説明

落書き除去具

【課題】コンクリート躯体の表面になされた落書きを容易且つ確実に除去することができ、作業性を向上させることができる落書き除去具を提供する。
【解決手段】コンクリート躯体の表面の落書きを除去するための落書き除去具1において、弾力を有した布テープ4をその粘着面を外側に向かせつつ芯材5に巻着させて成る除去部2と、該除去部2を回転自在としつつ当該除去部2から延設され、先端近傍にて作業者が把持し得る把持部3とを具備し、除去部2の布テープ4を落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート躯体の表面の落書きを除去するための落書き除去具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時において、橋脚や塀などのコンクリート躯体の表面に対し油性塗料などで落書きされてしまう事例が社会問題化しており、落書きを容易且つ早急に除去し得る要求が高まっている。例えば、特許文献1には、処理対象のコンクリート躯体の表面にプライマー、中塗りクリア塗料を塗装した後、落書き及び貼り紙を除去し易い機能を有する上塗りクリア塗料を塗布することにより、所定長さに切り取った梱包用布粘着テープを落書きがなされた表面に貼り付け、手で強く擦りつけた後、梱包用布粘着テープを勢いよく剥がし取ることにより、落書きを除去することができることが開示されている。
【特許文献1】特開2005−262134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の如く落書きを除去するには、所定長さに切り取った梱包用布粘着テープを落書きがなされた表面に貼り付け、手で強く擦りつけた後、当該梱包用布粘着テープを勢いよく剥がす必要があったので、落書き除去作業時の作業性が悪いという問題があった。即ち、梱包用布粘着テープを所定長さに切り取る工程、その切り取った梱包用布粘着テープを落書き上に貼り付ける工程、当該梱包用布粘着テープの上面から手で強く擦りつける工程、梱包用布粘着テープを剥がす工程といった多数の工程が必要となり、例えば落書きが広範囲に亘ってなされている場合には、落書き除去作業が極めて煩雑となってしまうのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、コンクリート躯体の表面になされた落書きを容易且つ確実に除去することができ、作業性を向上させることができる落書き除去具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、コンクリート躯体の表面の落書きを除去するための落書き除去具において、弾力を有した長尺状テープをその粘着面を外側に向かせつつ芯材に巻着させて成る除去部と、該除去部を回転自在としつつ当該除去部から延設され、先端近傍にて作業者が把持し得る把持部とを具備し、前記除去部の長尺状テープを落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得ることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の落書き除去具において、前記長尺状テープは、長尺状布製基材の一方の面に粘着面が形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の落書き除去具において、前記長尺状テープは、一周毎に切り取り容易な切り取り線が形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の落書き除去具において、前記コンクリート躯体の表面には、落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料が塗布されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、作業者が把持部を把持し、除去部の長尺状テープを落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得るので、コンクリート躯体の表面になされた落書きを容易且つ確実に除去することができ、作業性を向上させることができる。また、長尺状テープが弾力を有するので、落書きがなされた表面に微小な凹凸があっても、より確実に落書きを除去することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、長尺状テープは、長尺状布製基材の一方の面に粘着面が形成されているので、最表層の長尺状テープの裏面がその下層の長尺状テープの粘着面によって強固に粘着され、落書き箇所に押圧させつつ回転させた際、最表層の長尺状テープが不用意にコンクリート躯体側に貼り付いてしまうのを回避でき、作業性をより向上させることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、長尺状テープは、一周毎に切り取り容易な切り取り線が形成されているので、落書きを除去した後の最表層の長尺状テープのみを良好に切り取って次の落書き除去を容易に行わせることができ、作業性をより向上させることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、コンクリート躯体の表面には、落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料が塗布されているので、当該落書き防止塗料上になされた落書き箇所に除去部の長尺状テープを押圧させつつ回転させれば、より確実且つ容易に落書きを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る落書き除去具は、コンクリート躯体の表面になされた落書きを良好に除去するためのものであり、図1に示すように、落書きがなされたコンクリート躯体の表面に押圧させて落書きを除去するための除去部2と、金具等から成り、作業者が把持するグリップ3aが形成された把持部3とから主に構成されている。
【0014】
除去部2は、図2に示すように、芯材5に長尺状の布テープ4(長尺状テープ)を巻着して成るものであり、布テープ4は外側に粘着面(図3に示すゴム系粘着剤4b)が向くように巻かれている。具体的には、布テープ4は、厚さが約0.34mm程度とされたもので、図3に示すように、ポリエチレン(PE)などから成るラミネート布基材4aの一方の面(芯材5に巻かれた状態で外側を向く面)にゴム系粘着剤4bが形成されたものから成る。
【0015】
そして、図4に示すように、芯材5に対して所定寸法だけゴム系粘着剤4bにて布テープ4を粘着させた後、折り返し、当該ゴム系粘着剤4bが外側を向いた状態で所定の巻数だけ巻くことにより除去部2が得られる。かかる除去部2は、上述の如くポリエチレン(PE)などから成るラミネート布基材4aの一方の面(芯材5に巻かれた状態で外側を向く面)にゴム系粘着剤4bが形成されているので、弾力を有している。
【0016】
把持部3は、除去部2の軸方向に延設しつつ屈曲して延設され、その先端に樹脂などから成るグリップ3aが形成されたもので、除去部2に対して相対的に回転可能とされている。これにより、作業者がグリップ3aを把持し、布テープ4を落書きがなされたコンクリート躯体の表面に押圧しつつ回転させれば、ゴム系粘着剤4bに落書きが粘着して剥ぎ取られることとなる。これにより、落書きを容易かつスムーズに除去することができる。
【0017】
ここで、布テープ4(長尺状テープ)に対し、一周毎に切り取り容易な切り取り線を予め形成しておくのが好ましい。即ち、切り取り線に沿って切り取ることにより、落書きを剥ぎ取った後の最表層の布テープ4を落書き除去具1から取り除くことができるのである。これにより、落書きを除去した後の最表層の布テープ4のみを良好に切り取って次の落書き除去を容易に行わせることができ、作業性をより向上させることができる。
【0018】
ここで、コンクリート躯体の表面には、落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料が塗布されているのが好ましい。この落書き防止塗料を塗布するためのコンクリート躯体の表面処理方法について、図5のフローチャートに基づき以下に説明する。尚、同コンクリート躯体の表面処理方法は、橋脚や塀などのコンクリート躯体の表面を処理して、落書きの除去を容易とし得るための方法であり、比較的表面の粗度が悪い既設コンクリート躯体と、比較的表面の粗度が良好な新設コンクリート躯体との両者に適用できるものである。
【0019】
まず、処理対象の表面に付着した汚れを高圧水洗浄機等で除去して洗浄し(S1)、既存塗材を除去した後(S2)、その表面の調査を目視にて行い(S3)、粗面である(例えば凹凸の底面から頂部までの寸法が約1〜2mm程度以上)と認められればS5へ進み、粗面でなくある程度の平滑が保たれていると認められればS6へ進む。
【0020】
S5は、図6で示すように、処理対象のコンクリート躯体6の表面6aに対して樹脂モルタル7を金鏝などで扱いて平滑化処理するための平滑化処理工程である。かかる樹脂モルタル2とは、普通ポルトランドセメントに軽量骨材、繊維、混和剤等を配合した既調合モルタルをアクリル樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン、スチレン・ブタジエン樹脂エマルジョン等と混練して平滑化する下地処理材のことをいい、例えばニチエー吉田(株)製のNY−調合樹脂モルタルが挙げられる。S6は、図7で示すように、平滑化処理工程S5にて平滑化された表面に所定の遮蔽材(防水材)を塗布して表面の平滑化及び防水を図り得る遮蔽層8を形成する遮蔽層形成工程である。かかる遮蔽層形成工程S6は、所定の許容範囲の表面粗さで遮蔽層8を表面仕上げするのが好ましく、これにより遮蔽層8の表面の平滑状態が維持される。
【0021】
この遮蔽層形成工程S6は、例えば図5(b)に示すように、既設のコンクリート構造物ではコンクリートの表面の風化が進んだり、各種塗料が施されている場合が多いことから、その表面を平滑化する必要があり、平滑化処理工程S5にて平滑化された表面に各種プライマーを塗布(S7)した後、その表面に各種塗料を塗布(S8)することにより、遮蔽層3を形成するようにする。或いは同図(c)に示すように、新設のコンクリート構造物に対しては型枠を脱型した表面は平滑であるため平滑化処理工程は必要なく、下地であるコンクリートの意匠をそのまま表現するために透明又は半透明の塗料を塗布する。(NY−A−シーラーを塗布(S9)した後、その表面にNY−7090を塗布(S10)し、更にその表面にNY−8090クリア又はカラークリアを塗布(S11)する。)
【0022】
上記S7における各種プライマーとは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等下地との接着性を確保できるものであればよく、例えばニチエー吉田(株)製のNY−Eプライマー(エポキシ樹脂)が挙げられる。S8における各種塗料とは、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等所定の表面粗さ(PRtが80μm未満)及び硬度(H以上)が得られるものであればよく、例えばニチエー吉田(株)製のNY−8090エナメル(フッ素樹脂)やNY−9090エナメル(アクリルシリコン樹脂)が挙げられる。
【0023】
尚、遮蔽層形成工程S6にて形成される遮蔽層3は、上記のものに限定されず、平滑化処理工程S5にて平滑化された表面を防水して遮蔽し所定の表面粗さ(PRtが80μm未満)及び硬度(H以上)が得られるものであれば他の塗料から成るものであってもよい。上記PRtは、断面曲線の最大断面高さ(JIS B 0601−1994)を表すための表面粗さの指標である。
【0024】
ここで、S9におけるNY−Aシーラーとは、ニチエー吉田(株)製のアルコキシシラン系から成る浸透性吸水防止材をいい、S10におけるNY−7090とは、濡れ肌防止機能を持ったアクリル共重合樹脂をいう。NY−8090クリア又はカラークリアとは、フッ素樹脂の透明又は半透明の塗料である。尚、遮蔽層形成工程S6にて形成される遮蔽層3は、上記のものに限定されず、所定の表面粗さ(PRtが80μm未満)及び硬度(H以上)が得られるものであれば他の塗料から成るものであってもよい。
【0025】
遮蔽層形成工程S6(S7〜S8又はS9〜S11)が施された後、図8で示すように、遮蔽層3の表面に落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料4を塗布する落書き防止塗料塗布工程S12が施される。かかる落書き防止塗料4は、ニチエー吉田(株)製の2液硬化型シリコーン金属キレート化合物から成るNY−3000SG(溶剤系)であり、総合塗膜としての表面粗さとしてPRtで60μm以下、硬度で3〜5Hが得られることにより落書き除去性に優れた落書き防止層が形成される。
【0026】
上記の如きコンクリート躯体の表面処理方法によれば、平滑化処理工程S5にて平滑化されたコンクリート躯体6の表面6aを遮蔽層形成工程S6にて形成した遮蔽層8にて防水し、その表面に対して落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料9を塗布するので、表面処理後になされた落書きに対し、本実施形態に係る落書き除去具1における布テープ4を落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを容易且つ早急に除去することができる。尚、落書き防止塗料4がニチエー吉田(株)製のNY−3000SG(溶剤系)を用いているので、繰り返し(約10回程度)の落書き除去が可能である。
【0027】
本実施形態によれば、コンクリート躯体6の表面6aには、落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料9が塗布されているので、当該落書き防止塗料9上になされた落書き箇所に除去部2の布テープ4を押圧させつつ回転させれば、より確実且つ容易に落書きを除去することができる。また、落書き除去具1において、作業者が把持部3を把持し、除去部の布テープ4を落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得るので、コンクリート躯体の表面になされた落書きを容易且つ確実に除去することができ、作業性を向上させることができる。
【0028】
更に、布テープ4が弾力を有するので、落書きがなされた表面に微小な凹凸があっても、その凹部に布テープ4の粘着面を入り込ませることができ、より確実に落書きを除去することができる。また更に、布テープ4は、長尺状布製基材4aの一方の面に粘着面(ゴム系粘着剤4b)が形成されているので、最表層の布テープ4の裏面がその下層の布テープ4の粘着面によって強固に粘着され、落書き箇所に押圧させつつ回転させた際、最表層の布テープ4が不用意にコンクリート躯体側に貼り付いてしまうのを回避でき、作業性をより向上させることができる。
【0029】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば布テープ4に代えて、弾力を有した他の長尺状テープをその粘着面を外側に向かせつつ芯材に巻着させることにより除去部を形成するようにしてもよい。また、遮蔽層7の材料及び落書き防止塗料については、防水機能及び落書きを容易に除去する機能を有していれば、他の材料を用いてもよい。更に、新設のコンクリート躯体表面に適用する場合、そのコンクリート躯体表面処理方法として、既存の塗材を除去する工程〜平滑化処理工程(図5におけるS1〜S5の工程)を省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
弾力を有した長尺状テープをその粘着面を外側に向かせつつ芯材に巻着させて成る除去部と、該除去部を回転自在としつつ当該除去部から延設され、先端近傍にて作業者が把持し得る把持部とを具備し、除去部の長尺状テープを落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得る落書き除去具であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る落書き除去具を示す全体模式図
【図2】同落書き除去具における除去部(芯材及び布テープ)を示す斜視図
【図3】同除去部における布テープを示す断面模式図
【図4】同除去部における布テープを芯材に巻き始める際の状態を示す断面模式図
【図5】同落書き除去具が適用されるコンクリート躯体の表面処理方法を示すフローチャート
【図6】同コンクリート躯体の表面処理方法における平滑化処理工程が施された状態を示す断面模式図
【図7】同コンクリート躯体の表面処理方法における遮蔽層形成工程が施された状態を示す断面模式図
【図8】同コンクリート躯体の表面処理方法における落書き防止塗料塗布工程が施された状態を示す断面模式図
【符号の説明】
【0032】
1 落書き除去具
2 除去部
3 把持部
4 布テープ(長尺状テープ)
5 芯材
6 コンクリート躯体
7 樹脂モルタル
8 遮蔽層
9 落書き防止塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体の表面の落書きを除去するための落書き除去具において、
弾力を有した長尺状テープをその粘着面を外側に向かせつつ芯材に巻着させて成る除去部と、
該除去部を回転自在としつつ当該除去部から延設され、先端近傍にて作業者が把持し得る把持部と、
を具備し、前記除去部の長尺状テープを落書き箇所に押圧させつつ回転させることにより当該落書きを除去し得ることを特徴とする落書き除去具。
【請求項2】
前記長尺状テープは、長尺状布製基材の一方の面に粘着面が形成されたことを特徴とする請求項1記載の落書き除去具。
【請求項3】
前記長尺状テープは、一周毎に切り取り容易な切り取り線が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の落書き除去具。
【請求項4】
前記コンクリート躯体の表面には、落書きの除去を容易とし得る落書き防止塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の落書き除去具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−138468(P2008−138468A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327249(P2006−327249)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000110815)ニチエー吉田株式会社 (7)
【Fターム(参考)】