説明

蒸留水製造装置

【課題】蒸留水製造システム内の圧力変動が生じにくく、簡便に高純度の蒸留水を製造することができる蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法を提供する。
【解決手段】内部に原料水を収容し、その原料水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有し、前記水蒸気を冷却して蒸留水を製造する冷却部とを備える蒸留水製造装置において、浄化された気体が供給される供給孔と、外気に連通する大気孔と、前記冷却部の放出孔に連通する連通孔とを有するエアチェンバを備え、前記放出孔と連通孔とが密閉状態で連通していることを特徴とする蒸留水製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物の混入が少ない高純度の蒸留水を製造することができる蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、より実験の精度を高める等の目的で、不純物の少ない蒸留水が用いられている。用いられる蒸留水は、一般的には、実験室などに蒸留水製造装置が設置され、実験室内で製造されている。
【0003】
蒸留水製造装置としては、例えば、図5に示されるような装置が用いられている。図5は、蒸留水製造装置中の蒸留水を製造する主要部分である蒸留水製造システム100のみ示している。蒸留水製造システム100は、原料水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部102と、水蒸気発生部102の下流(図5の上側)に接続され、水蒸気を冷却して蒸留水を製造する冷却部104とを備えている。
【0004】
水蒸気発生部102は、内部に原料水を収容可能な空間を有する水蒸気発生部本体108と、水蒸気発生部本体108内に配置され、原料水を加熱するヒータ106と、水蒸気発生部本体108内の原料水の水位を調節するための水位調節槽109と、水蒸気発生部本体108及び水位調節槽109に接続され、それぞれに原料水を供給可能な供給路110とを備えている。
【0005】
水蒸気発生部本体108の下流側(図5の左側)には、斜め上方向に延び冷却部104に連通した状態で接続される接続管108aが形成されており、この接続管108aの上端には、沸騰した水の飛沫が冷却部104内に混入するのを防止するための飛沫防止器105を備えている。
【0006】
冷却部104は、その中を流動する水蒸気を冷却して液化させる冷却管112と、冷却管112の水蒸気の流動方向に沿って冷却管112内に設けられた蛇管118とを備えている。冷却管112は、冷却管112の水蒸気の流動方向の下流側(図5の右側)に向かって斜め若干下向きに延在するよう構成さている。また、冷却管112の底面の上流側(図5の左側)端部近傍には、そこから下方に延びる接続管112aが形成されており、この接続管112aが水蒸気発生部本体108の接続管108aと接続することによって、水蒸気発生部本体108と冷却管112が連通するよう構成されている。冷却管112の底面の下流側端部近傍には、捕集孔112bが形成されており、この捕集孔112bは、水蒸気が液化した蒸留水が流動可能な流動チューブ116を介して蒸留水の比抵抗を測定可能な水質測定装置117に接続されている。水質測定装置117は、流動チューブを介して蒸留水タンクに接続され、ここで製造された蒸留水が貯蔵される。また、冷却管112の上面の下流側端部近傍には、冷却管112内を流動する低沸点ガスを放出させる低沸点ガス放出孔114が形成されている。蛇管118内は、冷却管112の下流から上流に向かって冷却溶媒が流動するよう構成されており、このように冷却溶媒が蛇管118内を流動することによって、冷却管112内を流動する水蒸気を冷却して液化させることができる。
【0007】
蒸留水製造システム100においては、まず供給路110から原料水が水蒸気発生部本体108及び水位調節槽109内に供給される。水蒸気発生部本体102内に供給された原料水は、ヒータ106によって加熱され、水蒸気及び低沸点ガスを発生し、水蒸気発生部本体108から冷却管112に供給される。供給された水蒸気及び低沸点ガスは、冷却管112の下流側に向かって流動する。流動する間に、蛇管118内を流れる冷却水によって水蒸気が冷却され、水となる。水となった蒸留水は、捕集孔112bに流れ込む。一方、水蒸気と共に発生した低沸点ガスは、冷却水により温度が下がっても液化することはなく、放出孔114より大気中に放出される。これにより、不純物が取り除かれた蒸留水を製造することができる。
【0008】
また、放出孔114は、低沸点ガスを空気中に放出する役割を果たすと同時に、蒸留水製造システム100内の圧力が下がった際に、放出孔114から外気を取り込み、蒸留水製造システム100内の圧力を一定に保つ役割も果たしている。圧力が一定に保たれることで、水蒸気発生部本体108内の原料水の水位を安定化させ、水位低下による空焚きを防止し、安定な蒸留を可能にしている。
【0009】
しかし、蒸留水製造装置は、揮発性の酸、アルカリ、若しくは有機物、細菌、カビ、又は二酸化炭素などの不純物が充満している実験室や研究室内に設置されていることが多く、放出孔114から、これら不純物も外気と同時に蒸留水製造システム100内に取り込まれてしまう。システム内に取り込まれた不純物は、原料水や蒸留水と接触し、多量の不純物が原料水及び蒸留水中に溶解し、最終的に得られる蒸留水の純度が低下する。
【0010】
このような問題を解決するために、蒸留水製造装置を不純物濃度の低い雰囲気下に設置することが考えられる。しかし、このような不純物濃度の低い雰囲気にするには、クリーンルームなどの設備を作る必要があり、コストやスペースなどの面から、非常に不経済であるという問題があり、現実的ではない。
【0011】
また、放出孔114から蒸留水製造システム100内へ不純物が入らないようにするために、放出孔114に不純物除去フィルタを接続することが考えられる。しかし、不純物除去フィルタを接続すると、通気抵抗が生じるため、蒸留水製造システム100内の圧力が陰圧となった際には、外気の取り込みが不十分となり、陽圧となった際には、蒸留水製造システム100内の気体の排出が不十分となり、本体108内の原料水の水位を安定化させることができないという問題がある。
【0012】
特許文献1には、不活性ガス又は空気混合蒸留方法による高純度蒸留水製造法(以下、不活性ガス混合蒸留法という)が示されている。不活性ガス混合蒸留法においては、凝縮過程における不純物の溶解を防止するために、ボイラー水中又は凝縮する水蒸気中に不活性ガス(窒素やアルゴン等)や清浄な空気を強制的に送り込む。すなわち、不活性ガス混合蒸留法においては、不純物を含まない不活性ガス等を蒸留水製造システム内に連続的に供給することにより、蒸留水製造系内を陽圧に保ち、不純物を含んだ外気が流入することを防止し、高純度の蒸留水の製造を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭48−103464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、不活性ガス混合蒸留法においては、高価な不活性ガス(窒素やアルゴン等)を常に供給し続けなければならない上、不活性ガス等の供給量が不十分になると、外気に含まれる不純物が容易に蒸留水製造システム内に流入し高純度の蒸留水が得られないという問題がある。
【0015】
そこで本発明は、蒸留水製造システム内の圧力変動が生じにくく、簡便に高純度の蒸留水を製造することができる蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る蒸留水製造装置は、内部に原料水を収容し、その原料水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有し、前記水蒸気を冷却して蒸留水を製造する冷却部とを備える蒸留水製造装置において、浄化された気体が供給される供給孔と、外気に連通する大気孔と、前記冷却部の放出孔に連通する連通孔とを有するエアチェンバを備え、前記放出孔と連通孔とが密閉状態で連通していることを特徴とする蒸留水製造装置である。
【0017】
本発明に係る蒸留水製造装置によれば、蒸留水製造システム内が陰圧になった場合、エアチェンバ内の気体が連通孔から冷却部に供給される。エアチェンバ内には、供給孔からの浄化された気体で満たされているので、不純物が含まれる外気は、連通孔から冷却部内に取り込まれにくい。これにより、不純物が冷却部内の水蒸気及び蒸留水、並びに水蒸気発生部本体内の原料水と混合されることがなく、高純度の蒸留水を得ることができる。また、エアチェンバ内の気体が連通孔から冷却部に圧力損失なしで瞬時に供給されるので、蒸留水製造システム内の圧力が瞬時に上昇し、蒸留水製造システム内の圧力を一定に保つことができる。
【0018】
本発明に係る蒸留水製造装置においては、前記連通孔は、前記大気孔よりも前記供給孔の方が近くに位置するように設置されていることが好ましい。これにより、さらに大気孔から流入する不純物を含む外気が、冷却部に供給されにくくなり、より高純度の蒸留水を得ることができる。
【0019】
前記水蒸気発生部内の原料水の水位と同じ水位で原料水を収容するように前記水蒸気発生部と密閉状態で連通された水位調節槽と、該水位調節槽の水位が所定以下になると、前記水蒸気発生部内に原料水を供給する原料水供給手段とをさらに備え、前記エアチェンバは、前記水位調節槽の原料水の上方の空間と密閉状態で連通していることが好ましい。これにより、水位調節槽も密閉状態となり、水位調節槽内の原料水と外気とが直接接することがなく、原料水の純度が低下するのを防止することができ、より高純度の蒸留水を得ることができる。
【0020】
前記供給孔に浄化された気体を供給する浄化気体供給手段をさらに備え、前記エアチェンバは、該浄化気体供給手段に密閉状態で連通する第2循環孔をさらに備えていることが好ましい。このような浄化システムにより、複数回、エアチェンバ内の気体が浄化され、エアチェンバ内の気体をより清浄な状態に保つことができる。
【0021】
前記エアチェンバは、前記供給孔及び前記連通孔を有する第1エアチェンバと、前記大気孔を有する第2エアチェンバと、を備え、前記第1エアチェンバと前記第2エアチェンバとは、密閉状態で連通していることが好ましい。前記第1エアチェンバと前記第2エアチェンバとは、1以上のエアチェンバを介して接続されていてもよい。複数のエアチェンバを介すことにより、外気が冷却部に流入することをより防ぐことができる。
【0022】
前記水蒸気発生部内の原料水の水位と同じ水位で原料水を収容するように前記水蒸気発生部と密閉状態で連通された水位調節槽と、該水位調節槽の水位が所定以下になると、前記水蒸気発生部内に原料水を供給する原料水供給手段とをさらに備え、前記第1エアチェンバは、前記水位調節槽の原料水の上方の空間と密閉状態で連通していることが好ましい。これにより、水位調節槽も密閉状態となり、水位調節槽内の原料水と外気とが直接接することがなく、原料水の純度が低下するのを防止することができ、より高純度の蒸留水を得ることができる。
【0023】
前記供給孔に浄化された気体を供給する浄化気体供給手段をさらに備え、前記第2エアチェンバは、該浄化気体供給手段に密閉状態で連通する第2循環孔をさらに備えていることが好ましい。このような浄化システムにより、複数回、エアチェンバ内の気体が浄化され、エアチェンバ内の気体をより清浄な状態に保つことができる。
【0024】
本発明に係る蒸留水製造方法は、原料水を加熱して水蒸気を発生させ、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有する冷却部で水蒸気を冷却して蒸留水を製造する蒸留水製造方法において、前記ガスを気密状態で、外気に連通するエアチェンバに導入する導入工程と、前記エアチェンバに浄化された気体を供給する浄化工程とを備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る蒸留水製造方法によれば、蒸留水製造システム内が陰圧になった場合、エアチェンバ内の気体が放出孔から冷却部に供給される。エアチェンバ内には、供給孔からの浄化された気体で満たされているので、不純物が含まれる外気は、連通孔から冷却部内に取り込まれにくい。これにより、不純物が冷却部内の水蒸気及び蒸留水、並びに水蒸気発生部本体内の原料水と混合されることがなく、高純度の蒸留水を得ることができる。また、エアチェンバ内の気体が放出孔から冷却部に供給されるので、蒸留水製造システム内の圧力が上昇し、蒸留水製造システム内の圧力を一定に保つことができる。なお、蒸留水製造システム内が陰圧になった場合、大気孔から外気がエアチェンバ内に流入するが、エアチェンバは浄化された気体で満たされているので、外気が直接冷却部に供給されにくい。
【0026】
また、本発明に係る蒸留水製造方法は、原料水を加熱して水蒸気を発生させ、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有する冷却部において水蒸気を冷却して蒸留水を製造する蒸留水製造方法において、前記ガスを密閉状態で、外気に連通するエアチェンバに導入する導入工程と、前記エアチェンバに浄化された気体を供給する浄化工程とを備えたことを特徴とする蒸留水製造方法である。
【0027】
前記浄化工程において、前記浄化された気体が、エアチェンバ内の気体を浄化した気体であることが好ましい。前記導入工程と浄化工程とにより、複数回、エアチェンバ内の気体が浄化され、エアチェンバ内の気体をより清浄な状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、蒸留水製造システム内の圧力変動が生じにくく、簡便に高純度の蒸留水を得ることができる蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る第1実施形態の蒸留水製造装置の一部を示す概念図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の蒸留水製造装置の一部を示す概念図である。
【図3】本発明に係る第3実施形態の蒸留水製造装置の一部を示す概念図である。
【図4】本発明に係る第4実施形態の蒸留水製造装置の一部を示す概念図である。
【図5】従来の蒸留水製造システムを示す概念図である。
【図6】従来の蒸留水製造装置で製造した蒸留水と、第1乃至4実施形態に係る蒸留水製造装置で製造した蒸留水の比抵抗値を比較したグラフである。
【図7】第3実施形態において、エアポンプの流量が4L/minの時と1L/minの時の得られた蒸留水の比抵抗値を比較したグラフである。
【図8】第4実施形態において、エアポンプの流量が4L/minの時と1L/minの時の得られた蒸留水の比抵抗値を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
次に、本発明に係る蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法の第1実施形態について図1を用いて詳細に説明する。第1実施形態に係る蒸留水製造装置10は、主に蒸留水を製造する蒸留水製造システム12と気体を浄化する浄化システム14に分けることができる。
【0031】
蒸留水製造システム12は、原料水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部16と、水蒸気発生部16の下流側(図1の上側)に接続され、水蒸気を冷却することによって液化して蒸留水を得る冷却部18とを備えている。
【0032】
水蒸気発生部16は、内部に原料水を収容可能な空間を有する水蒸気発生部本体22と、水蒸気発生部本体22内に配置され、原料水を加熱するヒータ20と、水蒸気発生部本体22の内の原料水の水位を調節するための水位調節槽23と、水蒸気発生部本体22及び水位調節槽23に接続され、それぞれに原料水を供給可能な供給路24とを備えている。
【0033】
水蒸気発生部本体22の下流側(図1の左側)には、斜め上方向に延び冷却部18に連通した状態で接続される接続管22aが形成されており、この接続管22aの上端には、沸騰した水の飛沫が冷却部18内に混入するのを防止するための飛沫防止器25を備えている。
【0034】
水位調節槽23は、その内部の密閉された空間内に原料水が収容可能に構成され、水蒸気発生部本体22と別体として水蒸気発生部本体22と同じ高さに位置するように設けられている。この水位調節槽23内の原料水が収容される空間には、フロートスイッチ23a,23bが設けられている。供給路24は、水蒸気発生部本体22と水位調節槽23との間の分岐点24aで分岐して、それぞれ水平方向に延び、垂直方向上方に屈曲して、水蒸気発生部本体22及び水位調節槽23それぞれの底面に連通するように構成されている。このように水蒸気発生部本体22と水位調節槽23は、供給路24を介して連通しており、後述するように水蒸気発生部本体22内と水位調節槽23内の気圧は、同一になるように調整されているので、水蒸気発生部本体22及び水位調節槽23それぞれに収容された原料水の水位の高さは、同一となる。したがって、水位調節槽23内のフロートスイッチ23a,23bによって、供給路24からの原料水の供給量を調整し、水蒸気発生部本体22内の水量を調整することができる。
【0035】
冷却部18は、その中を流動する水蒸気を冷却して液化させる冷却管26と、冷却管26の水蒸気の流動方向に沿って冷却管26内に設けられた蛇管32とを備えている。冷却管26は、冷却管26の水蒸気の流動方向の下流側(図1の右側)に向かって斜め若干下向きに延在するよう構成さている。また、冷却管26の底面の上流側(図1の左側)端部近傍には、そこから下方に延びる接続管26aが形成されており、この接続管26aが水蒸気発生部本体22の接続管22aと接続することによって、水蒸気発生部本体22と冷却管26が連通するよう構成されている。冷却管26の底面の下流側端部近傍には、捕集孔26bが形成されており、この捕集孔26bは、水蒸気が液化した蒸留水が流動可能な流動チューブ30を介して蒸留水の比抵抗を測定可能な水質測定装置33に接続されている。水質測定装置33は、流動チューブを介して蒸留水タンク31に接続され、ここで製造された蒸留水が貯蔵される。また、冷却管26の上面の下流側端部近傍には、冷却管26内を流動する低沸点ガスを放出させる低沸点ガス放出孔28が形成されている。蛇管32内は、冷却管18の下流から上流に向かって冷却溶媒が流動するよう構成されており、このように冷却溶媒が蛇管32内を流動することによって、冷却管18内を流動する水蒸気を冷却して液化させることができる。
【0036】
浄化システム14は、内部が密閉された空間を有する直方体のエアチェンバ34と、外気を浄化する不純物除去フィルタ46及び、外気を吸引して不純物除去フィルタ46を介して浄化された気体をエアチェンバ34に供給するエアポンプ44を含む浄化気体供給手段とを備えている。エアポンプ44と不純物除去フィルタ46とは、第1供給チューブ47によって密閉された状態で接続され、不純物フィルタ46とエアチェンバ34とは、第2供給チューブ49によって密閉された状態で接続されている。第1実施形態に係る蒸留水製造装置10においては、エアチェンバ34は、直方体形状であるが、特にこれに限られるものではない。
【0037】
エアチェンバ34の一の側面の上端近傍には、不純物除去フィルタ46から第2供給チューブ49を介して浄化された気体が密閉状態で供給される供給孔36が形成され、供給孔36よりも若干下方には、冷却管の低沸点ガス放出孔28にチューブ51を介して密閉状態で連通する連通孔38が形成され、連通孔38の若干下方には、水位調節槽23にチューブ53を介して密閉状態で連通する第1循環孔42が形成されている。
【0038】
供給孔36が配置されている一の側面に対向する他の側面の下端近傍には、大気孔40が形成されている。連通孔38は、大気孔40よりも供給孔36の方が近くに位置するように配置されている。連通孔38と大気孔40とは、できるだけ離れるように配置されているのが好ましい。また、連通孔38と供給孔36とは、できるだけ近くに配置されているのが好ましい。
【0039】
不純物除去フィルタ46には、エアポンプ44側から供給孔36側に向かって活性炭48、ソーダ石灰50、及び孔径0.5μmのPTFE製のメンブレンフィルタ52が順に配置されている。本実施形態においては、不純物除去フィルタ46をこのような構成にしたが、これに限られるものではなく、例えば、特殊ガス吸着用の活性炭やイオン交換繊維などを使用してもよい。
【0040】
エアポンプ44は、外気を吸入する吸入口54を備え、吸入した外気を第1供給チューブ47、不純物除去フィルタ46、及び第2供給チューブ49を介して不純物除去フィルタ46によって浄化された気体をエアチェンバ34に供給可能となっている。
【0041】
第1実施形態に係る蒸留水製造装置10においては、まず、供給路24から原料水が水蒸気発生部本体22及び水位調節槽23に供給される。原料水は、水道水や蒸留水などであってもよいが、イオン交換水であることが好ましい。イオン交換水は、例えば、水道水から、繊維状活性炭、粒状活性炭、及び0.1μmの中空糸フィルタで構成される前処理カートリッジを用いて、残留塩素、有機物、及び微粒子などを除去し、次にイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂カートリッジを用いて、不純物を除去して得ることがきる。イオン交換水の水質は、水質測定装置で測定された比抵抗が10MΩ・cm以上であることが好ましい。
【0042】
水位調節槽23に供給される原料水の量は、水位調節槽23に取り付けられた2つのフロートスイッチ23a,23bにより制御され、図示しない電磁弁の開閉が行われ、電磁弁が開いたときに原料水が供給される。水位調節槽23と水蒸気発生部本体22内の原料水の水位は同じであるので、水位調節槽23内の原料水の水位を調整することで、水蒸気発生部本体22内の原料水の水位が調整される。
【0043】
水蒸気発生部本体22に供給された原料水は、ヒータ20により加熱され、水蒸気と低沸点ガスが発生する。発生した水蒸気及び低沸点ガスは、接続管22a及び接続管26aを通って冷却管26に流れ込む。流れ込んだ水蒸気及び低沸点ガスは、冷却管26内を上流側から下流側に流動するに従って、蛇管32内を流れる冷却水によって冷却される。これにより水蒸気は水となり、蒸留水として捕集孔26bに流れ込み、流動チューブ30を介して水質測定装置33に供給され、最終的に蒸留水タンク31で貯蔵される。不純物である低沸点ガスは、沸点が低いので液化することなく、低沸点ガス放出孔28へと気体として流れ込む。
【0044】
低沸点ガス放出孔28へと流れ込んだ低沸点ガスは、低沸点ガス放出孔28に接続されているチューブ51を介して連通孔38からエアチェンバ34に流入する。
【0045】
一方、供給孔36からは、浄化された外気がエアチェンバ34に供給される。具体的には、まず、エアポンプ44を作動させ、吸入口54から外気を吸入し、第1供給チューブ47を介して不純物除去フィルタ46に外気を供給する。供給された外気は、活性炭48と接触して、外気中の揮発性有機物や酸性・アルカリ性ガスなどが吸着除去される。次に、ソーダ石灰50と接触して、外気中の二酸化炭素が吸収除去される。最後に、メンブレンフィルタ52により、外気中の微粒子、微生物、及び細菌などが濾過され取り除かれる。このように浄化された外気は、第2供給チューブ49を介して供給孔36からエアチェンバ34に供給される。
【0046】
不純物を含む低沸点ガスは、浄化された外気とともに、大気孔40からエアチェンバ34の外に排出される。これにより、エアチェンバ34内は、浄化された外気で満たされ、蒸留水製造システム12内の圧力も大気圧と同じになる。浄化された外気は、連続的に供給されるのが好ましい。
【0047】
第1循環孔42からは、エアチェンバ34内の気体が、水位調節槽23にチューブを介して供給される。大気孔40を有するエアチェンバ34と水位調節槽23とは連通しているので、水位調節槽23を密閉しても、水蒸気発生部本体22内の圧力と、水位調節槽23内の圧力が同じになる。また、エアチェンバ34内は、浄化された外気で満たされているので、水位調節槽23に供給される気体は浄化された外気のため、水位調節槽23内に不純物を含む外気が流入するのを防ぐ。
【0048】
蒸留水製造システム12内が陽圧になった場合は、大気孔40からエアチェンバ34内の気体が外に排出される。これにより、蒸留水製造システム12内の圧力が下がり、圧力が一定に保たれる。
【0049】
蒸留水製造システム12内が陰圧になった場合、エアチェンバ34内の気体が連通孔38から冷却部18に供給される。エアチェンバ34内には、供給孔36からの浄化された気体で満たされているので、不純物が含まれる外気は、連通孔38から冷却部18内に取り込まれにくい。これにより、不純物が冷却部18内の水蒸気及び蒸留水、並びに水蒸気発生部本体22内の原料水と混合されることがなく、高純度の蒸留水を得ることができる。また、エアチェンバ34内の気体が連通孔38から冷却部18に供給されるので、蒸留水製造システム12内の圧力が上昇し、蒸留水製造システム12内の圧力を一定に保つことができる。なお、蒸留水製造システム12内が陰圧になった場合、大気孔から外気がエアチェンバ34内に流入するが、エアチェンバ34は浄化された気体で満たされているので、外気が直接冷却部18に供給されにくい。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法の第2実施形態について図2を用いて詳細に説明する。第2実施形態に係る蒸留水製造装置11は、エアチェンバ34に配置された大気孔40の若干上に配置された第2循環孔56とエアポンプ44の吸入口54とが第3供給チューブ55を介して密閉状態で連通している以外は、第1実施形態と同じである。
【0051】
第2実施形態においては、供給孔36から供給される浄化された気体、及び連通孔38から供給される低沸点ガスのそれぞれ一部は、大気孔40から排出されることなく、エアチェンバ34→第3供給チューブ55→エアポンプ44→第1供給チューブ47→不純物除去フィルタ46→第2供給チューブ49→エアチェンバ34と循環する。これによりエアチェンバ34内の気体は清浄に保たれる。
【0052】
上記のように、エアチェンバ34内の気体を循環させることにより、複数回、不純物除去フィルタ46でエアチェンバ34内の気体が浄化されることになる。これによりエアチェンバ34内の気体をより清浄な状態に保つことができる。しかも、不純物除去フィルタ46で浄化される気体は、循環するほど除去される不純物量が減少するため、不純物除去フィルタ46の長寿命化や小型化が可能となる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法の第3実施形態について図3を用いて詳細に説明する。第3実施形態に係る蒸留水製造装置13は、エアチェンバが、第1エアチェンバ58及び第2エアチェンバ60として2つ設けられている以外は、第2実施形態と同じである。
【0054】
第1エアチェンバ58及び第2エアチェンバ60は、内部が密閉された空間を有する直方体の容器であり、第4供給チューブ63により密閉状態で連通している。第3実施形態に係る蒸留水製造装置13においては、エアチェンバは、直方体形状であるが、特にこれに限られるものではない。
【0055】
第1エアチェンバ58の一の側面の上端近傍には、不純物除去フィルタ46から第2供給チューブ49を介して浄化された気体が密閉状態で供給される供給孔36が形成され、供給孔36よりも若干下方には、冷却管の低沸点ガス放出孔28にチューブ51を介して密閉状態で連通する連通孔38が形成され、連通孔38の若干下方には、水位調節槽23にチューブ53を介して密閉状態で連通する第1循環孔42が形成されている。供給孔36が形成されている一の側面に対向する他の側面の下端近傍には、第1接続孔62が形成されている。
【0056】
第2エアチェンバ60の一の側面の上端近傍には、第2接続孔64が形成され、第1接続孔62と第2接続孔64とは、第4供給チューブ63を介して連通している。第2接続孔64が形成されている一の側面に対向する他の側面の下端近傍には、大気孔40が形成されている。大気孔40の若干上には、第2循環孔56が形成され、エアポンプ44の吸入口54と第3供給チューブ55を介して密閉状態で連通している。
【0057】
第3実施形態においては、連通孔38から供給される低沸点ガス及び供給孔36から供給される浄化された気体の一部は、大気孔40から排出されることなく、第1エアチェンバ58→第4供給チューブ63→第2エアチェンバ60→第3供給チューブ55→エアポンプ44→第1供給チューブ47→不純物除去フィルタ46→第2供給チューブ49→第1エアチェンバ58と循環する。これにより第1エアチェンバ58内及び第2エアチェンバ60内の気体は清浄に保たれる。
【0058】
蒸留水製造システム12内が陽圧になった場合は、大気孔40から第2エアチェンバ60内の気体が外に排出され、蒸留水製造システム12内の圧力が下がり、圧力が一定に保たれる。
【0059】
蒸留水製造システム12内が陰圧になった場合、第1エアチェンバ58内の気体が連通孔38から冷却部18に供給される。第1エアチェンバ58内には、供給孔36からの浄化された気体で満たされているので、不純物が含まれる外気は、連通孔38から冷却部18内に取り込まれにくい。また、第1エアチェンバ58と第2エアチェンバ60とが第4供給チューブ63を介して接続され、気体が一方向に循環しているため、第4供給チューブ63が逆止弁のように作用し、外気が流入する大気孔40を有する第2エアチェンバ60から第1エアチェンバ58に気体が逆流するのを防ぐ。このため、不純物を含む外気が蒸留水製造システム12内にほとんど流入しないので、高純度の蒸留水を得ることができる。さらに、第1エアチェンバ58内の浄化された気体が連通孔38から蒸留水製造システム12内に供給されることにより、蒸留水製造システム12内の圧力が上がり、蒸留水製造システム12内の圧力が一定に保たれる。
【0060】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法の第4実施形態について図4を用いて詳細に説明する。第4実施形態に係る蒸留水製造装置15は、第1エアチェンバ58と第2エアチェンバ60との間に、さらに第3エアチェンバ66が配置されている以外は、第3実施形態と同じである。
【0061】
第3エアチェンバ66は、内部が密閉された空間を有する直方体の容器であり、一の側面の上端近傍に形成されている第3A接続孔68が第1接続孔62と第5供給チューブ72を介して密閉状態で連通し、一の側面に対向する他の側面の下端近傍に形成されている第3B接続孔70が第2接続孔64と第6供給チューブ74を介して密閉状態で連通している。第4実施形態に係る蒸留水製造装置15においては、第3エアチェンバは、直方体形状であるが、特にこれに限られるものではない。
【0062】
第1エアチェンバ58と第2エアチェンバ60との間のエアチェンバは何個配置されていてもよいが、0〜2個であることが好ましく、0〜1個であることがさらに好ましい。第1エアチェンバと第2エアチェンバとの間にあるエアチェンバの数が増えると、蒸留水の純度は一般に高くなるが、エアチェンバが増えると部品点数も増えるため、エアチェンバの容積に対して吐出量が十分となるエアポンプ44を適宜選定して、エアチェンバの数を減らすのが好ましい。第1エアチェンバ58と第2エアチェンバ60との間のエアチェンバは、直列に接続されているのが好ましい。
【0063】
第4実施形態においては、連通孔38から供給される低沸点ガス及び供給孔36から供給される浄化された気体の一部は、大気孔40から排出されることなく、第1エアチェンバ58→第5供給チューブ72→第3エアチェンバ66→第6供給チューブ74→第2エアチェンバ60→第3供給チューブ55→エアポンプ44→第1供給チューブ47→不純物除去フィルタ46→第2供給チューブ49→第1エアチェンバ58と循環する。これにより第1エアチェンバ58内、第3エアチェンバ66内、及び第2エアチェンバ60内の気体は清浄に保たれる。
【0064】
蒸留水製造システム12内が陽圧になった場合は、大気孔40から第2エアチェンバ60内の気体が外に排出され、蒸留水製造システム12内の圧力が下がり、圧力が一定に保たれる。
【0065】
蒸留水製造システム12内が陰圧になった場合は、第1エアチェンバ58内の浄化された気体が低沸点ガス放出孔28から蒸留水製造システム12内に供給されることにより、蒸留水製造システム12内の圧力が上がり、圧力が一定に保たれる。また、第1エアチェンバ58と第3エアチェンバ66とが、第3エアチェンバ66と第2エアチェンバ60とが、それぞれチューブを介して接続され、気体が一方向に循環しているため、これらチューブが逆止弁のように作用し、外気を吸引する大気孔40を有する第2エアチェンバ60から第1エアチェンバ58まで気体が逆流するのを防ぐ。このため、不純物を含む外気が蒸留水製造システム12内にほとんど流入しないので、高純度の蒸留水を得ることができる。特に、エアポンプ44の吐出量が十分でなく逆流が生じやすい状況であっても、エアチェンバを3個介すことにより、浄化されていない外気が蒸留水製造システム12内に取り込まれにくい。
【実施例】
【0066】
次に、本発明に係る蒸留水製造装置及び蒸留水製造方法の実施例について説明する。
【0067】
実験例1
図5に示された従来の蒸留水製造装置、図1に示された本発明に係る第1実施形態の蒸留水製造装置、図2に示された本発明に係る第2実施形態の蒸留水製造装置、図3に示された本発明に係る第3実施形態の蒸留水製造装置、及び図4に示された本発明に係る第4実施形態の蒸留水製造装置をそれぞれ用いて、蒸留水を製造した。得られた蒸留水の比抵抗値は、比抵抗・導電率計200CRシステム(Mettler−Toledo Thornton社製)を用いて測定した。結果を表1及び図6に示す。なお、以下、各実験例において、原料水は、イオン交換水であり、比抵抗値が約16.0MΩ・cm〜17.0MΩ・cmである。また、各エアチェンバの容量は、第1実施形態においては、2L×1個、第2実施形態においては、2L×1個、第3実施形態においては、1L×2個、及び第4実施形態においては、1L×3個である。
【0068】
【表1】

【0069】
従来技術(図5)の蒸留水水質は、平均1.31MΩ・cmであったのに対し、第1実施形態(図1)では平均3.22MΩ・cm、第2実施形態(図2)では平均3.57MΩ・cm、第3実施形態(図3)では平均15.96MΩ・cm、第4実施形態(図4)では平均15.46MΩ・cmであった。特に、第3及び第4実施形態が、非常に有効であることが分かる。
【0070】
実験例2
図3に示された本発明に係る第3実施形態の蒸留水製造装置、及び図4に示された本発明に係る第4実施形態の蒸留水製造装置をそれぞれ用いて、蒸留水を製造した。ただし、エアポンプの流速を4L/minにした場合と、1L/minにした場合とで条件を変化させた。得られた蒸留水の比抵抗値は、比抵抗・導電率計200CRシステム(Mettler−Toledo Thornton社製)を用いて測定した。結果を図7及び図8に示す。
【0071】
図7は、第3実施形態の場合を示している。エアポンプの流速が1L/minの場合、第2エアチェンバから第1エアチェンバへの逆流が若干生じ、比抵抗値が低下していることが分かる。特に、水蒸気発生部にイオン交換水を供給した時に、水蒸気発生部内の圧力が一時的に陰圧となり、冷却器の放出孔からエアチェンバ内に混入したわずかなガス(水より沸点の低いガス)の一部を含む気体を吸気してしまい、比抵抗値の低下幅が大きくなっている。
【0072】
図8は、第4実施形態の場合を示している。第4実施形態においては、エアポンプの流速が1L/minと十分でなくとも、比抵抗値は変化せず、安定した水質が得られていることが分かる。
【0073】
実験例3
図5に示された従来の蒸留水製造装置、及び図3に示された本発明に係る第3実施形態の蒸留水製造装置をそれぞれ用いて、蒸留水を製造した。室内の雰囲気は、通常の雰囲気(酢酸濃度0ppm)、酢酸が室内に存在する雰囲気(酢酸濃度2ppm)、酢酸を室内に充満させた雰囲気(酢酸濃度30ppm)とし、それぞれについて、得られた蒸留水の比抵抗値とpH値を測定した。得られた蒸留水の比抵抗値は、比抵抗・導電率計200CRシステム(Mettler−Toledo Thornton社製)を用いて測定し、pHは、PHメーターF−53S(pH電極:9611−10D,(株)堀場製作所製)を用いて測定した。pH値は、pH測定時に室内の二酸化炭素の溶けこみによる影響を排除するために、密閉容器内にpH電極を配置し、その容器と蒸留水タンクを直接配管して給水し、測定を行った。結果を表2に示す。なお、原料水のpHは、7.0である。
【0074】
【表2】

【0075】
従来技術(図5)では通常の雰囲気でも酸性側に傾いているが、酢酸雰囲気中となると酢酸濃度が上がるにつれ、酸性側にさらに大きく傾いていることが分かる。一方、第3実施形態(図3)では、通常の雰囲気中、及び酢酸雰囲気中においても、pH7.0に近い値を維持していることが分かる。また、従来技術(図5)では酢酸雰囲気中となると比抵抗値が大きく低下しているが、第3実施形態(図3)では、通常雰囲気中、及び酢酸雰囲気中においても、比抵抗値の低下はみられず、高純度の蒸留水が得られていることが分かる。
【0076】
実験例4
図5に示された従来の蒸留水製造装置、及び図3に示された本発明に係る第3実施形態の蒸留水製造装置をそれぞれ用いて、蒸留水を製造した。室内の雰囲気は、通常の雰囲気(トルエン濃度0ppm)、トルエンが室内に存在する雰囲気(トルエン濃度5ppm)、トルエンを室内に充満させた雰囲気(トルエン濃度50ppm)とし、それぞれについて、得られた蒸留水のTOC(総有機体炭素)を全有機炭素分析装置810型(SIEVERS社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。なお、原料水のTOCは、40.5ppbである。
【0077】
【表3】

【0078】
従来技術(図5)では、トルエン濃度が上がるにつれ、TOC値が大きく上昇している。一方、第3実施形態(図3)では、トルエン濃度が5ppmの時は、トルエン蒸気の溶けこみを完全に防止できており、50ppmの時でもTOC値の上昇はわずかであることが分かる。
【符号の説明】
【0079】
10・・・蒸留水製造装置
12・・・蒸留水製造システム
14・・・清浄システム
16・・・水蒸気発生部
18・・・冷却部
20・・・ヒータ
22・・・水蒸気発生部本体
23・・・水位調節槽
24・・・供給路
26・・・冷却管
28・・・低沸点ガス放出孔
32・・・蛇管
34・・・エアチェンバ
36・・・供給孔
38・・・連通孔
40・・・大気孔
44・・・エアポンプ
46・・・不純物除去フィルタ
54・・・吸入口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に原料水を収容し、その原料水を加熱して水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有し、前記水蒸気を冷却して蒸留水を製造する冷却部とを備える蒸留水製造装置において、
浄化された気体が供給される供給孔と、外気に連通する大気孔と、前記冷却部の放出孔に連通する連通孔とを有するエアチェンバを備え、
前記放出孔と連通孔とが密閉状態で連通していることを特徴とする蒸留水製造装置。
【請求項2】
前記連通孔は、前記大気孔よりも前記供給孔の方が近くに位置するように設置されていることを特徴とする請求項1記載の蒸留水製造装置。
【請求項3】
前記水蒸気発生部内の原料水の水位と同じ水位で原料水を収容するように前記水蒸気発生部と密閉状態で連通された水位調節槽と、
該水位調節槽の水位が所定以下になると、前記水蒸気発生部内に原料水を供給する原料水供給手段とをさらに備え、
前記エアチェンバは、前記水位調節槽の原料水の上方の空間と密閉状態で連通する第1循環孔を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の蒸留水製造装置。
【請求項4】
前記供給孔に浄化された気体を供給する浄化気体供給手段をさらに備え、
前記エアチェンバは、該浄化気体供給手段に密閉状態で連通する第2循環孔をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の蒸留水製造装置。
【請求項5】
前記エアチェンバは、前記供給孔及び前記連通孔を有する第1エアチェンバと、前記大気孔を有する第2エアチェンバと、を備え、
前記第1エアチェンバと前記第2エアチェンバとは、密閉状態で連通していることを特徴とする請求項1記載の蒸留水製造装置。
【請求項6】
前記水蒸気発生部内の原料水の水位と同じ水位で原料水を収容するように前記水蒸気発生部と密閉状態で連通された水位調節槽と、
該水位調節槽の水位が所定以下になると、前記水蒸気発生部内に原料水を供給する原料水供給手段とをさらに備え、
前記第1エアチェンバは、前記水位調節槽の原料水の上方の空間と密閉状態で連通する第1循環孔を備えていることを特徴とする請求項5記載の蒸留水製造装置。
【請求項7】
前記供給孔に浄化された気体を供給する浄化気体供給手段をさらに備え、
前記第2エアチェンバは、該浄化気体供給手段に密閉状態で連通する第2循環孔をさらに備えていることを特徴とする請求項5又は6記載の蒸留水製造装置。
【請求項8】
前記第1エアチェンバと前記第2エアチェンバとは、1以上のエアチェンバを介して接続されていることを特徴とする請求項5乃至7いずれか記載の蒸留水製造装置。
【請求項9】
原料水を加熱して水蒸気を発生させ、水より沸点の低いガスを放出する放出孔を有する冷却部において水蒸気を冷却して蒸留水を製造する蒸留水製造方法において、
前記ガスを密閉状態で、外気に連通するエアチェンバに導入する導入工程と、
前記エアチェンバに浄化された気体を供給する浄化工程と
を備えたことを特徴とする蒸留水製造方法。
【請求項10】
前記浄化工程において、前記浄化された気体が、エアチェンバ内の気体を浄化した気体であることを特徴とする請求項9記載の蒸留水製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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