説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】周囲の温度が使用環境温度範囲よりも高温になった際の蓄冷材容器の破裂を防止しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータは、上下方向にのびる複数の冷媒流通管と、上下方向にのびるとともに内部に蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器16とを備えている。蓄冷材容器16に、内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口23を設け、流出口23を、流出口23内の全体に充填された閉鎖部材24により閉鎖する。閉鎖部材24は、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料、たとえばホットメルト系接着剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、上下方向に間隔をおいて配置された1対のタンクと、両タンク間に、幅方向を通風方向に向けるとともにタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両タンクに通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管と、上下方向にのびるとともに冷媒流通管に熱的に接触させられた複数の蓄冷材容器とを備えており、各蓄冷材容器が、1つの密閉された空間を有するとともに、当該空間内に潜熱蓄冷材が封入されており、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に蓄えられ、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器が熱的に接触させられた冷媒流通管を通って通風間隙に配置されたフィンに伝えられ、フィンから当該通風間隙を流れる空気に放冷されるようになっている。
【0008】
ところで、この種の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器内に封入される蓄冷材としては、融点が5〜10℃に調整されたパラフィン系の潜熱蓄熱材を用いるのが一般的である。たとえば特許文献1に記載された蓄冷機能付きエバポレータにおいても、蓄冷材容器内に封入される蓄冷材としては、融点が6℃であるテトラデカンが用いられている。
【0009】
また、蓄冷材容器の強度は、通常の使用環境温度範囲、たとえば−40〜90℃の範囲内においては、液相状態の蓄冷材が密度変化するとともに、蓄冷材容器内に残存している空気が熱膨張することにより内圧が上昇したとしても、破損しないような強度に設計されている。しかしながら、車両火災などにより周囲の温度が通常の使用環境温度範囲よりも高温になると、液相状態の蓄冷材の密度変化、および蓄冷材容器内に残存している空気の熱膨張が著しくなり、内圧が異常に上昇して蓄冷材容器が破裂するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4043776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、周囲の温度が通常の使用環境温度範囲よりも高温になった際の蓄冷材容器の破裂を防止しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)上下方向にのびる複数の冷媒流通管と、上下方向にのびるとともに内部に蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを備えており、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
蓄冷材容器に、内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口が設けられ、流出口が、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料を利用して閉鎖されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
2)蓄冷材容器の流出口が、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ流出口内の全体に充填された閉鎖部材によって閉鎖されている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
3)蓄冷材容器の流出口が、流出口内に嵌め入れられた栓部材と、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ栓部材と流出口の内周面との間に介在させられた密封材とによって閉鎖されている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
4)蓄冷材容器の流出口が、ゴム状弾性を有する耐熱材料からなり、かつ蓄冷材容器外方を向いた端面から他端面に向かってのびる穴を有するとともに流出口内に嵌め入れられた栓部材と、使用環境温度範囲において固化しているとともに使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ栓部材の穴内に充填された密封材とによって閉鎖されている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
5)栓部材の最高使用温度が200℃以上である上記3)または4)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
6)使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料が、ホットメルト接着剤からなる上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0019】
7)蓄冷材容器の流出口が下方を向いている上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0020】
上記1)〜7)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器に、内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口が設けられ、流出口が、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料を利用して閉鎖されているので、たとえば車両火災などにより通常の使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上の温度にさらされた場合には、前記熱可塑性材料が流動して流出口が開放される。したがって、蓄冷材容器内の蓄冷材および残存空気が流出口から流出して内圧が低減され、蓄冷材容器の破裂が防止される。
【0021】
上記7)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器の流出口が下方を向いているので、たとえば車両火災などにより通常の使用環境温度範囲よりも高温にさらされることにより前記熱可塑性材料が流動して流出口が開放された場合、蓄冷材容器内の蓄冷材が速やかに流出口から流出する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器の一部分を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3のB−B線拡大断面図である。
【図5】蓄冷材容器の流出口を閉鎖する方法を示す図3に相当する斜視図である。
【図6】蓄冷材容器の流出口を閉鎖する方法を示す図4に相当する断面図である。
【図7】蓄冷材容器の流出口および流出口を閉鎖する手段の変形例を示す図4相当の図である。
【図8】蓄冷材容器の流出口および流出口を閉鎖する手段の他の変形例を示す図4相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
以下の説明において、通風方向下流側(図1および図2に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。また、前方から後方を見た際の左右、すなわち図1の左右を左右というものとする。
【0025】
さらに、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図4はその要部の構成を示す。
【0027】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0028】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(5)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(6)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(9)に一体化された第2中間ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(9)内と第2中間ヘッダ部(11)内とは、両中間ヘッダ部(9)(11)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(12)を介して通じさせられている。
【0029】
図1および図2に示すように、熱交換コア部(4)には、上下方向にのびるとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(13)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(13)からなる複数の組(14)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(13)よりなる組(14)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(15)が形成されている。前側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒入口ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は第1中間ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒出口ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は第2中間ヘッダ部(11)に接続されている。
【0030】
熱交換コア部(4)における全通風間隙(15)のうち一部の複数の通風間隙(15)でかつ隣接していない通風間隙(15)において、蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製蓄冷材容器(16)が、前後両冷媒流通管(13)に跨るように配置されている。また、残りの通風間隙(15)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるコルゲート状のアウターフィン(17)が、前後両冷媒流通管(13)に跨るように配置されて通風間隙(15)を形成する左右両側の組(14)を構成する前後両冷媒流通管(13)にろう付されている。すなわち、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両側の通風間隙(15)にそれぞれアウターフィン(17)が配置されている。また、左右両端の冷媒流通管(13)の組(14)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(17)が配置されて前後両冷媒流通管(13)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(17)の外側にアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてアウターフィン(17)にろう付されている。
【0031】
蓄冷材容器(16)は幅方向を前後方向に向けた扁平状であり、前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後2つの冷媒流通管(13)にろう付された容器本体部(21)と、容器本体部(21)の前側縁部(風下側縁部)に連なるとともに前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(22)とを備えている。蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右方向の寸法は全体に等しくなっている。蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)は、上下方向の寸法が容器本体部(21)の上下方向の寸法と等しく、かつ左右方向の寸法が容器本体部(21)の左右方向の寸法よりも大きくなっており、容器本体部(21)に対して左右方向外方に膨出している。外方張り出し部(22)の左右方向の寸法は、冷媒流通管(13)の左右方向の寸法である管高さの2倍に、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右方向の寸法を加えた高さと等しくなっている。蓄冷材容器(16)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。蓄冷材は、蓄冷材容器(16)の上端近傍まで存在するように蓄冷材容器(16)内に封入されている。なお、蓄冷材容器(16)の強度は、通常の使用環境温度範囲、たとえば−40〜90℃の範囲内においては、液相状態の蓄冷材が密度変化するとともに、蓄冷材容器(16)内に残存している空気が熱膨張することにより内圧が上昇したとしても、破損しないような強度に設計されている。
【0032】
図3および図4に示すように、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の下端に、下方を向きかつ内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口(23)が設けられており、流出口(23)が閉鎖部材(24)により閉鎖されている。
【0033】
流出口(23)は、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の下端に貫通穴(25)が形成されるとともに、貫通穴(25)内に筒状のアルミニウム製口形成部材(26)が嵌め入れられてろう付などによって固定されることにより設けられている。外方張り出し部(22)の下壁部分における貫通穴(25)の周囲には、下方突出状の筒状フランジ部(27)が一体に形成されている。口形成部材(26)は、円筒部(28)と、円筒部(28)の下側に、下方に向かって大径となったテーパ部(31)を介して一体に形成されかつ蓄冷材容器(16)の外側に突出した圧潰部(29)とよりなる。円筒部(28)は、下端が筒状フランジ部(27)の下端とほぼ同一高さ位置あるとともに、上端部が外方張り出し部(22)内に突出するように筒状フランジ(27)内に通され、この状態で筒状フランジ部(27)にろう付されている。圧潰部(29)は、テーパ部(31)の下端大径部と同一径を有する大径円筒部(29A)(図5および図6参照)が左右両側から押し潰されて形成されたものである。
【0034】
閉鎖部材(24)は、通常の使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上になった際に流動性になる材料からなる。使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる熱可塑性材料を用いることができる。この種の熱可塑性材料としては、たとえばオレフィン系樹脂を主成分としたホットメルト接着剤、より具体的にはセメダイン社製のセメダインHMシリーズを挙げることができる。また、使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に溶融または軟化変形する低融点合金、たとえばSn:40質量%、Bi:56質量%およびZn:4質量%よりなり、溶融点が130℃である低融点合金を用いることができる。
【0035】
ここで、閉鎖部材(24)により流出口(23)を閉鎖する方法について、図5および図6を参照して説明する。
【0036】
予め、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)に貫通穴(25)および筒状フランジ部(27)を設けておくとともに、貫通穴(25)および筒状フランジ部(27)内に口形成部材(26)の円筒部(28)を嵌め入れてろう付することにより、流出口(23)を設けておく。この状態では、口形成部材(26)のテーパ部(31)の下端に連なって、押し潰される前の大径円筒部(29A)が一体に設けられている。
【0037】
ついで、閉鎖部材(24)を形成するホットメルト系接着剤(24A)を加熱して流動性を持たせ、流出口(23)の口形成部材(26)内に充填する(図5および図6参照)。
【0038】
ついで、口形成部材(26)の大径円筒部(29A)を左右両側から圧潰して圧潰部(29)をつくった後、ホットメルト系接着剤(24A)を冷却固化させて閉鎖部材(24)とする。こうして、流出口(23)がを閉鎖部材(24)により閉鎖される。
【0039】
なお、閉鎖部材(24)が上述したような低融点合金からなる場合にも、ホットメルト系接着剤(24A)の場合と同様にして、流出口(23)が閉鎖される。
【0040】
蓄冷材容器(16)内には、容器本体部(21)の後端部から外方張り出し部(22)の前端部に至るアルミニウム製インナーフィン(36)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(36)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。インナーフィン(36)のフィン高さは全体に等しく、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)の左右両側壁内面にろう付されている。
【0041】
蓄冷材容器(16)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されて容器本体部(21)および外方張り出し部(22)を形成する膨出部(21a)(22a)が形成され、かつ周縁部どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板(37)よりなる。流出口(23)の貫通穴(25)および筒状フランジ部(27)は、2枚のアルミニウム板(37)に跨って設けられている。そして、2枚のアルミニウム板(37)を、インナーフィン(36)を間に挟んで膨出部(21a)(22a)の開口どうしが対向するように組み合わせ、この状態で両アルミニウム板(37)の周縁部どうしおよび両アルミニウム板(37)とインナーフィン(36)とをろう付することによって蓄冷材容器(16)が形成されている。
【0042】
アウターフィン(17)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。アウターフィン(17)は、前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後の冷媒流通管(13)にろう付されたフィン本体部(38)と、フィン本体部(38)の前側縁に連なるとともに後側冷媒流通管(13)の前側縁よりも前方に張り出すように設けられた外方張り出し部(39)とを備えている。そして、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)に配置されたアウターフィン(17)の外方張り出し部(39)が、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の左右両側面にろう付されている。また、隣接するアウターフィン(17)の外方張り出し部(39)間にはアルミニウム製スペーサ(41)が配置されており、外方張り出し部(39)にろう付されている。
【0043】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の冷媒入口ヘッダ部(5)内に入り、前側の全冷媒流通管(13)を通って第1中間ヘッダ部(9)内に流入する。第1中間ヘッダ部(9)内に入った冷媒は、連通部材(12)を通って第2中間ヘッダ部(11)内に入った後、後側の全冷媒流通管(13)を通って出口ヘッダ部(6)内に流入し、冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(13)内を流れる間に、通風間隙(15)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0044】
このとき、冷媒流通管(13)内を流れる冷媒の有する冷熱によって蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)内の蓄冷材が冷却され、さらに容器本体部(21)内の冷却された蓄冷材の有する冷熱がインナーフィン(36)を介して蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)内の蓄冷材に伝えられるとともに、通風間隙(15)を通って冷媒により冷やされた空気の有する冷熱が外方張り出し部(22)内の蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材容器(16)内全体の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0045】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(16)の容器本体部(21)および外方張り出し部(22)内の蓄冷材の有する冷熱が、インナーフィン(36)を介して容器本体部(21)および外方張り出し部(22)の左右両側壁に伝えられる。容器本体部(21)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、冷媒流通管(13)を通過し、当該冷媒流通管(13)にろう付されているアウターフィン(17)のフィン本体部(38)を介して蓄冷材容器(16)が配置されている通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)を通過する空気に伝えられる。外方張り出し部(22)の左右両側壁に伝えられた冷熱は、外方張り出し部(22)の左右両側面にろう付されたアウターフィン(17)の外方張り出し部(39)を介して通風間隙(15)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0046】
たとえば車両火災などによって、周囲の温度が通常の使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上の温度になると、液相状態の蓄冷材の密度変化および蓄冷材容器(16)内に残存している空気の熱膨張が顕著になって、蓄冷材容器(16)の内圧が異常に上昇しようとする。しかしながら、100℃以上の温度になると、閉鎖部材(24)が流動性を有する状態となるので、流動状態となった閉鎖部材(24)が蓄冷材容器(16)の内圧により下方に押し出されて流出口(23)が開放され、蓄冷材容器(16)内の蓄冷材および残存空気が流出口(23)から流出して内圧が低減され、蓄冷材容器(16)の破裂が防止される。
【0047】
図7および図8は蓄冷材容器(16)に設けられかつ内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口および流出口を閉鎖する手段の変形例を示す。
【0048】
図7において、蓄冷材容器(16)の流出口(50)は、外方張り出し部(22)の下端に形成された貫通穴(25)内に段付き円筒状のアルミニウム製口形成部材(51)が嵌め入れられてろう付などによって固定されることにより設けられている。口形成部材(51)は、小径部(52)と、小径部(52)の下側に下方に向かって大径となったテーパ部(54)を介して一体に形成されかつ蓄冷材容器(16)の外側に突出した大径部(53)とよりなる。小径部(52)は、下端が筒状フランジ部(27)の下端とほぼ同一高さ位置あるとともに、上端部が外方張り出し部(22)内に突出するように筒状フランジ(27)内に通され、この状態で筒状フランジ部(27)にろう付されている。
【0049】
流出口(50)は、ゴム状弾性を有する耐熱材料からなり、かつ流出口(23)内に嵌め入れられた栓部材(55)と、通常の使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上になった際に流動性になる材料からなり、かつ流出口(50)の内周面、ここでは口形成部材(51)の内周面と栓部材(55)の外周面との間に介在させられて固化した密封材(56)とによって閉鎖されている。栓部材(55)は、熱硬化性エラストマや、熱可塑性エラストマのうちの最高使用温度が200℃以上である材料、たとえばフッ素ゴム、シリコーンゴムなどにより形成されていることが好ましい。なお、栓部材(55)としては、最高使用温度が200℃以上である他の耐熱性を有する材料からなるものを用いてもよい。密封材(56)を構成する使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる熱可塑性材料を用いることができる。この種の熱可塑性材料としては、たとえばオレフィン系樹脂を主成分としたホットメルト接着剤、より具体的にはセメダイン社製のセメダインHMシリーズを挙げることができる。また、密封材(56)を構成する使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に溶融または軟化変形する低融点合金、たとえばSn:40質量%、Bi:56質量%およびZn:4質量%よりなり、溶融点が130℃である低融点合金を用いることができる。
【0050】
図8において、蓄冷材容器(16)の流出口(50)は、ゴム状弾性を有する耐熱材料からなり、かつ上下方向にのびる円筒状の貫通穴(61)が形成されるとともに流出口(23)内に嵌め入れられた栓部材(60)と、通常の使用環境温度範囲よりも高温、たとえば100℃以上になった際に流動性になる材料からなり、かつ栓部材(60)の貫通穴(61)内に充填されて固化した密封材(62)とによって閉鎖されている。栓部材(60)の外周面は、流出口(50)の内周面、ここでは口形成部材(51)の内周面に密着している。栓部材(55)は、熱硬化性エラストマや、熱可塑性エラストマのうちの最高使用温度が200℃以上である材料、たとえばフッ素ゴム、シリコーンゴムなどにより形成されていることが好ましい。密封材(62)を構成する使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる熱可塑性材料を用いることができる。この種の熱可塑性材料としては、たとえばオレフィン系樹脂を主成分としたホットメルト接着剤、より具体的にはセメダイン社製のセメダインHMシリーズを挙げることができる。また、密封材(62)を構成する使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料としては、使用環境温度範囲よりも高温になった際に溶融または軟化変形する低融点合金、たとえばSn:40質量%、Bi:56質量%およびZn:4質量%よりなり、溶融点が130℃である低融点合金を用いることができる。
【0051】
なお、図8においては、密封材(62)は、栓部材(60)を流出口(23)の内周面側に押し付けて栓部材(60)につぶし代を付与していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0053】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(13):冷媒流通管
(16):蓄冷材容器
(23)(50):流出口
(24):閉鎖部材
(25):貫通穴
(26)(51):口形成部材
(55)(60):栓部材
(56)(62):密封材
(61):貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向にのびる複数の冷媒流通管と、上下方向にのびるとともに内部に蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを備えており、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
蓄冷材容器に、内圧の異常上昇時に蓄冷材を流出させる流出口が設けられ、流出口が、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料を利用して閉鎖されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
蓄冷材容器の流出口が、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ流出口内の全体に充填された閉鎖部材によって閉鎖されている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
蓄冷材容器の流出口が、流出口内に嵌め入れられた栓部材と、使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ栓部材と流出口の内周面との間に介在させられた密封材とによって閉鎖されている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
蓄冷材容器の流出口が、ゴム状弾性を有する耐熱材料からなり、かつ蓄冷材容器外方を向いた端面から他端面に向かってのびる穴を有するとともに流出口内に嵌め入れられた栓部材と、使用環境温度範囲において固化しているとともに使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料からなり、かつ栓部材の穴内に充填された密封材とによって閉鎖されている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
栓部材の最高使用温度が200℃以上である請求項3または4記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
使用環境温度範囲において固化しているとともに、使用環境温度範囲よりも高温になった際に流動性になる材料が、ホットメルト接着剤からなる請求項1〜5のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
蓄冷材容器の流出口が下方を向いている請求項1〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−218482(P2012−218482A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83389(P2011−83389)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】