説明

蒸気発生器

【課題】従来の蒸気発生器よりはさらに熱効率を高め、省エネ効果を図り、ひいては環境保全に資することができる蒸気発生器を提供する。
【解決手段】本発明に係る蒸気発生器100は、自然冷媒ヒートポンプ10と、自然冷媒ヒートポンプ10から温水を受け入れる減圧沸騰槽20と、減圧沸騰槽20からの水蒸気を圧縮する圧縮機30と、を有してなる。そして、本蒸気発生器100には、圧縮機30により圧縮された高圧水蒸気を貯える蓄圧槽40を設けるのがよく、自然冷媒ヒートポンプ10から温水を受け入れ、また、自然冷媒ヒートポンプ10に温水を供給する温水槽15を設けるのがよい。また、蓄圧槽40内の圧力および温度情報に基づいて圧縮機30の稼働を行う制御装置50を設けるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプおよび蒸気圧縮機を利用した蒸気発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷熱分野において、熱効率の向上と省エネを図る手段としてヒートポンプが利用されており、例えば、エコキュートと称される電力会社、給湯機メーカー等の業界が業界を挙げて取り組んだ自然冷媒ヒートポンプ式電気給湯機は、その熱効率が高いことで注目されている。このようなヒートポンプを蒸気発生器において利用し、熱効率の向上と省エネを図ろうとする試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に、蒸気供給システムであって、燃焼部を有するボイラと、ヒートポンプとを備えてなり、被加熱媒体に対する比較的低温域の加熱に前記ヒートポンプを用い、比較的高温域の加熱に前記ボイラを用いる蒸気供給システムが提案されている。そして、ヒートポンプの熱媒体として、フロン系媒体、アンモニア、水などの公知の様々な熱媒体が適用され得ることが開示されている。
【0004】
特許文献2に、吸収式ヒートポンプとボイラからなり、外気温の高低により吸収式ヒートポンプまたはボイラのいずれかの稼働を行って温水を供給する吸収式ヒートポンプ装置と、まず吸収式ヒートポンプで温水を作り、つぎに追い炊きボイラで加熱を行ってさらに高温の温水を供給することができる吸収式ヒートポンプ装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献3に、90℃の温水を基に蒸気を発生させる吸収ヒートポンプと蒸気ボイラとを併設し、吸収ヒートポンプを優先的に稼働して効率的に蒸気タービンに蒸気を供給する吸収ヒートポンプが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006-308164号公報
【特許文献2】特開2006-125698号公報
【特許文献3】特開2006-207882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の蒸気発生器は、燃料の燃焼エネルギまたは電気エネルギにより蒸気を発生させる機構を採用しており、その熱機械変換効率は100%(成績係数COP=1)以上にすることができず、蒸気発生器の効率向上に限度がある。このため、このような従来の蒸気発生器は、さらに一層の熱効率を高め、省エネ効果を図るには困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑み、従来の蒸気発生器よりはさらに熱効率を高め、省エネ効果を図り、ひいては環境保全に資することができる蒸気発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蒸気発生器は、自然冷媒ヒートポンプと、前記自然冷媒ヒートポンプから温水を受け入れる減圧沸騰槽と、前記減圧沸騰槽からの水蒸気を圧縮する圧縮機と、を有してなる。
【0010】
上記発明において、前記圧縮機により圧縮された高圧水蒸気を貯える蓄圧槽を設けるのがよく、前記自然冷媒ヒートポンプから温水を受け入れ、また、前記自然冷媒ヒートポンプに温水を供給する温水槽を設けるのがよい。また、前記蓄圧槽内の圧力および温度情報に基づいて前記圧縮機の稼働を行う制御装置を設けるのがよい。さらに、圧縮機を多段、直列に設けることもできる。この場合はより高い圧力の蒸気を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蒸気発生器によれば、従来の蒸気発生器よりはさらに熱効率を高め、省エネ効果を図り、ひいては温暖化で問題になっている炭酸ガスや、フロンガス等の発生量の抑制を図って環境保全に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明に係る蒸気発生器の実施の形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係る蒸気発生器のレイアウト図を示す。本蒸気発生器100は、図1に示すように、自然冷媒ヒートポンプ10と、自然冷媒ヒートポンプ10から温水を受け入れる減圧沸騰槽20と、減圧沸騰槽20からの水蒸気を圧縮する圧縮機30と、を有する。そして、本蒸気発生器100には、以下に説明する、圧縮機30により圧縮された高圧水蒸気を貯える蓄圧槽40、自然冷媒ヒートポンプ10から温水を受け入れ、また、自然冷媒ヒートポンプ10に温水を供給する温水槽15、蓄圧槽40内の圧力および温度情報に基づいて圧縮機30の稼働を行う制御装置50を設けるのがよい。
【0013】
自然冷媒ヒートポンプ10は、環境に優しい水や炭酸ガス等の自然冷媒を用いたヒートポンプであればよい。いわゆるエコキュートに使用される炭酸ガスを冷媒にした自然冷媒ヒートポンプ10を利用することができる。
【0014】
減圧沸騰槽20は、その内部を真空ポンプもしくは圧縮機30の吸込減圧により減圧し、自然冷媒ヒートポンプ10から受け入れた温水を沸騰させることができるようになっている。減圧沸騰槽20内で生成された水蒸気は圧縮機30に供給される。なお、減圧沸騰槽20内にある温水を自然冷媒ヒートポンプ10側に供給することにより、所定の温度を保持することができる。
【0015】
圧縮機30は、減圧沸騰槽20内で生成された水蒸気を圧縮し、所定の温度および圧力の高圧水蒸気に変えることができる。この水蒸気の圧縮には、ターボ式、スクリュー式またはレシプロ式の圧縮機を使用することができる。
【0016】
本蒸気発生器100には、圧縮機30により生成された高圧水蒸気を一旦貯える蓄圧槽40を設けるのがよい。そして、蓄圧槽40内の圧力および温度情報に基づいて圧縮機30の稼働を行う制御装置50を設けるのがよい。これにより、負荷変動があった場合にも所定の特性の高圧水蒸気を負荷側に供給することができるようになる。
【0017】
また、本蒸気発生器100には、自然冷媒ヒートポンプ10から温水を受け入れ、また、自然冷媒ヒートポンプ10に温水を供給するための温水槽15を設けるのがよい。これにより、負荷が減少した場合は、自然冷媒ヒートポンプ10により生成された温水を温水槽15に貯えておき、負荷が増大した場合は、温水槽15に貯えた温水を減圧沸騰槽20に供給することにより、エネルギ効率の高い高圧水蒸気の供給を行うことができる。なお、温水槽15には、深夜電力を利用した加熱器を併設することができる。これにより、外気温の変動があっても一定温度の温水を供給することができ、エネルギ効率を高めることができる。
【0018】
制御装置50は、上述のように、蓄圧槽30内の圧力および温度情報に基づいて圧縮機30の制御を行うことができるが、さらに、減圧沸騰槽20の水蒸気の圧力および温度情報、自然冷媒ヒートポンプ10および温水槽15の温度情報、外気温に関する温度情報等に基づいて、それらの機器を制御できるようになっているのが好ましい。これにより、本蒸気発生器100の効率的な稼働を行うことができる。
【0019】
以上本蒸気発生器100について説明した。本蒸気発生器100は、上述のように、燃料の燃焼エネルギまたは電気エネルギにより蒸気を発生させる機構を採用していないので、高いエネルギ効率で高圧水蒸気を発生することができる。本蒸気発生器100により、20℃の源水について、自然冷媒ヒートポンプ10に1kWのエネルギを加えて90℃の温水を生成させ、その温水を減圧沸騰槽20で水蒸気に変えた後、圧縮機30により絶対圧力で0.294MPa(3.0kg/cm2abs)、133℃の飽和水蒸気4.7kg/hを生成させる場合のエネルギ計算を表1に示す。なお、実際に使用する場合、例えば容量が100kg/h必要であるならば、自然冷媒ヒートポンプ10には、21.1倍の21.1kWのエネルギを供給すればよい。
【0020】
【表1】

【0021】
この表1の結果を図示すると、図2(a)のように表される。横軸は、本蒸気発生器100の上記各工程におけるエンタルピを示し、縦軸は源水が各工程によって変化する温度をしめす。図中の線図に囲まれる面積が本蒸気発生器100に供給されるエネルギを示す。なお、図2(b)は比較例を示し、自然冷媒ヒートポンプ10に1kWのエネルギを加えて90℃の温水を生成させ、その温水を効率(COP=0.98)の電気ボイラなどによって加熱し、絶対圧力で0.294MPa、133℃の飽和水蒸気4.7kg/hを生成させる場合のエネルギ計算を基に図2(a)と同様に図示した場合を示す。
【0022】
図2に示すように、比較例の場合の平均成績係数COPは1.29(図2(b))に過ぎないのに対し、本発明例の場合の平均成績係数COPは約3.73であり(図2(a))、約3倍のエネルギ効率を示していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る蒸気発生器のレイアウト図である。
【図2】図1の蒸気発生器の熱効率に関する説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 自然冷媒ヒートポンプ
15 温水槽
20 減圧沸騰槽
30 圧縮機
40 蓄圧槽
50 制御装置
100 蒸気発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然冷媒ヒートポンプと、前記自然冷媒ヒートポンプから温水を受け入れる減圧沸騰槽と、前記減圧沸騰槽からの水蒸気を圧縮する圧縮機と、を有する蒸気発生器。
【請求項2】
前記圧縮機により圧縮された高圧水蒸気を貯える蓄圧槽を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器
【請求項3】
前記自然冷媒ヒートポンプから温水を受け入れ、また、前記自然冷媒ヒートポンプに温水を供給する温水槽を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気発生器。
【請求項4】
前記蓄圧槽内の圧力および温度情報に基づいて前記圧縮機の稼働を行う制御装置を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138924(P2008−138924A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325006(P2006−325006)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)