説明

葉の形態が改変された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用

【課題】 葉柄の形態が改変された植物体の生産方法を提供する。
【解決手段】 葉の形態制御に関与する転写因子をコードする遺伝子と、転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとのキメラ遺伝子を植物細胞に導入して、上記転写因子と上記機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物細胞内で生産させる。該キメラタンパク質が該転写因子が標的とする標的遺伝子の発現を抑制し、葉柄の形態が改変された植物体が生産される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉の形態が改変された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものであり、特に葉柄の形態が改変された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トウモロコシのTEOSINTE BRANCHED1(TB1)遺伝子や、キンギョソウのCINCINNATA(CIN)遺伝子を欠損する突然変異体は、枝分かれや葉の形態に異常を示すことが報告されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。すなわち、TB1遺伝子を欠損するトウモロコシの突然変異体は、野生型にみられる頂芽優性がみられず、側芽が抑制されることなく成長する。また、CIN遺伝子を欠損するキンギョソウの突然変異体は、葉の縁部分における成長が過剰となり、葉が波状となる。
【0003】
上記非特許文献1、2では、トランスポゾンタギングを用いた解析により、TB1遺伝子及びCIN遺伝子は、共に、TCPファミリータンパク質が共通して有する相同なドメインをコードする塩基配列を有していることが報告されている。このTCPファミリータンパク質が共通して有するドメインであるTCPドメインは、トウモロコシのTB1遺伝子、キンギョソウのCYCLOIDEA(CYC)遺伝子、イネのPCF1、PCF2遺伝子が共通してコードする領域として同定されている。また、このTCPファミリータンパク質は、PCF1、PCF2タンパク質がDNA結合タンパク質として機能していることから、転写因子ファミリーであることが示唆されている。
【0004】
さらに、TB1遺伝子及びCYC遺伝子はそれぞれ腋芽および花芽の分裂組織の成長制御に関与し、CIN遺伝子は葉における部位特異的な細胞分裂の制御に関与すると推定され、PCF1、PCF2遺伝子は細胞分裂に必要な遺伝子のプロモーター領域に結合し、その転写を制御する転写因子であることから、TCPファミリータンパク質のうち、これらは細胞分裂制御に関与していると推定されている。しかし、TCPファミリーに属する殆どの転写因子の機能については未だ知られていない。
【0005】
ところで、本発明者は、転写因子を転写抑制因子に転換するペプチドを種々見出している(例えば、特許文献1〜7、非特許文献3、4参照)。このペプチドは、Class II ERF(Ethylene Responsive Element Binding Factor)タンパク質や植物のジンクフィンガータンパク質(Zinc Finger Protein、例えばシロイヌナズナSUPERMANタンパク質等)から切り出されたもので、極めて単純な構造を有している。
【0006】
さらに、本発明者は、種々の転写因子と上記ペプチドとを融合させた融合タンパク質(キメラタンパク質)をコードする遺伝子を植物体内に導入することを試みている。そして、これにより、転写因子が転写抑制因子に転換され、該転写因子が転写を促進する標的遺伝子の発現が抑制された植物体を生産することに成功している。
【0007】
なお、葉柄の形態が改変された植物は、園芸上の価値が高いという利点をはじめ、植物栽培の省スペース化等の利点を有する。これまで植物の葉の形態等の形質を改変するためには、その目的とする形質を有する植物の品種を掛け合わせる交配育種が一般的である。しかし、従来の交配育種では、目的とする形質を有する植物を生産するためには、長い年月と、熟練者の経験が必要である。また、近年、遺伝子組換え技術を用いて植物の形質を改変する試みが行われてきている。このような試みとしては、例えばKNOX転写因子ファミリーに属するシロイヌナズナのKNAT1、KNAT2遺伝子を過剰発現させることにより、分裂した葉や異所性を有する托葉等様々な発現型が見られることが報告されている(例えば、非特許文献5参照。)。
【特許文献1】特開2001−269177公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献2】特開2001−269178公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献3】特開2001−292776公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献4】特開2001−292777公報(平成13年(2001)10月23日公開)
【特許文献5】特開2001−269176公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献6】特開2001−269179公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献7】国際公開第WO03/055903号パンフレット(平成15年(2003)7月10日公開)
【非特許文献1】Doebley,J., Stec,A., Hubbard,L., Nature,386,485-488(1997)
【非特許文献2】Nath,U., Crauford,B.C.W., Carpenter,R., Coen,C., Science,299,1404-1407(2003)
【非特許文献3】Ohta,M.,Matsui,K.,Hiratsu,K.,Shinshi,H. and Ohme-Takagi,M.,The Plant Cell, Vol.13,1959-1968,August,2001
【非特許文献4】Hiratsu,K.,Ohta,M.,Matsui,K.,Ohme-Takagi,M.,FEBS Letters 514(2002)351-354
【非特許文献5】Lincoln,C., Long,J., Yamaguchi,J., Serikawa,K., Hake,S., The Plant Cell, Vol.6,1859-1876,December,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、遺伝子の転写を抑制することによって葉柄の形態を改変する技術は知られていなかった。
【0009】
本発明の目的は、遺伝子の転写を抑制することによって、短期間で簡便に、葉柄の形態が改変された植物体を生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、TCPドメインを有するTCPファミリータンパク質であって、その機能が明らかにされていない転写因子と任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体内で生産させることによって、葉柄の形態が改変された植物体を生産することができることを初めて明らかにし、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかる葉柄の形態が改変された植物体の生産方法は、葉の形態制御に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、該転写因子が標的とする標的遺伝子の転写を抑制させることを特徴としている。
【0012】
これにより、上記キメラタンパク質は、上記転写因子の標的遺伝子の転写を効果的に抑制することができる。それゆえ、葉柄の形態が改変されるという効果を奏する。
【0013】
上記葉柄の形態が改変された植物体は、少なくとも葉柄の長さが短くなるように改変された植物体であることが好ましい。
【0014】
これにより、植物体の園芸上の価値が高めることや、植物栽培の省スペース化を図ることが可能となる。
【0015】
上記植物体の生産方法は、上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいることが好ましい。また、上記生産方法は、さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいてもよい。
【0016】
これにより、上記キメラタンパク質を形質転換された上記植物細胞内で発現させることができる。それゆえ、該キメラタンパク質が標的遺伝子の転写を抑制し、葉柄の形態が改変されるという効果を奏する。
【0017】
上記転写因子は、以下の(a)又は(b)記載のタンパク質であることが好ましい。(a)配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、葉の形態制御に関与するタンパク質。
【0018】
また、上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)又は(d)記載の遺伝子が用いられることが好ましい。(c)配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。(d)配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、葉の形態制御に関与するタンパク質をコードする遺伝子。
【0019】
上記機能性ペプチドは、次に示す式(1)〜(4)
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPhe又はIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−Leu又はLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、Gln又はAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、Gln又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるものであることが好ましい。
【0020】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが好ましい。
【0021】
また、上記機能性ペプチドは、以下の(e)又は(f)記載のペプチドであってもよい。(e)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列からなるペプチド。(f)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
【0022】
また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(5)
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
(但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
で表されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0023】
また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(6)〜(8)
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
【0024】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、59、又は60に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0025】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号38又は39に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであってもよい。
【0026】
上記機能性ペプチドが、上記式のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド又は上記配列番号に示されるいずれかのペプチドであり、その多くは極めて短いペプチドであるため、合成が容易であり、標的遺伝子の転写抑制を効率的に行うことができる。また、上記機能性ペプチドは、機能的に重複(リダンダント)する他の転写因子の活性に優先して標的遺伝子の転写(発現)を抑制する機能を有している。それゆえ、標的遺伝子の発現を効果的に抑制できるという効果を有する。
【0027】
また、本発明にかかる植物体は、上記生産方法により生産され、葉柄の形態が改変されていることを特徴としている。上記植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることが好ましい。
【0028】
また、本発明にかかる植物体の葉柄の形態改変キットは、上記の生産方法を行うためのキットであって、上記転写因子をコードする遺伝子と、転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴としている。上記葉柄の形態改変キットは、さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0029】
すなわち、本発明にかかる葉柄の形態が改変された植物体の生産方法は、以上のように、葉の形態制御に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、該転写因子が転写を促進する標的遺伝子の転写を抑制させることを特徴としている。
【0030】
これにより、得られる植物体では、葉の形態制御に関与する遺伝子の転写が抑制され、葉柄の形態が改変された植物体を生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
本発明は、葉柄の形態が改変された植物体を生産する技術であって、葉の形態制御に関する転写因子と任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させるものである。上記キメラタンパク質を植物体で生産させることによって得られる植物体では、上記転写因子が標的とする標的遺伝子の転写が抑制され、葉柄の形態が改変された植物体を生産することができる。
【0033】
ここで、葉柄の形態が改変されることは次のようにして起こる。すなわち、上記キメラタンパク質における転写因子由来のDNA結合ドメインが、標的遺伝子に結合する。転写因子は転写抑制因子に転換され、標的遺伝子の転写が抑制される。その結果、得られる植物体の葉柄の形態を改変することができる。
【0034】
本発明の生産方法で生産される、葉柄の形態が改変された植物体とは、葉柄の形態が改変された植物体であれば特に限定されるものではない。ここで、葉柄の形態とは、例えば、葉柄の長さ、葉柄の太さ、葉柄の断面の形状、葉柄の表面の状態等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、葉柄の形態が改変された植物体とは、葉柄の形態が改変されたのみで他の葉の形態は改変されていない植物体であってもよいし、又は、葉柄の形態が改変されると同時に他の葉の形態も改変された植物体であってもよい。
【0035】
この中でも、本発明の葉柄の形態が改変された植物体とは、少なくとも葉柄の長さが短くなるように改変された植物体であることが好ましい。したがって葉柄の形態が改変された植物体とは、葉柄の長さが短くなったのみで他の葉の形態は改変されていない植物体であってもよいし、又は、葉柄の長さが短くなると同時に他の葉の形態も改変された植物体であってもよい。これらのうちでも、葉柄の形態が改変された植物体は、葉柄の長さが短くなったのみで他の葉の形態は改変されていない植物体であることがより好ましい。また、葉柄の長さが短くなると同時に他の葉の形態がわずかに改変されていてもよい。葉柄の長さが短くなるとは、葉柄の長さが、改変前と比較して短くなっていれば特に限定されるものではなく、葉柄が極端に短くなり無葉柄となったものも含まれる。また、葉柄の長さとは、葉柄の基部と、葉身及び葉柄の境とを結ぶ軸方向の長さをいう。なお、「葉」には葉身、葉柄及び托葉が含まれる。ここで、「葉身」とは、表皮と葉肉と葉脈とから構成される、葉の主要な部分をいい、「葉柄」とは、葉身を支えて茎に接着している葉の部分をいい、「托葉」とは、葉柄の上又は葉柄基部付近の茎の上に発生する葉的器官をいう。
【0036】
以降の説明では、本発明にかかる葉柄の形態が改変された植物体の生産方法に用いられるキメラタンパク質、本発明にかかる植物体の生産方法の一例、これにより得られる植物体とその有用性、並びにその利用についてそれぞれ説明する。
【0037】
(I)本発明で用いられるキメラタンパク質
上述したように、本発明で用いられるキメラタンパク質は、葉の形態制御に関与する転写因子と、転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたものである。
【0038】
また、本発明で用いられるキメラタンパク質は、内在性の遺伝子に対して優性に作用するものである。すなわち、本発明にかかるキメラタンパク質は植物が二倍体や複二倍体であったり、あるいは植物に機能重複遺伝子が存在したりしても、葉の形態制御に関与する転写因子が転写を促進する標的遺伝子の発現を一様に抑制できる。それゆえ、上記キメラタンパク質が導入された植物体を、効果的に、葉柄の形態が改変された植物体に形質転換することができる。
【0039】
以下に、上記転写因子および機能性ペプチドそれぞれについて説明する。
【0040】
(I−1)葉の形態制御に関与する転写因子
本発明で用いられる転写因子は、葉の形態制御に関与する転写因子であれば特に限定されるものではない。かかる転写因子は、植物界で広く保存されている。したがって、本発明で用いられる転写因子には、種々の植物に保存されている同様の機能を有する転写因子が含まれる。
【0041】
このような転写因子としては、TCPドメインを含んだ転写因子であるTCP1タンパク質を挙げることができるが、上記転写因子はこれに限定されるものではない。
【0042】
本発明で用いられる転写因子の代表的な一例としては、例えば、シロイヌナズナTCP1タンパク質を挙げることができる。TCP1タンパク質は、配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。本発明では、例えば、このTCP1タンパク質に後述する機能性ペプチドを融合させることにより、転写因子であるTCP1タンパク質を転写抑制因子に転換させる。
【0043】
また、本発明で用いられる転写因子としては、配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるTCP1タンパク質に限定されるものではなく、葉の形態制御に関与する転写因子であればよい。具体的には、配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、上記機能を有していれば本発明にて用いることができる。なお、上記の「配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」における「1個又は数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。
【0044】
また上記転写因子は、配列番号134に示されるアミノ酸配列に対して、20%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%または70%以上の相同性を有するタンパク質であって、且つ、葉の形態制御に関与する転写因子であってもよい。なおここで「相同性」とは、アミノ酸配列中に占める同じ配列の割合であり、この値が高いほど両者は近縁であるといえる。
【0045】
また、本発明で用いられる、葉の形態制御に関与する転写因子のアミノ酸配列は、種の異なる数多くの植物間において、保存性の高いものと考えられる。そのため、葉柄の形態を改変したい個々の植物体において、葉の形態制御に関与する固有の転写因子やその遺伝子を、必ずしも単離する必要はない。すなわち、後述する実施例で示す、シロイヌナズナで構築したキメラタンパク質を、他の植物に導入することで、さまざまな種の植物において簡便に、葉柄の形態が改変された植物体を生産することができる。
【0046】
本発明で用いられるキメラタンパク質を生産する際には、後述するように、公知の遺伝子組換え技術を好適に用いることができる。そこで、本発明にかかる植物体の生産方法には、上記転写因子をコードする遺伝子も好適に用いることができる。
【0047】
上記転写因子をコードする遺伝子としては特に限定されるものではないが、具体的な一例としては、例えば、転写因子としてTCP1タンパク質を用いる場合には、このTCP1タンパク質をコードする遺伝子(説明の便宜上、TCP1遺伝子と称する)を挙げることができる。TCP1遺伝子の具体的な一例としては、例えば、配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)として含むポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0048】
もちろん、本発明で用いられる転写因子をコードする遺伝子としては、上記の例に限定されるものではなく、配列番号135に示される塩基配列と相同性を有する遺伝子であってもよい。具体的には、例えば、配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、上記転写因子をコードする遺伝子等を挙げることができる。なお、ここでストリンジェントな条件でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下で結合することを意味する。
【0049】
上記ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズしがたくなる)。
【0050】
上記転写因子をコードする遺伝子を取得する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法により、多くの植物から単離することができる。例えば、既知の転写因子をコードする遺伝子の塩基配列に基づき作製したプライマー対を用いることができる。このプライマー対を用いて、植物のcDNA又はゲノミックDNAを鋳型としてPCRを行うこと等により上記遺伝子を得ることができる。また、上記転写因子をコードする遺伝子は、従来公知の方法により化学合成して得ることもできる。
【0051】
(I−2)転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド
本発明で用いられる、転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド(説明の便宜上、転写抑制転換ペプチドと称する)としては、特に限定されるものではなく、転写因子と融合させたキメラタンパク質を形成させることにより、当該転写因子により制御される標的遺伝子の転写を抑制することができるペプチドであればよい。具体的には、例えば、本発明者によって見出された転写抑制転換ペプチド(特許文献1〜7、非特許文献1・2等参照)を挙げることができる。
【0052】
本発明者は、Class II ERF遺伝子群の一つであるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、AtERF4タンパク質、AtERF7タンパク質、AtERF8タンパク質を転写因子に結合させたタンパク質が、遺伝子の転写を顕著に抑制するとの知見を得た。そこで、上記タンパク質をそれぞれコードする遺伝子およびこれから切り出したDNAを含むエフェクタープラスミドを構築し、これを植物細胞に導入することにより、実際に遺伝子の転写を抑制することに成功した(例えば特許文献1〜4参照)。また、Class II ERF遺伝子群の一つであるタバコERF3タンパク質(例えば特許文献5参照)、イネOsERF3タンパク質(例えば特許文献6参照)をコードする遺伝子、及び、ジンクフィンガータンパク質の遺伝子群の一つであるシロイヌナズナZAT10、同ZAT11をコードする遺伝子についても上記と同様な試験を行ったところ、遺伝子の転写を抑制することを見出している。さらに本発明者は、これらタンパク質は、カルボキシル基末端領域に、アスパラギン酸−ロイシン−アスパラギン(DLN)を含む共通のモチーフを有することを明らかにした。そして、この共通モチーフを有するタンパク質について検討した結果、遺伝子の転写を抑制するタンパク質は極めて単純な構造のペプチドであってもよく、これら単純な構造を有するペプチドが、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有することを見出している。
【0053】
また、本発明者は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質は、上記の共通のモチーフと一致しないモチーフを有するが、転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有すること、また該SUPERMANタンパク質をコードする遺伝子を、転写因子のDNA結合ドメイン又は転写因子をコードする遺伝子に結合させたキメラ遺伝子は、強力な転写抑制能を有するタンパク質を産生することも見出している。
【0054】
したがって、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドの一例として、本実施の形態では、Class II ERFタンパク質であるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、同AtERF4タンパク質、同AtERF7タンパク質、同AtERF8タンパク質、タバコERF3タンパク質、イネOsERF3タンパク質、ジンクフィンガータンパク質の一つであるシロイヌナズナZAT10タンパク質、同ZAT11タンパク質等のタンパク質、同SUPERMANタンパク質、これらから切り出したペプチドや、上記機能を有する合成ペプチド等を挙げることができる。
【0055】
上記転写抑制転換ペプチドの一例の具体的な構造は、下記式(1)〜(4)の何れかで表されるアミノ酸配列となっている。
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPheまたはIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−LeuまたはLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、GlnまたはAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、GlnまたはAspを示す。)
(I−2−1)式(1)の転写抑制転換ペプチド
上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、X1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0056】
このX1で表されるアミノ酸残基は、式(1)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。
【0057】
同様に、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、X3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記X3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。
【0058】
上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいて、X1およびX3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号40、41に示す。なお、上記X2がAsnの場合のアミノ酸配列が配列番号40に示すアミノ酸配列であり、上記X2がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号41に示すアミノ酸配列である。
【0059】
(I−2−2)式(2)の転写抑制転換ペプチド
上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1と同様、上記Y1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Y1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0060】
このY1で表されるアミノ酸残基は、式(2)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。
【0061】
同様に、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX3と同様、上記Y3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、Y3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記Y3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。
【0062】
上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Y1およびY3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号42、43に示す。なお、上記Y2がPheの場合のアミノ酸配列が配列番号42に示すアミノ酸配列であり、上記Y2がIleの場合のアミノ酸配列が配列番号43に示すアミノ酸配列である。また、Y2を除いた4個のアミノ酸残基からなるテトラマー(4mer)の具体的な配列は、配列番号44に示す。
【0063】
(I−2−3)式(3)の転写抑制転換ペプチド
上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記Z1で表されるアミノ酸残基は、1〜3個の範囲内でLeuを含むものとなっている。アミノ酸1個の場合は、Leuであり、アミノ酸2個の場合は、Asp−Leuとなっており、アミノ酸3個の場合はLeu−Asp−Leuとなっている。
【0064】
一方、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1等と同様、上記Z3で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Z3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0065】
このZ3で表されるアミノ酸残基は、式(3)の転写抑制転換ペプチドを合成するときに容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。Z3で表されるアミノ酸残基の具体的な例としては、Gly、Gly−Phe−Phe、Gly−Phe−Ala、Gly−Tyr−Tyr、Ala−Ala−Ala等が挙げられるが、もちろんこれらに限定される物ではない。
【0066】
また、この式(3)で表される転写抑制転換ペプチド全体のアミノ酸残基の数は、特に限定されるものではないが、合成するときに容易さからみれば、20アミノ酸以下であることが好ましい。
【0067】
上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Z3を除いた7〜10個のアミノ酸残基からなるオリゴマーの具体的な配列は、配列番号45〜53に示す。なお、上記Z1がLeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号45、46または47に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がAsp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号48、49または50に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がLeu−Asp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号51、52または53に示すアミノ酸配列である。
【0068】
(I−2−4)式(4)の転写抑制転換ペプチド
上記式(4)の転写抑制転換ペプチドは、6個のアミノ酸残基からなるヘキサマー(6mer)であり、その具体的な配列は、配列番号7、16、54に示す。なお、上記Z4がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号7に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がAspの場合のアミノ酸配列が配列番号16に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がGlnの場合のアミノ酸配列が配列番号54に示すアミノ酸配列である。
【0069】
特に、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドは、上記式(4)で表されるヘキサマーのような最小配列を有するペプチドであってもよい。例えば、配列番号7に示すアミノ酸配列は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質(SUPタンパク質)の196〜201番目のアミノ酸配列に相当し、上述したように、本発明者が新たに上記転写抑制転換ペプチドとして見出したものである。
【0070】
(I−2−5)転写抑制転換ペプチドのより具体的な例
上述した各式で表される転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、例えば、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。これらオリゴペプチドは、本発明者が上記転写抑制転換ペプチドであることを見出したものである(例えば、特許文献7参照)。
【0071】
さらに、上記転写抑制転換ペプチドの他の具体的な例として、次に示す(e)又は(f)記載のオリゴペプチドを挙げることができる。
(e)配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド。
(f)配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、転写因子を転写抑制因子に転換する機能を有するペプチド。
【0072】
上記配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチドは、SUPタンパク質である。また、上記の「配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」における「1個又は数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。
【0073】
上記アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、上記ペプチドをコードする塩基配列を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(何れも商品名、TAKARA社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA社製)を用いて異変が導入される。
【0074】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号20に示されるアミノ酸配列の全長配列からなるペプチドに限られず、その部分配列を有するペプチドであってもよい。
【0075】
その部分配列を有するペプチドとしては、例えば、配列番号21に示されるアミノ酸配列(SUPタンパク質の175から204番目のアミノ酸配列)からなるペプチドが挙げられ、その部分配列を有するペプチドとしては、上記(3)で表されるペプチドが挙げられる。
【0076】
(I−3)転写抑制転換ペプチドの他の例
本発明者は、さらに、上記モチーフの構造について検討した結果、新たに6つのアミノ酸からなるモチーフを見出した。このモチーフは、具体的には、次に示す一般式(5)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドである。これらのペプチドも、上記転写抑制転換ペプチドに含まれる。
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
但し、上記式(5)中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。
【0077】
なお、上記一般式(5)で表されるペプチドを、便宜上、次に示す一般式(6)、(7)、(8)又は(9)で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドに分類する。
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(9)Asp−Leu−β3−Leu−Arg−Leu
但し、上記各式中、α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示す。また、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、β3は、Glu、Asp又はGlnを示す。さらに、γ2は、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。
【0078】
上記式(5)〜(9)で表されるアミノ酸配列からなる転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、59、又は60で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを挙げることができる。このうち、配列番号29、30、32、34、133、59、又は60のペプチドは、一般式(6)に示されるペプチドに相当し、配列番号22、25、35、36又は37のペプチドは、一般式(7)に示されるペプチドに相当し、配列番号26、27、28、31、又は33のペプチドは、一般式(8)に示されるペプチドに相当し、配列番号23又は24のペプチドは、一般式(9)に示されるペプチドに相当する。
【0079】
また、上記一般式(5)〜(9)に示されるペプチド以外にも配列番号38または39で表されるアミノ酸配列からなる転写抑制転換ペプチドを用いることもできる。
【0080】
(I−4)キメラタンパク質の生産方法
上記(I−2)および(I−3)で説明した各種転写抑制転換ペプチドは、上記(I−1)で説明した転写因子と融合してキメラタンパク質とすることにより、当該転写因子を転写抑制因子とすることができる。したがって、本発明では、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて、転写因子をコードする遺伝子とのキメラ遺伝子を得れば、キメラタンパク質を生産させることができる。
【0081】
具体的には、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチド(説明の便宜上、転写抑制転換ポリヌクレオチドと称する)と上記転写因子をコードする遺伝子とを連結することによりキメラ遺伝子を構築して、植物細胞に導入する。これによりキメラタンパク質を生産させることができる。なお、キメラ遺伝子を植物細胞に導入する具体的な方法については、後述する(2)の項で詳細に説明する。
【0082】
上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体的な塩基配列は特に限定されるものではなく、遺伝暗号に基づいて、上記転写抑制転換ペプチドのアミノ酸配列に対応する塩基配列を含んでいればよい。また、必要に応じて、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドは、転写因子遺伝子と連結するための連結部位となる塩基配列を含んでいてもよい。さらに、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドのアミノ酸読み枠と転写因子遺伝子の読み枠とが一致しないような場合に、これらを一致させるための付加的な塩基配列を含んでいてもよい。
【0083】
上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、1、55、又は57に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。また、配列番号62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、2、56、又は58に示されるポリヌクレオチドは、それぞれ、上記例示されたポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドである。また、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの他の具体例としては、例えば、配列番号95、96に示されるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、以下の表1に示すように配列番号3〜39、133、59、60に示されるアミノ酸配列に対応するものである。
【0084】
【表1】

【0085】
本発明で用いられるキメラタンパク質は、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結した上記キメラ遺伝子から得ることができる。したがって、上記キメラタンパク質は、上記転写因子の部位と、上記転写抑制転換ペプチドの部位とが含まれていればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、転写因子と転写抑制転換ペプチドとの間をつなぐためのリンカー機能を有するポリペプチドや、HisやMyc、Flag等のようにキメラタンパク質をエピトープ標識するためのポリペプチド等、各種の付加的なポリペプチドが含まれていてもよい。さらに上記キメラタンパク質には、必要に応じて、ポリペプチド以外の構造、例えば、糖鎖やイソプレノイド基等が含まれていてもよい。
【0086】
(II)本発明にかかる植物体の生産方法の一例
本発明にかかる植物体の生産方法は、上記(I)で説明したキメラタンパク質を植物体に導入し、葉柄の形態を改変する過程を含んでいれば特に限定されるものではないが、本発明にかかる植物体の生産方法を具体的な工程で示せば、例えば、発現ベクター構築工程、形質転換工程、選抜工程等の工程を含む生産方法として挙げることができる。このうち、本発明では、少なくとも形質転換工程が含まれていればよい。以下、各工程について具体的に説明する。
【0087】
(II−1)発現ベクター構築工程
本発明において行われる発現ベクター構築工程は、上記(I−1)で説明した転写因子をコードする遺伝子と、上記(I−4)で説明した転写抑制転換ポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを構築する工程であれば特に限定されるものではない。
【0088】
上記組換え発現ベクターの母体となるベクターとしては、従来公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミド等を用いることができ、導入される植物細胞や導入方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、pBR322、pBR325、pUC19、pUC119、pBluescript、pBluescriptSK、pBI系のベクター等を挙げることができる。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系のバイナリーベクターを用いることが好ましい。pBI系のバイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。
【0089】
上記プロモーターは、植物体内で遺伝子を発現させることが可能なプロモーターであれば特に限定されるものではなく、公知のプロモーターを好適に用いることができる。かかるプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーター、タバコのPR1a遺伝子プロモーター、トマトのリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニットプロモーター等を挙げることができる。この中でも、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターまたはアクチンプロモーターをより好ましく用いることができる。上記各プロモーターを用いれば、得られる組換え発現ベクターでは、植物細胞内に導入されたときに任意の遺伝子を強く発現させることが可能となる。
【0090】
上記プロモーターは、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結したキメラ遺伝子を発現しうるように連結され、ベクター内に導入されていればよく、組換え発現ベクターとしての具体的な構造は特に限定されるものではない。
【0091】
上記組換え発現ベクターは、上記プロモーターおよび上記キメラ遺伝子に加えて、さらに他のDNAセグメントを含んでいてもよい。当該他のDNAセグメントは特に限定されるものではないが、ターミネーター、選別マーカー、エンハンサー、翻訳効率を高めるための塩基配列等を挙げることができる。また、上記組換え発現ベクターは、さらにT−DNA領域を有していてもよい。T−DNA領域は特にアグロバクテリウムを用いて上記組換え発現ベクターを植物体に導入する場合に遺伝子導入の効率を高めることができる。
【0092】
ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を好ましく用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることできる。
【0093】
上記形質転換ベクターにおいては、ターミネーターを適当な位置に配置することにより、植物細胞に導入された後に、不必要に長い転写物を合成したり、強力なプロモーターがプラスミドのコピー数の減少させたりするような現象の発生を防止することができる。
【0094】
上記選別マーカーとしては、例えば薬剤耐性遺伝子を用いることができる。かかる薬剤耐性遺伝子の具体的な一例としては、例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等に対する薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。これにより、上記抗生物質を含む培地中で生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体を容易に選別することができる。
【0095】
上記翻訳効率を高めるための塩基配列としては、例えばタバコモザイクウイルス由来のomega配列を挙げることができる。このomega配列をプロモーターの非翻訳領域(5’UTR)に配置させることによって、上記キメラ遺伝子の翻訳効率を高めることができる。このように、上記形質転換ベクターには、その目的に応じて、さまざまなDNAセグメントを含ませることができる。
【0096】
上記組換え発現ベクターの構築方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択された母体となるベクターに、上記プロモーター、転写因子をコードする遺伝子、および転写抑制転換ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて上記他のDNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。例えば、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結してキメラ遺伝子を構築し、次に、このキメラ遺伝子とプロモーターと(必要に応じてターミネーター等)とを連結して発現カセットを構築し、これをベクターに導入すればよい。
【0097】
キメラ遺伝子の構築および発現カセットの構築では、例えば、各DNAセグメントの切断部位を互いに相補的な突出末端としておき、ライゲーション酵素で反応させることで、当該DNAセグメントの順序を規定することが可能となる。なお、発現カセットにターミネーターが含まれる場合には、上流から、プロモーター、上記キメラ遺伝子、ターミネーターの順となっていればよい。また、組換え発現ベクターを構築するための試薬類、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。
【0098】
また、上記組換え発現ベクターの増殖方法(生産方法)も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。一般的には大腸菌をホストとして当該大腸菌内で増殖させればよい。このとき、ベクターの種類に応じて、好ましい大腸菌の種類を選択してもよい。
【0099】
(II−2)形質転換工程
本発明において行われる形質転換工程は、上記(II−1)で説明した組換え発現ベクターを植物細胞に導入して、上記(I)で説明したキメラタンパク質を生産させるようになっていればよい。
【0100】
上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入する方法(形質転換方法)は特に限定されるものではなく、植物細胞に応じた適切な従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、アグロバクテリウムを用いる方法や直接植物細胞に導入する方法を用いることができる。アグロバクテリウムを用いる方法としては、例えば、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)を用いることができる。
【0101】
組換え発現ベクターを直接植物細胞に導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法、プロトプラスト融合法、リン酸カルシウム法等を用いることができる。
【0102】
上記組換え発現ベクターが導入される植物細胞としては、例えば、花、葉、根等の植物器官における各組織の細胞、カルス、懸濁培養細胞等を挙げることができる。
【0103】
ここで、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記組換え発現ベクターは、生産しようとする種類の植物体に合わせて適切なものを適宜構築してもよいが、汎用的な組換え発現ベクターを予め構築しておき、それを植物細胞に導入してもよい。すなわち、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記(I−1)で説明した組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0104】
(II−3)その他の工程、その他の方法
本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記形質転換工程が含まれていればよく、さらに上記組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいが、さらに他の工程が含まれていてもよい。具体的には、形質転換後の植物体から適切な形質転換体を選抜する選抜工程等を挙げることができる。
【0105】
選抜の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ハイグロマイシン耐性等の薬剤耐性を基準として選抜してもよいし、形質転換体を育成した後に、植物体そのものの葉柄の形態から選抜してもよい。例えば、葉柄の形態から選抜する例としては、形質転換体の葉柄の形態を、形質転換していない植物体の葉柄の形態と比較する方法を挙げることができる(後述の実施例参照)。特に葉柄の形態は、単に比較するだけでも選抜が可能になるとともに、葉柄の形態の改変という本発明の効果そのものも確認することができる。
【0106】
本発明にかかる植物体の生産方法では、上記キメラ遺伝子を植物体に導入するため、該植物体から、有性生殖または無性生殖により単に葉柄の形態が改変された子孫を得ることが可能となる。また、該植物体やその子孫から植物細胞や、種子、果実、株、カルス、塊茎、切穂、塊等の繁殖材料を得て、これらを基に該植物体を量産することも可能となる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、選抜後の植物体を繁殖させる繁殖工程(量産工程)が含まれていてもよい。
【0107】
なお、本発明における植物体とは、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれる。つまり、本発明では、最終的に植物個体まで成育させることができる状態のものであれば、全て植物体と見なす。また、上記植物細胞には、種々の形態の植物細胞が含まれる。かかる植物細胞としては、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片等が含まれる。これらの植物細胞を増殖・分化させることにより植物体を得ることができる。なお、植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて、従来公知の方法を用いて行うことができる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、植物細胞から植物体を再生させる再生工程が含まれていてもよい。
【0108】
(III)本発明により得られる植物体とその有用性、並びにその利用
本発明にかかる植物体の生産方法は、キメラタンパク質を植物体で発現させることによる。当該キメラタンパク質における転写因子由来のDNA結合ドメインが、標的遺伝子に結合する。転写因子は転写抑制因子に転換され、標的遺伝子の転写が抑制される。その結果、得られる植物体の葉柄の形態を改変することができる。したがって、本発明には、上記植物体の生産方法により得られる植物体も含まれる。
【0109】
(III−1)本発明にかかる植物体の具体例
ここで、本発明にかかる葉柄の形態が改変された植物体の具体的な種類は特に限定されるものではなく、葉柄の形態の改変によりその有用性が高まる植物を挙げることができる。かかる植物は、被子植物であってもよいし裸子植物であってもよい。また、被子植物としては、単子葉植物であってもよいし、双子葉植物であってもよいが、双子葉植物であることがより好ましい。双子葉植物としては、離弁花亜綱であってもよいし、合弁花亜綱であってもよい。合弁花亜綱としては、例えば、リンドウ目、ナス目、シソ目、アワゴケ目、オオバコ目、キキョウ目、ゴマノハグサ目、アカネ目、マツムシソウ目、キク目を挙げることができる。また、離弁花亜綱としては、例えば、ビワモドキ目、ツバキ目、アオイ目、サガリバナ目、ウツボカズラ目、スミレ目、ヤナギ目、フウチョウソウ目、ツツジ目、イワウメ目、カキノキ目、サクラソウ目等を挙げることができる。
【0110】
(III−2)本発明の有用性
本発明では、植物体の葉柄の形態を改変することができるが、本発明の有用性は特に限定されるものではなく、葉柄の形態の改変により効果がある分野であればよい。かかる分野としては、例えば、新規な園芸品種の創出への応用、植物栽培の省スペース化等への応用等を挙げることができる。
【0111】
まず、新規な園芸品種の創出への応用例について説明すると、例えば、本発明に係る植物体の生産方法を用いることにより、葉の形態に大きな変化をもつ新規な観葉植物や花卉植物を作出することができる。
【0112】
また、植物栽培の省スペース化について説明すると、例えば、葉柄が短くなるように改変された植物体は、少ない空間により多くの植物を栽培することが可能となる。それゆえ植物栽培の省スペース化に寄与することが期待される。
【0113】
(III−3)本発明の利用の一例
本発明の利用分野、利用方法は特に限定されるものではないが、一例として、本発明にかかる植物体の生産方法を行うためのキット、すなわち葉柄の形態改変キットを挙げることができる。
【0114】
この葉柄の形態改変キットの具体例としては、上記転写因子をコードする遺伝子と上記転写抑制転換ポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを少なくとも含んでいればよく、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいればより好ましい。上記試薬群としては、形質転換の種類に応じた酵素やバッファー等を挙げることができる。その他、必要に応じてマイクロ遠心チューブ等の実験用素材を添付してもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び図1ないし図4に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
〔実施例1〕
以下の実施例1においては、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターと、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終止領域との間に、転写抑制転換ペプチドのひとつである12アミノ酸ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)(配列番号19)をコードするポリヌクレオチドをTCP1遺伝子の下流に結合したポリヌクレオチドを組み込んだ組換え発現ベクターを構築し、これをシロイヌナズナにアグロバクテリウム法を用いて導入することにより、シロイヌナズナを形質転換した。
【0117】
<形質転換用ベクター構築用ベクターの構築>
形質転換用ベクター構築用ベクターであるp35SGを、図1に示すように、以下の工程(1)〜(4)のとおりに構築した。
【0118】
(1)インビトロジェン社製pENTRベクター上のattL1、attL2のそれぞれの領域をプライマーattL1−F(配列番号136)、attL1−R(配列番号137)、attL2−F(配列番号138)、attL2−R(配列番号139)を用いてPCRにて増幅した。得られたattL1断片を制限酵素HindIII、attL2断片をEcoRIで消化し、精製した。PCR反応の条件は、変性反応94℃1分、アニール反応47℃2分、伸長反応74℃1分を1サイクルとして、25サイクル行った。以下すべてのPCR反応は同じ条件で行った。
【0119】
(2)クローンテック社製(Clontech社、USA)のプラスミドpBI221を制限酵素XbaIとSacIで切断した後、アガロースゲル電気泳動でGUS遺伝子を除き、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(以下の説明では、便宜上、CaMV35Sと称する)とノパリン合成酵素遺伝子の転写終止領域(以下の説明では、便宜上、Nos−terと称する)を含む35S−Nosプラスミド断片DNAを得た。
【0120】
(3)以下の配列番号140、141の配列からなるDNA断片を合成し、90℃で2分間加熱した後、60℃で1時間加熱し、その後室温(25℃)で2時間静置してアニーリングさせ2本鎖を形成させた。これを上記35S−Nosプラスミド断片DNAのXbaI−SacI領域にライゲーションし、p35S−Nosプラスミドを完成させた。配列番号140、141の配列からなるDNA断片には、5’末端にBamHI制限酵素部位、翻訳効率を高めるタバコモザイクウイルス由来のomega配列、及び制限酵素部位SmaI、SalI、SstIがこの順に含まれる。
5'-ctagaggatccacaattaccaacaacaacaaacaacaaacaacattacaattacagatcccgggggtaccgtcgacgagctc-3'(配列番号140)
5'-cgtcgacggtacccccgggatctgtaattgtaatgttgtttgttgtttgttgttgttggtaattgtggatcct-3'(配列番号141)
(4)このp35S−Nosプラスミドを制限酵素HindIIIで消化し、上記attL1断片を挿入した。さらにこれをEcoRIで消化し、attL2断片を挿入して、ベクターp35SGを完成させた。
【0121】
<転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ構築用ベクターの構築>
転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ構築用ベクターであるp35SSRDXGを、図2に示すように、以下の工程(1)〜(2)のとおりに構築した。
【0122】
(1)12アミノ酸転写抑制転換ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)をコードし、3’末端に終止コドンTAAを持つように設計した、以下の配列からなるDNAをそれぞれ合成し、70℃で10分加温した後、自然冷却によりアニールさせて2本鎖DNAとした。
5'-gggcttgatctggatctagaactccgtttgggtttcgcttaag-3'(配列番号142)
5'-tcgacttaagcgaaacccaaacggagttctagatccagatcaagccc-3'(配列番号143)
(2)p35SGを制限酵素SmaI、SalIで消化し、この領域に上記のSRDXをコードする2本鎖DNAを挿入して、p35SSRDXGを構築した。
【0123】
<形質転換用ベクターの構築>
構築用ベクターのatt部位で挟まれたDNA断片と組換えるための、2つのatt部位を有する植物形質転換用ベクターであるpBIGCKHを、図3に示すように、以下の工程(1)から(3)のとおりに構築した。
【0124】
(1)米国ミシガン州立大学より譲渡されたpBIG(Becker, D. Nucleic Acids Res. 18:203,1990)を制限酵素HindIII、EcoRIで消化し、GUS、Nos領域を電気泳動で除いた。
【0125】
(2)インビトロジェン社から購入したGateway(登録商標)ベクターコンバージョンシステムのFragmentAをプラスミドpBluscriptのEcoRVサイトに挿入した。これをHindIII−EcoRIで消化し、FragmentA断片を回収した。
【0126】
(3)回収したFragmentA断片を上記のpBIGプラスミド断片とライゲーションを行い、pBIGCKHを構築した。これらは大腸菌DB3.1(インビトロジェン社)でのみ増殖可能で、クロラムフェニコール耐性、カナマイシン耐性である。
【0127】
<構築用ベクターへのTCP1遺伝子の組み込み>
上記構築用ベクターp35SSRDXGにシロイヌナズナ由来の転写因子TCP1タンパク質をコードする遺伝子を以下の工程(1)〜(3)のとおりに組み込んだ。
【0128】
(1)シロイヌナズナ葉から調整したmRNAを用いて作成したcDNAライブラリーから、以下のプライマーを用いて、終止コドンを除くシロイヌナズナTCP1遺伝子のコード領域のみを含むDNA断片をPCRにて増幅した。
プライマー1(TCP1−F)5'-ATGTCGTCTTCCACCAATGAC-3'(配列番号144)
プライマー2(TCP1−R stopless)5'-GTTTACAAAAGAGTCTTGAATCC-3'(配列番号145)
TCP1遺伝子のcDNAおよびコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号135および134に示す。
【0129】
(2)得られたTCP1コード領域のDNA断片を、図2に示すように、予め制限酵素SmaIで消化しておいた構築用ベクターp35SSRDXGのSmaI部位にライゲーションした。
【0130】
(3)このプラスミドで大腸菌を形質転換し、プラスミドを調整して、塩基配列を決定し、順方向に挿入されたクローンを単離し、SRDXとのキメラ遺伝子となったものを得た。
【0131】
<組換え発現ベクターの構築>
上記構築用ベクター上にあるCaMV35Sプロモーター、キメラ遺伝子、Nos−ter等を含むDNA断片を、植物形質転換用ベクターpBIGCKHに組換えることにより、植物を宿主とする発現ベクターを構築した。組換え反応はインビトロジェン社のGateway(登録商標)LR clonase(登録商標)を用いて以下の工程(1)〜(3)のとおりに行った。
【0132】
(1)まず、TCP1コード領域のDNA断片が順方向に挿入されたp35STCP1SRDXG1.5μL(約300ng)とpBIGCKH4.0μL(約600ng)に5倍希釈したLR buffer 4.0μLとTE緩衝液(10mM TrisCl pH7.0、1mM EDTA)5.5μLを加えた。
【0133】
(2)この溶液にLR clonase4.0μLを加えて25℃で60分間インキュベートした。続いて、proteinaseK2μLを加えて37℃で10分間インキュベートした。
【0134】
(3)その後、この溶液1〜2μLを大腸菌(DH5a等)に形質転換し、カナマイシンで選択した。
【0135】
<組換え発現ベクターにより形質転換した植物体の生産>
次に、以下の工程(1)〜(3)に示すように、上記キメラ遺伝子を含むDNA断片をpBIGCKHに組み込んだプラスミドであるpBIG−TCP1SRDXで、シロイヌナズナの形質転換を行い、形質転換植物体を生産した。シロイヌナズナ植物の形質転換は、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)に従った。ただし、感染させるのにバキュウムは用いないで、浸すだけにした。
【0136】
(1)まず得られたプラスミド、pBIG−TCP1SRDXを、土壌細菌((Agrobacterium tumefaciens strain GV3101(C58C1Rifr)pMP90(Gmr)(koncz and Sahell 1986))株にエレクトロポレーション法で導入した。導入した菌を1リットルの、抗生物質(カナマイシン(Km)50μg/ml、ゲンタマイシン(Gm)25μg/ml、リファンピシリン(Rif)50μg/ml)を含むYEP培地でOD600が1になるまで培養した。次いで、培養液から菌体を回収し、1リットルの感染用培地(Infiltration medium、下表2)に懸濁した。
【0137】
【表2】

【0138】
(2)この溶液に、14日間育成したシロイヌナズナを1分間浸し感染させた後、再び育成させ結種させた。回収した種子を25%ブリーチ、0.02%Triton X-100溶液で7分間滅菌した後、滅菌水で3回リンスし、滅菌したハイグロマイシン選択培地(下表3)に蒔種した。
【0139】
【表3】

【0140】
(3)蒔種した約5000粒の種子から平均して50個体のハイグロマイシン耐性植物である形質転換植物体を得た。これらの植物から全RNAを調整し、RT−PCRを用いてTCP1SRDXの遺伝子が導入されていることを確認した。
【0141】
pBIG−TCP1SRDXで、形質転換された植物体を図4(b)に、野生型の植物体を図4(a)に示す。図4(a)、(b)に示すように、pBIG−TCP1SRDXで形質転換されたシロイヌナズナは、野生型と比較し、葉柄が極端に短いことがわかった。その結果、BIG−TCP1SRDXで形質転換された植物体は、葉が重なる形態を示した。
【0142】
〔参考例〕
以下の参考例においては、シロイヌナズナ由来のTCP1遺伝子をCaMV35Sプロモーターの下流につないで組換え発現ベクターを構築し、これをシロイヌナズナにアグロバクテリウム法を用いて導入することにより、シロイヌナズナを形質転換し、TCP1を過剰発現させた形質転換植物体を生産した。
【0143】
<形質転換用ベクター構築用ベクターの構築>
実施例1と同様にして、図1に示すように、形質転換用ベクター構築用ベクターであるp35SGを構築した。
【0144】
<形質転換用ベクターの構築>
実施例1と同様にして、図3に示すように、形質転換用ベクターであるpBIGCKHを構築した。
【0145】
<構築用ベクターへのTCP1遺伝子の組み込み>
上記構築用ベクターp35SGにシロイヌナズナ由来の転写因子TCP1タンパク質をコードする遺伝子を以下の工程(1)〜(3)のとおりに組み込んだ。
【0146】
(1)シロイヌナズナ葉から調整したmRNAを用いて作成したcDNAライブラリーから、以下のプライマーを用いて、シロイヌナズナTCP1遺伝子の終止コドンを含むコード領域のみを含むDNA断片をPCRにて増幅した。
プライマー1(TCP1−F)5'- ATGTCGTCTTCCACCAATGAC -3'(配列番号144)
プライマー2(TCP1−R)5'- TCAGTTTACAAAAGAGTCTTGAATCC -3'(配列番号146)
TCP1遺伝子のcDNA及びコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号135及び134に示す。
【0147】
(2)得られたTCP1コード領域のDNA断片を、予め制限酵素SmaIで消化しておいた構築用ベクターp35SGのSmaI部位にライゲーションした。
【0148】
(3)このプラスミドで大腸菌を形質転換し、プラスミドを調整して、塩基配列を決定し、順方向に挿入されたクローンを単離した。
【0149】
<組換え発現ベクターの構築>
上記構築用ベクター上にあるCaMV35Sプロモーター、TCP1遺伝子、Nos−ter等を含むDNA断片を用いた以外は、〔実施例1〕と同様に、植物形質転換用ベクターpBIGCKHに組換えることにより、植物を宿主とする発現ベクターを構築した。
【0150】
<組換え発現ベクターにより形質転換した植物体の生産>
次に、上記TCP1遺伝子を含むDNA断片をpBIGCKHに組み込んだプラスミドであるpBIG−TCP1を用いた以外は、〔実施例1〕と同様にしてシロイヌナズナの形質転換を行い、形質転換植物体を生産した。
【0151】
蒔種した約5000粒の種子から平均して50個体のハイグロマイシン耐性植物である形質転換植物体を得た。これらの植物から全RNAを調整し、RT−PCRを用いてTCP1の遺伝子が導入されていることを確認した。
【0152】
35S−TCP1を用いてTCP1を過剰発現された形質転換植物体では、葉柄の長さは野生型の植物体と比較して変化が見られなかった。この原因としては、TCP1転写因子は植物体内ですでに十分に存在しているため、過剰発現させても逆の表現型を示すような変化が起こらなかったということが可能性として考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
このように、本発明では、葉の形態制御に関与する転写因子が標的とする標的遺伝子の転写を抑制することによって葉柄の形態が改変された植物体を得ることができる。それゆえ、本発明は、各種農業や林業、アグリビジネス、さらには農産物を加工する産業や食品産業等に利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】実施例において用いる組換え発現ベクターを構築するための構築用ベクターの構築方法を示す工程図である。
【図2】実施例において用いる構築用ベクターp35SGに、転写抑制転換ペプチドSRDXをコードする遺伝子とTCP1遺伝子とを組み込む工程図である。
【図3】形質転換用ベクターpBIGCKHの構築方法を示す工程図である。
【図4】(a)は野生型のシロイヌナズナの葉を示す図であり、(b)は組換え発現ベクターpBIG−TCP1SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの葉を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉の形態制御に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、該転写因子が標的とする標的遺伝子の転写を抑制させることを特徴とする、葉柄の形態が改変された植物体の生産方法。
【請求項2】
上記葉柄の形態が改変された植物体は、少なくとも葉柄の長さが短くなるように改変された植物体であることを特徴とする請求項1に記載の植物体の生産方法。
【請求項3】
上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物体の生産方法。
【請求項4】
さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいることを特徴とする請求項3に記載の植物体の生産方法。
【請求項5】
上記転写因子が、以下の(a)又は(b)記載のタンパク質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
(a)配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、葉の形態制御に関与するタンパク質。
【請求項6】
上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)又は(d)記載の遺伝子が用いられることを特徴とする請求項3又は4に記載の植物体の生産方法。
(c)配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。
(d)配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、葉の形態制御に関与するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項7】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(1)〜(4)
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPhe又はIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−Leu又はLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、Gln又はAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、Gln又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項8】
上記機能性ペプチドが、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列からなるぺプチドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項9】
上記機能性ペプチドが、以下の(e)又は(f)記載のペプチドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
(e)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(f)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つ、転写因子を転写抑制因子に転換する機能を有するペプチド。
【請求項10】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(5)
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
(但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
で表されるアミノ酸配列からなるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項11】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(6)〜(8)
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項12】
上記機能性ペプチドが、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、59、又は60に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項13】
上記機能性ペプチドが、配列番号38又は39に示されるアミノ酸配列からなるぺプチドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の生産方法により生産された、葉柄の形態が改変された植物体。
【請求項15】
植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることを特徴とする請求項14に記載の植物体。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の生産方法を行うためのキットであって、
上記転写因子をコードする遺伝子と、転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴とする植物体の葉柄の形態改変キット。
【請求項17】
さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含むことを特徴とする請求項16に記載の植物体の葉柄の形態改変キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−20607(P2006−20607A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203843(P2004−203843)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度独立行政法人科学技術振興機構「シロイヌナズナ転写因子の機能解析」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】