説明

蓄熱器

【課題】 耐振性能と断熱性能を向上でき、車両に搭載可能な蓄熱器の提供。
【解決手段】 それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器2と外容器3の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器2,3の底部2a,3aに口部パイプ5を嵌挿固定した容器口7を備える蓄熱器1において、両容器2,3の頂部2c,3c同士間及び側壁部2d,3d同士間にそれぞれ緩衝部材13,14を介装し、口部パイプ5に、両容器2,3の底部2a,3a同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部8を設けて内容器2を外容器3に対して弾性支持させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器と外容器の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器の底部に口部パイプを嵌挿固定した容器口を備える蓄熱器の技術が公知になっている(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2002−326674号公報
【特許文献2】特開2004−154338号公報
【特許文献3】特開2004−001623号公報
【特許文献4】特開2004−224153号公報
【特許文献5】特開2004−154338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、蓄熱器が軸方向へ振動した際における耐振性能が低いため、車両のように上下方向の振動が特に大きいものに搭載して使用することができないという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、耐振性能と断熱性能を向上でき、車両へ搭載可能な蓄熱器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器と外容器の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器の底部に口部パイプを嵌挿固定した容器口を備える蓄熱器において、前記両容器の頂部同士間及び側壁部同士間にそれぞれ緩衝部材を介装し、前記口部パイプに、両容器の底部同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部を設けて内容器を外容器に対して弾性支持させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器と外容器の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器の底部に口部パイプを嵌挿固定した容器口を備える蓄熱器において、前記両容器の頂部同士間及び側壁部同士間にそれぞれ緩衝部材を介装し、前記口部パイプに、両容器の底部同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部を設けて内容器を外容器に対して弾性支持させたため、耐振性能と断熱性能を向上でき、車両へ搭載可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は本発明の実施例1の蓄熱器を説明する側断面図、図2は本実施例1の蓄熱器の内容器と外容器を説明する側断面図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1の蓄熱器1は、内容器2と外容器3の間の空間4を真空に保持する二重構造からなり、口部パイプ5と、入出力アダプタ6が備えられている。
【0010】
図2に示すように、内容器2は、金属製で略円柱状に形成される他、その底部2aには開口部を有して下方へ円筒状に突出した環状突起部2bが形成されている。
【0011】
外容器3は、金属製で略円柱状に形成される他、その底部3aには開口部を有して下方へ円筒状に突出した環状突起部3bが形成されている。
【0012】
また、内容器2の環状突起部2bと外容器3の環状突起部3bには、金属製の口部パイプ5が嵌挿固定されることにより下方に開口した容器口7が形成されている。
具体的には、口部パイプ5の上端部は、内容器2の環状突起部2bの内側に接合される一方、下端部は外容器3の環状突起部3bの内側に接合されている。
【0013】
さらに、口部パイプ5の中途部には、両容器2,3の底部2a,3a同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部8が形成され、これによって口部パイプ5は主に軸方向へ伸縮可能になっている。
なお、衝撃吸収部8の波のピッチや形成数等は適宜設定できる。また、先端部の突出長さL1は適宜設定できるが、内容器2の外周との寸法L2が小さいほど好ましい。
【0014】
内容器2と外容器3の頂部2c,3c同士間には、円盤状の緩衝部材13が介装される一方、内容器2と外容器3の側壁部2d,3d同士間には環状の緩衝部材14が介装されている。
また、本実施例1では、各緩衝部材13,14が外容器3の内側に固定され、内容器2との間には隙間W1,W2が設けられて非接触状態となっており、両容器2,3間の僅かな熱伝導も防止できるようになっている。
また、各緩衝部材13,14の形状や厚み、設置数については適宜設定できる。
【0015】
図1に示すように、蓄熱器1の容器口7には、入出力アダプタ6が装着されている。
具体的には、入出力アダプタ6は、それぞれ略L字型の通路R1,R2を有する入口部6aと出口部6bを備えて樹脂で一体的に形成される他、入口部6aの一端側開口部は図中左側に突出する一方、他端側開口部2bには通路R1と内容器2の内部を連通状態とする複数の小孔10aを有する断熱材10が設けられている。
【0016】
また、出口部6bの一端側開口部は、図中右側に突出する一方、他端側開口部には後述する樹脂製のオーバーフローパイプ11の下端部が嵌挿固定されている。
【0017】
オーバーフローパイプ11の上端部は、内容器2の内部上方で開口される一方、下端部は断熱材10を貫通した状態で前述した出口部6bの他端側開口部に嵌挿固定されている。
また、オーバーフローパイプ11の下方内部には、複数の小孔12aを有する断熱材12が設けられている。
【0018】
また、入出力アダプタ6と口部パイプ5との間には、シール部材S1,S2が上下に離間して介装されており、これら両者のシール性が確保されている。なお、シール部材S1,S2の設置位置や設置数は適宜設定できる。
【0019】
その他、図示を省略するが内容器2と外容器3との間の空間4を真空にするための真空引きチップが外容器3の底部に設けられている。
【0020】
従って、本実施例1の蓄熱器1では、内容器2と外容器3の頂部2c,3c同士間及び側壁部2d,3d同士間にそれぞれ緩衝部材13,14が介装された状態で、内容器2が口部パイプ5を介して外容器3に固定され、これによって、内容器2が外容器3に対して弾性支持された状態となっている。
【0021】
次に、作用を説明する。
このように構成された蓄熱器1は、車両に搭載された際に、入出力アダプタ6の入口部6aの一端側開口部が図外の接続パイプに連通接続される一方、出口部6bの一端側開口部が図外の接続パイプに連通接続される。
【0022】
そして、図外の接続パイプから入口部6aの通路R1に流入した高温な流通媒体(破線矢印で図示)は、断熱材10の小孔10aを介して内容器2に流入して保温された状態で貯留される。
この際、内容器2が口部パイプ5を介して外容器3に固定されているため、口部パイプ5の衝撃吸収部8によって断熱長さを長くすることができ、内容器2の熱が外容器2へ逃げるのを低減して断熱性能を向上できる。
また、内容器2に貯留された高温な流通媒体の液面がオーバーフローパイプ11の上端部を超えると、流通媒体が該オーバーフローパイプ11の断熱材12の小孔12a及び出口部6bの通路R2を介して図外の接続パイプから排出される。
【0023】
また、蓄熱器1が主に軸方向(車両上下方向)へ振動した際には、口部パイプ5の衝撃吸収部8が伸縮して振動を吸収でき、耐振性を向上できると同時に、両内容器2,3の底部2a,3a同士の接触による破損・亀裂を防止できる。
【0024】
さらに、各緩衝部材13,14によって両容器2,3の頂部2c,3c同士及び側壁部2d,3d同士の接触による破損・亀裂を防止できる。
【0025】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の蓄熱器1にあっては、それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器2と外容器3の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器2,3の底部2a,3aに口部パイプ5を嵌挿固定した容器口7を備える蓄熱器1において、両容器2,3の頂部2c,3c同士間及び側壁部2d,3d同士間にそれぞれ緩衝部材13,14を介装し、口部パイプ5に、両容器2,3の底部2a,3a同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部8を設けて内容器2を外容器3に対して弾性支持させたため、耐振性能と断熱性能を向上でき、車両へ搭載可能となる。
【0026】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、蓄熱器1の用途については適宜設定でき、この用途に応じて流通媒体の種類や排出構造も適宜変更できる。
一例として蓄熱器1を車両に搭載し、流通媒体をラジエータの冷却水に適用した場合、エンジンの運転中に蓄熱器1でラジエータの冷却水の一部を保温しておき、エンジンの始動時にエンジンへ供給して暖気を速やかに行う等の用途が考えられる。
また、本実施例1では、蓄熱器1に保温された流通媒体は、その液面がオーバーフローパイプ11の上端部を超えると排出されるようになっているが、図外のポンプ等を用いて強制的に排出させる構造としても良い。
また、内容器2と外容器3等の材質については適宜設定でき、各構成部材の接合部同士の固定は溶接に限らず、ろう付けにより固定する場合もあり得る。
さらに、通路R1,R2に流通媒体の逆流防止を目的として逆止弁を設けたり、内容器2に断熱性能・耐久性能の向上を目的として銅メッキ処理等を施すことは当然考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の蓄熱器を説明する側断面図である。
【図2】本実施例1の蓄熱器の内容器と外容器を説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0028】
R1、R2 通路
S1、S2 シール部材
1 蓄熱器
2 内容器
2a (内容器の)底部
2b (内容器の)環状突起部
2c (外容器の)頂部
2d (外容器の)側壁部
3 外容器
3a (外容器の)底部
3b (外容器の)環状突起部
3c (外容器の)頂部
3d (外容器の)側壁部
4 空間
5 口部パイプ
6 入出力アダプタ
6a 入口部
6b 出口部
7 容器口
8 衝撃吸収部
10、12 断熱材
10a、12a 小孔
11 オーバーフローパイプ
13、14 緩衝部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ金属製で中空略円柱状の内容器と外容器の間を真空に保持する二重構造からなり、これら両容器の底部に口部パイプを嵌挿固定した容器口を備える蓄熱器において、
前記両容器の頂部同士間及び側壁部同士間にそれぞれ緩衝部材を介装し、
前記口部パイプに、両容器の底部同士間に介在するように突出する波状の衝撃吸収部を設けて内容器を外容器に対して弾性支持させたことを特徴とする蓄熱器。

【図1】
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【図2】
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