説明

蒸気漏れ量測定装置

【目的】蒸気タービン用の蒸気弁が持つ弁棒に対し備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る蒸気量の定量的評価用の測定装置の提供。
【構成】この発明の蒸気漏れ量測定装置1は、円形状の外面21aを持つモデル弁棒21,円形状の内面22aを持つ筒状体のケーシング22,加圧体23,固定用ブッシュ24などを有する測定装置本体部2、圧力計62,流量計63を持つ供給側流体用計測部6A、圧力計66,流量計67を持つ排出側流体用計測部6Bを備え、内面22aと外面21aとで仕切られて円筒状の収納用空間29が形成されている。収納用空間29内には固定用ブッシュ24側から、加圧力センサ28,パッキン体27,排出側ブッシュ25B,スペーサ26,8個のパッキン片86が積層された測定対象であるシールパッキン85,スペーサ26,供給側ブッシュ25A,パッキン体27が順次積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気タービンに配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンからの蒸気の漏れ量の度合いを定量的に評価するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンでは、蒸気タービンへの蒸気の通流・遮断あるいは蒸気タービンへ通流させる蒸気量の加減などの蒸気量制御を行う蒸気弁として蒸気止め弁や蒸気加減弁が用いられている。これ等の蒸気弁ではその弁体は棒状をした弁棒に保持されており、蒸気弁による蒸気量制御に際しては、この弁棒をその軸長方向に所定距離だけ直進移動させたり、所定角度だけ回動動作させたりされることが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
弁棒をその軸長方向に所定距離だけ直進移動させる構造形式の蒸気弁に代表させて、蒸気タービンで使用されている蒸気弁の概略構造について図7を用いて説明する。ここで図7は、参考例の蒸気弁の概略構造を示すその要部の断面図である。図7において、8は、弁ケーシング81、弁棒84に保持された弁体82、弁棒84と弁ケーシング81の貫通孔814との間の間隙をシールするシールパッキン85、弁棒84の駆動用の操作機構部88、操作機構部88を弁ケーシング81に装着するための架台89を備える蒸気弁である。
【0004】
この蒸気弁8の持つ弁棒84とその周辺部の構造は、蒸気止め弁の場合および蒸気加減弁の場合のいずれに対しても適用されている。弁ケーシング81は、蒸気弁8への蒸気9の入口である蒸気入口811、蒸気弁8からの蒸気9の出口である蒸気出口812、弁体82に対向させて設けられる弁座83、弁棒84用の貫通孔814を持つ。蒸気出口812を出た蒸気9は、不図示の蒸気タービンに供給される。この事例の場合には、シールパッキン85が装着される部位の弁棒84は円柱状の外面84aを持ち、また、弁ケーシング81の貫通孔814の断面形状は円形をしており、弁棒84の外面84aと同心になるように配設されている。これにより、弁棒84が弁ケーシング81を貫通する部位には、弁ケーシング81の貫通孔814と弁棒84の外面84aとによって仕切られることで、円筒状をした収納用空間87が形成されていることになる。そうして、シールパッキン85は、長方形断面の円環状をなすパッキン片86を、弁棒84の軸長方向に沿って多数積層することで前記収納用空間87内に配設されている。
【特許文献1】特開昭60−81404号公報(第2,3頁、第1,3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気タービン用の場合には、例えば前記参考例において、シールパッキン85は500℃以上の高温の蒸気9に晒されることが多いために、パッキン片86には耐熱性に優れた素材が用いられてきている。このシールパッキン85は、不図示の加圧体によって、例えば、弁棒84の軸長方向に沿って加圧され、その内径面および外径面が弁棒84の外面84aおよび貫通孔814にそれぞれ押し付けられることで、弁棒84が弁ケーシング81を貫通する部位からの蒸気9の漏れ出しをシールする。そうして、加圧体によってシールパッキン85に与えられる加圧力が強過ぎると、シールパッキン85が弁棒84の外面84aおよび弁ケーシング81の貫通孔814と接する部位に働く摩擦抵抗が過大になることで、弁棒84の駆動が困難になったり、パッキン片86に塑性変形が生じるなどの問題が発生する。
【0006】
また、これとは逆に加圧体によるシールパッキン85に与えられる加圧力が弱過ぎると、シールパッキン85の部位からの蒸気9の漏れ出しが発生してしまう。したがって、加圧体によってシールパッキン85に与えられる加圧力は、適正な値に設定される必要がある。なお、これまでの参考例の蒸気弁8についての説明では、蒸気弁8による蒸気量制御に際し、弁棒84は軸長方向に所定距離だけ直進移動動作を行うとしてきた。しかし、蒸気タービンに現用されている蒸気弁には、例えば、バタフライ弁と呼ばれる形式の弁のように、蒸気弁の蒸気量制御時に弁棒を所定角度だけ回動動作させる形式のものも有り、この場合にも、弁棒の貫通部からの蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンは、蒸気弁8のシールパッキン85と同等の構成のものが用いられている。
【0007】
ところで、蒸気弁8におけるパッキン片86の材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せや、このパッキン片86の蒸気弁8への配設状態などにより、シールパッキン85に対する適正な加圧条件は異なるものである。そのため、シールパッキン85の加圧条件が適正か否かの判定は、個別の蒸気弁8に対してその蒸気弁8の設置のたびに行われている。しかしながら、その判定方法は、加圧体によるシールパッキン85の加圧後に弁棒84を引き抜いて、弁棒84の抜け方によって適正か否かを判断するという判定者個人の経験に頼る方法によって行われており、このために、客観的な判定が可能な判定方法が望まれている。
【0008】
また、パッキン片86を弁棒84の軸長方向に沿って多数積層するという、図7に例示した複数のパッキン片86を積層する構成を持つシールパッキン85では、それぞれのパッキン片86の弁棒84の外面84aおよび弁ケーシング81の貫通孔814と接する部位には、その部位での摩擦抵抗に基因する摩擦力が働くために、加圧体によりシールパッキン85に与えられた加圧力は、加圧体から離れた位置に配設されるパッキン片86ほど、その加圧力が減損されることになる。したがって、シールパッキン85では、蒸気9の漏れ出しをシールするシール性能は、個々のパッキン片86により異なることになる。このために、複数のパッキン片86を積層する構成を持つシールパッキン85における、個別のパッキン片86のシール性能を測定できる測定方法が求められるようになってきている。
【0009】
さらにまた、蒸気弁8は不図示の蒸気タービンのケーシングに装着されることが一般的であるが、その場合、蒸気タービンでは運転時に機械的振動が発生することは避けられないために、この機械的振動が蒸気弁8に伝達され、弁棒84が弁ケーシング81に対して機械的に振動することになる。このために、この弁棒84の弁ケーシング81に対する振動時における、シールパッキン85のシール性能を測定できる測定方法が求められるようになってきている。したがってこの発明の目的は、蒸気タービン用の蒸気弁が持つ弁棒に対し備えるシールパッキンの配設部から漏れ出る蒸気に関する客観的評価に使用できる測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明では前述の目的は、
1)蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものである円柱状の外面を持つ軸状のモデル弁棒と,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する一方の端部となる部位の前記収納用空間に配設されて前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体を前記シールパッキンの配設部に与えるための供給側ブッシュと,前記収納用空間の前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する他方の端部となる部位に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記供給側ブッシュに供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えること、または、
2)蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものである円柱状の外面と中空空間とを持つ軸状のモデル弁棒を有するとともに,このモデル弁棒は前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体をこの中空空間に受け入れるようにするための試験用流体受け入れ部と前記シールパッキンが配設される部位に形成されて前記試験用流体を前記中空空間を介して前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に与えるようにするための供給用貫通孔とを持ち,さらに,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する両方の端部となるそれぞれの部位の前記収納用空間に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記モデル弁棒を前記ケーシングに対してその軸長方向に移動させて前記モデル弁棒の供給用貫通孔を前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に対向させるようにするモデル弁棒移動機構体と、前記モデル弁棒の中空空間に供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記それぞれの排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えること、または、
3)蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものであり円筒状部と平板状の隔壁とを有してこの隔壁によってこの弁棒の径方向に気密にほぼ2等分されると共にこの隔壁を対称面として互いに面対称の関係に形成された1対の中空空間を持つ軸状のモデル弁棒を有するとともに,前記隔壁は前記円筒状部の内面の直径にほぼ相等する部位に円筒状部の軸長方向に沿って配設されたものであり,このモデル弁棒は前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体を前記1対の中空空間のそれぞれに別個に受け入れるようにするための試験用流体受け入れ部と前記シールパッキンが配設される部位に形成されて前記蒸気または試験用流体をそれぞれの前記中空空間を介して前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片にそれぞれに与えるようにするための供給用貫通孔とを持ち,さらに,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する両方の端部となるそれぞれの部位の前記収納用空間に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記モデル弁棒を前記ケーシングに対してその軸長方向に移動させて前記モデル弁棒のそれぞれの供給用貫通孔を前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に対向させるようにするモデル弁棒移動機構体と、前記モデル弁棒をその軸長方向の端部で前記平板状の隔壁の持つ平面に対してほぼ直交する方向から加振する加振装置と、前記モデル弁棒の前記それぞれの中空空間に供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記それぞれの排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えること、または、
4)前記3項に記載の手段において、前記モデル弁棒が前記加振装置により加振されることにより前記シールパッキンのパッキン片に生じた変形が原因で発生するモデル弁棒の所定部位での変位量を測定する変位量計測装置を備えること、さらにまたは
5)前記1項から4項までのいずれか1項に記載の手段において、前記加圧体は前記モデル弁棒を挿入できる筒状部を有し、この筒状部の外面には前記ケーシングの円柱状の内面部に形成された雌ねじと嵌め合わせることができる雄ねじを備え、この加圧体を前記ケーシングにねじ込んで前記供給側ブッシュおよび/または前記排出側ブッシュを介して前記シールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧するものであることにより達成される。
【発明の効果】
【0011】
この発明による蒸気漏れ量測定装置では、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることで次記の効果を得られる。
(イ)前記課題を解決するための手段の項の第(1)項および第(5)項による構成とされたこの発明による蒸気漏れ量測定装置を適用することで、シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサの計測値、前記漏れ出した試験用流体の圧力などの状態量の計測値、および、供給側における試験用流体の圧力などの状態量の計測値が得られ、また、試験用流体の漏れ出しが発生し始める加圧力(以降、最小適正加圧力と記述する。)の値の計測値が得られる。シールパッキンに用いるパッキン片の決定に際しての材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片の中からのパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンを加圧する加圧体によりシールパッキンに与える加圧力値の設定などに際し、この発明による蒸気漏れ量測定装置により得られた前記計測値を基にして、最適なパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンに与える加圧力の適正値の設定などを、客観的かつ的確に行うことが可能になる。また、
(ロ)前記課題を解決するための手段の項の第(2)項および第(5)項による構成とされたこの発明による蒸気漏れ量測定装置を適用することで、シールパッキンを構成する適宜の個別のパッキン片に向け試験用流体を与えた状態で、前記加圧力センサの計測値、前記漏れ出した試験用流体の圧力などの状態量の計測値、および、前記供給側における試験用流体の圧力などの状態量の計測値が得られ、また、前記最小適正加圧力値の計測値が得られる。これ等の計測値に基づいて、個別のパッキン片のシール性能、そのシール性能の減損(パッキン片の弁棒の外面およびケーシングの内面と接する部位に働く摩擦力に基因してシールパッキンには加圧力の減損が生じる。この加圧力の減損が基因してシールパッキンのシール性能の減損が生じる。)の度合いに関する定量的なデータを得ることができる。シールパッキンに用いるパッキン片の決定に際しての材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片の中からのパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンを加圧する加圧体によりシールパッキンに与える加圧力値の設定などに際し、この発明による蒸気漏れ量測定装置により得られた前記計測値を基にして、最適なパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンに与える加圧力の適正値の決定などを、客観的かつ的確に行うことが可能になる。また、
(ハ)前記課題を解決するための手段の項の第(3)項および第(5)項による構成とされたこの発明による蒸気漏れ量測定装置を適用することで、モデル弁棒の端部に加振力を印加した,または,印加しない状態のそれぞれにおいて、シールパッキンを構成する適宜の個別のパッキン片に向け試験用流体を与える状態で、前記加圧力センサの計測値、前記漏れ出した試験用流体の圧力などの状態量の計測値、および、前記供給側における試験用流体の圧力などの状態量の計測値が得られ、また、前記最小適正加圧力値の計測値が得られる。これ等の計測値の内、モデル弁棒の端部に加振力を印加しない状態において得られる計測値は前記(ロ)項の場合と同一であるので、これにより得られる効果は前記(ロ)項の場合と同一である。前記計測値の内、モデル弁棒の端部に加振力を印加した状態において得られる計測値は、モデル弁棒が加振力を受けるとパッキン片がモデル弁棒の外面を押し付ける力が部分的に減損されることにより、パッキン片により得られるシール性能の減損が発生する。そうして、この発明による蒸気漏れ量測定装置を適用すると、モデル弁棒の加振時および非加振時における前記計測値に基づいて、加振時における個別のパッキン片のシール性能、加振によるシール性能の減損の度合いの定量的なデータを得ることができる。加振を受けるシールパッキンに用いるパッキン片の決定に際しての材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片の中からのパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンを加圧する加圧体によりシールパッキンに与える加圧力値の設定などに際し、この発明による蒸気漏れ量測定装置により得られた前記計測値を基にして、最適なパッキン片の選定、あるいは、シールパッキンに与える加圧力の適正値の決定などを、客観的かつ的確に行うことが可能になる。
【0012】
(ニ)前記加振装置により前記測定装置本体部のモデル弁棒に加振力が長時間与えられた場合などには、そのシールパッキンのパッキン片に塑性変形が生じることで、前記加振装置と前記モデル弁棒との間の締結が解除された状態においても、その中心軸線が前記測定装置本体部のケーシングの中心軸線の位置に復帰できないことで、軸心が移動した状態を呈することになる。そうして、パッキン片に塑性変形が生じたモデル弁棒では、その軸心の移動が、例えば、モデル弁棒の外径位置の変位として観測されることになる。
【0013】
このような場合に、前記課題を解決するための手段の項の第(3)項から第(5)項による構成とされたこの発明による蒸気漏れ量測定装置を適用することで、パッキン片に塑性変形が発生したことが原因でモデル弁棒の端部などの外径位置に発生した変位の定量的なデータを得ることが可能になる。また、パッキン片に発生した塑性変形が過大になると試験用流体の漏れ出しが発生することになるが、この試験用流体の漏れ出しが発生するようになる状態の場合におけるモデル弁棒の端部などの外径位置の変位の定量的なデータを得ることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下この発明を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、図7に示した参考例の蒸気弁と同一部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
『実施の形態1』図1は、この発明の実施の形態の一例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図であり、図2は、図1に象徴的に示した試験用流体生成装置の構成例を示すその説明図である。図1において、1は、例えば、測定装置本体部2、供給側流体用計測部6A、排出側流体用計測部6Bを備えたこの発明による蒸気漏れ量測定装置である。測定装置本体部2は、モデル弁棒21、ケーシング22、シールパッキン85、加圧体23、固定用ブッシュ24、供給側ブッシュ25A,排出側ブッシュ25B、スペーサ26,26、パッキン体27,27、加圧力センサ28を備える。モデル弁棒21は、円形状の外面21aを持つ、例えば、中実軸状体,中空軸状体あるいは筒状軸状体である。
【0015】
シールパッキン85は、蒸気タービン用の場合には、前述のように、500℃以上の高温の蒸気に晒されることが多いために、シールパッキン85を構成するパッキン片86には例えば黒鉛、炭素繊維、炭素焼結体などの耐熱性に優れた素材が用いられる。なお、この発明の適用対象となるパッキン片の素材は、前記素材に限定されるものではない。
ケーシング22は、不図示の蒸気タービンに供給される蒸気9(前記図7を用いて説明した参考例の蒸気弁8が取り扱う蒸気であり、蒸気タービンへ供給されるものであるから、高温・高圧の蒸気である。)の持つ高圧に耐える圧力容器であり、モデル弁棒21の外面21aに対して同心に配設される円形状の内面22aを有する、例えば、筒状体である。このケーシング22は、内面22aの軸長方向の両端部のそれぞれには、加圧体23,固定用ブッシュ24をねじ込むための雌ねじ221が形成され、その外面の一方の端部には、例えば、フランジ部222が設けられ、また、供給側ブッシュ25Aおよび排出側ブッシュ25Bのそれぞれと対向する部位には貫通孔223,224が形成されている。加圧体23は、例えば、軸長方向の一方の端部に六角頭状などの形状を持つフランジ部231を有する筒状体であり、モデル弁棒21の外面21aに移動自在に嵌り合える内径寸法を有し、フランジ部231を除いた部分の外径部にはケーシング22の雌ねじ221にねじ込むことができる雄ねじ232が形成されている。
【0016】
固定用ブッシュ24は、この事例の場合には、加圧体23と同様に軸長方向の一方の端部に六角頭状などの形状を持つフランジ部231を有する筒状体であり、加圧体23と対比するとその軸長方向寸法が短いことのみが異なっている。このため、固定用ブッシュ24の持つケーシング22の雌ねじ221にねじ込むことができる雄ねじ242部の長さは、加圧体23の雄ねじ232部の長さよりも短小とされている。供給側ブッシュ25Aおよび排出側ブッシュ25Bは、この事例の場合には同一の形状・寸法とされており、例えば、長方形断面の円環状をなし、その内径部および外径部のそれぞれには、凹溝251,252が共に円環状に形成され、また、凹溝251および凹溝252に連通する貫通孔253が設けられている。
【0017】
スペーサ26はシールパッキン85と供給側ブッシュ25A,排出側ブッシュ25Bとの間のそれぞれに介挿されており、例えば、長方形断面の円環状をなして、シールパッキン85のパッキン片86とほぼ同等の径方向寸法を有する。このスペーサ26は、その内径面とモデル弁棒21の外面21aとの間、および、その外径面とケーシング22の内面22aとの間には若干の間隙が形成されるように配慮されており、パッキン片86よりも若干硬い材質の素材が使用されている。パッキン体27は加圧体23と供給側ブッシュ25Aの間、および、固定用ブッシュ24と排出側ブッシュ25Bとの間に介挿されており、例えば、長方形断面の円環状をなして、パッキン片86とほぼ同等の断面寸法を有すると共に、パッキン片86と同様のシール性に優れた素材が使用されている。加圧力センサ28は、例えば、ストレインゲージを用いて加圧体23によりシールパッキン85に与えられる加圧力の値を検出するセンサであり、長方形断面の円環状をなしパッキン片86とほぼ同等の径方向寸法を有しており、この事例の場合にはパッキン体27と固定用ブッシュ24との間にのみ介挿されている。
【0018】
前記構成内容を持つ測定装置本体部2は、シールパッキン85からの蒸気の漏れ量の度合いを定量的に評価するための測定装置に特有の部品を除いた、モデル弁棒21,ケーシング22については、前述の参考例の蒸気弁8の、弁棒84が貫通していてシールパッキン85が装着される部位の弁ケーシング81と弁棒84との相互関係に相等する構成にされていることになる。そうして、測定装置本体部2には、ケーシング22の内面22aとモデル弁棒21の外面21aとにより仕切られることで、円筒状をした収納用空間29が形成されることになる。この収納用空間29のモデル弁棒21の軸長方向の端部は、ケーシング22のフランジ部222側の端部については加圧体23の雄ねじ232形成側の端面であり、ケーシング22の反フランジ部222側の端部については固定用ブッシュ24の雄ねじ242形成側の端面である。
【0019】
供給側流体用計測部6Aは、例えば、配管61、圧力計62、流量計63を備えている。配管61は、試験用流体生成装置7で生成された試験用流体9Aを測定装置本体部2の供給側ブッシュ25Aに供給するために配設される。この配管61は、ケーシング22の貫通孔223に、試験用流体9Aの持つ高圧に耐えるように気密に装着される。圧力計62,流量計63は、供給側ブッシュ25Aに供給される試験用流体9Aの状態量である圧力,流量を計測するために、配管61の適所に配設されている。排出側流体用計測部6Bは、例えば、配管65、圧力計66、流量計67を備えている。配管65は、測定装置本体部2の排出側ブッシュ25Bに漏れ出した試験用流体9Aを排出側ブッシュ25Bから排出させるために配設されており、ケーシング22の貫通孔224に気密に装着される。圧力計66,流量計67は、排出側ブッシュ25Bに漏れ出した試験用流体9Aの状態量である圧力,流量を計測するために、配管65の適所に配設されている。また、流量計62,67には、例えば、公知の質量流量計を使用できる。
【0020】
試験用流体生成装置7は、図2も併せ用いて説明すると、この事例の場合には圧縮空気のみ,または圧縮空気と水蒸気との混合流体である前記試験用流体9Aを生成する装置である。この試験用流体生成装置7は、例えば、供給水タンク72,供給水加熱装置73を持つ蒸気発生装置71、コンプレッサ75,圧縮空気加熱装置76を持つ圧縮空気発生装置74、温度センサ77、圧力調整装置78を備える。温度センサ77には例えばサーミスタが用いられる。供給水加熱装置73は、温度センサ77から出力された温度信号により発熱量を制御される,例えばシーズヒータなどの電熱源によって供給水タンク72から供給される水を加熱して試験用水蒸気を生成する装置である。また、圧縮空気加熱装置76は、温度センサ77から出力された温度信号により発熱量を制御される,例えばシーズヒータなどの電熱源によってコンプレッサ75から供給される圧縮空気を加熱する装置である。
【0021】
供給水加熱装置73および圧縮空気加熱装置76は温度センサ77からの温度信号を用いて温度調整制御を行うので、蒸気発生装置71から供給される試験用水蒸気および圧縮空気発生装置74から供給される試験用圧縮空気、したがって、試験用流体9Aの温度を所要値にすることができる。また、圧力調整装置78は、コンプレッサ75の吐出側圧力値よりも数倍高い圧力値までの範囲内で、任意の圧力値を持つ試験用流体9Aを得るために備えられている。この事例の場合の圧力調整装置78には、公知の増圧弁とエアタンクとが組み合わされた、例えば、日精機工株式会社製の装置であり、増圧弁にはVBAシリーズ品を、エアタンクにはVBATシリーズ品を用いることができる。
【0022】
試験用流体生成装置7で生成される試験用流体9Aは、圧縮空気発生装置74から供給される試験用圧縮空気のみの場合と、この試験用圧縮空気に蒸気発生装置71から供給された試験用水蒸気が混合された混合流体の場合とを選択することができる。試験用流体9Aの温度は、供給水加熱装置73および圧縮空気加熱装置76により所要の範囲に調整され、また、試験用流体9Aの圧力は、圧力調整装置78により圧力値を調整することで、所要の範囲に調整できる。試験用流体生成装置7で生成された試験用流体9Aは、蒸気9に類似した流体として、この発明の蒸気漏れ量測定装置1などにおけるシールパッキン85の配設部からの試験用流体9Aの漏れ出しの開始点、あるいは、漏れ出る試験用流体9Aの漏洩量などを定量的に評価するために使用される。
【0023】
前記構造を持つ測定装置本体部2は、例えば、配管61,配管65が予め装着されたケーシング22を用意し、その反フランジ部222側の端部に固定用ブッシュ24を、その雄ねじ242を反フランジ部222側の雌ねじ221にしっかりとねじ込むことで強固に装着する。この状態のケーシング22に、図1に示された測定装置本体部2の残りの各部品の内、まず、モデル弁棒21を除く部品を、加圧力センサ28から順次組み込み、加圧体23の雄ねじ232はケーシング22のフランジ部222側の端部の雌ねじ221に軽くねじ込んでおく。次に、この状態でモデル弁棒21を挿入して保持し、加圧力センサ28からの加圧力信号を確認しつつ加圧体23をケーシング22に締め込んで行く。加圧体23をケーシング22に締め込んで行くと、加圧体23の雄ねじ232形成側の端面はモデル弁棒21の軸長方向に対して平行に移動し、パッキン体27をモデル弁棒21の軸長方向に沿って加圧する。
【0024】
この加圧力がパッキン体27→供給側ブッシュ25A→スペーサ26と互いに隣接し合う部品に順次伝達されて行き、スペーサ26からシールパッキン85に伝達されることで、シールパッキン85が加圧されることになり、最終的には加圧力センサ28にも加圧力が伝達されることになる。加圧体23をケーシング22に締め込むことで得られた加圧力により加圧されたシールパッキン85は、参考例の蒸気弁8の場合と同様に、その内径面および外径面がモデル弁棒21の外面21aおよびケーシング22の内面22aにそれぞれ押し付けられることで、モデル弁棒21がケーシング22を貫通する部位からの試験用流体9Aの漏れ出しをシールできることになる。そうして、加圧力センサ28の加圧力信号により加圧力が所定値になったことが確認されたら加圧体23の締め込み作業を終了とし、シールパッキン85の配設部から漏れ出る蒸気の漏れに関する定量的な評価のための試験段階に移行できることになる。
【0025】
蒸気漏れ量測定装置1による、蒸気の漏れに関する定量的な評価試験は、例えば、前記状態の測定装置本体部2に圧力計62,流量計63,圧力計66,流量計67を接続した上で、試験用流体生成装置7を組み込むことで実施可能になる。試験用流体生成装置7で生成された所定の温度・圧力の試験用流体9Aは配管61から測定装置本体部2に供給される。配管61から測定装置本体部2に流入した試験用流体9Aは、まず、供給側ブッシュ25Aの凹溝252に入り、貫通孔253から凹溝251にも流れ込んで、供給側ブッシュ25Aの両凹溝251,252に試験用流体9Aが充満される。加圧体23側にパッキン体27が配設されてシールされていることで、供給側ブッシュ25Aに充満された試験用流体9Aの圧力は、スペーサ26とケーシング22の内面22aおよびスペーサ26とモデル弁棒21の外面21aとの隙間を経てシールパッキン85に印加される。
【0026】
前記したように、加圧体23をケーシング22に締め込むことで生じる加圧力によりシールパッキン85が加圧されていることで、シールパッキン85が配設された部位からの試験用流体9Aの漏れ出しがシールされている。したがって、シールパッキン85に与えられる加圧力が適正な値であるならば、蒸気漏れ量測定装置1の測定装置本体部2には試験用流体9Aの漏れ出しは発生せず、このために、圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、流量計63,圧力計66および流量計67の指示値はいずれも零であることになる。しかしながら、例えば、シールパッキン85に与えられる加圧力が弱過ぎると、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しが発生することになる。
【0027】
この場合には、シールパッキン85の部位から漏れ出した試験用流体9Aは、排出側ブッシュ25Bの凹溝251,252に流入することになるが、凹溝251に流入した試験用流体9Aは貫通孔253から凹溝252に流れ込むことになる。排出側ブッシュ25Bの凹溝251,252に流入した試験用流体9Aは、固定用ブッシュ24側にパッキン体27が配設されてシールされていることで、凹溝252から配管65を経て蒸気漏れ量測定装置1から排出され、例えば、大気中への放散など適切に処理される。そうしてこの場合には、圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、圧力計66は蒸気漏れ量測定装置1のシールパッキン85から漏れて排出される試験用流体9Aの圧力値を指示し、流量計63は蒸気漏れ量測定装置1に供給される試験用流体9Aの流量を指示し、流量計67は蒸気漏れ量測定装置1のシールパッキン85から漏れて排出される試験用流体9Aの漏洩量である流量を指示することになる。そうして、蒸気漏れ量測定装置1を用いて各種のパッキン片86の評価を行う場合には、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるが、この場合には、試験用流体9Aの流出量は極めて微量であるので、圧力計66の指示値の監視が肝要である。
【0028】
材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片86の中からの最適なパッキン片86の選定、あるいは、このパッキン片86の蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)への配設状態の決定などに際し、前述した構成・機能を備えるこの発明の蒸気漏れ量測定装置1を用い、パッキン片86をこの装置に組み込んで試験することで、その判定を客観的に行うことができる。すなわち、例えば、前記最小適正加圧力値の小さいパッキン片86を選定しようとする場合には、選定対象のパッキン片86が組み込まれた蒸気漏れ量測定装置1について、加圧体23の締め込み量を調整して加圧力センサ28が出力する加圧力信号により最小適正加圧力値を測定する。
【0029】
この最小適正加圧力値を選定対象の全てのパッキン片について求めれば、例えば、最小適正加圧力値の最も小さいものが最適のパッキン片86であるとして客観的に判定することができる。なお、蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)におけるシールパッキン85に与える加圧力値は、所要の安全度を見込んで最小適正加圧力値よりも大きな値に設定することが適切であろう。また、前記したように、蒸気漏れ量測定装置1を用いることで、前記各種のパッキン片86を用いたシールパッキン85に漏れ出しが発生した場合の試験用流体9Aの漏洩量なども定量的に求めることができることは勿論のことである。
【0030】
『実施の形態2』図3は、この発明の実施の形態の異なる例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図であり、図4は、図3に示した蒸気漏れ量測定装置が備える測定装置本体部の断面図である。なお、以下の説明においては、図1に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1および図2に示した試験用流体生成装置7と同一部分には同じ符号を付しその説明を省略する。また、以後の説明に用いる図中には、図1,図2で付した符号については、極力代表的な符号のみを記すようにしている。図3,図4において、1Aは、例えば、測定装置本体部2A、供給側流体用計測部6C、2組の排出側流体用計測部6B、モデル弁棒移動機構などが付属した架台3を備えるようにしたこの発明による蒸気漏れ量測定装置である。
【0031】
測定装置本体部2Aは、図1に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1が備える測定装置本体部2に対して、モデル弁棒21に替えてモデル弁棒21Aを備えるようにしたことが大きな相異点である。測定装置本体部2Aが有するモデル弁棒21Aは中空軸状体であり、例えば、円形状の外面21aを持つ円筒状部211と、円筒状部211の両端部のそれぞれに気密に装着された円形状の外面21aを持つ蓋体部212,213とによってその外壁部が形成され、その内部には中空空間219が形成されている。この円筒状部211には、例えば、この場合の試験用流体受け入れ部である受け入れ用貫通孔215と合計2個の供給用貫通孔216,216および貫通孔217が形成されている。
【0032】
受け入れ用貫通孔215は、試験用流体生成装置7で生成された試験用流体9Aを中空空間219に受け入れるようにするために、モデル弁棒21Aのシールパッキン85,排出側ブッシュ25B,加圧体23などが配設されないことで円形状の外面21aが露出される部位の加圧体23が配設される側の端部部分に、中空空間219に連通されて形成されている。また、合計2個の供給用貫通孔216,216は、試験用流体9Aをシールパッキン85の適宜の個別のパッキン片86に与えるようにするために、モデル弁棒21Aのシールパッキン85が配設される部位に中空空間219に連通させて、この事例の場合には、モデル弁棒21Aの中心軸線X−X(図4に一点鎖線で示す。)を含む平面に関して互いに面対称となる位置関係で形成されている。また、貫通孔217は受け入れ用貫通孔215の近傍に形成されている。また、モデル弁棒21Aが持つ蓋体部213は、蓋体部212と対比すると、架台3に備えられる後記するモデル弁棒移動機構部37が有する締結体37bの装着に用いるための、例えば、雄ねじ213aが、その外周部に形成されていることが異なっている。
【0033】
測定装置本体部2Aは、図1により説明した前記測定装置本体部2と対比すると、モデル弁棒21Aを用いることの他に、試験用流体9Aを流入させる部位および排出させる部位の構成も異なっている。すなわち、試験用流体9Aの測定装置本体部2Aへの流入部位はモデル弁棒21Aの受け入れ用貫通孔215である。そうして、測定装置本体部2Aでは、配管69,圧力計62と流量計63とを有する供給側流体用計測部6Cが備えられ、この配管69は試験用流体9Aを中空空間219に供給するために配設され、モデル弁棒21Aの受け入れ用貫通孔215に、試験用流体9Aの持つ高圧に耐えるように気密に装着される。また、試験用流体9Aの測定装置本体部2Aにおける排出部位としては、2個の排出側ブッシュ25Bが配設されている。
【0034】
それぞれの排出側ブッシュ25Bの内の一方は、固定用ブッシュ24の近傍の収納用空間29内に配設されており、これについては前記測定装置本体部2における排出側ブッシュ25Bの配設部位と同じである。しかし、測定装置本体部2Aの排出側ブッシュ25Bの内の他方は、加圧体23の近傍の収納用空間29内に配設されており、これについては前記測定装置本体部2の場合には供給側ブッシュ25Aが配設されている部位である。また、この測定装置本体部2Aの場合にも、他方の排出側ブッシュ25Bと対向する部位のケーシング22には、貫通孔223が形成されている。そうして、測定装置本体部2Aの場合には、貫通孔223,224のそれぞれには、配管65、圧力計66、流量計67を有する排出側流体用計測部6Bの配管65が気密に装着される。この配管65は、測定装置本体部2Aのそれぞれの排出側ブッシュ25Bに漏れ出した試験用流体9Aをこれらの排出側ブッシュ25Bから排出させるためのものである。
【0035】
架台3は、例えば、直方体状の基台31、測定装置本体部2Aのケーシング22を基台31に固定して支持する支持台33、測定装置本体部2Aのモデル弁棒21Aをケーシング22に対してその軸長方向に移動させるモデル弁棒移動機構部37を備える。支持台33は前記ケーシング22をそのフランジ部222で固定して保持する保持部34と、保持部34を基台31に固定する脚部35を有する。モデル弁棒移動機構部37は、例えば、公知の直動シリンダーであり、図3中に白抜きの矢印で示したような直進動作を行うアクチュエータ部37aを備えており、アクチュエータ部37aの先端部には、モデル弁棒21Aとの締結に用いられる締結体37bを有している。この締結体37bは、例えば、六角袋ナットである。このモデル弁棒移動機構部37には、適宜の移動位置に停止したアクチュエータ部37aをロックしてその停止位置に保持する不図示のロック機構が必要に応じて備えられている。
【0036】
そうして、この事例の場合には、測定装置本体部2Aは、架台3の支持台33を介してモデル弁棒移動機構部37を保持している基台31に固定され、モデル弁棒21Aの蓋体部213の雄ねじ213aにモデル弁棒移動機構部37の締結体37bが締結されることで、モデル弁棒21Aとモデル弁棒移動機構部37のアクチュエータ部37aとが接続されることになる。
【0037】
蒸気漏れ量測定装置1Aが持つ前記構造は、図1に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1が持つ構造と対比すると、架台3を除いた部分については、測定装置本体部2Aに中空軸状構造のモデル弁棒21Aが用いられていることと、測定装置本体部2Aへの試験用流体9Aの供給先がモデル弁棒21Aであり、この供給流体の状態量を計測するものに供給側流体用計測部6Cが用いられ、また、排出側ブッシュ25Bが2個に増え、これに伴って排出側流体用計測部6Bの設置台数も2組に増えていることである。したがって、架台3を除く蒸気漏れ量測定装置1Aの組立手順は、図1に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1の場合とほとんど同様の手順で行えるので、重複を避けてその説明を省略する。
【0038】
蒸気漏れ量測定装置1Aによる、蒸気の漏れに関する定量的な評価試験では、架台3に保持されたモデル弁棒移動機構部37のアクチュエータ部37aを駆動し、モデル弁棒21Aを図3の紙面における上下方向に移動させ、供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させるようにする。そうして、この状態で、例えば、試験用流体生成装置7で生成された所定の温度・圧力の試験用流体9Aを配管69から測定装置本体部2Aに供給する。配管69から測定装置本体部2Aのモデル弁棒21Aの中空空間219に流入した試験用流体9Aは、貫通孔216,216からシールパッキン85に噴出される。シールパッキン85に与えられている加圧力が適正な値で、しかも、シールパッキン85を構成する複数のパッキン片86に適正な加圧力が加わっている場合には、蒸気漏れ量測定装置1Aの測定装置本体部2Aには試験用流体9Aの漏れ出しは発生せず、このために、圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、圧力計66および流量計67の指示値はいずれも零であることになる。
【0039】
しかしながら、例えば、シールパッキン85に与えられる加圧力が弱過ぎると、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しが発生することになる。この場合には、シールパッキン85の部位から漏れ出した試験用流体9Aは、2個が設けられた排出側ブッシュ25Bの両方,もしくはいずれか一方の凹溝251,252に流入することになるが、凹溝251に流入した試験用流体9Aは貫通孔253から凹溝252に流れ込むことになる。排出側ブッシュ25Bの凹溝251,252に流入した試験用流体9Aは、シールパッキン85が配設されている側に対して反対となる側にはパッキン体27が配設されてシールされていることで、凹溝252から2組が設けられていることによる両方,もしくはいずれか一方の排出側流体用計測部6Bの配管65を経て蒸気漏れ量測定装置1Aから排出され、例えば、大気中への放散など適切に処理される。そうしてこの場合には、圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、それぞれ圧力計66は蒸気漏れ量測定装置1Aのシールパッキン85から漏れていずれかの排出側流体用計測部6Bから排出される試験用流体9Aの圧力値を指示し、流量計63は蒸気漏れ量測定装置1Aに供給される試験用流体9Aの流量を指示し、それぞれの流量計67は蒸気漏れ量測定装置1Aのシールパッキン85から漏れていずれかの排出側流体用計測部6Bから排出される試験用流体9Aの漏洩量である流量を指示することになる。そうして、蒸気漏れ量測定装置1Aを用いて各種のパッキン片86の評価を行う場合には、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるが、この場合には、試験用流体9Aの流出量は極めて微量であるので、圧力計66の指示値の監視が肝要である。
【0040】
ところで、『実施の形態1』の項で説明した測定装置本体部2および、この『実施の形態2』の項で説明している測定装置本体部2Aが共に持つシールパッキン85の構成では、図7を用いて先に説明した参考例の蒸気弁8の場合と同様に、シールパッキン85に与えられている加圧力が適正な値とされる場合であっても、それぞれのパッキン片86のモデル弁棒21,21Aの外面21aおよびケーシング22の内面22aと接する部位には、その部位の摩擦抵抗に基因する摩擦力が働くことで、加圧体23によりシールパッキン85に与えられた加圧力は、加圧体23から離れた位置に配設されるパッキン片86ほど、その加圧力が減損される可能性を持つ。このため、測定装置本体部2、2Aの場合のようなシールパッキン85では、蒸気9の漏れ出しをシールするシール性能は、個々のパッキン片86により異なり、加圧体23から離れた位置に配設されるパッキン片86ほど、そのシール性能が減損される可能性があることになる。
【0041】
蒸気漏れ量測定装置1Aでは、前述したように、架台3のモデル弁棒移動機構部37のアクチュエータ部37aを駆動し、モデル弁棒21Aの供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させることができる。これにより、加圧力センサ28の加圧力信号により確認された適宜の加圧力において、シールパッキン85を構成するそれぞれのパッキン片86に供給用貫通孔216,216を対向させた場合の、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しの発生の有無、あるいは、前記最小適正加圧力値を求めることができる。なお、この最小適正加圧力値を求める場合には、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるので、先に述べたように圧力計66の指示値の監視が肝要である。そうして、この蒸気漏れ量測定装置1Aを用いることで、シールパッキン85を構成している複数のパッキン片86の内の、個々のパッキン片86に対する最小適正加圧力値の測定データも求めることができることになるので、シールパッキン85を構成している個々のパッキン片86が持つ最小適正加圧力値がどのように変化しているかの測定データも得ることができる。
【0042】
材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片86の中からの最適なパッキン片86の選定、あるいは、このパッキン片86の蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)への配設状態の決定などに際し、前述した構成・機能を備えるこの発明の蒸気漏れ量測定装置1Aを用い、パッキン片86をこの装置に組み込んで試験することで、その判定を客観的に行うことができる。またこれ等のことと共に、例えば、パッキン片86がモデル弁棒21Aの外面21aなどに接する部位に働く前記摩擦力に基因する加圧力の減損量の少ないパッキン片86の的確な選定を行うことも可能になる。なお、蒸気漏れ量測定装置1Aを用いることで、前記各種のパッキン片86を用いたシールパッキン85に漏れ出しが発生した場合の試験用流体9Aの漏れ量なども定量的に求めることができることは勿論のことである。
【0043】
『実施の形態3』図5は、この発明の実施の形態のさらに異なる例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図であり、図6は、図5に示した蒸気漏れ量測定装置が備える測定装置本体部の断面図である。図5,図6において、1Bは、例えば、測定装置本体部2B、2組の供給側流体用計測部6C、2組の排出側流体用計測部6B、モデル弁棒の加振装置,移動機構などが付属した架台4を備えるようにしたこの発明による蒸気漏れ量測定装置である。なお、以下の説明においては、図3,図4に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aと同一部分には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0044】
測定装置本体部2Bは、図3,図4に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aが備える測定装置本体部2Aに対して、モデル弁棒21Aに替えてモデル弁棒21Bを備えるようにしたことが大きな相異点である。そうして、モデル弁棒21Bはモデル弁棒21Aに対して、平板状の隔壁214を追加して備えると共に、この場合の試験用流体受け入れ部である受け入れ用貫通孔215および貫通孔217の形成個数をそれぞれ2個に増加させていることも相異点である。モデル弁棒21Bの隔壁214は、円形状の外側面21aを持つ円筒状部211をその軸長方向の端面側から見た場合に、円筒状部211の内面の直径に相等する部位に気密に配設される。換言すると、隔壁214は例えば、モデル弁棒21Bの中心軸線X−X(図6に一点鎖線で示す。)を含む平面に合致させて円筒状部211および蓋体部212,213Bに対して気密に配設されることになる。
【0045】
円筒状部211と蓋体部212,213Bとによって外壁部が形成されているモデル弁棒21Bの内部の中空空間には、隔壁214が前記のように配設されることによって、隔壁214を対称面とする面対称の関係となる1対の中空空間219Aおよび中空空間219Bが互いに独立された関係として形成されることになる。このモデル弁棒21Bでは、この事例の場合には、それぞれが2カ所の、受け入れ用貫通孔215,供給用貫通孔216および貫通孔217は、隔壁214のモデル弁棒21Bの軸長方向に沿う中心線(この事例の場合には、中心軸線X−Xに合致する。)と対向し合う位置に形成されることで、それぞれの中空空間219Aおよび中空空間219Bに連通されて、中空空間219A,219B毎に各1個の受け入れ用貫通孔215,供給用貫通孔216および貫通孔217が配設されることになる。
【0046】
また、モデル弁棒21Bが持つ蓋体部213Bは、図3,図4に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aの場合のモデル弁棒21Aが持つ蓋体部213と対比すると、その外周部への雄ねじ213aの形成を止めると共に、後記する加振装置46の不図示のアクチュエータに装着される連結体461の先端部461aをモデル弁棒21Bの外側面21aに締結させるためのものとして、この事例の場合には、貫通孔213bが、前記隔壁214が持つ平面に対してほぼ直交する関係で形成されていることが異なっている。
【0047】
測定装置本体部2Bは、図4により説明した前記測定装置本体部2Aと対比すると、モデル弁棒21Bを用いることの他に、試験用流体9Aを流入させる部位の構成も異なっている。すなわち、試験用流体9Aの測定装置本体部2Bへの流入部位はモデル弁棒21Bに形成された合計2個の受け入れ用貫通孔215である。測定装置本体部2Bでは測定装置本体部2Aの場合と同様に、配管69,圧力計62と流量計63とを有する供給側流体用計測部6Cが備えられている。しかし、それぞれに2個が形成されている受け入れ用貫通孔215および貫通孔217が、中空空間219A,219Bに関して前述のように形成されていることによって、測定装置本体部2Bでは、供給側流体用計測部6Cはそれぞれの中空空間219Aおよび中空空間219Bごとに配設されていることになる。
【0048】
また、測定装置本体部2Bでも、それぞれの中空空間219A,中空空間219Bに連通されて形成されている供給用貫通孔216,216から試験用流体9Aをシールパッキン85の適宜の個別のパッキン片86に与えることができるのであるが、この試験用流体9Aがシールパッキン85の配設部位から漏れ出した場合には、漏れ出た試験用流体9Aは、中空空間219Aから供給されたものも、また、中空空間219Bから供給されたものも、2個が設けられた排出側ブッシュ25Bの両方,もしくはいずれか一方の排出側ブッシュ25Bを経由して、測定装置本体部2Aの場合と同様にそれぞれの排出側流体用計測部6Bの配管65から排出される。
【0049】
架台4は、この事例の場合には、直方体状の基台41、測定装置本体部2Bのケーシング22を基台41に固定して支持する支持台33、測定装置本体部2Bのモデル弁棒21Bを蓋体部213Bの部位で加振する加振装置46、加振装置46を支持すると共に,モデル弁棒21Bを加振装置46を介して支持する支持台44、および、支持台44をケーシング22に関してその軸長方向にほぼ沿わせて移動させるための駆動装置47を備え、また、モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量を計測するための変位量計測装置48を必要に応じて備える。基台41には、例えば、そのそれぞれの角部付近に円柱状のガイドピン42が配設されている。支持台44には、例えば、ガイドピン42と対向し合う部位のそれぞれにガイドピン42と移動自在に嵌り合う貫通孔441が形成され、また駆動装置47のアクチュエータ部47aが当接される部位には有底穴442が必要に応じて形成されている。
【0050】
加振装置46は、この事例の場合には、モデル弁棒21Bの蓋体部213Bの部位にモデル弁棒21Bの隔壁214の平面にほぼ直交する方向の往復動振動(図5中に左右方向の往復動を示す白抜きの矢印で示す。)を与えるようにするための装置であり、例えば、ラボワークス社(米国)製のLWシリーズの電磁式加振装置を使用することができる。加振装置46が持つ不図示のアクチュエータで発生した往復動振動をモデル弁棒21Bの蓋体部213Bの部位に与えるために、この架台4の場合では、前記アクチュエータに装着される棒状の連結体461と、ボルト462とが備えられている。そうして、連結体461はその先端部461aの部位で蓋体部213Bの円形状の外側面21aに当接され、また、ボルト462は、蓋体部213Bに形成された前記貫通孔213bに装填され、連結体461の先端部461aに形成された雌ねじ穴にねじ込まれることで、加振装置46のアクチュエータと、モデル弁棒21Bの蓋体部213Bとの締結が行われる。なお、蒸気漏れ量測定装置1Bにおいて、加振装置46にラボワークス社(米国)製のLWシリーズの電磁式加振装置が用いられた場合には、加振装置46への通電を停止すると、加振装置46が発生する前記往復動振動は零になるので、モデル弁棒21Bの蓋体部213Bに架台4側から与えられる外力は実質的に零になる。
【0051】
加振装置46を駆動すると、加振装置46で発生した往復動振動は連結体461を図5中に左右方向の往復動を示す白抜きの矢印で示した水平方向に往復振動させる。連結体461のこの水平方向振動が連結体461を介して蓋体部213Bに伝達され、モデル弁棒21Bに対し、図5の紙面における左右方向の往復振動を与える。このために、加振装置46を駆動させると、モデル弁棒21Bは蓋体部213Bに隔壁214の平面にほぼ直交する方向の所要の振幅の往復動の機械振動を受けることになる。なお、蒸気漏れ量測定装置1Bにおいては、加振装置46で発生させる往復動振動の周波数・振幅・振動波形などは、例えば、不図示の蒸気タービンのケーシングに装着される前記蒸気弁8等の蒸気弁に与えられる、蒸気タービンが発生源となって伝達される機械的振動の主な周波数・振幅・振動波形などにほぼ合致させることが好ましい。
【0052】
駆動装置47は、例えば、公知の直動シリンダーであり、図5中に上下方向の移動を示す白抜きの矢印で示したような直進動作を行うアクチュエータ部47aを備えている。この駆動装置47には、適宜の移動位置に停止したアクチュエータ部47aをロックしてその停止位置に保持する不図示のロック機構が必要に応じて備えられている。駆動装置47のアクチュエータ部47aを駆動すると、アクチュエータ部47aの移動量がアクチュエータ部47a→支持台44→加振装置46→連結体461→モデル弁棒21Bの蓋体部213Bと伝達されて、モデル弁棒21Bを図5の紙面における上下方向に移動させ、供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させるようにする。
【0053】
加振装置46を駆動してモデル弁棒21Bが前記のような機械振動を受けると、この機械振動によってモデル弁棒21Bの軸心は振動することになるので、モデル弁棒21Bの外側面21aには変位が観測されるようになる。また、この機械振動を長時間受けた場合には、シールパッキン85のパッキン片86に塑性変形が生じることにより、モデル弁棒21Bでは、この塑性変形が原因で生じた軸心の移動がモデル弁棒21Bの外側面21aの変位として観測されるようになる。変位量計測装置48は、このようなモデル弁棒21Bの外側面21aの変位量を計測するための装置であり、この事例の場合には、公知の変位センサ(例えば、株式会社キーエンス製の差動トランス方式のATシリーズの接触式変位センサ)481と、変位センサ481を支持台44に保持する変位センサ用の保持体482とでなる。なお、変位センサ481が接触式変位センサの場合には、その接触子をモデル弁棒21Bの外側面21aに接触させるようにして、変位センサ481を保持する必要がある。保持体482は、支持台44への保持部と、この保持部に変位センサ481を固定する固定部とを少なくとも有する。
【0054】
蒸気漏れ量測定装置1Bが持つ前記構造は、図3,4に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aが持つ構造と対比すると、架台4を除いた部分については、測定装置本体部2Bに測定装置本体部2Aと同様の中空軸状構造のモデル弁棒21Bが用いられていることもあり、測定装置本体部2Bへの試験用流体9Aの供給先は測定装置本体部2Aの場合と同様にモデル弁棒であり、また、この供給流体の状態量を計測するのに用いられる供給側流体用計測部は、測定装置本体部2Aと同一の供給側流体用計測部6Cである。したがって、架台4を除く蒸気漏れ量測定装置1Aの組立手順は、図3,4に示したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aの場合とほとんど同様の手順で行えるので、重複を避けてその説明を省略する。
【0055】
蒸気漏れ量測定装置1Bを用いて行う測定装置本体部2Bに対する評価試験には、加振装置46に関連しては、加振装置46を駆動させて行う場合と加振装置46を駆動させないで行う場合との2つのケースが有り得る。また、変位量計測装置48の使用が必須条件になる試験としては、加振装置46を駆動させて行う蒸気の漏れに関する定量的な評価試験と、加振装置46を長時間駆動させることでシールパッキン85のパッキン片86に強制的に塑性変形を生じさせる場合のモデル弁棒21Bの外側面21aの変位量の実際値を主体とする評価試験との2つのケースが有り得て、いずれも、加振装置46の駆動が前提になる。以降で、これ等の評価試験に関して順次説明する。
【0056】
まず、加振装置46を駆動させないで行う場合について説明する。この場合には、変位量計測装置48の設置は必須条件にはならない。そうして、評価試験としては、架台4に装着された駆動装置47を駆動し、モデル弁棒21Bを図5の紙面における上下方向に移動させ、供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させるようにする。この状態で、例えば、試験用流体生成装置7で生成された所定の温度・圧力の試験用流体9Aをそれぞれの配管69から測定装置本体部2Bに供給する。それぞれの配管69から測定装置本体部2Bのモデル弁棒21Bの中空空間219Aおよび中空空間219Bにそれぞれに流入した試験用流体9Aは、それぞれの貫通孔216からシールパッキン85に噴出される。シールパッキン85に与えられている加圧力が適正な値で、しかも、シールパッキン85を構成する複数のパッキン片86に適正な加圧力が加わっている場合には、蒸気漏れ量測定装置1Bの測定装置本体部2Bには試験用流体9Aの漏れ出しは発生せず、このために、それぞれの圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、圧力計66および流量計67の指示値はいずれも零であることになる。
【0057】
しかしながら、例えば、シールパッキン85に与えられる加圧力が弱過ぎると、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しが発生することになる。この場合には、前記『実施の形態2』の項で説明したこの発明による蒸気漏れ量測定装置1Aの場合と同様に、シールパッキン85の部位から漏れ出した試験用流体9Aは、2個が設けられた排出側ブッシュ25Bの両方,もしくはいずれか一方の凹溝251,252に流入することになるが、凹溝251に流入した試験用流体9Aは貫通孔253から凹溝252に流れ込むことになる。排出側ブッシュ25Bの凹溝251,252に流入した試験用流体9Aは、シールパッキン85が配設されている側に対して反対となる側にはパッキン体27が配設されてシールされていることで、凹溝252から2組が設けられていることによる両方,もしくはいずれか一方の排出側流体用計測部6Bの配管65を経て蒸気漏れ量測定装置1Bから排出され、例えば、大気中への放散など適切に処理される。そうしてこの場合には、圧力計62は試験用流体生成装置7から供給された試験用流体9Aの圧力値を指示し、それぞれ圧力計66は蒸気漏れ量測定装置1Bのシールパッキン85から漏れていずれかの排出側流体用計測部6Bから排出される試験用流体9Aの圧力値を指示し、流量計63は蒸気漏れ量測定装置1Bに供給される試験用流体9Aの流量を指示し、それぞれの流量計67は蒸気漏れ量測定装置1Bのシールパッキン85から漏れていずれかの排出側流体用計測部6Bから排出される試験用流体9Aの漏洩量である流量を指示することになる。そうして、蒸気漏れ量測定装置1Bを用いて各種のパッキン片86の評価を行う場合には、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるが、この場合には、試験用流体9Aの流出量は極めて微量であるので、圧力計66の指示値の監視が、前記蒸気漏れ量測定装置1Aの場合と同様に肝要である。
【0058】
ところで、『実施の形態2』の項で既に説明していることであるが、この『実施の形態3』の項で説明している測定装置本体部2Bが持つシールパッキン85の構成では、蒸気9の漏れ出しをシールするシール性能は、個々のパッキン片86により異なり、加圧体23から離れた位置に配設されるパッキン片86ほど、そのシール性能が減損される可能性がある。
【0059】
蒸気漏れ量測定装置1Bでは、前述したように、架台4の駆動装置47のアクチュエータ部47aを駆動し、モデル弁棒21Bの供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させることができる。これにより、加圧力センサ28の加圧力信号により確認された適宜の加圧力において、シールパッキン85を構成するそれぞれのパッキン片86に供給用貫通孔216,216を対向させた場合の、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しの発生の有無、あるいは、前記最小適正加圧力値を求めることができる。
【0060】
なお、この最小適正加圧力値を求める場合には、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるので、先に述べたように圧力計66の指示値の監視が肝要である。そうして、この蒸気漏れ量測定装置1Bを用いることで、シールパッキン85を構成している複数のパッキン片86の内の、個々のパッキン片86に対する最小適正加圧力値の測定データも求めることができることになるので、シールパッキン85を構成している個々のパッキン片86が持つ最小適正加圧力値がどのように変化しているかの測定データも得ることができる。
【0061】
そうして、蒸気漏れ量測定装置1Bを用いることで、前記のようにして得られた個別のパッキン片86のシール性能に関する客観的データを基にして、材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片86の中からの最適なパッキン片86の選定、あるいは、このパッキン片86の蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)への配設状態の決定などに際し、例えば、シール性能の減損度合いの少ないパッキン片86の的確な選定を行うことができることになる。なお、蒸気漏れ量測定装置1Bを用いることで、前記各種のパッキン片86を用いたシールパッキン85に漏れ出しが発生した場合の試験用流体9Aの漏れ量なども定量的に求めることができることは前記蒸気漏れ量測定装置1Aの場合と同様である。
【0062】
次に、蒸気漏れ量測定装置1Bを、加振装置46を駆動させた状態で蒸気の漏れに関する定量的な評価試験を行う場合について説明する。この場合には、変位量計測装置48が設置される。そうして、例えば、まず、モデル弁棒21Bを図5の紙面における上下方向に移動させて、供給用貫通孔216,216をシールパッキン85の測定対象の個別のパッキン片86に対向させた上で、所定の温度・圧力の試験用流体9Aを配管69から測定装置本体部2Bに供給する状態にする。この状態で加振装置46の不図示のアクチュエータを連結体461が図5に白抜きの矢印で示した水平方向に往復動するように駆動させる。加振装置46のアクチュエータは連結体461の先端部461aの部位で、図5に例示されているような状態にモデル弁棒21Bの蓋体部213Bに締結されている。このために、加振装置46のアクチュエータが振動すると、モデル弁棒21Bは蓋体部213Bに隔壁214の平面に直交する方向の所要の振幅の往復動の振動を受けることになる。
【0063】
モデル弁棒21Bは、すでに述べたように、加圧体23をケーシング22に締め込むことで得られた加圧力により加圧されたシールパッキン85がその外側面21aに押し付けられることによって保持されている。したがって、加振装置46の駆動によりモデル弁棒21Bが振動すると、モデル弁棒21Bの振動に伴う押圧を受ける部位とは反対側となる部位のパッキン片86は、加圧体23による加圧力により得られているモデル弁棒21Bの外側面21aを押し付ける力が減損することになる。この結果、加振装置46の駆動による振動によって前記押し付ける力の減損を強く受ける部位のパッキン片86ほど、そのシール性能が減損される可能性があることになる。
【0064】
蒸気漏れ量測定装置1Bでは、前述した加振装置46を駆動させない状態での蒸気の漏れに関する定量的な評価試験の場合と同様の方法により、モデル弁棒21Bに加振装置46の駆動による往復動を与えた場合の振動の振幅・周波数などに応じた、シールパッキン85の部位からの試験用流体9Aの漏れ出しの発生の有無,最小適正加圧力値,漏れ出し発生時の試験用流体9Aの漏れ量などを求めることができる。蒸気漏れ量測定装置1Bのモデル弁棒21Bが持つ中空空間219Aと中空空間219Bとは、前記したように互いに独立した関係の中空空間として形成されているので、試験用流体9Aの中空空間219Aからの漏れ出し状況と,中空空間219Bからの漏れ出し状況とは影響し合うことはない。このことによって、蒸気漏れ量測定装置1Bの場合には、加振時の試験用流体9Aの漏れ量を加振周期の各半サイクル毎に計測することができる。また、モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量を変位量計測装置48による測定データとして求める(この場合には、加振装置46への通電を一時的に停止した状態にすることを要する。)ことができることで、加振時の試験用流体9Aの漏れ量が加振周期の各半サイクル毎で異なる場合には、モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量である変位センサ481の測定データを合わせて総合的に検討することで、例えば、シールパッキン85のシール性能に前記往復振動が与える影響度を,必要に応じて個別のパッキン片86毎に求めることができる。
【0065】
そうして、前記のようにして得られた個別のパッキン片86のシール性能に関する客観的データを基にして、材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片86の中からの最適なパッキン片86の選定、あるいは、このパッキン片86の蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)への配設状態の決定などに際し、例えば、機械振動の影響を受け難いパッキン片86の的確な選定を行うことができることになる。
【0066】
最後に、蒸気漏れ量測定装置1Bの加振装置46を長時間駆動させることで測定装置本体部2Bのシールパッキン85のパッキン片86に強制的に塑性変形を生じさせる場合の、モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量の実際値を主体とする評価試験を行う場合について説明する。変位量計測装置48の設置はこの評価試験の場合では必須条件である。この場合の試験の手順は、加振装置46を駆動させる時間が長いことを除いては、前記した蒸気漏れ量測定装置1Bについて、加振装置46を駆動させた状態で蒸気の漏れに関する定量的な評価試験を行う場合とほとんど同一であるので、同一の内容は重複を避けてその説明を省略する。そうして、モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量の実際値を主体とする評価試験を行う場合には、加振装置46により測定装置本体部2Bに与える加振時間として所要の長時間を得られるように、測定装置本体部2Bのシールパッキン85に与える加圧力値が設定されていることが前提となる。また、この試験の場合も、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しの発生の捕捉が重要ポイントになるが、この場合においても、試験用流体9Aの流出量は極めて微量であるので、圧力計66の指示値の監視が肝要である。
【0067】
さて、この試験では、試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しが発生した場合には、前記した最小適正加圧力値,圧力計66の指示値,試験用流体9Aの漏れ量などと共に、加振装置46への通電を一時的に停止した状態においての,モデル弁棒21Bの外側面21aの変位量である変位センサ481の測定データの取得が肝要となる。そうして、この試験における加振装置46の駆動を開始してから,試験用流体9Aの配管65からの漏れ出しが発生するまでの全駆動時間の中で、適当な時間間隔でモデル弁棒21Bの外側面21aの変位量の測定データを求めておくことで、この試験に際してのパッキン片86に生じた塑性変形の時間的推移のデータを得ることができる。これ等のモデル弁棒21Bの外側面21aの変位量の測定データは、不図示の蒸気タービンのケーシングに装着される前記蒸気弁8等の蒸気弁における保守作業おいて、その蒸気弁のシールパッキンの交換を要するか否かの判断を的確に行えるようになることで、有用なデータとなりえるものである。
【0068】
そうして、蒸気漏れ量測定装置1Bを用いて長時間加振試験を行うことで前記のようにして得られたパッキン片86の塑性変形に対する耐久性能に関する客観的データを基にすることで、材料、製法、断面形状、積層枚数などの内容の組合せが異なる各種のパッキン片86の中からの最適なパッキン片86の選定、あるいは、このパッキン片86の蒸気弁(例えば、前記蒸気弁8)への配設状態の決定などに際し、例えば、塑性変形に対する耐久性能に優れたパッキン片86の的確な選定を行うことができることになる。
【0069】
前述の説明では、測定装置本体部2、測定装置本体部2Aおよび測定装置本体部2Bのそれぞれに備えられて、シールパッキン85をモデル弁棒21,21A,21Bの軸長方向にほぼ平行する方向に加圧する加圧体は、いずれも加圧体23であるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えば、各種の蒸気タービンにおいて、この蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁でそのシールパッキンの加圧用に採用されている適宜の加圧体であってもよい。また、前述の説明では、それぞれの測定装置本体部2,2A,2Bが備える加圧力センサ28は、パッキン体27と固定用ブッシュ24との間にのみ介挿されるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えば、パッキン体27と加圧体23との間にも介挿させて合計2個の加圧力センサ28を備えるようにしてもよい。
【0070】
さらにまた、蒸気漏れ量測定装置1Bの架台4が備える加振装置46と変位センサ481は、加振装置46にはラボワークス社(米国)製のLWシリーズの電磁式加振装置を使用することができ、また、変位センサ481は、例えば、株式会社キーエンス製の差動トランス方式のATシリーズの接触式変位センサであるとしてきたが、これに限定されるものではなく、それぞれの装置はその設置目的を果たせるものであるならば、どのような原理のものであっても使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の実施の形態の一例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図である。
【図2】図1に示した試験用流体生成装置の構成例を示すその説明図である。
【図3】この発明の実施の形態の異なる例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図である。
【図4】図3に示した蒸気漏れ量測定装置が備える測定装置本体部の断面図である。
【図5】この発明の実施の形態のさらに異なる例による蒸気漏れ量測定装置を関連装置と共に示すその説明図である。
【図6】図5に示した蒸気漏れ量測定装置が備える測定装置本体部の断面図である。
【図7】参考例の蒸気弁の概略構造を示すその要部の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 蒸気漏れ量測定装置
2 測定装置本体部
21 モデル弁棒
21a 外面
22 ケーシング
22a 内面
23 加圧体
24 固定用ブッシュ
25A 供給側ブッシュ
25B 排出側ブッシュ
26 スペーサ
27 パッキン体
28 加圧力センサ
29 収納用空間
6A 供給側流体用計測部
62 圧力計
63 流量計
6B 排出側流体用計測部
66 圧力計
67 流量計
85 シールパッキン
86 パッキン片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものである円柱状の外面を持つ軸状のモデル弁棒と,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する一方の端部となる部位の前記収納用空間に配設されて前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体を前記シールパッキンの配設部に与えるための供給側ブッシュと,前記収納用空間の前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する他方の端部となる部位に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記供給側ブッシュに供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えることを特徴とする蒸気漏れ量測定装置。
【請求項2】
蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものである円柱状の外面と中空空間とを持つ軸状のモデル弁棒を有するとともに,このモデル弁棒は前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体をこの中空空間に受け入れるようにするための試験用流体受け入れ部と前記シールパッキンが配設される部位に形成されて前記試験用流体を前記中空空間を介して前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に与えるようにするための供給用貫通孔とを持ち,さらに,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する両方の端部となるそれぞれの部位の前記収納用空間に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記モデル弁棒を前記ケーシングに対してその軸長方向に移動させて前記モデル弁棒の供給用貫通孔を前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に対向させるようにするモデル弁棒移動機構体と、前記モデル弁棒の中空空間に供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記それぞれの排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えることを特徴とする蒸気漏れ量測定装置。
【請求項3】
蒸気タービンに供給する蒸気の流路に配設される蒸気弁が有する弁棒の貫通部からの前記蒸気の漏れ出しをシールするために備えられるシールパッキンの配設部から漏れ出る前記蒸気の漏れに関する定量的な評価を行うための測定装置であって、前記シールパッキンは長方形断面の円環状をなすパッキン片を前記弁棒の円柱状の外面を持つ部位にその軸長方向に沿って多数積層してなるものであり、前記弁棒をモデル化したものであり円筒状部と平板状の隔壁とを有してこの隔壁によってこの弁棒の径方向に気密にほぼ2等分されると共にこの隔壁を対称面として互いに面対称の関係に形成された1対の中空空間を持つ軸状のモデル弁棒を有するとともに,前記隔壁は前記円筒状部の内面の直径にほぼ相等する部位に円筒状部の軸長方向に沿って配設されたものであり,このモデル弁棒は前記蒸気の漏れ量の定量的評価用の試験用流体を前記1対の中空空間のそれぞれに別個に受け入れるようにするための試験用流体受け入れ部と前記シールパッキンが配設される部位に形成されて前記試験用流体をそれぞれの前記中空空間を介して前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片にそれぞれに与えるようにするための供給用貫通孔とを持ち,さらに,このモデル弁棒の円柱状の外面とほぼ同心に配設される円柱状の内面を有する筒状のケーシングと,このケーシングの前記内面と前記モデル弁棒の前記外面とによって仕切られることで形成される円筒状の収納用空間に挿入された測定対象物である前記シールパッキンと,このシールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧する加圧体と,前記シールパッキンのパッキン片の積層方向に関する両方の端部となるそれぞれの部位の前記収納用空間に配設されて前記シールパッキンの配設部から漏れ出た前記試験用流体を取り出すための排出側ブッシュと,前記収納用空間内に配設されて前記加圧体により加圧されることで前記シールパッキンが受ける加圧力を計測する加圧力センサとを有する測定装置本体部と、前記モデル弁棒を前記ケーシングに対してその軸長方向に移動させて前記モデル弁棒のそれぞれの供給用貫通孔を前記シールパッキンの適宜の個別のパッキン片に対向させるようにするモデル弁棒移動機構体と、前記モデル弁棒をその軸長方向の端部で前記平板状の隔壁の持つ平面に対してほぼ直交する方向から加振する加振装置と、前記モデル弁棒の前記それぞれの中空空間に供給される前記試験用流体の状態量を計測する供給側流体用計測部と、前記それぞれの排出側ブッシュから取り出された前記試験用流体の状態量を計測する排出側流体用計測部とを備えることを特徴とする蒸気漏れ量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸気漏れ量測定装置において、前記モデル弁棒が前記加振装置により加振されることにより前記シールパッキンのパッキン片に生じた変形が原因で発生するモデル弁棒の所定部位での変位量を測定する変位量計測装置を備えることを特徴とする蒸気漏れ量測定装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の蒸気漏れ量測定装置において、前記加圧体は前記モデル弁棒を挿入できる筒状部を有し、この筒状部の外面には前記ケーシングの円柱状の内面部に形成された雌ねじと嵌め合わせることができる雄ねじを備え、この加圧体を前記ケーシングにねじ込んで前記供給側ブッシュおよび/または前記排出側ブッシュを介して前記シールパッキンを前記モデル弁棒の軸長方向に対してほぼ平行する方向に加圧するものであることを特徴とする蒸気漏れ量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−90801(P2010−90801A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261302(P2008−261302)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】