説明

蓄光性成形品

【課題】明るい特に光を窮して蓄光し、暗いときに発光することのできる、視認性のよい蓄光性成形品の提供。
【解決手段】エラストマー樹脂材料に蓄光性蛍光体を含有した成形品であって、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.3立方センチメートル以上を有していることを特徴とする蓄光性成形品。該成形品は視認性が高いため、ガス栓、照明スイッチパネル周辺部、あるいは家具コーナー部に装着することにより位置の確認が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明るい時に光を吸収して蓄光し、暗い時に発光することのできる蓄光性成形品、ガス栓装着用蓄光性成形品、照明スイッチパネル装着用蓄光性成形品及び家具コ-ナ装着用蓄光性成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来蓄光性蛍光体としてZnS:Cu、(Ca、Sr)S:Biなどが知られており、一般にはアルミン酸塩系が広く使用されている。このような蓄光性蛍光体は、太陽光や蛍光灯などの光を吸収して蓄光(励起)し、暗所で発光する性質を持っている。そして、蓄光性蛍光体は、光の照射により、蓄光、発光(以下残光ということもある。)を何度でも繰り返すことができるため、暗所にて視認を必要とする非常口などの防災、安全のための標識や標示、自動車室内や建物内の各種案内標示、時計の文字板、タイピン、ペンダント等のアクセサリー類など、広範な用途に広く利用されている。
【0003】
このような蓄光性蛍光体は、一般的な用途にはその利用の簡便さから、通常、蓄光シートや塗料の形態で用いられている。一方、蓄光性蛍光体を樹脂中に配合する例としては、特開平8−183955号公報に、合成樹脂中に蓄光性蛍光体SrAl24を5〜20重量%、及び流動パラフィンを70重量%以上含有している表面活性剤を0.05〜0.5重量%分散させた蓄光性合成樹脂材料を用いて所望の形状に成形することが提案(特許文献1)されている。
【0004】
特開2001−12646号公報では、バルブ部を操作するハンドル部と、バルブ部の下流に設けられた吐水口部とを備えた水栓であって、上記ハンドル部を樹脂材料と蓄光材料を混成した材料でその一部或は全体を形成したことを特徴とする水栓が提案(特許文献2)されている。
【0005】
特開平8−339733号公報では、携帯用無線機器のボタン構造において、前記操作ボタンの構成のうち前記表示またはマークならびに装置内部のスイッチとの接点部のみを軟質ゴム状の射出成形可能な蓄光樹脂材料で形成し、前記操作ボタンのその他の部分は一般樹脂材料で形成したものが提案(特許文献3)されている。
【特許文献1】特開平8−183955号公報
【特許文献2】特開2001−12646号公報
【特許文献3】特開平8−339733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、前記の提案では、当該製品を作るときに蓄光性蛍光体を用いて形成するために、既設或いは既に形成されている製品には、蓄光性蛍光体の機能を付け加えることができず、これら既設或いは既に形成されている製品を取り替えなければならないという問題点がある。
【0007】
また、既設或いは既に形成されている製品に蓄光性蛍光体の機能を付け加える方法として、蓄光性シートを貼り付ける方法が考えられるが、立体的なものに蓄光性シートを貼り付けるのは困難で、見栄えがよくなくまた直ぐにはがれ易いという問題点がある。
【0008】
更に、別の方法として、既設或いは既に形成されている製品に蓄光性塗料を用いて塗装する方法が考えられるが、塗装の厚みには限界がありせいぜい0.3mm以下であり、これは面積1平方センチメ-タル当たりの体積がせいぜい0.03立方センチメートルであり、塗装面に垂直方向では視認性はよいが、塗装面と平行方向では極端に視認性が悪くなるという問題点がある。この問題点は、前記蓄光性シートを貼り付ける方法においても同様に問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、蓄光性成形品であって面積1平方センチメートル当たりの体積が0.3立方センチメートル以上を有していることにより視認性のよいことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓄光性成形品は、ガス栓、照明スイッチパネル及び家具コーナーに用いることが出来、夜間暗闇や万一、火災、地震などの災害発生によって停電した場合に本発明の蓄光性成形品の残光によりパニックに陥ることなく、ガス栓の位置を確認でき当該栓を閉じることができ、また部屋の壁の位置を確認することができ、なおかつ家具等の位置を確認できこれにより家具等に衝突、躓かずに安全に避難できるという利点がある。また本発明の蓄光性成形品は、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.3立方センチメートル以上を有しているので視認性が飛躍的に向上し、かつ蓄光性能及び発光性能が向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明の蓄光性成形品に用いられる蓄光性蛍光体について説明する。本発明に使用する蓄光性蛍光体としては、一般式がMAl24あるいはMAl1425等で表される化合物(Mは、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムからなる群から選択された少なくとも一つ以上の金属元素)を母結晶として、付活剤としてユーロピウム(Eu)が用いられ、他に共付活剤としてジスプロシウム(Dy)、ネオジウム(Nd)などが使用され、例えば、SrAl24:Eu,Dy、Sr4Al1425:Eu,Dy、CaAl24:Eu,Nd等の蓄光性蛍光体、また、他の例としてY22Sを母結晶としてユーロピウム(Eu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)等の付活剤を使用した、例えば、Y23:Eu、Y23:Eu,Mg等の蓄光性蛍光体のうち少なくとも一つ以上を用いることが出来る。
【0012】
尚、上記以外の蓄光性蛍光体を用いることができることは言うまでもないが、より好ましくは、青色の光は人の気持ちを静める作用があることから青色に発光するSr4Al1425:Eu,Dyで表される蓄光性蛍光体を用いるのがよい。
【0013】
本発明の蓄光性成形品に用いられる成形材料としては、装着の容易さから熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー等の種々のエラストマーが適宜用いることが出来る。なお本発明でいうエラストマーとは、常温付近で弾性の顕著な高分子であり常温での弾性率1〜10Kgf/mm2、引張強さ0.5Kgf/mm2以上、伸び100%の弾性体の成形材料をいう。例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、スチレン系ゴム(SBR、SEBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
【0014】
前記成形材料は、透明である成形材料が好ましいが、半透明のものも用いることが出来る。
【0015】
本発明の蓄光性成形品の形状は、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.3立方センチメートル以上を有していることを必須条件としていればよく形状大きさは問わず、中実若しくは空洞であってもよい。
【0016】
本発明の蓄光性成形品の成形方法は、種々の成形方法を用いることができ、例えば射出成形方法、中空成形方法、注型成形方法等の方法が適宜用いることが出来る。
【実施例1】
【0017】
本発明の一例としてガス栓装着用蓄光性成形品を作成した。St4Al1425を母結晶としてユーロピウム(Eu)を付活剤とし、共付活剤としてジスプロシウム(Dy)を使用した蓄光性蛍光体を5重量%含有するウレタンエラストマー用い、注型成形方法で成形した。
【0018】
ウレタンエラストマー用いた注型成形方法は、プレポリマーとして三井武田ケミカル社製のL−1770と硬化剤として4,4−ジアミニノ−3.3−ジクロロジフェニルメタンを用いた。まずプレポリマーを80℃で予熱しながら5mmHg以下の減圧下で脱泡した後、予め120℃で加熱した硬化剤をプレポリマーに含有するイソシアネート基含有量×133.5÷42×0.9により算出される比率で混合した。
【0019】
この混合液を攪拌しつつ平均粒径50μmの蓄光性蛍光体を投入し更に攪拌混合し、金型に注型し、110℃で4時間加熱して成形して本考案の蓄光性成形品を作成した。
【0020】
得られた成形品の形状は、図1に示すとおりであり、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.4立方センチメートル、弾性率50Kgf/mm2、引張強さ30Kgf/mm2以上、伸び560%の弾性体であり、JIS Z
9107 に準拠し測定した残光輝度は、1分後387mcd/m2、5分後212mcd/m2、480分後2mcd/m2であった。
【実施例2】
【0021】
本発明のその他の例として照明スイッチパネル装着用蓄光性成形品を作成した。 St4Al1425を母結晶としてユーロピウム(Eu)を付活剤とし、共付活剤としてジスプロシウム(Dy)を使用した蓄光性蛍光体を6重量%含有するウレタンエラストマー用い、実施例1と同様の注型成形方法で成形した。
【0022】
得られた成形品の形状は、図2に示すとおりであり、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.6立方センチメートル、弾性率50Kgf/mm2、引張強さ30Kgf/mm2以上、伸び560%の弾性体であり、JIS Z 9107 に準拠し測定した残光輝度は、1分後403mcd/m2、5分後221mcd/m2、480分後2mcd/m2であった。なお、図2の照明スイッチパネル装着用蓄光性成形品には、照明スイッチパネルに装着したとき照明スイッチパネルの隙間を埋めるパッキン機能が付加されているものである。
【実施例3】
【0023】
更に本発明のその他の例として家具コ−ナ部装着用蓄光性成形品を作成した。 St4Al1425を母結晶としてユーロピウム(Eu)を付活剤とし、共付活剤としてジスプロシウム(Dy)を使用した蓄光性蛍光体を5重量%含有するウレタンエラストマー用い、実施例1と同様の注型成形方法で成形した。
【0024】
得られた成形品の形状は、図2に示すとおりであり、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.6立方センチメートル、弾性率50Kgf/mm2、引張強さ30Kgf/mm2以上、伸び560%の弾性体であり、JIS Z 9107 に準拠し測定した残光輝度は、1分後397mcd/m2、5分後216mcd/m2、480分後2mcd/m2であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
ガス栓、照明スイッチパネル及び家具コ-ナに容易に装着することができる蓄光性成形品は、既設、既存のガス栓、照明スイッチパネル及び家具に装着することができ、暗い時に容易に視認ができることにより、夜間暗闇や万一、火災、地震などの災害発生によって停電した場合に本発明の蓄光性成形品の残光によりパニックに陥ることなく、ガス栓の位置を確認でき当該栓を閉じることができ、また部屋の壁の位置を確認することができ、なおかつ家具等の位置を確認できこれにより家具等に衝突、躓かずに安全に避難できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施1で得られたガス栓装着用蓄光性成形品の説明図面である。
【図2】実施2で得られた照明スイッチパネル装着用蓄光性成形品の説明図面である。
【図3】実施3で得られた家具コ−ナ部装着用蓄光性成形品の説明図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー樹脂材料に蓄光性蛍光体が含有した成形品であって、面積1平方センチメートル当たりの体積が0.3立方センチメートル以上を有していることを特徴とする蓄光性成形品。
【請求項2】
エラストマー樹脂材料に蓄光性蛍光体が含有した成形品であって、ガス栓本体にバルブ部を操作するハンドル部と、バルブ部の下流に設けられた流出口部とを備えたガス栓に装着できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の蓄光性成形品。
【請求項3】
エラストマー樹脂材料に蓄光性蛍光体が含有した成形品であって、照明スイッチパネルの周辺部に装着できるようにしたことを特徴とする請求項1の蓄光性成形品。
【請求項4】
エラストマー樹脂材料に蓄光性蛍光体が含有した成形品であって、家具コ−ナ部に装着できるようにしたことを特徴とする請求項1の蓄光性成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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