説明

蓄圧式ディスペンサー

【課題】簡単な構造で蓄圧機能が付与できる蓄圧式ディスペンサーを提供する。
【解決手段】トリガーの回動によりシリンダー11内のピストン部23を上下に摺動させシリンダー11内の液体に圧を加えノズル部21から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、ピストン部23内に蓄圧付与バルブ5を備えた蓄圧式ディスペンサー。蓄圧付与バルブ5が、ピストンバルブと、バネ体と、ピストンカバーとよりなり、或いは、蓄圧付与バルブ5が、挿入弁座と、ピストンバルブと、バネ体とピストンカバーとよりなる蓄圧式ディスペンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式のディスペンサーに関する。
より詳しくは、トリガーによってピストン部材を上下に摺動させてシリンダー内の液体に圧を加えノズル部から外部に噴射するディスペンサーにおいて、シリンダー内の液体が所定の圧力より高くなった時、液体を噴射することができる蓄圧式ディスペンサーに関する。
【0002】
従来、所定の部分に薬液等の液体を噴射する手段として、ディスペンサーが使われている。
そして、噴射圧を大きくするために、例えば蓄圧式ディスペンサーが提供されている(特許文献1)。
しかし、これらの蓄圧式ディスペンサーはポンプ動作により、まず容器内の空気を加圧するもので、この空気の加圧力により液面を押圧する原理を採用している。
第一段階では、直接、液を加圧するものでなく、そのため機構が複雑となる。
一方、トリガーを使った蓄圧式ディスペンサーも開発されているが、やはり構造が複雑なものとなっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−267062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる背景技術をもとになされたもので、上記の技術的問題点を克服するために有用なものである。
すなわち、本発明は、簡単な構造で蓄圧機能が付与できる蓄圧式ディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、ピストン内部に蓄圧機能を有する蓄圧付与バルブを備えことにより蓄圧装置自体を小さくできることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、(1)、トリガーの回動によりシリンダー内のピストン部を上下に摺動させシリンダー内の液体に圧を加えノズル部から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、ピストン部内に蓄圧付与バルブを備えた蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0007】
本発明は、(2)、前記蓄圧付与バルブが、ピストンバルブと、該ピストンバルブをピストン弁座に押圧するバネ体と、該ピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとより上記(1)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0008】
本発明は、(3)、前記蓄圧付与バルブが、挿入弁座と、該挿入弁座に当接又は離反するピストンバルブと、該ピストンバルブを挿入弁座に押圧するバネ体と、該挿入弁座に圧入により取り付けられてピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとよりなる上記(1)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0009】
本発明は、(4)、前記蓄圧付与バルブが、ピストン部に形成された溝に圧入されることにより取り付けられている上記(2)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0010】
本発明は、(5)、前記挿入弁座がピストンの細径部に圧入されることにより取り付けられている上記(3)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0011】
本発明は、(6)、前記ピストンバルブの周囲に鍔部が設けられてピストンカバー内が封止されることによりバネ体の収納部が形成されている上記(2)又は(3)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0012】
本発明は、(7)、前記シリンダー内の液体は、ピストンカバーに形成された通孔を通ってピストン弁座を通過するものである上記(2)又は(3)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0013】
本発明は、(8)、前記ピストンバルブとバネ体とが一体成形されたものである上記(2)又は(3)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0014】
本発明は、(9)、前記ピストンカバーとバネ体とが一体成形されたものである上記(2)又は(3)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0015】
本発明は、(10)、前記バネ体が前記ピストンカバーの底部に一体に形成された分割された羽バネからなり、前記ピストンバルブの内側にテーパー部が形成され、羽バネが前記テーパー部のテーパー面に当接することによりピストンバルブを弁座に押圧する上記(9)記載の畜圧式ディスペンサーに存する。
【0016】
本発明は、(11)、前記シリンダーの下部内周面に径大部を設け、該径大部に突起を形成した上記(1)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0017】
本発明は、(12)、トリガーの回動によりシリンダー内のピストン部を上下に摺動させシリンダー内の液体に圧を加えノズル部から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、内側にシリンダーを備え容器本体の口部に取り付け可能なベース本体と、該ベース本体に取り外し可能に係止されたカバー体と、該ベース本体に係合するノズル部とピストン部と両者を連結する屈曲可能な連結部よりなるピストン構造体と、シリンダー内でピストン部を上下に摺動させるためにベース本体に回動可能に取り付けられたトリガーと、ピストン部内に配設された蓄圧付与バルブと、を備え該蓄圧付与バルブが、ピストンバルブと、該ピストンバルブをピストン弁座に押圧するバネ体と、該ピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとよりなる蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0018】
本発明は、(13)、前記ピストン構造体の連結部の周囲に多数のフィンが形成されている上記(8)記載の蓄圧式ディスペンサーに存する。
【0019】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(13)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蓄圧式ディスペンサーは、トリガー3の回動によりシリンダー11内のピストン部23を上下に摺動させシリンダー11内の液体に圧を加えノズル部21から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、ピストン部内に蓄圧付与バルブ5を備えたので、蓄圧付与バルブ5がピストン部23に収容されるため、蓄圧機能を有する部分の容積が小さくなる。
従来の蓄圧機能を備えない直圧式のディスペンサーに取り付けることにより容易に蓄圧式ディスペンサーとなる。
【0021】
前記蓄圧付与バルブ5が、ピストンバルブ51と、該ピストンバルブ51をピストン弁座に押圧するバネ体52と、該ピストンバルブ51とバネ体52とを収納するピストンカバー53とよりなるので、簡単な構造で蓄圧機能が発揮できる。
【0022】
前記蓄圧付与バルブ5が、挿入弁座と、該挿入弁座に当接又は離反するピストンバルブ51と、該ピストンバルブ51を挿入弁座に押圧するバネ体52と、該挿入弁座に圧入により取り付けられてピストンバルブ51とバネ体52とを収納するピストンカバー53とよりなるので、同様に簡単な構造で蓄圧機能が発揮できる。
【0023】
前記蓄圧付与バルブ5が、ピストン部23に形成された溝に圧入されることにより取り付けられているので、組み付けが容易である。
【0024】
前記挿入弁座がピストンの細径部に圧入されることにより取り付けられているので、同様に組み付けが容易である。
【0025】
ピストンバルブ51の周囲に鍔部が設けられてピストンカバー53内が封止されバネ体52の収納部が形成されていることにより、バネ体自体が液に触れることはなく、金属バネを使っても錆びることがない。
【0026】
シリンダーの下部内周面に径大部を設け、該径大部に複数の突起を形成したことにより、ピストン部23に形成された第二封止弁23Bとの間で、液の通過する通路ができ、液の切れが良くなる。
また使用開始時に、シリンダー内に存在する空気を外部に逃がし、容器内から液をファーストバルブFVを介して吸い上げなければならないが、空気をこの通路から逃がすことができる。
【0027】
ピストンバルブ51とバネ体52とが一体成形されることにより、部品点数が少なくなり、組み付けが容易である。
また、同様にピストンカバー53とバネ体52とを一体に形成すると、部品点数が少なくなり、組み付けが容易になる。このとき、バネ体52を三枚の羽バネで構成すると、ピストンバルブ51を安定して上下移動させることができる。
【0028】
該ベース本体1に係合するノズル部21とピストン部23と両者を連結する屈曲可能な連結部よりなるピストン構造体2を使っているので、余分な部品を必要とせず、構造が簡単であり且つ故障も少ない。
【0029】
ピストン構造体2の連結部の周囲に多数のフィン22Aが形成されていることにより、断面が変形しにくく、液が通路を支障なく通過できる。
【0030】
ピストン構造体2の連結部22が角度90度以上屈曲可能であることにより、結果的にトリガーに復帰力が付与される。
【0031】
またベース本体1と、カバー体4との係合部分を覆うためのヒサシ部41をカバー体4に設けたので、係止部分が外部から見えないため美観を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の蓄圧式ディスペンサーは、トリガー3の回動によりシリンダー11内のピストン部23を上下に摺動させシリンダー11内の液体に圧を加えノズル部21から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーである。
そしてピストン部23内に蓄圧付与バルブ5が備えられていることで蓄圧機能が発揮できる。
蓄圧式ディスペンサーは、シリンダー11が横配置のものや縦配置ものがあるが、以下に示す実施の形態は、シリンダー11が縦配置の構造を有し、トリガー3を使ったディスペンサーの例で説明する。
【0033】
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る蓄圧式ディスペンサーを示す図であり、それぞれトリガー3を引く前と引いた後の状態を示している。
本発明の第1実施形態に係る蓄圧式ディスペンサーは、トリガー3の回動によりシリンダー11内のピストン部23を上下に摺動させシリンダー11内の液体に圧を加え、蓄圧後、一気にノズル部から外部に液を噴射するものであり、いわゆるトリガー3を使った蓄圧式ディスペンサーと呼ばれる。
【0034】
より具体的には、図2に示すように、トリガー3を引き込むこと、すなわち回動させることによりピストン部23を下方に摺動させ、蓄圧機能が働いてピストン部23内の液圧が一定圧高まった時、シリンダー11内の液体を一気にノズル部21から噴射させるものである。
【0035】
以下、この蓄圧式ディスペンサーを順次説明する。
この蓄圧式ディスペンサーは、まず容器に直接取り付けられるベース本体1、該ベース本体1に取り付けられるカバー体4、ベース本体1に取り付けられるトリガー3、及び該トリガー3によって上下移動することができるピストン構造体2を備えており、これらにより構成される内部の通路には、セカンドバルブに相当する蓄圧付与バルブ5が備わっている。
【0036】
これらの部品の材質は合成樹脂材であり、主として射出成形により製造される。
例えば、キャップ13やベース本体1はポリプロピレン樹脂(PP)、トリガー3はポリオキシメチレン樹脂(POM)、またピストン構造体2は、直鎖状リニア低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、シリコーン樹脂等がそれぞれ材質として使用されている。
【0037】
(ベース本体)
まずベース本体1は、容器本体Xの口部に、取り付け可能となっている。
すなわち、ベース本体1は、キャップ13をネジ込んで(或いは係合させ)ベース本体1の下端突起を押さえることにより容器Xの口部に固定される。
【0038】
ベース本体1は、内側にピストン23が収納可能な中空円筒状のシリンダー11と、該シリンダー11から上方に拡大する拡張部12とを有している。
【0039】
ベース本体1の一部であるシリンダー11の下には、それより細径の段状筒部11Aが形成されており、この段状筒部11Aの下部にはファーストバルブFVが備わっている。
尚、容器内の液体は、このファーストバルブFVを通過してシリンダー11内に吸い上げられる。
【0040】
また、段状筒部11Aの下方には容器底の液体を吸い上げてファーストバルブFVに導入する導入チューブ11Bが一体に形成されている。
なお、ファーストバルブFVは、段状筒部11Aの下部の弁座に当接する。
【0041】
(カバー体)
一方、ベース本体1の拡張部12の上には、蓋状のカバー体4が取り外し可能に係合している。
カバー体4にはベース本体1との連続する係合部分に、該係合部分を覆うためのヒサシ部41がその周囲に形成されている。
このヒサシ部41があることにより係合部分が覆われて外方からに容易に見えなくなり、外観が綺麗である。
また、ベース本体からカバー体4を取り外した場合、トリガー3、ピストン構造体2、シリンダー11等が露出するので、内部の清掃が極めて簡単に行える利点がある(図1の破線参照)。
また、拡張部12の後部はディスペンサーを握った時、親指の付け根が、ここに当接しその重量を支える役割を果たす。
【0042】
(ピストン構造体)
上記ベース本体1のシリンダー11内には、上部に細径部23Aを有する2段中空円筒状のピストン部23が摺動可能に備えられており、該ピストン部23は、次に示すように、ピストン構造体2の一部となっている。
【0043】
図3は、ピストン構造体2及び蓄圧付与バルブ5を示す図である。
ピストン構造体2は、直鎖状リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、シリコーン樹脂のような弾圧的に変形可能な樹脂で形成されており、先方にノズル部21、後方にピストン部23、そしてノズル部21とピストン部23との間を連結する連結部22とを一体に有している。
【0044】
なお、連結部22のみ弾圧的屈曲性の優れた、他のエラストマー樹脂とすることも可能である。
ノズル部21は、カバー体4の先とベース本体1の先に、嵌り込むことにより固定される。
連結部22の表面には多数のフィン22Aが形成されており、連結部22を含むピストン構造体2の材質を軟質の例えば、シリコーン樹脂にした場合でも連結部22をその内部通路が変形して潰れるようなことない。
【0045】
このようなことから、連結部22を90度以上、十分屈曲することができる。
また、ピストン構造体の連結部は角度90度以上屈曲可能であるので、ピストン構造体を一直線状の状態で射出成形できる。
ちなみにピストン構造体2は、金型により成形された時点では、そのピストン部23と連結部22とノズル部21が全体に一直線状となっている。
そのため屈曲させて組み付けることが可能である。また組み付け後、連結部22に復帰力が生まれる利点もある。
また一定の大きさの金型から、できる限り多くのピストン構造体が成形可能となる。
【0046】
(蓄圧付与バルブ)
ところで、ピストン部23内には、蓄圧付与バルブ5が配設されている。
この蓄圧付与バルブ5は、図3に示すように、ピストンバルブ51(図4参照)と、該ピストンバルブ51をピストン弁座23Dに押圧するバネ体52と、該ピストンバルブ51とバネ体52とを収納するためのピストンカバー53(図5参照)とよりなる。
ピストンバルブ51は周囲に鍔部51Aを有し、内部が中空である。
その頭部は曲面に形成され、ピストン弁座23Dに均一に当接することができる。
尚、頭部の突起51Bは、組み付けの際の、案内となる。
ピストンバルブ51は、ピストン弁座23Dに当接し又はピストン弁座23Dから離反することにより、液の流路を閉鎖又は開放する。
【0047】
バネ体52は、ピストンバルブ51の鍔部51Aの基部とピストンカバー53の底部の間に弾発状に配設されており、その鍔部51Aがピストン部内周に圧接することで、バネ体52は、ピストンバルブ51とピストンカバー53の間の空間に密閉して閉じ込められた状態になる。
【0048】
ピストンカバー53は、その上端が、ピストン部23に形成された溝23Cに圧入されて取り付けられる。
このように、ピストンカバー53をピストン部23に取り付けることができるため、蓄圧付与バルブ5の使用されていない直圧式のディスペンサーにおいても、蓄圧機能を付与することが容易である。
【0049】
蓄圧付与バルブ5は、このような構成であるので、トリガー3を引いて、シリンダー11内が蓄圧され一定の圧力高くなると、一気にピストン弁座23Dとピストンバルブ51との間に液が入り込み流路に流れ込む。
そして、ノズル部21の噴射口Nから液を噴射する。
ところで、蓄圧付与バルブ5においてピストンバルブ51の上下方向の移動で収納部Rに液が充填されると、ピストンバルブ51の動きが鈍くなり蓄圧機能が低下し、最悪の場合には、シリンダー内圧と収納部Rとの圧力が等しくなりピストンバルブ51が開かず噴霧できなくなるが、バネ体52の収納部Rは、鍔部51Aで封鎖されているので、通常、液体が入り込むことはない。
【0050】
しかし、万一、何らかの原因で鍔部51Aが変形して液体が収納部Rに入り込んだ場合でも、ピストンバルブ51の内部は中空なのでここに空気が溜まっており、正常時、収納部全体が入った液で充填されることはない。
当然、倒立時には、ピストンバルブ51の内部の空気はピストンカバー53の底部に移るので収納部全体が液で満たされることはない。
よって噴霧不可能となることは回避される。
【0051】
なお、蓄圧付与バルブ5の各部品の材質としては、例えば、ピストンバルブ51やピストンカバー53がポリプロピレン、バネ体は金属(SUS)が採用される。
ここで、ピストンバルブ51をシリンダー11弁に押し付ける弾圧力として、独立したバネ体52を使わないで、ピストンバルブ51に一体に連結されたバネ体としても良い。
この場合、ピストンバルブ51とバネ体とは、一体に射出成形で成形することにより、ピストンバルブ51の鍔部51Aの基部から下方に延設した例えば蛇腹状のバネ体とすることができる。
【0052】
もっとも、一体に成形できるのであれば、コイル状、板状、バネ座金状のバネ体とすることも可能である。
またバネ体をピストンカバー53に一体に射出成形したものも採用できる。
この場合も、一体に成形できるのであれば、コイル状、板状、バネ座金状とすることも可能である。
【0053】
(トリガー)
一方、ピストン構造体2を上下させるトリガー3は、指当て部分から延長されシリンダー11の細径部23Aを囲むようにして、後方でベース本体1に枢着されている(枢着部P1)。
トリガー3は、延長部分の中間でピストン部23に枢着されている。
この場合、ピストン部23の細径部23Aの外側壁に図示しない一対の円突起が形成されており、該円突起がトリガー3の図示しない一対の円孔に嵌りこんでいる。
【0054】
従って、トリガー3の指当て部分に指を掛けて枢着部P1を起点として、トリガー3を下方に回動させると、ピストン部23は下がる。
なお、トリガー3は、トリガーバネ31によりトリガー3を復帰する方向に弾発力が与えられているので、握った指を放つとトリガー3は元の位置に戻る。
この時、前述したように、ピストン構造体2の連結部22の復帰力も加わる。
【0055】
ところで、ピストン部23には、シリンダー11内を封止するための上方の第一封止弁23B1と、該第一封止弁23B1より下方にある第二封止弁23B2とが形成されている。またシリンダー11の壁には、通気穴S1が設けられている。
これらにより、容器本体内へ外気を導入するための通気流路が形成される。
シリンダー11にピストン部23の第一封止弁23B1が圧接摺動することでこの通気流路が遮断又は開放される。
【0056】
(蓄圧機能)
ここで、本発明の重要な部分である蓄圧機能を示すために、トリガー3の操作と共にピストン構造体2の作用を詳しく述べる。
最初に、蓄圧付与バルブ5において、ピストンバルブ51がピストン弁座23Dに圧接しているものとする(図6(A)参照)。
いま、所定の場所に液体を噴射するためにトリガー3を引き込む。
トリガー3は枢着部P1を基準に回動し、ピストン部23は下方に押し下げられる。
ピストン部23の下方移動によりシリンダー11内の液体は圧を受ける。
圧力が一定圧を超えると、液がピストンバルブ51を開き、液が上方に上がる(すなわち上方に逃げる)。
【0057】
具体的には、シリンダー11内の液体は、ピストンカバー53の通路53Aを通り、ピストンバルブ51とピストン弁座23Dの間から強引に上方に入り込み連結部22内の通路に入る(図6(B)参照)。
この場合、液圧がバネ体52の力に打ち勝ち、ピストンバルブ51を押し下げる(すなわちピストンバルブ51が開く。)こととなる。
そしてピストン部23の下方移動と共に、シリンダー11内の液はノズル部21の噴射口Nから外に噴射される。
液体を噴射した後、トリガー3を開放すると、引き込まれたトリガー3がトリガーバネ31の復帰力によって元の位置に戻ろうとし、ピストン部23が引き上げられる(この時点では、ピストンバルブ51の頭部とピストン弁座23Dとの間は閉じている)。ピストン部23が引き上げられるとシリンダー11内が負圧となる。このとき、その負圧を解消するために容器内の液体が、シリンダー11内のシリンダー11内へと吸い上げられる。その結果、シリンダー11内は液体で満たされ、次の液体噴射の準備が再度整うことになる。
【0058】
トリガー3を引き込んだ後の最終的段階では、ピストン部23の第二封止弁23B2が、シリンダー11の下部内周面に形成された複数本の突起Tの領域に至る。
ここで下部内周面は、僅かに凹んで径大面11Dになっており、この径大面11Dから線状の突起Tが形成されている。
突起Tの高さは、シリンダーの内周面に一致することが好ましく、この場合、第二封止弁23B2の通過がスムースに行える。
そのため、この領域を第二封止弁23B2が通過する際は(図7(A)→図7(B))、その突起Tの両側に空間ができて液の通過する流路となる。
矢印で示すように、シリンダー11内の液が、この空間を通過して、容器内に還元される(逃げる)のである。
すると、シリンダー11内の液圧は低下し、バネ力により蓄圧付与バルブ5のピストンバルブ51が上がって閉じる。
この状態により、いわゆる噴射口Nから出る液の「キレ」が良くなるのである。
【0059】
また使用開始時においては、トリガー3をカラ打ちしてシリンダー内に存在する空気を外部に逃がし、容器内から液をファーストバルブFVを介して吸い上げなければならないが、空気をこの通路から逃がすことができる。
【0060】
ところで、ピストン部23の押し下げにより、それと一体のノズル部21も引き下がろうとするが、前述したように、ノズル部21は、ベース体1とカバー体4の間で固定されているので本来なら下がらない(図1及び図2参照)。
しかし、ここで連結部22が屈曲変形しピストンの上下移動を積極的に吸収するのである。
【0061】
このように、本実施の形態の蓄圧式ディスペンサーは、ノズル部21が固定されていても、連結部22の働きによりピストン部23が上下運動することができる。
液体噴射の際、噴射口Nの上下移動が全くない状態で対象となる位置に、正確に液体を噴射することができるのである。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
図8は、本発明の第2実施形態の蓄圧式ディスペンサーにおけるトリガーの回動前を示す断面図である。
この実施の形態の蓄圧式ディスペンサーは、第1の実施形態の蓄圧付与バルブ5が、ピストン部23の一部を弁座(ピストン弁座23D)として利用しているのに対して、蓄圧付与バルブ自体が弁座(すなわち挿入弁座54)を備えている点が特徴である。
【0063】
すなわち、蓄圧付与バルブ5が、挿入弁座54と、該挿入弁座54に当接又は離反するピストンバルブ51と、該ピストンバルブ51を挿入弁座54に押圧するバネ体52と、該挿入弁座54に圧入により取り付けられてピストンバルブ51とバネ体52とを収納するピストンカバー53とよりなる。
そして、挿入弁座54の上部がピストン部の細径部23Aに圧入されることにより取り付けられている。
そのため蓄圧機能は、全て蓄圧付与バルブ5だけで発揮可能である。
ピストンバルブ51は、挿入弁座54に当接し又は挿入弁座54から離反することにより、液の流路を閉鎖又は開放する。
【0064】
バネ体52は、ピストンバルブ51の鍔部51Aの基部とピストンカバー53の底部の間に弾発状に配設されており、その鍔部51Aがピストン部内周に圧接することで、バネ体52は、ピストンバルブ51とピストンカバー53の間の空間に密閉して閉じ込められた状態になる。
【0065】
蓄圧付与バルブ5の使用されていない直圧式のディスペンサーにおいても、蓄圧付与バルブ5を組み付けることにより、容易に蓄圧機能を付与することができる。
この場合、ピストンバルブ51とバネ体、ピストンカバー53とバネ体は、第1の実施の形態と同様に一体に射出成形することも可能である。
【0066】
〔第3の実施の形態〕
図9は、本実施形態の畜圧付与バルブのピストンカバーを示す切り欠き図であり、図10はピストンバルブを示す斜視図である。
これらの図に示すように、本実施形態の畜圧付与バルブ5においては、ピストンバルブ51に弾発力を付与するための部材(上記第1、第2の実施の形態のバネ体52に相当)、は、ピストンカバー53の底部に起立状に一体形成された羽バネ53Bからなる。
【0067】
羽バネ53Bは、複数個(ここでは3個)に分割されている。
すなわち羽バネ53Bは、ピストンカバー53の中心から一定距離の位置に120度方向に分割された3つの分割片53B1、53B2、53B3を有している。
【0068】
本実施形態において、ピストンバルブ51の底面は鉢状のテーパー面になっている。そのためピストンバルブ51をピストンカバー53内に装着させると、羽バネ53Bの上端がテーパー面に当接する。この状態ではピストンバルブ51は、羽バネ53Bを上方に弾圧し頭部がピストン弁座23Dに圧接される。
【0069】
次に、トリガー3の操作と共にピストン構造体2の作用を述べる。
最初に、蓄圧付与バルブ5において、羽バネ53Bがピストンバルブ51を上方へ押圧しピストンバルブ51の頭部がピストン弁座23Dに圧接しているものとする(図11(A)参照)。
先ず、トリガー3が引き込まれ、ピストン部23が押し下げられると、シリンダー11内の液体は圧縮圧を受けて、ピストンバルブ51が開き、液が上方に逃げる。詳しくは、圧が高まったシリンダー11内の液体は、ピストンカバー53の通路53Aを通り、ピストンバルブ51とピストン弁座23Dの間から連結部22内の通路へ強引に流入する(図11(B)参照)。そして噴射口Nから噴射される。
【0070】
液体が噴射口Nから噴射された後、引き込まれたトリガー3がトリガーバネ31の復帰力によって元の位置に戻ろうとし、ピストン部23が引き上げられる(この時点では、既にピストンバルブ51の頭部とピストン弁座23Dとの間は閉じている)。
するとシリンダー11内が負圧となり、液体がピストンバルブ51の頭部とピストン弁座23Dとの間を開くよう作用するが、羽バネ53Bのバネ力(復帰力)がそれを阻止し、ピストンバルブ51をピストン弁座23Dに接触させた状態のままピストン部23は上方へ持ち上がる。
【0071】
同時にピストン部23の上方への移動にともなって容器内の液体がシリンダー11内の負圧を解消するためにシリンダー11内へと吸い上げられる。このことにより、シリンダー11内は液体で満たされ、次の液体噴射の準備が再度整う。
【0072】
この実施の形態では、バネ体52をピストンカバー53と一体に形成することで、部品点数が削減される。
また、ピストンバルブ51の昇降移動中は羽バネ53Bの各分割羽バネ53B1、53B2、53B3が常にテーパー面に当接した状態となるため、これらがピストンバルブ51の移動を安定させるための案内の機能を果たす。
【0073】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0074】
例えば、シリンダー11は、縦配置の例で示したが、横配置のものにも適用できることは、当然である。
また、該ベース本体1に係合するノズル部21とピストン部23と両者を連結する屈曲可能な連結部22よりなるピストン構造体2の例を示したが、周知のノズル部が上下するディスペンサーにも適用が可能である。
屈曲変形性の観点からピストン構造体2は、シリコーン樹脂、LLDPE樹脂が使用されるが、連結部のみ弾圧的屈曲性の優れた、他のエラストマー樹脂とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の蓄圧式ディスペンサーにおけるトリガーの回動前を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態の蓄圧式ディスペンサーにおけるトリガーの回動後を示す説明図である。
【図3】図3は、ピストン構造体及び蓄圧付与バルブを示す図である。
【図4】図4は、蓄圧付与バルブの構成部品であるピストンバルブを示す図である。
【図5】図5は、蓄圧付与バルブの構成部品であるピストンカバーを示す図である。
【図6】図6は、蓄圧付与バルブの動きを説明する断面図であり、(A)はピストンバルブとピストン弁座の間が閉じた状態を示し、(B)はピストンバルブとピストン弁座の間が開いた状態を示す。
【図7】図7は、突起による流路形成を説明する断面図であり、(A)は、液の通路が閉じた状態を示す断面図であり、(B)は、液の通路が開いた状態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態の蓄圧式ディスペンサーにおけるトリガーの回動前を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態の畜圧付与バルブを示す断面図である。
【図10】図10は、ピストンバルブを示す斜視図である。
【図11】図11は、第3の実施形態の畜圧付与バルブの動きを説明する断面図であり、(A)はピストンバルブとピストン弁座との間が開いた状態を示し、(B)はピストンバルブとピストン弁座との間が閉じた状態を示す。
【符号の説明】
【0076】
1…ベース本体
11…シリンダー
11A…段状筒部
11B…導入チューブ
11D…径大部
12…拡張部
13…キャップ
2…ピストン構造体
21…ノズル部
22…連結部
22A…フィン
23…ピストン部
23A…細径部
23B1…第一封止弁
23B2…第二封止弁
23C…溝
23D…ピストン弁座
3…トリガー
31…トリガーバネ
4…カバー体
41…ヒサシ部
5…蓄圧付与バルブ
51…ピストンバルブ
51A…鍔部
51B…突起
52…バネ体
53…ピストンカバー
53A…通路
53B…羽バネ
53B1…分割羽バネ
53B2…分割羽バネ
53B3…分割羽バネ
54…挿入弁座
FV…ファーストバルブ
SP…スピンナー
N…噴射口
S1…通気穴
P1…枢着部
R…収納部
T…突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガーの回動によりシリンダー内のピストン部を上下に摺動させシリンダー内の液体に圧を加えノズル部から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、ピストン部内に蓄圧付与バルブを備えたことを特徴とする蓄圧式ディスペンサー。
【請求項2】
前記蓄圧付与バルブが、ピストンバルブと、該ピストンバルブをピストン弁座に押圧するバネ体と、該ピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとよりなることを特徴とする請求項1記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項3】
前記蓄圧付与バルブが、挿入弁座と、該挿入弁座に当接又は離反するピストンバルブと、該ピストンバルブを挿入弁座に押圧するバネ体と、該挿入弁座に圧入により取り付けられてピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとよりなることを特徴とする請求項1記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項4】
前記蓄圧付与バルブが、ピストン部に形成された溝に圧入されることにより取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項5】
前記挿入弁座がピストンの細径部に圧入されることにより取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項6】
前記ピストンバルブの周囲に鍔部が設けられてピストンカバー内が封止されることによりバネ体の収納部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項7】
前記シリンダー内の液体は、ピストンカバーに形成された通孔を通ってピストン弁座を通過するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項8】
前記ピストンバルブとバネ体とが一体成形されたものであることを特徴とする請求項2又は3記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項9】
前記ピストンカバーとバネ体とが一体成形されたものであることを特徴とする請求項2又は3記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項10】
前記バネ体が前記ピストンカバーの底部に一体に形成された分割された羽バネからなり、前記ピストンバルブの内側にテーパー部が形成され、羽バネが前記テーパー部のテーパー面に当接することによりピストンバルブを弁座に押圧することを特徴とする請求項9記載の畜圧式ディスペンサー。
【請求項11】
前記シリンダーの下部内周面に径大部を設け、該径大部に突起を形成したことを特徴とする請求項1記載の蓄圧式ディスペンサー。
【請求項12】
トリガーの回動によりシリンダー内のピストン部を上下に摺動させシリンダー内の液体に圧を加えノズル部から外部に噴射する蓄圧式ディスペンサーであって、
内側にシリンダーを備え容器本体の口部に取り付け可能なベース本体と、
該ベース本体に取り外し可能に係止されたカバー体と、
該ベース本体に係合するノズル部とピストン部と両者を連結する屈曲可能な連結部よりなるピストン構造体と、
シリンダー内でピストン部を上下に摺動させるためにベース本体に回動可能に取り付けられたトリガーと、
ピストン部内に配設された蓄圧付与バルブと、を備え、
該蓄圧付与バルブが、ピストンバルブと、該ピストンバルブをピストン弁座に押圧するバネ体と、該ピストンバルブとバネ体とを収納するピストンカバーとよりなることを特徴とする蓄圧式ディスペンサー。
【請求項13】
前記ピストン構造体の連結部の周囲に多数のフィンが形成されていることを特徴とする請求項8記載の蓄圧式ディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−160573(P2009−160573A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312593(P2008−312593)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(390028196)キャニヨン株式会社 (42)
【Fターム(参考)】