説明

蓄冷熱交換器

【課題】蓄冷材を封入した容器の腐食を抑制することができる蓄冷熱交換器を提供する。
【解決手段】蓄冷容器47には、蓄冷材50とともに乾燥剤51が封入されている。乾燥剤51が蓄冷材50とともに封入されているので、水分を乾燥剤51によって蓄冷容器47から除去することができる。これによって水分に起因する蓄冷容器47の腐食を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に用いられる蓄冷熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置には、冷凍サイクル装置が用いられている。この冷凍サイクル装置が停止している状態においても、限定された冷房を提供する試みがなされている。例えば、車両用空調装置では、走行用エンジンによって冷凍サイクル装置が駆動される。このため、車両が一時的に停車している間にエンジンが停止すると、冷凍サイクル装置が停止する。燃費の向上を図るため、信号待ち等の車両停止中にエンジンを停止する、いわゆるアイドルストップ車が増加している。このようなアイドルストップ車では、車両停車中(エンジン停止中)に冷凍サイクル装置が停止することで車室内の快適性を損なうという問題がある。また空調感を維持するために車両停止中においてもエンジンを再起動させると、燃費の向上の妨げになるという問題もある。
【0003】
このような問題を解決する技術が、特許文献1〜5に開示されている。特許文献1〜5には、エンジン停止中においても空調感を維持するため、室内用熱交換器に蓄冷機能を持たせている。これによって車両走行中に冷熱を蓄え、この冷気を車両停止中に用いている。
【0004】
特許文献1には、蓄冷材を封入した蓄冷容器を従来のエバポレータの空気流れ後方へ配置したものが記載されている。また特許文献2〜5には、蒸発器の冷媒流路を構成するチューブに隣接する形で小容量の蓄冷容器を設け、ここに蓄冷材を封入するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−188518号公報
【特許文献2】特開2010−91250号公報
【特許文献3】特開2010−112670号公報
【特許文献4】特開2010−149814号公報
【特許文献5】特開2011−12947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄冷材が封入された蓄冷容器内に水分があると、水分と蓄冷容器との化学反応によって腐食することがある。
【0007】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、蓄冷材を封入した容器の腐食を抑制することができる蓄冷熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、内部に冷媒が流通する冷媒通路(45a)を有し、互いに間隔を設けて配置された複数の冷媒管(45)と、
内部に蓄冷材(50)を収容する蓄冷容器であって、隣接する2つの冷媒管の間に配置される複数の蓄冷容器(47)と、を含み、
蓄冷容器には、蓄冷材とともに乾燥剤(51)が封入されていることを特徴とする蓄冷熱交換器である。
【0010】
請求項1に記載の発明に従えば、蓄冷容器には、蓄冷材とともに乾燥剤が封入されている。したがって蓄冷容器内に水分があったとしても、水分を乾燥剤によって除去することができる。これによって水分に起因する蓄冷容器の腐食を抑制することができる。
【0011】
また請求項2に記載の発明では、乾燥剤は、粉状であることを特徴とする。請求項2に記載の発明に従えば、乾燥剤は粉状であるので、取扱が容易であり、蓄冷容器への封入が容易となる。また粉状であると、蓄冷容器内で乾燥剤が分散するので、水分捕集効果をより高めることができる。
【0012】
さらに請求項3に記載の発明では、蓄冷材は、パラフィンが主成分であり、
乾燥剤は、シリカゲルおよびゼオライトの少なくともいずれか一方であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明に従えば、乾燥剤は、シリカゲルおよびゼオライトの少なくともいずれか一方である。ゼオライトおよびシリカゲルは、乾燥剤としては低湿度環境で水分の吸着効果の比較的高い。また蓄冷材は、パラフィンが主成分である。水の比重はパラフィンに対して大きいので、蓄冷容器内において遊離水分(水分)は下方に滞留することになる。また粉状のゼオライトおよびシリカゲルの比重は、水同様にパラフィンに対して大きい。したがってこれらの乾燥剤は効果的に蓄冷容器内の下方に位置する水分を捕集することが可能になる。
【0014】
さらに請求項4に記載の発明では、乾燥剤は、蓄冷容器の下方に沈殿していることを特徴とする。請求項4に記載の発明に従えば、乾燥剤は、蓄冷容器の下方に沈殿しているので、蓄冷容器の下方に沈殿している水分を確実に捕集することができる。
【0015】
さらに請求項5に記載の発明では、乾燥剤は、蓄冷材内に散在していることを特徴とする。請求項5に記載の発明に従えば、乾燥剤は、蓄冷材内に散在しているので、蓄冷材の内部に散在する水分を確実に捕集することができる。
【0016】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の蒸発器40を示す正面図である。
【図2】蒸発器40を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III断面の一部を示す拡大断面図である。
【図4】蓄冷容器47を正面から見て示す断面図である。
【図5】蓄冷材50における潜熱量と温度との関係を示す。
【図6】乾燥剤51の粒子系と、沈降時間との関係の一例を示すグラフである。
【図7】第2実施形態の蓄冷容器47Aを正面から見て示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1実施形態の蒸発器40を示す正面図である。図2は、蒸発器40を示す側面図である。蒸発器40は、冷凍サイクル装置(図示せず)を構成する。冷凍サイクル装置は、たとえば車両用の空調装置に用いられる。冷凍サイクル装置は、図示は省略するが、圧縮機、放熱器、減圧器、および蒸発器40を有する。これら構成部品は、配管によって環状に接続され、冷媒循環路を構成する。圧縮機は、車両の走行用の動力源によって駆動される。このため、動力源が停止すると、圧縮機も停止する。圧縮機は、蒸発器40から冷媒を吸引し、圧縮し、放熱器へ吐出する。放熱器は、高温冷媒を冷却する。放熱器は、凝縮器とも呼ばれる。減圧器は、放熱器によって冷却された冷媒を減圧する。減圧器は、固定の絞り、温度式膨張弁、あるいはエジェクタによって提供されうる。蒸発器40は、減圧器によって減圧された冷媒を蒸発させ、媒体を冷却する。蒸発器40は、車室に供給される空気を冷却する。
【0020】
冷凍サイクル装置は、さらに、高圧側液冷媒と低圧側ガス冷媒とを熱交換する内部熱交換、余剰冷媒を蓄えるレシーバまたはアキュムレータのタンク要素を備えることができる。また、動力源は、内燃機関あるいは電動機によって提供されうる。
【0021】
蒸発器40は、蓄冷熱交換器であって、複数に分岐した冷媒通路部材を有する。この冷媒通路部材は、アルミニウム等の金属製の通路部材によって提供される。冷媒通路部材は、組をなして位置づけられたヘッダ41〜44と、それらヘッダ41〜44の間を連結する複数の冷媒管45とによって提供されている。
【0022】
第1ヘッダ41と第2ヘッダ42とは、組をなしており、互いに所定距離れて平行に配置されている。第3ヘッダ43と第4ヘッダ44とも、組をなしており、互いに所定距離れて平行に配置されている。第1ヘッダ41と第2ヘッダ42との間には、複数の冷媒管45が等間隔に配列されている。各冷媒管45は、その端部において対応するヘッダ内に連通している。これら第1ヘッダ41と、第2ヘッダ42と、それらの間に配置された複数の冷媒管45によって第1熱交換部48が形成されている。第3ヘッダ43と第4ヘッダ44との間には、複数の冷媒管45が等間隔に配列されている。各冷媒管45は、その端部において対応するヘッダ内に連通している。これら第3ヘッダ43と、第4ヘッダ44と、それらの間に配置された複数の冷媒管45によって第2熱交換部49が形成されている。この結果、蒸発器40は、2層に配置された第1熱交換部48と第2熱交換部49とを有する。空気の流れ方向に関して、第2熱交換部49が上流側に配置され、第1熱交換部48が下流側に配置されている。
【0023】
第1ヘッダ41の端部には、冷媒入口としてのジョイント(図示せず)が設けられている。第1ヘッダ41内は、その長さ方向のほぼ中央に設けられた仕切板(図示せず)によって、第1区画と第2区画とに区画されている。これに対応して、複数の冷媒管45は、第1群と第2群とに区分されている。冷媒は、第1ヘッダ41の第1区画に供給される。冷媒は、第1区画から、第1群に属する複数の冷媒管45に分配される。冷媒は、第1群を通して第2ヘッダ42に流入し、集合される。冷媒は、第2ヘッダ42から、第2群に属する複数の冷媒管45に再び分配される。冷媒は、第2群を通して第1ヘッダ41の第2区画に流入する。このように、第1熱交換部48においては、冷媒をU字状に流す流路が形成される。
【0024】
第3ヘッダ43の端部には、冷媒出口としてのジョイント(図示せず)が設けられている。第3ヘッダ43内は、その長さ方向のほぼ中央に設けられた仕切板(図示せず)によって、第1区画と第2区画とに区画されている。これに対応して、複数の冷媒管45は、第1群と第2群とに区分されている。第3ヘッダ43の第1区画は、第1ヘッダ41の第2区画に隣接している。第3ヘッダ43の第1区画と第1ヘッダ41の第2区画とは連通している。
【0025】
冷媒は、第1ヘッダ41の第2区画から、第3ヘッダ43の第1区画に流入する。冷媒は、第1区画から、第1群に属する複数の冷媒管45に分配される。冷媒は、第1群を通して第4ヘッダ44に流入し、集合される。冷媒は、第4ヘッダ44から、第2群に属する複数の冷媒管45に再び分配される。冷媒は、第2群を通して第3ヘッダ43の第2区画に流入する。このように、第2熱交換部49においては、冷媒をU字状に流す流路が形成される。第3ヘッダ43の第2区画内の冷媒は、冷媒出口から流出し、圧縮機へ向けて流れる。
【0026】
次に、冷媒管45などの具体的な構成に関して説明する。図3は、図2のIII−III断面の一部を示す拡大断面図である。図3では、蓄冷容器47の厚みは省略して示し、蓄冷材50にハッチングを施して示す。冷媒管45は、内部に冷媒が流通する複数の冷媒通路45aを有する多穴管である。冷媒管45は、扁平管とも呼ばれる。この多穴管は、押出製法によって得ることができる。複数の冷媒通路45aは、冷媒管45の長手方向に沿って延びており、冷媒管45の両端に開口している。複数の冷媒管45は、列をなして並べられている。各列において、複数の冷媒管45は、その主面が対向するように配置されている。複数の冷媒管45は、互いに隣接する2つの冷媒管45の間に、空気と熱交換するための空気通路460と、後述する蓄冷容器47を収容するための収容部461とを区画している。
【0027】
蒸発器40は、車室へ供給される空気と接触面積を増加させるためのフィン46を備える。フィン46は、複数のコルゲート型のフィン46によって提供されている。フィン46は、隣接する2つの冷媒管45の間に区画された空気通路460に配置されている。フィン46は、隣接する2つの冷媒管45と熱的に結合している。フィン46は、熱伝達に優れた接合材によって、隣接する2つの冷媒管45に接合されている。接合材としては、ろう材を用いることができる。フィン46は、薄いアルミニウム等の金属板が波状に曲げられた形状をもっており、ルーバーと呼ばれる空気通路460を備える。
【0028】
次に、蓄冷容器47に関して説明する。図4は、蓄冷容器47を正面から見て示す断面図である。図4では、蓄冷容器47の厚みは省略して示し、蓄冷材50にハッチングを施して示す。蒸発器40は、さらに、複数の蓄冷容器47を有している。蓄冷容器47は、扁平な筒状である。蓄冷容器47は、その長手方向両端において、筒をその厚さ方向に押しつぶすことによって閉じられ、内部に蓄冷材50を収容するための空間が形成される。蓄冷容器47は、広い主面を両面に有している。これら2つの主面を提供する2つの主壁は、それぞれが冷媒管45と平行に配置されている。
【0029】
蓄冷容器47は、隣接する2つの冷媒管45の間に配置されている。蓄冷容器47は、その両側に配置された2つの冷媒管45に熱的に結合している。蓄冷容器47は、熱伝達に優れた接合材によって、隣接する2つの冷媒管45に接合されている。接合材としては、ろう材または接着剤などの樹脂材料を用いることができる。蓄冷容器47は、冷媒管45にろう付けされている。蓄冷容器47と冷媒管45との間には、それらの間を広い断面積によって連結するために大量のろう材が配置されている。このろう材は、蓄冷容器47と冷媒管45との間にろう材の箔を配置することによって提供することができる。この結果、蓄冷容器47は、冷媒管45との間で良好な熱伝導を示す。
【0030】
蓄冷容器47の厚さは、空気通路460の厚さとほぼ等しい。よって、蓄冷容器47の厚さは、フィン46の厚さとほぼ等しい。フィン46と蓄冷容器47とは、入れ替え可能である。この結果、複数のフィン46と複数の蓄冷容器47との配置パターンを、高い自由度をもって設定することができる。蓄冷容器47の厚さは、冷媒管45の厚さよりも明らかに大きい。この構成は、大量の蓄冷材50を収容するために有効である。蓄冷容器47は、フィン46とほぼ同じ長さを有する。この結果、蓄冷容器47は、隣接する2つの冷媒管45の間に区画された収容部461の長手方向のほぼ全体を占めている。蓄冷容器47とヘッダ41〜44との間の隙間は、フィン46の切片、あるいは樹脂などの充填材によって埋めることが望ましい。
【0031】
複数の冷媒管45は、ほぼ一定の間隔で配置されている。それら複数の冷媒管45の間には、複数の隙間が形成されている。これら複数の隙間には、複数のフィン46と複数の蓄冷容器47とが、所定の規則性をもって配置されている。隙間のうちの一部は、空気通路460である。隙間のうちの残部は、蓄冷容器47の収容部461である。複数の冷媒管45の間に形成された合計間隔のうち、たとえば10%以上50%以下が収容部461とされる。収容部461には、蓄冷容器47が配置されている。蓄冷容器47は、蒸発器40の全体にほぼ均等に分散して配置されている。蓄冷容器47の両側に位置する2つの冷媒管45は、蓄冷容器47とは反対側において空気と熱交換するための空気通路460を区画している。別の観点では、2つのフィン46の間に2つの冷媒管45が配置され、さらにこれら2つの冷媒管45の間にひとつの蓄冷容器47が配置されている。
【0032】
次に、蓄冷容器47に関して説明する。蓄冷容器47は、アルミニウムおよびアルミニウム合金等の金属製である。また蓄冷容器47のアルミニウム以外の材料としては、たとえばイオン化傾向が水素よりも低い金属を主材、もしくは成分として含む材料が用いられる。蓄冷容器47がアルミニウム、亜鉛、クロム、鉄、スズ、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、ニッケルなどである場合には、水分と反応して腐食ガス(水素)を発生させる可能性がある。
【0033】
蓄冷容器47には、蓄冷材50とともに乾燥剤51が封入されている。図4では、乾燥剤51の大きさは誇張して示している。先ず、蓄冷容器47に封入される蓄冷材50に関して説明する。図5は、蓄冷材50における潜熱量と温度との関係を示す。蓄冷材50の必要熱量は、蓄冷容器47の容量を考慮して、約200kJ/kg以上が好ましい。これによってアイドルストップ時に必要な蓄冷容量を確保することができる。また蓄冷可能融点は、冷房時の冷却温度帯以上が好ましいので、約8℃以上が好ましい。一般に有機材料は、熱伝導率が小さく、パラフィン系を除いて過冷却が大きい。またケミカル蓄熱では、化学安定性および劇毒物、腐食性、反応促進手段(圧力保持、撹拌必要)である。したがって本実施形態では、パラフィン(たとえば融点9.9℃)を蓄冷材50として用いている。
【0034】
その他の蓄冷材50として、前述の要件を満たすもの、または要件に近いものうち水が主成分でない蓄冷材50を用いることができ、たとえばポリグリコールを用いても良い。また蓄冷材50は、パラフィンが主成分である場合には、水の比重はパラフィンに対して大きいので、蓄冷容器47内に水分がある場合には水分はパラフィン内を沈殿することになる。また蓄冷容器47の内部には、蓄冷材50の上方に若干の空気が封入されている。この空気の圧縮作用で蓄冷材50が膨張したときの蓄冷容器47の応力を緩和している。
【0035】
次に、蓄冷容器47に蓄冷材50とともに封入される乾燥剤51に関して説明する。乾燥剤51は、蓄冷容器47内の水分を捕集するために用いられる。水分が蓄冷材50内を沈殿する比重関係である場合には、乾燥剤51も蓄冷材50内で沈殿していることが好ましい。本実施形態では蓄冷材50がパラフィンであるので、乾燥剤51は蓄冷材50よりも比重が大きいことが好ましい。
【0036】
図6は、乾燥剤51の粒子系(粒径)と、沈降時間との関係の一例を示すグラフである。沈降時間は、乾燥剤51が蓄冷容器47の下に沈殿するまでにかかる時間である。図6に示すグラフでは、蓄冷容器47の容器高さを150mmに設定している。容器高さは、蓄冷能力と蒸発器40との大きさによって決定される。車両用空調装置では、蓄冷能力を発揮するため、蓄冷容器47の高さは150mm以上であることが好ましい。また150mmの蓄冷容器47内で、沈降時間がたとえば7h(時間)未満であると、蓄冷容器47内に乾燥剤51が沈殿することになる。そこで粒子径の下限値は、蓄冷容器47内にて蓄冷容器47下まで確実に沈殿できる粒子径に設定することが好ましいので、粒子径は10μm以上が好ましい。粒子径が10μm未満であると、静止状態で沈降するのに約7時間以上かかるため、車両の振動などで現実的に沈殿しないと判断できるからである。
【0037】
また乾燥剤51の粒子径の上限は、蓄冷容器47内の形状によって決定するものであり、蓄冷容器47内にフィン46など凹凸がある場合も考慮して、1mm(=1000μm)以下にすることが好ましい。これによって蓄冷容器47の内壁に凹凸があった場合では、凹凸に引っかかることなく、凹凸を避けて確実に沈殿させることができる。換言すると、乾燥剤51の最大粒径は、蓄冷容器47内の形状に起因して決定される。
【0038】
このような乾燥剤51は、シリカゲルおよびゼオライトの少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。ゼオライトおよびシリカゲルは、乾燥剤51としては低湿度環境で水分の吸着効果の比較的高い。また蓄冷材50は、パラフィンが主成分である場合には、水の比重はパラフィンに対して大きいので、蓄冷容器47内において遊離水分(水分)は下方に滞留することになる。粉状のゼオライトおよびシリカゲルの比重は、水同様にパラフィンに対して大きい。したがってこれらの乾燥剤51は効果的に下方に位置するパラフィン内の水分を捕集することが可能になる。
【0039】
具体的には、蓄冷容器47がアルミニウム材料からなる場合、腐食因子としては水分があげられる。ここで腐食反応は主に以下の反応が行われ水素が発生すると考えられ、水分が反応の主要因であることがわかる。
【0040】
2Al+6HO→2Al(OH)+3H
したがって乾燥剤51で確実に水分を除去することによって蓄冷容器47内での前述の反応を抑制することができる。
【0041】
次に、この実施形態の作動を説明する。乗員からの空調要求、例えば冷房要求があると、圧縮機は動力源によって駆動される。圧縮機は蒸発器40から冷媒を吸入し、圧縮して、吐出する。圧縮機から吐出された冷媒は、放熱器で放熱される。放熱器から出た冷媒は、減圧器によって減圧され、蒸発器40に供給される。冷媒は、蒸発器40において蒸発し、蓄冷容器47を冷却するとともに、フィン46を介して空気を冷却する。車両が一時停止すると、動力源は消費エネルギを減らすために停止し、圧縮機が停止する。その後、蒸発器40の冷媒は徐々に冷却能力を失ってゆく。この過程で、蓄冷材50は、徐々に放冷し、空気を冷却する。このとき、空気の熱は、フィン46、冷媒管45、および蓄冷容器47を通して、蓄冷材50に伝導する。この結果、冷凍サイクル装置が一時的に停止しても、蓄冷材50によって空気を冷却することができる。やがて、車両が再び走行を始めると、動力源が再び圧縮機を駆動する。このため、冷凍サイクル装置は、再び蓄冷材50を冷却し、蓄冷材50が蓄冷する。
【0042】
以上説明したように本実施形態の蓄冷容器47には、蓄冷材50とともに乾燥剤51が封入されている。蓄冷容器47の材質としては蒸発器40とのろう付け性を考慮して、蒸発器40と同等材料であるアルミニウムが用いられることが多い。蓄冷容器47内に水分があると、アルミニウムが腐食することがある。このアルミニウムの腐食にともない水素等が発生した場合、予想以上の内圧の上昇が発生する可能性がある。したがって水素が発生すると、蓄冷容器47内の圧力が上昇し、容器が変形するおそれがある。しかしながら本実施形態では、乾燥剤51が蓄冷材50とともに封入されているので、水分を乾燥剤51によって蓄冷容器47から除去することができる。これによって水分に起因する蓄冷容器47の腐食を抑制することができる。
【0043】
また本実施形態では、乾燥剤51は粉状であるので、取扱が容易であり、蓄冷容器47への封入が容易となる。具体的には、蓄冷容器47に蓄冷材50を封入するまえに、蓄冷容器47に入れておいてもよいし、事前に蓄冷材50と乾燥剤51とを混合しておいてもよい。また乾燥剤51を混入すると、もともと蓄冷材50に含まれている水分を除去することができるので、蓄冷材50に起因する水分発生を抑制することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図7を用いて説明する。図7は、第2実施形態の蓄冷容器47Aを正面から見て示す断面図である。本実施形態では、乾燥剤51の比重が前述の第1実施形態と異なる。図7では、蓄冷容器47Aの厚みは省略し、蓄冷材50にハッチングを施し、乾燥剤51の大きさは誇張して示している。
【0045】
蓄冷材50としては前述の第1実施形態と同様にパラフィンが用いられるが、遊離水分が発生するほどの水分が含まれない場合、水分はパラフィン内に散在する形となる。この状態での水分を捕集するため、乾燥剤51の比重をパラフィンと同様とすることでパラフィン中に乾燥剤51が浮遊均一化することになる。また前述した粒径の影響を鑑みると、乾燥剤51の粒径を10μm以下とすることでも比重を同等とすることと同様にパラフィン内に乾燥剤51を浮遊させることが可能になる。
【0046】
このような構成によって、パラフィン内を沈殿していない水分を捕集できるので、水分発生による悪影響を未然に防止することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0048】
前述の第1実施形態では、蓄冷材50の粒径は10μm以上であるが、10μm以上に限るものではなく、第2実施形態の乾燥剤51と組み合わせた乾燥剤51を用いても良い。すなわち、沈殿する乾燥剤51と散在する乾燥剤51との両方を封入してもよい。これによってどちらの水分も捕集することができる。また乾燥剤51は、粉状に限るものではなく、液状であってもよい。
【0049】
また冷媒管は、多穴押出管、あるいはディンプルを形成した板材を筒状に曲げた管によって提供することができる。さらに、フィンは省略することができる。このような熱交換器は、フィンレス型とも呼ばれる。フィンに代えて、冷媒管から延び出す突条などを設けて、空気との熱交換を促進してもよい。
【0050】
本発明は、種々の流れ経路をもつ蒸発器に適用することができる。例えば、第1実施形態のような左右Uターン型に代えて、一方向型、前後Uターン型などの蒸発器に本発明を適用してもよい。
【0051】
さらに、本発明は、冷凍用、暖房用、給湯用といった冷凍サイクル装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、エジェクタを備える冷凍サイクル装置に適用されてもよい。
【0052】
また蓄冷容器の内部にインナフィンを設けても良い。このような構成の場合、外殻にインナフィンの頂部を露出させる開口を設け、インナフィンの頂部を冷媒管に直接に接合してもよい。
【符号の説明】
【0053】
40…蒸発器(蓄冷熱交換器)
41…第1ヘッダ
42…第2ヘッダ
43…第3ヘッダ
44…第4ヘッダ
45…冷媒管
45a…冷媒通路
46…フィン
47…蓄冷容器
48…第1熱交換部
49…第2熱交換部
50…蓄冷材
51…乾燥剤
460…空気通路
461…収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒が流通する冷媒通路(45a)を有し、互いに間隔を設けて配置された複数の冷媒管(45)と、
内部に蓄冷材(50)を収容する蓄冷容器であって、隣接する2つの前記冷媒管の間に配置される複数の蓄冷容器(47)と、を含み、
前記蓄冷容器には、前記蓄冷材とともに乾燥剤(51)が封入されていることを特徴とする蓄冷熱交換器。
【請求項2】
前記乾燥剤は、粉状であることを特徴とする請求項1に記載の蓄冷熱交換器。
【請求項3】
前記蓄冷材は、パラフィンが主成分であり、
前記乾燥剤は、シリカゲルおよびゼオライトの少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項2に記載の蓄冷熱交換器。
【請求項4】
前記乾燥剤は、前記蓄冷容器の下方に沈殿していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の蓄冷熱交換器。
【請求項5】
前記乾燥剤は、前記蓄冷材内に散在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の蓄冷熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104580(P2013−104580A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246738(P2011−246738)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】