蒸気発生装置
【課題】 COPを高い値にできるとともに、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがない2種吸収式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置を提供すること。
【解決手段】 熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプ5と、第一蒸気から吸熱する蒸発器6と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器7とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプ8とを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、凝縮器7の水熱交換部7Bへ供給する。
【解決手段】 熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプ5と、第一蒸気から吸熱する蒸発器6と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器7とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプ8とを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、凝縮器7の水熱交換部7Bへ供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプを用いて、低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を生成可能な蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気圧縮式ヒートポンプを用いて蒸気を生成する蒸気発生装置は、特許文献1や特許文献2などにて知られている。特許文献1の蒸気発生装置において、100℃未満の低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を生成しようとすると、ヒートポンプのCOP(成績係数)が悪くなる。たとえば、冷媒に水を用いて圧力5kg/cm2の蒸気を発生させる場合、ヒートポンプの低温熱源側飽和温度を70℃,高温側飽和温度を158℃とすると、理想的なCOPは3.9となる。COPが低下する理由は、ヒートポンプの低温熱源側温度と高温側温度(蒸気発生温度)の温度差が大きくなることにより、圧縮機の動力が増すことによる。
【0003】
特許文献2の蒸気発生装置は、2種吸収式ヒートポンプにて生成した蒸気を蒸気圧縮機により昇圧するものである。この特許文献2の蒸気発生装置では、特許文献1の蒸気発生装置と比較してCOPは、11.3と高くできる。
【0004】
しかしながら、2種吸収式ヒートポンプにて生成した蒸気を蒸気圧縮機で圧縮するために、つぎの課題がある。一般に、2種吸収式ヒートポンプの蒸気発生装置は、乾き度100%の蒸気が取り出せるわけではなく、不純物を含んだ缶水を同伴した乾き度が悪い蒸気となることが殆どである。特に、蒸気発生装置の起動時には、キャリーオーバーが起こり、乾き度が著しく低下することが一般的である。また、一般に、蒸気圧縮機は、吸い込む蒸気の質,つまり乾き度に大きく影響を受け、吸い込む蒸気の乾き度が悪い場合には、スケール成分が蒸気圧縮機に付着してロックしたり、腐食成分により蒸気圧縮機を腐食したりする。よって、特許文献2の蒸気発生装置では、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−40451号公報
【特許文献2】特開2011−99640号公報(特願2009−255688)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、COPを高い値にできるとともに、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがない2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、特許文献1と比較してCOPを高い値にできるともに、特許文献2のようにスケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがないという効果を奏する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、安定して蒸気を供給できるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が優先的に供給されることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、高温の凝縮水を優先的に使用するので、熱効率を向上できるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3において、前記容器にブロー手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3に記載の発明による効果に加えて、前記ブロー手段により第一蒸気に含まれているスケール分を除去できるので、前記凝縮器などへのスケールの付着による不具合を低減できるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4において、前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の発明による効果に加えて、第一蒸気圧力を所定圧に保持でき、結果として第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができるという効果を奏する。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4において、前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、弁を備え、前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の発明による効果に加えて、第一蒸気圧力を所定圧に保持でき、結果として第二蒸気圧力の上昇による前記圧縮機の停止を防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、COPを高い値にできるとともに、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがない2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例1の蒸気発生装置を備える蒸気システムの概略構成を説明する説明図である。
【図2】図1の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図3】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図4】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図5】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図6】この発明の実施例2の蒸気発生装置を備える蒸気システム概略構成を説明する説明図である。
【図7】図6の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図8】この発明の実施例3の蒸気発生装置を備える蒸気システム概略構成を説明する説明図である。
【図9】この発明の実施例3の概略構成を説明する説明図である。
【図10】図9の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図11】この発明の実施例1の蒸気発生装置を備える他の蒸気システムの概略構成を説明する説明図である。
【図12】図11の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、この発明の蒸気発生装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、2種吸収式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置に好適に実施される。
【0022】
(基本的な実施の形態)
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態の蒸気発生装置は、低温の熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されている。
【0023】
この発明の実施の形態においては、まず、前記2種吸収式ヒートポンプにより低温(例えば、100℃未満)の熱源水から熱が汲み上げられて、所定圧の第一蒸気が生成される。そして、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの蒸発器にて第一蒸気から吸熱し、第一蒸気は、凝縮水となる。さらに、この凝縮水は、給水が加えられて、前記凝縮器へ供給され、ここで第一蒸気よりも高圧(例えば、1〜10kg/cm2程度)の第二蒸気が生成される。
【0024】
この実施の形態の蒸気発生装置によれば、前記蒸発器で吸熱された後の凝縮水は、装置外へ排出されることなく、再度前記凝縮器へ供給されて、高圧蒸気の生成に利用されるので、低温熱源水の保有する排熱を効果的に利用することができる。また、凝縮水だけを前記凝縮器へ供給して高圧蒸気を生成する蒸気発生装置では、前記凝縮器の冷却不足による圧力が上昇し、運転不能となるおそれがあるが、この実施の形態によれば、そうした不都合を解消できる。
【0025】
また、前述のように、特許文献1のように、蒸気圧縮式ヒートポンプだけで低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を得ようとすると、COPが悪くなる。これに対して、この実施の形態の蒸気発生装置によれば、特許文献1の方式の蒸気発生装置と比較して、COPを高くすることができる。
【0026】
また、特許文献2のように2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮機を組み合わせて高圧蒸気を得ようとすると、2種吸収式ヒートポンプからの第一蒸気に含まれるスケール成分が蒸気圧縮機に付着してロックしたり、腐食成分により蒸気圧縮機を腐食したりする。これに対して、この実施の形態の蒸気発生装置によれば、特許文献2の方式の蒸気発生装置と
比較して、蒸気圧縮機のロックや腐食を生ずることが少なく、前記2種吸収式ヒートポンプからの第一蒸気の質が悪くても、装置の故障を生ずることが少なく、低温熱源水から高圧蒸気を生成することができる。
【0027】
(循環路,凝縮水タンクおよびポンプを備える実施の形態)
この実施の形態においては、第一蒸気の凝縮水に給水を加えて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給して、第二蒸気を生成するように構成しているが、この構成の好ましい態様はつぎの通りである。すなわち、前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成する。前記ポンプは、前記凝縮水タンクの水貯留部と前記容器の適所とを連絡する送水路に設けられる。
【0028】
この好ましい形態においては、給水が加えられた凝縮水が前記循環路を循環しながら前記凝縮器へ供給されるので、第二蒸気の生成を安定的に行うことができる。また、前記凝縮水タンク内の低圧下にある凝縮水が前記ポンプにより前記容器へ供給されるので、凝縮水を高圧下にある前記容器内へ支障なく供給することができる。なお、給水を前記容器へ直接供給する給水供給手段とする場合は、高圧下にある前記容器内へ給水を供給する前記ポンプ(第一ポンプ)と別のポンプ(第二ポンプ)を必要とする。
【0029】
この好ましい実施の形態において、前記凝縮器の水熱交換部へ前記容器内の水を供給する循環ポンプを前記循環路に備えることができる。この構成は、前記容器内の水質が良くない場合や、前記凝縮器が横置き型で蒸気抜けが悪い場合に好適である。前記容器内の水質が良い場合や、前記凝縮器が縦置き型で蒸気抜けが良い場合は、前記循環ポンプは必ずしも必要としない。
【0030】
(給水に対して凝縮水を優先的に供給する実施の形態)
この好ましい形態において、さらに好ましくは、前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が給水よりも優先的に供給されるように構成する。このように構成することで、凝縮水が保有する排熱を有効に利用することができる。
【0031】
このさらに好ましい形態は、前記凝縮水タンク内へ常時凝縮水を供給するように構成し、前記凝縮水タンク内の水位が所定水位未満となったときに前記給水供給手段による前記凝縮水タンク内への給水を行うように構成することで実現できる。この構成以外にも、凝縮水と給水の混合割合を調整可能な混合手段を設け、この混合手段により凝縮水の混合割合が多くなるように構成することによっても実現可能である。
【0032】
また、このさらに好ましい形態は、前記容器内へ前記給水供給手段により給水する場合、前記容器内の水位に応じて、水位が第一設定水位未満となると、前記第一ポンプの駆動により前記凝縮水タンク内の凝縮水を前記容器へ供給し、水位が第一水位よりより低い第二水位未満となると、前記第二ポンプの駆動により前記給水供給手段により給水を前記容器へ供給するように構成することで実現できる。この構成以外にも、前記第一ポンプによる凝縮水と前記第二ポンプによる給水の混合割合を調整可能な混合手段を設け、この混合手段により凝縮水の混合割合が多くなるように構成することによっても実現可能である。
【0033】
(ブロー手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記容器にブロー手段を備える。このように構成することで、第一蒸気に含まれているスケール分を除去でき、前記容器内の水質を向上でき、前記凝縮器などへのスケールの付着による不具合を低減できる。前記ブロー手段は、ブロー路と、このブロー路に設けるブロー弁とを含んで構成される。このブロ
ー手段は、蒸気ボイラの缶体に備えられるブロー手段と同様なものとすることができ、蒸気発生装置の運転時間に応じて前記ブロー弁を制御してブロー量を調整するように構成したり、前記容器内の電気伝導率を測定して、設定電気伝導率以上となると前記ブロー弁を開いてブローを行うように構成することができる。
【0034】
(2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給制御手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給制御手段を備える。この熱源水供給制御手段は、前記2種吸収式ヒートポンプの蒸気の出口側圧力を検出する圧力センサと、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、前記出口側圧力が所定圧力となるように、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを含んで構成される。前記圧力センサの検出圧力に応じた前記弁の開閉の制御の形態は、前記弁を開閉のみ可能な弁とした場合、検出圧力が第一設定圧力以上となると閉じ、第一設定圧力未満となると開くように構成する。前記弁を開度が調整可能な弁とした場合、検出圧力が高くなるにつれ開度を小さく、低くなるに連れて開度を大きくするように構成する。
【0035】
この熱源水供給制御手段を備える実施の形態によれば、2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力が上昇すると、前記弁を制御することで、熱源水の供給量が低減されるので、第一蒸気圧力を所定圧に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇を防止して、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0036】
(2種吸収式ヒートポンプの供給蒸気量制御手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記2種吸収式ヒートポンプの供給蒸気量制御手段を備える。この供給蒸気量制御手段は、前記2種吸収式ヒートポンプの蒸気の出口側圧力を検出する圧力センサと、弁を備え前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、前記出口側圧力が所定圧力となるように、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備える。前記圧力センサの検出圧力に応じた前記弁の開閉の制御の形態は、前記弁を開閉のみ可能な弁とした場合、検出圧力が第一設定圧力以上となると開き、第一設定圧力未満となると閉じるように構成する。前記弁を開度が調整可能な弁とした場合、検出圧力が高くなるにつれ開度を大きく、低くなるに連れて開度を小さくするように構成する。
【0037】
この供給蒸気量制御手段を備える実施の形態によれば、2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力が上昇すると、前記弁を制御することで、前記蒸気放出ラインを通して排出される第一蒸気の量が増加し、前記蒸発器へ供給される第一蒸気の量が減少するので、第一蒸気圧力を所定圧に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇を防止して、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0038】
ここで、この発明の実施の形態の蒸気発生装置を構成する構成要素を説明する。前記2種吸収式ヒートポンプは、外部からの高温熱源を必要とせず熱源となる熱源水(工場熱源水など)より高温の利用流体を得るもので、この実施の形態では、低温(好ましくは、100℃未満とするが、100℃以上でもよい)の熱源水から所定圧(例えば、1kg/cm2程度)の第一蒸気を得るように構成されている。この2種吸収ヒートポンプは、特定の構成のものに限定されないが、特許文献2や特開平2−42102号公報などに記載のような構成のものとすることができる。特許文献2に記載の2種吸収ヒートポンプは、内部に第一熱交換器を備えた蒸発器,前記蒸発器と蒸気通路で接続し内部に第二熱交換器を備えた吸収器,内部に第三熱交換器を備え、凝縮した冷媒液を前記蒸発器に送るための冷媒ポンプを備えた凝縮器,前記凝縮器と蒸気通路で接続し内部に第四熱交換器を備え、吸収溶液を前記吸収器に送るための溶液ポンプを備えた再生器,内部に第五熱交換器を備え前記第二熱交換器と前記第五熱交換器の間で熱搬送媒体を循環するためのポンプを備えるとと
もに、給水供給経路と蒸発した第一蒸気の出口流路に弁を備えた第一蒸気発生器,吸収器からの溶液と再生器からの溶液を熱交換させる溶液熱交換器などを含んで構成される。
【0039】
前記蒸気圧縮式ヒートポンプは、周知のものが用いられ、使用される冷媒は、水または水以外の冷媒が用いられる。この実施の形態の蒸気圧縮式ヒートポンプは、前記凝縮器にて第一蒸気よりも高い所定圧(1〜10kg/cm2またはこれを超える値)の第二蒸気を生成するように構成される。
【0040】
前記蒸発器は、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの冷媒が流れる冷媒熱交換部(冷媒流通部と称することができる。)と、前記2種吸収式ヒートポンプにて生成の第一蒸気が流れる蒸気熱交換部(蒸気流通部と称することができる。)とが間接的に熱交換するものであれば、特定の形式、構造のものに限定されない。
【0041】
前記凝縮器は、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの冷媒が流れる冷媒熱交換部(冷媒流通部と称することができる。)と、前記蒸発器にて生成された凝縮水に給水が加えられた水が供給される水熱交換部(水流通部と称することができる。)とが間接的に熱交換するものであれば、特定の形式、構造のものに限定されない。
【0042】
前記容器は、第二蒸気とほぼ同じ高圧となるので、密閉されている。前記循環路は、前記容器の水貯留部から前記水熱交換部へ水を供給する往路と、前記水熱交換部から前記容器に水を戻す復路とを含んで構成される。前記往路には、前述のように、水質や前記凝縮器の構造に応じて、循環ポンプを備える。そして、前記循環路の水熱交換部の下流側には、好ましくは、第二蒸気と水を分離する気液分離器を設ける。この気液分離器は、前記容器の気相部から第二蒸気を取り出すか、前記復路の適所から第二蒸気を取り出すように構成することで、省略することができる。
【0043】
前記凝縮水タンクは、密閉構造または開放構造のものとし、特定の構成のものに限定されない。この凝縮水タンクは、スチームトラップを備える凝縮水供給路により前記蒸気熱交換部と接続される。
【0044】
つぎに、前記給水供給手段について説明する。前記給水供給手段を前記凝縮水タンクへ給水を供給するものとする場合は、前記凝縮水タンクと接続される給水供給路を含んで構成される。この給水供給路には、軟水装置,給水予熱器,前記給水供給路の流れを制御する給水弁を設けることができる。
【0045】
前記給水供給手段を前記容器へ給水を供給するものとする場合には、前記給水供給路の先端に給水タンクを備え、この給水タンクの水貯留部と前記容器とを送水用のポンプを備える送水路で接続する。この構成によって、大気圧下にある前記給水タンク内の給水を高圧下の前記容器へ給水することが可能となる。
【0046】
(この実施の形態の蒸気システムへの展開)
以上説明した実施の形態の蒸気発生装置は、蒸気ボイラと組み合わせた蒸気システムとすることができる。この蒸気システムは、前記蒸気発生装置により生成される第二蒸気を使用機器へ供給する第二蒸気供給路と、前記蒸気ボイラからの第三蒸気を使用機器へ供給する第三蒸気供給路とを接続する。
【0047】
そして、この蒸気システムにおいては、好ましくは、前記蒸気発生装置の第二蒸気を優先的に前記使用機器へ供給するように構成する。この構成を採用することにより、COPが高い前記蒸気発生装置を優先的に使用するので、蒸気発生に要するコストを低減できる。
【0048】
第二蒸気を第三蒸気に対して優先的に前記使用機器へ供給する構成の態様は、つぎの二つの態様を含む。第一の態様は、第二蒸気供給路と前記第三蒸気供給路との接続部の下流側の圧力を検出する圧力センサを設け、検出圧力が第二設定値未満のとき前記圧縮機を駆動するとともに前記蒸気ボイラを停止して、第二蒸気を生成してこれを供給し、検出圧力が第二設定圧力より低い第三設定圧力未満のとき前記蒸気ボイラおよび前記蒸気圧縮機を駆動して、第二蒸気および第三蒸気を生成してこれを供給する。
【0049】
第二の形態は、前記第二設定圧力未満のとき前記圧縮機を駆動するとともに、前記第三蒸気供給路に前記第三設定圧力未満で開き、前記第三設定以上となると閉じる圧力開閉弁を備える。この第二の形態においては、検出圧力が第三設定圧力未満では、第二蒸気と第三蒸気が生成されて供給される。そして、第三設定圧力以上となると前記蒸気ボイラの駆動が停止され、前記圧縮機が駆動されて、第二蒸気のみが前記使用機器へ供給されるので、第三蒸気に対して、第二蒸気が優先的に使用されることになる。
【0050】
以上説明した蒸気システムにおいては、第二蒸気供給路と前記第三蒸気供給路との接続部に第三蒸気を駆動源として、第二蒸気を吸引して昇圧するエゼクタを備えることができる。こうすることにより、前記使用機器への供給蒸気圧力を同じとした場合、前記エゼクタを備えることにより、第二蒸気の圧力を低くすることができる。その結果、前記蒸気圧縮式ヒートポンプのCOPを向上させることができる。
【実施例1】
【0051】
ついで、この発明の蒸気発生装置1の実施例1を図面に従い説明する。図1は、同実施例1の蒸気発生装置1と蒸気ボイラ(以下、単にボイラという。)2とを組み合わせた蒸気システム3の概略構成を説明する説明図であり、図2〜図5は、図1の蒸気システムの異なる構成要素の制御状態を説明する図である。
【0052】
<蒸気システムの構成>
図1を参照して、蒸気システム3は、蒸気発生装置1と、ボイラ2と、両者を制御する制御器4とを主要部として備える。
【0053】
蒸気発生装置1は、熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプ(以下、単に吸収式ヒートポンプという。)5と、第一蒸気から吸熱する蒸発器6および第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器7を有する蒸気圧縮式ヒートポンプ8とを含んでいる。蒸発器6にて生成される第一蒸気の凝縮水は、これに給水が加えられて、凝縮器7へ供給されるように構成されている。
【0054】
吸収ヒートポンプ5は、特許文献2と同様に、内部に第一熱交換器(図示省略)を備えた蒸発器9,蒸発器9と蒸気通路で接続し内部に第二熱交換器(図示省略)を備えた吸収器10,内部に第三熱交換器(図示省略)を備え、凝縮した冷媒液を蒸発器9に送るための冷媒ポンプ(図示省略)を備えた凝縮器11,凝縮器11と蒸気通路で接続し内部に第四熱交換器(図示省略)を備え、吸収溶液を吸収器10に送るための溶液ポンプ(図示省略)を備えた再生器12,内部に第五熱交換器(図示省略)を備え前記第二熱交換器と前記第五熱交換器の間で熱搬送媒体を循環するためのポンプ(図示省略)を備えるとともに、第一給水供給路13と蒸発した第一蒸気の出口流路である第一蒸気供給路14に弁(図示省略)を備えた第一蒸気発生器15,吸収器10からの溶液と再生器12からの溶液を熱交換させる溶液熱交換器(図示省略)などを含んで構成されている。
【0055】
この吸収式ヒートポンプ5には、熱源水弁16を設けた熱源水供給路17と、排水路18とを備えている。この実施例1の吸収式ヒートポンプ5は、熱源水供給路17からの熱
源水が蒸発器9から再生器12を通って、排水路18から排出される。
【0056】
蒸気圧縮式ヒートポンプ8は、圧縮機19、凝縮器7、膨張弁20および蒸発器6が順次環状に接続されて構成されている。そして、圧縮機19は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器7は、圧縮機19からのガス冷媒を凝縮液化する冷媒熱交換部7Aと、蒸発器6にて生成された凝縮水に給水が加えられた水が供給される水熱交換部7Bとが間接的に熱交換するように構成されている。この凝縮器7は、水熱交換部7Bからの蒸気抜きが容易なように縦置き型としている。
【0057】
さらに、膨張弁20は、凝縮器7からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させるものである。そして、蒸発器6は、膨張弁20からの冷媒が蒸発する冷媒熱交換部6Aと、第一蒸気供給路14を通して第一蒸気が供給される蒸気熱交換部6Bとが間接的に熱交換するように構成されている。
【0058】
つぎに、第一蒸気から第二蒸気を生成する構成について説明する。蒸気発生装置1は、水熱交換部7Bとの間に循環路21を形成する密閉の容器22と、蒸発器6の蒸気熱交換部6Bで生成された第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンク23と、給水を凝縮水タンク23へ供給する給水供給手段24と、凝縮水タンク23内の貯留水を容器22へ送水する第一給水ポンプ25とを備えている。
【0059】
循環路21は、容器22の水貯留部から水熱交換部7Bへ水を供給する往路21Aと、水熱交換部7Bから容器22に水を戻す復路21Bとを含んで構成される。復路21Bの水熱交換部7B出口側には、循環路21から第二蒸気を分離して第二蒸気供給路26より取り出す気液分離器27を備えている。第二蒸気供給路26には、気液分離器27方向の流れを阻止する第一逆止弁28を備えている。第一給水ポンプ25は、凝縮水タンク23の水貯留部と容器22の適所とを連絡する送水路29に設けられる。
【0060】
凝縮水タンク23は、凝縮水を分離して通過させるスチームトラップ30を備える凝縮水供給路31により蒸気熱交換部6Bと接続されている。
【0061】
給水供給手段24は、凝縮水タンク23と接続される第二給水供給路32を備えている。第二給水供給路32には、軟水装置33,給水予熱器34,第二給水供給路32の流れを制御する給水弁35を設けている。給水予熱器34は、熱源水供給路17から分岐して熱源水が供給され、この熱源水により給水を予熱する。
【0062】
容器22にはブロー手段36を備えている。ブロー手段36は、ブロー路37と、このブロー路37に設けたブロー弁38とを含んで構成されている。このブロー手段36は、蒸気発生装置1の運転時間に応じてブロー弁38を開いてブロー量を調整するように構成している。
【0063】
ボイラ2は、第三蒸気供給路39により蒸気使用機器(図示省略)へ蒸気を供給する第四蒸気供給路40と接続している。第三蒸気供給路39と第二蒸気供給路26とは接続部41にて接続されている。第三蒸気供給路39には、ボイラ2方向の流れを阻止する第二逆止弁42を備えている。符号47は、容器22から第一給水ポンプ25方向の流れを阻止する第三逆止弁である。
【0064】
制御器4は、容器22内の水位を検出する第一水位センサ43,凝縮水タンク23内の水位を検出する第二水位センサ44,第一蒸気供給路14の圧力を検出する第一圧力センサ45,接続部41の下流側の圧力を検出する第二圧力センサ46などからの信号を入力して、予め記憶した制御手順により、蒸気発生装置1の吸収式ヒートポンプ5,熱源水弁
16,圧縮機19,第一給水ポンプ25,給水弁35およびボイラ2などを制御する。
【0065】
制御器4による制御手順には、容器22内の水位を一定に制御するとともに、給水供給手段24による給水に対して凝縮水供給路31を通して供給される凝縮水を優先的に水熱交換部7Bへ供給する給水制御手順と、吸収式ヒートポンプ5への熱源水の供給を制御する熱源水供給制御手順と、蒸気発生装置1にて生成される第二蒸気を、ボイラ2にて生成される第三蒸気に対して優先的に使用機器へ供給する蒸気供給制御手順とを含んで構成されている。
【0066】
給水制御手順は、図2に示すように、第一水位センサ43の検出水位が第一設定水位L1未満となったときに送水ポンプ25をON(駆動)し、第一設定水位L1以上となると送水ポンプ25をOFF(停止)する容器22の一定水位制御手順と、図3に示すように、第二水位センサ44の検出水位が第二設定水位L2未満となると給水弁35を開き、第二設定水位以上となると給水弁35を閉じる凝縮水優先供給制御手順とを含んでいる。なお、凝縮水タンク23内水位が、第二設定水位L2より高いオーバーフロー水位となると、凝縮水タンク23に設けた排水弁(図示省略)を開くように構成する。以上の説明および以下の説明において、設定水位,設定圧力には、それぞれディファレンシャル(動作隙間)が設定されるのは言うまでもない。
【0067】
熱源水制御手順は、図4に示すように、第一圧力センサ45の検出圧力が第一設定圧力P1以上となると熱源水弁16を閉じ、第一設定圧力未満となると熱源水弁16を開く制御を含んでいる。
【0068】
蒸気供給制御手順は、図5に示すように、第二圧力センサ46の検出圧力が第二設定圧力P2以上となると圧縮機19をOFFし、第二設定圧力P2未満となると圧縮機19をONするとともに、第二設定圧力P2より低い第三設定圧力P3以上となるとボイラ2をOFFし、第三設定圧力P3未満となるとボイラ2をONする制御を含んでいる。
【0069】
<蒸気システムの動作>(システムの起動時動作)
以上の構成を備える実施例1を備える蒸気システムの動作を説明する。
システム起動スイッチ(図示省略)を操作して、蒸気システム3を駆動する。すると、制御器4は、システム起動初期は、第二圧力センサ46の検出圧力が第三設定圧力P3より低いので、図5に示すように、蒸気発生装置1とボイラ2とを駆動する。
【0070】
蒸気発生装置1においては、吸収式ヒートポンプ5を駆動するとともに、容器22に所定量の水が貯留されていないと、貯留動作を行い、前の運転で水が貯留されていると貯留動作を行わない。この貯留動作は、給水弁35を開き、凝縮水タンク22へ給水し、送水ポンプ25を駆動して、容器22へ送水する動作である。
【0071】
吸収式ヒートポンプ5では、熱源水弁16が開いて、熱源水供給路17から約80℃の熱源水が吸収式ヒートポンプ5内へ供給され、第一蒸気の生成が開始される。
【0072】
容器22に所定量の水が貯留され、吸収式ヒートポンプ5の駆動により、第一圧力センサ45からの信号に基づき、第一蒸気供給路14から約1kg/cm2の第一蒸気が送出されるようになると、制御器4は、圧縮機19を駆動する。すると、蒸発器6では、蒸気熱交換部6Aにおいて第一蒸気から吸熱し、第一蒸気が凝縮する。蒸気と凝縮水の混合物は、スチームトラップ30にて凝縮水が分離され、凝縮水タンク23へ流入する。
【0073】
一方、凝縮器7では、容器22から水が供給され水熱交換部7Bにて約5kg/cm2の第二蒸気が生成される。こうして、システム起動時、第二圧力センサ46の検出圧力が第三
設定圧力P3未満のとき、蒸気発生装置1からの第二蒸気と、ボイラからの第三蒸気とが接続部41にて合流して、第四蒸気供給路40を通して使用機器へ供給される。
【0074】
(容器22の水位制御)
図2に示すように、容器22の水位は、第一水位センサ43の検出水位が第一設定水位L1となるように、送水ポンプ25を制御することにより、一定範囲の水位に制御される。
【0075】
(凝縮水タンク23の水位制御)
また、凝縮水タンク23へは、凝縮水供給路31からの凝縮水と、第二給水供給路32からの給水とが供給されるが、凝縮水が優先的に供給される。この優先供給は、給水弁35を図3に示すように制御することで実現される。すなわち、第二水位センサ44の検出水位が第二設定水位L2以上では、給水弁35が閉じており、凝縮水タンク23へは凝縮水だけが凝縮水供給路35を通して供給される。そして、第二設定水位L2未満となって初めて、凝縮水タンク23へ第二給水供給路32からも給水が供給される。このとき、凝縮水供給路31からも凝縮水が供給されている。
【0076】
この凝縮水優先供給により、吸収式ヒートポンプ5と蒸気圧縮式ヒートポンプ8の組合せによる高いCOPによる第二蒸気発生が行われることになる。第二給水供給路32からの給水による第二蒸気の発生は、特許文献1と同様に吸収式ヒートポンプ5を用いず、蒸気圧縮式ヒートポンプ8のみで行うことになる。なお、蒸気圧縮式ヒートポンプ8の冷媒に水を用いて圧力5kg/cm2の蒸気を発生させる場合、蒸発器6側飽和温度を70℃,凝縮器7側飽和温度を158℃とすると、COPは3.9程度にしかならないが、蒸気発生装置1によるCOPは、理想的には、11.3に近い高いCOPを実現できる。
【0077】
(吸収式ヒートポンプ5の熱源水供給制御)
制御器4は、第一圧力センサ45による検出圧力が第一設定圧力P1以上となると、熱源水弁16を閉じ、第一設定圧力P1未満となると、熱源水弁16を開く。こうした熱源水の供給量制御により、第一蒸気圧力を第一設定圧力P1に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0078】
(システム起動後の動作)
システム起動後、第二圧力センサ46の検出圧力が第三設定圧力P3以上となると、制御器4は、ボイラ2の運転を停止するので、蒸気発生装置1にて生成される第二蒸気のみが第四蒸気供給40を通して使用機器へ供給されることになる。
【0079】
以上説明した実施例1の蒸気発生装置1によれば、蒸発器6で吸熱された後の凝縮水は、装置外へ排出されることなく、再度凝縮器7へ供給されて、高圧蒸気の生成に利用される。その結果、低温熱源水の保有する排熱を効果的に利用することができる。また、凝縮水だけを凝縮器7へ供給して高圧蒸気を生成する蒸気発生装置では、凝縮器7の冷却不足による圧力が上昇し、運転不能となるおそれがあるが、この蒸気発生装置1によれば、凝縮器の冷却不足による圧力が上昇することを防止でき、運転不能となる事態を回避することができる。
【0080】
また、実施例1の蒸気発生装置1によれば、特許文献2の方式の蒸気発生装置と比較して、蒸気圧縮機のロックや腐食を生ずることが少なく、吸収式ヒートポンプ5からの第一蒸気の質が悪くても、装置の故障を生ずることが少ない。さらに、容器22にブロー手段36を備えているので、容器22内の水質を向上でき、凝縮器7の水熱交換部7Bなどへのスケールの付着を低減することができる。
【実施例2】
【0081】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、図6に示す実施例2の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例2において前記実施例1と異なる構成を以下に説明する。なお、実施例2において前記実施例1と同じ構成要素は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0082】
前記実施例1では、熱源水供給制御手段を備えている。この熱源水供給制御手段は、吸収式ヒートポンプ5に熱源水弁16を設けた熱源水供給路17を備え、制御器4は、熱源水弁16を制御することにより、吸収式ヒートポンプ5への熱源水の供給を制御する熱源水供給制御手順を行うものである。
【0083】
これに対して、実施例2では、熱源水供給制御手段に代えて、供給蒸気量制御手段を備えている。この供給蒸気量制御手段は、第一圧力センサ45と、蒸気弁48を備え吸収式ヒートポンプ5の第一蒸気を放出する蒸気放出路49と、第一圧力センサ45の検出圧力に応じて蒸気弁48の開閉を制御する制御器4と含んで構成される。制御器4は、供給蒸気量制御手順により蒸気弁48を制御する。
【0084】
この供給蒸気量制御手順は、図7に示すように、第一圧力センサ45による検出圧力が第一設定圧力P1以上となると、蒸気弁48を開き、第一設定圧力P1未満となると、蒸気弁48を閉じる。こうした第一蒸気の供給量制御により、第一蒸気圧力を第一設定圧力P1に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【実施例3】
【0085】
この発明は、前記実施例1,2に限定されるものではなく、図8に示す実施例3の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例3において前記実施例1と異なるのは、循環路21の往路21Aに循環ポンプ50を備えた点である。その他の構成は、前記実施例1と同じであるので、同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この実施例3によれば、循環ポンプ50により容器22内の水を水熱交換部7Bへ強制的に循環、供給するので、容器22内の水質が良くない場合や、凝縮器7が横置き型で蒸気抜けが悪い場合でも、循環路22における水循環を確実に行うことができ、効率よく第二蒸気を生成できる。
【0087】
なお、実施例2においても、循環ポンプ50を備えたものとすることができる。
【実施例4】
【0088】
この発明は、前記実施例1〜3に限定されるものではなく、図9に示す実施例4の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例4において前記実施例1と異なる構成を以下に説明する。その他の構成は、前記実施例1と同じであるので、同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0089】
前記実施例1と異なるのは、給水供給手段24による給水を、凝縮水タンク23を経由するのではなく、容器22へ直接供給するように構成した点である。そして、給水弁35の下流側に第三水位センサ51を備えた給水タンク52と、給水タンク52に貯留の給水を容器22へ送水する第二給水ポンプ53とを備えている。符号54は、容器22から第二給水ポンプ53方向の流れを阻止する第四逆止弁である。
【0090】
第二給水ポンプ53と第一給水ポンプ25とは図10に示すように制御されることで、凝縮水が優先的に容器22へ供給されるように構成されている。すなわち、第一水位セン
サ43の検出水位が第三設定水位L3以上では、第一給水ポンプ25,第二給水ポンプ53がそれぞれOFFされ、第三設定水位L3未満となると、第一給水ポンプ25がONし,第二給水ポンプ52がOFFされ、凝縮水タンク23の凝縮水が容器22へ供給される。第一水位センサ43の検出水位が第三設定水位より低い第四設定水位L4未満となると、第一給水ポンプ25,第二給水ポンプ53がそれぞれONされる。こうして、凝縮水が給水よりも優先的に使用されることになる。
【0091】
この実施例4においては、第二水位センサ44による検出水位が所定の低水位未満となると、第一給水ポンプ25をOFFし、第一給水ポンプ25の空運転を防止する。また、第二水位センサ44による検出水位が所定のオーバーフロー水位以上となると、凝縮水タンク23に設けた排水弁(図示省略)を開くように構成する。
【0092】
なお、実施例4において、実施例2または実施例3の構成を採用することができる。
【0093】
この発明は、前記実施例1〜4に限定されるものではなく、種々変更可能である。図1に示す蒸気システム3を図11に示す構成とし、図12に示すように制御される蒸気システム3とすることができる。図11、12を参照して、第二圧力センサ46の検出圧力が、第二設定圧力P2以上で、圧縮機19をOFFし、第二設定圧力P2未満のとき圧縮機19をONするように構成する。そして、第三蒸気供給路39に、第三設定圧力P3未満で開き、第三設定圧力以上で閉じる圧力開閉弁55を備えている。
【0094】
この図11の蒸気システム3においては、第二圧力センサ46の検出圧力が第二設定圧力P2未満では、第二蒸気と第三蒸気が生成されて供給される。第二設定圧力P2以上となると、圧力開閉弁55によって第三蒸気供給路39が閉じられることで、蒸気ボイラ2がOFFされ、圧縮機19がONされる。その結果、第二蒸気のみが使用機器へ供給されるので、第三蒸気に対して、第二蒸気が優先的に使用されることになる。
【0095】
また、図6,8,9に示す蒸気システム3においても図11と同様な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 蒸気発生装置
2 蒸気ボイラ
3 蒸気システム
4 制御器
5 2種吸収式ヒートポンプ
6 蒸発器
7 凝縮器
7A 水熱交換部
8 蒸気圧縮式ヒートポンプ
16 熱源水弁(弁)
17 熱源水供給路(供給路)
19 圧縮機
21 循環路
22 容器
23 凝縮水タンク
24 給水供給手段
25 第一給水ポンプ(給水ポンプ)
45 第一圧力センサ(圧力センサ)
47 蒸気弁(弁)
48 蒸気放出路
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプを用いて、低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を生成可能な蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気圧縮式ヒートポンプを用いて蒸気を生成する蒸気発生装置は、特許文献1や特許文献2などにて知られている。特許文献1の蒸気発生装置において、100℃未満の低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を生成しようとすると、ヒートポンプのCOP(成績係数)が悪くなる。たとえば、冷媒に水を用いて圧力5kg/cm2の蒸気を発生させる場合、ヒートポンプの低温熱源側飽和温度を70℃,高温側飽和温度を158℃とすると、理想的なCOPは3.9となる。COPが低下する理由は、ヒートポンプの低温熱源側温度と高温側温度(蒸気発生温度)の温度差が大きくなることにより、圧縮機の動力が増すことによる。
【0003】
特許文献2の蒸気発生装置は、2種吸収式ヒートポンプにて生成した蒸気を蒸気圧縮機により昇圧するものである。この特許文献2の蒸気発生装置では、特許文献1の蒸気発生装置と比較してCOPは、11.3と高くできる。
【0004】
しかしながら、2種吸収式ヒートポンプにて生成した蒸気を蒸気圧縮機で圧縮するために、つぎの課題がある。一般に、2種吸収式ヒートポンプの蒸気発生装置は、乾き度100%の蒸気が取り出せるわけではなく、不純物を含んだ缶水を同伴した乾き度が悪い蒸気となることが殆どである。特に、蒸気発生装置の起動時には、キャリーオーバーが起こり、乾き度が著しく低下することが一般的である。また、一般に、蒸気圧縮機は、吸い込む蒸気の質,つまり乾き度に大きく影響を受け、吸い込む蒸気の乾き度が悪い場合には、スケール成分が蒸気圧縮機に付着してロックしたり、腐食成分により蒸気圧縮機を腐食したりする。よって、特許文献2の蒸気発生装置では、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−40451号公報
【特許文献2】特開2011−99640号公報(特願2009−255688)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、COPを高い値にできるとともに、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがない2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、特許文献1と比較してCOPを高い値にできるともに、特許文献2のようにスケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがないという効果を奏する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、安定して蒸気を供給できるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が優先的に供給されることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明による効果に加えて、高温の凝縮水を優先的に使用するので、熱効率を向上できるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3において、前記容器にブロー手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3に記載の発明による効果に加えて、前記ブロー手段により第一蒸気に含まれているスケール分を除去できるので、前記凝縮器などへのスケールの付着による不具合を低減できるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4において、前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の発明による効果に加えて、第一蒸気圧力を所定圧に保持でき、結果として第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができるという効果を奏する。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4において、前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、弁を備え、前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜4に記載の発明による効果に加えて、第一蒸気圧力を所定圧に保持でき、結果として第二蒸気圧力の上昇による前記圧縮機の停止を防止することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、COPを高い値にできるとともに、スケール成分の付着により圧縮機のロックを生じたり、腐食成分により圧縮機を腐食することがない2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例1の蒸気発生装置を備える蒸気システムの概略構成を説明する説明図である。
【図2】図1の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図3】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図4】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図5】図1の蒸気システムの他の構成要素の制御状態を説明する図である。
【図6】この発明の実施例2の蒸気発生装置を備える蒸気システム概略構成を説明する説明図である。
【図7】図6の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図8】この発明の実施例3の蒸気発生装置を備える蒸気システム概略構成を説明する説明図である。
【図9】この発明の実施例3の概略構成を説明する説明図である。
【図10】図9の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【図11】この発明の実施例1の蒸気発生装置を備える他の蒸気システムの概略構成を説明する説明図である。
【図12】図11の蒸気システムの構成要素の制御状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、この発明の蒸気発生装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、2種吸収式ヒートポンプを用いた蒸気発生装置に好適に実施される。
【0022】
(基本的な実施の形態)
この実施の形態を具体的に説明する。この実施の形態の蒸気発生装置は、低温の熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されている。
【0023】
この発明の実施の形態においては、まず、前記2種吸収式ヒートポンプにより低温(例えば、100℃未満)の熱源水から熱が汲み上げられて、所定圧の第一蒸気が生成される。そして、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの蒸発器にて第一蒸気から吸熱し、第一蒸気は、凝縮水となる。さらに、この凝縮水は、給水が加えられて、前記凝縮器へ供給され、ここで第一蒸気よりも高圧(例えば、1〜10kg/cm2程度)の第二蒸気が生成される。
【0024】
この実施の形態の蒸気発生装置によれば、前記蒸発器で吸熱された後の凝縮水は、装置外へ排出されることなく、再度前記凝縮器へ供給されて、高圧蒸気の生成に利用されるので、低温熱源水の保有する排熱を効果的に利用することができる。また、凝縮水だけを前記凝縮器へ供給して高圧蒸気を生成する蒸気発生装置では、前記凝縮器の冷却不足による圧力が上昇し、運転不能となるおそれがあるが、この実施の形態によれば、そうした不都合を解消できる。
【0025】
また、前述のように、特許文献1のように、蒸気圧縮式ヒートポンプだけで低温熱源水から1〜10kg/cm2の高圧蒸気を得ようとすると、COPが悪くなる。これに対して、この実施の形態の蒸気発生装置によれば、特許文献1の方式の蒸気発生装置と比較して、COPを高くすることができる。
【0026】
また、特許文献2のように2種吸収式ヒートポンプと蒸気圧縮機を組み合わせて高圧蒸気を得ようとすると、2種吸収式ヒートポンプからの第一蒸気に含まれるスケール成分が蒸気圧縮機に付着してロックしたり、腐食成分により蒸気圧縮機を腐食したりする。これに対して、この実施の形態の蒸気発生装置によれば、特許文献2の方式の蒸気発生装置と
比較して、蒸気圧縮機のロックや腐食を生ずることが少なく、前記2種吸収式ヒートポンプからの第一蒸気の質が悪くても、装置の故障を生ずることが少なく、低温熱源水から高圧蒸気を生成することができる。
【0027】
(循環路,凝縮水タンクおよびポンプを備える実施の形態)
この実施の形態においては、第一蒸気の凝縮水に給水を加えて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給して、第二蒸気を生成するように構成しているが、この構成の好ましい態様はつぎの通りである。すなわち、前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成する。前記ポンプは、前記凝縮水タンクの水貯留部と前記容器の適所とを連絡する送水路に設けられる。
【0028】
この好ましい形態においては、給水が加えられた凝縮水が前記循環路を循環しながら前記凝縮器へ供給されるので、第二蒸気の生成を安定的に行うことができる。また、前記凝縮水タンク内の低圧下にある凝縮水が前記ポンプにより前記容器へ供給されるので、凝縮水を高圧下にある前記容器内へ支障なく供給することができる。なお、給水を前記容器へ直接供給する給水供給手段とする場合は、高圧下にある前記容器内へ給水を供給する前記ポンプ(第一ポンプ)と別のポンプ(第二ポンプ)を必要とする。
【0029】
この好ましい実施の形態において、前記凝縮器の水熱交換部へ前記容器内の水を供給する循環ポンプを前記循環路に備えることができる。この構成は、前記容器内の水質が良くない場合や、前記凝縮器が横置き型で蒸気抜けが悪い場合に好適である。前記容器内の水質が良い場合や、前記凝縮器が縦置き型で蒸気抜けが良い場合は、前記循環ポンプは必ずしも必要としない。
【0030】
(給水に対して凝縮水を優先的に供給する実施の形態)
この好ましい形態において、さらに好ましくは、前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が給水よりも優先的に供給されるように構成する。このように構成することで、凝縮水が保有する排熱を有効に利用することができる。
【0031】
このさらに好ましい形態は、前記凝縮水タンク内へ常時凝縮水を供給するように構成し、前記凝縮水タンク内の水位が所定水位未満となったときに前記給水供給手段による前記凝縮水タンク内への給水を行うように構成することで実現できる。この構成以外にも、凝縮水と給水の混合割合を調整可能な混合手段を設け、この混合手段により凝縮水の混合割合が多くなるように構成することによっても実現可能である。
【0032】
また、このさらに好ましい形態は、前記容器内へ前記給水供給手段により給水する場合、前記容器内の水位に応じて、水位が第一設定水位未満となると、前記第一ポンプの駆動により前記凝縮水タンク内の凝縮水を前記容器へ供給し、水位が第一水位よりより低い第二水位未満となると、前記第二ポンプの駆動により前記給水供給手段により給水を前記容器へ供給するように構成することで実現できる。この構成以外にも、前記第一ポンプによる凝縮水と前記第二ポンプによる給水の混合割合を調整可能な混合手段を設け、この混合手段により凝縮水の混合割合が多くなるように構成することによっても実現可能である。
【0033】
(ブロー手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記容器にブロー手段を備える。このように構成することで、第一蒸気に含まれているスケール分を除去でき、前記容器内の水質を向上でき、前記凝縮器などへのスケールの付着による不具合を低減できる。前記ブロー手段は、ブロー路と、このブロー路に設けるブロー弁とを含んで構成される。このブロ
ー手段は、蒸気ボイラの缶体に備えられるブロー手段と同様なものとすることができ、蒸気発生装置の運転時間に応じて前記ブロー弁を制御してブロー量を調整するように構成したり、前記容器内の電気伝導率を測定して、設定電気伝導率以上となると前記ブロー弁を開いてブローを行うように構成することができる。
【0034】
(2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給制御手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給制御手段を備える。この熱源水供給制御手段は、前記2種吸収式ヒートポンプの蒸気の出口側圧力を検出する圧力センサと、前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、前記出口側圧力が所定圧力となるように、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを含んで構成される。前記圧力センサの検出圧力に応じた前記弁の開閉の制御の形態は、前記弁を開閉のみ可能な弁とした場合、検出圧力が第一設定圧力以上となると閉じ、第一設定圧力未満となると開くように構成する。前記弁を開度が調整可能な弁とした場合、検出圧力が高くなるにつれ開度を小さく、低くなるに連れて開度を大きくするように構成する。
【0035】
この熱源水供給制御手段を備える実施の形態によれば、2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力が上昇すると、前記弁を制御することで、熱源水の供給量が低減されるので、第一蒸気圧力を所定圧に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇を防止して、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0036】
(2種吸収式ヒートポンプの供給蒸気量制御手段を備える実施の形態)
以上説明した実施の形態において、好ましくは、前記2種吸収式ヒートポンプの供給蒸気量制御手段を備える。この供給蒸気量制御手段は、前記2種吸収式ヒートポンプの蒸気の出口側圧力を検出する圧力センサと、弁を備え前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、前記出口側圧力が所定圧力となるように、前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備える。前記圧力センサの検出圧力に応じた前記弁の開閉の制御の形態は、前記弁を開閉のみ可能な弁とした場合、検出圧力が第一設定圧力以上となると開き、第一設定圧力未満となると閉じるように構成する。前記弁を開度が調整可能な弁とした場合、検出圧力が高くなるにつれ開度を大きく、低くなるに連れて開度を小さくするように構成する。
【0037】
この供給蒸気量制御手段を備える実施の形態によれば、2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力が上昇すると、前記弁を制御することで、前記蒸気放出ラインを通して排出される第一蒸気の量が増加し、前記蒸発器へ供給される第一蒸気の量が減少するので、第一蒸気圧力を所定圧に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇を防止して、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0038】
ここで、この発明の実施の形態の蒸気発生装置を構成する構成要素を説明する。前記2種吸収式ヒートポンプは、外部からの高温熱源を必要とせず熱源となる熱源水(工場熱源水など)より高温の利用流体を得るもので、この実施の形態では、低温(好ましくは、100℃未満とするが、100℃以上でもよい)の熱源水から所定圧(例えば、1kg/cm2程度)の第一蒸気を得るように構成されている。この2種吸収ヒートポンプは、特定の構成のものに限定されないが、特許文献2や特開平2−42102号公報などに記載のような構成のものとすることができる。特許文献2に記載の2種吸収ヒートポンプは、内部に第一熱交換器を備えた蒸発器,前記蒸発器と蒸気通路で接続し内部に第二熱交換器を備えた吸収器,内部に第三熱交換器を備え、凝縮した冷媒液を前記蒸発器に送るための冷媒ポンプを備えた凝縮器,前記凝縮器と蒸気通路で接続し内部に第四熱交換器を備え、吸収溶液を前記吸収器に送るための溶液ポンプを備えた再生器,内部に第五熱交換器を備え前記第二熱交換器と前記第五熱交換器の間で熱搬送媒体を循環するためのポンプを備えるとと
もに、給水供給経路と蒸発した第一蒸気の出口流路に弁を備えた第一蒸気発生器,吸収器からの溶液と再生器からの溶液を熱交換させる溶液熱交換器などを含んで構成される。
【0039】
前記蒸気圧縮式ヒートポンプは、周知のものが用いられ、使用される冷媒は、水または水以外の冷媒が用いられる。この実施の形態の蒸気圧縮式ヒートポンプは、前記凝縮器にて第一蒸気よりも高い所定圧(1〜10kg/cm2またはこれを超える値)の第二蒸気を生成するように構成される。
【0040】
前記蒸発器は、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの冷媒が流れる冷媒熱交換部(冷媒流通部と称することができる。)と、前記2種吸収式ヒートポンプにて生成の第一蒸気が流れる蒸気熱交換部(蒸気流通部と称することができる。)とが間接的に熱交換するものであれば、特定の形式、構造のものに限定されない。
【0041】
前記凝縮器は、前記蒸気圧縮式ヒートポンプの冷媒が流れる冷媒熱交換部(冷媒流通部と称することができる。)と、前記蒸発器にて生成された凝縮水に給水が加えられた水が供給される水熱交換部(水流通部と称することができる。)とが間接的に熱交換するものであれば、特定の形式、構造のものに限定されない。
【0042】
前記容器は、第二蒸気とほぼ同じ高圧となるので、密閉されている。前記循環路は、前記容器の水貯留部から前記水熱交換部へ水を供給する往路と、前記水熱交換部から前記容器に水を戻す復路とを含んで構成される。前記往路には、前述のように、水質や前記凝縮器の構造に応じて、循環ポンプを備える。そして、前記循環路の水熱交換部の下流側には、好ましくは、第二蒸気と水を分離する気液分離器を設ける。この気液分離器は、前記容器の気相部から第二蒸気を取り出すか、前記復路の適所から第二蒸気を取り出すように構成することで、省略することができる。
【0043】
前記凝縮水タンクは、密閉構造または開放構造のものとし、特定の構成のものに限定されない。この凝縮水タンクは、スチームトラップを備える凝縮水供給路により前記蒸気熱交換部と接続される。
【0044】
つぎに、前記給水供給手段について説明する。前記給水供給手段を前記凝縮水タンクへ給水を供給するものとする場合は、前記凝縮水タンクと接続される給水供給路を含んで構成される。この給水供給路には、軟水装置,給水予熱器,前記給水供給路の流れを制御する給水弁を設けることができる。
【0045】
前記給水供給手段を前記容器へ給水を供給するものとする場合には、前記給水供給路の先端に給水タンクを備え、この給水タンクの水貯留部と前記容器とを送水用のポンプを備える送水路で接続する。この構成によって、大気圧下にある前記給水タンク内の給水を高圧下の前記容器へ給水することが可能となる。
【0046】
(この実施の形態の蒸気システムへの展開)
以上説明した実施の形態の蒸気発生装置は、蒸気ボイラと組み合わせた蒸気システムとすることができる。この蒸気システムは、前記蒸気発生装置により生成される第二蒸気を使用機器へ供給する第二蒸気供給路と、前記蒸気ボイラからの第三蒸気を使用機器へ供給する第三蒸気供給路とを接続する。
【0047】
そして、この蒸気システムにおいては、好ましくは、前記蒸気発生装置の第二蒸気を優先的に前記使用機器へ供給するように構成する。この構成を採用することにより、COPが高い前記蒸気発生装置を優先的に使用するので、蒸気発生に要するコストを低減できる。
【0048】
第二蒸気を第三蒸気に対して優先的に前記使用機器へ供給する構成の態様は、つぎの二つの態様を含む。第一の態様は、第二蒸気供給路と前記第三蒸気供給路との接続部の下流側の圧力を検出する圧力センサを設け、検出圧力が第二設定値未満のとき前記圧縮機を駆動するとともに前記蒸気ボイラを停止して、第二蒸気を生成してこれを供給し、検出圧力が第二設定圧力より低い第三設定圧力未満のとき前記蒸気ボイラおよび前記蒸気圧縮機を駆動して、第二蒸気および第三蒸気を生成してこれを供給する。
【0049】
第二の形態は、前記第二設定圧力未満のとき前記圧縮機を駆動するとともに、前記第三蒸気供給路に前記第三設定圧力未満で開き、前記第三設定以上となると閉じる圧力開閉弁を備える。この第二の形態においては、検出圧力が第三設定圧力未満では、第二蒸気と第三蒸気が生成されて供給される。そして、第三設定圧力以上となると前記蒸気ボイラの駆動が停止され、前記圧縮機が駆動されて、第二蒸気のみが前記使用機器へ供給されるので、第三蒸気に対して、第二蒸気が優先的に使用されることになる。
【0050】
以上説明した蒸気システムにおいては、第二蒸気供給路と前記第三蒸気供給路との接続部に第三蒸気を駆動源として、第二蒸気を吸引して昇圧するエゼクタを備えることができる。こうすることにより、前記使用機器への供給蒸気圧力を同じとした場合、前記エゼクタを備えることにより、第二蒸気の圧力を低くすることができる。その結果、前記蒸気圧縮式ヒートポンプのCOPを向上させることができる。
【実施例1】
【0051】
ついで、この発明の蒸気発生装置1の実施例1を図面に従い説明する。図1は、同実施例1の蒸気発生装置1と蒸気ボイラ(以下、単にボイラという。)2とを組み合わせた蒸気システム3の概略構成を説明する説明図であり、図2〜図5は、図1の蒸気システムの異なる構成要素の制御状態を説明する図である。
【0052】
<蒸気システムの構成>
図1を参照して、蒸気システム3は、蒸気発生装置1と、ボイラ2と、両者を制御する制御器4とを主要部として備える。
【0053】
蒸気発生装置1は、熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプ(以下、単に吸収式ヒートポンプという。)5と、第一蒸気から吸熱する蒸発器6および第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器7を有する蒸気圧縮式ヒートポンプ8とを含んでいる。蒸発器6にて生成される第一蒸気の凝縮水は、これに給水が加えられて、凝縮器7へ供給されるように構成されている。
【0054】
吸収ヒートポンプ5は、特許文献2と同様に、内部に第一熱交換器(図示省略)を備えた蒸発器9,蒸発器9と蒸気通路で接続し内部に第二熱交換器(図示省略)を備えた吸収器10,内部に第三熱交換器(図示省略)を備え、凝縮した冷媒液を蒸発器9に送るための冷媒ポンプ(図示省略)を備えた凝縮器11,凝縮器11と蒸気通路で接続し内部に第四熱交換器(図示省略)を備え、吸収溶液を吸収器10に送るための溶液ポンプ(図示省略)を備えた再生器12,内部に第五熱交換器(図示省略)を備え前記第二熱交換器と前記第五熱交換器の間で熱搬送媒体を循環するためのポンプ(図示省略)を備えるとともに、第一給水供給路13と蒸発した第一蒸気の出口流路である第一蒸気供給路14に弁(図示省略)を備えた第一蒸気発生器15,吸収器10からの溶液と再生器12からの溶液を熱交換させる溶液熱交換器(図示省略)などを含んで構成されている。
【0055】
この吸収式ヒートポンプ5には、熱源水弁16を設けた熱源水供給路17と、排水路18とを備えている。この実施例1の吸収式ヒートポンプ5は、熱源水供給路17からの熱
源水が蒸発器9から再生器12を通って、排水路18から排出される。
【0056】
蒸気圧縮式ヒートポンプ8は、圧縮機19、凝縮器7、膨張弁20および蒸発器6が順次環状に接続されて構成されている。そして、圧縮機19は、ガス冷媒を圧縮して高温高圧にする。また、凝縮器7は、圧縮機19からのガス冷媒を凝縮液化する冷媒熱交換部7Aと、蒸発器6にて生成された凝縮水に給水が加えられた水が供給される水熱交換部7Bとが間接的に熱交換するように構成されている。この凝縮器7は、水熱交換部7Bからの蒸気抜きが容易なように縦置き型としている。
【0057】
さらに、膨張弁20は、凝縮器7からの液冷媒を通過させることで、冷媒の圧力と温度とを低下させるものである。そして、蒸発器6は、膨張弁20からの冷媒が蒸発する冷媒熱交換部6Aと、第一蒸気供給路14を通して第一蒸気が供給される蒸気熱交換部6Bとが間接的に熱交換するように構成されている。
【0058】
つぎに、第一蒸気から第二蒸気を生成する構成について説明する。蒸気発生装置1は、水熱交換部7Bとの間に循環路21を形成する密閉の容器22と、蒸発器6の蒸気熱交換部6Bで生成された第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンク23と、給水を凝縮水タンク23へ供給する給水供給手段24と、凝縮水タンク23内の貯留水を容器22へ送水する第一給水ポンプ25とを備えている。
【0059】
循環路21は、容器22の水貯留部から水熱交換部7Bへ水を供給する往路21Aと、水熱交換部7Bから容器22に水を戻す復路21Bとを含んで構成される。復路21Bの水熱交換部7B出口側には、循環路21から第二蒸気を分離して第二蒸気供給路26より取り出す気液分離器27を備えている。第二蒸気供給路26には、気液分離器27方向の流れを阻止する第一逆止弁28を備えている。第一給水ポンプ25は、凝縮水タンク23の水貯留部と容器22の適所とを連絡する送水路29に設けられる。
【0060】
凝縮水タンク23は、凝縮水を分離して通過させるスチームトラップ30を備える凝縮水供給路31により蒸気熱交換部6Bと接続されている。
【0061】
給水供給手段24は、凝縮水タンク23と接続される第二給水供給路32を備えている。第二給水供給路32には、軟水装置33,給水予熱器34,第二給水供給路32の流れを制御する給水弁35を設けている。給水予熱器34は、熱源水供給路17から分岐して熱源水が供給され、この熱源水により給水を予熱する。
【0062】
容器22にはブロー手段36を備えている。ブロー手段36は、ブロー路37と、このブロー路37に設けたブロー弁38とを含んで構成されている。このブロー手段36は、蒸気発生装置1の運転時間に応じてブロー弁38を開いてブロー量を調整するように構成している。
【0063】
ボイラ2は、第三蒸気供給路39により蒸気使用機器(図示省略)へ蒸気を供給する第四蒸気供給路40と接続している。第三蒸気供給路39と第二蒸気供給路26とは接続部41にて接続されている。第三蒸気供給路39には、ボイラ2方向の流れを阻止する第二逆止弁42を備えている。符号47は、容器22から第一給水ポンプ25方向の流れを阻止する第三逆止弁である。
【0064】
制御器4は、容器22内の水位を検出する第一水位センサ43,凝縮水タンク23内の水位を検出する第二水位センサ44,第一蒸気供給路14の圧力を検出する第一圧力センサ45,接続部41の下流側の圧力を検出する第二圧力センサ46などからの信号を入力して、予め記憶した制御手順により、蒸気発生装置1の吸収式ヒートポンプ5,熱源水弁
16,圧縮機19,第一給水ポンプ25,給水弁35およびボイラ2などを制御する。
【0065】
制御器4による制御手順には、容器22内の水位を一定に制御するとともに、給水供給手段24による給水に対して凝縮水供給路31を通して供給される凝縮水を優先的に水熱交換部7Bへ供給する給水制御手順と、吸収式ヒートポンプ5への熱源水の供給を制御する熱源水供給制御手順と、蒸気発生装置1にて生成される第二蒸気を、ボイラ2にて生成される第三蒸気に対して優先的に使用機器へ供給する蒸気供給制御手順とを含んで構成されている。
【0066】
給水制御手順は、図2に示すように、第一水位センサ43の検出水位が第一設定水位L1未満となったときに送水ポンプ25をON(駆動)し、第一設定水位L1以上となると送水ポンプ25をOFF(停止)する容器22の一定水位制御手順と、図3に示すように、第二水位センサ44の検出水位が第二設定水位L2未満となると給水弁35を開き、第二設定水位以上となると給水弁35を閉じる凝縮水優先供給制御手順とを含んでいる。なお、凝縮水タンク23内水位が、第二設定水位L2より高いオーバーフロー水位となると、凝縮水タンク23に設けた排水弁(図示省略)を開くように構成する。以上の説明および以下の説明において、設定水位,設定圧力には、それぞれディファレンシャル(動作隙間)が設定されるのは言うまでもない。
【0067】
熱源水制御手順は、図4に示すように、第一圧力センサ45の検出圧力が第一設定圧力P1以上となると熱源水弁16を閉じ、第一設定圧力未満となると熱源水弁16を開く制御を含んでいる。
【0068】
蒸気供給制御手順は、図5に示すように、第二圧力センサ46の検出圧力が第二設定圧力P2以上となると圧縮機19をOFFし、第二設定圧力P2未満となると圧縮機19をONするとともに、第二設定圧力P2より低い第三設定圧力P3以上となるとボイラ2をOFFし、第三設定圧力P3未満となるとボイラ2をONする制御を含んでいる。
【0069】
<蒸気システムの動作>(システムの起動時動作)
以上の構成を備える実施例1を備える蒸気システムの動作を説明する。
システム起動スイッチ(図示省略)を操作して、蒸気システム3を駆動する。すると、制御器4は、システム起動初期は、第二圧力センサ46の検出圧力が第三設定圧力P3より低いので、図5に示すように、蒸気発生装置1とボイラ2とを駆動する。
【0070】
蒸気発生装置1においては、吸収式ヒートポンプ5を駆動するとともに、容器22に所定量の水が貯留されていないと、貯留動作を行い、前の運転で水が貯留されていると貯留動作を行わない。この貯留動作は、給水弁35を開き、凝縮水タンク22へ給水し、送水ポンプ25を駆動して、容器22へ送水する動作である。
【0071】
吸収式ヒートポンプ5では、熱源水弁16が開いて、熱源水供給路17から約80℃の熱源水が吸収式ヒートポンプ5内へ供給され、第一蒸気の生成が開始される。
【0072】
容器22に所定量の水が貯留され、吸収式ヒートポンプ5の駆動により、第一圧力センサ45からの信号に基づき、第一蒸気供給路14から約1kg/cm2の第一蒸気が送出されるようになると、制御器4は、圧縮機19を駆動する。すると、蒸発器6では、蒸気熱交換部6Aにおいて第一蒸気から吸熱し、第一蒸気が凝縮する。蒸気と凝縮水の混合物は、スチームトラップ30にて凝縮水が分離され、凝縮水タンク23へ流入する。
【0073】
一方、凝縮器7では、容器22から水が供給され水熱交換部7Bにて約5kg/cm2の第二蒸気が生成される。こうして、システム起動時、第二圧力センサ46の検出圧力が第三
設定圧力P3未満のとき、蒸気発生装置1からの第二蒸気と、ボイラからの第三蒸気とが接続部41にて合流して、第四蒸気供給路40を通して使用機器へ供給される。
【0074】
(容器22の水位制御)
図2に示すように、容器22の水位は、第一水位センサ43の検出水位が第一設定水位L1となるように、送水ポンプ25を制御することにより、一定範囲の水位に制御される。
【0075】
(凝縮水タンク23の水位制御)
また、凝縮水タンク23へは、凝縮水供給路31からの凝縮水と、第二給水供給路32からの給水とが供給されるが、凝縮水が優先的に供給される。この優先供給は、給水弁35を図3に示すように制御することで実現される。すなわち、第二水位センサ44の検出水位が第二設定水位L2以上では、給水弁35が閉じており、凝縮水タンク23へは凝縮水だけが凝縮水供給路35を通して供給される。そして、第二設定水位L2未満となって初めて、凝縮水タンク23へ第二給水供給路32からも給水が供給される。このとき、凝縮水供給路31からも凝縮水が供給されている。
【0076】
この凝縮水優先供給により、吸収式ヒートポンプ5と蒸気圧縮式ヒートポンプ8の組合せによる高いCOPによる第二蒸気発生が行われることになる。第二給水供給路32からの給水による第二蒸気の発生は、特許文献1と同様に吸収式ヒートポンプ5を用いず、蒸気圧縮式ヒートポンプ8のみで行うことになる。なお、蒸気圧縮式ヒートポンプ8の冷媒に水を用いて圧力5kg/cm2の蒸気を発生させる場合、蒸発器6側飽和温度を70℃,凝縮器7側飽和温度を158℃とすると、COPは3.9程度にしかならないが、蒸気発生装置1によるCOPは、理想的には、11.3に近い高いCOPを実現できる。
【0077】
(吸収式ヒートポンプ5の熱源水供給制御)
制御器4は、第一圧力センサ45による検出圧力が第一設定圧力P1以上となると、熱源水弁16を閉じ、第一設定圧力P1未満となると、熱源水弁16を開く。こうした熱源水の供給量制御により、第一蒸気圧力を第一設定圧力P1に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【0078】
(システム起動後の動作)
システム起動後、第二圧力センサ46の検出圧力が第三設定圧力P3以上となると、制御器4は、ボイラ2の運転を停止するので、蒸気発生装置1にて生成される第二蒸気のみが第四蒸気供給40を通して使用機器へ供給されることになる。
【0079】
以上説明した実施例1の蒸気発生装置1によれば、蒸発器6で吸熱された後の凝縮水は、装置外へ排出されることなく、再度凝縮器7へ供給されて、高圧蒸気の生成に利用される。その結果、低温熱源水の保有する排熱を効果的に利用することができる。また、凝縮水だけを凝縮器7へ供給して高圧蒸気を生成する蒸気発生装置では、凝縮器7の冷却不足による圧力が上昇し、運転不能となるおそれがあるが、この蒸気発生装置1によれば、凝縮器の冷却不足による圧力が上昇することを防止でき、運転不能となる事態を回避することができる。
【0080】
また、実施例1の蒸気発生装置1によれば、特許文献2の方式の蒸気発生装置と比較して、蒸気圧縮機のロックや腐食を生ずることが少なく、吸収式ヒートポンプ5からの第一蒸気の質が悪くても、装置の故障を生ずることが少ない。さらに、容器22にブロー手段36を備えているので、容器22内の水質を向上でき、凝縮器7の水熱交換部7Bなどへのスケールの付着を低減することができる。
【実施例2】
【0081】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、図6に示す実施例2の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例2において前記実施例1と異なる構成を以下に説明する。なお、実施例2において前記実施例1と同じ構成要素は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0082】
前記実施例1では、熱源水供給制御手段を備えている。この熱源水供給制御手段は、吸収式ヒートポンプ5に熱源水弁16を設けた熱源水供給路17を備え、制御器4は、熱源水弁16を制御することにより、吸収式ヒートポンプ5への熱源水の供給を制御する熱源水供給制御手順を行うものである。
【0083】
これに対して、実施例2では、熱源水供給制御手段に代えて、供給蒸気量制御手段を備えている。この供給蒸気量制御手段は、第一圧力センサ45と、蒸気弁48を備え吸収式ヒートポンプ5の第一蒸気を放出する蒸気放出路49と、第一圧力センサ45の検出圧力に応じて蒸気弁48の開閉を制御する制御器4と含んで構成される。制御器4は、供給蒸気量制御手順により蒸気弁48を制御する。
【0084】
この供給蒸気量制御手順は、図7に示すように、第一圧力センサ45による検出圧力が第一設定圧力P1以上となると、蒸気弁48を開き、第一設定圧力P1未満となると、蒸気弁48を閉じる。こうした第一蒸気の供給量制御により、第一蒸気圧力を第一設定圧力P1に保持できる。その結果、第二蒸気圧力の上昇による圧縮機の停止を防止することができる。
【実施例3】
【0085】
この発明は、前記実施例1,2に限定されるものではなく、図8に示す実施例3の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例3において前記実施例1と異なるのは、循環路21の往路21Aに循環ポンプ50を備えた点である。その他の構成は、前記実施例1と同じであるので、同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0086】
この実施例3によれば、循環ポンプ50により容器22内の水を水熱交換部7Bへ強制的に循環、供給するので、容器22内の水質が良くない場合や、凝縮器7が横置き型で蒸気抜けが悪い場合でも、循環路22における水循環を確実に行うことができ、効率よく第二蒸気を生成できる。
【0087】
なお、実施例2においても、循環ポンプ50を備えたものとすることができる。
【実施例4】
【0088】
この発明は、前記実施例1〜3に限定されるものではなく、図9に示す実施例4の蒸気発生装置1を含むものである。この実施例4において前記実施例1と異なる構成を以下に説明する。その他の構成は、前記実施例1と同じであるので、同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0089】
前記実施例1と異なるのは、給水供給手段24による給水を、凝縮水タンク23を経由するのではなく、容器22へ直接供給するように構成した点である。そして、給水弁35の下流側に第三水位センサ51を備えた給水タンク52と、給水タンク52に貯留の給水を容器22へ送水する第二給水ポンプ53とを備えている。符号54は、容器22から第二給水ポンプ53方向の流れを阻止する第四逆止弁である。
【0090】
第二給水ポンプ53と第一給水ポンプ25とは図10に示すように制御されることで、凝縮水が優先的に容器22へ供給されるように構成されている。すなわち、第一水位セン
サ43の検出水位が第三設定水位L3以上では、第一給水ポンプ25,第二給水ポンプ53がそれぞれOFFされ、第三設定水位L3未満となると、第一給水ポンプ25がONし,第二給水ポンプ52がOFFされ、凝縮水タンク23の凝縮水が容器22へ供給される。第一水位センサ43の検出水位が第三設定水位より低い第四設定水位L4未満となると、第一給水ポンプ25,第二給水ポンプ53がそれぞれONされる。こうして、凝縮水が給水よりも優先的に使用されることになる。
【0091】
この実施例4においては、第二水位センサ44による検出水位が所定の低水位未満となると、第一給水ポンプ25をOFFし、第一給水ポンプ25の空運転を防止する。また、第二水位センサ44による検出水位が所定のオーバーフロー水位以上となると、凝縮水タンク23に設けた排水弁(図示省略)を開くように構成する。
【0092】
なお、実施例4において、実施例2または実施例3の構成を採用することができる。
【0093】
この発明は、前記実施例1〜4に限定されるものではなく、種々変更可能である。図1に示す蒸気システム3を図11に示す構成とし、図12に示すように制御される蒸気システム3とすることができる。図11、12を参照して、第二圧力センサ46の検出圧力が、第二設定圧力P2以上で、圧縮機19をOFFし、第二設定圧力P2未満のとき圧縮機19をONするように構成する。そして、第三蒸気供給路39に、第三設定圧力P3未満で開き、第三設定圧力以上で閉じる圧力開閉弁55を備えている。
【0094】
この図11の蒸気システム3においては、第二圧力センサ46の検出圧力が第二設定圧力P2未満では、第二蒸気と第三蒸気が生成されて供給される。第二設定圧力P2以上となると、圧力開閉弁55によって第三蒸気供給路39が閉じられることで、蒸気ボイラ2がOFFされ、圧縮機19がONされる。その結果、第二蒸気のみが使用機器へ供給されるので、第三蒸気に対して、第二蒸気が優先的に使用されることになる。
【0095】
また、図6,8,9に示す蒸気システム3においても図11と同様な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 蒸気発生装置
2 蒸気ボイラ
3 蒸気システム
4 制御器
5 2種吸収式ヒートポンプ
6 蒸発器
7 凝縮器
7A 水熱交換部
8 蒸気圧縮式ヒートポンプ
16 熱源水弁(弁)
17 熱源水供給路(供給路)
19 圧縮機
21 循環路
22 容器
23 凝縮水タンク
24 給水供給手段
25 第一給水ポンプ(給水ポンプ)
45 第一圧力センサ(圧力センサ)
47 蒸気弁(弁)
48 蒸気放出路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、
第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、
第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、
第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、
給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、
前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、
前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が優先的に供給されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記容器にブロー手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、
前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、
前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、
弁を備え、前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、
前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項1】
熱源水から所定圧の第一蒸気を生成する2種吸収式ヒートポンプと、
第一蒸気から吸熱する蒸発器と、第一蒸気よりも高圧の第二蒸気を生成する凝縮器とを含む蒸気圧縮式ヒートポンプとを含み、
第一蒸気の凝縮水に給水が加えられて、前記凝縮器の水熱交換部へ供給するように構成されることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
前記水熱交換部との間に循環路を形成する容器と、
第一蒸気の凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、
給水を前記容器または前記凝縮水タンクへ供給する給水供給手段と、
前記凝縮水タンク内の貯留水を前記容器へ送水するポンプとを備え、
前記循環路の蒸気を第二蒸気として取り出すように構成したことを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記容器または前記凝縮水タンクに対して、第一蒸気の凝縮水が優先的に供給されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記容器にブロー手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、
前記2種吸収式ヒートポンプの熱源水供給路に設けた弁と、
前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記2種吸収式ヒートポンプの出口側圧力を検出する圧力センサと、
弁を備え、前記2種吸収式ヒートポンプの発生蒸気を放出する蒸気放出路と、
前記圧力センサの検出圧力に応じて前記弁の開閉を制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の蒸気発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−44489(P2013−44489A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183965(P2011−183965)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
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