菌体懸濁ゲル培養によるマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法
【課題】迅速にマツタケの培地を形成することが可能な方法を提供する。
【解決手段】培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩とゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源培養液と窒素培養液を生成して、一方にマツタケ菌糸体を投入して、ゲル剤を含む培養液を添加して、炭素源培養液と窒素源培養液との混合系のゲル化を空気含有で促進させた菌体懸濁ゲルを暗室下で培養する。
【解決手段】培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩とゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源培養液と窒素培養液を生成して、一方にマツタケ菌糸体を投入して、ゲル剤を含む培養液を添加して、炭素源培養液と窒素源培養液との混合系のゲル化を空気含有で促進させた菌体懸濁ゲルを暗室下で培養する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マツタケの人工シロ形成方法に関するものである。本発明は、マツタケ菌糸が土壌の粒の間にまんべんなく増殖しているマツタケの種菌を作製し、それをアカマツ山林へ植え込むことで新たな「シロ」を形成させ、マツタケの増産に結びつけることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
マツタケは担子菌類に属し、その菌糸をアカマツ等の宿主植物の根に侵入させて菌根を形成し、栄養物等を宿主植物から吸収することによって生活する菌根菌である。マツタケは高級食材として古くから珍重されているがその生産量は年々減少している。
【0003】
マツタケの人工栽培の研究の妨げになっている要因の一つとして、菌糸成長が極めて遅いことが挙げられており、最適条件でも菌糸が1mm伸びるために4日間を要するといわれている。そのため菌糸の成長を促す培養法が検討されている。
【0004】
例えば、アカマツの側根及び根毛の先端より分離した糸状菌Mortierella sp.等を40日間培養し、その培養濾液を15倍に濃縮したものをマツタケ菌培養液に添加することにより、菌糸の収量が2倍以上促進されたことが報告されている。
【0005】
しかしながら、上記のように糸状菌の培養濾液を調整するには長時間を要し、濃縮操作が必要であるなど煩瑣な作業を必要とする。上記培養濾液を連続的に添加することでマツタケ菌の収量は更に増加することも報告されているが、この場合も煩瑣な作業を増すことになる。
【0006】
菌糸の収量を増加させるために最も効率的と考えられるのは、マツタケ菌培養液に糸状菌を接種して同時培養することであるが、その場合は糸状菌の生育がはるかに早く、糸状菌のみが生育しマツタケ菌の生育が抑制されるため同時培養法を採用することは難しい。
【0007】
一般に、マツタケを大量培養するための効率的な方法として、きのこの菌糸体を液体培養基中で増殖する方法がある。しかしマツタケは外生菌根菌であるために、その増産には生きた樹木の根が必要である。マツタケの発生する場所には菌糸の集まり(シロ)が存在し、このシロを誘導することが、マツタケ増産の重要な一歩となっている(非特許文献1参照)。
【0008】
しかし、自然環境下では、栄養源に富んだアカマツ(マツタケ菌の宿主)生息域に、腐生菌、糖依存菌が優先的に繁殖するため、マツタケ菌(共生菌)は、シロを形成しにくい状況にある。
【0009】
マツタケ(Tricholoma matsutake(S.lto et lmai)Sing.)の人工栽培に関する研究は古くから行われているが、一般にマツタケの人工栽培はいまだに不可能である。
【0010】
以下、今日までのマツタケ人工栽培に関する研究経緯について述べる。Masuiは、マツタケがアカマツに菌根を形成することを実験的に示した(非特許文献2参照)。
富永は、マツタケ菌糸の成長の最適条件について検討した(非特許文献3参照)。小川らは、純粋培養によるマツタケ子実体原基の形成を検討した(非特許文献4参照)。しかし、マツタケのシロを誘導した成功例はいまだに知られていない。
【0011】
本発明を為すにあたり、マツタケの人工栽培の研究の妨げになっている要因の一つとして、菌糸の成長が極めて遅いことに着目した。これまでマツタケ増産技術として、林地にマツタケ菌糸を接種して新しいシロを人工的に造成する方法が試みられている。しかし、実用的に利用できるほどマツタケ菌糸が成長してシロを形成した例はない。したがって、現段階ではマツタケの人工栽培の開発は困難と考えられている。
【0012】
そこで、マツタケの「シロ」の形成に関する新たな試みとして、次のような特許が出願された。(1)マツタケ菌糸の生育を抑制する微生物の影響を排除して「シロ」を形成させるために、マツタケ菌糸の生育は抑制しないが、その他の微生物の生育を抑制するストレプトマイセス属の放線菌及びコリネバクテリウム属の細菌とマツタケ菌糸の混合微生物を、「シロ」形成の場に適用する方法(特許文献1参照)、(2)「シロ」をより確実に形成するために、アカマツの根に菌根を形成させる「場」である菌根形成容器内に充填する鉱物質及び「シロ」の形成が行われる土壌を、(1)に記載の混合微生物で処理する方法(特許文献2参照)、(3)菌根性茸の宿主となる木の根を2月から5月の間に切断して、そこに新たな毛根が生ずる2月から5月の間に、その切断箇所の土壌に菌根性茸の菌を接種して、人工的に「シロ」の形成を行なう方法(特許文献3参照)、(4)地面を掘削して宿主の木の根を露出させ、その根の表面から木質部に至るまでの切欠部を穿設し、その切欠部ないしその近傍に菌根性茸の菌を接種して、腐葉層を含まない山土でそれらを覆い「シロ」を順調に形成させる方法(特許文献4参照)、及び(5)アカマツの木を中心とする円弧上に定角度間隔で針穴を掘り下げ、その一つ置きの針穴にマツタケ菌糸を、残りの針穴に菌糸活性材をそれぞれ充填し、「シロ」を発生させる方法(特許文献5参照)である。
【0013】
しかし、実際にこの方法で種菌を作製してみると、培地全体に水が行きわたって土壌中に隙間ができず、そこでマツタケ菌糸を培養しても、その培地の表面だけでその菌糸が増殖してしまい、土壌中にその菌糸が伸びていかなかった。また、混ぜ合わせる水の量を少なく調整して、その土壌が粒となり、土壌中に隙間ができる培地にして、それにマツタケ菌糸を植え付けて培養しても、水分含量が少ないためにその菌糸は新たな培地でほとんど増殖できなかった。
【0014】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは分別調合して、金属塩とゲル化剤を使用した文献も存在している(特許文献6〜9参照)。
【0015】
特に培地成分に関して、菌体懸濁ゲル作成に用いる培地に含まれる亜鉛化合物、葉酸、ニコチン酸が他の特許内で言及されている培地においても用いられているが、亜鉛化合物は、一般的に菌の生長に必須の微量栄養素であると言われており、さらに葉酸およびニコチン酸は、マツタケ菌の生長促進物質として挙げられている(非特許文献1参照)。従ってそれら3種の培地成分自体は、特許文献6〜9に示すように一般的な組成成分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5−153856号公報
【特許文献2】特開平5−316876号公報
【特許文献3】特開平5−260848号公報
【特許文献4】特開平10−113070号公報
【特許文献5】特開平11−103668号公報
【特許文献6】特開平10−309188号公報
【特許文献7】特開2002−218843号公報
【特許文献8】特開2004−65225号公報
【特許文献9】特公平7−110225号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】小川真(1991)マツタケの生物学333pp.築地書館
【非特許文献2】Masui,K.(1927)Mem.Coll.Sci.Kyoto Univ.B(2)2,149−279
【非特許文献3】Tominaga,Y.(1965)Bull.Hiroshima Agri.Coll.2:242−246
【非特許文献4】Oqawa,M&Hamada,M(1975)Trans.Mycol.Soc.Japan16:406−415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記事情に鑑み、本発明者らは、菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たってマツタケ増産の重要な一歩となる培養について検討した。
【0019】
本発明の目的は、迅速にマツタケの培地を形成することが可能な方法を提供することにある。従来の問題点を解消し、マツタケ菌の収量を向上させることのできる人工培養法を提供することを目的とする、水及び各種栄養分を培地の基材と条件とした時に、培養する培地中に空気が混じり込んで隙間を形成して、そこでマツタケ菌糸を培養し、培地の状態、条件によってその菌糸が均一、まんべんなく増殖することが望まれる。これを目的としたマツタケ子実体様菌糸塊を培養することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、菌体懸濁ゲルとして、培養培地で作成した菌体懸濁液を低温でゲル化させて作成する新しい培養系である。菌体懸濁ゲルは、任意の培地で作成可能で、種々の合成培地で作成した菌体懸濁ゲルにおいて、マツタケ子実体原基様菌糸塊を形成して、以下に菌体懸濁ゲルの作成法とマツタケ子実体原基様菌糸塊の形成を完成させた。
【0021】
菌体懸濁ゲル培養によるマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とを別々に炭素源、又は窒素源に加えて、それぞれを高温殺菌処理した後に、マツタケ菌糸体懸濁液を投入して培養するにおいて、金属塩として亜鉛源と、アミノ酸源としてニコチン酸、及び葉酸を含有している菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0022】
マツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として炭素源と、窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とに炭素源、又は窒素源に加えた後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体懸濁液を投入し、ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系において、当該混合系の低温ゲル化で撹拌を行いながら、菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養育成する。
【0023】
還元末端を有する糖類である炭素源は、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン、フルクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、から選ばれた2種類以上である。
【0024】
アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源は、グリシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、セリン、バリン、チアミン塩酸、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカーのアミノ酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、ピリドキシン塩酸のアミノ基のビタミン類から選ばれた2種類以上であって、ニコチン酸と葉酸を必修に含有している。
【0025】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源との重量比率は、炭素源/窒素源=2〜10である。
【0026】
金属塩は、金属塩のハロゲン化物、または硫酸塩、リン酸塩であって、塩化鉄塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルトから選ばれた2種類以上であって、少なくとも亜鉛化合物を含有する。
【0027】
培地への添加剤としての金属塩は、糖類である炭素源と、アミノ酸類である窒素源の合計に対して、0.01〜0.1重量%の含有であり、必修である亜鉛成分を10μM以上にしている。
【0028】
菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは分別調合して、金属塩とゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、それぞれともに高温殺菌処理した後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体に高速撹拌を施し、菌体懸濁液を調製し、ゲル剤を含む培養液に添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系のゲル化を、空気含有のために撹拌を行いながら、促進させた菌体懸濁ゲルを20〜25℃の暗室下で培養する菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0029】
ゲル化剤は、寒天、又はジェランガムから選ばれた1種類または混合物である菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。好ましいゲル化剤は寒天である。寒天溶液に対して培養液の濃度は0.5〜20%である。
【0030】
菌体懸濁ゲル培養する培地は、前記の炭素源と前記の窒素源とはそれぞれ分別して0.3%〜2%の濃度範囲に調合して、前記金属塩類と前記ゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源を含む培養液と窒素源を含む培養液を生成して、それぞれともに100℃〜150℃で5分〜20分の殺菌処理した後に、15〜50℃の温度範囲に熟成保持した後に両者を調合する。
【0031】
マツタケ子実体様菌糸塊は、前記処理したゲル化剤を含まない培養液に、別に1〜2ケ月間培養したマツタケ菌糸体を投入して、5000〜15000rpmで短時間高速撹拌を施して、菌体を破砕分散させた後に、前記ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系を、空気含有のために撹拌を行いながら、35℃〜45℃の温度でのゲル化を促進させて、蓋付き容器内で気密にして菌体懸濁ゲルを20〜30℃の暗室下で培養する菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0032】
本発明で用いるマツタケ糸状菌とは天然の松茸が生育する土壌に生息する糸状菌を総称し、このような菌を分離・培養して用いるが、天然の土壌からの分離菌だけではなく、各種研究機関に保存されている菌株を培養してもよい。代表的なマツタケ糸状菌としては、Mortierella属の菌、例えばM.ramanniana、M.vinacea、M.nana、M.isabellina、M.reticilata、M.bainieri等があり、その他Pachybasium属菌等が挙げられる。
【0033】
汎用されている糸状菌液体培地、例えばPD液体培地等に接種し、22〜30℃で3〜15日間程度培養して菌体を回収し、糸状菌の不活性化処理を行う。不活性化処理とは化学的または物理的処理により菌糸を死滅させる。
【0034】
処理容器に糸状菌及びガラス粒子等の硬質粒子を入れ、高速で攪拌することにより菌糸を破砕する方法、菌糸体に強力な音波を照射する方法、狭い隙間から流体を高速度で吹き出す際の剪断力による破砕方法、液体窒素中で凍結して破砕する方法、水に懸濁して浸透圧により破砕する方法などが挙げられる。
【0035】
本発明で用いる培地の組成物の成分は一般の微生物の培養で培地に含有して用いられるものであれば特に制限無く使用できる。一般に炭素源としては、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン等が、窒素源としてはアミノ酸類、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカー等が、ビタミン類としてはニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、サイアミン、ピリドキシン塩酸等、その他に酒石酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、を挙げることができる。
【0036】
その他金属塩として、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の無機塩等を添加することができる。また、植物ホルモン、リグニン、糖複合体等も添加することも可能である。
本発明者らは、マツタケ菌糸の成長を促進する有効成分を見出し、これによりマツタケ菌糸の迅速な増殖法を確立し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0037】
本発明の松茸菌培養方法によると、従来生育が遅くて収量が少なかったマツタケ菌の収量を増大させることができる。また、培養濾液を濃縮するために長時間を費やすことがない。
一般に、マツタケの人工栽培は未だに不可能な状況にある。本発明の利点は、培養培地を用いて、この培養液の調合によって、マツタケの菌糸の育成と、菌糸の栄養化を高める物質などの有効成分を添加することにより、他の栄養要素を用いずにマツタケ菌糸の良好な成長を誘導した。
【0038】
本発明は、1)合成培地で作成した菌体懸濁液を、2)低ゲル化温度のゲル化剤を用いて、3)マツタケ菌を死滅させることなくゲル化することができ、さらに4)菌糸体は平板培地では見られない三次元的な生長をし、5)土壌やオガクズ等の天然培養基を用いることなく、6)子実体原基様菌糸塊を形成することができる点である。
【0039】
本発明において、マツタケ子実体原基様菌糸塊は数種の培地において形成されており、培地組成によるものではなく、菌体懸濁ゲル培養という新たな培養法により、本菌体懸濁ゲル培養によるマツタケ子実体原基様菌糸塊の形成、とくにマツタケ菌の良好な生長には、添加成分の一つである亜鉛化合物と、アミノ酸系の葉酸、およびニコチン酸の成分が必須であって、これはマツタケ菌培養培地成分として子実体原基様菌糸塊を形成を増大させた。
【0040】
また、本培養系は土壌等の天然培養基を用いていないため、培養された菌糸体は天然培養基による環境的影響を受けない。そのためマツタケ人工栽培において利用可能である。また今後予想される代謝物解析、分子生物学的解析に供す為の試料として適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】菌体懸濁ゲル作成工程の模式図
【図2】合成培地1で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図3】合成培地2で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図4】太田培地で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図5】亜鉛濃度と菌糸体形態の関係を示す図
【図6】菌体懸濁ゲル培養菌糸体に対する亜鉛濃度の影響に関する図
【図7】TM3株による亜鉛と葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化の図
【図8】TM8株による亜鉛と葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化の図
【図9】亜鉛の有無によるマツタケ菌糸体の形態変化予測図A
【図10】亜鉛に有無よるマツタケ菌糸体の形態変化−1
【図11】亜鉛に有無よるマツタケ菌糸体の形態変化−2
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の方法について詳細に説明する。本発明のマツタケの培地の形成方法に使用することが可能なマツタケ菌株としては、ATCC(American Type Culture Collection)により市販されているものを挙げることができる。
【0043】
マツタケ菌株は、当業者が一般に共生菌の増殖維持に使用する培地、例えば太田培地(Ohta,A.(1990)Trans.Mycol.Soc.Japan 31:323−334)、MMN培地(Marx,D.H.(1969)Phytopathology 59:153−163)、浜田培地(浜田(1964)マツタケ,97−100)などを用いて増殖させることができる。マツタケ菌株の増殖効率の観点から、太田培地で増殖させる。
また培地には、寒天が好ましい。
【0044】
マツタケ菌株の培養は、一般的に暗所においておよそ20〜25℃の温度で無菌的に行うのが好ましい。
【実施例1】
【0045】
菌体懸濁ゲルは、培養培地で作成した菌体懸濁液を低温でゲル化させて作成する新しい培養系である。菌体懸濁ゲルは、任意の培地で作成可能である。これまでの検討により、種々の合成培地で作成し菌体懸濁ゲルにおいて、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成を確認した。以下に菌体懸濁ゲルの作成法と、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成における合成培地の組成を以下述べる
(菌体懸濁ゲル作成法)
【0046】
培養に用いる容器は、作成する菌体懸濁ゲルの容量によって250mlの菌体懸濁ゲルを作成するので、500ml容の培養ビンを使用した。
まず、炭素源として還元末端を有する糖類、窒素源としてアミノ酸のようなアミノ基を有する化合物を用いているので、メイラード反応を避けるためにそれらは分けて、菌体懸濁ゲルに用いる液体培地を調製した。液体培地は予め、後に菌体懸濁液を作成するためのものと、ゲル化剤の溶液とするものとに分けた。ゲル化剤には、ジェランガムあるいは寒天を用いる。
【0047】
図1に菌体懸濁ゲルの生成工程の模式図示す。まず200mlの菌体懸濁ゲルを作成する方法を述べる。
炭素源と窒素源を含む場合は100mlずつに分けて、一方に炭素源、他方に窒素源を含む液体培地を調製した。その培地の調整後、500ml容の培養ビンに100mlの液体培地を入れ、寒天は培地量に対して1〜1.5%添加した。2つに分けた液体培地のうち、金属イオンを含まない方に添加して、ゲル化温度が35〜36℃のものを用いた。残りの100mlはビーカーに入れ、両者アルミホイルで蓋をした後オートクレーブ(121℃,15分)で滅菌した。滅菌した後、ビーカーの液体培地は冷蔵庫に入れて室温以下まで冷却し、培養ビンに入ったゲル化剤入りの培地は50℃の恒温庫内で保温した。前者が冷めたらクリーンベンチ内で菌体懸濁液を作成した。菌糸体には、任意の平板培地で1〜2ヶ月前培養したものを1シャーレ分用いた。
【0048】
室温以下まで冷めた液体培地をブレンダー容器に移し、そこに前培養した菌糸体を投入した後、約10,000rpmで10秒程度粉砕した。この懸濁液を40℃程度に冷めたゲル化剤入り液体培地に添加し、手で軽く振盪した後静置して固めた。ゲル化後、火炎滅菌した薬匙等でゲルを撹拌し、系内に空気を含ませた。最後に培養ビンに蓋をし、パラフィルムでシールした。完成した菌体懸濁ゲルは、25℃の暗黒下で培養した。
(培地組成)
【0049】
以下の合成培地において、実施例2〜4に示すように、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成が確認された。それらの組成を示した。ただし各組成はすべて1Lの液体培地に対する添加量を示した。
【実施例2】
【0050】
合成培地1(TS−11培地)の組成:
炭素源として、グルコース8g,フルクトース12g,金属塩としてKH2PO4 1g,FeCl3・6H2O 1%溶液10ml,CaCl2 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,金属溶液10ml(10ml中:クエン酸1g,FeSO4・7H2O 60mg,MnSO4・H2O 50mg,ZnSO4・7H2O 16mg,CuSO4・5H2O 0.025mg,Na2MoO4・2H2O 0.25mg,CoCl2・6H2O 0.025mg,KI 0.08mg),窒素源として、L−アラニン0.6g,L−アルギニン0.3g,L−グルタミン0.6g,L−セリン3g,L−バリン0.8g,チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸1mg,葉酸1mg※pHは5.0に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図2に示す。
【0051】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図2)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例3】
【0052】
合成培地2(TS−33培地)の組成:
炭素源として、フルクトオリゴ糖20g,ゲンチオオリゴ糖20g,イソマルトオリゴ糖20g,金属塩として、KH2PO4 1g,FeCl3・6H2O 40mg,CaCl2 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,金属溶液5ml(5ml中:クエン酸0.1g,FeSO4・7H2O 30mg,MnSO4・H2O 5mg,ZnSO4・7H2O 8mg),窒素源として、グリシン0.7g,L−アラニン0.7g,L−アルギニン0.7g,L−グルタミン0.7g,L−セリン0.7g,L−バリン0.7g,チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸1mg,葉酸1mgとして、pHは5.0に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図3に示す。
【0053】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図3)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例4】
【0054】
一般的組成太田培地(Ohta,1990)の組成:
炭素源として、グルコース10g,酒石酸アンモニウム1g,金属塩としてKH2PO4 1g,MgSO4・7H2O 1g,CaCl2・2H2O 50mg,HEPES 7g,金属溶液10ml(10ml中:アセチルアセトン30μl,FeCl3 50mg,MnSO4・4−6H2O 0.5mg,ZnSO4・7H2O3mg,CuSO4・5H2O 1mg,CoSO4・7H2O 0.5mg,NiSO4・6H2O 2mg),窒素源としてビタミン溶液10ml(10ml中:チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸50μg,葉酸30μg,ビオチン50μg,ピリドキシン5μg,塩化カルニチン10μg,アデニン硫酸塩二水和物30μg,塩化コリン30μg)※pHは1NのKOHで5.0〜5.1に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図4に示す。
【0055】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図4)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例5】
【0056】
先の実験によって亜鉛がマツタケ菌糸体の肥厚および気中菌糸形成といった形態変化に必須であることを明らかにした。その中で亜鉛濃度範囲では、子実体は1.74μM以上で肥厚になり、しかし菌株によっては気中菌糸を活発に形成する菌糸体、0.174μM以下の濃度では、亜鉛を含まない条件と同様の薄く気中菌糸をほとんど形成しなかった。
そこで、菌体懸濁ゲル培養による子実体原基様菌糸塊形成への亜鉛の効果を調べるために、亜鉛を含まない菌体懸濁ゲル培養系と174μMの濃度の範囲で亜鉛添加を変えた培養系を用いて培養試験を行なった。試験培地は合成培地3(TS−35z_c30,TS−35zf_c30)であり、合成培地3:TS−35z_c30亜鉛を含むものと、TS−35zf_c30亜鉛を含まないものであって、下記の組成でTM3株とTM19株によって培養した。ただし全ての含有量を培地1L中の含量を示したものである。
グルコース30g、クエン酸1g、アミノ酸(グリシン,L−アラニン,L−アルギニン,L−グルタミン,L−セリン,L−バリン:各0.2g)、KH2PO4 1g,CaCl2 50mg,FeCl3 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,MnSO4・nH2O 5mg,ZnSO4・7H2O 5mg(TS−35zfには含まれない),チアミン塩酸塩1mg,ニコチン酸1mg,葉酸50μg,pHは5.1に調整した。
図5に示すように、亜鉛を含まない培養系から174μMの濃度で亜鉛を含む培養系の範囲での培養系で比較すると、両株体とも1.74μM濃度から17.4μM濃度の範囲で菌糸体が肥厚した状態になって、閾値濃度が存在することが明らかになった。
【実施例6】
【0057】
マツタケ菌株はTM19株を使用し、25℃、暗黒下で培養した。図6に示すように、培養209日目と257日目の菌糸体と子実体の成長した写真を示した。
図6から、209日目の写真から、亜鉛を含有していない場合には子実体原基様菌糸塊は形成されていないが、17.4μM濃度の場合には、生長を担う気中菌糸の形成が旺盛に形成されていることが確認できた。
【0058】
また一般に菌床栽培において、子実体形成期には菌糸が褐変することが知られているように、図6の培養257日目の写真から、時間経過とともに17.4μM濃度の亜鉛を含む培養系において、菌糸体が成長褐変した。
【実施例7】
【0059】
マツタケの菌糸生長にはビタミン類としてチアミンのアミノ基を有するアミノ酸類である窒素源が必須であると言われている(小川真著,マツタケの生物学)。また他のビタミン類にも生長促進効果があることが知られている。この点を基本に、亜鉛がある一定濃度以上存在する条件下において葉酸或いはニコチン酸が存在させて、菌子体の肥厚の状態を調べた。その結果を図7、8に示した。本培養試験においては下記の合成培地4用いた。合成培地4の組成は全て培地1L中の含量を示す。
グルコース10g,クエン酸1g,酒石酸アンモニウム1g,KH2PO4 1g,CaCl2 50mg,FeCl3 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,MnSO4・nH2O 5mg,チアミン塩酸塩1mg,(ZnSO4・7H2O,ニコチン酸,葉酸は図中の濃度に調整)pHは5.1に調整した。
また実施例6での検討により亜鉛がマツタケ菌糸体の肥厚および気中菌糸形成といった形態変化があり、菌糸密度が低く気中菌糸をほとんど形成しない形態から菌糸体を肥厚した形態にする閾値濃度が存在することが明らかになった。
【0060】
図7,8に示すように、使用したTM3,TM8両菌株において、亜鉛を0.35μM含み、葉酸およびニコチン酸を含まない培地においては非常に菌糸密度の低い菌子体が観察された。次に培地の亜鉛濃度を17.4μMに高めた条件、亜鉛濃度0.35μMのまま葉酸(0.11μM)或いはニコチン酸(8.12μM)を添加した条件において、より菌糸密度の高い菌糸体が得られた。さらに亜鉛濃度17.4μMの培地において、葉酸或いはニコチン酸を先の濃度で添加した条件においてはさらにしわがよる程に肥厚した菌糸体が得られた。亜鉛とともに葉酸或いはニコチン酸の添加は菌糸体の肥厚になり、子実体への成長を促進させることができた。
【0061】
図9で示すように松の宿主植物の細根へのZnを輸送するに菌糸束を経由しており、また図10に示すように菌糸密度がZnの濃度によって高くなり、さらに図11に示すように、Znが子実体への成長において、菌糸体の菌糸束への形成に関与していることを明らかにしている。
したがって、マツタケ子実体様菌糸塊であるマツタケの子実体の成長には、Znイオンの寄与が大きいことを表している。
【符号の説明】
【0062】
A.TM3株 亜鉛濃度と菌糸体形態関係
B.TM19株 亜鉛濃度と菌糸体形態関係
C.TM3株 亜鉛、葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化
D.TM8株 亜鉛、葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化
1.500ml容培養ビン
2.ゲル化剤溶液
3.合成培地で作成した菌体懸濁液
4.200ml菌体懸濁ゲル
5.薬匙等で撹拌した菌体懸濁ゲル
6.マツタケ菌株TM8 培養108日
7.マツタケ菌株TM8 培養159日
8.マツタケ菌株TM3 培養135日
9.マツタケ菌株TM3 培養224日
10.マツタケ菌株TM19 培養30日
11.マツタケ菌株TM19 培養119日
12.[Zn2+.=0μM 亜鉛を含まない菌体懸濁ゲル培養
13.[Zn2+.=0.174μM 亜鉛濃度0.174μM菌体懸濁ゲル培養
14.[Zn2+.=1.74μM 亜鉛濃度1.74μM菌体懸濁ゲル培養
15.[Zn2+.=17.4μM 亜鉛濃度17.4μM菌体懸濁ゲル培養
16.[Zn2+.=174μM 亜鉛濃度174μM菌体懸濁ゲル培養
17.培養209日
18.培養257日
19.葉酸
20.ニコチン酸
21.[Zn2+.=0.35μM 葉酸:0μM ニコチン酸:0μM
22.[Zn2+.=0μM 葉酸:0.11μM ニコチン酸:8.12μM
23.菌糸束
24.[Zn2+非含有
25.[Zn2+.=27.8μM
【技術分野】
【0001】
本発明は、マツタケの人工シロ形成方法に関するものである。本発明は、マツタケ菌糸が土壌の粒の間にまんべんなく増殖しているマツタケの種菌を作製し、それをアカマツ山林へ植え込むことで新たな「シロ」を形成させ、マツタケの増産に結びつけることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
マツタケは担子菌類に属し、その菌糸をアカマツ等の宿主植物の根に侵入させて菌根を形成し、栄養物等を宿主植物から吸収することによって生活する菌根菌である。マツタケは高級食材として古くから珍重されているがその生産量は年々減少している。
【0003】
マツタケの人工栽培の研究の妨げになっている要因の一つとして、菌糸成長が極めて遅いことが挙げられており、最適条件でも菌糸が1mm伸びるために4日間を要するといわれている。そのため菌糸の成長を促す培養法が検討されている。
【0004】
例えば、アカマツの側根及び根毛の先端より分離した糸状菌Mortierella sp.等を40日間培養し、その培養濾液を15倍に濃縮したものをマツタケ菌培養液に添加することにより、菌糸の収量が2倍以上促進されたことが報告されている。
【0005】
しかしながら、上記のように糸状菌の培養濾液を調整するには長時間を要し、濃縮操作が必要であるなど煩瑣な作業を必要とする。上記培養濾液を連続的に添加することでマツタケ菌の収量は更に増加することも報告されているが、この場合も煩瑣な作業を増すことになる。
【0006】
菌糸の収量を増加させるために最も効率的と考えられるのは、マツタケ菌培養液に糸状菌を接種して同時培養することであるが、その場合は糸状菌の生育がはるかに早く、糸状菌のみが生育しマツタケ菌の生育が抑制されるため同時培養法を採用することは難しい。
【0007】
一般に、マツタケを大量培養するための効率的な方法として、きのこの菌糸体を液体培養基中で増殖する方法がある。しかしマツタケは外生菌根菌であるために、その増産には生きた樹木の根が必要である。マツタケの発生する場所には菌糸の集まり(シロ)が存在し、このシロを誘導することが、マツタケ増産の重要な一歩となっている(非特許文献1参照)。
【0008】
しかし、自然環境下では、栄養源に富んだアカマツ(マツタケ菌の宿主)生息域に、腐生菌、糖依存菌が優先的に繁殖するため、マツタケ菌(共生菌)は、シロを形成しにくい状況にある。
【0009】
マツタケ(Tricholoma matsutake(S.lto et lmai)Sing.)の人工栽培に関する研究は古くから行われているが、一般にマツタケの人工栽培はいまだに不可能である。
【0010】
以下、今日までのマツタケ人工栽培に関する研究経緯について述べる。Masuiは、マツタケがアカマツに菌根を形成することを実験的に示した(非特許文献2参照)。
富永は、マツタケ菌糸の成長の最適条件について検討した(非特許文献3参照)。小川らは、純粋培養によるマツタケ子実体原基の形成を検討した(非特許文献4参照)。しかし、マツタケのシロを誘導した成功例はいまだに知られていない。
【0011】
本発明を為すにあたり、マツタケの人工栽培の研究の妨げになっている要因の一つとして、菌糸の成長が極めて遅いことに着目した。これまでマツタケ増産技術として、林地にマツタケ菌糸を接種して新しいシロを人工的に造成する方法が試みられている。しかし、実用的に利用できるほどマツタケ菌糸が成長してシロを形成した例はない。したがって、現段階ではマツタケの人工栽培の開発は困難と考えられている。
【0012】
そこで、マツタケの「シロ」の形成に関する新たな試みとして、次のような特許が出願された。(1)マツタケ菌糸の生育を抑制する微生物の影響を排除して「シロ」を形成させるために、マツタケ菌糸の生育は抑制しないが、その他の微生物の生育を抑制するストレプトマイセス属の放線菌及びコリネバクテリウム属の細菌とマツタケ菌糸の混合微生物を、「シロ」形成の場に適用する方法(特許文献1参照)、(2)「シロ」をより確実に形成するために、アカマツの根に菌根を形成させる「場」である菌根形成容器内に充填する鉱物質及び「シロ」の形成が行われる土壌を、(1)に記載の混合微生物で処理する方法(特許文献2参照)、(3)菌根性茸の宿主となる木の根を2月から5月の間に切断して、そこに新たな毛根が生ずる2月から5月の間に、その切断箇所の土壌に菌根性茸の菌を接種して、人工的に「シロ」の形成を行なう方法(特許文献3参照)、(4)地面を掘削して宿主の木の根を露出させ、その根の表面から木質部に至るまでの切欠部を穿設し、その切欠部ないしその近傍に菌根性茸の菌を接種して、腐葉層を含まない山土でそれらを覆い「シロ」を順調に形成させる方法(特許文献4参照)、及び(5)アカマツの木を中心とする円弧上に定角度間隔で針穴を掘り下げ、その一つ置きの針穴にマツタケ菌糸を、残りの針穴に菌糸活性材をそれぞれ充填し、「シロ」を発生させる方法(特許文献5参照)である。
【0013】
しかし、実際にこの方法で種菌を作製してみると、培地全体に水が行きわたって土壌中に隙間ができず、そこでマツタケ菌糸を培養しても、その培地の表面だけでその菌糸が増殖してしまい、土壌中にその菌糸が伸びていかなかった。また、混ぜ合わせる水の量を少なく調整して、その土壌が粒となり、土壌中に隙間ができる培地にして、それにマツタケ菌糸を植え付けて培養しても、水分含量が少ないためにその菌糸は新たな培地でほとんど増殖できなかった。
【0014】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは分別調合して、金属塩とゲル化剤を使用した文献も存在している(特許文献6〜9参照)。
【0015】
特に培地成分に関して、菌体懸濁ゲル作成に用いる培地に含まれる亜鉛化合物、葉酸、ニコチン酸が他の特許内で言及されている培地においても用いられているが、亜鉛化合物は、一般的に菌の生長に必須の微量栄養素であると言われており、さらに葉酸およびニコチン酸は、マツタケ菌の生長促進物質として挙げられている(非特許文献1参照)。従ってそれら3種の培地成分自体は、特許文献6〜9に示すように一般的な組成成分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5−153856号公報
【特許文献2】特開平5−316876号公報
【特許文献3】特開平5−260848号公報
【特許文献4】特開平10−113070号公報
【特許文献5】特開平11−103668号公報
【特許文献6】特開平10−309188号公報
【特許文献7】特開2002−218843号公報
【特許文献8】特開2004−65225号公報
【特許文献9】特公平7−110225号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】小川真(1991)マツタケの生物学333pp.築地書館
【非特許文献2】Masui,K.(1927)Mem.Coll.Sci.Kyoto Univ.B(2)2,149−279
【非特許文献3】Tominaga,Y.(1965)Bull.Hiroshima Agri.Coll.2:242−246
【非特許文献4】Oqawa,M&Hamada,M(1975)Trans.Mycol.Soc.Japan16:406−415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記事情に鑑み、本発明者らは、菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たってマツタケ増産の重要な一歩となる培養について検討した。
【0019】
本発明の目的は、迅速にマツタケの培地を形成することが可能な方法を提供することにある。従来の問題点を解消し、マツタケ菌の収量を向上させることのできる人工培養法を提供することを目的とする、水及び各種栄養分を培地の基材と条件とした時に、培養する培地中に空気が混じり込んで隙間を形成して、そこでマツタケ菌糸を培養し、培地の状態、条件によってその菌糸が均一、まんべんなく増殖することが望まれる。これを目的としたマツタケ子実体様菌糸塊を培養することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、菌体懸濁ゲルとして、培養培地で作成した菌体懸濁液を低温でゲル化させて作成する新しい培養系である。菌体懸濁ゲルは、任意の培地で作成可能で、種々の合成培地で作成した菌体懸濁ゲルにおいて、マツタケ子実体原基様菌糸塊を形成して、以下に菌体懸濁ゲルの作成法とマツタケ子実体原基様菌糸塊の形成を完成させた。
【0021】
菌体懸濁ゲル培養によるマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とを別々に炭素源、又は窒素源に加えて、それぞれを高温殺菌処理した後に、マツタケ菌糸体懸濁液を投入して培養するにおいて、金属塩として亜鉛源と、アミノ酸源としてニコチン酸、及び葉酸を含有している菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0022】
マツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として炭素源と、窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とに炭素源、又は窒素源に加えた後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体懸濁液を投入し、ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系において、当該混合系の低温ゲル化で撹拌を行いながら、菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養育成する。
【0023】
還元末端を有する糖類である炭素源は、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン、フルクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、から選ばれた2種類以上である。
【0024】
アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源は、グリシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、セリン、バリン、チアミン塩酸、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカーのアミノ酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、ピリドキシン塩酸のアミノ基のビタミン類から選ばれた2種類以上であって、ニコチン酸と葉酸を必修に含有している。
【0025】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源との重量比率は、炭素源/窒素源=2〜10である。
【0026】
金属塩は、金属塩のハロゲン化物、または硫酸塩、リン酸塩であって、塩化鉄塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルトから選ばれた2種類以上であって、少なくとも亜鉛化合物を含有する。
【0027】
培地への添加剤としての金属塩は、糖類である炭素源と、アミノ酸類である窒素源の合計に対して、0.01〜0.1重量%の含有であり、必修である亜鉛成分を10μM以上にしている。
【0028】
菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩とゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは分別調合して、金属塩とゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、それぞれともに高温殺菌処理した後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体に高速撹拌を施し、菌体懸濁液を調製し、ゲル剤を含む培養液に添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系のゲル化を、空気含有のために撹拌を行いながら、促進させた菌体懸濁ゲルを20〜25℃の暗室下で培養する菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0029】
ゲル化剤は、寒天、又はジェランガムから選ばれた1種類または混合物である菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。好ましいゲル化剤は寒天である。寒天溶液に対して培養液の濃度は0.5〜20%である。
【0030】
菌体懸濁ゲル培養する培地は、前記の炭素源と前記の窒素源とはそれぞれ分別して0.3%〜2%の濃度範囲に調合して、前記金属塩類と前記ゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源を含む培養液と窒素源を含む培養液を生成して、それぞれともに100℃〜150℃で5分〜20分の殺菌処理した後に、15〜50℃の温度範囲に熟成保持した後に両者を調合する。
【0031】
マツタケ子実体様菌糸塊は、前記処理したゲル化剤を含まない培養液に、別に1〜2ケ月間培養したマツタケ菌糸体を投入して、5000〜15000rpmで短時間高速撹拌を施して、菌体を破砕分散させた後に、前記ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系を、空気含有のために撹拌を行いながら、35℃〜45℃の温度でのゲル化を促進させて、蓋付き容器内で気密にして菌体懸濁ゲルを20〜30℃の暗室下で培養する菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法である。
【0032】
本発明で用いるマツタケ糸状菌とは天然の松茸が生育する土壌に生息する糸状菌を総称し、このような菌を分離・培養して用いるが、天然の土壌からの分離菌だけではなく、各種研究機関に保存されている菌株を培養してもよい。代表的なマツタケ糸状菌としては、Mortierella属の菌、例えばM.ramanniana、M.vinacea、M.nana、M.isabellina、M.reticilata、M.bainieri等があり、その他Pachybasium属菌等が挙げられる。
【0033】
汎用されている糸状菌液体培地、例えばPD液体培地等に接種し、22〜30℃で3〜15日間程度培養して菌体を回収し、糸状菌の不活性化処理を行う。不活性化処理とは化学的または物理的処理により菌糸を死滅させる。
【0034】
処理容器に糸状菌及びガラス粒子等の硬質粒子を入れ、高速で攪拌することにより菌糸を破砕する方法、菌糸体に強力な音波を照射する方法、狭い隙間から流体を高速度で吹き出す際の剪断力による破砕方法、液体窒素中で凍結して破砕する方法、水に懸濁して浸透圧により破砕する方法などが挙げられる。
【0035】
本発明で用いる培地の組成物の成分は一般の微生物の培養で培地に含有して用いられるものであれば特に制限無く使用できる。一般に炭素源としては、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン等が、窒素源としてはアミノ酸類、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカー等が、ビタミン類としてはニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、サイアミン、ピリドキシン塩酸等、その他に酒石酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、を挙げることができる。
【0036】
その他金属塩として、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の無機塩等を添加することができる。また、植物ホルモン、リグニン、糖複合体等も添加することも可能である。
本発明者らは、マツタケ菌糸の成長を促進する有効成分を見出し、これによりマツタケ菌糸の迅速な増殖法を確立し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0037】
本発明の松茸菌培養方法によると、従来生育が遅くて収量が少なかったマツタケ菌の収量を増大させることができる。また、培養濾液を濃縮するために長時間を費やすことがない。
一般に、マツタケの人工栽培は未だに不可能な状況にある。本発明の利点は、培養培地を用いて、この培養液の調合によって、マツタケの菌糸の育成と、菌糸の栄養化を高める物質などの有効成分を添加することにより、他の栄養要素を用いずにマツタケ菌糸の良好な成長を誘導した。
【0038】
本発明は、1)合成培地で作成した菌体懸濁液を、2)低ゲル化温度のゲル化剤を用いて、3)マツタケ菌を死滅させることなくゲル化することができ、さらに4)菌糸体は平板培地では見られない三次元的な生長をし、5)土壌やオガクズ等の天然培養基を用いることなく、6)子実体原基様菌糸塊を形成することができる点である。
【0039】
本発明において、マツタケ子実体原基様菌糸塊は数種の培地において形成されており、培地組成によるものではなく、菌体懸濁ゲル培養という新たな培養法により、本菌体懸濁ゲル培養によるマツタケ子実体原基様菌糸塊の形成、とくにマツタケ菌の良好な生長には、添加成分の一つである亜鉛化合物と、アミノ酸系の葉酸、およびニコチン酸の成分が必須であって、これはマツタケ菌培養培地成分として子実体原基様菌糸塊を形成を増大させた。
【0040】
また、本培養系は土壌等の天然培養基を用いていないため、培養された菌糸体は天然培養基による環境的影響を受けない。そのためマツタケ人工栽培において利用可能である。また今後予想される代謝物解析、分子生物学的解析に供す為の試料として適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】菌体懸濁ゲル作成工程の模式図
【図2】合成培地1で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図3】合成培地2で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図4】太田培地で作成した菌体懸濁ゲル上に形成されたマツタケ子実体原基様菌糸魂。
【図5】亜鉛濃度と菌糸体形態の関係を示す図
【図6】菌体懸濁ゲル培養菌糸体に対する亜鉛濃度の影響に関する図
【図7】TM3株による亜鉛と葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化の図
【図8】TM8株による亜鉛と葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化の図
【図9】亜鉛の有無によるマツタケ菌糸体の形態変化予測図A
【図10】亜鉛に有無よるマツタケ菌糸体の形態変化−1
【図11】亜鉛に有無よるマツタケ菌糸体の形態変化−2
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の方法について詳細に説明する。本発明のマツタケの培地の形成方法に使用することが可能なマツタケ菌株としては、ATCC(American Type Culture Collection)により市販されているものを挙げることができる。
【0043】
マツタケ菌株は、当業者が一般に共生菌の増殖維持に使用する培地、例えば太田培地(Ohta,A.(1990)Trans.Mycol.Soc.Japan 31:323−334)、MMN培地(Marx,D.H.(1969)Phytopathology 59:153−163)、浜田培地(浜田(1964)マツタケ,97−100)などを用いて増殖させることができる。マツタケ菌株の増殖効率の観点から、太田培地で増殖させる。
また培地には、寒天が好ましい。
【0044】
マツタケ菌株の培養は、一般的に暗所においておよそ20〜25℃の温度で無菌的に行うのが好ましい。
【実施例1】
【0045】
菌体懸濁ゲルは、培養培地で作成した菌体懸濁液を低温でゲル化させて作成する新しい培養系である。菌体懸濁ゲルは、任意の培地で作成可能である。これまでの検討により、種々の合成培地で作成し菌体懸濁ゲルにおいて、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成を確認した。以下に菌体懸濁ゲルの作成法と、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成における合成培地の組成を以下述べる
(菌体懸濁ゲル作成法)
【0046】
培養に用いる容器は、作成する菌体懸濁ゲルの容量によって250mlの菌体懸濁ゲルを作成するので、500ml容の培養ビンを使用した。
まず、炭素源として還元末端を有する糖類、窒素源としてアミノ酸のようなアミノ基を有する化合物を用いているので、メイラード反応を避けるためにそれらは分けて、菌体懸濁ゲルに用いる液体培地を調製した。液体培地は予め、後に菌体懸濁液を作成するためのものと、ゲル化剤の溶液とするものとに分けた。ゲル化剤には、ジェランガムあるいは寒天を用いる。
【0047】
図1に菌体懸濁ゲルの生成工程の模式図示す。まず200mlの菌体懸濁ゲルを作成する方法を述べる。
炭素源と窒素源を含む場合は100mlずつに分けて、一方に炭素源、他方に窒素源を含む液体培地を調製した。その培地の調整後、500ml容の培養ビンに100mlの液体培地を入れ、寒天は培地量に対して1〜1.5%添加した。2つに分けた液体培地のうち、金属イオンを含まない方に添加して、ゲル化温度が35〜36℃のものを用いた。残りの100mlはビーカーに入れ、両者アルミホイルで蓋をした後オートクレーブ(121℃,15分)で滅菌した。滅菌した後、ビーカーの液体培地は冷蔵庫に入れて室温以下まで冷却し、培養ビンに入ったゲル化剤入りの培地は50℃の恒温庫内で保温した。前者が冷めたらクリーンベンチ内で菌体懸濁液を作成した。菌糸体には、任意の平板培地で1〜2ヶ月前培養したものを1シャーレ分用いた。
【0048】
室温以下まで冷めた液体培地をブレンダー容器に移し、そこに前培養した菌糸体を投入した後、約10,000rpmで10秒程度粉砕した。この懸濁液を40℃程度に冷めたゲル化剤入り液体培地に添加し、手で軽く振盪した後静置して固めた。ゲル化後、火炎滅菌した薬匙等でゲルを撹拌し、系内に空気を含ませた。最後に培養ビンに蓋をし、パラフィルムでシールした。完成した菌体懸濁ゲルは、25℃の暗黒下で培養した。
(培地組成)
【0049】
以下の合成培地において、実施例2〜4に示すように、マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成が確認された。それらの組成を示した。ただし各組成はすべて1Lの液体培地に対する添加量を示した。
【実施例2】
【0050】
合成培地1(TS−11培地)の組成:
炭素源として、グルコース8g,フルクトース12g,金属塩としてKH2PO4 1g,FeCl3・6H2O 1%溶液10ml,CaCl2 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,金属溶液10ml(10ml中:クエン酸1g,FeSO4・7H2O 60mg,MnSO4・H2O 50mg,ZnSO4・7H2O 16mg,CuSO4・5H2O 0.025mg,Na2MoO4・2H2O 0.25mg,CoCl2・6H2O 0.025mg,KI 0.08mg),窒素源として、L−アラニン0.6g,L−アルギニン0.3g,L−グルタミン0.6g,L−セリン3g,L−バリン0.8g,チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸1mg,葉酸1mg※pHは5.0に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図2に示す。
【0051】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図2)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例3】
【0052】
合成培地2(TS−33培地)の組成:
炭素源として、フルクトオリゴ糖20g,ゲンチオオリゴ糖20g,イソマルトオリゴ糖20g,金属塩として、KH2PO4 1g,FeCl3・6H2O 40mg,CaCl2 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,金属溶液5ml(5ml中:クエン酸0.1g,FeSO4・7H2O 30mg,MnSO4・H2O 5mg,ZnSO4・7H2O 8mg),窒素源として、グリシン0.7g,L−アラニン0.7g,L−アルギニン0.7g,L−グルタミン0.7g,L−セリン0.7g,L−バリン0.7g,チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸1mg,葉酸1mgとして、pHは5.0に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図3に示す。
【0053】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図3)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例4】
【0054】
一般的組成太田培地(Ohta,1990)の組成:
炭素源として、グルコース10g,酒石酸アンモニウム1g,金属塩としてKH2PO4 1g,MgSO4・7H2O 1g,CaCl2・2H2O 50mg,HEPES 7g,金属溶液10ml(10ml中:アセチルアセトン30μl,FeCl3 50mg,MnSO4・4−6H2O 0.5mg,ZnSO4・7H2O3mg,CuSO4・5H2O 1mg,CoSO4・7H2O 0.5mg,NiSO4・6H2O 2mg),窒素源としてビタミン溶液10ml(10ml中:チアミン塩酸塩3mg,ニコチン酸50μg,葉酸30μg,ビオチン50μg,ピリドキシン5μg,塩化カルニチン10μg,アデニン硫酸塩二水和物30μg,塩化コリン30μg)※pHは1NのKOHで5.0〜5.1に調整した。マツタケ子実体原基様菌糸塊の形成は図4に示す。
【0055】
これまで上記の培地において、保有マツタケ菌株の子実体原基様菌糸塊形成を確認した(図4)。培養約2ヶ月で菌体懸濁ゲル表面に約5mm厚の菌体マットが形成された。約3ヶ月で気中菌糸が球状に集合し、子実体原基様菌糸塊となった。
【実施例5】
【0056】
先の実験によって亜鉛がマツタケ菌糸体の肥厚および気中菌糸形成といった形態変化に必須であることを明らかにした。その中で亜鉛濃度範囲では、子実体は1.74μM以上で肥厚になり、しかし菌株によっては気中菌糸を活発に形成する菌糸体、0.174μM以下の濃度では、亜鉛を含まない条件と同様の薄く気中菌糸をほとんど形成しなかった。
そこで、菌体懸濁ゲル培養による子実体原基様菌糸塊形成への亜鉛の効果を調べるために、亜鉛を含まない菌体懸濁ゲル培養系と174μMの濃度の範囲で亜鉛添加を変えた培養系を用いて培養試験を行なった。試験培地は合成培地3(TS−35z_c30,TS−35zf_c30)であり、合成培地3:TS−35z_c30亜鉛を含むものと、TS−35zf_c30亜鉛を含まないものであって、下記の組成でTM3株とTM19株によって培養した。ただし全ての含有量を培地1L中の含量を示したものである。
グルコース30g、クエン酸1g、アミノ酸(グリシン,L−アラニン,L−アルギニン,L−グルタミン,L−セリン,L−バリン:各0.2g)、KH2PO4 1g,CaCl2 50mg,FeCl3 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,MnSO4・nH2O 5mg,ZnSO4・7H2O 5mg(TS−35zfには含まれない),チアミン塩酸塩1mg,ニコチン酸1mg,葉酸50μg,pHは5.1に調整した。
図5に示すように、亜鉛を含まない培養系から174μMの濃度で亜鉛を含む培養系の範囲での培養系で比較すると、両株体とも1.74μM濃度から17.4μM濃度の範囲で菌糸体が肥厚した状態になって、閾値濃度が存在することが明らかになった。
【実施例6】
【0057】
マツタケ菌株はTM19株を使用し、25℃、暗黒下で培養した。図6に示すように、培養209日目と257日目の菌糸体と子実体の成長した写真を示した。
図6から、209日目の写真から、亜鉛を含有していない場合には子実体原基様菌糸塊は形成されていないが、17.4μM濃度の場合には、生長を担う気中菌糸の形成が旺盛に形成されていることが確認できた。
【0058】
また一般に菌床栽培において、子実体形成期には菌糸が褐変することが知られているように、図6の培養257日目の写真から、時間経過とともに17.4μM濃度の亜鉛を含む培養系において、菌糸体が成長褐変した。
【実施例7】
【0059】
マツタケの菌糸生長にはビタミン類としてチアミンのアミノ基を有するアミノ酸類である窒素源が必須であると言われている(小川真著,マツタケの生物学)。また他のビタミン類にも生長促進効果があることが知られている。この点を基本に、亜鉛がある一定濃度以上存在する条件下において葉酸或いはニコチン酸が存在させて、菌子体の肥厚の状態を調べた。その結果を図7、8に示した。本培養試験においては下記の合成培地4用いた。合成培地4の組成は全て培地1L中の含量を示す。
グルコース10g,クエン酸1g,酒石酸アンモニウム1g,KH2PO4 1g,CaCl2 50mg,FeCl3 50mg,NaCl 25mg,MgSO4・7H2O 150mg,MnSO4・nH2O 5mg,チアミン塩酸塩1mg,(ZnSO4・7H2O,ニコチン酸,葉酸は図中の濃度に調整)pHは5.1に調整した。
また実施例6での検討により亜鉛がマツタケ菌糸体の肥厚および気中菌糸形成といった形態変化があり、菌糸密度が低く気中菌糸をほとんど形成しない形態から菌糸体を肥厚した形態にする閾値濃度が存在することが明らかになった。
【0060】
図7,8に示すように、使用したTM3,TM8両菌株において、亜鉛を0.35μM含み、葉酸およびニコチン酸を含まない培地においては非常に菌糸密度の低い菌子体が観察された。次に培地の亜鉛濃度を17.4μMに高めた条件、亜鉛濃度0.35μMのまま葉酸(0.11μM)或いはニコチン酸(8.12μM)を添加した条件において、より菌糸密度の高い菌糸体が得られた。さらに亜鉛濃度17.4μMの培地において、葉酸或いはニコチン酸を先の濃度で添加した条件においてはさらにしわがよる程に肥厚した菌糸体が得られた。亜鉛とともに葉酸或いはニコチン酸の添加は菌糸体の肥厚になり、子実体への成長を促進させることができた。
【0061】
図9で示すように松の宿主植物の細根へのZnを輸送するに菌糸束を経由しており、また図10に示すように菌糸密度がZnの濃度によって高くなり、さらに図11に示すように、Znが子実体への成長において、菌糸体の菌糸束への形成に関与していることを明らかにしている。
したがって、マツタケ子実体様菌糸塊であるマツタケの子実体の成長には、Znイオンの寄与が大きいことを表している。
【符号の説明】
【0062】
A.TM3株 亜鉛濃度と菌糸体形態関係
B.TM19株 亜鉛濃度と菌糸体形態関係
C.TM3株 亜鉛、葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化
D.TM8株 亜鉛、葉酸、ニコチン酸による菌糸体形態変化
1.500ml容培養ビン
2.ゲル化剤溶液
3.合成培地で作成した菌体懸濁液
4.200ml菌体懸濁ゲル
5.薬匙等で撹拌した菌体懸濁ゲル
6.マツタケ菌株TM8 培養108日
7.マツタケ菌株TM8 培養159日
8.マツタケ菌株TM3 培養135日
9.マツタケ菌株TM3 培養224日
10.マツタケ菌株TM19 培養30日
11.マツタケ菌株TM19 培養119日
12.[Zn2+.=0μM 亜鉛を含まない菌体懸濁ゲル培養
13.[Zn2+.=0.174μM 亜鉛濃度0.174μM菌体懸濁ゲル培養
14.[Zn2+.=1.74μM 亜鉛濃度1.74μM菌体懸濁ゲル培養
15.[Zn2+.=17.4μM 亜鉛濃度17.4μM菌体懸濁ゲル培養
16.[Zn2+.=174μM 亜鉛濃度174μM菌体懸濁ゲル培養
17.培養209日
18.培養257日
19.葉酸
20.ニコチン酸
21.[Zn2+.=0.35μM 葉酸:0μM ニコチン酸:0μM
22.[Zn2+.=0μM 葉酸:0.11μM ニコチン酸:8.12μM
23.菌糸束
24.[Zn2+非含有
25.[Zn2+.=27.8μM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とを別々に炭素源、又は窒素源に加えて、それぞれを高温殺菌処理した後に、マツタケ菌糸体懸濁液を投入して培養するにおいて、金属塩として亜鉛源と、アミノ酸源としてニコチン酸、及び葉酸を必修的に含有していることを特徴とする菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項2】
マツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として炭素源と、窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とに炭素源、又は窒素源に加えた後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体懸濁液を投入し、ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系において、当該混合系の低温ゲル化で撹拌を行いながら、菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養育成することを特徴とする実施例1に記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項3】
還元末端を有する糖類である炭素源は、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン、フルクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、から選ばれた2種類以上であることを特徴とする実施例1又は実施例2に記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項4】
アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源は、グリシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、セリン、バリン、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカーのアミノ酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、ピリドキシン塩酸のビタミン類から選ばれた2種類以上であって、ニコチン酸と葉酸を必修に含有していることを特徴とする実施例1〜実施例3のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項5】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源との重量比率は、炭素源/窒素源=2〜10であることを特徴とする実施例1〜実施例4のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項6】
金属塩は、金属塩のハロゲン化物、または硫酸塩、リン酸塩であって、塩化鉄塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルトから選ばれた2種類以上であって、少なくとも亜鉛化合物を含有することを特徴とする実施例1〜実施例5のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項7】
培地への添加剤としての金属塩は、糖類である炭素源と、アミノ酸類である窒素源の合計に対して、0.01〜0.1重量%の含有であり、必修である亜鉛成分を10μM以上にしていることを特徴とする実施例1〜実施例6のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項8】
ゲル化剤は、寒天、又はジェランガムから選ばれた1種類または混合物であることを特徴とする実施例1〜実施例7のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項9】
菌体懸濁ゲル培養する培地は、前記の炭素源と前記の窒素源とはそれぞれ分別して0.3%〜2%の濃度範囲に調合して、前記金属塩類と前記ゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源を含む培養成分と窒素源を含む培養成分を生成して、それぞれともに100℃〜150℃で5分〜20分の殺菌処理した後に、15〜50℃の温度範囲に保持した後に両者を調合することを特徴とする実施例1〜実施例8のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項10】
マツタケ子実体様菌糸塊は、前記処理したゲル化剤を含まない培養液に、別に1〜2ケ月間培養したマツタケ菌糸体を投入して、5000〜15000rpmで高速撹拌を施して、菌体を破砕分散させた後に、前記ゲル剤を含む培養液を添加して、炭素源培養液と窒素源培養液との混合系を、空気含有のために撹拌を行いながら、35℃〜45℃の温度でのゲル化を促進させて、蓋付き容器内で気密にして菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養することを特徴とする実施例1〜実施例8のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項1】
菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とを別々に炭素源、又は窒素源に加えて、それぞれを高温殺菌処理した後に、マツタケ菌糸体懸濁液を投入して培養するにおいて、金属塩として亜鉛源と、アミノ酸源としてニコチン酸、及び葉酸を必修的に含有していることを特徴とする菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項2】
マツタケ子実体様菌糸塊の製造に当たって、培地として炭素源と、窒素源と、金属塩と、ゲル化剤とからなって、炭素源と窒素源とは別々調合して、金属塩、又はゲル化剤とに炭素源、又は窒素源に加えた後に、15〜50℃に保持して、マツタケ菌糸体懸濁液を投入し、ゲル剤を含む懸濁液を添加して、炭素源懸濁液と窒素源懸濁液との混合系において、当該混合系の低温ゲル化で撹拌を行いながら、菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養育成することを特徴とする実施例1に記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項3】
還元末端を有する糖類である炭素源は、グルコース、フラクトース、マンノース、マルトース、デンプン、デキストリン、フルクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、から選ばれた2種類以上であることを特徴とする実施例1又は実施例2に記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項4】
アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源は、グリシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、セリン、バリン、カザミノ酸、酵母エキス、乾燥酵母、肉エキス、ソイトーン、ペプトン、コーンスティープリカーのアミノ酸類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビオチン、チアミン塩酸、リボフラビン、ピリドキシン塩酸のビタミン類から選ばれた2種類以上であって、ニコチン酸と葉酸を必修に含有していることを特徴とする実施例1〜実施例3のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項5】
培地として還元末端を有する糖類である炭素源と、アミノ基を有するアミノ酸類である窒素源との重量比率は、炭素源/窒素源=2〜10であることを特徴とする実施例1〜実施例4のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項6】
金属塩は、金属塩のハロゲン化物、または硫酸塩、リン酸塩であって、塩化鉄塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化コバルト、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルトから選ばれた2種類以上であって、少なくとも亜鉛化合物を含有することを特徴とする実施例1〜実施例5のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項7】
培地への添加剤としての金属塩は、糖類である炭素源と、アミノ酸類である窒素源の合計に対して、0.01〜0.1重量%の含有であり、必修である亜鉛成分を10μM以上にしていることを特徴とする実施例1〜実施例6のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項8】
ゲル化剤は、寒天、又はジェランガムから選ばれた1種類または混合物であることを特徴とする実施例1〜実施例7のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項9】
菌体懸濁ゲル培養する培地は、前記の炭素源と前記の窒素源とはそれぞれ分別して0.3%〜2%の濃度範囲に調合して、前記金属塩類と前記ゲル化剤とをそれぞれ別々の源に加えて、炭素源を含む培養成分と窒素源を含む培養成分を生成して、それぞれともに100℃〜150℃で5分〜20分の殺菌処理した後に、15〜50℃の温度範囲に保持した後に両者を調合することを特徴とする実施例1〜実施例8のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【請求項10】
マツタケ子実体様菌糸塊は、前記処理したゲル化剤を含まない培養液に、別に1〜2ケ月間培養したマツタケ菌糸体を投入して、5000〜15000rpmで高速撹拌を施して、菌体を破砕分散させた後に、前記ゲル剤を含む培養液を添加して、炭素源培養液と窒素源培養液との混合系を、空気含有のために撹拌を行いながら、35℃〜45℃の温度でのゲル化を促進させて、蓋付き容器内で気密にして菌体懸濁ゲルを20〜25℃温度の暗室下で培養することを特徴とする実施例1〜実施例8のいずれかに記載の菌体懸濁ゲル培養によってマツタケ子実体様菌糸塊の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−59317(P2013−59317A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158092(P2012−158092)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(308014422)株式会社ゼックフィールド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(308014422)株式会社ゼックフィールド (4)
【Fターム(参考)】
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