説明

蓄冷熱交換器

【課題】エバポレータおよび蓄冷器のケース内への配置作業が簡単な蓄冷熱交換器を提供する。
【解決手段】蓄冷熱交換器1は、互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部8を有するエバポレータ2と、互いに間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管23を有する蓄冷器3とを、エバポレータ2が風上側に位置するように通風方向に並んで配置したものである。エバポレータ2の隣り合う冷媒流通管部8間に第1ブロック18を配置し、蓄冷器3における隣り合う蓄冷材封入管23間でかつ第1ブロック18と対応する位置に第2ブロック26を配置する。第1ブロック18にめねじ穴19を形成し、第2ブロック26にねじ挿通穴27を形成する。おねじ28をねじ挿通穴19に通してめねじ穴19にねじ嵌めることによりエバポレータ2と蓄冷器3とを連結一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0003】
ところで、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決したカーエアコンとして、圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器としてのコンデンサと、コンデンサを通過した冷媒を減圧する減圧器と、ケース内の通風路に配置され、かつ減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータと、エバポレータの通風方向下流側においてケース内の通風路に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えており、エバポレータが、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管部および隣り合う冷媒流通管部どうしの間に配置されたフィンを有し、蓄冷器が、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管部および隣り合う蓄冷材封入管部どうしの間に配置されたフィンを有しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載のカーエアコンによれば、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒がエバポレータに入り、エバポレータの冷媒流通管部を流れる間に、隣り合う冷媒流通管部どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、空気が冷却されるとともに冷媒は気相となって流出する。このとき、エバポレータを通過した冷却風の有する冷熱が蓄冷器のフィンを介して蓄冷材封入管部内に存在する蓄冷材に伝えられ、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。また、圧縮機が停止した場合には、蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷器のフィンを介してエバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のカーエアコンの場合、エバポレータと蓄冷器とを別々に取り扱わなければならず、エバポレータおよび蓄冷器のケース内への配置作業が面倒であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−337537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、エバポレータおよび蓄冷器のケース内への配置作業が簡単な蓄冷熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが、エバポレータが風上側に位置するように通風方向に並んで配置されており、エバポレータと蓄冷器とが連結手段により連結一体化されている蓄冷熱交換器。
【0011】
2)エバポレータにおける隣り合う冷媒流通管部間に第1ブロックが配置され、蓄冷器における隣り合う蓄冷材封入管部間でかつ第1ブロックと対応する位置に第2ブロックが配置され、第1ブロックおよび第2ブロックのうちのいずれか一方にめねじ穴が形成されるとともに同他方にねじ挿通穴が形成され、おねじがねじ挿通穴に通されてめねじ穴にねじ嵌められることによりエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0012】
3)エバポレータの第1ブロックおよび蓄冷器の第2ブロックがそれぞれ熱伝導材料により形成され、両ブロックが互いに接触させられている上記2)記載の蓄冷熱交換器。
【0013】
4)エバポレータの両端の冷媒流通管部の外側にフィンが配置されるとともに当該フィンの外側にサイドプレートが配置され、蓄冷器の両端の蓄冷材封入管部の外側にフィンが配置されるとともに当該フィンの外側にサイドプレートが配置され、エバポレータのサイドプレートにおける蓄冷器側の縁部および蓄冷器のサイドプレートにおけるエバポレータ側の縁部に、それぞれ外側に突出した外方突出壁が設けられ、両サイドプレートの外方突出壁を貫通したボルトの先端にナットがねじ嵌められることによりエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0014】
5)サイドプレートおよび外方突出壁が、熱伝導材料により一体に形成されている上記4)記載の蓄冷熱交換器。
【0015】
6)エバポレータが、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク部を備えているとともに、両ヘッダタンク部間に、冷媒流通管部が両ヘッダタンク部と通じるように配置されており、蓄冷器が、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク部を備えているとともに、両ヘッダタンク部間に、蓄冷材封入管部が両ヘッダタンク部と通じるように配置されており、エバポレータの各ヘッダタンク部と蓄冷器の各ヘッダタンク部とが挟着部材により挟着されることによってエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている上記1)記載の蓄冷熱交換器。
【0016】
7)挟着部材が熱伝導材料により一体に形成されている上記6)記載の蓄冷熱交換器。
【0017】
8)エバポレータの隣り合う冷媒流通管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、蓄冷器の隣り合う蓄冷材封入管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、エバポレータのフィンと蓄冷器のフィンとが接触させられている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。
【発明の効果】
【0018】
上記1)〜8)の蓄冷熱交換器によれば、互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが、エバポレータが風上側に位置するように通風方向に並んで配置されており、エバポレータと蓄冷器とが連結手段により連結一体化されているので、エバポレータおよび蓄冷器を一体に取り扱うことができ、ケース内への配置作業が簡単になる。しかも、エバポレータと蓄冷器とが連結手段により連結一体化されているので、車両に搭載した際の振動に対する強度が増大する。
【0019】
上記2)の蓄冷熱交換器によれば、比較的簡単にエバポレータと蓄冷器とを連結一体化することができる。
【0020】
上記3)の蓄冷熱交換器によれば、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管部を流れる冷媒の有する冷熱は、両ブロックを通して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【0021】
上記4)の蓄冷熱交換器によれば、比較的簡単にエバポレータと蓄冷器とを連結一体化することができる。
【0022】
上記6)の蓄冷熱交換器によれば、比較的簡単にエバポレータと蓄冷器とを連結一体化することができる。
【0023】
上記7)の蓄冷熱交換器によれば、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータのタンク部を流れる冷媒の有する冷熱は、両挟着部材を通じて蓄冷器のタンク部内の蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【0024】
上記8)の蓄冷熱交換器によれば、エバポレータの隣り合う冷媒流通管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、蓄冷器の隣り合う蓄冷材封入管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、エバポレータのフィンと蓄冷器のフィンとが接触させられているので、エバポレータの冷媒流通管部内を流れる冷媒の有する冷熱を、両フィンを介して蓄冷器の蓄冷材封入管部内の蓄冷材に伝えることができる。したがって、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態1の蓄冷熱交換器を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の実施形態1の蓄冷熱交換器を示す右側面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】この発明の実施形態2の蓄冷熱交換器を示す図3相当の図である。
【図5】この発明の実施形態3の蓄冷熱交換器を示す分解斜視図である。
【図6】この発明の実施形態3の蓄冷熱交換器を示すサイドプレート部分の水平断面図である。
【図7】この発明の実施形態3の蓄冷熱交換器を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
以下の説明において、通風方向下流側(各図に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後といい、図1、図5および図7の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0028】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0029】
実施形態1
この実施形態は、図1〜図3に示すものである。
【0030】
図1および図2は実施形態1の蓄冷熱交換器がカーエアコンのケース内に配置された状態を示し、図3は蓄冷熱交換器の要部の構成を示す。
【0031】
図1〜図3において、蓄冷熱交換器(1)は、エバポレータ(2)と、蓄冷材(図示略)が封入され、かつエバポレータ(2)の前側(通風方向下流側)に配置された蓄冷器(3)とよりなり、ケース(C)内の通風路(P)に配置されている。なお、図示は省略したが、エバポレータ(2)は、車両のエンジンを駆動源とするコンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成する。
【0032】
エバポレータ(2)は積層型エバポレータと称されるものであって、上下方向に間隔をおいて設けられた1対の前ヘッダタンク部(4)(5)と、上下方向に間隔をおくとともに、両前ヘッダタンク部(4)(5)の後側に並んで設けられた1対の後ヘッダタンク部(6)(7)と、両前ヘッダタンク部(4)(5)間および両後ヘッダタンク部(6)(7)間にそれぞれ左右方向に間隔をおいて設けられ、かつ上下両端部が上下両ヘッダタンク部(4)(5)および(6)(7)に通じさせられた複数の冷媒流通管部(8)と、隣り合う冷媒流通管部(8)間および左右両端の冷媒流通管部(8)の外側に配置されたアルミニウム製コルゲート状アウターフィン(9)と、左右両端に配置されたアウターフィン(9)の外側に配置されてアウターフィン(9)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(11)とを備えている。上側の前ヘッダタンク部(4)の右端部に冷媒入口(12)が形成され、上側の後ヘッダタンク部(6)の右端部に冷媒出口(13)が形成されている。
【0033】
エバポレータ(2)のヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)および冷媒流通管部(8)は、左右方向に並んで配置された複数の扁平中空体(14)をろう付することにより形成されている。扁平中空体(14)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるプレート(15)の周縁部どうしをろう付することにより形成されたものであり、前後方向に間隔をおいて形成された上下方向にのびる2つの膨出状冷媒流通管部(8)と、各冷媒流通管部(8)の上下両端に連なって形成されかつ冷媒流通管部(8)よりも膨出高さの高い膨出状ヘッダタンク形成部(16)とを備えている。扁平中空体(14)の前後の冷媒流通管部(8)内に跨るように、アルミニウム製コルゲート状インナーフィン(17)が配置されており、両プレート(15)にろう付されている。
【0034】
そして、全扁平中空体(14)が、ヘッダタンク形成部(16)の外面どうしが当接するとともに、隣り合う扁平中空体(14)のヘッダタンク形成部(16)内どうしが通じるように積層されて相互にろう付することによって、ヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)および全冷媒流通管部(8)が形成されている。アウターフィン(9)は、前後の冷媒流通管部(8)に共有されるように、隣り合う扁平中空体(14)間に配置されて前後両冷媒流通管部(8)にろう付されている。なお、冷媒入口(12)から流入した冷媒が、全ヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)および全冷媒流通管部(8)を通って冷媒出口(13)から流出するように、ヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)は必要箇所において、図示しない仕切部材により左右方向に並んだ区画に仕切られている。
【0035】
エバポレータ(2)における左右方向に隣り合う扁平中空体(14)の冷媒流通管部(8)間の全間隙のうちの一部に、前後両冷媒流通管部(8)に跨るようにアルミニウム製の第1ブロック(18)が配置されて、前後両冷媒流通管部(8)にろう付されている。ここでは、右寄りの1つの間隙の上下両部分、および左寄りの1つの間隙の上下両部分に、それぞれ第1ブロック(18)が配置されている。なお、第1ブロック(18)が配置された箇所においては、アウターフィン(9)は切除されている。また、第1ブロック(18)の上下方向の長さを扁平中空体(14)の上下方向の冷媒流通管部(8)の長さと等しくしておき、第1ブロック(18)が配置された間隙においてはアウターフィン(9)が配置されない場合もある。第1ブロック(18)の左右方向の厚みは左右方向に隣り合う扁平中空体(14)の冷媒流通管部(8)間の間隔に等しく、前後方向の長さは扁平中空体(14)の前後方向の幅よりも若干長くなっている。そして、第1ブロック(18)の前端部は扁平中空体(14)の前側縁部よりも若干前方に突出している。各第1ブロック(18)には、その前端面から後方にのびるめねじ穴(19)が形成されている。
【0036】
蓄冷器(3)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびる1対のアルミニウム製ヘッダタンク(21)(22)と、両ヘッダタンク(21)(22)間に、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部が上下両ヘッダタンク(21)(22)に連通状に接続された複数のアルミニウム製扁平状蓄冷材封入管(23)(蓄冷材封入管部)と、隣り合う蓄冷材封入管(23)間および左右両端の蓄冷材封入管(23)の外側に配置されて蓄冷材封入管(23)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(24)と、左右両端のコルゲートフィン(24)の外側に配置されてコルゲートフィン(24)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(25)とからなる。蓄冷器(3)内へ封入される蓄冷材としては、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、蓄冷器(3)内への蓄冷材の封入量は、全蓄冷材封入管(23)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。ここで、蓄冷器(3)の蓄冷材封入管(23)の左右方向の寸法である管高さは、エバポレータの冷媒流通管部(8)の左右方向の寸法である管部高さよりも高くなっている。
【0037】
蓄冷器(3)における左右方向に隣り合う蓄冷材封入管(23)間の全間隙のうちの一部でかつ第1ブロック(18)と対応する位置に、それぞれアルミニウム製の第2ブロック(26)が配置されている。なお、第2ブロック(26)が配置された箇所においては、コルゲートフィン(24)は切除されている。また、第2ブロック(26)の上下方向の長さを扁平中空体(14)の冷媒流通管部(8)の長さと等しくしておき、第2ブロック(26)が配置された間隙においてはコルゲートフィン(24)が配置されない場合もある。第2ブロック(26)の左右方向の厚みは左右方向に隣り合う蓄冷材封入管(23)間の間隔に等しく、前後方向の長さは蓄冷材封入管(23)の前後方向の幅よりも若干長くなっている。そして、第2ブロック(26)の後端部は蓄冷材封入管(23)の後側縁部よりも若干後方に突出している。各第2ブロック(26)には、前後方向にのびるねじ挿通穴(27)が貫通状に形成されている。
【0038】
そして、各第2ブロック(26)の後端面が各第1ブロック(18)の前端面に接触した状態で、アルミニウム製のおねじ(28)が、各第2ブロック(26)のねじ挿通穴(27)に前方から通されるとともに第1ブロック(18)のめねじ穴(19)にねじ嵌められており、これによりエバポレータ(2)と蓄冷器(3)とが連結一体化されている。両ブロック(18)(26)およびおねじ(28)が、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とを連結一体化する連結手段を構成している。
【0039】
上述した蓄冷熱交換器(1)において、コンプレッサが作動している場合には、コンプレッサ、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(12)を通ってエバポレータ(2)の上側の前ヘッダタンク部(4)内に入り、全ヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)および全冷媒流通管部(8)を通って上側の後ヘッダタンク部(6)の冷媒出口(13)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管部(8)内を流れる間に、隣り合う冷媒流通管部(8)どうしの間の通風間隙を通過する空気(図1〜図3矢印X参照)と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0040】
このとき、エバポレータ(2)を通過した冷却風により蓄冷器(3)内に封入されて蓄冷材封入管(23)内に存在する蓄冷材が冷却されるとともに、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(8)内を流れる冷媒の有する冷熱が、第1ブロック(18)、第2ブロック(26)およびおねじ(28)を通して蓄冷器(3)内に封入されて蓄冷材封入管(23)内に存在する蓄冷材が冷却される。その結果、蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0041】
コンプレッサが停止した場合には、蓄冷器(3)内の蓄冷材の有する冷熱が、コルゲートフィン(24)を介してエバポレータ(2)および蓄冷器(3)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(2)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器(3)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0042】
実施形態2
この実施形態は図4に示すものである。
【0043】
実施形態2の蓄冷熱交換器(30)の場合、エバポレータ(2)のアウターフィン(9)の前側縁部が、扁平中空体(14)の前側縁部よりも前方に突出しているとともに、蓄冷器(3)のコルゲートフィン(24)の後側縁部が蓄冷材封入管(23)の後側縁部よりも後方に突出している。そして、エバポレータ(2)のアウターフィン(9)の前側縁部と、蓄冷器(3)のコルゲートフィン(24)の後側縁部とが接触している。
【0044】
この蓄冷熱交換器(30)によれば、エバポレータ(2)の冷媒流通管部(8)内を流れる冷媒の有する冷熱を、アウターフィン(9)およびコルゲートフィン(24)を介して蓄冷器(3)の蓄冷材封入管(23)内の蓄冷材に伝えることができる。したがって、蓄冷器(3)の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【0045】
実施形態3
この実施形態は図5および図6に示すものである。
【0046】
実施形態3の蓄冷熱交換器(35)の場合、エバポレータ(2)の各サイドプレート(11)の前側縁に、左右方向外方に突出した外方突出壁(36)が一体に形成されている。また、蓄冷器(3)の各サイドプレート(25)の後側縁に、左右方向外方に突出しかつエバポレータ(2)の外方突出壁(36)に面接触する外方突出壁(37)が一体に形成されている。エバポレータ(2)のサイドプレート(11)および蓄冷器(3)のサイドプレート(25)の外方突出壁(36)(37)にはそれぞれボルト挿通穴(38)(39)が貫通状に形成されている。そして、両外方突出壁(36)(37)のボルト挿通穴(38)(39)に前方からボルト(41)が通され、ボルト(41)の先端部にナット(42)がねじ嵌められることにより、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とが連結一体化されている。エバポレータ(2)および蓄冷器(3)のサイドプレート(11)(25)の外方突出壁(36)(37)、ボルト(41)およびナット(42)が、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とを連結一体化する連結手段を構成している。
【0047】
実施形態4
実施形態4の蓄冷熱交換器(45)の場合、エバポレータ(2)の上側の前後両ヘッダタンク部(4)(6)と蓄冷器(3)の上側のヘッダタンク(21)(ヘッダタンク部)、およびエバポレータ(2)の下側の前後両ヘッダタンク部(5)(7)と蓄冷器(3)の下側のヘッダタンク(22)(ヘッダタンク部)とが、それぞれアルミニウム製の上下挟着部材(46)(47)により挟着されることによってエバポレータ(2)と蓄冷器(3)とが連結一体化されている。
【0048】
上側挟着部材(46)は、平面から見て左右方向に長い長方形である水平板状のベース部(46a)と、ベース部(46a)の前後両側縁に下方突出状に一体に形成された挟着壁(46b)とよりなる。下側挟着部材(47)は、平面から見て左右方向に長い長方形である水平板状のベース部(47a)と、ベース部(47a)の前後両側縁に上方突出状に一体に形成された挟着壁(47b)とよりなる。下側挟着部材(47)のベース部(47a)には、エバポレータ(2)で発生した凝縮水を排水する複数の排水穴(48)が貫通状に形成されている。
【0049】
そして、エバポレータ(2)の上側の前後両ヘッダタンク部(4)(6)と蓄冷器(3)の上側のヘッダタンク(21)とが上側挟着部材(46)の両挟着壁(46b)間に強制嵌入されるとともに、エバポレータ(2)の下側の前後両ヘッダタンク部(5)(7)と蓄冷器(3)の下側のヘッダタンク(22)とが下側挟着部材(47)の両挟着壁(47b)間に強制嵌入されることにより、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とが連結一体化されている。両挟着部材(46)(47)が、エバポレータ(2)と蓄冷器(3)とを連結一体化する連結手段を構成している。
【0050】
この蓄冷熱交換器(45)によれば、エバポレータ(2)のヘッダタンク部(4)(5)(6)(7)内を流れる冷媒の有する冷熱を、両挟着部材(46)(47)を介して蓄冷器(3)のヘッダタンク(21)(22)内の蓄冷材に伝えることができる。したがって、蓄冷器(3)の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【0051】
上記すべての実施形態において、蓄冷器として、1対の皿状プレートを対向させて周縁部どうしをろう付してなる複数の扁平中空体が並列状に配置されてなり、互いに間隔をおいて配置されたヘッダタンク部と、両ヘッダタンク部間に、幅方向を前後方向に向けるとともにヘッダタンク部の長さ方向に間隔をおいて設けられ、かつ両端部がそれぞれ両ヘッダタンク部に通じさせられた複数の扁平状蓄冷材封入管部とを有するもの、すなわちヘッダタンク部と蓄冷材封入管部とが一体に設けられたものが用いられてもよい。また、エバポレータとして、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、幅方向を前後方向に向けるとともにヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両ヘッダタンクに接続された複数の冷媒流通管とを有するもの、すなわちヘッダタンクと冷媒流通管とが別個に形成されたものが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明による蓄冷熱交換器は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0053】
(1)(30)(35)(45):蓄冷熱交換器
(2):エバポレータ
(3):蓄冷器
(4)(5)(6)(7):ヘッダタンク部
(8):冷媒流通管部
(9):アウターフィン
(11):サイドプレート
(18):第1ブロック
(19):めねじ穴
(21)(22):ヘッダタンク(ヘッダタンク部)
(23):蓄冷材封入管(蓄冷材封入管部)
(24):コルゲートフィン
(25):サイドプレート
(26):第2ブロック
(27):ねじ挿通穴
(28):おねじ
(36)(37):外方突出壁
(41):ボルト
(42):ナット
(46)(47):挟着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管部を有するエバポレータと、互いに間隔をおいて配置された複数の蓄冷材封入管部を有する蓄冷器とが、エバポレータが風上側に位置するように通風方向に並んで配置されており、エバポレータと蓄冷器とが連結手段により連結一体化されている蓄冷熱交換器。
【請求項2】
エバポレータにおける隣り合う冷媒流通管部間に第1ブロックが配置され、蓄冷器における隣り合う蓄冷材封入管部間でかつ第1ブロックと対応する位置に第2ブロックが配置され、第1ブロックおよび第2ブロックのうちのいずれか一方にめねじ穴が形成されるとともに同他方にねじ挿通穴が形成され、おねじがねじ挿通穴に通されてめねじ穴にねじ嵌められることによりエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項3】
エバポレータの第1ブロックおよび蓄冷器の第2ブロックがそれぞれ熱伝導材料により形成され、両ブロックが互いに接触させられている請求項2記載の蓄冷熱交換器。
【請求項4】
エバポレータの両端の冷媒流通管部の外側にフィンが配置されるとともに当該フィンの外側にサイドプレートが配置され、蓄冷器の両端の蓄冷材封入管部の外側にフィンが配置されるとともに当該フィンの外側にサイドプレートが配置され、エバポレータのサイドプレートにおける蓄冷器側の縁部および蓄冷器のサイドプレートにおけるエバポレータ側の縁部に、それぞれ外側に突出した外方突出壁が設けられ、両サイドプレートの外方突出壁を貫通したボルトの先端にナットがねじ嵌められることによりエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項5】
サイドプレートおよび外方突出壁が、熱伝導材料により一体に形成されている請求項4記載の蓄冷熱交換器。
【請求項6】
エバポレータが、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク部を備えているとともに、両ヘッダタンク部間に、冷媒流通管部が両ヘッダタンク部と通じるように配置されており、蓄冷器が、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンク部を備えているとともに、両ヘッダタンク部間に、蓄冷材封入管部が両ヘッダタンク部と通じるように配置されており、エバポレータの各ヘッダタンク部と蓄冷器の各ヘッダタンク部とが挟着部材により挟着されることによってエバポレータと蓄冷器とが連結一体化されている請求項1記載の蓄冷熱交換器。
【請求項7】
挟着部材が熱伝導材料により一体に形成されている請求項6記載の蓄冷熱交換器。
【請求項8】
エバポレータの隣り合う冷媒流通管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、蓄冷器の隣り合う蓄冷材封入管部間に熱伝導材料製のフィンが配置され、エバポレータのフィンと蓄冷器のフィンとが接触させられている請求項1〜7のうちのいずれかに記載の蓄冷熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243065(P2010−243065A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92577(P2009−92577)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】