説明

蒸散装置

【課題】 従来技術の課題を解決した電気や火気を使用しない蒸散装置を提供する。
【解決手段】 水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置は、水及び気体発生体を収納する収納容器1と、収納容器内に設けられた気体発生体固定手段2と、前記気体の突沸を防ぐ突沸防止手段3と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸散装置に関する。より詳しく述べると、芳香成分、消臭成分等の有効成分を火気・電気等の熱源を使用しないで雰囲気に蒸散させる蒸散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、天然の香木や香料成分を配合した加工品(例えば線香、練香など)を香炉で焚いて、その煙を室内に漂わせて香りを楽しむ方法が知られていたが、近年アロマテラピーに対する関心の高まりから、心理的、生理的にも効能が認められる様々な芳香物質を心地よく、しかも手軽に楽しむことができるルームフレグランス(room fragrance)用品が市場に数多くの出回るようになった。現在入手が容易な製品として、以下のような製品が挙げられる。
【0003】
キャンドル・アロマポットと呼ばれる製品は、ロウソクに火を点け、その発熱を利用して、香料成分を含んだ液体などを暖め、香りを放出させて楽しむものである(例え特許文献1)。この製品では、安価で手軽に入手可能なロウソクを熱源とするため、室内空間であれば家庭をはじめとするあらゆる場所で利用可能である。しかし、火気を使用するため、火災の危険には常に留意する必要があり、例えば宿泊施設や公共利用施設での利用は、防火・防災の観点から厳しく制限されることになる。
【0004】
電気アロマポットと呼ばれる製品は、ロウソクの代わりに、電球の発熱を利用して、香料成分を含んだ液体などを暖め、香りを放出させて楽しむ装置である(例えば特許文献2)。安価に入手できる製品も多く、安全性も高いことから、キャンドル・アロマポットの代替品として利用されている。しかし、それらの大半はタイマー機能を備えていないため、利用を停止する際には利用者自身が直接電源を切らなければならず、就寝時には使用を控えなければならないという不便さがある。他方、タイマー機能を備えた製品は高価であり、手軽に入手できない。
【0005】
アロマ・キャンドルは、ロウソクに香料をしみ込ませた製品であり、ロウソクを燃やすだけで香料成分が放出され、香りを手軽に楽しむことができる(例えば特許文献3)。しかし、火気を使用する点で、キャンドル・アロマポットと同様の問題がある。
【0006】
ルーム・スプレーは、水又はアルコールに香りのエキスを入れ、室内でスプレーを噴霧して香りを楽しむための製品である。この製品の利用者は、自分の周囲など限られた空間にスプレーを噴霧して、直ちに香りを楽しむことができる。そのため、経済性と即効性に特に優れた製品といえるが、短時間で香りが消えてしまうため、存分に香りを楽しむことはできない。
【0007】
そのため、特許文献4は、全かつ経済的に、しかも利用時間を気にすることなく存分にルーム・フレグランスを楽しむことを可能にする道具を新たに提供することを目的として、発熱剤を含む袋体が収容された容器と取り外し可能な蓋からなる芳香発生用加熱装置であって、前記蓋の外側表面には香料を含有する液体を貯留できる凹部(液体貯留槽)が存在し、又前記発熱剤が粉体アルミニウムおよび粉体生石灰を配合して得られる混合物を含むことを特徴とする前記加熱装置を提案している。
【先行技術文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−89337号公報
【特許文献2】特開2004−321789号公報
【特許文献3】特開2001−115186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に記載の発明は、水と反応することにより発熱する発熱体による加熱により香料を蒸発させる仕組みであり、芳香成分を長期間安定して放出するためには十分な量の発熱体と水を用いることが要求される。そのため、発熱体を多量に使用すると、水との反応により突沸する恐れがある。
【0010】
したがって、本発明の課題は、従来技術の課題を解決した電気や火気を使用しない蒸散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置であって、水及び気体発生体を収納する収納容器と、収納容器内に設けられた気体発生体固定手段と、前記気体の突沸を防ぐ突沸防止手段と、を設けていることを特徴とするものである(請求項1)
【0012】
本発明の蒸散装置において、有効成分が芳香成分であることがでる。この場合本発明の蒸散装置は、芳香成分蒸散装置を構成する。
【0013】
また、本発明の蒸散装置において、前記気体発生装体が、水素ガス発生体または炭酸ガス発生体であることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の蒸散装置において、前記有効成分が所定比率で水に溶解、懸濁、分散された所定量の水性媒体中に含まれていることができる。
【0015】
また、本発明の蒸散装置において、有効成分は前記気体発生体と混合されていてもよく、有効成分を気体発生体に適用する構成にしてもよい。なお、本明細書中で使用する用語適用は、「塗布」、滴下、その他気体発生体を包装する不織布に塗布、混合することも含むことを意味する。
【0016】
本発明の別の実施形態によると、水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置であって、水および気体発生体を収納する収納容器と、前記収納容器の上面に配置された気体排出口と、を有することを特徴とする蒸散装置が提供される。
【0017】
この実施形態による蒸散装置において、前記収納容器は、気体発生体と水または有効成分を含有する水性媒体とを仕切る仕切り版により区画され、前記仕切り板は、仕切り開放機構により開放される構成とすることができる。
【0018】
また、この実施形態による蒸散装置において、前記気体排出口と気体発生体の収納部分には有効成分を塗布または含浸した有効成分層を有していることができる。
【0019】
さらに、この実施形態による蒸散装置において、前記収納容器は、水注入口を有していることも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蒸散装置によると、火気や電気等を使用しないで有効成分を長時間安定して芳香剤、殺虫剤、消臭剤、殺菌剤等の有効成分を発生する気体に同伴させることにより蒸散させることが可能である。しかも、気体発生体が水と反応して突沸することを防ぐことが可能である。したがって、簡単な構成で安全な有効成分の蒸散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本発明の蒸散装置の一例を示す図面である。
【図2】 本発明の蒸散装置の他の例を示す図面であり、(a)は側面図、(b)は平面図であり、そして(c)は気体排出口の直下に有効成分含浸層を設けた例を示す図面である。
【符号の説明】
【0022】
1 収納容器
2 気体発生体固定手段
3 突沸防止手段
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の蒸散装置の一例を示す図面である。
【0024】
本発明の気体蒸散装置は、水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置である。
【0025】
そして、図1に示す通り、本発明の蒸散装置は、水及び気体発生体を収納する収納容器1と、収納容器内に設けられた気体発生体固定手段2と、前記気体の突沸を防ぐ突沸防止手段3と、から主として構成されている。
【0026】
本発明において、水と反応して気体を発生する気体発生体とは、水の存在下で相当量の気体を発生する固体・粒状・液状の発生体を意味し、後述する有効成分を同伴して雰囲気に蒸散させるキャリアとなる期待を発生する発生体である。
【0027】
本発明で適用可能な気体発生体は、限定されるものではないが、例えば水素発生体(株式会社協同よりモーリアンヒートパックの商品名で販売)、炭酸ガス発生体(炭酸水素ナトリウムとクエン酸からなる粉末または錠剤)、ドライアイス等を挙げることができる。
【0028】
これらの気体発生体のうち、呼吸器系から取り込むと抗酸化作用を有する観点から水素発生体が好ましい。特許文献1では、水素を発生する発熱材を熱源として利用して芳香成分を蒸発させることを考えていたが、本発明では水素に同伴させて水素とともに周囲に芳香成分を蒸散させる点で新規である。
【0029】
また、本発明で使用する有効成分とは、気体発生体からのキャリアガスに同伴して効果をもたらす成分であれば特に限定されないが、例えば芳香成分、殺菌成分、消臭成分、殺虫成分などが挙げられる。また、所望に応じてこれらの有効成分の混合物を本発明の有効成分として使用してもよい。
【0030】
すなわち、本発明の蒸散装置は、このような方式で有効成分を蒸散する際に安全性および長時間の安定性を考慮した装置であり、そのために水及び気体発生体を収納する収納容器1と、収納容器内に設けられた気体発生体固定手段2と、前記気体の突沸を防ぐ突沸防止手段3とから構成されている。
【0031】
図1に示す蒸散装置では、収納容器1を二重底方式にして、所定箇所に水の排出口を設けた構成となっている。このように排出口と連通した外側の収納容器部分に気体が多量に発生した際に容器外に気液混合物が飛散するのを防止する構成となっている(突沸防止手段3)。
【0032】
また、気体発生体は、気体発生体そのものの比重が水より軽い場合や、水との反応により激しく水中で動く場合があり安定した気体の発生がない場合があり、あるいは開口部側に気が均一に排気されない場合がある。そのため、本発明では、気体発生体固定手段2を設け、気体発生体の水面への浮上や上下動をある程度防止する構成を有している。固定手段2は、気体発生体と水との反応により発熱する場合の熱に対して耐性があり、発生する気体を十分に放出可能でありなおかつ水と気体発生体との反応により動かないものであれば特に限定されない。例えば、気体発生体を着脱可能ステンレスなどの金属やセラミック製の収納容器であることができる。一般には、気体発生体固定手段2は、気体発生体を内部に充填して収納容器1の収納部分(底部)に入れる方式である。
【0033】
また、有効成分は、気体発生体に直接塗布することもできるが、例えば反応媒体である水に溶解、懸濁、分散させることも可能である。本発明の好ましい実施形態では、容器の容量、気体発生体からの気体発生量を予め考慮した容量の容器内に有効成分の水性媒体を用意し、機体発生体固定手段2に気体発生体を装着して収納容器1の底部に投入した後、所定量の水性媒体を注ぐ。このように構成することによって、予め設計された量の有効成分が長期間に渡って安定して蒸散させることが可能となる。
【0034】
次に図2に基づいて、本発明の別の実施形態を説明する。図2は、本発明の蒸散装置の他の例を示す図面であり、(a)は側面図、(b)は平面図であり、そして(c)は気体排出口の直下に有効成分含浸層を設けた例を示す図面である。
【0035】
図2(a)および(b)に示す通り、本発明の蒸散装置は、収納容器21内部に仕切り22aにより気体発生体側の反応室22bと水または水性媒体室22cとに区画してあり、収納容器21の上面は、発生した気体を有効成分とともに収納容器21外部に排出する気体蒸散口23を設けた構成を有している。そして、気体発生体側の反応室22bと水または水性媒体室22cとを区画する仕切りは、仕切り開放機構22cにより開放することができる構成を有している。
【0036】
収納容器21は、気体発生体Gが水との反応により気体を発生する際に発熱を伴う場合には、耐熱性の素材であることが好ましく、さらに好ましくは、外表面に熱が伝わらないように断熱性を有していることが好ましい。
【0037】
有効成分は、例えば水性媒体として水に予め含有させることもでき、あるいは図2(c)に示す通り、有効成分層24を例えば気体蒸散口23の直下に配置することもでき、さらには気体発生体に予め塗布することもできる。
【0038】
仕切り22aは、例えば水(または有効成分含有水性媒体)の反応室22bへの流量を制御するために例えば繊維層で構成することができ、仕切り開放機構22dとして水非透過性のフィルムで構成し、このフィルムを引き抜くことにより仕切りを解除することができる。
【0039】
なお、仕切り22aに代えて、あるいは仕切り22aに加えて例えば収納容器21の上面あるいは上側の側面に水注入口を設けることができる。
【0040】
このように構成することによって、簡単な構成で火気や電気を必要とせず安定して有効成分を蒸散できる蒸散装置が構成できる。
【0041】
以上説明した通り、本発明の蒸散装置は火気や電気を必要とせず気体発生体の能力に応じて安定して所望の有効成分を蒸散させることが可能となる。そのため、アロマポット用途に加えて、殺菌、消臭用途に有効に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置であって、
水及び気体発生体を収納する収納容器と、前記気体の突沸を防ぐ突沸防止手段と、を
設けていることを特徴とする蒸散装置。
【請求項2】
前記有効成分が芳香成分であり、前記蒸散装置が芳香成分蒸散装置を構成することを特徴とする請求項1に記載の蒸散装置。
【請求項3】
前記気体発生装体が、水素ガス発生体または炭酸ガス発生体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蒸散装置。
【請求項4】
前記有効成分が所定比率で水に溶解、懸濁、分散された所定量の水性媒体中に含まれていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蒸散装置。
【請求項5】
前記有効成分が前記気体発生体と混合されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蒸散装置。
【請求項6】
前記有効成分が前記気体発生体に適用するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の蒸散装置。
【請求項7】
さらに、前記収納容器は、前記気体発生体の水中での移動を規制する気体発生体固定手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蒸散装置。
【請求項8】
水と反応して気体を発生する気体発生体からの気体に有効成分を同伴させて気体とともに有効成分を雰囲気に蒸散させる有効成分の蒸散装置であって、
水および気体発生体を収納する収納容器と、
前記収納容器の上面に配置された気体排出口と、を有することを特徴とする蒸散装置。
【請求項9】
前記収納容器は、気体発生体と水または有効成分を含有する水性媒体とを仕切る仕切り版により区画され、前記仕切り板は、仕切り開放機構により開放されることを特徴とする請求項8に記載の蒸散装置。
【請求項10】
前記気体排出口と気体発生体の収納部分には有効成分を塗布または含浸した有効成分層を有していることを特徴とする請求項8に記載の蒸散装置。
【請求項11】
前記収納容器は、水注入口を有していることを特徴する請求項8から請求項9のいずれか1項に記載の蒸散装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−130641(P2012−130641A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294812(P2010−294812)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(511014998)
【出願人】(511015009)
【Fターム(参考)】