説明

蓄冷剤凍結用ラック及び蓄冷剤凍結庫

【課題】複数の蓄冷剤を効率的に凍結することができると共に、各蓄冷剤の納出作業性の向上を図ることができる蓄冷剤凍結用ラック及び蓄冷剤凍結庫を提供する。
【解決手段】本発明の蓄冷剤凍結用ラック30は、複数の蓄冷剤26を保持するためのものであって、相互に所定の間隔を存して配置された複数の支持枠31、41を備え、この支持枠31、41の一辺である前辺34、44は、内方に向けて凹陥した凹陥部36、46とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄冷剤を効率的に凍結可能とする蓄冷剤凍結用ラック及び蓄冷剤凍結庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の要保冷物品の輸送時の冷却、保冷には、蓄冷剤が用いられている。使用する際には、蓄冷剤を凍結する必要があり、例えば、特許文献1に示すように複数の蓄冷剤を収納可能とするバスケットに蓄冷剤を収納して凍結庫にて冷凍温度にまで冷却する。
【0003】
特許文献1に示す如きバスケットは、複数の線条によって構成された上面に開口するバスケットであって、複数本の支持部が配設されている。各支持部間に蓄冷剤を収納させることによって、互いに接触することを抑制した状態で、隣接する蓄冷剤間に隙間を形成することで冷気の流通を許容し、冷却効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−146390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、蓄冷剤の収納効率の向上を図るべく、バスケットの前後に2列支持部が設けられている。そして、前後それぞれにおいて各支持部間に蓄冷剤を保持する。しかしながら、係る構成では、バスケットを凍結庫内に収納した状態で、奥側に保持された蓄冷剤を納出する場合には、バスケットの前面から蓄冷剤を取り出すことはできないため、ある程度バスケットを手前側に引き出さなければならない。
【0006】
しかしながら、蓄冷剤が収納された状態のバスケットは重量が重く(例えば5kg程度)、片手でバスケットを引き出した状態を維持して、奥側の蓄冷剤の納出作業を行うことは困難となる。そのため、バスケット全体を庫内から取り出して、別場所にて蓄冷剤の納出作業を行わなければならず、作業全体が煩雑となる問題があった。
【0007】
本発明は、従来の技術的課題を解決するものであり、複数の蓄冷剤を効率的に凍結することができると共に、各蓄冷剤の納出作業性の向上を図ることができる蓄冷剤凍結用ラック及び蓄冷剤凍結庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の蓄冷剤凍結用ラックは、複数の蓄冷剤を保持するためのものであって、相互に所定の間隔を存して配置された複数の支持枠を備え、この支持枠の一辺は、内方に向けて凹陥した形状を呈していることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記において、一辺の凹陥部分は、支持枠が並列する方向で略同一の位置とすることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、上記各発明において、支持枠の凹陥した形状の一辺を回避した位置に補強辺を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記各発明において、各支持枠間の間隔は、蓄冷剤の厚さ寸法の少なくとも2倍とされていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、上記各発明において、支持枠は、上辺と前後辺を有し、この前辺が内方に凹陥した形状を呈すると共に、上辺には、折りたたみ可能な蓄冷剤を折りたたみ、その折曲部を上とした状態で掛架可能とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の蓄冷剤凍結庫は、上記請求項5に記載の蓄冷剤凍結用ラックを収納可能な収納室を備え、この収納室を冷却装置により冷却することにより、蓄冷剤を凍結させるものであって、収納室は、前面開口を扉により開閉自在に閉塞され、蓄冷剤凍結用ラックの支持枠の、前辺が扉側とされた状態で、当該蓄冷剤凍結用ラックを収納可能とされており、その状態で蓄冷剤凍結用ラックとその両側の収納室内壁との間には、蓄冷剤の厚さ寸法より大きい間隔がそれぞれ構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の蓄冷剤を保持するための蓄冷剤凍結用ラックにおいて、相互に所定の間隔を存して配置された複数の支持枠を備え、この支持枠の一辺は、内方に向けて凹陥した形状を呈しているので、支持枠の奥側に保持された蓄冷剤を取り出す際に、支持枠の一辺が内方に向けて凹陥しているため、当該支持枠の一辺が邪魔とならずに、支障なく手指を挿入して取り出すことが可能となる。これにより、蓄冷剤のラックへの納出作業性の向上を実現できる。
【0015】
特に、請求項2の発明の如く一辺の凹陥部分は、支持枠が並列する方向で略同一の位置とすることにより、各支持枠の間隔が手指を挿入するには狭い場合であっても、隣接する支持枠の一辺が邪魔とならず、支障なく手指を挿入して奥側に保持された蓄冷剤を取り出すことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、上記各発明において、支持枠の凹陥した形状の一辺を回避した位置に補強辺を備えるので、比較的重量のある蓄冷剤を当該支持枠に掛架した場合であっても、支持枠の当該掛架された一辺の強度を向上させることができ、安定した蓄冷剤の保持が可能となる。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、上記各発明において、各支持枠間の間隔は、蓄冷剤の厚さ寸法の少なくとも2倍とされているので、各支持枠に折りたたんだ状態の蓄冷剤をその折曲部を上とした状態で掛架して保持されることも、各支持枠間に形成された隙間に折りたたんだ状態の蓄冷剤を差し込んで保持させることも可能となる。
【0018】
これにより、限られた収納スペースであっても、効率的に蓄冷剤を各支持枠に保持させることができ、より多くの蓄冷剤を一度に凍結可能とすることができる。
【0019】
また、請求項5の発明によれば、上記各発明において、支持枠は、上辺と前後辺を有し、この前辺が内方に凹陥した形状を呈すると共に、上辺には、折りたたみ可能な蓄冷剤を折りたたみ、その折曲部を上とした状態で掛架可能とされているので、支持枠の上辺に前後方向に複数の蓄冷剤を掛架させても、奥側に蓄冷剤を納出する際に支持枠の前辺が邪魔となる不都合を解消することができる。
【0020】
これにより、支持枠奥側への蓄冷剤の納出作業性の向上を図ることができるため、限られた収納スペースに、冷却効率を確保しつつ、効率的により多くの蓄冷剤を保持させることが可能となる。
【0021】
請求項6の発明によれば、上記請求項5に記載の蓄冷剤凍結用ラックを収納可能な収納室を備え、この収納室を冷却装置により冷却することにより、蓄冷剤を凍結させる蓄冷剤冷凍庫において、収納室は、前面開口を扉により開閉自在に閉塞され、蓄冷剤凍結用ラックの支持枠の、前辺が扉側とされた状態で、当該蓄冷剤凍結用ラックを収納可能とされており、その状態で蓄冷剤凍結用ラックとその両側の収納室内壁との間には、蓄冷剤の厚さ寸法より大きい間隔がそれぞれ構成されるので、各支持枠の奥側に保持された蓄冷剤の納出作業性を確保しつつ、蓄冷剤凍結用ラックの収納室内壁面側に位置する各支持枠にも支障なく折りたたんだ状態の蓄冷剤を掛架させることができると共に、支持枠に掛架された蓄冷剤と収納室内壁面との間に冷気流通用の隙間を形成することができ、収納室全体における蓄冷剤の凍結効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る蓄冷剤凍結用ラックの一実施形態が適用された急速凍結庫の扉を取り外した状態の斜視図である。
【図2】図1の急速凍結庫の概略正面図である。
【図3】蓄冷剤凍結用ラックの正面図である。
【図4】図3の左側面図である。
【図5】図3の上面図である。
【図6】説明のため部分的に支持枠を間引きした状態の蓄冷剤凍結用ラックの斜視図である。
【図7】蓄冷剤を収納していく状態を示す蓄冷剤凍結用ラックの斜視図である。
【図8】蓄冷剤を収納していく状態を示す蓄冷剤凍結用ラックの斜視図である。
【図9】蓄冷剤を収納していく状態を示す蓄冷剤凍結用ラックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る蓄冷剤凍結用ラックの一実施形態が適用された急速凍結庫(蓄冷剤凍結庫)Rの扉を取り外した状態の斜視図、図2は図1の急速凍結庫Rの概略正面図をそれぞれ示している。
【0024】
本実施例において採用される急速凍結庫Rは、庫内(収納室内)3に収納された蓄冷剤26を急速に凍結する冷凍庫(冷却貯蔵庫)であり、例えば、食品等の要冷却物品の配送ベースなどに設置される。この急速凍結庫Rは、前面に開口する断熱箱体2により本体が構成されており、当該断熱箱体2内を収納室(庫内)3としている。この断熱箱体2の前面開口5は、図示しない扉にて開閉自在に閉塞される。
【0025】
収納室3内の一側の内壁6には、所定間隔を存して仕切板8が設けられている。これにより、仕切板8と一側の内壁6との間には、収納室3の上下に延在する冷却室7が形成される。この冷却室7内には、断熱箱体2の鉛直方向略中央に位置して冷却装置10を構成する冷却器12が配設されている。この冷却器12の上方には、冷却室7内の冷気を収納室3内に吐出する冷気循環用の上部送風機13が配設されており、冷却器12の下方には、同じく冷却室7内の冷気を収納室3内に吐出する冷気循環用の下部送風機14が配設されている。
【0026】
そして、この仕切板8には、冷却器12と対向する位置に複数の冷気吸込口20が形成されていると共に、上部送風機13に対向する位置に複数の上冷気吐出口21が、下部送風機14に対向する位置に複数の下冷気吐出口22が形成されている。これら冷気吐出口21、22は、図示しないファンガードにて覆われている。
【0027】
一方、断熱箱体2の天面には、前面、後面、両側面をそれぞれ囲繞するパネル15によって機械室16が画成されている。この機械室16内には、圧縮機17、凝縮器185(図2のみ図示する)などが設置され、前記冷却器12と共に冷却装置10の周知の冷媒回路を構成している。尚、当該機械室16内には、これ以外にも図示しない凝縮器用送風機や電装箱等も配設されている。
【0028】
係る構成により、冷却装置10及び各送風機13、14が運転されると、冷却室7内にて冷却器12と熱交換された冷気は、上部送風機13及び下部送風機14によって仕切板8に形成されたそれぞれの冷気吐出口21、22より収納室3内に吐出される。冷却室12から吐出された冷気は、収納室3内を循環した後、断熱箱体2の鉛直方向略中央に位置して形成された冷気吸込口20より冷却室7内に帰還する。これにより、冷却室7にて冷却された冷気が収納室3内を強制循環する。
【0029】
また、冷気吸込口20付近には、収納室3内の温度(庫内温度)を検出する温度センサ23が設けられており、当該温度センサ23の検出に基づき冷却装置10及び各送風機13、14が運転制御されることにより、収納室3内は、所定の設定温度、例えば−20℃などの冷凍温度に冷却される。
【0030】
上述した如き収納室3を構成する仕切板8の収納室側の面及び当該仕切板8が設けられていない側の内壁9には、前後に位置して棚支柱24が設けられている(図1にて前一側の棚支柱24のみ図示する)。これら棚支柱24には、それぞれ上下に渡って複数の係合孔24Aが穿設されており、これら棚支柱24に網棚25が収納室3の上下に複数段架設される。各網棚25には、本実施例における複数の蓄冷剤26が収納された蓄冷剤凍結用ラック30が載置される。
【0031】
以下、図3乃至図9を参照して本発明の蓄冷剤凍結用ラック30及び蓄冷剤26について詳述する。図3はラック30の正面図、図4は図3の左側面図、図5は図3の上面図、図6は説明のため部分的に支持枠を間引きした状態の蓄冷剤凍結用ラック30の斜視図、図7乃至図9は蓄冷剤26を収納していく状態を示す蓄冷剤凍結用ラック30の斜視図をそれぞれ示している。
【0032】
本実施例における蓄冷剤26は、例えば図7に示すように、矩形状に形成された蓄冷部材27を複数互いに間隔を存して並列し、樹脂シート28にてこれら蓄冷部材27・・・を覆うと共に、各蓄冷部材27間の隙間及び外縁部を密着させることにより、一体に連結して構成する。これにより、並列された複数の蓄冷部材27の間には、各蓄冷部材27を相互に連結する可撓性を有する連結部29が形成されている。
【0033】
尚、本実施例において採用される蓄冷剤26は、蓄冷部材27を4つ連結したものであり、連結部29は、各蓄冷部材27の長手方向にて連結する。例えば図8に示すように、当該蓄冷剤26は中央の連結部29にて折り曲げた状態、即ち2つ折りにした状態で、蓄冷部材27の長手方向と直交する辺2つ分の長さは、蓄冷部材27の長手方向の辺の長さよりも短い寸法となるように構成されているものとする。そのため、蓄冷剤26を2つ折りにした際の折曲部を上とした場合、垂直方向(縦)の長さは水平方向(横)の長さよりも短い矩形体を呈し、当該折曲部を垂直方向とした場合、垂直方向(縦)の長さは水平方向(横)の長さよりも長い矩形体を呈する。
【0034】
一方、蓄冷剤凍結用ラック30は、複数の第1の支持枠31と、複数の第2の支持枠41と、複数の連結線材(連結部材)51・・、52・・とから構成される。第1の支持枠31は、上辺32、下辺33、前辺34と、後辺35の四辺からなる略矩形状の枠部材であり、同様に第2の支持枠41も、上辺42、下辺43、前辺44と、後辺45の四辺からなる略矩形状の枠部材である。
【0035】
本実施例では、当該第1の支持枠31は、第2の支持枠41よりも所定寸法、本実施例では、上記蓄冷剤26の一つの蓄冷部材27の上下寸法の略半分の寸法分だけ低く形成されている。また、各支持枠31、41の上下辺32、33及び42、43は、前記収納室3の奥行き方向の寸法に対応して形成されており、本実施例では、当該奥行き方向の寸法は、上記蓄冷剤26を2つ折りにした状態の長手方向の寸法と、当該長手方向と直交する方向の寸法の和と略等しい寸法とされている。
【0036】
これら第1の支持枠31と第2の支持枠41は、所定間隔を存して交互に配置され、各下辺33、43は、当該支持枠31、41の並列方向(正面から向かって左右方向)に延在する複数の下辺連結線材51・・により連結される。尚、本実施例では、後辺側に配置される2本の下辺連結線材51、51との間隔よりも前辺側に配置される2本の下辺連結線材51、51との間隔が狭くなるように配置されている。尚、当該下辺連結線材51の数は、これに限定されない。
【0037】
そして、所定間隔を存して交互に配置された第1の支持枠31と第2の支持枠41の各後辺35、45は、支持枠31、41の並列方向(正面から向かって左右方向)に延在する複数の後辺連結線材52、52により連結される。
【0038】
尚、支持枠31、41及び連結線材51、52は、いずれも金属製のワイヤーにポリエチレンコーティングを施すことにより構成された線材により構成されており、例えば、支持枠31、41に各連結線材51、52を溶接により連結した後、全体にポリエチレンコーティングを施して構成する。
【0039】
本実施例では、第1の支持枠31を4本、第2の支持枠41を4本をそれぞれ交互に配置され、各支持枠31、41間の間隔は、上記蓄冷剤26の厚さ寸法(この場合、2つ折りなので、蓄冷部材27の厚さ寸法と同様)の少なくとも2倍とする。
【0040】
また、このとき、当該蓄冷剤凍結用ラック30を第1及び第2の支持枠31、41が前後に延在した状態で、前記収納室3内に載置した際、当該蓄冷剤凍結用ラック30の左右寸法は、収納室3の左右の幅寸法よりも所定寸法だけ小さく構成されているものとする。そのため、蓄冷剤凍結用ラック30が収納室3の網棚25上に載置された状態で、蓄冷剤凍結用ラック30の両側に位置する支持枠31、41と、収納室3の内壁9、若しくは、仕切板8の内面(収納室3側の面)との間には、蓄冷剤26の厚さ寸法より大きい間隔が形成される。
【0041】
また、第1の支持枠31の一辺、本実施例では前辺34は、略中央部が内方(この場合後辺35側)に向けて凹陥した(略コ字状に折曲形成された)凹陥部36が形成されている(凹陥形状を呈している)。本実施例では、当該凹陥部36は、前辺34から当該支持枠31の略中央付近にまで後退した位置まで延在して形成されている。そして、この上辺32と下辺33間には、当該凹陥部36を回避した位置、本実施例では、凹陥部36と後辺35との間に位置して上下に延在する補助辺37が設けられている。
【0042】
また、当該第1の支持枠31と隣接して配置される第2の支持枠41の一辺、本実施例では、前辺44には、上記第1の支持枠31に形成された凹陥部36と同様に内方(この場合後辺45側)に向けて凹陥した(略コ字状に折曲形成された)凹陥部46が形成されている(凹陥形状を呈している)。
【0043】
このとき、当該第2の支持枠41の凹陥部46は、各支持枠31、41が並列する方向における投影面上、第1の支持枠31に形成される凹陥部36と同一の位置、及び同一の大きさとなるように形成されている。これにより、各支持枠31、41は、並列する方向で略同一と位置に各凹陥部36、46が形成されることとなる。
【0044】
また、当該第2の支持枠41も、この上辺42と下辺43間には、当該凹陥部46を回避した位置、本実施例では、凹陥部46と後辺45との間に位置して上下に延在する補助辺47が設けられている。
【0045】
以上の構成により、図7乃至図9を参照して蓄冷剤凍結用ラック30への各蓄冷剤26の保持方法について説明する。尚、当該蓄冷剤凍結用ラック30は、凍結庫Rから取り出した状態で蓄冷剤26を収納保持させても良いが、各支持枠31、41の前辺34、44が扉側(前面開口側)とされた状態で、収納室3の網棚25上に載置した状態で行っても良い。
【0046】
先ずはじめに、本実施例における蓄冷剤26をこの場合、中央に位置する連結部29(当該連結部29が折曲部となる)を中心として2つ折りに折りたたみ、当該連結部29(折曲部)を上とした状態で、第1の支持枠31の上辺32や、第2の支持枠41の上辺42に掛ける(掛架する)。本実施例では、より多くの蓄冷剤26を保持させるべく、各支持枠31、41に掛架される蓄冷剤26は、その後端が支持枠の後辺35、45付近にまで位置するように掛ける。
【0047】
このとき、上述したように、各支持枠31、41の前辺34、44には、内方に向けて凹陥した凹陥部36、46が形成されている。そのため、蓄冷剤26を奥行き方向に移動させる際に、支障なく各支持枠31、41間に手指を挿入でき、取出作業において係る支持枠31、41の前辺34、44が邪魔とならない。
【0048】
また、第1の支持枠31と、第2の支持枠41とは、高さ寸法が異なるが、当該凹陥部36、46が形成されている位置は、並列する方向における投影面上、同一の位置とされている。従って、各支持枠31、41の間隔が手指を挿入するには狭い場合であっても、隣接する支持枠31、41の前辺34、44が邪魔とならず、支障なく手指を挿入して奥側に保持された蓄冷剤26の納出作業を行うことができる。
【0049】
特に、本実施例では、各支持枠31、41に折曲部(連結部29)が上となるように各支持枠の上辺32、42の奥側に掛架された状態の蓄冷剤26の前端よりも後方(内方)にまで延在して凹陥部36、46が形成されている。そのため、支持枠31、41に掛架された状態の蓄冷剤26を取り出す際には、各凹陥部36、46内に手指を挿入し、当該支持枠の一側と他側に分かれて配置されている当該蓄冷剤26の前端を把持し手前側に引き出すことによって、容易に当該蓄冷剤26を取り出すことができる。この際、蓄冷剤26の前端は、各支持枠31、41の凹陥部36、46より後方には、移動しないため、前辺34、44が邪魔とならず、円滑な納出作業を実現することが可能となる。
【0050】
また、本実施例では、支持枠31、41の凹陥部36、46回避した位置に補強辺37、47が設けられているため、比較的重量のある蓄冷剤26を支持枠31、41に掛架しても、支持枠の当該掛架された上辺32、42の強度を向上させることができ、安定した蓄冷剤26の保持が可能となる。
【0051】
図7に示すように、蓄冷剤26を第1の支持枠31、第2の支持枠41のそれぞれに掛架していくことにより、第1の支持枠31に4つの蓄冷剤26が、第2の支持枠41に4つの蓄冷剤26がそれぞれ交互に掛けられ、全部で8つの蓄冷剤26が支持枠31、41に保持されることとなる。
【0052】
各支持枠31、41は、折曲部となる連結部29を上とした状態でそれぞれの支持枠31、41の上辺32、42に掛けられることで、本実施例では、折り返されることにより一側に位置する蓄冷部材27と、他側に位置する蓄冷部材27との間に冷気の流通を許容する隙間が形成され、蓄冷剤内側の凍結効率の向上を図ることができる。
【0053】
本実施例では、この状態において、第1の支持枠31は、第2の支持枠41より高さ寸法が低く、且つ、これら第1及び第2の支持枠31、41が所定の間隔を存して交互に配置されている。そのため、第1の支持枠31と第2の支持枠41とに掛けられる蓄冷剤26も、図8に示されるように、これら蓄冷剤26の上端部同士に高低差が形成される。そのため、これら蓄冷剤26の上端部同士が同一の高さに掛架される場合に比べて、第2の支持枠41に掛けられる蓄冷剤26と隣接する第2の支持枠41に掛けられる蓄冷剤26との間の上部に大きな間隔が形成されることとなり、各支持枠31、41上方を流通する冷気は、その下側に配置される第1の支持枠31に掛架される蓄冷剤26に降下し易くなる。同様に、各支持枠31、41の下部においては、第1の支持枠31に掛けられる蓄冷剤26と隣接する第1の支持枠31に掛けられる蓄冷剤26との間の下部に大きな間隔が形成されることとなり、各支持枠31、41下方から上昇する冷気は、その上側に配置される第2の支持枠41に掛架される蓄冷剤26に向けて上昇し易くなる。
【0054】
これにより、凍結によってそれ自体が膨張し、厚さ寸法が増加しても、同一の支持枠31、41間に配置される蓄冷剤26同士の隙間に形成される冷気通路への冷気の流通を促進させることが可能となり、各支持枠31、41に掛けられる蓄冷剤26に収納室3内を循環する冷気を行き渡らせ易くできる。そのため、一度に多くの蓄冷剤26を凍結する場合において、効率的な凍結を実現することができる。
【0055】
特に、本実施例において蓄冷剤26は、上述したように、並列された4つの蓄冷部材27をそれぞれ可撓性を有する連結部29・・によって相互に連結し、中央に位置する連結部29を折曲部として2つ折りとし、当該折曲部を上として各支持枠31、41に掛けられる。そのため、各支持枠の一側に連結部29によって連結された2つの蓄冷部材27が配置されると共に、当該支持枠の他側に連結部29によって連結された2つの蓄冷部材27が配置される。
【0056】
上述したように、本実施例では、第1の支持枠31と第2の支持枠41との高低差は、係る蓄冷部材27の上下寸法の略半分とされている。そのため、各支持枠31、41に掛架され、同一の支持枠31、41間に配置されることとなる蓄冷部材27は、各蓄冷部材27の上下寸法の略半分の高低差で隣接することとなる。
【0057】
これにより、各蓄冷部材27、27が凍結により膨張しても、その膨張率の高い位置をずらして配置でき、隣接して各支持枠31、41に掛架される蓄冷剤26間に冷気流通を可能とする隙間を確保することができる。
【0058】
特に、支持枠の一側に配置される2つの蓄冷部材27、27は、当該蓄冷部材27よりも薄肉に形成される連結部29によって連結されているため、当該連結部29の高さ位置も、蓄冷剤27の上下寸法の略半分の高低差で隣接することとなる。従って、当該薄肉の連結部29によって形成される冷気通路を隣接する蓄冷剤26同士で上下にずれた高さ位置とすることができ、これによっても、隣接する蓄冷剤26間の冷気流通の隙間を効果的に確保することができる。
【0059】
尚、支持枠31、41への掛架によって蓄冷剤26を保持する使用態様のみとする場合には、このように各蓄冷剤26が上下の高さ位置がずれた位置に配置されるため、各支持枠31、41間の寸法は、蓄冷部材27の厚さ寸法の2倍よりも小さい寸法としても良い。
【0060】
また、上述したように、当該蓄冷剤凍結用ラック30は、収納室3の網棚25上に各支持枠31、41が前後に延在した状態となるように、載置されて収納室3内に収納された状態で、当該ラック30の両側と収納室3の内壁9との間には、蓄冷剤26(蓄冷部材27)の厚さ寸法よりも大きい間隔が構成されている。即ち、図2に示すように蓄冷剤凍結用ラック30の一側を構成する第1の支持枠31と内壁9との間隔、及び、蓄冷剤凍結用ラック30の他側を構成する第2の支持枠41と仕切板8の収納室3側の面との間隔は、蓄冷部材27の厚さ寸法よりも大きい間隔が形成されている。
【0061】
これにより、蓄冷剤凍結用ラック30の収納室3の内壁9側及び仕切板8側に位置する各支持枠31、41にも支障なく折りたたんだ状態の蓄冷剤26を前後方向に掛架させることができる。そして、当該蓄冷剤26が掛架された状態で、当該蓄冷剤26と収納室3内壁9又は仕切板8との間に冷気流通用の隙間を形成することができる。これにより、収納室3全体における冷気循環を確保でき、蓄冷剤26の凍結効率の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施例では、上述したように、蓄冷剤凍結用ラック30は、各支持枠31、41の前後方向(奥行き方向)の寸法は、蓄冷剤26を2つ折りにした状態の長手方向の寸法(折曲部を上とした場合の前後方向の寸法)と、当該長手方向と直交する方向の寸法(折曲部を略垂直とした場合の前後方向の寸法)の和と略等しい寸法とされている。また、各支持枠31と41との間の間隔は、蓄冷剤26の厚さ寸法の少なくとも2倍、即ち、少なくとも2つ折りとした蓄冷剤26の厚さ寸法とされている。
【0063】
そのため、各支持枠31、41に掛架される蓄冷剤26を略きっちり後方に配置し、その手前側に位置する各支持枠31と、41との隙間に、2つ折りとした蓄冷剤26の折曲部(連結部29)を略垂直とした状態で差し込み、当該支持枠31、41間に保持させることができる。本実施例では、第1の支持枠31と第2の支持枠41は、合わせて8つ設けられているため、折りたたんだ状態の蓄冷剤26を当該隙間に合計7つ収納することができる。
【0064】
これにより、当該蓄冷剤凍結用ラック30が収納される収納室3などによって前後幅に制約がある場合、支持枠31、41の奥側に、折りたたんだ状態の蓄冷剤26の折曲部を上として各支持枠31、41に掛架し、これら支持枠31、41の手前側には、折りたたんだ状態の蓄冷剤26を長手方向を上下に延在させて各支持枠31、41の間隔内に差し込むことができる。
【0065】
これにより、限られた収納スペースであっても、効率的に蓄冷剤26を各支持枠31、41に保持させることができ、より多くの蓄冷剤26を一度に凍結可能とすることができる。
【0066】
尚、本実施例では、蓄冷剤凍結用ラック30を構成する各支持枠31、41の前辺34、44に内方に凹陥した凹陥部36、46を形成し、収納室3内に各支持枠31、41が前後に延在するように配置し、扉側(前面開口5側)から離間した奥側に支持枠31、41に折りたたみ、その折曲部(連結部29)を上とした状態で蓄冷剤26を掛架させ、その手前側、即ち扉側に折りたたんだ状態の蓄冷剤を各支持枠31、41間の隙間に差し込んで保持させているが、本願発明は、これに限定されるものではなく、各支持枠31、41を同一形状にて形成してもよく、また、矩形状の容器等に収容された蓄冷剤など折りたたまない状態で、各支持枠31、41間の隙間に差し込んで保持させるものであっても良いものとする。
【0067】
これにより、各支持枠31、41間の隙間に保持された蓄冷剤を取り出す際に、上述したように、各凹陥部36、46内に手指を挿入し、各支持枠31、41間に差し込まれて保持される当該蓄冷剤26の前端を把持し手前側に引き出すことによって、容易に当該蓄冷剤26を取り出すことができる。この際、前辺34、44が邪魔とならず、円滑な納出作業を実現することが可能となる。
【0068】
また、係る実施例では、前面に開口する急速冷凍庫Rの収納室3内に蓄冷剤凍結用ラック30を各支持枠31、41が前後方向に延在するように収納しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上面に開口する平型の所謂ストッカーの収納室内に蓄冷剤凍結用ラック30を各支持枠31、41が上下方向に延在するように収納し、上記凹陥部36、46を開口する側、即ち上辺に形成してもよい。これによっても、支持枠31、41間に保持された蓄冷剤を容易に納出することが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
R 急速凍結庫(蓄冷剤凍結庫)
2 断熱箱体
3 収納室(庫内)
5 前面開口
6 内壁(一側)
7 冷却室
8 仕切板
9 内壁(他側)
10 冷却装置
12 冷却器
13、14 送風機
15 パネル
16 機械室
25 網棚
26 蓄冷剤
27 蓄冷部材
29 連結部
30 蓄冷剤凍結用ラック
31 第1の支持枠
32、42 上辺
33、43 下辺
34、44 前辺
35、45 後辺
36、46 凹陥部
37、47 補助辺
41 第2の支持枠
51 下辺連結線材
52 後辺連結線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄冷剤を保持するための蓄冷剤凍結用ラックにおいて、
相互に所定の間隔を存して配置された複数の支持枠を備え、
該支持枠の一辺は、内方に向けて凹陥した形状を呈していることを特徴とする蓄冷剤凍結用ラック。
【請求項2】
前記一辺の凹陥部分は、前記支持枠が並列する方向で略同一の位置とすることを特徴とする請求項1に記載の蓄冷材凍結用ラック。
【請求項3】
前記支持枠の凹陥した形状の前記一辺を回避した位置に補強辺を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄冷剤凍結用ラック。
【請求項4】
前記各支持枠間の間隔は、前記蓄冷剤の厚さ寸法の少なくとも2倍とされていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の蓄冷剤凍結用ラック。
【請求項5】
前記支持枠は、上辺と前後辺を有し、当該前辺が内方に凹陥した形状を呈すると共に、
前記上辺には、折りたたみ可能な前記蓄冷剤を折りたたみ、その折曲部を上とした状態で掛架可能とされていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の蓄冷剤凍結用ラック。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄冷剤凍結用ラックを収納可能な収納室を備え、該収納室を冷却装置により冷却することにより、前記蓄冷剤を凍結させる蓄冷剤凍結庫であって、
前記収納室は、前面開口を扉により開閉自在に閉塞され、前記蓄冷剤凍結用ラックの支持枠の、前辺が前記扉側とされた状態で、当該蓄冷剤凍結用ラックを収納可能とされており、その状態で前記蓄冷剤凍結用ラックとその両側の収納室内壁との間には、前記蓄冷剤の厚さ寸法より大きい間隔がそれぞれ構成されることを特徴とする蓄冷剤凍結庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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