本来のエネルギーEとを上記(1)式に代入することにより、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnは、α線の本来のエネルギーEと真空度pの関数であるため、以下、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnを、En(E,p)と記載する。
【0033】
(1−3)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmの測定
各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)で、計数率Rがピークになるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、測定する。なお、真空度p(m=0、1、2、3、・・・・M−1)の設定は、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御ユニット6が制御することにより行う。
【0034】
具体的には、制御ユニット6は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器10内の空気を排気して計測容器10内の空気の量を制御することで、真空度pを設定する。または、制御ユニット6は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器10内の空気のほとんどを排気した後、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、清浄ガスに置換すると共に計測容器10内の清浄ガスの量を制御することで、真空度pを設定する。
【0035】
なお、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmは、α線の本来のエネルギーEと真空度pの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmを、Chexp(E,p)と記載する。
【0036】
(1−4)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との関係の算出
一般的に、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)とは、下記(2)式の通り、一次関数で表すことができる。
En(E,p)=a×Chexp(E,p)+b ・・・(2)
En(E,p):半導体検出器12への入射時のα線エネルギー
Chexp(E,p):計数率Rがピークになるときの波高値
a、b:定数(ただし、a≠0)
【0037】
従って、m=0、1、2、3、・・・・、M−1それぞれの場合の、計数率Rピーク時の波高値Chexp(E,p)及び半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)から、a、bを算出することにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)En(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との関係を得ることができる。
【0038】
なお、m=0、1、2、3、・・・・、M−1それぞれの場合の、計数率Rピーク時の波高値Chexp(E,p)は上記(1−3)の測定により得られる。一方、m=0、1、2、3、・・・・、M−1それぞれの場合の、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)は上記(1−2)の演算により得られる。そこで、例えば、m=0、1、2のそれぞれのときのChexp(E,p)とEn(E,p)のデータセット、即ち、図4の通り、(Chexp(E,p)、En(E,p))、(Chexp(E,p)、En(E,p))、(Chexp(E,p)、En(E,p))の3個のデータセットから、最小2乗法により、上記(2)式のa、bを導出することができる。なお、図4は、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を示す図である。最小2乗法については、後述する。
【0039】
前述の説明では、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との関係を得るために、上記(2)式のa、bを算出する際、3個のデータセットを用いて最小2乗法により算出する場合について説明したが、これに限定されるわけではない。4個以上のデータセットを用いて最小2乗法により上記(2)式のa、bを算出するようにしても良い。
【0040】
(2)α線の本来のエネルギーEが未知である場合
以下、α線の本来のエネルギーEが未知である場合における、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係の算出について説明する。α線本来のエネルギーEが未知である場合には、α線本来のエネルギーEが既知である場合での上記(1−2)の処理を行うことができないため、α線本来のエネルギーが既知である場合と同様の手順で、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnとの対応関係を導出することができない。そこで、詳細については後述するが、下記(2−1)〜(2−7)の順序に従って、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を導出する。
【0041】
(2−1)α線の損失エネルギーElossの演算
各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値を、それぞれ、設定する。そして、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)のとき、α線の損失エネルギーEloss(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、それぞれ算出する。なお、前述の通り、真空度pとα線の損失エネルギーElossとは、図2に示す対応関係があることにより、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)からα線の損失エネルギーEloss(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、それぞれ算出することができる。なお、α線の損失エネルギーElossは、真空度pによって決まることにより真空度pの関数であるため、以下、α線の損失エネルギーElossをEloss(p)と記載する。
【0042】
(2−2)半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)の演算
真空度p、α線の本来のエネルギーEcalをパラメータにして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。即ち、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値だけでなく、各α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)の値を設定し、そして、i、mの値に応じた半導体検出器12への入射時のそれぞれのα線エネルギーEn(i,m)を、上記(1)式を変形した下記(3)式より算出する。なお、パラメータとして用いるα線の本来のエネルギーの変数は、未知であるα線のエネルギーEと区別するため、Ecalとする。
【0043】
En(i,m)-=Ecali−Eloss(p) ・・・(3)
cali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1):α線の本来のエネルギー
Eloss(p):α線の損失エネルギー
En(i,m):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
なお、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)-は、α線の本来のエネルギーEcaliと真空度pの関数であるため、以下、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)を、En(Ecali,p)と記載する。
【0044】
(2−3)ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の演算
計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnとは上記(2)式に示す関係であることにより、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)をChcalとすると、En(Ecali,p)とChcal(Ecali,p)とは、下記(4)式で示す対応関係になる。なお、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)Chcalは、α線の本来のエネルギーEcalと真空度pの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)Chcalを、Chcal(Ecali,p)と記載する。
【0045】
En(Ecali,p)=a×Chcal(Ecali,p)+b ・・・(4)
Chcal(Ecali,p):計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)
En(Ecali,p):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(ただし、a、b共に未知。a≠0)
上記(4)式を変形すると、下記(5)式になる。
Chcal(Ecali,p)={En(Ecali,p)−b}/a ・・・(5)
Chcal(Ecali,p):計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)
En(Ecali,p):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(ただし、a、b共に未知。a≠0)
【0046】
計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)の差分をΔChcal(Ecali,p(m,m+1))とすると、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))は、下記(6)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,p(m,m+1)
=Chcal(Ecali,p)−Chcal(Ecali,pm+1
={En(Ecali,p)−b}/a−{En(Ecali,pm+1)−b}/a(∵式(5)より)
={En(Ecali,p)−En(Ecali,pm+1)}/a
∴ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))={En(Ecali,p)−En(Ecali,pm+1)}/a ・・・(6)
【0047】
同様にして、ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))も、下記(7)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))={En(Ecali,pm+1)−En(Ecali,pm+2)}/a ・・・(7)
上記(6)式、上記(7)式より、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))は、下記(8)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2)
={En(Ecali,p)−En(Ecali,pm+1)}/{En(Ecali,pm+1)−En(Ecali,pm+2)} ・・・(8)
【0048】
従って、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出するにあたり、まず、上記(2−2)の(3)式を用いて、i、mの値に応じたEn(Ecali,p)、En(Ecali,pm+1)、En(Ecali,pm+2)を算出する。次に、算出したEn(Ecali,p)、En(Ecali,pm+1)、En(Ecali,pm+2)を上記(8)式に代入することにより、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を、算出する。
【0049】
(2−4)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmの測定
各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)で、計数率Rがピークになるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)を、測定する。なお、真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の設定は、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御ユニット6が制御することにより行う。
【0050】
具体的には、制御ユニット6は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器10内の空気を排気して計測容器10内の空気の量を制御することで、真空度pを設定する。または、制御ユニット6は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器10内の空気のほとんどを排気した後、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、清浄ガスに置換すると共に計測容器10内の清浄ガスの量を制御することで、真空度pを設定する。
【0051】
なお、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmは、未知であるα線の本来のエネルギーEと真空度pの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmを、Chexp(E,p)と記載する。
【0052】
(2−5)ΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))の演算
計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)の差分をΔChexp(E,p(m,m+1))とすると、ΔChexp(E,p(m,m+1))は、下記(9)式で表すことができる。
ΔChexp(E,p(m,m+1))=Chexp(E,p)−Chexp(E,pm+1) ・・・(9)
同様にして、 ΔChexp(E,p(m+1,m+2))は、下記(10)式で表すことができる。
ΔChexp(E,p(m+1,m+2))=Chexp(E,pm+1)−Chexp(E,pm+2) ・・・(10)
【0053】
上記(9)、(10)式を用いて、それぞれ、ΔChexp(E,p(m,m+1))、ΔChexp(E,p(m+1,m+2))を、前述の(2−4)の測定で得られたChexp(E,p)、Chexp(E,pm+1)、Chexp(E,pm+2)から算出する。更に、得られたΔChexp(E,p(m,m+1))、ΔChexp(E,p(m+1,m+2))からΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))を算出する。
【0054】
(2−6)α線の本来のエネルギーEの算出
前述の(2−2)でパラメータとして設定された各α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)に対して、下記(11)式を用いて、Valを演算により導出する。即ち、iの値を固定値とし、各mの値でのΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))とΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))との差分の2乗をそれぞれ算出し、該算出された各差分の2乗の和をValとして算出する。そして、各iの値に対応するValを算出する。なお、各mの値でのΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))は、それぞれ前述の(2−5)、(2−3)により算出される。
【0055】
Val=Σ[{ΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))}−{ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))}]・・・(11)
上記(11)式で算出した各Val(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)の内、Valが最小となるときのEをα線の本来のエネルギーEとする。Valが最小となるときのEをα線の本来のエネルギーEとするのは、測定値に基づくデータΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))との差分の2乗和が最も小さくなることにより、測定値に基づくデータΔChexp(E,p(m,m+1))/ΔChexp(E,p(m+1,m+2))に最も近いデータであるからである。
【0056】
(2−7)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との関係の算出
前述の(2−6)より、未知であるα線の本来のエネルギーEが算出された後、前述のα線のエネルギーが既知である場合と同様にして、前述の(1−1)〜(1−4)の処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を導出することができる。
【0057】
(3)まとめ
以上の通り、α線の本来のエネルギーEが既知であるか未知であるかにかかわらず、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を導出することができる。従って、制御ユニット6に、前述の(1−1)〜(1−4)及び(2−1)〜(2−7)の処理を行わせることにより、α線の本来のエネルギーEが既知である場合、未知である場合、共に、波高値とα線のエネルギーとの対応関係を得ることができる。その結果、第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置は、エネルギーの校正を自動的に行うことができる。
【0058】
以下、制御ユニット6の構成及び制御ユニット6に、前述の(1−1)〜(1−4)及び(2−1)〜(2−7)の処理を行わせたときの詳細動作について説明する。
<1.2 制御ユニットの構成>
次に、制御ユニット6の構成について、図5を用いて、説明する。図5は、図1に示すα線測定装置における制御ユニット6の構成を示すブロック図である。制御ユニット6は、パーソナルコンピュータ等の計算機であり、図5に示すようにCPU50、メモリ(RAM)51、キーボード等の入力装置52、ハードディスク等の記憶装置53、表示モニタ(例えば、液晶ディスプレイ)等の出力装置54、データ及び信号の入出力のためのインターフェース回路(以下、I/Oと称する)55を有している。なお、メモリ(RAM)51は、第1のメモリ領域51aと、第2のメモリ領域51bを有している。
【0059】
記憶装置53には、前述の通り、図2に示す真空度pとα線の損失エネルギーElossとの対応関係のデータテーブルを予め格納している。第1のメモリ領域51aには、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との対応関係を算出するためのプログラムが記憶装置53から読み出されて格納している。第2のメモリ領域51bは、CPU50が第1のメモリ領域51aに格納されたプログラムを実行中に、算出されたデータ等を格納する。CPU50は、I/O55を介して、出力装置54と接続していると共に、α線計測部3のパルス波高分析器3eと接続している。
【0060】
<1.3 制御ユニットの動作>
CPU50は、第1のメモリ領域51aに格納されたプログラムを実行する。このプログラムは、前述の通り、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を算出するためのプログラムである。
【0061】
このプログラムをCPU50が実行すると、制御ユニット6は、まず、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pを変化させ、それぞれの真空度pにおける、α線計測部3のパルス波高分析器3e出力の波高値から、真空度pと、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)との対応関係のデータテーブルを得る。
次に、制御ユニット6は、前述の動作により得られた、真空度pと、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)との対応関係のデータテーブル(第2の対応関係情報)と、記憶装置53に格納された真空度pとα線の損失エネルギーElossとの対応関係のデータテーブル(第1の対応関係情報)とから、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を算出する。
【0062】
第1のメモリ領域51aに読み出されたプログラムをCPU50が実行することにより、制御ユニット6が前述の通り、動作するが、次に、この制御ユニット6の動作の詳細について、図6を用いて説明する。図6は、α線測定装置における制御ユニット6の動作を示すフローチャートである。
【0063】
α線の本来のエネルギーEが既知であるか未知であるかの設定を操作者が入力装置52を用いて行うと、この設定状態を示す信号が入力装置52から制御ユニット6のCPU50へ送出される。制御ユニット6は、この設定状態を示す信号に基づき、α線の本来のエネルギーEが既知であるのか未知であるのかをCPU50が判定することで、判定処理S60を行う。α線の本来のエネルギーEが既知である場合には、S67〜S68の処理を行う。一方、α線の本来のエネルギーEが未知である場合には、S61〜S68の処理を行う。
【0064】
(1)α線の本来のエネルギーEが既知である場合の動作説明
まず、α線の本来のエネルギーEが既知である場合の動作について、説明する(S61〜S68は後記)。
【0065】
(1−1)半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnの算出処理及び計数率Rがピークとなる波高値Chexpの測定処理S67
真空度pをパラメータとして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnは、前述の(1)式及び図2より、α線の本来のエネルギーE及び真空度pの関数であるため、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを、以下、En(E,p)と記載する。半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)の算出とは、具体的には、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)を算出することである。なお、真空度パラメータmと真空度pとの関係のデータテーブルは、予め記憶装置53に格納されている。Mは、真空度パラメータmの個数である。
【0066】
更に、真空度pをパラメータとして、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpの測定を行う。なお、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpは、前述の(1)式、(2)式、図2より、α線の本来のエネルギーE及び真空度pの関数であるため、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpを、以下、Chexp(E,p)と記載する。計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定とは、具体的には、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)での、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定することである。
【0067】
以下、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定における制御ユニット6の詳細動作について、図7を用いて説明する。図7は、各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0068】
まず、S70で真空度パラメータmの値を0とする。次に、S71で真空度パラメータmの値が0のときの真空度pでのα線の損失エネルギーElossを算出する。なお、α線の損失エネルギーElossは、図2より、真空度pの関数であるため、α線の損失エネルギーElossを、以下、Eloss(p)と記載する。S71で、mの値が0のときの真空度pでのα線の損失エネルギーα線の損失エネルギーEloss(p)を算出するにあたり、予め記憶装置53に格納された真空度pとα線の損失エネルギーEloss(p)との関係のデータテーブル及び真空度パラメータmと真空度pとの関係のデータテーブルを用いる。
【0069】
α線の損失エネルギーEloss(p)を算出した後、S72で、このEloss(p)と記憶装置53に格納されている既知のα線の本来のエネルギーEとから、上記(1)式を用いて、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)を算出する。そして、S73で、算出した半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)を第2のメモリ領域51bに格納する。
【0070】
次に、S74〜S76で、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定して第2のメモリ領域51bに格納する。まず、S74で、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pをpに設定する。設定後、S75で、α線計測部11のパルス波高分析器11eより出力される波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定する。そして、S76で、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)を第2のメモリ領域51bに格納する。
【0071】
以下、同様にして、S77で真空度パラメータmの値を1ずつ大きくする毎に、S71〜S73で半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)を算出して第2のメモリ領域51bに格納すると共に、S74〜S76で計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定して第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S78により、真空度パラメータmがMと等しくなるまで行う。なお、Mは、真空度パラメータの個数である。
【0072】
(1−2)計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係の算出処理S68
真空度pをパラメータとしたときの、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定をS67で行った後、図6の通り、S68で、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を算出する。
【0073】
計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)とは、一般的に、前述の(2)式の通り、一次関数で表せる関係である。従って、S67での算出、測定でそれぞれ得られた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)を用いて、前述の(2)式のa、bの値を算出することにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を導出することができる。なお、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を導出するにあたり、最小2乗法を用いる。なお、最小2乗法とは、下記(12)式のデータのばらつき度Sを最小化するa、bの値を算出することである。
【0074】
S=Σ[En(E,p)−{a×Chexp(E,p)+b}] ・・・(12)
ただし、m=0、1、2、3、・・・・、M−1
M:真空度パラメータの個数
S:データのばらつき度
:各真空度(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)
Chexp(E,p):各真空度pでの、計数率Rがピークとなるときの波高値
En(E,p):各真空度pでの、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(a≠0)
【0075】
そして、上記(12)式のデータのばらつき度Sを最小化するa、bの値は、それぞれ下記(13)式、下記(14)式で表すことができる。
a=[ΣChexp(E,p)×ΣEn(E,p)−M{Σ(Chexp(E,p)×En(E,p))}]/[{ΣChexp(E,p)}−M×Σ{Chexp(E,p)}] ・・・(13)
b=[ΣChexp(E,p)×Σ{Chexp(E,p)×En(E,p)}−ΣEn(E,p)×Σ{Chexp(E,p)}] /[{ΣChexp(E,p)}−M×Σ{Chexp(E,p)}] ・・・(14)
【0076】
ここで、A=ΣChexp(E,p)、B=ΣEn(E,p)、C=Σ{ΣChexp(E,p)}、D=Σ{(Chexp(E,p)×En(E,p)}とすると、上記(13)式、上記(14)式は、それぞれ下記(15)式、(16)式に変形される。
a=(AB−MD)/(A−MC) ・・・(15)
b=(AD−C)/(A−MC) ・・・(16)
【0077】
以下、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係の算出における制御ユニット6の詳細動作について、図8を用いて説明する。図8は、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係の算出における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートでは、まず、上記(15)式、(16)式のA、B、C、Dを算出し、その後でa、bを算出することにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を算出している。
【0078】
まず、S80で、真空度パラメータmの値を0とする。次に、S81で、Aの値を0、Bの値を0、Cの値を0、Dの値を0とする。なお、このA、B、C、Dは、S82〜S84により、S85によるa、bの演算を行うときには、下記(17)〜(20)式に示す値となるように処理している。この処理については、後述する。
A=ΣChexp(E,p) ・・・(17)
B=ΣEn(E,p) ・・・(18)
C=Σ{ΣChexp(E,p)} ・・・(19)
D=Σ{(Chexp(E,p)×En(E,p)} ・・・(20)
【0079】
そして、S82で、A、B、C、Dの値を更新する。具体的には、AにChexp(E,p)、BにEn(E,p)、Cに{ΣChexp(E,p)}、Dに(Chexp(E,p)×En(E,p)を加算して得られた値をそれぞれ、新たなA、B、C、Dの値とする。
【0080】
以下、同様にして、S83で真空度パラメータmを1ずつ大きくする度に、S82によるA、B、C、Dの値の更新を繰り返す。この繰り返し動作は、S84により、真空度パラメータmの値がMとなるまで行う。なお、Mは、真空度パラメータの個数mである。真空度パラメータmの値がMになるまでS82〜S84の処理を繰り返すことにより、A、B、C、Dの値は上記(17)〜(20)式に示す値となるので、これらの値を用いて、S85で、a、bを算出する。そして、S86で、算出したa、bの値を第2のメモリ領域51bに格納する。a、bの値が得られることにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係が得られる。その結果、波高値とエネルギー値との対応関係が得られることにより、エネルギーの校正を行うことができる。
【0081】
(2)α線の本来のエネルギーEが未知である場合の動作説明
次に、α線の本来のエネルギーEが未知である場合の動作について、説明する。
(2−1)半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnの算出処理S61
α線の本来のエネルギーEcalと真空度pとをパラメータとして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnは、前述の(1)式及び図2より、α線本来のエネルギーEcalと真空度pの関数であるため、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを、以下、En(Ecal,p)と記載する。
【0082】
半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal,p)の算出とは、具体的には、α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、、・・・・I−1)のα線エネルギーパラメータiの値、真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の真空度パラメータmの値を変えることにより、各i、mの値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)を算出することである。なお、α線エネルギーパラメータiとα線の本来のエネルギーEcaliとの関係のデータテーブルと、真空度パラメータmと真空度pとの関係のデータテーブルとは、予め記憶装置53に格納されている。Iはα線エネルギーパラメータiの個数、Mは真空度パラメータmの個数である。
【0083】
以下、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)の算出における制御ユニット6の詳細動作について、図9を用いて説明する。図9は、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)の算出における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0084】
まず、S90でα線エネルギーパラメータiの値を0、そして、S91で真空度パラメータmの値を0とする。次に、S92で、真空度パラメータm=0のときの真空度pにおけるα線の損失エネルギーEloss(p)を算出する。α線の損失エネルギーEloss(p)を算出するにあたり、予め記憶装置53に格納された真空度pとα線の損失エネルギーEloss(p)との関係のデータテーブル及び真空度パラメータmと真空度pとの関係のデータテーブルを用いる。
【0085】
α線の損失エネルギーEloss(p)を算出した後、S93で、このEloss(p)とα線の本来のエネルギーEcal0とから、上記(1)式を用いて、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,p)を算出する。なお、α線の本来のエネルギーEcal0は、予め記憶装置53に格納されたα線エネルギーパラメータiとα線の本来のエネルギーEcaliとの関係のデータテーブルの内、i=0のときのα線の本来のエネルギーEcal0のときのデータである。そして、S94で、算出した半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,p)を第2のメモリ領域51bに格納する。
【0086】
以下、同様にして、S95で真空度パラメータmの値を1ずつ大きくする度に、S92〜S94により、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,p)を算出して第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S96より、真空度パラメータmの値がMとなるまで行う。Mは真空度パラメータmの個数である。
【0087】
真空度パラメータmの値がMになると、S97でα線エネルギーパラメータiの値を0から1に更新し、S91で真空度パラメータmの値をMから0に更新する。以下、前述のα線エネルギーパラメータi=0のときのS92〜S96までの動作と同様にして、真空度パラメータmの値がMになるまで、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal1,p)を算出して第2のメモリ領域51bに格納する度に、真空度パラメータmの値を1ずつ大きくするのを繰り返す。
【0088】
そして、真空度パラメータmの値が再度Mになると、S97でα線エネルギーパラメータiの値を1ずつ大きくする度に、S91〜S96により、真空度パラメータmの値が0からM−1までのそれぞれの半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)を算出して第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S98より、α線エネルギーパラメータiの値がIとなるまで行う。Iはα線エネルギーパラメータiの個数である。
【0089】
(2−2)ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出処理S62
半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)の算出を行った後、図6の通り、S62で各α線エネルギーパラメータi、真空度パラメータmの値に応じたΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出を行う。
【0090】
以下、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じたΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出における制御ユニット6の詳細動作について、図10を用いて説明する。図10は、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じたΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0091】
まず、S100でiの値を0、そして、S101でmの値を0とする。次に、S102でΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))を算出する。なお、ΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))を算出するにあたり、i=0、m=0のとき、上記(8)式は下記(21)式となる。
ΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2)
={En(Ecal0,p)−En(Ecal0,p)}/{En(Ecal0,p)−En(Ecal0,p)} ・・・(21)
従って、前述のS61で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたEn(Ecal0,p)、En(Ecal0,p)、En(Ecal0,p)とから、上記(21)式を用いてΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))を算出する。
【0092】
そして、S103で、上記(21)式の演算により算出したΔChcal(E,p(0,1))/ΔChcal(E,p(1,2))を第2のメモリ領域51bに格納する。その後、S104で真空度パラメータmの値を1ずつ大きくする度に、S102〜S103より、前述のS61で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたEn(Ecal0,p)、En(Ecal0,pm+1)、En(Ecal0,pm+2)から、上記(8)式を用いてΔChcal(Ecal0,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal0,p(m+1,m+2))を算出し、その算出結果を第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S105より、mの値がM−2となるまで行う。
【0093】
そして、S105でmの値がM−2となったとき、S106でiの値を0から1に更新し、S101でmの値をM−2から0に更新する。そして、S102からS105より、mの値が0からM−3までのそれぞれのΔChcal(Ecal1,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal1,p(m+1,m+2))を算出し、各算出結果を第2のメモリ領域51bに格納する。
【0094】
なお、各mの値でのΔChcal(Ecal1,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal1,p(m+1,m+2))を算出する際、前述のS61で算出されて第2のメモリ領域51bに格納された各mの値でのEn(Ecal1,p)、En(Ecal1,pm+1)、En(Ecal1,pm+2)から、上記(8)式を用いて算出する。更に、各mの値でのΔChcal(Ecal1,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal1,p(m+1,m+2))を算出する際、まず、mの値が0のときのΔChcal(Ecal1,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal1,p(m+1,m+2))を算出し、その後、mの値を1ずつ大きくする度に、それぞれのmの値でのΔChcal(Ecal1,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal1,p(m+1,m+2))を算出する。
【0095】
そして、mの値が再度M−2になった後、S101からS107より、iの値がI−2となるまで、iの値を1ずつ大きくする度に、mの値が0からM−3までのそれぞれのΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出し、各算出結果を第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。
【0096】
なお、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出する際、前述のS61で算出されて第2のメモリ領域51bに格納された各mの値でのEn(Ecali,p)、En(Ecali,pm+1)、En(Ecali,pm+2)から、上記(8)式を用いて算出する。更に、各mの値でのΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出する際、まず、mの値が0のときのΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出し、その後、mの値を1ずつ大きくする度に、それぞれのmの値でのΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))を算出する。
【0097】
(2−3)計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定処理S63
各i、mの値に応じたΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出を行った後、図6の通り、S63で、未知のエネルギーEのα線が半導体検出器12に入射した際、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)を、真空度パラメータmの値を変えることで真空度pを変化させることにより、測定する。
【0098】
以下、真空度パラメータm(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値(波高値)Chexp(E,p)の測定における制御ユニット6の詳細動作について、図11を用いて説明する。図11は、真空度パラメータm(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値Chexp(E,p)の測定における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0099】
まず、S110で真空度パラメータmの値を0とする。そして、S111で未知のエネルギーEのα線を放射する。次に、S112で、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pをpに設定する。設定後、S113で、α線計測部3のパルス波高分析器3e出力の波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定する。そして、S114で、この測定により得た計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)を第2のメモリ領域51bに格納する。
【0100】
その後、S115で真空度パラメータmの値を1ずつ大きくする毎に、S112〜S114で、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pをpに設定し、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)を測定し、この測定結果を第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S116により、真空度パラメータmがMと等しくなるまで行う。なお、Mは、真空度パラメータの個数である。
【0101】
(2−4)ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の算出処理S64
計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)の測定を行った後、図6の通り、S64で、mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の値を算出する。
【0102】
以下、mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニット6の詳細動作について、図12を用いて説明する。図12は、mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0103】
まず、S120で、mの値を0とする。そして、S121で、ΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))の値を算出する。なお、ΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))を算出するにあたり、m=0のとき、上記(9)式、(10)式はそれぞれ下記(22)式、(23)式になる。
ΔChexp(E,p(0、1))=Chexp(E,p)−Chexp(E,p)・・・(22)
ΔChexp(E,p(1、2))=Chexp(E,p)−Chexp(E,p)・・・(23)
従って、前述のS63で測定され第2のメモリ領域51bに格納されたChexp(E,p)、Chexp(E,p)、Chexp(E,p)から、上記(22)式、(23)式を用いて、ΔChexp(E,p(0、1))、ΔChexp(E,p(1、2))を算出する。更に、この算出結果を用いてΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))を算出する。
【0104】
そして、S122で、算出したΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))の値を第2のメモリ領域51bに格納する。
その後、S123でmの値を1ずつ大きくする度に、S121〜S122より、前述のS63で測定され第2のメモリ領域51bに格納されたChexp(E,p)、Chexp(E,pm+1)、Chexp(E,pm+2)から、上記(9)式、(10)式を用いてΔChexp(E,p(m、m+1))、ΔChexp(E,p(m+1、m+2))を算出し、更に、この演算結果を用いてΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))を算出するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S124より、mの値がM−2となるまで行う。
【0105】
(2−5)Valの算出処理S65
mをパラメータとしてのΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の算出を行った後、図6の通り、S65で各Val(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)を算出する。なお、Valは、上記(11)式の通り、iを一定値、mをパラメータとしたときの、ΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))とΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))との差分の2乗和である。
以下、Valを算出するための制御ユニット6の詳細動作について、図13を用いて説明する。図13は、Valを算出するための制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。
【0106】
まず、S130でiの値を0にし、更に、S131でValの値を0にする。そして、S132でmの値を0にし、更に、S133で下記(24)式の演算を行う。なお、下記(24)式の演算を行うにあたり、前述のS62で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))と、前述のS64で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))とから算出する。
(0,0)={ΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))−ΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))} ・・・(24)
【0107】
そして、S134により、Valの値を0からV(0,0)に更新する。即ち、前述のS131で値を0とすることで初期設定されたValに、前述のS133の演算で得たV(0,0)を加算することによって得られた値を、新たなValの値とする。
【0108】
Valの値を更新した後、S135でmの値を1ずつ大きくする度に、S133〜S136より、V(0,m)を算出し、このV(0,m)をValに加算して新たなValとすることによりValの値を更新するのを、mの値がM−2となるまで繰り返す。なお、V(0,m)を算出する際、前述のS62で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたΔChcal(Ecal0,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal0,p(m+1,m+2))と、前述のS64で算出されて第2のメモリ領域51bに格納されたΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))とから、下記(25)式を用いて算出する。
(0,m)={ΔChcal(Ecal0,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecal0,p(m+1,m+2))−ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))} ・・・(25)
【0109】
以上の動作により算出されるVal0は下記(26)式で表すことができる。
Val=V(0,1)+V(0,2)+V(0,3)+・・・+V(0,M−3)
={ΔChcal(Ecal0,p(0,1))/ΔChcal(Ecal0,p(1,2))−ΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))}
+{ΔChcal(Ecal0,p(1,2))/ΔChcal(Ecal0,p(2,3))−ΔChexp(E,p(1、2))/ΔChexp(E,p(2、3))}
+{ΔChcal(Ecal0,p(2,3))/ΔChcal(Ecal0,p(3,4))−ΔChexp(E,p(2、3))/ΔChexp(E,p(3、4))}
+・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
+{ΔChcal(Ecal0,p(M−3,M−2))/ΔChcal(Ecal0,p(M−2,M−1))−ΔChexp(E,p(M−3、M−2))/ΔChexp(E,p(M−2、M−1))} ・・・(26)
【0110】
そして、S137で、算出されたValを第2のメモリ領域51bに格納する。その後、S138でiの値を1ずつ大きくする度に、S131〜S138の処理を行うことにより、前述のValの演算、第2のメモリ領域51bへの格納と同様にして、各Valを算出して第2のメモリ領域51bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、即ち、前述のS131〜S138の処理を繰り返すのは、S139でiの値がIになるまで行う。
【0111】
以上の処理により算出される各Val(i=1、2、3、・・・、I−1)は、下記(27)式で表すことができる。
Val=V(i,1)+V(i,2)+V(i,3)+・・・+V(i,M−3)
={ΔChcal(Ecali,p(0,1))/ΔChcal(Ecali,p(1,2))−ΔChexp(E,p(0、1))/ΔChexp(E,p(1、2))}
+{ΔChcal(Ecali,p(1,2))/ΔChcal(Ecali,p(2,3))−ΔChexp(E,p(1、2))/ΔChexp(E,p(2、3))}
+{ΔChcal(Ecali,p(2,3))/ΔChcal(Ecali,p(3,4))−ΔChexp(E,p(2、3))/ΔChexp(E,p(3、4))}
+・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
+{ΔChcal(Ecali,p(M−3,M−2))/ΔChcal(Ecali,p(M−2,M−1))−ΔChexp(E,p(M−3、M−2))/ΔChexp(E,p(M−2、M−1))} ・・・(27)
【0112】
(2−6)α線の本来のエネルギーEの算出処理S66
各Val(i=0、1、2、3、・・・、I−1)の算出を行った後、図6の通り、S66で未知であるα線のエネルギーEを算出する。以下、未知であるα線のエネルギーEを算出するための制御ユニット6の詳細動作について、図14を用いて説明する。図14は、未知であるα線のエネルギーEを算出するための制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートである。このフローチャートでは、前述のS65で算出した各Valの内、Valが最小となるiの値でのEを、未知であるα線のエネルギーEとする。Valが最小となるiの値でのEを、未知であるα線のエネルギーEとするのは、測定値に基づくデータとの差分の2乗和が最も小さくなることにより、測定値に基づくデータに最も近いデータであるからである。
【0113】
まず、S140でValをValの最小値Valminと仮定する。この仮定により、S141でValが最小となるときのiの値Fを0とする。そして、S142でiの値を1とし、S143でValとValminとを比較する。そして、Val<Valminであるならば、S144でValminをValからValに更新し、更に、S145でFを0から1に更新する。一方、Val≧Valminであるならば、Valmin、Fの更新は行わない。即ち、Valmin=Valであり、F=0である。
【0114】
その後、S146でiの値を1ずつ大きくする度に、S143でValとValminとを比較することにより、Val<Valminであるならば、S144でValminをValに更新し、更に、S145でFをiに更新するのを繰り返す。ただし、Val≧Valminであるならば、Valmin、Fの更新は行わない。なお、この繰り返し動作は、即ち、前述のS143〜S146の動作を繰り返すのは、S147でiの値がIになるまで行う。その結果、得られたValmin、FはそれぞれValの最小値、Valが最小となるときのiの値であることにより、S148でEを未知であるα線のエネルギーEとする。
【0115】
(2−7)計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係の算出処理
未知であるα線のエネルギーEが算出された後、図6の通り、前述のα線のエネルギーが既知である場合と同様にして、前述の(1)に記載のS67及びS68の処理を行うことにより、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの関係を導出することができる。その結果、波高値とエネルギー値との対応関係が得られることにより、エネルギーの校正を行うことができる。
【0116】
以上の通り、本発明の第1実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置は、放射線の本来のエネルギーが既知であるか未知であるかにかかわらず、エネルギーの校正を行うことができる。
【0117】
≪2.第2の実施形態の荷電粒子測定装置≫
<2.1 第2の実施形態の荷電粒子測定装置の構成>
(2.1.1 第2の実施形態の荷電粒子測定装置の全体構成)
本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置について、図15、図16を用いて、説明する。図15は本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置の構成を示すブロック図である。図16は、図15に示すα線測定装置のα線検出部の構成を示す図である。α線測定装置150は、α線検出部151、α線計測部3、真空排気装置4、ガス置換装置5、制御ユニット6´、配管7a〜7c、電磁式ゲート弁8、信号線9、真空計14等から構成される。
【0118】
α線検出部151は、図16の通り、計測容器167内に、各々異なる枚数の薄膜160がそれぞれ積み重ねられた3つの測定試料11が、試料テーブル161に設置される。この試料テーブル161は、モータホルダ165により保持されたサーボモータ163が回転すると、この回転がカップリング164、ネジがきられたテーブルガイド162を介して伝達されることにより、直線運動に変換されるため、テーブルガイド162に沿ってスライドする。なお、テーブルガイド162は、ガイドホルダ166により保持される。
【0119】
各薄膜160の厚さは全て等しいものの、測定試料11毎に挿入される薄膜160の枚数が異なる。図16では、測定試料11は3個だが、挿入する薄膜160の枚数が測定試料11毎に異なれば、測定試料11は4個以上であっても良い。また、挿入する薄幕160の枚数は1枚以下(0枚も含む)でも5枚以上でも良い。薄膜160の材質は、密度が既知であるポリエチレン、ポリアミド系樹脂等を用いる。ポリエチレン、ポリアミド系樹脂の密度は、それぞれ、0.90g/cm、1.12g/cmである。
【0120】
計測容器167内の上部には、α線を検出する半導体検出器12が設置されるため、サーボモータ163を制御ユニット6´が制御することにより、3つの測定試料11の内のいずれか1つを、半導体検出器12に対向する位置に移動させることができる。対向する位置に移動させた測定試料11からのα線を、半導体検出器12は検出すると、検出信号をα線計測部3に出力する。
α線計測部3は、半導体検出器12からの検出信号よりα線のエネルギー分析を行い、波高値を制御ユニット6´に出力する。なお、波高値とは、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置の説明に記載した通り、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーと対応する情報である。
【0121】
制御ユニット6´は、前述の通り、サーボモータ163を制御する以外に、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置と同様にして、真空排気装置4、ガス置換装置5を制御する。即ち、真空排気装置4は、制御ユニット6´からの指令により、計測容器167内の空気を排気し、ガス置換装置5は、制御ユニット6´からの指令により、計測容器167内の空気を排気後、ヘリウムガス、窒素ガス等、放射性ガスを含まない清浄ガスに置換する。具体的には、制御ユニット6´は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動することにより、計測容器167内の空気を排気し、その後、電磁式ゲート弁4aを閉じさせると共に、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、計測容器167内の気体を空気から清浄ガスに置換する。
【0122】
この制御ユニット6´は、計測容器167内の清浄ガスの量を一定に保たせることで、真空度が一定となるように制御する。計測容器167内の真空度は真空計14で計測され、この計測結果は制御ユニット6´に送出される。そして、制御ユニット6´は、α線計測部3出力の波高値から半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーを算出する。
【0123】
以上の通り、制御ユニット6´は、計測容器167内の真空度が一定のもと、半導体検出器12に各測定試料11を対向させたときのそれぞれの波高値から、半導体検出器12への入射時のそれぞれのα線のエネルギーを算出している。即ち、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー校正を行っている。この制御ユニット6´によるα線のエネルギー校正については、後述する。なお、第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置では、計測容器167内の空気を清浄ガスに置換するためのガス置換装置5を設けているが、このガス置換装置5を設けずに、真空排気装置4を制御することにより、計測容器167内への空気の量が一定となるように制御することで計測容器10内の真空度を一定に保たせるようにしても良い。
【0124】
(2.1.2 計測容器の構成)
まず、測定試料11を設置してα線を測定するための計測容器167の構成について説明する。
計測容器167は、密閉構造の測定室であり、計測容器167の上部には、低レベルのα線を検出する平板型の半導体検出器12が図示しない固定台に荷電粒子入射面(以下、検出面と称する)を下向きにして固定されて設けられ、半導体検出器12の信号線9は、計測容器167の上部から取り出させる。
【0125】
測定試料11は、3つ共、計測容器167の前面側に設けられた図示しない開閉可能な密封ドアを開閉して、計測容器167内の試料テーブル161に設置される。この試料テーブル161は、前述の通り、制御ユニット6´に制御されるサーボモータ163の回転が伝達されることで、テーブルガイド162上をスライドするため、制御ユニット6´からの指令により、3つの測定試料11の内のいずれか1つを半導体検出器12の対向する位置に移動させることができる。なお、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置と同様にして、前記密封ドアの内面の縁部と、計測容器167の前記密封ドアに対応した開口のフランジ部の縁部外面とは密封構造になっている。
【0126】
(2.1.3 真空排気装置、ガス置換装置の構成)
次に、計測容器167に配管7a、配管7c等を介して接続されている真空排気装置4とガス置換装置5について説明する。
この真空排気装置4、ガス置換装置5は、それぞれ、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置1の真空排気装置4、ガス置換装置5と同様の構成である。同様の構成であることにより、前述の第1の実施形態の荷電粒子の測定装置の説明に記載の通り、真空排気装置4は、電磁式ゲート弁4aを開いて排気ポンプ4bを動作させることにより、計測容器167内の気体を排気するものであり、ガス置換装置5は、電磁式ゲート弁5aを開いて、ガスボンベ5cから放射性ガスを含まない清浄ガスを放出することにより、計測容器167内を、放射性ガスを含まない清浄ガスに置換するものである。
【0127】
(2.1.4 α線計測部の構成)
次に、信号線9を介して半導体検出器12から出力された検出信号からα線のエネルギーが分析されることにより、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーに対応する波高値を出力するα線計測部3について説明する。
このα線計測部3は、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置1のα線計測部3と同様の構成である。同様の構成であることにより、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置1のα線計測部3と同様に動作するため、詳しい説明は省略する。なお、α線計測部3の最終段にあるパルス波高分析器3eは、半導体検出器12に入射したα線のエネルギーに対応する波高値を、制御ユニット6´へ出力する。
【0128】
(2.1.5 制御ユニット)
次に、前述の通り、α線検出部151のサーボモータ163、真空排気装置4、ガス置換装置5を制御すると共に、半導体検出器12に入射するα線のエネルギー校正を行う制御ユニット6´について、説明する。
この制御ユニット6´によって、3つの測定試料11の内のいずれか1つが半導体検出器12と対向する位置に移動させるようにサーボモータ163が制御されると共に、各電磁式ゲート弁4a、5aの開閉、排気ポンプ4bの起動、停止、図示しない前記遮蔽シャッタの開閉が制御される。
【0129】
制御ユニット6´は、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーに対応する波高値を出力するα線計測部3と接続している。そして、制御ユニット6´は、後述の通り、計測容器167内の測定試料11に挿入される薄膜160の全厚tと半導体検出器12に到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係を格納している。なお、薄膜160の全厚tと半導体検出器10aに到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係については予め計算することによって導出し、制御装置6´に格納しておく。ここで、薄膜160の全厚tの定義について説明する。薄膜160の全厚tとは、薄膜160自体の厚さと測定試料11に積み重ねられた薄膜160の枚数との積である。
【0130】
更に、制御ユニット6´は、薄膜160の全厚tが互いに異なる各測定試料11を半導体検出器12に対向させたときの、α線計測部3のパルス波分析器3eのそれぞれの出力の波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpを測定することにより、薄膜160の全厚tと計数率がピークになるときの波高値Chexpとの対応関係を算出する。以下、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpを、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと称する。
【0131】
そして、制御ユニット6´に格納された薄膜160の全厚tと半導体検出器12に到達するまでに損失するα線のエネルギーElossとの対応関係と、制御ユニット6´の動作により得られた薄膜160の全厚tと計数率がピークになるときの波高値(測定値)Chexpとの対応関係とを用いて、α線計測部3のパルス波高分析器3eが出力する波高値と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーとの対応関係を導出する。なお、波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出については、後述する。
【0132】
(2.1.6 波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出)
次に、波高値とα線のエネルギーとの対応関係の算出について、説明する。
α線の本来のエネルギーをE、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーをEn、計測容器167内の気体及び薄膜160により半導体検出器12に入射するまでにα線が損失するエネルギーをElossとすると、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置と同様にして、これらのエネルギーの間には、上記(1)式で示す対応関係が成り立つ。なお、計測容器167内の気体及び薄膜160により半導体検出器12に入射するまでにα線が損失するエネルギーElossを、以下、α線の損失エネルギーElossと称する。
【0133】
図17に、薄膜160の全厚tとα線の損失エネルギーElossとの対応関係を示す。図17より、真空度p=p(一定)のもとで、薄膜160の全厚tが小さいとき、α線の損失エネルギーElossが小さく、逆に、薄膜160の全厚が大きいとき、α線の損失エネルギーElossが大きくなる。なお、薄膜160の全厚tとα線の損失エネルギーElossとの対応関係については、前述の通り、計算で導出することができる。
【0134】
図18に、薄膜160の全厚tをパラメータとしたときの波高値と計数率Rとの対応関係を示す。図18より、真空度p=p(一定)のもと、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、薄膜160の全厚tに応じて異なり、薄膜160の全厚tが小さいほど、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは大きくなる。なお、薄膜160の全厚tと計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpとの対応関係については、前述の通り、測定により導出する。
【0135】
また、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、薄膜160の全厚tのみによって変化するだけでなく、α線の本来のエネルギーEによっても変化する。それは、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnと対応しており、このEnは、上記(1)式より、α線本来のエネルギーEとα線の損失エネルギーElossとの差となるからである。
【0136】
前述のように、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpは、薄膜160の全厚tだけでなく、α線の本来のエネルギーEによっても変化する。従って、α線の本来のエネルギーEが既知である場合には、詳細については後述するが、下記(1−1)から(1−4)までの処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を導出することができる。一方、α線の本来のエネルギーEが未知である場合には、詳細については後述するが、下記(2−1)から(2−7)までの処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を導出することができる。
【0137】
そして、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を導出することができると、波高値とα線のエネルギーとの対応関係を導出することができる。
【0138】
(1)α線の本来のエネルギーEが既知である場合
以下、α線の本来のエネルギーEが既知である場合での計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係の算出について説明する。
【0139】
(1−1)α線の損失エネルギーElossの演算
薄膜160の全厚t(図16の場合、m=2、3、4)の値を、それぞれ、既知である薄膜160単体の厚さtから算出する。なお、mは、測定試料11に積み重ねられる薄膜160の枚数である。全厚tを算出後、薄膜160の各全厚t(m=2、3、4)のときの、α線の損失エネルギーEloss(m=2、3、4)を、それぞれ算出する。なお、前述の通り、薄膜160の全厚tとα線の損失エネルギーElossとは、図17に示す対応関係があることにより、薄膜160の各全厚t(m=2、3、4)からα線の損失エネルギーEloss(m=2、3、4)を、それぞれ算出する。なお、α線の損失エネルギーElossは、真空度p=p(一定)のもとでは、薄膜160の全厚tによって決まることにより薄膜160の全厚tの関数であるため、以下、α線の損失エネルギーElossをEloss(t)と記載する。
【0140】
(1−2)半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnの演算
上記(1−1)で算出したα線の損失エネルギーEloss(t)(m=2、3、4)と、既知であるα線の本来のエネルギーEとを上記(1)式に代入することにより、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(m=2、3、4)を算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnは、真空度p=p(一定)のもとでは、α線の本来のエネルギーEと薄膜160の全厚tの関数となるため、以下、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnを、En(E,t)と記載する。
【0141】
(1−3)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmの測定
各測定試料11に挿入される薄膜160のそれぞれの全厚t(m=2、3、4)において、計数率Rがピークになるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を、測定する。なお、試料テーブル161に設置される各測定試料11に積み重ねられる薄膜160の全厚t(m=2、3、4)が異なることにより、真空度p=p(一定)のもと、測定試料11を所定の順番で、例えば、試料Z、試料Z、試料Zの順番で、半導体検出器12に対向させて測定することにより行う。
【0142】
具体的には、制御ユニット6´は、サーボモータ163を制御することにより、サーボモータ163の駆動により直線運動する試料テーブル161を、測定試料11が所定の順番で半導体検出器12に対向するように移動させる。そして、各測定試料11が半導体検出器12に対向する度に、試料テーブル161を停止させ、計数率Rがピークとなるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定する。
【0143】
計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定するにあたり、真空度p=p(一定)に保つ必要がある。そこで、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定する前に、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器167内の空気を排気して計測容器167内の空気の量を制御することで、真空度p=p(一定)に設定する。または、制御ユニット6´は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器167内の空気のほとんどを排気した後、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、清浄ガスに置換すると共に計測容器167内の清浄ガスの量を制御することで、真空度p=p(一定)に設定する。
【0144】
なお、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmは、α線の本来のエネルギーEと薄膜160の厚さtの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmを、Chexp(E,t)と記載する。
【0145】
(1−4)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との関係の算出
一般的に、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)とは、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置と同様にして、下記(28)式の通り、一次関数で表すことができる。
En(E,t)=a×Chexp(E,t)+b ・・・(28)
En(E,t):半導体検出器12への入射時のα線エネルギー
Chexp(E,t):計数率Rがピークになるときの波高値
a、b:定数(ただし、a≠0)
【0146】
従って、m=2、3、4それぞれの場合の、計数率Rピーク時の波高値Chexp(E,t)及び半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)から、a、bを算出することにより、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との関係を得ることができる。
【0147】
なお、m=2、3、4それぞれの場合の、計数率Rピーク時の波高値Chexp(E,t)は上記(1−3)の測定により得られる。一方、m=2、3、4それぞれの場合の、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)は上記(1−2)の演算により得られる。そこで、m=2、3、4のそれぞれのときのChexp(E,t)とEn(E,t)のデータセット、即ち、図19の通り、(Chexp(E,t)、En(E,t))、(Chexp(E,t)、En(E,t))、(Chexp(E,t)、En(E,t))の3個のデータセットから、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置の説明で記載した最小2乗法により、上記(28)式のa、bを導出することができる。なお、図19は、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を示す図である。
【0148】
前述の説明では、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との関係を得るために、上記(28)式のa、bを算出する際、3個のデータセットを用いて最小2乗法により算出する場合について説明したが、これに限定されるわけではない。4個以上のデータセットを用いて最小2乗法により上記(28)式のa、bを算出するようにしても良い。
【0149】
(2)α線の本来のエネルギーEが未知である場合
以下、α線の本来のエネルギーEが未知である場合における、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係の算出について説明する。α線本来のエネルギーEが未知である場合には、α線本来のエネルギーEが既知である場合での上記(1−2)の処理を行うことができないため、α線本来のエネルギーが既知である場合と同様の手順で、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnとの対応関係を導出することができない。そこで、詳細については後述するが、下記(2−1)〜(2−7)の順序に従って、計数率Rがピークになるときの波高値Chexpと半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの対応関係を導出する。
【0150】
(2−1)α線の損失エネルギーElossの演算
測定試料11に積み重ねられる薄膜160の各全厚t(m=2、3、4)の値を、それぞれ、既知である薄膜160単体の厚さtから算出する。そして、各全厚t(m=2、3、4)のときの、α線の損失エネルギーEloss(m=2、3、4)を、それぞれ算出する。なお、前述の通り、薄膜160の全厚tとα線の損失エネルギーElossとは、図17に示す対応関係があることにより、薄膜160の各全厚t(m=2、3、4)からα線の損失エネルギーEloss(m=2、3、4)を、それぞれ算出することができる。なお、α線の損失エネルギーElossは、真空度p=p(一定)のもとでは、薄膜160の全厚tによって決まることにより全厚tの関数であるため、以下、α線の損失エネルギーElossをEloss(t)と記載する。
【0151】
(2−2)半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)の演算
薄膜160の全厚t、α線の本来のエネルギーEcalをパラメータにして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。即ち、各全厚t(m=2、3、4)の値を用いるだけでなく、各α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)の値を設定して用い、そして、i、mの値に応じた半導体検出器12への入射時のそれぞれのα線エネルギーEn(i,m)を、上記(1)式を変形した下記(29)式より算出する。なお、パラメータとして用いるα線の本来のエネルギーの変数は、未知であるα線のエネルギーEと区別するため、Ecalとする。
【0152】
En(i,m)-=Ecali−Eloss(t) ・・・(29)
cali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1):α線の本来のエネルギー
Eloss(t):α線の損失エネルギー
En(i,m):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
なお、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)-は、α線の本来のエネルギーEcaliと薄膜160の全厚tの関数であるため、以下、半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(i,m)を、En(Ecali,t)と記載する。
【0153】
(2−3)ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の演算
計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpと半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEnとは上記(28)式に示す関係であることにより、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)をChcalとすると、En(Ecali,t)とChcal(Ecali,t)とは、下記(30)式で示す対応関係になる。なお、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)Chcalは、α線の本来のエネルギーEcalと薄膜160の全厚tの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)Chcalを、Chcal(Ecali,t)と記載する。
【0154】
En(Ecali,t)=a×Chcal(Ecali,t)+b ・・・(30)
Chcal(Ecali,t):計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)
En(Ecali,t):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(ただし、a、b共に未知。a≠0)
上記(30)式を変形すると、下記(31)式になる。
Chcal(Ecali,t)={En(Ecali,t)−b}/a ・・・(31)
Chcal(Ecali,t):計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)
En(Ecali,t):半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(ただし、a、b共に未知。a≠0)
【0155】
計数率Rがピークになるときの波高値(計算値)の差分をΔChcal(Ecali,t(m,m+1))とすると、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))は、下記(32)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,t(m,m+1)
=Chcal(Ecali,t)−Chcal(Ecali,tm+1
={En(Ecali,t)−b}/a−{En(Ecali,tm+1)−b}/a(∵式(31)より)
={En(Ecali,t)−En(Ecali,tm+1)}/a
∴ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))={En(Ecali,t)−En(Ecali,tm+1)}/a ・・・(32)
【0156】
同様にして、ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))も、下記(33)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))={En(Ecali,tm+1)−En(Ecali,tm+2)}/a ・・・(33)
上記(32)式、上記(33)式より、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))は、下記(34)式で表すことができる。
ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2)
={En(Ecali,t)−En(Ecali,tm+1)}/{En(Ecali,tm+1)−En(Ecali,tm+2)} ・・・(34)
【0157】
従って、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))を算出するにあたり、まず、上記(2−2)の(29)式を用いて、i、mの値に応じたEn(Ecali,t)、En(Ecali,tm+1)、En(Ecali,tm+2)を算出する。次に、算出したEn(Ecali,t)、En(Ecali,tm+1)、En(Ecali,tm+2)を上記(34)式に代入することにより、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))を、算出する。
【0158】
(2−4)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmの測定
各測定試料11に挿入される薄膜160のそれぞれの全厚t(m=2、3、4)において、計数率Rがピークになるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を、測定する。なお、試料テーブル161に設置される各測定試料11に積み重ねられる薄膜160の全厚t(m=2、3、4)が異なることにより、真空度p=p(一定)のもと、測定試料11を所定の順番で、例えば、試料Z、試料Z、試料Zの順番で、半導体検出器12に対向させて測定することにより行う。
【0159】
具体的には、制御ユニット6´は、サーボモータ163を制御することにより、サーボモータ163の駆動により直線運動する試料テーブル161を、測定試料11が所定の順番で半導体検出器12に対向するように移動させる。そして、各測定試料11が半導体検出器12に対向する度に、試料テーブル161を停止させ、計数率Rがピークとなるときのそれぞれの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定する。
【0160】
計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定するにあたり、真空度p=p(一定)に保つ必要がある。そこで、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexpm(m=2、3、4)を測定する前に、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器167内の空気を排気して計測容器167内の空気の量を制御することで、真空度p=p(一定)に設定する。または、制御ユニット6´は、電磁式ゲート弁4aを開かせると共に、排気ポンプ4bを駆動させることにより、計測容器167内の空気のほとんどを排気した後、電磁式ゲート弁5aを開かせることにより、清浄ガスに置換すると共に計測容器167内の清浄ガスの量を制御することで、真空度p=p(一定)に設定する。
【0161】
なお、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmは、α線の本来のエネルギーEと薄膜160の全厚tの関数であるため、以下、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexpmを、Chexpm(E,t)と記載する。
【0162】
(2−5)ΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))の演算
計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)の差分をΔChexp(E,t(m,m+1))とすると、ΔChexp(E,t(m,m+1))は、下記(35)式で表すことができる。
ΔChexp(E,t(m,m+1))=Chexp(E,t)−Chexp(E,tm+1) ・・・(35)
同様にして、 ΔChexp(E,p(m+1,m+2))は、下記(36)式で表すことができる。
ΔChexp(E,t(m+1,m+2))=Chexp(E,tm+1)−Chexp(E,tm+2) ・・・(36)
【0163】
上記(35)、(36)式を用いて、それぞれ、ΔChexp(E,t(m,m+1))、ΔChexp(E,t(m+1,m+2))を、前述の(2−4)の測定で得られたChexp(E,t)、Chexp(E,tm+1)、Chexp(E,tm+2)から算出する。更に、得られたΔChexp(E,t(m,m+1))、ΔChexp(E,t(m+1,m+2))からΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))を算出する。
【0164】
(2−6)α線の本来のエネルギーEの算出
前述の(2−2)でパラメータとして設定された各α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)に対して、下記(37)式を用いて、Valを演算により導出する。即ち、iの値を固定値とし、各mの値でのΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))とΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))との差分の2乗をそれぞれ算出し、該算出された各差分の2乗の和をValとして算出する。そして、各iの値に対応するValを算出する。なお、各mの値でのΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))は、それぞれ前述の(2−5)、(2−3)により算出される。
【0165】
Val=Σ[{ΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))}−{ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))}]・・・(37)
上記(37)式で算出した各Val(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)の内、Valが最小となるときのEをα線の本来のエネルギーEとする。Valが最小となるときのEをα線の本来のエネルギーEとするのは、測定値に基づくデータΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))との差分の2乗和が最も小さくなることにより、測定値に基づくデータΔChexp(E,t(m,m+1))/ΔChexp(E,t(m+1,m+2))に最も近いデータであるからである。
【0166】
(2−7)計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との関係の算出
前述の(2−6)より、未知であるα線の本来のエネルギーEが算出された後、前述のα線のエネルギーが既知である場合と同様にして、前述の(1−1)〜(1−4)の処理を順番に行うことにより、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,p)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係を導出することができる。
【0167】
(3)まとめ
以上の通り、α線の本来のエネルギーEが既知であるか未知であるかにかかわらず、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との対応関係を導出することができる。従って、制御ユニット6´に、前述の(1−1)〜(1−4)及び(2−1)〜(2−7)の処理を行わせることにより、α線の本来のエネルギーEが既知である場合、未知である場合、共に、波高値とα線のエネルギーとの対応関係を得ることができる。その結果、第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置は、エネルギーの校正を自動的に行うことができる。
【0168】
以下、制御ユニット6´の構成及び制御ユニット6´に、前述の(1−1)〜(1−4)及び(2−1)〜(2−7)の処理を行わせたときの詳細動作について説明する。
<2.2 制御ユニットの構成>
次に、制御ユニット6´の構成について、図20を用いて、説明する。図20は、図16に示すα線測定装置における制御ユニット6´の構成を示すブロック図である。制御ユニット6´は、パーソナルコンピュータ等の計算機であり、図20に示すようにCPU50、メモリ(RAM)51´、キーボード等の入力装置52、ハードディスク等の記憶装置53´、表示モニタ(例えば、液晶ディスプレイ)等の出力装置54、データ及び信号の入出力のためのインターフェース回路(以下、I/Oと称する)55を有している。なお、メモリ(RAM)51´は、第1のメモリ領域51´aと、第2のメモリ領域51´bを有している。
【0169】
記憶装置53´には、前述の通り、図17に示す薄膜の全厚tとα線の損失エネルギーElossとの対応関係のデータテーブルを予め格納している。第1のメモリ領域51´aには、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との対応関係を算出するためのプログラムが記憶装置53´から読み出されて格納している。第2のメモリ領域51´bは、CPU50が第1のメモリ領域51´aに格納されたプログラムを実行中に、算出されたデータ等を格納する。CPU50は、I/O55を介して、出力装置54と接続していると共に、α線計測部3のパルス波高分析器3eと接続している。
【0170】
<2.3 制御ユニットの動作>
CPU50は、第1のメモリ領域51´aに格納されたプログラムを実行する。このプログラムは、前述の通り、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との対応関係を算出するためのプログラムである。
【0171】
このプログラムをCPU50が実行すると、制御ユニット6´は、まず、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度p=p(一定)のもと、それぞれの薄膜の全厚tにおける、α線計測部3のパルス波高分析器3e出力の波高値から、薄膜の全厚tと、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)との対応関係のデータテーブルを得る。
次に、制御ユニット6´は、前述の動作により得られた、薄膜の全厚tと、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)との対応関係のデータテーブル(第4の対応関係情報)と、記憶装置53´に格納された薄膜の全厚tとα線の損失エネルギーElossとの対応関係のデータテーブル(第3の対応関係情報)とから、計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との対応関係を算出する。
【0172】
第1のメモリ領域51´aから読み出されたプログラムをCPU50が実行することにより、制御ユニット6´が前述の通り、動作するが、次に、この制御ユニット6´の動作の詳細について、図21を用いて説明する。図21は、本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置における制御ユニット6´の動作を示すフローチャートである。
【0173】
α線の本来のエネルギーEが既知であるか未知であるかの設定を操作者が入力装置52を用いて行うと、この設定状態を示す信号が入力装置52から制御ユニット6´のCPU50へ送出される。制御ユニット6´は、この設定状態を示す信号に基づき、α線の本来のエネルギーEが既知であるのか未知であるのかをCPU50が判定することで、判定処理S210を行う。α線の本来のエネルギーEが既知である場合には、S217〜S218の処理を行う。一方、α線の本来のエネルギーEが未知である場合には、S211〜S218の処理を行う。
【0174】
(1)α線の本来のエネルギーEが既知である場合の動作説明
まず、α線の本来のエネルギーEが既知である場合の動作について、説明する(S211〜S218は後記)。
【0175】
(1−1)半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnの算出処理及び計数率Rがピークとなる波高値Chexpの測定処理S217
薄膜の全厚tをパラメータとして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnは、前述の(1)式及び図17より、α線の本来のエネルギーE及び薄膜の全厚tの関数であるため、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを、以下、En(E,t)と記載する。半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)の算出とは、具体的には、薄膜の各全厚t(m=2、3、4)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)を算出することである。なお、薄膜の枚数mと薄膜の全厚tとの関係のデータテーブルは、予め記憶装置53´に格納されている。
【0176】
更に、薄膜の全厚tをパラメータとして、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpの測定を行う。なお、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpは、前述の(1)式、(28)式、図17より、α線の本来のエネルギーE及び薄膜の全厚tの関数であるため、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexpを、以下、Chexp(E,t)と記載する。計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定とは、具体的には、薄膜の各全厚t(m=2、3、4)での、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定することである。
【0177】
以下、薄膜の各全厚t(m=2、3、4)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定における制御ユニット6´の詳細動作について、図22を用いて説明する。図22は、薄膜の各全厚t(m=2、3、4)での、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0178】
まず、S220で薄膜の枚数mの値を2とする。次に、S221で薄膜の枚数mの値が2のときの薄膜の全厚tでのα線の損失エネルギーElossを算出する。なお、α線の損失エネルギーElossは、図17より、薄膜の全厚tの関数であるため、α線の損失エネルギーElossを、以下、Eloss(t)と記載する。S221で、mの値が2のときの薄膜の厚さtでのα線の損失エネルギーα線の損失エネルギーEloss(t)を算出するにあたり、予め記憶装置53´に格納された薄膜の全厚tとα線の損失エネルギーEloss(t)との関係のデータテーブル及び薄膜の枚数mと薄膜の全厚tとの関係のデータテーブルを用いる。
【0179】
α線の損失エネルギーEloss(t)を算出した後、S222で、このEloss(t)と記憶装置53´に格納されている既知のα線の本来のエネルギーEとから、上記(1)式を用いて、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)を算出する。そして、S223で、算出した半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)を第2のメモリ領域51´bに格納する。
【0180】
次に、S224〜S227で、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定して第2のメモリ領域51´bに格納する。まず、S224で、2枚の薄膜が挿入された測定試料11(試料Z)の位置合わせを行う。即ち、試料Zを半導体検出器11に対向させるように、サーボモータ163を駆動して試料テーブル161を移動させる。
【0181】
なお、各測定試料11(試料Z、試料Z、試料Z)を半導体検出部12に対向させたときのそれぞれの試料テーブル161の位置Xについては、予め、記憶装置53´に格納されており、試料テーブル161の位置検出は、特開平6−75639号公報に記載されているように、リニアスケールを用いる。そこで、リニアスケールで検知した試料テーブル161の位置が、各測定試料11(試料Z、試料Z、試料Z)を半導体検出部12に対向する位置にあるとき、この対向する位置に試料テーブル161を停止させるよう、制御ユニット6´は動作する。
【0182】
測定試料11(試料Z)の位置合わせをした後、S225で、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pをpに設定する。設定後、S226で、α線計測部3のパルス波高分析器3eより出力される波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定する。そして、S227で、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)を第2のメモリ領域51´bに格納する。
【0183】
以下、同様にして、S228で薄膜の枚数mの値を1ずつ大きくする毎に、S221〜S223で半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)を算出して第2のメモリ領域51´bに格納すると共に、S224〜S227で、m枚の薄膜160が挿入された測定試料11(試料Z)を半導体検出器12に対向させ、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定して第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S229により、薄膜の枚数mが5と等しくなるまで行う。
【0184】
(1−2)計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係の算出処理S218
薄膜の全厚tをパラメータとしたときの、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定をS217で行った後、図21の通り、S218で、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係を算出する。
【0185】
計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)とは、一般的に、前述の(28)式の通り、一次関数で表せる関係である。従って、S217での算出、測定でそれぞれ得られた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)を用いて、前述の(28)式のa、bの値を算出することにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係を導出することができる。
【0186】
なお、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)と、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係を導出するにあたり、最小2乗法を用いる。なお、最小2乗法とは、下記(38)式のデータのばらつき度Sを最小化するa、bの値を算出することである。
【0187】
S=Σ[En(E,t)−{a×Chexp(E,t)+b}] ・・・(38)
ただし、m=2、3、4
S:データのばらつき度
:薄膜の各全厚(m=2、3、4)
Chexp(E,t):薄膜の各全厚tでの、計数率Rがピークとなるときの波高値
En(E,t):薄膜の各全厚tでの、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギー
a、b:定数(a≠0)
【0188】
そして、上記(38)式のデータのばらつき度Sを最小化するa、bの値は、それぞれ下記(39)式、下記(40)式で表すことができる。
a=[ΣChexp(E,t)×ΣEn(E,t)−3×{Σ(Chexp(E,t)×En(E,t))}]/[{ΣChexp(E,t)}−3×Σ{Chexp(E,t)}] ・・・(39)
b=[ΣChexp(E,t)×Σ{Chexp(E,t)×En(E,t)}−ΣEn(E,t)×Σ{Chexp(E,t)}] /[{ΣChexp(E,t)}−3×Σ{Chexp(E,t)}] ・・・(40)
【0189】
ここで、A=ΣChexp(E,t)、B=ΣEn(E,t)、C=Σ{ΣChexp(E,t)}、D=Σ{(Chexp(E,t)×En(E,t)}とすると、上記(39)式、上記(40)式は、それぞれ下記(41)式、(42)式に変形される。
a=(A×B−3×D)/(A−3×C) ・・・(41)
b=(A×D−C)/(A−3×C) ・・・(42)
【0190】
以下、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係の算出における制御ユニット6´の詳細動作について、図23を用いて説明する。図23は、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係の算出における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートでは、まず、上記(41)式、(42)式のA、B、C、Dを算出し、その後でa、bを算出することにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係を算出している。
【0191】
まず、S230で、薄膜の枚数mの値を2とする。次に、S231で、Aの値を0、Bの値を0、Cの値を0、Dの値を0とする。なお、このA、B、C、Dは、S232〜S234により、S235によるa、bの演算を行うときには、下記(43)〜(46)式に示す値となるように処理している。この処理については、後述する。
A=ΣChexp(E,t) ・・・(43)
B=ΣEn(E,t) ・・・(44)
C=Σ{ΣChexp(E,t)} ・・・(45)
D=Σ{(Chexp(E,t)×En(E,t)} ・・・(46)
【0192】
そして、S232で、A、B、C、Dの値を更新する。具体的には、AにChexp(E,t)、BにEn(E,t)、Cに{ΣChexp(E,t)}、Dに(Chexp(E,t)×En(E,t)を加算して得られた値をそれぞれ、新たなA、B、C、Dの値とする。
【0193】
以下、同様にして、S233で薄膜の枚数mを1ずつ大きくする度に、S232によるA、B、C、Dの値の更新を繰り返す。この繰り返し動作は、S234により、薄膜の枚数mの値が5となるまで行う。薄膜の枚数mの値が5になるまでS232〜S234の処理を繰り返すことにより、A、B、C、Dの値は上記(43)〜(46)式に示す値となるので、これらの値を用いて、S235で、a、bを算出する。そして、S236で、算出したa、bの値を第2のメモリ領域51´bに格納する。a、bの値が得られることにより、計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係が得られる。その結果、波高値とエネルギー値との対応関係が得られることにより、エネルギーの校正を行うことができる。
【0194】
(2)α線の本来のエネルギーEが未知である場合の動作説明
次に、α線の本来のエネルギーEが未知である場合の動作について、説明する。
(2−1)半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnの算出処理S211
α線の本来のエネルギーEcalと薄膜の全厚tとをパラメータとして、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを算出する。なお、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnは、前述の(1)式及び図17より、α線本来のエネルギーEcalと薄膜の全厚tの関数であるため、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnを、以下、En(Ecal,t)と記載する。
【0195】
半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal,t)の算出とは、具体的には、α線の本来のエネルギーEcali(i=0、1、2、3、、・・・・I−1)のα線エネルギーパラメータiの値、薄膜の全厚t(m=2、3、4)の枚数mの値を変えることにより、各i、mの値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)を算出することである。なお、α線エネルギーパラメータiとα線の本来のエネルギーEcaliとの関係のデータテーブルと、薄膜の枚数mと薄膜の全厚tとの関係のデータテーブルとは、予め記憶装置53´に格納されている。Iはα線エネルギーパラメータiの個数である。
【0196】
以下、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=2、3、4)の値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)の算出における制御ユニット6´の詳細動作について、図24を用いて説明する。図24は、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=2、3、4)の値に応じた半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)の算出における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0197】
まず、S240でα線エネルギーパラメータiの値を0、そして、S241で薄膜の枚数mの値を2とする。次に、S242で、薄膜の枚数m=2のときの全厚tにおけるα線の損失エネルギーEloss(t)を算出する。α線の損失エネルギーEloss(t)を算出するにあたり、予め記憶装置53´に格納された薄膜の全厚tとα線の損失エネルギーEloss(t)との関係のデータテーブル及び薄膜の枚数mと薄膜の全厚tとの関係のデータテーブルを用いる。
【0198】
α線の損失エネルギーEloss(t)を算出した後、S243で、このEloss(t)とα線の本来のエネルギーEcal0とから、上記(1)式を用いて、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,t)を算出する。なお、α線の本来のエネルギーEcal0は、予め記憶装置53´に格納されたα線エネルギーパラメータiとα線の本来のエネルギーEcaliとの関係のデータテーブルの内、i=0のときのα線の本来のエネルギーEcal0のときのデータである。そして、S244で、算出した半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,t)を第2のメモリ領域51´bに格納する。
【0199】
以下、同様にして、S245で薄膜の枚数mの値を1ずつ大きくする度に、S242〜S244により、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal0,t)を算出して第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S246より、薄膜の枚数mの値が5となるまで行う。
【0200】
薄膜の枚数mの値が5になると、S247でα線エネルギーパラメータiの値を0から1に更新し、S241で薄膜の枚数mの値を5から2に更新する。以下、前述のα線エネルギーパラメータi=0のときのS242〜S246までの動作と同様にして、薄膜の枚数mの値が5になるまで、半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecal1,t)を算出して第2のメモリ領域51´bに格納する度に、薄膜の枚数mの値を1ずつ大きくするのを繰り返す。
【0201】
そして、薄膜の枚数mの値が再度5になると、S247でα線エネルギーパラメータiの値を1ずつ大きくする度に、S241〜S246により、薄膜の枚数mの値が2から4までのそれぞれの半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)を算出して第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S248より、α線エネルギーパラメータiの値がIとなるまで行う。Iはα線エネルギーパラメータiの個数である。
【0202】
(2−2)ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出処理S212
半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)の算出を行った後、図21の通り、S212で各α線エネルギーパラメータi、薄膜の枚数mの値に応じたΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出を行う。
【0203】
以下、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、m(m=2)の値に応じたΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出における制御ユニット6´の詳細動作について、図25を用いて説明する。図25は、各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、m(m=2)の値に応じたΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0204】
まず、S250でmの値を2、そして、S251でiの値を0とする。次に、S252でΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4))を算出する。なお、ΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4))を算出するにあたり、i=0、m=2のときの上記(34)式である下記(47)式から算出する。
ΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4)
={En(Ecal0,t)−En(Ecal0,t)}/{En(Ecal0,t)−En(Ecal0,t)} ・・・(47)
従って、前述のS211で算出されて第2のメモリ領域51´bに格納されたEn(Ecal0,t)、En(Ecal0,t)、En(Ecal0,t)とから、上記(47)式を用いてΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4))を算出する。
【0205】
そして、S253で、上記(47)式の演算により算出したΔChcal(E,t(2,3))/ΔChcal(E,t(3,4))を第2のメモリ領域51´bに格納する。その後、S254でiの値を1ずつ大きくする度に、S251〜S255より、iの値がI−1となるまで、ΔChcal(Ecali,t(2,3))/ΔChcal(Ecali,t(3,4))を算出し、この算出結果を第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。
なお、ΔChcal(Ecali,t(2,3))/ΔChcal(Ecali,t(3,4))を算出する際、前述のS211で算出されて第2のメモリ領域51´bに格納された各iの値でのEn(Ecali,t)、En(Ecali,t)、En(Ecali,t)から、m=2のときの上記(34)式を用いて算出する。
【0206】
(2−3)計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定処理S213
各i、mの値に応じたΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出を行った後、図21の通り、S213で、未知のエネルギーEのα線が半導体検出器12に入射した際、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)を、半導体検出器12に対向する測定試料11を変えることで薄膜の全厚tを変化させることにより、測定する。
【0207】
以下、薄膜の枚数m(m=2、3、4)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値(波高値)Chexp(E,t)の測定における制御ユニット6´の詳細動作について、図26を用いて説明する。図26は、薄膜の枚数m(m=2、3、4)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値Chexp(E,t)の測定における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0208】
まず、S260で薄膜の枚数mの値を2とする。そして、S261で、2枚の薄膜が挿入された測定試料11(試料Z)の位置合わせを行う。即ち、試料Zを半導体検出器11に対向させるように、サーボモータ163を駆動して試料テーブル161を移動させる。なお、各測定試料11(試料Z、試料Z、試料Z)を半導体検出部12に対向させたときのそれぞれの試料テーブル161の位置Xについては、予め、記憶装置53´に格納されており、試料テーブル161の位置検出は、特開平6−75639号公報に記載されているように、リニアスケールを用いる。そこで、リニアスケールで検知した試料テーブル161の位置が、各測定試料11(試料Z、試料Z、試料Z)を半導体検出部12に対向する位置にあるとき、この対向する位置に試料テーブル161を停止させるよう、制御ユニット6´は動作する。
【0209】
測定試料11(試料Z)の位置合わせをした後、S262で、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度pをpに設定する。設定後、S263で未知のエネルギーEのα線を放射する。S264で、α線計測部3のパルス波高分析器3e出力の波高値に基づいて、計数率Rがピークになるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定する。そして、S265で、この測定により得た計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)を第2のメモリ領域51´bに格納する。
【0210】
その後、S266で薄膜の枚数mの値を1ずつ大きくする毎に、S261〜S265で、薄膜の枚数mの測定試料11(試料Z)を半導体検出器12に対向させるように、サーボモータ163を駆動して試料テーブル161を移動させると共に、電磁式ゲート弁4a、排気ポンプ4b、電磁式ゲート弁5aを制御することにより、真空度p=pに設定する。そして、測定試料(試料Z)を半導体検出器12に対向させるための試料テーブルの移動、真空度の設定が行われる度に、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)を測定し、この測定結果を第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S267により、薄膜の枚数mの値が5と等しくなるまで行う。
【0211】
(2−4)ΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の算出処理S214
計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)の測定を行った後、図21の通り、S214で、mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の値を算出する。
【0212】
以下、ΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニット6´の詳細動作について、図27を用いて説明する。図27は、m=2のときのΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0213】
まず、S270で、mの値を2とする。そして、S271で、ΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))の値を算出する。なお、ΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))を算出するにあたり、m=2のときの上記(35)式、(36)式を、即ち、下記(48)式、(49)式を用いる。
ΔChexp(E,t(2、3))=Chexp(E,t)−Chexp(E,t)・・・(48)
ΔChexp(E,t(3、4))=Chexp(E,t)−Chexp(E,t)・・・(49)
【0214】
即ち、前述のS213で測定され第2のメモリ領域51´bに格納されたChexp(E,t)、Chexp(E,t)、Chexp(E,t)から、上記(48)式、(49)式を用いて、ΔChexp(E,t(2、3))、ΔChexp(E,t(3、4))を算出する。更に、この算出結果を用いてΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))を算出する。そして、S272で、算出したΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))の値を第2のメモリ領域51´bに格納する。
【0215】
(2−5)Valの算出処理S215
ΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の算出を行った後、図21の通り、S215で各Val(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)を算出する。なお、Valは、上記(37)式の通り、iを一定値、mをパラメータとしたときの、ΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))とΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))との差分の2乗和である。
以下、Valを算出するための制御ユニット6の詳細動作について、図28を用いて説明する。図28は、Valを算出するための制御ユニット6´の詳細動作を示すフローチャートである。
【0216】
まず、S280でiの値を0にし、更に、S281でValの値を0にする。そして、S282でmの値を2にし、更に、S283で下記(50)式の演算を行う。なお、下記(50)式の演算を行うにあたり、前述のS212で算出されて第2のメモリ領域51´bに格納されたΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4))と、前述のS214で算出されて第2のメモリ領域51´bに格納されたΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))とから算出する。
(0,2)={ΔChcal(Ecal0,t(2,3))/ΔChcal(Ecal0,t(3,4))−ΔChexp(E,t(2、3))/ΔChexp(E,t(3、4))} ・・・(50)
【0217】
そして、S284により、Valの値を0からV(0,2)に更新する。即ち、前述のS281で値を0とすることで初期設定されたValに、前述のS283の演算で得たV(0,2)を加算することによって得られた値を、新たなValの値とする。
以上の動作により算出されるValは下記(51)式で表すことができる。
Val=V(0,2)
={ΔChcal(Ecal0,p(2,3))/ΔChcal(Ecal0,p(3,4))−ΔChexp(E,p(2、3))/ΔChexp(E,p(3、4))} ・・・(51)
【0218】
そして、S285で、算出されたValを第2のメモリ領域51´bに格納する。その後、S286でiの値を1ずつ大きくする度に、S281〜S285の処理を行うことにより、前述のValの演算、第2のメモリ領域51´bへの格納と同様にして、各Valを算出して第2のメモリ領域51´bに格納するのを繰り返す。なお、この繰り返し動作は、S287でiの値がIになるまで行う。
【0219】
以上の処理により算出される各Val(i=1、2、3、・・・、I−1)は、下記(52)式で表すことができる。
Val=V(i,2)
={ΔChcal(Ecali,p(2,3))/ΔChcal(Ecali,p(3,4))−ΔChexp(E,p(2、3))/ΔChexp(E,p(3、4))} ・・・(52)
【0220】
(2−6)α線の本来のエネルギーEの算出処理S216
各Val(i=0、1、2、3、・・・、I−1)の算出を行った後、図21の通り、S216で未知であるα線のエネルギーEを算出する。未知であるα線のエネルギーEを算出する際、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置と同様にして、図14に示すフローチャートに従って、制御ユニット6´が動作することにより算出する。図14は、未知であるα線のエネルギーEを算出するための制御ユニット6の詳細動作を示すフローチャートであるが、このフローチャートを用いた制御ユニット6´の動作説明については、前述の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置と同じであるため、省略する。
【0221】
このフローチャートでは、前述のS215で算出した各Valの内、Valが最小となるiの値でのEを、未知であるα線のエネルギーEとする。Valが最小となるiの値でのEを、未知であるα線のエネルギーEとするのは、測定値に基づくデータとの差分の2乗和が最も小さくなることにより、測定値に基づくデータに最も近いデータであるからである。
【0222】
(2−7)計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係の算出処理
未知であるα線のエネルギーEが算出された後、図21の通り、前述のα線のエネルギーが既知である場合と同様にして、前述の(1)に記載のS217及びS218の処理を行うことにより、計数率Rがピークとなるときの波高値(測定値)Chexp(E,t)と半導体検出器12への入射時のα線のエネルギーEnとの関係を導出することができる。その結果、波高値とエネルギー値との対応関係が得られることにより、エネルギーの校正を行うことができる。
【0223】
以上の通り、本発明の第2実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置は、放射線の本来のエネルギーが既知であるか未知であるかにかかわらず、エネルギーの校正を行うことができる。なお、本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置は、3つの測定試料を有すると共に各測定試料にそれぞれ2枚、3枚、4枚の薄膜を積み重ねている場合のα線測定装置であるが、本発明はこれに限定されるものではない。4つ以上の測定試料を有する場合や各測定試料に積み重ねられる薄膜の枚数が本発明の第2の実施形態の荷電粒子であるα線測定装置と異なっている場合でも、同様にして、エネルギーの校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】本発明の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置の構成を示すブロック図。
【図2】真空度pとα線の損失エネルギーElossとの対応関係を示す図。
【図3】真空度pをパラメータとしたときの波高値と計数率Rとの対応関係を示す図。
【図4】計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,p)と半導体検出器への入射時のα線エネルギーEn(E,p)との対応関係を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置における制御ユニットの構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第1の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置における制御ユニットの動作を示すフローチャート。
【図7】各真空度p(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)での、半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,p)の測定における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図8】計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,p)と半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(E,p)との関係の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図9】各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,p)の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図10】各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じたΔChcal(Ecali,p(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,p(m+1,m+2))の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図11】真空度パラメータm(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値Chexp(E,p)の測定における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図12】mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,p(m、m+1))/ΔChexp(E,p(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図13】Valを算出するための制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図14】未知であるα線のエネルギーEを算出するための制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図15】本発明の第2の実施形態であるα線測定装置の構成を示すブロック図。
【図16】本発明の第2の実施形態であるα線測定装置のα線検出部の構成を示す図。
【図17】薄膜の全厚tをパラメータとしたときの波高値と計数率Rとの対応関係を示す図。
【図18】薄膜の全厚tをパラメータとしたときの波高値と計数率Rとの対応関係を示す図。
【図19】計数率Rがピークになるときの波高値Chexp(E,t)と半導体検出器への入射時のα線エネルギーEn(E,t)との対応関係を示す図。
【図20】本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置における制御ユニットの構成を示すブロック図。
【図21】本発明の第2の実施形態の荷電粒子測定装置であるα線測定装置における制御ユニットの動作を示すフローチャート。
【図22】薄膜の各全厚t(m=0、1、2、3、・・・・、M)での、半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)の算出、計数率Rがピークとなる波高値(測定値)Chexp(E,t)の測定における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図23】計数率Rがピークとなる波高値Chexp(E,t)と半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(E,t)との関係の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図24】各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M)の値に応じた半導体検出器への入射時のα線のエネルギーEn(Ecali,t)の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図25】各i(i=0、1、2、3、・・・・、I−1)、各m(m=0、1、2、3、・・・・、M−1)の値に応じたΔChcal(Ecali,t(m,m+1))/ΔChcal(Ecali,t(m+1,m+2))の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図26】薄膜の枚数m(m=0、1、2、3、・・・・、M)の値に応じた、計数率Rがピークとなるときの波高値Chexp(E,t)の測定における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図27】mをパラメータにしたときの各ΔChexp(E,t(m、m+1))/ΔChexp(E,t(m+1、m+2))の値の算出における制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【図28】Valを算出するための制御ユニットの詳細動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0225】
1、150:α線測定装置
2、151:α線検出部
3:α線計測部
3a:バイアス電源
3b:カップリングコンデンサ
3c:前置増幅器
3d:線形増幅器
3e:パルス波高分析器
4:真空排気装置
4a:電磁式ゲート弁
4b:排気ポンプ
4c:配管
5:ガス置換装置
5a:電磁式ゲート弁
5b:圧力調整器
5c:置換用ガスボンベ
5d:配管
6、6´:制御ユニット
7a:配管
7b:配管
7c:配管
8:電磁式ゲート弁
9:信号線
10:計測容器
11:測定試料
12:半導体検出器
13:試料トレイ
14:真空計
50:CPU
51、51´:メモリ(RAM)
51a、51´a:第1のメモリ領域
51b、51´b:第2のメモリ領域
52:入力装置
53、53´:記憶装置
54:出力装置
55:I/O
160:薄膜
161:試料テーブル
162:テーブルガイド
163:サーボモータ
164:カップリング
165:モータホルダ
166:ガイドホルダ
167:計測機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子検出器と、該荷電粒子検出器に対向するように測定試料を保持する試料保持部とを内蔵する計測容器と、
前記荷電粒子検出器と接続され前記荷電粒子検出器入射時の荷電粒子のエネルギーに対応するレベルの信号を出力する放射線計測部と、
前記計測容器内に連通する配管を介して接続され、前記計測容器内の気体を排出する排気ポンプと、
前記配管上に設けられ、前記計測容器内の真空度を調整する真空調整バルブとを有する荷電粒子測定装置において、
前記真空度と、前記荷電粒子検出器に前記荷電粒子が入射するまでに前記荷電粒子が損失するエネルギーとの対応関係を示す第1の対応関係情報を格納する記憶部と、
前記真空調整バルブと前記排気ポンプを制御すると共に、該制御により、前記計測容器内の真空度をパラメータとしたときの前記放射線計測部の各出力から、前記真空度と、計数率が最大となるときの前記放射線計測部の出力レベルとの対応関係を示す第2の対応関係情報を算出し、
更に、前記記憶部に格納された第1の対応関係情報と、前記算出により得られた前記第2の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子のエネルギーが既知であるとき、
前記制御部は、
前記荷電粒子のエネルギーと、前記記憶部に格納された前記第1の対応関係情報とに基づいて、前記真空度と、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出し、
該算出した、前記真空度と、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係と、前記第2の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部であることを特徴する荷電粒子測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子のエネルギーが未知であるとき、
前記制御部は、
前記荷電粒子のエネルギー及び前記真空度をパラメータとしたときの前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーをそれぞれ算出し、
パラメータとした前記荷電粒子の各エネルギーにおける前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子の算出した複数のエネルギー値に基づき、前記真空度が所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量と、前記真空度が更に所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量との比を複数個、第1のデータ群としてそれぞれ算出し、
前記第2の対応関係情報に基づき、前記真空度が所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量と、前記真空度が更に所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量との比を複数個、第2のデータ群として算出し、
パラメータとした前記荷電粒子のエネルギー毎に、前記第1のデータ群と前記第2のデータ群の内、前記第1のデータ群のデータと、該データと対応する前記第2のデータ群のデータとの差の2乗和を算出し、該2乗和に基づいて、未知である前記荷電粒子のエネルギーを決定し、
該決定した前記荷電粒子のエネルギーと前記記憶部に格納された前記第1の対応関係情報とに基づいて、前記真空度と、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出し、
該算出した、前記真空度と、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係と、前記第2の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部であることを特徴する荷電粒子測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の荷電粒子測定装置において、
前記制御部は、未知である前記荷電粒子のエネルギーを決定する際、
パラメータとした前記荷電粒子のエネルギーの内、前記2乗和が最も小さい値となったときの前記荷電粒子のエネルギーを、未知である前記荷電粒子のエネルギーに決定する制御部であることを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子はα線であることを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項6】
荷電粒子検出器と、該荷電粒子検出器に対向するように測定試料を保持する試料保持部とを内蔵する計測容器と、
前記荷電粒子検出器と接続され前記荷電粒子検出器入射時の荷電粒子のエネルギーに対応するレベルの信号を出力する放射線計測部と、
前記計測容器内に連通する配管を介して接続され、前記計測容器内の気体を排出する排気ポンプと、
前記配管上に設けられ、前記計測容器内の真空度を調整する真空調整バルブとを用いた荷電粒子測定装置の荷電粒子エネルギー校正方法において、
前記真空調整バルブと前記排気ポンプを制御すると共に、該制御により、前記計測容器内の真空度をパラメータとしたときの前記放射線計測部の各出力から、前記真空度と、計数率が最大となるときの前記放射線計測部の出力レベルとの対応関係を示す第2の対応関係情報を算出し、
予め記憶部に格納された、前記真空度と、前記荷電粒子検出器に前記荷電粒子が入射するまでに前記荷電粒子が損失するエネルギーとの対応関係を示す第1の対応関係情報と、前記算出により得られた前記第2の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する
ことを特徴とする荷電粒子エネルギー校正方法。
【請求項7】
荷電粒子検出器と、厚さがそれぞれ異なる薄膜が積み重ねられた3つ以上の測定試料を保持し、該3つ以上の測定試料の内のいずれか1つを前記荷電粒子検出器に対向する位置に移動させる試料移動保持部とを内蔵する計測容器と、
前記荷電粒子検出器と接続され前記荷電粒子検出器入射時の荷電粒子のエネルギーに対応するレベルの信号を出力する放射線計測部と、
前記計測容器内に連通する配管を介して接続され、前記計測容器内の気体を排出する排気ポンプと、
前記配管上に設けられ、前記計測容器内の真空度を調整する真空調整バルブとを有する荷電粒子測定装置において、
前記挿入された薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器に前記荷電粒子が入射するまでに前記荷電粒子が損失するエネルギーとの対応関係を示す第3の対応関係情報を格納する記憶部と、
前記真空調整バルブと前記排気ポンプを制御することにより、前記真空度を一定にすると共に、前記試料移動保持部を制御することにより、前記3つ以上の測定試料の各々を前記荷電粒子検出器に対向する位置に移動させたときの前記放射線計測部の各出力から、前記薄膜の厚さと、計数率が最大となるときの前記放射線計測部の出力レベルとの対応関係を示す第4の対応関係情報を算出し、
更に、前記記憶部に格納された第3の対応関係情報と、前記算出により得られた前記第4の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子のエネルギーが既知であるとき、
前記制御部は、
前記荷電粒子のエネルギーと、前記記憶部に格納された前記第3の対応関係情報とに基づいて、前記薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出し、
該算出した、前記薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係と、前記第4の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部であることを特徴する荷電粒子測定装置。
【請求項9】
請求項7記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子のエネルギーが未知であるとき、
前記制御部は、
前記荷電粒子のエネルギー及び前記薄膜の厚さをパラメータとしたときの前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーをそれぞれ算出し、
パラメータとした前記荷電粒子の各エネルギーにおける前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子の算出した複数のエネルギー値に基づき、前記薄膜の厚さが所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量と、前記薄膜の厚さが更に所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量との比を複数個、第3のデータ群としてそれぞれ算出し、
前記第4の対応関係情報に基づき、前記薄膜の厚さが所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量と、前記薄膜の厚さが更に所定量変化したときの前記放射線計測部の出力レベルの変化量との比を複数個、第4のデータ群として算出し、
パラメータとした前記荷電粒子のエネルギー毎に、前記第3のデータ群と前記第4のデータ群の内、前記第3のデータ群のデータと、該データと対応する前記第4のデータ群のデータとの差の2乗和を算出し、該2乗和に基づいて、未知である前記荷電粒子のエネルギーを決定し、
該決定した前記荷電粒子のエネルギーと前記記憶部に格納された前記第3の対応関係情報とに基づいて、前記薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出し、
該算出した、前記薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器入射時の前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係と、前記第4の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する制御部であることを特徴する荷電粒子測定装置。
【請求項10】
請求項7記載の荷電粒子測定装置において、
前記制御部は、未知である前記荷電粒子のエネルギーを決定する際、
パラメータとした前記荷電粒子のエネルギーの内、前記2乗和が最も小さい値となったときの前記荷電粒子のエネルギーを、未知である前記荷電粒子のエネルギーに決定する制御部であることを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10の何れか1項記載の荷電粒子測定装置において、
前記荷電粒子はα線であることを特徴とする荷電粒子測定装置。
【請求項12】
荷電粒子検出器と、厚さがそれぞれ異なる薄膜が積み重ねられた3つ以上の測定試料を保持し、該3つ以上の測定試料の内のいずれか1つを前記荷電粒子検出器に対向する位置に移動させる試料移動保持部とを内蔵する計測容器と、
前記荷電粒子検出器と接続され前記荷電粒子検出器入射時の荷電粒子のエネルギーに対応するレベルの信号を出力する放射線計測部と、
前記計測容器内に連通する配管を介して接続され、前記計測容器内の気体を排出する排気ポンプと、
前記配管上に設けられ、前記計測容器内の真空度を調整する真空調整バルブとを用いた荷電粒子測定装置の荷電粒子エネルギー校正方法において、
前記真空調整バルブと前記排気ポンプを制御することにより、前記真空度を一定にすると共に、前記試料移動保持部を制御することにより、前記3つ以上の測定試料の各々を前記荷電粒子検出器に対向する位置に移動させたときの前記放射線計測部の各出力から、前記薄膜の厚さと、計数率が最大となるときの前記放射線計測部の出力レベルとの対応関係を示す第4の対応関係情報を算出し、
予め記憶部に格納された、前記薄膜の厚さと、前記荷電粒子検出器に前記荷電粒子が入射するまでに前記荷電粒子が損失するエネルギーとの対応関係を示す第3の対応関係情報と、前記算出により得られた前記第4の対応関係情報とに基づいて、前記放射線計測部の出力レベルと前記荷電粒子のエネルギーとの対応関係を算出する
ことを特徴とする荷電粒子エネルギー校正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2009−85899(P2009−85899A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259332(P2007−259332)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】