説明

落下防止装置及びそれを用いた落下防止方法

【課題】狭いスペースであっても設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる落下防止装置及びそれを用いた落下防止方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、一対の支持柱体10と、該一対の支持柱体10に張設されたワイヤー5と、を備える落下防止装置100であって、支持柱体10が、踏み板部11及び該踏み板部11から垂直に立設された柱部12からなり、一方の支持柱体10の踏み板部11が輸送車両1の一方の車輪Aが乗り上げることで固定され、他方の支持柱体10の踏み板部11が輸送車両1の他方の車輪Bが乗り上げることで固定されており、ワイヤー5に人体用安全帯6がスライド自在に取り付けられている落下防止装置100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落下防止装置及びそれを用いた落下防止方法に関し、更に詳しくは、狭いスペースであっても設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる落下防止装置及びそれを用いた落下防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラックやトレーラ等の輸送車両から、積荷を積み降ろしする際、作業員は積荷の上に登って荷役作業を行う。
したがって、積荷が大きい場合、作業員は高所での荷役作業を余儀なくされ、さらに荷崩れが生じた場合、それに作業員が巻き込まれ、落下する恐れがある。
【0003】
このように、積荷上での荷役作業は危険が伴うことから、作業員の安全を守る落下防止装置が検討されている。
例えば、自動車に伸縮可能な支柱を立設し、その上端には水平アームを設け、水平アームの先端に安全ブロックを連結すると共に、ワイヤロープ先端に設けられたフック部分に、輸送車両の荷台に乗る作業員の安全帯を連結した状態で、輸送車両に対する荷役作業を行うようにした輸送車両からの墜落防止自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−104776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の墜落防止自動車は、輸送車両に墜落防止自動車を横付けする必要があるため、十分に広いスペースがないと使用できないという欠点がある。
また、作業員が移動できる範囲が墜落防止自動車の位置によって制限されるという欠点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、狭いスペースであっても設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる落下防止装置及びそれを用いた落下防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、輸送車両自体の重量を利用して支持柱体及び支持柱体を位置固定し、これにワイヤーを張設することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)一対の支持柱体と、該一対の支持柱体に張設されたワイヤーと、を備える落下防止装置であって、支持柱体が、踏み板部及び該踏み板部から垂直に立設された柱部からなり、一方の支持柱体の踏み板部が輸送車両の一方の車輪が乗り上げることで固定され、他方の支持柱体の踏み板部が輸送車両の他方の車輪が乗り上げることで固定されており、ワイヤーに人体用安全帯がスライド自在に取り付けられている落下防止装置に存する。
【0009】
本発明は、(2)踏み板部が柱部の一方側に形成されている上記(1)記載の落下防止装置に存する。
【0010】
本発明は、(3)柱部の上端にはワイヤーを挿通させるためのガイド部が設けられ、該ガイド部の下方にはワイヤーを固定するための固定部が設けられている上記(1)又は(2)に記載の落下防止装置に存する。
【0011】
本発明は、(4)ガイド部が弧状パイプであり、固定部がフックである上記(3)記載の落下防止装置に存する。
【0012】
本発明は、(5)踏み板部には車輪の移動を防止するための一対の凸リブが形成されている上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の落下防止装置に存する。
【0013】
本発明は、(6)柱部の高さが調整自在になっている上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の落下防止装置に存する。
【0014】
本発明は、(7)上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の落下防止装置を用いた落下防止方法であって、一対の支持柱体を配置し、輸送車両を移動させることにより、一方に配置された支持柱体の踏み板部を輸送車両の一方の車輪で踏み、同時に他方に配置された支持柱体の踏み板部を輸送車両の他方の車輪で踏み、両支持柱体の間にワイヤーを張設し、該ワイヤーに人体用安全帯をスライド自在に取り付ける落下防止方法に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の落下防止装置は、輸送車両自体の重量を利用して一対の支持柱体が位置固定され、これらにワイヤーを張設された構造となっているので、コンパクトであり、狭いスペースであっても設置することができる。
特に、踏み板部が柱部の一方側に形成されている場合、極めて僅かなスペースであっても落下防止装置を設置することが可能となる。
また、上記ワイヤーに対し、スライド自在となるように人体用安全帯を取り付けることにより、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能となる。
したがって、上記落下防止装置によれば、作業員の落下を確実に防止できると共に、作業性にも優れる。
【0016】
本発明の落下防止装置においては、ガイド部が弧状パイプであり、固定部がフックである場合、ワイヤーを簡単に取り付けることができる。
また、ワイヤーの破断を抑制することができる。
【0017】
本発明の落下防止装置は、踏み板部には車輪の移動を防止するための一対の凸リブが形成されている場合、車輪を確実に保持することができ、また不用意な車輪の移動も阻止される。
【0018】
本発明の落下防止装置は、柱部の高さが調整自在になっている場合、輸送車両や荷台の大きさに合わせた最適な位置にワイヤーを張設することが可能となる。
【0019】
本発明の落下防止方法においては、狭いスペースであっても落下防止装置を設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1の(a)は、本発明に係る落下防止装置の設置状態の一実施形態を示す側面図であり、(b)は、その背面図である。
【図2】図2の(a)は、本実施形態に係る落下防止装置の支持柱体を示す側面図であり、(b)はその正面図である。
【図3】図3は、本発明に係る落下防止装置の設置状態の他の実施形態を示す背面図である。
【図4】図4の(a)は、他の実施形態に係る落下防止装置の支持柱体を示す側面図であり、(b)はその正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
図1の(a)は、本発明に係る落下防止装置の設置状態を示す側面図であり、(b)は、その背面図である。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る落下防止装置100は、一対の支持柱体10と、該一対の支持柱体10に張設されたワイヤー5と、を備える。
また、一対の支持柱体10はいずれも輸送車両1の車輪Aと車輪Bとによって位置固定されている。
すなわち、落下防止装置100は、輸送車両1自体の重量を利用して一対の支持柱体10を確実に位置固定し、これにワイヤー5が張設された構造となっている。
したがって、作業員は、ワイヤー5に身に着けた人体用安全帯6を取り付けて荷役作業することにより、輸送車両の荷台からの落下を防止でき、荷崩れが起きたとしても、作業員は輸送車両の荷台上に残ることができる。
【0023】
図2の(a)は、本実施形態に係る落下防止装置の支持柱体を示す側面図であり、(b)はその正面図である。
図2の(a)及び(b)に示すように、支持柱体10は、踏み板部11及び該踏み板部11から垂直に立設された柱部12からなる。
【0024】
踏み板部11は、輸送車両の車輪が乗り上げられる部分であり、柱部12に対して一方側に形成されている。
すなわち、支持柱体10は、側面L字状となっている。
このため、落下防止装置100においては、踏み板部11に車輪を乗り上げるように配置されるので、極めてコンパクトであり、僅かなスペースであっても設置可能となる。
【0025】
支持柱体10において、踏み板部11には、車輪の移動を防止するための一対の凸リブ11aが形成されている。
これにより、踏み板部11に車輪が乗り上げられたとき、車輪を確実に保持することが可能となり、或いは車輪の移動を阻止することができる。
なお、かかる凸リブ11aは、固定式であっても可動式であってもよい。
【0026】
柱部12は、下柱部12aに3つの支持具13が取り付けられている。
これにより、支持柱体10は、例えば、矢印X方向に力が加わった場合であっても、柱部12が倒れないように補強されている。
【0027】
柱部12は、上柱部12bが下柱部12aに内挿されており、上柱部12bが下柱部12aに対してスライド式となっている。
すなわち、固定された下柱部12aに対して、内挿された上柱部12bをスライドさせることにより、高さの調整を自在に行うことができる。
また、柱部12の中腹部には、留め部15が設けられており、かかる留め部15によって、上柱部12bのスライドを所望の位置で固定することができる。
例えば上柱部12bや下柱部12aに各々、上下方向に複数の貫通穴を設けておき、両者の貫通穴に共通に止めピンPを差し込んで固定することができる。
このように、支持柱体10は、柱部12の高さが調整自在となっているので、輸送車両の高さや、荷台の大きさに左右されず、使用することが可能となる。
【0028】
柱部12は、上柱部12bの上端に、ワイヤー5を挿通させるためのガイド部16が設けられており、該ガイド部16の下方である柱部12の下柱部12aにはワイヤー5を固定するための固定部17が設けられている。
【0029】
ガイド部16は、弧状パイプであり、ワイヤー5を通すように内部が中空になっている。
したがって、ワイヤー5は、ガイド部16に案内されることにより、簡単に水平方向から下方向に90度方向を変えることができ、柱部12から外れることがない。
このガイド部16は水平方向にも角度を変えることも可能である。
この場合、上柱部12bの周囲に複数の貫通穴を設け、その1つとガイド部16の貫通穴とに共通に止めピンPを差し込み固定する。
【0030】
固定部17は、ここではJ次状のフックであり、ワイヤー5の先端を引っ掛けるようになっている。
したがって、この場合、ワイヤー5は、先端に引っ掛けるためのリング状部分を有することが好ましい。
このように支持柱体10は、所定の形状のガイド部16と固定部17とを備えることにより、ワイヤー5を簡単に取り付けることができる。
【0031】
本実施形態に係る落下防止装置100においては、一対の支持柱体10に張設されたワイヤー5に人体用安全帯6がスライド自在に取り付けられる。
そして、ワイヤー5に沿って、人体用安全帯6をスライドさせることにより、輸送車両1の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能となる。
なお、人体用安全帯6は、公知のものが適宜用いられる。
したがって、上記落下防止装置100によれば、作業員の落下を確実に防止できると共に、作業性にも優れる。
【0032】
次に、本実施形態に係る落下防止装置100を用いた落下防止方法について説明する。
図1の(a)及び(b)に示すように、まず、支持柱体(以下便宜的に「第1支持柱体」ともいう。)10及び支持柱体(以下便宜的に「第2支持柱体」ともいう。)10の柱体12の上柱部をスライドさせることにより高さを調整する。
【0033】
そして、第1支持柱体10と第2支持柱体10との間にワイヤー5を取り付ける。
かかるワイヤー5は、一端を第1支持柱体10の固定部17に固定した後、他端を第1支持柱体10のガイド部16に挿通させ、続けて第2支持柱体10のガイド部16に挿通させ、第2支持柱体10の固定部17に固定することにより取り付けられる。
尤も、前もって第1支持柱体10と第2支持柱体10との間にワイヤー5を取り付けておくことも可能である。
【0034】
次に、一対の支持柱体10を例えば前後に配置し、輸送車両1を移動させ、前方に配置された第1支持柱体10の踏み板部11を輸送車両1の前方の車輪Aで踏み、同時に、後方に配置された第2支持柱体10の踏み板部11を輸送車両1の後方の車輪Bで踏む。
これにより、第1支持柱体10と第2支持柱体10とが確実に保持され動かない。
【0035】
なお、必要に応じて、第1支持柱体10及び第2支持柱体10の柱体12の上柱部をスライドさせて高さを再調整する。
そして、第1支持柱体10と第2支持柱体10との間でワイヤー5にテンションをかけ張設する。
こうして落下防止装置100が設置される。
そして、作業員は、身に着けた人体用安全帯6を落下防止装置100のワイヤー5にスライド自在に取り付けて荷役作業を行うことになる。
【0036】
本実施形態に係る落下防止方法においては、狭いスペースであっても落下防止装置100を設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0038】
例えば、本実施形態に係る落下防止装置100においては、支持柱体を輸送車両の一方側の前輪と後輪とに配置しているが、前輪同士、或いは後輪同士に配置することも可能である。
【0039】
図3は、本発明に係る落下防止装置の設置状態の他の実施形態を示す背面図である。
図3に示すように、落下防止装置100は、一方の支持柱体20を輸送車両の左側の車輪に配置し、他方の支持柱体20を輸送車両の右側の車輪に配置してもよい。
【0040】
図4の(a)は、他の実施形態に係る落下防止装置の支持柱体を示す側面図であり、(b)はその正面図である。
図4の(a)及び(b)に示すように、支持柱体10は、ガイド部16の向きが90度異なることになる。
なお、このこと以外は、本実施形態に係る落下防止装置100の支持柱体10と同じである。
【0041】
本実施形態に係る落下防止装置100においては、ガイド部が弧状パイプであり、固定部がフックとなっているがこの形状に限定されるものではない。
例えば、ガイド部の弧状パイプに切欠き状の長溝を設けるとよい。
この場合、ワイヤーを長溝を介して簡単に弧状パイプに入れ込むことができる。
また、ガイド部は、回転可能な滑車であってもよい。
一方、固定部は、ワイヤーを巻き取る巻取り装置を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の落下防止装置は、輸送車両の荷役作業に際の作業員の安全装置として好適に利用できる。
本発明の落下防止装置によれば、狭いスペースであっても設置することができ、輸送車両の荷台全域に渡って作業員が移動することが可能であり、且つ作業員の落下を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・輸送車両
5・・・ワイヤー
6・・・人体用安全帯
10・・・支持柱体(第1支持柱体、第2支持柱体)
11・・・踏み板部
11a・・・凸リブ
12・・・柱部
12a・・・下柱部
12b・・・上柱部
13・・・支持具
15・・・留め部
16・・・ガイド部
17・・・固定部
100・・・落下防止装置
A,B・・・車輪
P・・・止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支持柱体と、該一対の支持柱体に張設されたワイヤーと、を備える落下防止装置であって、
前記支持柱体が、踏み板部及び該踏み板部から垂直に立設された柱部からなり、
一方の支持柱体の踏み板部が輸送車両の一方の車輪が乗り上げることで固定され、他方の支持柱体の踏み板部が前記輸送車両の他方の車輪が乗り上げることで固定されており、
前記ワイヤーに人体用安全帯がスライド自在に取り付けられている落下防止装置。
【請求項2】
前記踏み板部が前記柱部の一方側に形成されている請求項1記載の落下防止装置。
【請求項3】
前記柱部の上端には前記ワイヤーを挿通させるためのガイド部が設けられ、
該ガイド部の下方には前記ワイヤーを固定するための固定部が設けられている請求項1又は2に記載の落下防止装置。
【請求項4】
前記ガイド部が弧状パイプであり、前記固定部がフックである請求項3記載の落下防止装置。
【請求項5】
前記踏み板部には前記車輪の移動を防止するための一対の凸リブが形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の落下防止装置。
【請求項6】
前記柱部の高さが調整自在になっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の落下防止装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の落下防止装置を用いた落下防止方法であって、
一対の支持柱体を配置し、輸送車両を移動させることにより、一方に配置された支持柱体の踏み板部を輸送車両の一方の車輪で踏み、同時に他方に配置された支持柱体の踏み板部を前記輸送車両の他方の車輪で踏み、両支持柱体の間にワイヤーを張設し、該ワイヤーに人体用安全帯をスライド自在に取り付ける落下防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24500(P2012−24500A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168708(P2010−168708)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】