蒸着重合装置

[目的] 蒸着重合装置における蒸発源容器の蒸発源噴出口にモノマを付着・堆積させず、モノマの蒸発レートを安定化させる。
[構成] 原料モノマA、Bが供給された蒸発源容器7の蒸発源貯蔵部14a、14bの外周部と蒸発源噴出口部13a、13bの外周部とに、それぞれ別個に蒸発源加熱ヒータ9a、9bと蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bとを設け、蒸発源加熱ヒータ9a、9bの温度よりも蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bの温度を若干高くする。これにより蒸発源噴出口部13a、13bの温度が低下するのを防ぎ、蒸発源容器7a、7b全体の温度がそれぞれ一定化するので、蒸発源噴出口13a、13bにモノマが付着・堆積することなくモノマA、Bの蒸発速度及び蒸発レートが常に安定化する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は被蒸着材の表面に高分子膜を形成させる際に用いる蒸着重合装置に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】従来では、半導体素子の絶縁膜、パッシべーション膜、ソフトエラー防止膜及びコンデンサの誘電体膜等に用いられている各種高分子被膜の形成方法として、湿式法、ポリマー蒸着法及びプラズマ重合法が知られている。
【0003】湿式法は原料モノマを適当な溶媒に溶かして重合させ、これを基板上に塗布する方法であり、ポリマー蒸着法はポリマー自体を基板上に蒸着させる方法であり、プラズマ重合法はモノマ蒸気をプラズマ状態にして重合させ、基板上に堆積させる方法である。しかしながら、これら従来法には各々不都合があり、湿式法では極めて薄い膜が得られず、密着性も不充分であり、更に不純物の混入が生じ易く、ポリマー蒸着法では蒸着時に分解が起こり易く、重合度が充分とならず、プラズマ重合法では重合時に分解が起こり易く、高分子設計が困難であった。
【0004】そこで、本出願人は先にこれら従来法の不都合を解消する高分子被膜形成方法として、真空中で多種類のモノマを蒸発させ、基板上で重合させる蒸着重合法(特開昭61−78463号公報、特開昭63−166961号公報)を発明した。
【0005】以下、従来の蒸着重合装置の構成について図3を参照して説明する。図において蒸着重合装置1の処理室1aに真空排気系2を介して図示されていない真空ポンプを接続し、この処理室1aの内部には高分子の蒸着被膜を形成せしめるべき基板3を基板ホルダ4によって、下向きに保持するようにした。
【0006】基板3は基板ホルダ4の背面に設けられた基板加熱用ヒータ5によって加熱できるようにしている。また、基板3の下方前面には膜厚モニタ6が設けられ、基板3上に形成される被膜厚を間接的に測定できるようになっている。
【0007】処理室1a内下位には基板3に対向させて蒸発源容器21が配設されており、この蒸発源容器21a、21b内には高分子樹脂の原料モノマa、bが入って、る(例として具体的名称をあげれば、ポリイミド樹脂を形成するのであれば、原料モノマaを芳香族酸二無水物とし原料モノマbを芳香族ジアミン等とすればよいが、基板に蒸着させる高分子樹脂の種類によって組み合わせ、材料は任意に変えることができる)。
【0008】蒸発源容器21の近傍にはレートモニタ8(例えば水晶振動子)が設けられており、レートモニタ8と蒸発源加熱ヒータ22によって、原料モノマa、bの蒸発レートを一定化させる所定温度にコントロールできるようにしている。また、蒸発源容器21と基板3との間にはシャッター10が設けられ、蒸発源容器21a、21bの間は仕切板11で仕切られている。
【0009】従来の蒸着重合装置1は以上のように構成されているが、蒸着重合法によって基板上に良質の高分子被膜を形成させるには、蒸発源のモノマ物質a、bが基板上で化学量論的に重合させることが必要である。
【0010】従来の装置では繰り返し蒸着を行なっていると蒸発源のモノマ蒸発速度が不安定になることがあった。その理由は、蒸発源容器の噴出口が蒸発源容器の貯蔵部に比べ若干温度が低くなってしまい、蒸発したモノマが容器噴出口に付着・堆積し、容器噴出口の面積が小さくなることにより、モノマa、bの蒸発速度が不安定となってしまう。
【0011】
【発明が解決しようとする問題点】本発明は上記問題に鑑みてなされ、蒸発源容器の容器蒸発口にモノマが付着・堆積せず、モノマの蒸発速度及び蒸発レートを一定にして、モノマを化学量論的に安定して重合できる蒸着重合装置を提供することを目的とする。
【0012】
【問題点を解決するための手段】以上の目的は、真空中における蒸発源容器に供給された原料モノマを加熱手段により蒸発させる蒸着重合装置において、前記加熱手段は前記蒸発源容器の蒸発源貯蔵部に設けた第1加熱手段と、前記蒸発源噴出口部に設けた第2加熱手段とからなり、前記第2加熱手段の加熱温度は前記第1加熱手段の加熱温度より若干高く設定されていることを特徴とする蒸着重合装置によって達成される。
【0013】
【作用】蒸発源容器の蒸発源貯蔵部に第1加熱手段としての加熱ヒータを取り付けるとともに蒸発源容器の蒸発源噴出口部に蒸発源容器の蒸発源貯蔵部とは別に第2の加熱手段としての加熱ヒータを取り付け、更に各加熱ヒータを温度制御することにより蒸発源貯蔵部の加熱ヒータより蒸発源噴出口部の加熱ヒータの温度を若干高くなるようにしたので、蒸発源噴出口にモノマが付着しなくなる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例による蒸着重合装置について、図面を参照して説明する。なお、従来例と同一の構成の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0015】図2のA及び図2のBは本実施例によるアルミニウム製蒸発源容器7の全体を示し、この蒸発源容器7a、7bの蒸発源貯蔵部14a、14bの外周にはバンドヒータである蒸発源加熱ヒータ9a、9bが巻装されており、また蒸発源容器7a、7bの円筒状の蒸発源噴出口部13a、13bの外周にはバンドヒータである蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bが巻装されている。これら、蒸発源加熱ヒータ9a、9b及び蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bは各々独立しており、図示されていない温度制御手段により、それぞれ温度調節が可能となっている。
【0016】蒸発源容器7に供給されるモノマは、例えばポリイミドの蒸着重合法を例にあげれば、蒸発源容器7aの蒸発源貯蔵部14a内には原料モノマAとしてピロメリト酸二無水物を供給し、蒸発源容器7bの蒸発源貯蔵部14b内には原料モノマBとして、4、4’‐ジアミノジフェニルエーテルを供給する。
【0017】図1は上述した蒸発源容器7が蒸着重合装置1の処理室1a内に配置された図を示す。
【0018】本発明の実施例による蒸着重合装置1は以上のように構成されるが、次にこの作用について説明する。
【0019】シャッター10が閉じられている状態で図示されていない排気手段により処理室1a内が所望の圧力に減圧されると、蒸発源容器7の蒸発源加熱ヒータ9a、9bと蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bとが加熱される。各々の設定温度は蒸発源加熱ヒータ9aが180°±2℃、蒸発源噴出口加熱用ヒータ12aが190°±2℃、蒸発源加熱ヒータ9bが160°±2℃、蒸発源噴出口加熱用ヒータ12bが170°±2℃である。これにより蒸発源容器7の蒸発源噴出口部13a、13bの温度が蒸発源貯蔵部の温度と同じとなり、蒸発源噴出口部13a、13bの温度が低下するのを防止できる。
【0020】蒸発源容器7a、7bに供給されているモノマA、Bが加熱されると、モノマA、Bは蒸発するが、レートモニタ8はこれらの蒸発レートを検知し、蒸着被膜の形成に適した蒸発レートになると、シャッター10は開かれる。これによりモノマA、Bの蒸気は処理室1a内全体に充填され、基板3に飛んでいき、化学量論的に蒸着・堆積し、基板3の背後に設けられている基板加熱用ヒータ5により、加熱されながら蒸着重合する。膜厚モニタ6は基板3に蒸着重合した蒸着被膜を観察し、蒸着被膜が所望の厚さになるとシャッター10は閉じられる。
【0021】以上本実施例の作用について述べたが、本実施例では蒸発源容器7a、7b共に蒸発源の貯蔵部14a、14bの外周の蒸発源加熱ヒータ9a、9bよりも、蒸発源噴出口加熱用ヒータ12a、12bの方が温度が高くなるように調節しているので、蒸発源容器7a、7bの全体の温度がそれぞれ一定化して、モノマA、Bは蒸発源容器7aの蒸発口に付着・堆積することがない。また、これによりモノマの蒸発速度、蒸発レートが安定化する。
【0022】以上、本発明の実施例について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて、種々の変形が可能である。
【0023】例えば以上の実施例では、蒸発源の加熱方法にバンドヒータを使用したが、ニクロム線、媒体加熱等による加熱方法を使用してもよい。
【0024】また、以上の実施例では蒸発源容器7をアルミニウム製としたが、鉄、銅等の他の材質であってもよく、更にこの蒸発源容器7の蒸発源貯蔵部14a、14bと蒸発源噴出口部13a、13bとを一体成形にしたが、これを別個に成形してもよいし、更に蓋部15a、15b、噴出口部13a、13b及び貯蔵部14a、14bを別個に成形してもよい。
【0025】また、以上の実施例ではポリイミドの蒸着重合法を例としたが、モノマ形成される高分子膜はその種類を任意に変えることができる。
【0026】
【発明の効果】以上述べたように本発明の蒸着重合装置は蒸発レートが不安定になる要因を取り除くことができるので、基板上に形成される高分子膜の質を良好なものにすることができる。また、蒸発源噴出口にモノマが付着・堆積しないため繰り返し蒸着することができ、蒸発源容器のメンテナンスの回数も減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による蒸着重合装置の処理室の正面図である。
【図2】Aは同処理室における蒸発源容器の拡大平面図であり、Bは同蒸発源容器の拡大断面図である。
【図3】従来例の蒸着重合装置の処理室の正面図である。
【符号の説明】
1 蒸着重合装置
7 蒸発源容器
9a 蒸発源加熱ヒータ
9b 蒸発源加熱ヒータ
12a 蒸発源噴出口加熱用ヒータ
12b 蒸発源噴出口加熱用ヒータ
13a 蒸発源噴出口部
13b 蒸発源噴出口部
14a 蒸発源貯蔵部
14b 蒸発源貯蔵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 真空中における蒸発源容器に供給された原料モノマを加熱手段により蒸発させる蒸着重合装置において、前記加熱手段は前記蒸発源容器の蒸発源貯蔵部に設けた第1加熱手段と、前記蒸発源噴出口部に設けた第2加熱手段とからなり、前記第2加熱手段の加熱温度は前記第1加熱手段の加熱温度より若干高く設定されていることを特徴とする蒸着重合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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