説明

蓄熱性物質の製造装置および製造方法

【課題】温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体との直接接触熱交換による蓄熱性物質の継続的で安定的な生成又は製造、ひいてはその実用化に資する技術を提供すること。
【解決手段】温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、原料液体から蓄熱性物質を生成させるに当たり、原料液体および熱媒液体を導入し、導入された原料液体および記熱媒液体の移動方向を変更し、移動方向が変更された原料液体と熱媒液体とを回転させて、それにより生じる遠心力の作用により分離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と液体とを直接接触させて両液体間で熱交換(液−液直接接触熱交換という)を起こし、一方の液体から目的物質を生成又は製造する技術、より詳しくは、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体とその原料液体とは比重が異なる熱媒液体とを直接接触させて、液−液直接接触熱交換を起こし、当該原料液体から当該蓄熱性物質を生成又は製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原料液体と、それと比重が異なる熱媒液体との直接接触熱交換を通じて、原料液体から蓄熱性物質を生成又は製造する技術として、製氷用の水と非水溶性液体との直接接触熱交換を通じてスラリー状の氷を製造する例(特許文献1〜5)、包接水和物を生成する薬剤の水溶液と熱媒液体との直接接触熱交換を通じて、その水溶液の中に包接水和物を生成する例(特許文献6)が知られている。
【0003】
一方、原料液体と、それと比重が異なる熱媒液体との直接接触熱交換を通じて、原料液体から蓄熱性物質を生成又は製造する技術は、それが直接接触熱交換の手法を採用しているが故の技術的課題を抱えている。つまり、原料液体と熱媒液体とを直接接触させて熱交換させると、蓄熱性物質を生成又は製造した後の原料液体と熱媒液体の分離が難しくなる。特に、両液体間の熱交換効率を高めるために、一方の液体を微細化して表面積を高めて他方の液体に導入すると、両液体の分離がより難しくなる。原料液体と熱媒液体の分離が難しいと、熱媒液体の中に混合していた原料液体から蓄熱性物質が望まれずして生成し、それが周辺の部材の表面(例えば、槽や配管の内壁面、熱媒液体と接触する熱交換器の熱交換面など)に付着し、時間の経過に伴い成長して、原料液体や熱媒液体の流通を阻害し、目的物質の生成又は製造が困難になる。
【0004】
原料液体と熱媒液体の分離を難しくしている一因は、両液体間でエマルジョン化が起こること、一方の液体中に他方の液体の粒子が長時間浮遊し続けること、原料液体から生成した蓄熱性物質の中に原料液体や熱媒液体が取り込まれること、といった現象にある(特許文献4、6参照)。
【0005】
このために、従来例においては、原料液体と熱媒液体とを分離する分離膜を設けること(特許文献1);原料液体と熱媒液体とを熱交換する槽と、両液体の比重差を利用して鉛直方向の自然な重力分離を促す分離槽とを別体にすること(特許文献2、3);原料液体と熱媒液体とを熱交換する槽の外部に、原料液体が混合した熱媒液体を渦流にし、それにより生じる遠心力の作用により両液体を分離する遠心分離装置を追加すること(特許文献4);熱媒液体との熱交換により原料液体から生成する蓄熱性物質から原料液体が抜け出し易くなるように、原料液体における水和物生成薬剤の濃度を予め調整しておくこと(特許文献6)、といった工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−25664号公報
【特許文献2】特開平2−97845号公報
【特許文献3】特開平3−140767号公報
【特許文献4】特許開5−240476号公報
【特許文献5】特開平9−101072号公報
【特許文献6】特開2010−230228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、原料液体と熱媒液体との直接接触熱交換を通じて、当該原料液体から蓄熱性物質を生成又は製造する技術の実用化のためには、上記の従来例における工夫だけでは足りない。
【0008】
まず、原料液体と熱媒液体との直接接触熱交換を通じて当該原料液体から蓄熱性物質を生成又は製造することの利点の一つは、両液体間の熱交換の効率を高めることができることにある。両液体間の熱交換の効率は、両液体間の混合の度合いが高いほど高くなる。しかし、実際には、両液体を完全に混合させることは難しく、それ故に両液体間の熱交換効率は100%未満の水準に止まってしまう。その反面、両液体を完全に混合させて両液体間の熱交換効率を高めようとすると、今度は両液体間の分離が難しくなる。
【0009】
両液体の分離を分離膜を設けることにより行うと(特許文献1参照)、分離膜が有する処理能力を超えるような蓄熱性物質の製造ができない。また、この分離膜では両液体のエマルジョン化や一方の液体中に他方の液体の粒子が長時間浮遊し続けるといった原因の有効な対策にならない(特許文献4参照)。
【0010】
分離槽(特許文献2、3参照)は、両液体の比重差を利用して鉛直方向の自然な重力分離を促す構造を有している。しかし、このような構造で両液体を分離するには時間がかかる。また、両液体がエマルジョン化している場合や一方の液体中に他方の液体の粒子が浮遊し続けている場合には、時間をかけても効果的に分離することができないし、短時間で望ましい水準まで分離することはできない。また、このような構造で両液体を分離するためには、背丈(鉛直方向の高低差)が大きい分離槽が必要になるので、製造設備を大型化しなければならなくなる。熱媒液体は高価なものが多いので、分離槽を設けた分だけ熱媒液体が余計に必要になり、その分コストの増加を助長するおそれもある。
【0011】
両液体を熱交換する槽や分離する槽の外部に渦流による遠心分離装置を追加することにより(特許文献4参照)、分離槽の背丈の増加をある程度は回避することができる。しかし、渦流に起因して生じる遠心力は、両液体を分離する強制力としては大きくなく、両液体のエマルジョン化が生じたり、一方の液体中に他方の液体の粒子が長時間浮遊し続けている場合には、対策としては十分とはいえない。また、遠心分離装置を単純に追加しただけでは、両液体がその遠心分離装置に辿り着く前に周辺の部材の表面に付着してしまうし、また、遠心分離装置を追加した分だけ製造設備を大型化しなければならなくなり、熱媒液体が余計に必要になるので、その分コストの増加を助長するおそれもある。
【0012】
原料液体における水和物生成薬剤の濃度を予め調整すれば(特許文献6参照)、原料液体とそこから生成する蓄熱性物質との分離は促進されるが、原料液体と熱媒液体との分離には効果がない。
【0013】
原料液体と熱媒液体との直接接触熱交換を通じて当該原料液体から蓄熱性物質を生成又は製造する技術の実用化を目指すのであれば、少なくとも、両液体の分離をより効果的に行い、その分離の程度を、当該蓄熱性物質の製造を長時間にわたり又は連続的に行うこと(短い時間間隔で、間欠的に行うことも含む)ができる程の水準にまで高める必要がある。
【0014】
また、直接接触した原料液体と熱媒液体との分離をより効果的に行ってもなお、当該蓄熱性物質の長時間にわたる連続的な製造を妨げかねないほどに当該蓄熱性物質が周辺の部材の表面に付着するようであれば、その付着物を除去する対策も必要である。
【0015】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたものであり、互いに直接接触して熱交換を行う原料液体と熱媒液体との混合の度合いを高めつつ分離をより効果的に行うことにより、両液体の直接接触熱交換による蓄熱性物質の生成又は製造を実現する技術、望ましくはそのような生成又は製造をより長時間にわたり又は連続的に行うことができる実用化に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させる蓄熱性物質の製造装置であって、前記原料液体および前記熱媒液体を導入する導入機構と、 前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動機構と、前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体を回転させ、遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第1の形態に係る製造装置において、前記移動機構は、回転部材を備え、前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転部材の回転の作用により前記遠心分離機構に向けて移動させる機構であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を導入する導入機構と、該導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換を開始する接触領域と、該接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動機構と、前記接触領域のまわりで回転する回転体を備え、前記移動機構により移動方向が変更された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体の作用により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、を具備することを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第3の形態に係る製造装置において、前記回転体は、上部と下部のそれぞれの位置に、前記接触領域が位置する内側から回転体の外側に向けて液体の移動を可能にする排出機構を更に具備することを特徴とする。
【0020】
本発明の第5の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第3または第4の形態に係る製造装置において、前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を除去する付着物除去機構を更に具備することを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第3乃至第5のいずれかの形態に係る製造装置において、前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体に含まれる前記蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子を、前記原料液体から選択的に分離する選択分離機構を更に具備することを特徴とする。
【0022】
本発明の第7の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第3乃至第6のいずれかの形態に係る製造装置において、前記熱媒液体は、前記原料液体より比重が大きい液体であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第8の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第3乃至第7の形態に係る製造装置において、前記移動機構は、前記回転体と同軸に回転する回転部材を備え、前記接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転部材の回転の作用により前記遠心分離機構に向けて移動させる機構であることを特徴とする。
【0024】
本発明の第9の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第8の形態に係る製造装置において、前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転主面に向けて放出する機構であることを特徴とする。
【0025】
本発明の第10の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第8の形態に係る製造装置において、前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転軸に沿って前記回転部材の回転主面の回転中心又はその近傍に向けて放出する機構であることを特徴とする。
【0026】
本発明の第11の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第8の形態に係る製造装置において、前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、原料液体用配管および熱媒液体用配管を通じてそれぞれ前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転主面に向けて放出する機構であり、前記原料液体用配管および熱媒液体用配管は、一方が他方の管内に位置するか又は一方が他方の管内に位置することなく互いに隣接若しくは近接して位置する配管であることを特徴とする。
【0027】
本発明の第12の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第8乃至第11のいずれかの形態に係る製造装置において、前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部をスクレーパを用いて除去する付着物除去機構を更に備え、前記スクレーパは、前記接触領域および前記回転部材から離隔した位置にあって、前記回転体と同軸で且つ異なる速度で、前記回転部材とともに回転するスクレーパであることを特徴とする。
【0028】
本発明の第13の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させる蓄熱性物質の製造装置であって、前記原料液体および前記熱媒液体を導入する導入機構と、回転部材を備え、前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動機構と、前記回転部材のまわりで前記回転部材と同軸に回転する回転体を備え、前記移動機構による移動方向が変更された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体の作用により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、を具備することを特徴とする。
【0029】
本発明の第14の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体より比重が大きい熱媒液体を導入する導入機構と、該導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換を開始する接触領域と、該接触領域のまわりで回転する回転体を備え、該接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体の作用により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、前記回転体と同軸に回転する回転部材を備え、前記接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を、前記回転部材の回転の作用により前記回転体に向けて変更させる移動機構と、前記回転体の上部および下部のそれぞれに配置され、前記接触領域が位置する前記回転体の内側から外側に向けて液体の移動を可能にする排液路と、前記回転体と同軸でかつ異なる速度で前記回転部材とともに回転するとともに、前記回転体の下部に配置する前記排液路の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を除去するスクレーパと、を具備することを特徴とする。
【0030】
本発明の第15の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させる蓄熱性物質の製造方法であって、前記原料液体および前記熱媒液体を導入する導入工程と、前記導入工程において導入された前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動工程と、前記移動工程により移動方向が変更された前記原料液体および前記熱媒液体を回転体により回転させ、遠心力の作用により分離させる遠心分離工程と、を有することを特徴とする。
【0031】
本発明の第16の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を導入する導入工程と、該導入工程において導入された前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部を接触領域において互いに直接接触させ、それにより前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換を開始する接触工程と、該接触工程において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記接触領域のまわりで回転する回転体に向けて移動させる移動工程と、該移動工程において前記接触領域から移動した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離工程とを具備することを特徴とする。
【0032】
本発明の第17の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第16の形態に係る製造方法において、前記遠心分離工程において分離された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記接触領域が位置する前記回転体の内側から外側に向けて移動させる排出工程を更に具備することを特徴とする。
【0033】
本発明の第18の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第16又は第17の形態に係る製造方法において、前記遠心分離工程において前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を除去する付着物除去工程を更に具備することを特徴とする。
【0034】
本発明の第19の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第16乃至第18のいずれかの形態に係る製造方法において、前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体に含まれる前記蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子を、その原料液体から選択的に分離する選択分離工程を更に備えることを特徴とする。
【0035】
本発明の第20の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第16乃至第19のいずれかの形態に係る製造方法において、前記熱媒液体は、前記原料液体より比重が大きい液体であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第21の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第16乃至第19のいずれかの形態に係る製造方法において、前記導入工程は、前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれを、前記回転体と同軸に回転する回転部材に向けて放出する工程であり、前記移動工程は、前記回転部材の回転の作用により前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の側から前記回転体に向かって移動させる工程であることを特徴とする。
【0037】
本発明の第22の形態に係る蓄熱性物質の製造方法は、第21の形態に係る製造方法において、前記遠心分離工程において前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部をスクレーパを用いて除去する付着物除去工程を更に具備し、前記スクレーパは、前記接触領域および前記回転部材から離隔した位置に位置して、前記回転体と同軸で且つ異なる速度で、前記回転部材とともに回転するスクレーパであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、原料液体と熱媒液体との直接接触熱交換を通じて当該原料液体から蓄熱性物質を製造する製造装置において、原料液体と熱媒液体との混合を促進し、直接接触熱交換の程度を増やすことができるとともに、両液体の分離をより効果的に行うことができる。
【0039】
また、本発明の好ましい態様によれば、直接接触熱交換後の原料液体と熱媒液体との分離を蓄熱性物質の製造を阻害しない水準まで高めることができ、当該蓄熱性物質の製造をより長時間にわたり又は連続的に行うことができる。
【0040】
また、本発明の好ましい別の態様においては、熱媒液体と原料液体とを分離するための遠心分離機構を蓄熱性物質の製造装置の内部に設けており、外部に設ける必要がないので、製造装置を全体としてコンパクトでシンプルにすることができ、また、比重差のある熱媒液体と原料液体とを遠心分離により分離するため、分離機構をコンパクトにすることができ、分離のための動力を小さくすることができる。
【0041】
それ故、本発明の好ましい別の態様によれば、大型化や熱媒液体の使用量の増加を伴わない蓄熱性物質の生成又は製造技術(装置および方法)を実現することができる。
【0042】
本発明の各形態による効果は、以下の通りである。
【0043】
(1)本発明の第1の形態においては、互いに比重が異なる二つの液体、つまり原料液体および熱媒液体に遠心力を作用させるので、高い効率で両液体を分離することができる。加えて、互いに比重の異なる両液体の移動方向を変更させるので、その変更の過程で両液体間の接触の機会が増えるか又は両液体の混合が促進する。また、両液体を遠心力の作用により分離させる過程で両液体間の接触の機会が増える可能性もある。それ故、本発明の第1の形態によれば、原料液体と熱媒液体との接触の機会を増やす又は混合を促進することにより直接接触熱交換の程度を増やすことができるとともに、両液体の分離をより効果的に行うことができる。
【0044】
なお、本発明の第1の形態において、移動機構により移動方向が変更される前の原料液体および熱媒液体は、直接接触する前のものであってもよく、直接接触した後のものであってもよい。
【0045】
(2)本発明の第2の形態においては、互いに比重が異なる原料液体および熱媒液体の移動方向を回転部材の回転の作用により変更させ、遠心分離機構に向けて移動させる。この場合、両液体は、回転部材により回転しその際生じる遠心力の作用を受けて、又は回転する回転部材の表面との接触の際に剪断力を受けて当該回転部材の周囲に向けて放射方向に飛散する。そのような移動方向の変更は、両液体間の接触の機会を増やす又は両液体の混合を促進させる。また、引き続く両液体の遠心力の作用による分離の過程で両液体間の接触の機会を多少なりとも増やすことも可能性である。それ故、本形態によれば、回転部材という比較的簡素な手段により、直接接触熱交換の程度を増やすことができる。
【0046】
また、本発明の第2の形態においては、両液体は、回転部材の回転の作用により比較的均一に分散して当該回転部材の周囲に向けて放射方向に飛散するので、蓄熱性物質の回転部材への付着と成長が起こりにくくなり、遠心分離機構の特定箇所に過度に偏ることなく当該遠心分離機構に到達し、遠心分離機構全体にわたって比較的均一に行き渡る。このことは、遠心分離機構の動作に無理が生じにくく、従って不具合が生じにくくなることを意味している。それ故、本形態によれば、回転部材という比較的簡素な手段により、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合を発生しにくくすることができ、装置の故障の頻度を減らすことができる。
【0047】
(3)本発明の第3の形態においては、遠心分離機構が具備する回転体が、接触領域のまわりを回転しているので、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体が移動機構により遠心分離機構に向けて移動する距離は短く、従ってその移動時間も短い。それ故、本形態によれば、熱媒液体との直接接触による熱交換を通じて原料液体から生成する蓄熱性物質が周辺の部材の表面に付着する前に又はその付着が顕著になる前に、より強力な遠心力の作用により両液体を分離することができる。
【0048】
また、本発明の第3の形態によれば、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を移動機構により遠心分離機構に向けて移動させるので、両液体を確実に遠心分離機構により分離することができる。
【0049】
従って、本形態によれば、両液体の分離を、蓄熱性物質の付着を抑制しつつより効果的に行うことができる。このことは、両液体の分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高め得ることに通じる。また、この両液体の分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高める効果は、本発明の他の形態により更に顕著になる。
【0050】
また、遠心分離機構により分離する両液体にはそもそも比重差があるので、遠心分離機構が具備する回転体の回転速度を高くしなくても、両液体を遠心力の作用により分離させることができ、その際の分離効率も高い。従って、本発明の第1の形態によれば、両液体の高い分離効率を維持したままで遠心分離機構の動力を低減させることができるので、エネルギー消費を抑えることと、遠心分離機構の故障を起こりにくくすることと、遠心分離機構の駆動源(モータ)を比較的小型化できること、といった効果を得ることができる。
【0051】
更に、本形態によれば、一つの装置内での構成により原料液体と熱媒液体との直接接触による熱交換と両液体の分離を行うので、換言すれば一つの装置の中に導入機構、接触領域、移動機構および遠心分離機構が構成されているので、製造装置そのものがコンパクトになり、その分だけ熱媒液体の使用量の増加を回避することができる。
【0052】
(4)本発明の第4の形態においては、遠心分離機構により分離した互いに比重が異なる原料液体および熱媒液体が、回転体がその上部と下部のそれぞれの位置に備える排出機構により当該回転体の外側に移動するので、接触領域から両液体が連続して移動してきても遠心分離機構において滞留することがない。それ故、本形態によれば、遠心分離機構における両液体の分離を原料液体および熱媒液体の分離を断続させずに又は長時間にわたり連続的に行うことができ、直接接触熱交換を行った後の原料液体と熱媒液体との分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0053】
(5)本発明の第5の形態においては、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体と接触し得る部材(原料液体と接触し得るものである限り、遠心分離機構又は回転体を構成する部材を含む)の表面に蓄熱性物質が付着しても、その付着した蓄熱性物質を付着物除去機構により除去することができるので、当該表面には蓄熱性物質の付着や成長が起こりにくくなる。それ故、本形態によれば、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合が発生しにくくなるので、製造装置の故障の頻度を減らすことができるか又はその故障の原因やその影響を減らすことができ、製造方法の実行を妨げる要因やその影響を減らすことができ、蓄熱性物質の生成又は製造の効率を高めることができる。
【0054】
また、本形態によれば、付着物除去機構およびその働きにより、蓄熱性物質が製造装置内に堆積することなく連続的に外部に排出されるので、両液体の直接接触による熱交換が滞りなく、繰り返し、円滑に進行する。その結果、蓄熱性物質のスラリーの長時間にわたるか又は連続的な製造を実現することができる。
【0055】
(6)遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体に含まれる蓄熱性物質の粒子が別の蓄熱性物質の生成核となり得ることを考慮すると、当該蓄熱性物質の粒子の大きさは均一であるとは限らない。特に、スクレーパに代表される付着物除去機構により部材の表面に付着した蓄熱性物質を除去する場合には、付着物の成長の程度に違いがあることから、除去される付着物の大きさは変わってくる。原料液体の中に分散又は懸濁する蓄熱性物質の粒子の大きさが均一でないと、配管の閉塞、圧力損失の増大やポンプ動力の変動などの問題が生じ、蓄熱性物質を連続的又は長時間に製造することが難しくなる。
【0056】
これに対し、本発明の第6の形態によれば、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体に含まれる蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子を選択分離機構により除去することができるので、上記の問題の発生を防止又は抑制することができ、直接接触熱交換を行った後の原料液体と熱媒液体との分離を、蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0057】
なお、選択分離機構の典型例としては、ざる、ふるい、スクリーン、フィルター、ろ過器などが挙げられる。
【0058】
(7)本発明の第7の形態においては、熱媒液体は、原料液体より比重が大きい液体であるので、回転体の回転軸から半径方向の外側に向かって原料液体と熱媒液体に遠心力が作用するとき、原料液体と接触する可能性がある部材(原料液体と接触する可能性がある部材である限り、遠心分離機構又は回転体を構成する部材を含む)の表面(特に内壁面)に熱媒液体が偏在して層状を呈し、それにより原料液体が当該部材の表面に直接触れる機会が減少する。このことは、当該原料液体から生成する蓄熱性物質が当該部材の表面に付着しにくくなり、成長もしにくくなることを意味している。それ故、本形態によれば、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合の発生を抑えることができ、従って製造装置の故障の頻度を減らすことができ、また蓄熱性物質の生成又は製造の効率を高めることができる。
【0059】
(8)本発明の第8の形態においては、直接接触した原料液体および熱媒液体は、回転体と同軸に回転する回転部材のその回転の作用により、当該回転部材の側から遠心分離機構に向けて移動する。この場合、両液体は、回転部材により回転し、その際生じる遠心力の作用を受けて、又は回転する回転部材の表面との接触の際に剪断力を受けて、比較的均一に分散して当該回転部材の周囲に向けて放射方向に飛散する。このことは、熱媒液体との直接接触による熱交換を通じて起こる原料液体からの蓄熱性物質の生成が装置内で局在化しにくいこと、それ故装置内の特定箇所に当該蓄熱性物質が付着し成長する事態が起こりにくいことを意味しており、また、両液体が、遠心分離機構が具備する回転体の特定箇所に過度に偏ることなく当該遠心分離機構に到達すること、それ故両液体の分離にかかる負荷が遠心分離機構全体(特に回転体の周まわり)にわたって比較的均一に行き渡り、遠心分離機構の動作に無理が生じにくく、従って不具合が生じにくくなることを意味している。
【0060】
従って、本形態によれば、一つの製造装置内で、熱媒液体との直接接触による原料液体からの蓄熱性物質の生成および両液体の分離を行うように構成しても、その製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合を発生しにくくすることができ、装置の故障の頻度を減らすことができる。
【0061】
また、回転部材は、接触領域から移動してくる原料液体および熱媒液体に対して障害物として、しかもその移動の方向を変更させる障害物として機能する。回転部材が障害物として機能しないと、両液体が遠心分離機構を経由することなく回転部材の背面側に移動してしまい、遠心分離機構における両液体の分離が起こらなくなる。また、製造装置の内部構造によっては、回転部材の背面側にある空間内に両液体が滞留して、製造装置の正常な動作を妨げることにもなり兼ねない。
【0062】
従って、本形態によれば、回転部材という簡単な仕組みの移動機構により、両液体を確実に遠心分離機構に導くことができるので、蓄熱性物質の製造装置はその実用化に好適な態様となる。
【0063】
また、本形態によれば、両液体の移動方向を変更させることにより、その変更の過程で両液体間の接触の機会を増やすか又は両液体の混合を促進することができる、それに加えて両液体を遠心力の作用により分離させる過程で両液体間の接触の機会を増やすことができる可能性もあるので、蓄熱性物質の製造装置はその実用化により好適な態様となる。
【0064】
(9)直接接触した原料液体および熱媒液体は、回転部材の回転主面と接触すると、その接触の際、剪断力を受ける。その剪断力が過大であると、両液体がエマルジョン化したり、一方の液体中に他方の液体の粒子が浮遊し易くなり、遠心分離機構による両液体の分離がより困難になるという問題が生じる。
【0065】
これに対し、本発明の第9の形態においては、回転部材の回転主面が、回転体とともに鉛直の回転軸まわりに同軸で同方向に回転するので、両液体は回転部材により過大な剪断力を受けることなく回転体に向けて移動する。それ故、本形態によれば、当該問題の発生を防止又は抑制することができる。
【0066】
また、本形態においては、回転部材の回転主面が水平であり、その回転主面が回転体とともに鉛直の回転軸まわりに同軸で同方向に回転する。このことは、両液体が回転主面に接触して剪断力を受けるとき、両液体は、水平面視において、当該回転主面上でより均一に分散し、回転体の周まわりに、より均一な放射状を呈して飛び散り、従って回転体の回転の作用をより均一に受け易くなることを意味している。
【0067】
従って、本形態によれば、第8の形態の奏する効果がより顕著になる。
【0068】
(10)本発明の第10の形態においては、原料用液体および熱媒液体を回転部材の回転軸に沿って、従って回転部材の回転主面に直角又は概ね直角に、当該回転部材の回転主面の回転中心又はその近傍に向けて放出する。この場合、両液体は、まず回転部材の回転主面に衝突し又は回転部材の回転主面上に配置し、次いで回転部材の回転主面の中心又はその近傍から当該回転主面の外縁に向かって、さらにはその周囲に配置する回転体に向かって移動するので、水平面視において、当該回転主面上で更に均一に分散し、回転体の周まわりに、更に均一な放射状を呈して飛び散り、回転体の回転の作用を更に均一に受け易くなる。従って、本形態によれば、第8の形態の奏する効果がより顕著になる。
【0069】
(11)本発明の第11の形態においては、原料液体用配管および熱媒液体用配管は、一方の配管が他方の配管内に位置していてもよいし、一方の配管が他方の管内に位置することなく互いに隣接若しくは近接して位置していてもよい。前者は、二重管状態にある場合であり、後者は、二重管状態ではなく、二つの独立の管が横並びしている状態にある場合である。いずれの配管配置であっても、第9又は第10の形態が奏する効果を得ることができる。
【0070】
尤も、一方が他方の管内に位置していていると、原料液体用配管から放出する原料液体の周囲を熱媒液体用配管から放出する熱媒液体が取り囲む(或いは、逆に、熱媒液体用配管から放出する熱媒液体の周囲を原料液体用配管から放出する原料液体が取り囲む)ために、原料液体用配管の放出開口部に原料液体から生成した蓄熱性物質が付着し成長し易くなり、当該原料液体用配管からの原料液体の継続的で安定的な放出が困難になる場合がある。
【0071】
これに対して、二つの独立の管が横並びしている場合には、一方の液体の周囲を他方の液体が取り囲む配置にはならないので、原料液体用配管の放出開口部への蓄熱性物質の付着が起こりにくい。従って、本形態においてより好ましい態様は、原料液体用配管および熱媒液体用配管が互いに隣接若しくは近接して配置している場合であり、この態様であれば、配管位置の他の態様に比べて、両液体をより継続的で安定的に放出することができる。
【0072】
(12)接触領域において直接接触した原料液体と熱媒液体とは、その直接接触により熱交換を開始するものの、すべての原料液体がすべての熱媒液体と熱交換を直ちに完了させるとは限らず、また直接接触した直後の瞬時に当該原料液体から蓄熱性物質が生成するとも限らない。それ故、原料液体から生成する蓄熱性物質が付着する場所は、多くの場合、接触領域および回転部材から離隔した位置に配置された、原料液体と接触し得る部材(原料液体と接触し得るものである限り、遠心分離機構又は回転体を構成する部材を含み得る)の表面になる。より具体的には、蓄熱性物質は、原料液体が熱媒液体より比重が小さい場合には、接触領域および回転部材より鉛直上方に配置された部材の表面に、原料液体が熱媒液体より比重が大きい場合には、接触領域および回転部材より鉛直下方に配置された部材の表面に、付着し、成長し易い。
【0073】
これに対し、本発明の第12の形態によれば、そのような位置に配置された部材の表面から付着物をスクレーパにより除去することができるので、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合が発生しにくくなる。それ故、本形態によれば、第5の形態の奏する効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、スクレーパは、接触領域および回転部材から離隔した位置に配置された部材の表面の付着物を除去するので、遠心分離機構における処理を経て分離した原料液体と熱媒液体を再度攪拌することがなく、両液体の分離を阻害しない。また、接触領域のまわりで回転する回転体との干渉が起こらないので、製造装置の設計に支障を来さない。しかもスクレーパは回転体と同軸に、異なる速度で回転するので(換言すれば回転体とともに回転することがないので)、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体から生成する蓄熱性物質が当該部材の表面に付着しても、これを効果的に除去することができる。
【0075】
更に、スクレーパは回転部材とともに回転するので、スクレーパを回転させるための機構を特別に追加するまでもなく、回転部材を回転させるための機構で間に合わせることができ、場合によってはこれを回転部材と一体的なコンパクトな構成に設計することができるので、製造装置が過度に複雑なものになることを回避することができる。
【0076】
(13)本発明の第13の形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、第1の形態を基礎として、これを第2の形態に特定したものなので、第1、第2の各形態が奏する効果を得ることができる。
【0077】
また、本形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、遠心分離機構を、回転部材と同軸に回転する回転体を備え、移動機構による移動方向が変更された原料液体および熱媒液体を、前記回転体の作用により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離機構に限定した形態に相当する。既述のとおり、遠心分離機構により分離する両液体にはそもそも比重差があるので、遠心分離機構が具備する回転体の回転速度を高くしなくても、両液体を遠心力の作用により分離させることができ、その際の分離効率も高い。それ故、本発明の第13の形態によれば、両液体の高い分離効率を維持したままで遠心分離機構の動力を低減させることができ、エネルギー消費を抑えることと、遠心分離機構の故障を起こりにくくすることと、遠心分離機構の駆動源(モータ)を比較的小型化できること、といった効果を得ることができる。
【0078】
(14)本発明の第14の形態は、第3の形態を基礎として、これを第4、第8および第12の形態により特定した形態に相当する。従って、本形態によれば、第3、第4、第8および第12の各形態が奏する効果を得ることができる。
【0079】
なお、本発明の蓄熱性物質の製造装置においては、更に、以下の付随的効果が得られる。
【0080】
(A)回転部材は、移動機構を構成するものとして、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を移動機構により遠心分離機構に向けて移動させるに足るだけの速度で回転すれば十分であるので、その回転速度は、両液体を回転させて遠心力の作用を発生させる回転体のそれを超えるほどに設定する必要はない。回転部材の回転速度をより小さく設定すれば、その回転に要するエネルギー消費を抑えることができ、低速回転が可能になる分、製造装置の故障の発生頻度も抑えることができる。それ故、蓄熱性物質の製造装置の態様は、回転部材の回転速度が回転体のそれよりも小さい場合に、より好ましいものとなる。
【0081】
(B)回転部材の回転速度を調整すれば、原料液体および熱媒液体が回転部材から受ける剪断力を適度な大きさに設定することができるので、両液体の直接接触を促進することができる。このことにより、接触領域を通過せずに互いに未接触のままで回転部材に到達した両液体や、接触領域を通過したものの、熱交換が不十分なままで回転部材に到達した両液体を、回転部材において直接接触させることができる。それ故、回転部材を両液体の直接接触による熱交換を促進する手段として利用することは、それにより、全体として、両液体の直接接触による熱交換を促進し、蓄熱性物質を効率的に生成又は製造することができるので、非常に有益である。
【0082】
(C)スクレーパは、部材に付着した付着物を除去するに足るだけの速度で回転すれば足りるので、回転部材と同様に、その回転速度を回転体のそれを超えるほどに設定する必要はなく、回転部材の回転速度をより小さく設定することにより、その回転に要するエネルギー消費を抑えることができ、低速回転が可能になる分、製造装置の故障の発生頻度も抑えることができる。それ故、蓄熱性物質の製造装置の態様は、スクレーパの回転速度が回転体のそれよりも小さい場合に、より好ましいものとなる。特に、スクレーパが回転部材とともに回転する態様においては、その回転速度を回転部材の回転速度をより小さく設定することの利点はより大きくなるので、更に好ましいものとなる。
【0083】
(15)本発明の第15の形態においては、互いに比重が異なる原料液体および熱媒液体に遠心力を作用させるので、高い効率で両液体を分離することができる。加えて、互いに比重の異なる両液体の移動方向を変更させるので、その変更の過程で両液体間の接触の機会が増えるか又は両液体の混合が促進する。また、両液体を遠心力の作用により分離させる過程で両液体間の接触の機会が増える可能性もある。それ故、本発明の第15の形態によれば、原料液体と熱媒液体との接触の機会を増やす又は混合を促進することにより直接接触熱交換の程度を増やすことができるとともに、両液体の分離をより効果的に行うことができる。
【0084】
互いに比重が異なる原料液体および熱媒液体の移動方向は回転部材の回転の作用により変更させるので、その変更の過程で両液体間の接触の機会を増やす又は両液体の混合を促進させることができる。また、引き続く両液体の遠心力の作用による分離の過程で両液体間の接触の機会を多少なりとも増やすことも可能性である。それ故、本形態によれば、回転部材という比較的簡素な手段により、直接接触熱交換の程度を増やすことができる。
【0085】
更に、本発明の第15の形態においては、両液体は、回転部材の回転の作用により比較的均一に分散して当該回転部材の周囲に向けて放射方向に飛散するので、蓄熱性物質の回転部材への付着と成長が起こりにくくなり、遠心分離機構の特定箇所に過度に偏ることなく当該遠心分離機構に到達し、遠心分離機構全体にわたって比較的均一に行き渡る。それ故、本形態によれば、遠心分離機構の動作に無理が生じにくく、従って不具合が生じにくくなるので、回転部材という比較的簡素な手段により、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合を発生しにくくすることができ、装置の故障の頻度を減らすことができる。
【0086】
なお、本発明の第15の形態において、移動工程により移動方向が変更される前の原料液体および熱媒液体は、直接接触する前のものであってもよく、直接接触した後のものであってもよい。
【0087】
(16)本発明の第16の形態においては、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を回転させ、遠心力を生じさせる回転体が、当該接触領域のまわりを回転しているので、両液体が直接接触してから遠心力の作用により分離されるまでの時間が短い。それ故、熱媒液体との直接接触による熱交換を通じて原料液体から生成する蓄熱性物質が周辺の部材の表面に付着する前に又はその付着が顕著になる前に、より強力な遠心力の作用により両液体を分離することができる。また、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を、移動工程において、当該回転体に向けて移動させるので、両液体に確実に遠心力を作用させることができる。従って、本形態によれば、両液体の分離を蓄熱性物質の付着を抑制しつつより効果的に行うことができる。このことにより、両液体の分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0088】
また、両液体には比重差があるので、回転体の回転速度を高くしなくても、両液体を遠心力の作用により分離させることが比較的容易であり、その際の分離効率も比較的高い(原料溶液との比重差がより大きい熱媒液体を選択すれば、分離がより容易になり、分離効率もより高まる)。従って、本形態によれば、両液体の高い分離効率を維持したままで、遠心分離機構の動力を低減させることができるので、エネルギー消費を抑えることができる、装置の故障の頻度を減らすことができる、回転体の駆動源(モータ)を比較的小型化できる、といった効果を得ることができる。更に、本形態によれば、製造工程をコンパクトな空間内で実行することができ、その分、熱媒液体の使用量の増加を回避することができる。
【0089】
(17)本発明の第17に形態においては、遠心分離工程において分離した互いに比重が異なる原料液体および熱媒液体を、排出工程において回転体の外側に移動させる。それ故、本形態によれば、移動工程において接触領域から両液体が連続して移動してきても遠心分離工程を断続させずに、又は長時間にわたり連続的に実行することができるので、直接接触熱交換を行った後の原料液体と熱媒液体との分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0090】
(18)本発明の第18の形態においては、遠心分離工程において熱媒液体から分離された原料液体と接触し得る部材(原料液体と接触し得るものである限り、回転体を構成する部材を含む)の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を当該表面から除去するので、当該表面に付着又は成長した蓄熱性物質はない。それ故、この形態によれば、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合が発生しにくくなるので、製造方法の実行を妨げる要因やその影響を減らすことができ、蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0091】
(19)本発明の第19の形態によれば、遠心分離工程において熱媒液体から分離された原料液体に含まれる蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子を、選択分離工程において除去するので、配管の閉塞、圧力損失の増大やポンプ動力の変動といった、蓄熱性物質の連続的又は長時間の製造を阻害する原因の発生を防止又は抑制することができ、直接接触熱交換を行った後の原料液体と熱媒液体との分離を蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0092】
(20)本発明の第20の形態においては、熱媒液体は、原料液体より比重が大きい液体であるので、回転体の回転軸から半径方向の外側に向かって原料液体と熱媒液体に遠心力が作用するとき、原料液体と接触する可能性がある回転体を構成する、原料液体が接触し得る部材(原料液体と接触し得るものである限り、回転体を構成する部材を含み得る)の内壁面にまず熱媒液体の層を形成することができ、それにより原料液体が当該部材の内壁面に直接触れにくくなる。その結果、当該原料液体から生成する蓄熱性物質が当該部材の内壁面に付着しにくくなり、成長もしにくくなる。それ故、本形態によれば、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合の発生を抑えることができるので、製造工程を実行しても機械的なトラブルが発生する頻度を減らすことができ、また蓄熱性物質の生成又は製造を阻害しない水準まで高めることができる。
【0093】
(21)本発明の第21の形態においては、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体が回転部材に向けて放出され、当該回転部材と衝突又は当該回転部材上に位置し、次いで当該回転部材の回転の作用を受けて回転体に向けて移動する。この際、両液体は比較的均一に分散して当該回転部材の周囲に向けて放射方向に飛散するので、両液体を回転させて遠心力を作用させて分離する回転体に過度に偏ることなく到達する。それ故、本形態によれば、遠心分離工程における当該回転体の動作に無理がなく、従って不具合が生じにくくなり、装置の故障の頻度も減らすことができる。
【0094】
また、回転部材は、接触領域から移動してくる原料液体および熱媒液体に対して障害物として、しかもその移動の方向を変更させる障害物として機能する。それ故、本形態によれば、遠心分離工程において両液体を確実に分離することができる。
【0095】
なお、本形態において、回転部材の回転速度をより小さくすれば、その回転に要するエネルギー消費を抑えることができ、また、低速回転により機械的なトラブルが発生しにくくなる。それ故、回転部材の回転速度が回転体のそれよりも小さい場合に、本形態に係る蓄熱性物質の製造方法がより好ましいものとなる。
【0096】
また、回転部材の回転速度を調整すれば、原料液体および熱媒液体が回転部材から受ける剪断力を適度な大きさに設定することができるので、両液体の直接接触を促進することができる。このことにより、接触領域を通過せずに回転部材に到達した、互いに未接触の両液体や接触領域を通過して回転部材に到達したものの、熱交換が不十分な両液体を回転部材において直接接触させることができる。それ故、両液体の直接接触による熱交換を通じて蓄熱性物質を効率的に生成又は製造する上で非常に有益である。
【0097】
(22)本発明の第22の形態によれば、蓄熱性物質がより付着しやすい位置にある、原料液体が接触し得る部材(原料液体が熱媒液体より比重が小さい場合には、接触領域および回転部材より鉛直上方に配置された部材、原料液体が熱媒液体より比重が大きい場合には、接触領域および回転部材より鉛直下方に配置された部材)の表面から、その付着物をスクレーパにより除去するので、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合が発生しにくくなる。それ故、本形態によれば、第18の形態の奏する効果を得ることできる。
【0098】
また、スクレーパは、接触領域および回転部材から離隔した位置に位置する部材の表面の付着物を除去するので、遠心分離機構における処理を経て分離した原料液体と熱媒液体を再度攪拌することがなく、両液体の分離効率を低下させない。
【0099】
スクレーパは、接触領域および回転部材から離隔した位置にある部材の表面の付着物を除去するので、原料液体と熱媒液体を再度攪拌することがなく、両液体の分離を阻害しにくい。しかもスクレーパは回転体と同軸に、異なる速度で回転するので(換言すれば回転体とともに回転することがないので)、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体から生成する蓄熱性物質が当該部材の表面に付着しても、これを効果的に除去することができる。
【0100】
本発明およびその実施形態が奏するその他の効果については、以下の説明において述べる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る蓄熱性物質の製造装置において採用可能な導入機構の他の構造例を説明する図である。
【図4】接触領域における原料液体と熱媒液体との接触を説明する図である。
【図5】接触領域における原料液体と熱媒液体との接触を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図7】本発明の第1乃至第3の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置における回転体を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1乃至第3の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置におけるスクレーパを示す斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す正断面図および側断面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す正断面図および側断面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図12】本発明の第7の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図13】本発明の第8の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【図14】原料液体と熱媒液体との事前接触が両液体間の熱交換に及ぼす効果を説明する図である。
【図15】回転部材が原料液体と熱媒液体との間の熱交換に及ぼす効果を説明する図である。
【図16】本発明に係る蓄熱性物質の製造装置を用いて蓄熱性物質のスラリーを製造することで蓄熱を行う蓄熱式空調設備を示す図である。
【図17】本発明に係る他の蓄熱性物質の製造装置を用いて蓄熱性物質のスラリーを製造することで蓄熱を行う蓄熱式空調設備を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0103】
なお、本明細書において使用される用語の意味又は解釈は、以下の通りである。
【0104】
(1)「蓄熱性物質」とは、熱エネルギーを蓄積する性質を有する物質をいい、氷、包接化合物(包接水和物を含む)、パラフィンなどがその典型例である。本発明において好ましい蓄熱性物質は、熱媒液体と互いに化学反応を全く又は実質的に生じず、且つ、熱媒液体と互いに全く又は実質的に溶解し合わないものである。
【0105】
(2)「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」とは、温度の低下や上昇が引き金になって蓄熱性物質を生成する性質を有する液体であって、その性質を有するがゆえに、蓄熱性物質の生成又は製造に着眼したとき、当該蓄熱性物質の原料物質に相当すると認められるものをいう。好ましい原料液体は、熱媒液体と互いに化学反応を全く又は実質的に生じず、且つ、熱媒液体と互いに全く又は実質的に溶解し合わないものである。
【0106】
「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」の典型例は、冷却されて氷を生成する水、冷却されて包接水和物(包接格子が不完全な準包接水和物を含む)を生成する包接水和物生成薬剤の水溶液である。温度変化に伴い相変化を起こし蓄熱性物質に変わる相変化物質であって当該温度変化前は液体状態にあるものについては、その液体状態にある相変化物質がこれに該当する。
【0107】
温度変化に起因してその一部が生成した蓄熱性物質を含む原料液体がスラリー状を呈する場合、これを「蓄熱性物質のスラリー」又は、文脈上明確な場合には、単に「スラリー」というときがある。蓄熱性物質のスラリーが、引き続く温度変化に起因して蓄熱性物質を生成する場合には、これも「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」から除外されない。
【0108】
例えば、冷却されて生成した氷を含む水は、時としてスラリー状を呈するので、このスラリー状を呈する水を氷のスラリー(又は氷スラリー)或いは、氷蓄熱に関する文脈上誤解が生じない限り、単にスラリーというときがある。氷のスラリーは、引き続く冷却により液相において氷を生成するので、「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」から除外されない。
【0109】
また、第四級アンモニウム塩の水溶液は、冷却されて当該第四級アンモニウム塩をゲスト分子とする包接水和物を含む水溶液となり、当該第四級アンモニウム塩の濃度次第でスラリー状を呈するので、このスラリー状を呈する水溶液を、当該包接水和物のスラリー(又は水和物スラリー)或いは、包接水和物による蓄熱に関する文脈上誤解が生じない限り、単にスラリーというときがある。包接水和物のスラリーは、引き続く冷却により液相において当該包接水和物を生成するのであれば、「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」から除外されない。
【0110】
「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」は、蓄熱性物質を生成する性質を有する原料物質のバルクとしての液体である必要はない。例えば、蓄熱性物質を生成する性質を有する原料物質が細かな粒子状を呈している場合、又はマイクロカプセルに収容されて液体の中に分散、懸濁又は混合している場合、当該液体は、本発明の効果の発現を阻害するものでない限り、「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」から除外されない。
【0111】
その他、ゲル状を呈するもの、ゾル状を呈するもの、半液体と言われるものも、本発明の効果の発現を阻害するものでない限り、「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」から除外されない。
【0112】
「温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体」は、文脈上誤解が生じない限り、単に「原料液体」という場合がある。
【0113】
(3)「熱媒液体」とは、原料液体と化学反応を生じず、当該原料液体に実質的に溶解せず、当該原料液体と熱交換が可能な液体のうち当該熱交換の前後で液体であるものをいう。原料液体が水又は水溶液である場合において、熱媒液体の典型例は、水に対する親和性が低い、即ち水に溶解し難い又は水に混ざりにくい、いわゆる疎水性物質である(この場合の疎水性物質を油性液体という場合もある)。
【0114】
疎水性物質の一例は、石油精製品であり、パラフィン油、ガソリン、ナフサ、灯油、ジェット燃料油、軽油、潤滑油ベースオイル、重油などが含まれる。疎水性物質の他の例はシリコン系オイルであり、ジメチルポリシロキサンにより構成されるシリコーンオイルが含まれる。疎水物質の更に他の例はフッ素系液体であり、炭化水素のフッ素化物、例えば炭化水素の全ての水素をフッ素に置換した化合物があり、フッ素数5〜20(特に6〜12)の化合物が主成分であるものが含まれる。
【0115】
(4)「領域」は、特定の局所的な点ではなく、ある程度の空間的な広がりを有する範囲をいう。「接触領域」における「領域」も同様であり、ある程度の空間的な広がりを有する範囲である。
【0116】
(5)回転部材の「回転主面」とは、回転部材を構成する面のうち当該回転部材の回転軸に垂直な面をいう。
【0117】
(6)「回転部材の回転軸に沿って配置する」とは、回転部材の回転軸と一致又は広範囲にわたり接するように配置すること、当該回転軸と接しないが平行に配置すること、又は当該回転軸に接すると否とに拘わらず、概ね平行若しくは本発明の効果の発現を阻害しない範囲で非平行に配置することをいう。
【0118】
(7)「回転部材の回転主面の回転中心」とは、回転部材の回転主面における当該回転部材の回転軸との交点をいい、当該回転部材の回転軸が旋回する場合には、回転部材の回転主面においてその旋回の軌跡が描く範囲およびその内側をいう。
【0119】
(8)「回転部材の回転主面の回転中心の近傍」とは、平面視したとき回転部材の回転主面をはみ出さず、且つ、当該回転主面の回転中心から、発明の効果の発現が阻害されない範囲である程度離隔した位置にある場所をいう。それ故、当該回転主面の法線方向に離隔した位置にある場所であっても、平面視したとき回転部材の水平な回転主面をはみ出さず、且つ、当該回転主面の回転中心から、発明の効果の発現が阻害されない範囲である程度離隔した位置にある限り、その場所は、その「近傍」に該当する。
【0120】
(9)「接触領域」は、原料液体および熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部が互いに直接接触し、それにより当該原料液体から蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換が開始する領域である。「接触領域」は、原料液体および熱媒液体のそれぞれの全部が互いに直接接触する領域ではなく、また原料液体から蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換が完了する領域でもない。
【0121】
導入機構により又は導入工程において原料液体および熱媒液体を製造装置内に導入する場合、その導入前に両液体のそれぞれ一部が互いに接触していたとしても残部が未接触であるときは、それぞれの当該残部が互いに直接接触し、それにより当該原料液体から蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換が開始する領域が存在し得るので、当該領域は、その存在が認められる限り「接触領域」に該当する。
【0122】
(10)「導入機構」は、原料液体および熱媒液体を製造装置内に導入する機構であれば足りる。それ故、「導入機構」は、本発明のいずれかの形態において構成上の特段の限定がある場合を除き、各液体の導入手法に制限はなく、両液体を別々に又は同時に導入する機構であってもよく、各液体を鉛直上方から下方に向けて導入する機構であってもよく、鉛直下方から上方に向けて導入する機構であってもよく、あるいは水平又は非垂直方向に導入する機構であってもよい。
【0123】
「導入工程」についても、「導入機構」と概ね同様のことがいえる。つまり、「導入工程」は、原料液体および熱媒液体を製造装置内に導入する工程であれば足りる。それ故、「導入工程」は、本発明のいずれかの形態において構成上の特段の限定がある場合を除き、各液体の導入手法に制限はなく、両液体を別々に又は同時に導入する工程であってもよく、各液体の導入方向は問わない。
【0124】
原料液体および熱媒液体を製造装置内に「別々に導入する」こととは、両液体が初めて接触するのが製造装置内になるように導入することをいい、原料液体および熱媒液体を「同時に導入する」こととは、両液体を製造装置内に導入することのうち「別々に導入する」ことに該当しないものをいう。
【0125】
原料液体および熱媒液体を製造装置内に「同時に導入する」ことは、その導入前に両液体のすべての部分が互いに接触していることまで意味しておらず、また、その導入前に両液体が完全に混合していることまで意味しない。それ故、両液体を「別々に導入する」場合は言うまでもなく、「同時に導入する」場合であっても、「接触領域」は形成され得る。
【0126】
(11)「移動機構」は、原料液体および熱媒液体の移動方向を変更して遠心分離機構に向けて移動させる機構であれば足りる。それ故、「移動機構」は、そのような機構である限り、両液体が互いに直接接触する前であるか互いに直接接触した後のものであるかは問わないし、接触領域は必須ではなく、遠心分離機構における回転体も必須ではない。また、そのような機構である限り、「回転主面」を有すると否とに拘らず「回転部材」を備える機構も、「回転部材」を備えない機構も、「移動機構」に該当する。
【0127】
回転体による回転により両液体に遠心力が作用するとき、その遠心力に起因して回転体に向かって両液体の移動が起こるのであれば、その遠心力の発生源(回転体)も「移動機構」の役割の少なくとも一部を担い、「移動機構」を構成しうる。更に、「移動機構」による両液体の移動は、回転部材の回転により発生する遠心力による移動であっても、重力その他の外力による移動であってもよい。
【0128】
「移動工程」についても、「移動機構」と概ね同様のことがいえる。つまり、「移動工程」は、原料液体および熱媒液体の移動方向を変更して遠心分離機構に向けて移動させる工程である限り、両液体が互いに直接接触する前であるか互いに直接接触した後のものであるかは問わないし、接触工程は必須ではなく、遠心分離工程における回転体も必須ではない。また、そのような工程である限り、「回転主面」を有すると否とに拘らず「回転部材」を備える工程も、「回転部材」を備えない工程も、「移動工程」に該当する。回転体による回転により両液体に遠心力が作用するとき、その遠心力に起因して回転体に向かって両液体の移動が起こるのであれば、その遠心力の発生源(回転体)も「移動工程」における両液体の移動の役割の少なくとも一部を担うので、「移動工程」を実行しうる。更に、「移動工程」における両液体の移動は、回転部材の回転により発生する遠心力による移動であっても、重力その他の外力による移動であってもよい。
【0129】
次に、本発明に使用する原料液体および熱媒液体について説明する。
【0130】
本発明に用いる原料液体としては、アルキルアンモニウム塩に代表される第四級アンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩など(以下、まとめて「水和物生成物質」という場合がある)を溶質とする水溶液又はそれらの水和物生成物質のうち複数を溶質とする水溶液を挙げることが出来る。
【0131】
この水溶液を冷却すると、溶質である水和物生成物質をゲスト分子とし水分子をホストとする包接水和物が生成する。この包接水和物は生成時に潜熱を蓄熱する。従って、当該包接水和物は蓄熱性物質に該当し、温度変化により当該包接水和物を生成する当該水溶液は原料液体に該当する。
【0132】
原料溶液から生成した包接水和物が当該原料液体に分散又は懸濁すると、当該原料液体はスラリー状を呈する。この状態の原料液体が蓄熱性物質のスラリーに該当する。
【0133】
水和物生成物質である第四級アンモニウム塩の典型例は、臭化テトラブチルアンモニウムである。
【0134】
なお、氷を蓄熱性物質とする場合には、原料液体は水、蓄熱性物質は氷、蓄熱性物質のスラリーは、氷が水に分散してスラリー状を呈している氷スラリーである。原料液体が上記の塩(水和物生成物質)を溶質とする水溶液である場合には、蓄熱性物質のスラリーの主たる構成物質が水と当該塩と当該塩をゲスト分子とする包接水和物であるのに対して、氷を蓄熱性物質とする場合には、蓄熱性物質のスラリーの主たる構成物質が水と氷であることが相違点である。
【0135】
次に、本発明に用いる熱媒液体は、原料液体と比重が異なるとともに、原料液体に溶解せず又は溶解度が低く、且つ、原料液体と化学反応を生じないか又は生じにくい物質である。この熱媒液体は、原料液体よりも比重が大きいものである必要はなく、原料液体よりも比重が小さいものであってもよいが、原料液体との比重差が大きいものほど好ましい。また、熱媒液体は原料液体との熱交換の前後で液体であるものであり、熱媒液体を冷凍機で冷却する場合には、熱媒液体の凝固点(または融点)は0℃以下であるものが好ましい。
【0136】
第四級アンモニウム塩の水溶液が原料液体である場合、原料液体と比重が異なる熱媒液体の一例は、当該水溶液よりも比重が大きいフッ素系不活性液体であるフロリナート(3M製、FLORINERT(登録商標))である。当該第四級アンモニウム塩の水溶液(比重約1.0)との比重差が大きい熱媒液体として入手可能な物質の一例が、フロリナート(比重約1.8)である。
【0137】
フロリナートとしては、主に「FC-3283」と「FC-43」の二種類がある。これら二つは、主として蒸気圧と粘度が異なるが、それらの属性の違いが技術的効果の相違に大きく反映するということは認められていない。それ故、本実施形態における熱媒液体の例示としては、「FC-3283を用いても、「FC-43」であってもよい。
【0138】
本発明のより具体的な実施形態では、第四級アンモニウム塩を臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)とし、TBABの濃度が約17重量%の水溶液を原料液体とすることができる。また、フロリナート(3M製、FLORINERT(登録商標))FC-3283を熱媒液体とすることができる。このように両液体を選択すると、約12℃の原料液体と、約3℃の熱媒液体との直接接触による熱交換を通じて、約7℃の水和物スラリーを製造することができる。
【0139】
原料液体であるTBAB水溶液および熱媒液体であるフロリナートの各流量は、両液体の直接接触による熱交換の効率やその熱交換により生成する水和物スラリーが有すべき熱密度の目標値によっても変わる。本実施形態では、両液体の流量比を、TBAB水溶液1に対して、例えばフロリナートを5〜6に設定することができる。
【0140】
第四級アンモニウム塩の水溶液が原料液体である場合、原料液体より比重が小さい熱媒液体の一例は、ドデカン、ウンデカン、トリデカンなどの炭化水素化合物である。
【0141】
本発明は、氷を蓄熱性物質とする場合にも適用できる。本発明を氷を蓄熱性物質とする場合に適用する場合には、原料液体は水であり、熱媒液体は、原料液体(水)よりも比重が大きいものである必要はなく、小さいものであってもよく、原料液体との比重差が大きいものほど好ましい。その一例もまた、フロリナートである。
【0142】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部分又は相当若しくは共通する部分にはこれと同じ符号を付し、その説明を省略する。また、各図において、導入機構をI、移動機構をT、接触領域をC、遠心分離機構をS、原料液体をR、熱媒液体をM、蓄熱性物質をH、製造装置をGと、符号を付す。なお、本発明は、図面に記載された実施形態には限定されない。
【0143】
[A]熱媒液体が原料液体より比重が大きい場合
図1、は本発明の第1の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。
【0144】
本実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置は、原料液体および熱媒液体の導入機構、原料液体および熱媒液体の接触領域、当該接触触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を分離する遠心分離機構、および原料液体および熱媒液体を回転体に向けて移動させる移動機構を具備する。以下、それぞれの機構および領域について説明する。
【0145】
<導入機構>
図1に示すように、導入機構は、熱媒液体供給管7と原料液体供給管8とを備える二重管構造を有する。この導入機構は、回転部材6の回転軸に沿って設置されている。導入機構としては、ステンレス管、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))に代表されるフッ素系樹脂等の樹脂管などを用いることができる。内管および外管のうちいずれか一方をステンレス管とし、他方を樹脂管とした二重管構造にしてもよい。なお、熱媒液体供給管7と原料液体供給管8とは熱交換させないように、熱伝導率の小さい樹脂製であるのが好ましい。
【0146】
<他の導入機構>
図2は、本発明の第2の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。本実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置では、熱媒液体供給管7と原料液体供給管8とが並列構造である導入機構を用いている。この場合、ステンレス製の外郭管(鞘管)を設け、その内側に樹脂管を並列に二本配置してもよい。
【0147】
図3は、本発明に係る蓄熱性物質の製造装置において採用可能な導入機構の他の構造例を説明する図である。導入機構が熱媒液体供給管7と原料液体供給管8とを備える二重管構造を有する場合、熱媒液体供給管7の管先端と原料液体供給管8の管先端とは面一である必要はなく、図3(a)に示すように、熱媒液体供給管7の管先端面が、原料液体供給管8の管先端面よりもある程度突出するように配置していてもよく、図3(b)乃至(d)に示すように、原料液体供給管8の管先端面よりも相当程度に突出するように配置していてもよい。後者のような導入機構によれば、原料液体供給管8から放出された原料液体と熱媒液体供給管7内を通過する熱媒液体とを、熱媒液体供給管7から放出させる前に、ある程度混合させることができる。この場合、熱媒液体供給管7内に配置する原料液体供給管8の管先端に、複数個の放出孔81を備える放出ノズル80を取り付け、熱媒液体の流れの方向に対して非平行の方向に原料液体を放出させたり(図3(c)参照)、熱媒液体供給管7の管先端側に管径がより小さく絞り込まれた部分70を設ければ(図3(d)参照)、熱媒液体と原料液体とを、熱媒液体供給管7から放出させる前に、より効果的に混合させることができる。
【0148】
なお、図3に示す導入機構の二重管構造においては、熱媒液体供給管7および原料液体供給管8がそれぞれ外管および内管であるが、その逆であってもよい。
【0149】
<接触領域>
接触領域は、導入機構により導入された原料液体および熱媒液体のそれぞれ少なくとも一部が互いに直接接触して、当該原料液体から蓄熱性物質が生成するために必要な熱交換が開始する領域であり、両液体間の熱交換が起こっている領域すべてを意味するものではない。例えば、原料液体と熱媒液体とをそれぞれ別々の導入管の先端口から製造装置内に放出させ、放出直後に両液体を初めて接触させる場合には、導入管の先端口近傍の場所が接触領域に該当する。製造装置内で両液体が初めて接触した後、いずれかの一方の液体の少なくとも一部が、引き続き他方の液体と接触して熱交換を行う場合もあり得るが、そのような引き続く両液体の接触により熱交換が行われる領域は、「熱交換が開始する領域」ではないので、接触領域には該当しない。
【0150】
図4に示すように、仮に移動する両液体が互いに直接接触すると同時に又は直接接触後非常に短時間で熱交換を行うとすれば、その場合の接触領域は、少なくとも、原料液体と熱媒液体とが初めて接触する場所P又はその近傍Qを含む領域Xを含む。それ故、本発明においては、場所P又はその近傍Q或いは当該領域Xを接触領域としてもよい。これに対して、場所P又はその近傍Q或いは領域Xは接触領域ではあるが、それ以降の、場所Piおよびその近傍Qi並びに領域Xi(i=a,b,c,…)は、「両液体が直接接触して・・・熱交換が開始する領域」には該当しないので、接触領域には該当しない。
【0151】
図5に示すように、接触領域は、両液体の「それぞれの少なくとも一部が互いに直接接触して・・・熱交換が開始する領域」であるので、ある場所およびその近傍(領域X1)においてそれぞれの一部が互いに直接接触して熱交換が開始した後、別の場所およびその近傍(領域X2)において残りの少なくとも一部が互いに直接接触して熱交換が開始するという場合には、領域X1および領域X2を含むことになる。そして、接触領域は、領域X1,X2,X3,X4・・・のそれぞれが両液体の「それぞれの少なくとも一部が互いに直接接触して・・・熱交換が開始する領域」である限り、当該領域X1,X2,X3,X4・・・を含むことになる。このことは、接触領域それ自体が一定の範囲(より厳密には三次元的な範囲)を有することを意味している。しかし、本発明においては、接触領域に含まれるいずれかの領域Xi(i=1,2,3,4,…)であっても、それらの集合の一部又は全部が構成する領域{Xi}であっても、それは接触領域に該当する。この領域{Xi}は、図4において、二点鎖線で囲まれた領域である。従って、より長距離に及ぶ広い定義をすれば、接触領域とは、両液体が初めて接触する場所から移動機構に到達するまでの領域である、といえる。
【0152】
なお、図3に示す構造の導入機構を採用しても、両液体を製造装置内に導入する前に両液体のすべての部分を互いに接触させることができるとは限らないので、接触領域は形成され得る。
【0153】
<移動機構>
移動機構とは、接触領域において直接接触した原料液体および熱媒液体を遠心分離機構に向けて移動させる機構である。典型例が下記の回転部材であるが、接触領域から両液体を遠心分離機構に向けて移動させる機構であれば、本発明の奏功性/効果の程度には大小が生じるとはいえ、如何なる機構であってもよい。
【0154】
<移動機構としての回転部材>
図1および図2に示すように、回転部材6を移動機構として採用する場合について説明する。回転部材6を移動機構として採用する場合、原料液体と熱媒液体(両液体という)が回転部材の表面と接触する際に受ける力(剪断力)により、両液体の混合が促進する。これにより、直接接触に伴う熱交換効率が向上する、ひいては潜熱蓄熱性物質の生成効率が向上するという特段の効果が生じる。また、両液体が回転部材の表面と接触する際に受ける力(剪断力)により、両液体は、回転部材6の回転中心の側から外側に向けて放射状に飛び散り、遠心分離機構に均一に移動する。
【0155】
両液体を、接触領域を取り囲む遠心分離機構の回転軸まわりに、より均一に飛び散るようにするには、両液体を導入機構から回転部材の回転中心に向けて放出するとよい。その場合、図1に示すように導入機構を二重管構造とし、その管軸が回転軸と同軸になるように配置する。両液体を遠心分離機構に向けて、遠心分離機構の回転軸まわりに、より均一に分布するように飛び散らせば、遠心分離機構に負荷の偏りが生じないので、装置の故障を減らすことができ、保守の頻度を減らすことができる。それ故、長時間運転に耐えうる装置となり、装置寿命も延びる。
【0156】
この場合、移動機構は、回転部材6とこれを回転させる回転駆動機構とを備えるものである。回転部材6は、主軸管1の内部に配置する中空の回転内管2に取り付けられる。回転内管2は、主軸管1に対して相対的に回転可能になるようにベアリングなどの回転支承部材により支持されている。
【0157】
より具体的には、回転内管2がその下方先端に備える管端連結部(C1)と、回転部材を固定する枠体が回転部材と対面する位置に備える環状連結部(C2)とを接続することにより、回転部材6の回転軸が回転内管2のそれと同軸になるように、回転部材6が回転内管2の下方先端に取り付けられる。これにより、回転部材6は、回転内管2の回転に伴い回転する。
【0158】
図1および図2に示す回転部材6は、平らな円盤である。しかし、回転部材は平らな円盤に限定されない。例えば、図6に示すように、コーン部材(移動機構T)を、主軸管と同軸に回転するように構成した場合には、当該コーン部材はまさに回転部材である。そして当該コーン状の回転部材も、平らな円盤状の回転部材と同様の特段の効果を奏する。
【0159】
図1に示す装置では、回転部材6を回転させる回転駆動機構は、回転モータ(図示せず)、当該回転モータの回転軸に取り付けられたモータ軸プーリ(図示せず)、回転内管2に固定された回転内管プーリ9、およびモータ軸プーリの回転を回転内管プーリ9に伝達して回転内管2を回転させる無限軌道のベルト(図示せず)を備えている。回転駆動機構により回転内管2を回転させると、その回転に伴い、回転部材6が回転する。
【0160】
<他の移動機構>
図6は、本発明の第3の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置を示す側断面図である。本実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置では、移動機構Tは、回転することなく下方から支持部材により支持された、上方に凸状の概ね直円錐形の部材(コーン)である。原料液体と熱媒液体とは、導入機構から放出後に接触する。その接触が開始する領域が接触領域Cである。接触領域Cを通過した両液体は、移動機構Tの頂部に衝突した後、移動機構Tの略円錐形部材の傾斜面に沿って放射状に飛び散り、遠心分離機構Sに向かって移動する。両液体は、引き続き遠心分離機構Sの作用により、原料液体と熱媒液体に分離される。この原料液体中には、熱媒液体との直接接触に伴う熱交換を通じて生成した蓄熱性物質が分散又は懸濁している。そのため、場合によっては、この原料液体はスラリー状を呈している。それ故、遠心分離機構Sにより分離された原料液体は、蓄熱性物質とともに回収される。
【0161】
図6に示す装置のように、移動機構を、回転しない構成にする場合には、移動機構を回転させるために必要な回転駆動機構(ベアリングに代表される回転支承部、プーリおよび無限軌道のベルトのような回転動力伝達機構、モータ)が不要になり、装置構成も簡単になるというメリットがある。しかし、それでもなお、移動機構Tを主軸管と同軸に回転させるように構成することもできる。
【0162】
図6に示す装置において、移動機構Tのコーン部材の支持部材に遠心分離機構Sを構成する回転体の下部表面に付着した蓄熱性物質の少なくとも一部を掻き取るための台形枠形状のスクレーパを固定しておいてもよい。この場合、回転体の下部表面に倣うように相対的に移動するスクレーパが付着物除去機構として機能する。
【0163】
なお、回転体の回転速度が大きすぎて、静止するスクレーパに対する相対速度が大きくなりすぎ、境界において大きな剪断力が働くと、原料液体と熱媒液体との混合攪拌が盛んに行われ、分離に支障を与えるおそれが生ずる場合がある。このような場合、スクレーパと回転体の回転方向が同じで、且つ、スクレーパの回転速度と回転体の回転速度が異なるように(より好ましくはスクレーパの方が回転体よりも回転速度が小さくなるように)移動機構Tを回転させることができる。移動機構Tを主軸管1と同軸に回転させる場合には、移動機構Tのコーン部材は、前記の回転部材と同様の特段の効果を奏する。
【0164】
移動機構Tを回転させたいときは、コーン部材を下方から支持する支持部材を、ベアリングなどの回転支承部材により支持したうえで、主軸管1と同軸に回転させればよい。この場合、コーン部材は、それが支持部材先端に固定されている限り、支持部材とともに回転する。コーン部材が、前記の回転部材のように回転内管6とともに回転するように構成してもよい。いずれの場合であれ、移動機構を回転させるために必要な回転駆動機構が必要になるが、当該回転駆動機構の要否や選択は、移動機構を回転させることによる特段の効果のメリットとの比較考量による。
【0165】
<遠心分離機構>
図1、図2および図6に示す装置において、移動機構により回転体3に向かって移動する原料液体と熱媒液体とは、接触領域を通過しているため、混合して混合液体となっている。遠心分離機構は、その混合液体を回転させ、当該混合液体に遠心力を作用させることにより、原料液体と熱媒液体と間の比重差に応じて当該混合液体を原料液体と熱媒液体とに分離させる機構である。
【0166】
原料液体は熱媒液体との直接接触を通じてその熱媒液体と熱交換を行うので、当該原料液体の中には蓄熱性物質が生成しており、遠心分離機構において当該混合液体を原料液体と熱媒液体とに分離させると、蓄熱性物質を含む原料液体と熱媒液体とに分離させることができる。
【0167】
遠心分離機構は、回転体3とこれを回転させる回転駆動機構とを備える。
【0168】
回転体3は、遠心分離機におけるロータに相当するものである。回転体3は、中空筒状の主軸管1と、主軸管1に連結部材11を介して取り付けられた上蓋部16と、上端および下端が開口した上部筒体17と、下部排液口18を備える下部筒体19とを備えている。上蓋部16は上部筒体17の上端開口部に取り付けられ、下部筒体19は上部筒体17の下端開口部に取り付けられて、全体として一体的に構成されている。
【0169】
主軸管1と連結部材11が分離不能な場合には、上蓋部16が主軸管1に直接取り付けられ、主軸管1と連結部材11とが分離可能な場合には、上蓋部16が主軸管1に連結部材11を介して取り付けられている。回転体3は、少なくとも、主軸管1、上蓋部16、上部筒体17および下部筒体19のそれぞれに分解できるように構成されている。回転体3は、主軸管1の回転に伴い回転する。
【0170】
なお、主軸管1と連結部材11を分離可能に構成した場合には、連結部材11も分解できることは言うまでもない。その場合、装置の保守作業を行いやすい。
【0171】
図7は、上部筒体17および下部筒体19を省略した回転体3の斜視図である。上蓋部16(図7では図示せず)は、調整板20を備えており、調整板20は上部排液口21を備えている。上部排液口21は、複数個の開孔部からなる。回転体3の内側の液体は、上部排液口21の各開孔部を通じて外側に向けて流通可能となる。開孔部は、回転体3の軸まわりに対称配置している。このため、回転体3に重量の偏りが生じにくく、遠心力が働いても、回転体3の回転軸受部に偏った負荷がかからない。
【0172】
調整板20の種類は複数あり、各種の調整板は上部排液口21の形態(開孔部の数、形状、位置など)、材質、表面処理の仕方などが異なる。それ故、原料液体、蓄熱性物質、熱媒液体の性質やその他の事情に応じて、適切な種類の調整板を選択し、使用することができる。
【0173】
下部筒体19が備える下部排液口18は、上部筒体17の内径よりも小さく、上部筒体17とは反対側に配置している。このため、下部筒体19は、上部筒体17側から下部排液口18に向かって先細り又は断面積が減少する構造を有している。回転体3の内部の液体は下部排液口18を通じて外部に向けて流通可能となる。
【0174】
主軸管1には、連結部材11を介して上蓋部16が取り付けられているほか、上蓋部16から距離をおいた位置に当該連結部材11を介して羽根固定板22が取り付けられている。羽根固定板22には更に複数の案内羽根4が、主軸管1の回転軸まわりに対称に配置するように取り付けられている。このため、主軸管1の回転に伴い、回転体3とともに、案内羽根4も回転する。すると、回転体3の回転に伴い、案内羽根4により回転体内部の混合液体に回転力が付与されるので、その混合液体に遠心力が作用する。
【0175】
なお、案内羽根4は、羽根固定板22にではなく、回転体3の内壁面に取り付けてもよい。しかし、回転体3の内壁面に案内羽根4が取り付けられていると、保守・点検が面倒になるという難点がある。これに対して、案内羽根4が羽根固定板22に取り付けられていると、例えば保守の必要から、主軸管1や上蓋部16などを装置から取り外す際、主軸管1とともに羽根固定板22を取り外すことができ、それと同時に案内羽根4も一緒に取り外すことができるという長所がある。
【0176】
案内羽根4は、遠心分離機構には必ずしも不可欠なものではないが、これを備えることにより、混合液体を効率的に回転させ、従って効率的に遠心分離することができる。
【0177】
上部筒体17には、更に障害板23が設置されていている。障害板23は、羽根固定板22と調整板20との間の位置に配置され、回転体3の内側から上部排液口21に直接向かって流れ出ようとする液体の障害物となる障害部と、その液体の逃げ道を構成する通流口とを備えている。その結果、回転体3の内側から上部排液口21に流れ出ようとする液体は、障害板23の障害部を迂回して通流口に向かって流れるので、その液体の流路長が長くなる。それ故、障害板23は、両液体の分離の促進に役立つ。なお、障害板23の設置は不可欠ではなく、必要に応じてこれを設置すれば足りる。また、障害板23は上部筒体17ではなく、主軸管1に設置してもよい。
【0178】
回転体3を回転させる回転駆動機構は、回転モータ(図示せず)と、当該回転モータの回転軸に取り付けられたモータ軸プーリ(図示せず)と、主軸管1に固定された主軸管プーリ10と、モータ軸プーリの回転を主軸管プーリ10に伝達して主軸管1を回転させる無限軌道のベルト(図示せず)とを備えている。
【0179】
回転駆動機構により回転体3を回転させると、回転体3の回転に伴い、案内羽根4により、回転体3内部の原料液体と熱媒液体との混合液体に回転力が付与される。すると、その混合液体に遠心力が作用し、原料液体と熱媒液体との間の比重差により当該混合液体は原料液体と熱媒液体とに分離する。そして、原料液体の中には蓄熱性物質が含まれているので、当該原料液体から、蓄熱性物質を含む原料液体と熱媒液体とが分離する。
【0180】
原料液体と熱媒液体とは比重差があるため、遠心力の作用による分離効果は高い。それ故、回転体3の回転速度は比較的低速で足りる。なお、本実施形態では、回転体3の回転速度を1000〜3000rpmとした。
【0181】
遠心分離機構は、原料液体と熱媒液体との混合液体から各液体を完全に分離する機構である必要はなく、蓄熱性物質の製造を長時間にわたり又は連続的に行うことの妨げにならない限りにおいて、不完全に分離するものであれば足りる。
【0182】
<排液機構>
図1に示す装置では、排液機構は、回転体3の上部と下部のそれぞれの位置にある。回転体3の上部の位置にある上部排液機構は、遠心分離機構により分離された原料液体と熱媒液体のうち比重が大きいものを当該回転体の内側から外側に向けて移動させ、回転体3の下部の位置にある下部排液機構は、そのうち比重の小さなものを回転体3の内側から外側に向けて移動させる。
【0183】
上部排液機構は、回転体3の上部において、その内側から上部排液口21(の開孔部)に至るまでの液体の流路を構成する機構をいい、当該流路を構成する部品および部材(例えば、回転体3の上部内壁面、羽根固定板22、上蓋部16、調整板20など)がこれに該当する。これらの部材および部品には、連結部材11を備える場合は連結部材11が含まれ、障害板23を備える場合は障害板23が含まれる。
【0184】
下部排液機構は、回転体3の下部において、その内側から下部排液口18に至るまでの液体の流路を構成する機構をいい、下部筒体19の下方の内壁面および下部開口部がこれに該当する。
【0185】
上部排液機構により回転体3の外側に移動する液体は、原料液体および熱媒液体のうちより比重が大きな液体、又はその比重が大きな液体が大部分を占める両液体の混合液体(蓄熱性物質を含む)である。上部排液機構により回転体3の外側に移動する液体は、熱媒液体がフロリナートである場合、(1)原料液体が水和物生成物質を溶質とする水溶液であるときは、フロリナート又はフロリナートを大部分とし、一部に原料液体を含み、その原料液体の中に更に当該水和物生成物質をゲスト分子とする包接水和物を含む液体であり、(2)氷を蓄熱性物質とする場合、即ち原料液体が水であるときは、フロリナート又はフロリナートを大部分とし、一部に水を含み、氷を更に含む液体である。
【0186】
下部排液機構により回転体3の外部に移動する液体は、原料液体および熱媒液体のうち、より比重が小さな液体、又はその比重が小さな液体が大部分を占める両液体の混合液体(蓄熱性物質を含む)である。下部排液機構により回転体3の外側に移動する液体は、熱媒液体がフロリナートである場合、(1)原料液体が水和物生成物質を溶質とする水溶液であるときは、水和物生成物質をゲスト分子とする包接水和物のスラリー又は当該包接水和物のスラリーを大部分とし、一部にフロリナートを含む液体であり、(2)氷を蓄熱性物質とする場合、即ち原料液体が水であるときは、氷スラリー又は氷スラリーを大部分とし、一部にフロリナートを含む液体である。
【0187】
上部排液機構により回転体3の外側に移動した液体は、回転体3の周囲を取り囲むケーシング13の周りを囲むように環状に設置された環状の上部液体収容部12に一時的に収容され、上部液体収容部12の下部から製造装置外へと引き出される。引き出された液体は、必要に応じて更に他方の液体からの分離処理やその他の処理が施され、導入機構により当該製造装置内へ導入され、以後循環的に蓄熱性物質のスラリーの製造に供される。
【0188】
下部排液機構により回転体3の外側に移動した液体は、回転体3の下部開口部の下方に配置された下部液体収容部15に一時的に収容され、そこで比重差に従って重力により他方の液体から分離され、引き続き下部液体収容部15外へと引き出される。引き出された液体は、必要に応じて更に他方の液体からの分離処理やその他の処理が施され、導入機構により当該製造装置内へ導入され、以後循環的に蓄熱性物質のスラリーの製造に供される。
【0189】
本実施形態では、原料液体よりも比重の大きな液体は、熱媒液体であるフロリナートであるので、上部排液機構により回転体3の外側に移動するのはフロリナート又はそれを大部分とする液体であり、上部液体収容部12に一時的に収容され、上部液体収容部12の下部から製造装置外へと引き出される。下部排液機構により回転体3の外側に移動するのは、原料液体およびフロリナートとの熱交換により当該原料液体の中に生成した蓄熱性物質(要するに蓄熱性物質のスラリー)又は蓄熱性物質のスラリーを大部分とし一部にフロリナートを含む液体であり、下部液体収容部15に一時的に収容される。蓄熱性物質のスラリーは、下部液体収容部15において比重の大きなフロリナートから重力により分離され、フロリナートの混入の程度が低い状態で引き続き下部液体収容部15外へ引き出される。
【0190】
<付着物除去機構>
熱媒液体の方が原料液体よりも比重が大きい場合、下部排液機構により製造装置外へ取り出されるのは主として蓄熱性物質のスラリーである。この場合、下部排液機構を構成する部材や部品のうち原料液体と接触するものの表面に、スラリー中の蓄熱性物質や、原料液体から遅れて生成した蓄熱性物質が局所的に付着し、成長して、スラリー全体の流れを阻害するおそれがある。スラリー全体の流れが阻害されると、製造装置が安定に稼働しなくなるので、蓄熱性物質のスラリーの長時間にわたるか又は連続的な製造が困難になる。
【0191】
そこで、付着物除去機構を設けて、下部排液機構を構成する部材や部品のうち原料液体と接触するものの表面に付着した蓄熱性物質を除去する。この付着物除去機構によれば、製造装置内における局所的な蓄熱性物質の付着と成長に起因する不具合が発生しにくくなるので、製造装置の故障の頻度を減らすことができるか又はその故障の原因やその影響を減らすことができる。また、この機構によれば、蓄熱性物質を製造装置内に堆積することなく連続的に外部に排出することができるので、両液体の直接接触による熱交換が滞りなく、繰り返し、円滑に進行する。この結果、蓄熱性物質のスラリーの長時間にわたるか又は連続的な製造を実現することができる。
【0192】
付着物除去機構の典型例は、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体と接触する部材の表面に付着した蓄熱性物質の少なくとも一部を除去するスクレーパである。
【0193】
図1および図2では、当該熱媒液体から分離された原料液体と接触する部材の表面は、下部筒体19の内壁面の少なくとも一部(少なくとも下方側の一部)であり、スクレーパ5は、当該表面に倣って移動する過程で、可能な限り多くの付着物を掻き取って除去する。
【0194】
スクレーパを上部筒体17の内壁にも倣って移動するようにすると、回転体3内面に形成される熱媒液体と原料液体の分離層を乱し、遠心分離性能を低下させるので、好ましくない。
【0195】
図8に示すように、スクレーパ5は、略台形枠形状をなし、回転部材6を固定する枠体501に一体的に取り付けられ、且つ、その掻取面が下部筒体の内壁面に対面して倣うように配置されている。
【0196】
より具体的には、回転内管2がその先端に備える管端連結部(C1)と、回転部材を固定する枠体501が回転部材と対面する位置に備える環状連結部(C2)とを接続することにより、回転部材6の回転軸が回転内管2のそれと同軸になるように、回転部材6が回転内管2の先端に取り付けられる。これにより、回転部材6は、回転内管2の回転に伴い回転する。
【0197】
スクレーパ5は、回転部材6を固定する枠体501に一体的に取り付けられているので、回転内管2の回転に伴い、回転部材6と同方向、同速度で回転する。スクレーパ5により掻き取られた蓄熱性物質は、下部排液機構により下部排液口18(回転体3の下部開口部)からスラリーとともに製造装置外に取り出され、下部液体収容部15に収容される。
【0198】
スクレーパ5の回転数は、遠心分離機構の回転体3の回転数に比べて、5〜20rpm程度小さいことが好ましい。スクレーパ5の回転数と回転体3の回転数との差が5rpmより小さいと、スクレーパにより付着物を掻き取る作用がなく、20rpmより大きいと、回転体内面に形成される熱媒液体と原料液体の分離層を乱し、遠心分離性能を低下させるので、好ましくない。
【0199】
スクレーパ5により、回転体3の下部筒体19の内面に付着した付着物を除去することにより、生成したスラリーの流れを阻害することを防止でき、製造装置を安定に稼働することができ、蓄熱性物質のスラリーの長時間にわたるか又は連続的な製造が可能になる。
【0200】
スクレーパ5は、回転部材6を固定する枠体501に一体的に取り付けられているので、例えば保守の必要から、回転部材6を枠体501とともに取り外す際には、スクレーパ5も一緒に取り出すことができる。
【0201】
スクレーパ5の形状は、略台形枠形状に限らず、掻取面が回転体の内壁面に対面して倣うように配置される形状であればよいことはいうまでもない。
【0202】
図6に示す装置におけるように、コーン部材の支持部材に、遠心分離機構Sを構成する回転体3の下部表面に付着した蓄熱性物質の少なくとも一部を掻き取るためのスクレーパ5を固定しておいてもよい。この場合、回転体の下部表面に倣うように相対的に移動するスクレーパ5が付着物除去機構として機能する。
【0203】
<選択分離機構>
スクレーパに代表される付着物除去機構により部材の表面に付着した蓄熱性物質を除去する場合には、付着物の成長の程度に違いがあることから、除去される付着物の大きさは変わってくる。このため、付着物除去機構により除去された蓄熱性物質は比較的大きな粒子であったり、粒子が集合して塊状を呈していることが多い。蓄熱性物質のスラリーは、蓄熱性物質の比較的大きな粒子や塊の存在により、流動性が阻害される。例えば、原料液体の中に分散又は懸濁する蓄熱性物質の粒子の大きさが均一でないと、配管の閉塞、圧力損失やポンプ動力の変動などの問題が生じ、蓄熱性物質を連続的又は長時間に製造することが難しくなる。選択分離機構を設けて、このような大型の粒子やその塊を、その原料液体又は蓄熱性物質のスラリーから選択的に分離する。
【0204】
選択分離機構の典型例は、ざる、ふるい、スクリーン、フィルター、ろ過器などである。図1および図2に示す装置において、下部液体収容部15の上部にスクリーンを設置してもよい。このスクリーンにより、スラリーを濾して、粒子が比較的揃って均一な流動性の高いスラリーのみを利用することができる。
【0205】
[B]熱媒液体が原料液体より比重が小さい場合
以上説明した本発明の第1〜第3の実施形態は、熱媒液体が、原料液体より比重が大きい場合であるが、以下に示す本発明の第4および第5の実施形態は、熱媒液体が、原料液体より比重が小さい場合である。
【0206】
本発明の第4および第5の実施形態においては、原料液体とそれよりも比重の小さい熱媒液体を接触させて熱交換を開始し、蓄熱性物質を製造するとともに、遠心分離機構により、生成した蓄熱性物質を含む原料液体と熱媒液体を分離する。原料液体としてTBAB水溶液を用いる場合、この原料液体よりも比重の小さい熱媒液体として、例えばドデカン、ウンデカン、トリデカンなどの炭化水素化合物を用いることができる。
【0207】
蓄熱性物質を含む原料液体は熱媒液体よりも比重が大きいので、遠心分離機構の回転体の内壁面近傍に位置する。そのため、回転体の内壁面の近傍で蓄熱性物質が存在するところに、回転体と異なる回転数で回転するスクレーパを設けることにより、蓄熱性物質の付着・堆積を防止し、蓄熱性物質のスラリーを安定して連続して製造することができる。
【0208】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置の正断面図(a)および側断面図(b)であり、回転体回転軸33が回転体31の下部に設置されている。
【0209】
図9に示す蓄熱性物質の製造装置において、回転体31は、その下部において回転体回転軸33に接続されている。回転体の上蓋32は、回転体31に固定されており、中央に開口を有する。回転体上蓋32には、その下面に案内羽根34が複数枚、固定されている。円板状の回転部材35が、複数の案内羽根34の内側に固定されている。
【0210】
複数本のスクレーパ36が、回転体31の内壁面の近傍に位置するように、スクレーパアーム37を介してスクレーパ回転軸38に固定されている。スクレーパアーム37の上には、熱媒液体が下部に流出しないように、円板状の棚板39が固定されている。更に、図示しない補助スクレーパが、回転体31の下部排液口41周辺の外壁面の近傍に位置するようにスクレーパ回転軸38に固定されている。
【0211】
原料液体供給管・熱媒液体供給管40は並列構造であるが、二重管構造でもよく、また後述するような単管構造でもよい。
【0212】
スクレーパ36と回転体31の内壁面、スクレーパ36と案内羽根34、スクレーパアーム37と回転体31の底面および補助スクレーパ(図示せず)と回転体31の下部廃液口41周辺の外壁面とは、わずかな隙間を持つように構成されている。
【0213】
回転体31とスクレーパ36が異なる回転速度で回転するように、回転体回転軸33とスクレーパ回転軸38が構成されている。
【0214】
以上のように構成される図9に示す蓄熱性物質の製造装置は、以下のように動作する。
【0215】
まず、回転体31とスクレーパ36とを、10〜50rpmの回転速度差で回転させる。遠心分離機構である回転体31の回転速度は、1000〜2000rpm程度であるのが好ましい。次いで、原料液体供給管から原料液体を供給し、熱媒液体供給管から熱媒液体を供給する。その結果、原料液体供給管と熱媒液体供給管の出口で原料液体と熱媒液体が接触し、熱交換が開始されるとともに、回転している回転部材35に衝突して混合され、両液体間の熱交換が促進されるので、原料液体から蓄熱性物質が生成され、蓄熱性物質が原料液体に分散した蓄熱性物質のスラリーが生成される。
【0216】
比重の異なる蓄熱性物質のスラリーと熱媒液体は、案内羽根34による遠心力にて、回転体31の内周に移動し、比重の大きい蓄熱性物質のスラリーは外側に、比重の小さい熱媒液体は内側に分離される。
【0217】
蓄熱性物質のスラリーは、回転体31の内周面と棚板39との間隙を通って下方へ移動し、下部排液口41から排出される。
【0218】
熱媒液体は、棚板39の外周より内側に位置し、回転体上蓋32において原料液体供給管・熱媒液体供給管の周りを取り囲むように設けられた複数個の開口部から排出される。
【0219】
排出された蓄熱性物質のスラリーおよび熱媒液体は、一旦、容器(それぞれ下部液体収容部315および上部液体収容部312又は、製造装置外に設置された容器(図示せず))に貯留された後、再度、それぞれの供給管に供給され、蓄熱性物質のスラリーの製造が連続的に行われる。
【0220】
案内羽根34は、蓄熱性物質のスラリーと熱媒液体に遠心力を伝達させるために設けるものであり、2〜8枚が備えられている。スクレーパ36を回転体31と異なる回転数で回転させることにより、回転体31の内壁面に蓄熱性物質が付着・堆積することが防止される。また、スクレーパアーム37によっても、回転体31の底部に蓄熱性物質が付着・堆積することが防止され、図示しない補助スクレーパによっても、回転体31の下部排液口41周辺の外壁面に蓄熱性物質が付着・堆積することが防止される。
【0221】
図10は、本発明の第5の実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置の正断面図(a)および側断面図(b)であり、回転体回転軸33が回転体31の上部に設置されている。
【0222】
図10に示す蓄熱性物質の製造装置において、回転体31は、その上部において回転体回転軸33に接続されている。回転体の上蓋32は、回転体31に固定されており、中央に開口を有する。回転体上蓋32には、その下面に案内羽根34が複数枚、固定されている。
【0223】
複数本のスクレーパ36が、回転体31の内壁面の近傍に位置するように、スクレーパアーム37を介してスクレーパ回転軸38に固定されている。スクレーパアーム37には、熱媒液体が下部に流出しないように、円板状の棚板39が固定されている。また、円板状の回転部材35が、スクレーパアーム37に固定されている。図示しない補助スクレーパが、回転体31の下部排液口41周辺の外壁面の近傍に位置するようにスクレーパ回転軸38に固定されている。
【0224】
原料液体供給管・熱媒液体供給管40は並列構造であるが、二重管構造でもよく、また後述するような単管構造でもよい。
【0225】
スクレーパ36と回転体31の内壁面、スクレーパ36と案内羽根34とは、スクレーパアーム37と回転体31の底面および補助スクレーパ(図示せず)と回転体31の下部排液口41周辺の外壁面とは、わずかな隙間を持つように構成されている。
【0226】
回転体31とスクレーパ36が異なる回転速度で回転するように、回転体回転軸33とスクレーパ回転軸38が構成されている。
【0227】
以上のように構成される図10に示す蓄熱性物質の製造装置の動作は、上述した図9に示す蓄熱性物質の製造装置の動作と同様である。
【0228】
[C]予め混合されている両液体を導入機構により同時に導入する場合
以上説明した本発明の第1〜第5の実施形態は、原料溶液および熱媒液体を導入機構により製造装置内に別々に導入する場合ならびに両液体を導入機構により製造装置内に同時に導入する場合のうち、図3に示すように、両液体を別々に導入機構に供給した後、導入機構により製造装置内に導入する前に両液体の少なくとも一部を違いに接触させるケースである。これに対して、以下に説明する本発明の第6および第7の実施形態は、原料溶液および熱媒液体を導入機構により製造装置内に同時に導入する場合のうち、両液体を導入機構に供給する前に両液体の少なくとも一部を互いに接触させるケースである。
【0229】
図11、図12および図13は、それぞれ、本発明の第6、第7および第8の実施形態に係る製造装置の側断面図である。
【0230】
本発明の第6の実施形態に係る製造装置は、導入機構の構造を除き、本発明の第1および第2の各実施形態に係る製造装置と同じである。つまり、第1および第2の実施形態に係る製造装置の導入機構は、それぞれ図1および図2に示すように、熱媒液体供給管7および原料液体供給管8という二つの管を備えている。これに対して、第6の実施形態に係る製造装置の導入機構は、図11に示すように、熱媒液体供給管7および原料液体供給管8の区別のない単一の導入管401を備える単管構造をしている。
【0231】
本発明の第7および第8の実施形態に係る製造装置は、導入機構の構造を除き、それぞれ、本発明の第4および第5の実施形態に係る製造装置と同じである。つまり、第4および第5の実施形態に係る製造装置の導入機構は、それぞれ図9および図10に示すように、熱媒液体供給管7および原料液体供給管8という二つの管40を備えている。これに対して、第7および第8の実施形態に係る製造装置の導入機構は、それぞれ図12および図13に示すように、熱媒液体供給管7および原料液体供給管8の区別のない単一の導入管401を備える単管構造をしている。
【0232】
図11、図12および図13に示す各製造装置において、原料液体および熱媒液体は、その少なくとも一部が互いに接触した後に導入機構に供給され、引き続き製造装置内に同時に導入される。原料液体および熱媒液体を予め接触させるには、例えば、導入機構の上流において、両液体を一つの配管や容器の中を通過させることにより又はミキサーのような混合専用機器を用いて、互いに混合させればよい。
【0233】
ここで、導入機構の上流において原料液体と熱媒液体とを混合させても、両液体の一部が互いに接触するに止まり残部が未接触になる場合には、両液体を導入機構により製造装置内に同時に導入したとき、接触領域が形成され、両液体は回転している回転部材6、35に衝突して混合され、両液体間の熱交換は更に進む。また、導入機構の上流において原料液体と熱媒液体とを混合させることにより両液体の全部が完全に接触する場合には(仮にそのような場合があるとしても)、両液体を導入機構により製造装置内に同時に導入したとき、接触領域と定義される領域は形成されないことにはないとはいえども、両液体は回転している回転部材6、35に衝突して混合され、両液体間の熱交換はより進む。それ故、原料溶液と熱媒液体とを導入機構に供給する前に両液体の少なくとも一部を互いに接触又は混合させても、両液体は回転している回転部材6、35に衝突して混合され、両液体間の熱交換はより進むので、より効率よく、原料液体から蓄熱性物質が生成され、蓄熱性物質が原料液体に分散した蓄熱性物質のスラリーが生成される。
【0234】
このようにして生成した蓄熱性物質のスラリーは、図11に示す製造装置の場合には図1および図2に示す各製造装置の場合と同様に、比重のより大きな熱媒液体とともに案内羽根4による遠心力の作用により回転体3の内周に移動し、蓄熱性物質のスラリーは内側に、熱媒液体は外側に分離され、分離された蓄熱性物質のスラリーおよび熱媒液体は、それぞれ下部排液機構および上部排液機構により回転体3の外部に排出される。また、生成した蓄熱性物質のスラリーは、図12および図13に示す製造装置の場合には、それぞれ図9および図10に示す各製造装置の場合と同様に、比重のより小さな熱媒液体とともに案内羽根34による遠心力の作用により回転体31の内周に移動し、蓄熱性物質のスラリーは外側に、熱媒液体は内側に分離され、分離された蓄熱性物質のスラリーおよび熱媒液体は、それぞれ下部排液機構および上部排液機構により回転体3の外部に排出される。
【0235】
このようにして排出された蓄熱性物質のスラリーおよび熱媒液体は、図11、図12および図13に示すいずれの製造装置においても、それぞれ下部液体収容部315および上部液体収容部312に一旦所蔵され、その後、必要に応じて更に他方の液体からの分離処理やその他の処理が施され、導入機構が備える導入管401により当該製造装置内へ導入され、以後循環的に蓄熱性物質のスラリーの製造に供される。
【0236】
[D]原料液体と熱媒液体との事前接触が両液体間の熱交換に及ぼす効果
図14は、原料液体と熱媒液体との事前接触が両液体間の熱交換に及ぼす効果の説明図である。この図14におけるデータは次のようにして取得した。すなわち、図12に示す製造装置において、その導入機構の上流に容器を設置し、その容器の中を原料液体と熱媒液体を通過させることにより両液体を接触又は混合させ、その後両液体を導入機構が備える導入管401に供給することにより蓄熱性物質のスラリーの製造に供した。その際、回転部材35の回転数RNは一定(800rpm)に保持した。そして、当該容器の容積を変更することにより原料液体及び熱媒液体が当該容器を通過する時間(停留時間RP)を変動させ、製造装置から分離されて排出された蓄熱性物質のスラリー及び熱媒液体のそれぞれの温度を測定して、両温度の差(温度差DT)を求めた。停留時間RP(秒)を横軸(対数表記)に、温度差DT(度)を縦軸にして測定値をプロットし、プロットしたデータについて直線近似を行って得た片対数グラフが、図14である。図14によれば、停留時間RPを長くすれば温度差DTが小さくなること、そして停留時間RPを十分長くしないと温度差DTが略ゼロにならないことが分かる。
【0237】
ここで、停留時間RPを長くすると、導入機構に供給される前の原料液体と熱媒液体との接触又は混合の程度が高まり、両液体間の熱交換が進み、両液体間の温度差が小さくなる。原料液体と熱媒液体を導入機構から製造装置内に導入した後、製造装置内における両液体に対する処理により両液体間の接触又は混合が進み、熱交換が進むと、原料液体中に蓄熱性物質がより多く生成するので、製造装置から排出される蓄熱性物質のスラリーと熱媒液体との温度差DTが小さくなる。
【0238】
それ故、図14に示す測定結果のうち、停留時間RPを長くすれば温度差DTが小さくなることは、導入機構に供給される前に原料液体と熱媒液体とを接触又は混合させれば、蓄熱性物質のスラリーの製造に寄与する両液体間の熱交換がより進む、従ってより多く又はより効率的に蓄熱性物質のスラリーを製造することができる、ことを意味している。
【0239】
また、図14に示す測定結果のうち、停留時間RPを十分長くしないと温度差DTが略ゼロにならないということは、導入機構に供給される前に原料液体と熱媒液体とを接触又は混合させても、両液体のそれぞれの一部は未接触又は未混合のまま或いは熱交換が未完のまま、蓄熱性物質のスラリーの製造に寄与することなく製造装置から排出されてしまう、ことを意味している。
【0240】
なお、図14中の点Aは、停留時間RPが非常に小さい場合、従って原料液体及び熱媒液体を導入機構により製造装置内に別々に導入する場合、回転部材35の回転数RNが800rpmであれば、温度差DTは約2.5度であることを意味している。
【0241】
[E] 回転部材が原料液体と熱媒液体との間の熱交換に及ぼす効果
図15は、回転部材が原料液体と熱媒液体との間の熱交換に及ぼす効果の説明図である。この図15におけるデータは次のようにして取得した。すなわち、図12に示す製造装置において、その導入機構の上流に、停留時間RPが10秒に相当する容積(22リットル)の容器を設置し、その容器の中を原料液体と熱媒液体を通過させることにより両液体を接触又は混合させ、その後両液体を導入機構が備える導入管401に供給することにより蓄熱性物質のスラリーの製造に供した。その際、回転部材35の回転数RNを変動させ、製造装置から分離されて排出された蓄熱性物質のスラリー及び熱媒液体のそれぞれの温度を測定して、両温度の差(温度差DT)を求めた。
【0242】
回転数RN(rpm)を横軸に、温度差DT(度)を縦軸にして測定値を直線近似によりプロットして得たグラフが、図15中のJ1である。図15中のJ2は、回転部材35の回転数RNを変動させて得られる、各回転数RNにおける停留時間RPが非常に小さい場合(図14中の点Aに相当する)のDTを直線近似によりプロットして得たグラフである。換言すれば、図15は、導入機構に供給する前に原料液体及び熱媒液体を接触又は混合させ、その後導入機構により製造装置内に同時に導入した場合における、回転部材の回転数が、蓄熱性物質のスラリーの製造に寄与する両液体間の熱交換に及ぼす効果(J1)と、原料液体及び熱媒液体を導入機構により製造装置内に別々に導入した場合における、その効果(J2)とを示している。
【0243】
図15によれば、回転部材の回転数を大きくすれば、しかも両液体を導入機構への供給前に接触又は混合させる方が、蓄熱性物質のスラリーの製造に寄与する両液体間の熱交換をより進めることができ、従ってより多く又はより効率的に蓄熱性物質のスラリーを製造することができる、ことが分かる。
【0244】
また、図14から得られる知見を考え合わせると、導入機構に供給される前に原料液体と熱媒液体とを接触又は混合させても、両液体のそれぞれの一部が未接触又は未混合のまま或いは熱交換が未完のまま、蓄熱性物質のスラリーの製造に寄与することなく製造装置から排出されてしまう場合であっても、回転部材の作用により両液体間の熱交換を進めることができる、ことが分かる。従って、回転部材を採用することにより、蓄熱性物質のスラリーの製造への寄与度を高めることができ、故に、より多く又はより効率的に、蓄熱性物質のスラリーを製造することができることが分かる。
【0245】
[F]液体の流れ
以上説明した実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置における液体の流れは、以下の通りである。
【0246】
即ち、原料液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→排液機構(→・・・→再び導入機構)の順路を経て流れ、熱媒液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→排液機構(→・・・→再び導入機構)の順路を経て流れる。
【0247】
比重差が あることを考慮すると、熱媒液体の方が比重が大きい場合には、図1、図2、図6および図11に示す実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置において、原料液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→下部排液機構(→・・・ →再び導入機構)の順路を経て流れ、熱媒液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→上部排液機構(→・・・→再び導入機構)の順路を経て流れる。また、熱媒液体の方が比重が小さい場合には、図9、図10、図12および図13に示す実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置において、原料液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→下部排液機構(→・・・ →再び導入機構)の順路を経て流れ、熱媒液体は、導入機構→接触領域→移動機構→遠心分離機構→上部排液機構(→・・・→再び導入機構)の順路を経て流れる。
【0248】
[G]製造装置と製造方法との構成の対応関係
以上説明した実施形態に係る蓄熱性物質の製造装置と製造方法との対応関係について説明する。
【0249】
蓄熱性物質の製造装置の接触領域において生ずる現象を工程として表現したものが、接触工程である。製造装置を構成する各機構の機能や役割により実行される工程が、製造方法を構成する各工程に対応する。
【0250】
従って、導入機構は導入工程に、移動機構は移動工程に、遠心分離機構は遠心分離工程に、排液機構は排液工程に、選択分離機構は選択分離工程に、付着物除去機構は付着物除去工程に、そして接触領域は接触工程に、それぞれ対応する関係となる。
【0251】
[H]製造装置を用いる製造方法
本発明に係る製造装置を用いて行う蓄熱性物質のスラリーの製造方法の典型的な工程は、当該製造装置が移動機構として回転部材を備える場合において、以下のとおりである。
【0252】
1)原料液体と、当該原料液体と比重が異なる熱媒液体とを、例えば二重管構造、並列構造又は単管構造の導入機構により、別々に又は同時に導入する。
【0253】
2)導入された原料液体及び熱媒液体の移動方向を変更させる。より具体的には、(a)原料液体と熱媒液体とを導入機構により製造装置内に別々に導入する場合、熱媒液体と原料液体とを製造装置内で初めて接触させ、熱交換を開始させ、両液体の移動方向を変更させる。または、(b)原料液体と熱媒液体とを導入機構により製造装置内に同時に導入する場合(例えば、(b-1)導入機構に供給する前に予め両液体を接触又は混合させたうえで又は(b-2)導入機構に供給した後に導入機構を通過する過程で両液体を接触又は混合させたうえで、導入機構より製造装置内に導入する場合)、原料液体と熱媒液体のうちそれぞれ少なくとも一部は既に互いに接触又は混合しているが、それらの残部は未接触又は未混合のまま或いは熱交換が未完であるケースがあるので、それらの残部を製造装置内で初めて接触させ、熱交換を開始させ、両液体の移動方向を変更させる。
【0254】
これにより、まず、熱媒液体と原料液体との直接接触による熱交換により、当該原料液体中に蓄熱性物質を生成させ、蓄熱性物質が原料液体中に分散又は懸濁するので蓄熱性物質のスラリーを製造することができる。このとき、両液体間の熱交換を促進させることができるので、より多く又はより効率的に、蓄熱性物質のスラリーを製造することができる。
【0255】
なお、上記(a)及び(b)のいずれの場合においても、接触領域として定義される領域が生じる。ただし、上記(b)の場合、原料液体と熱媒液体との混合の完全度が高い場合には、製造装置内で両液体が接触を開始する機会が減るので接触領域の存在の確認は難しくなる。しかし、両液体の移動方向を回転部材により変更させることにより両液体間の熱交換を促進させるという効果は、その他の場合と同様に生じる。
【0256】
3)原料液体と熱媒液体とを回転部材により遠心分離機構の回転体に向かって放射状に放散させる。このため、両液体は下方に落下せず、しかも回転体に向かって均一に到達する。これにより、短時間内に遠心分離に掛けることができ、遠心分離機構への負担を均一化することができる。
【0257】
なお、好ましい態様においては、接触領域が遠心分離機構の回転体の回転範囲内に配置し、より好ましい態様においては、接触領域と回転部材とが遠心分離機構の回転体の回転範囲内に配置する。これらの態様によれば、上記効果がより顕著になる。
【0258】
4)原料液体及び熱媒液体とを遠心分離機構により分離させる。より具体的には、熱媒液体が原料液体より比重が大きい場合には、遠心分離により比重が大きい熱媒液体を外側に移動させる。また、原料液体又は蓄熱性物質のスラリーと分離させ、熱媒液体が原料液体より比重が小さい場合には、遠心分離により比重が大きい蓄熱性物質のスラリーを外側に移動させ、熱媒液体と分離させる。
【0259】
5)遠心分離された熱媒液体と原料液体又は蓄熱性物質のスラリーとを、別々に排出させる。
【0260】
6)スクレーパにより製造装置の内壁面に付着又は堆積した蓄熱性物質を掻き取り、又は蓄熱性物質の付着又は堆積を抑制し、閉塞や流れの阻害の発生を防止する。これにより、安定的に蓄熱性物質のスラリーを製造することができる。
【0261】
[I]蓄熱式空調設備
図16は、本発明に係る蓄熱性物質の製造装置を用いて、蓄熱性物質のスラリーを製することで蓄熱を行う蓄熱式空調設備を示す図である。熱媒液体は原料液体より比重が大きく、且つ、熱媒液体及び原料液体を導入機構により製造装置内に別々に導入する場合について示す。
【0262】
図16に示す蓄熱式空調設備における液体の流れは、次の通りである。
【0263】
即ち、原料液体は、原料液体ポンプ50→原料液体供給管8→製造装置G内→接触領域C→回転部材6→回転体3→下部排液機構→下部液体収容部(スラリータンク)15→スラリポンプ51→蓄熱槽52→スラリ送りポンプ53→負荷側熱交換器54→蓄熱槽52(→再び原料液体ポンプ50)の経路に徐って循環する。
【0264】
熱媒液体は、熱媒液体ポンプ56→冷凍機57→熱媒液体供給管7→製造装置G内→接触領域C→回転部材6→回転体3→上部排液機構→上部液体収容部12→熱媒液体タンク55(→再び熱媒液体ポンプ56)の経路に沿って循環する。
【0265】
蓄熱性物質の製造装置Gの要部は断熱材71で覆われている。
【0266】
製造装置G外へ引き出された熱媒液体は、熱媒液体タンク55に貯蔵され、そこで、熱媒液体に少量混入している原料液体が分離され、熱媒液体の純度が高められる。熱媒液体ポンプ56により熱媒液体タンク55から引き出された熱媒液体は冷凍機57において冷却され、製造装置Gに再導入される。この冷凍機57については、これを追掛運転の際の冷凍機として使用することもできるので、その場合には、冷凍機57において冷却された熱媒液体が、製造装置Gへ向かう経路ではなく追掛運転用熱交換器59に向かう経路に沿って流れるように切り換えられ、追掛運転用熱交換器59において別の熱冷媒と熱交換した後、再び熱媒液体タンク55に戻るように構成される。
【0267】
一方、製造装置G外へ引き出された蓄熱性物質のスラリーは、下部液体収容部に相当するスラリタンク15に収容され、そこで、混入している熱媒液体が分離され、熱媒液体の混入の程度が低められた状態で当該スラリタンク15からスラリポンプ51により引き出され、蓄熱槽52で貯蔵される。蓄熱槽52において貯蔵されている蓄熱性物質のスラリーは、スラリ送りポンプ53により負荷側熱交換器54に送られ、熱利用に供される。即ち、蓄熱性物質のスラリーが負荷側熱交換器54において別の熱媒体と熱交換を行うことにより、当該蓄熱性物質が蓄積していた潜熱エネルギーを当該別の熱媒体に移動させ、空調に用いられる。この熱エネルギーの移動を通じて蓄熱性物質は原料液体に戻るので、蓄熱性物質のスラリーは負荷側熱交換器54を通過した後、原料液体の状態で蓄熱槽52に戻される。蓄熱槽52中の原料液体は、原料液体ポンプ50により引き出され、製造装置G内に再導入される。
【0268】
なお、スラリタンク15において蓄熱性物質のスラリーから分離された熱媒液体は、スラリタンク15から熱媒液体戻しポンプ58により引き出され、熱媒液体タンク55に送られる。また、熱媒液体タンク55において熱媒液体から分離された原料液体は、原料液体戻し配管(図示せず)を通じて、当該熱媒液体タンク55からスラリポンプ51により引き出され、スラリタンク15の下流に送られる(図示せず)。
【0269】
スラリタンク15にはスクリーン72が設けられ、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体に含まれる蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子が除去され、図示しない大粒子排出手段により排出される。
【0270】
図17は、本発明に係る他の蓄熱性物質の製造装置を用いて、蓄熱性物質のスラリーを製造することで蓄熱を行う蓄熱式空調設備を示す図である。熱媒液体は原料液体より比重が小さく、且つ、熱媒液体及び原料液体を導入機構に供給する前に混合槽において予め両液体を接触又は混合させたうえで製造装置内に導入する場合について示す。
【0271】
図17に示す蓄熱式空調設備における液体の流れは、次の通りである。接触領域が明確に確認できる場合とそうでない場合とがあるので、接触領域については括弧書きした。
【0272】
即ち、原料液体は、混合槽60→原料液体・熱媒液体ポンプ61→導入管401→製造装置G→(接触領域)→回転部材→回転体→下部排液機構→下部液体収容部(スラリタンク)15→スラリポンプ51→蓄熱槽52→スラリ送りポンプ53→負荷側熱交換器54→蓄熱槽52→原料液体ポンプ50(→再び混合槽60)の経路に沿って循環する。
【0273】
熱媒液体は、混合槽60→原料液体・熱媒液体ポンプ61→導入管401→製造装置G→(接触領域)→回転部材→回転体→上部排液機構→上部液体収容部→熱媒液体タンク55→熱媒液体ポンプ56→熱媒液体熱交換器62(→再び混合槽60)の経路に沿って循環する。
【0274】
蓄熱性物質の製造装置Gの要部は断熱材で覆われている。
【0275】
製造装置G外へ引き出された熱媒液体は、熱媒液体タンク55に貯蔵され、そこで、熱媒液体に少量混入している原料液体が分離され、熱媒液体の純度が高められる。熱媒液体ポンプ56により熱媒液体タンク55から引き出された熱媒液体は、冷凍機57からの冷媒と熱交換を行う熱媒液体熱交換器62において冷却され、混合槽Tに再導入される。この冷凍機57については、これを追掛運転の際の冷凍機として使用することもでき、その場合には、冷凍機57において冷却された冷媒が、熱媒液体熱交換器62に向かう経路ではなく追掛運転用熱交換器59に向かう経路に沿って流れるように切り換えられ、追掛運転用熱交換器59において別の熱冷媒と熱交換した後、再び冷凍機57に戻るように構成される。
【0276】
一方、製造装置G外へ引き出された蓄熱性物質のスラリーは、下部液体収容部に相当するスラリタンク15に収容され、そこで、混入している熱媒液体が分離され、熱媒液体の混入の程度が低められた状態で当該スラリタンク15からスラリポンプ51により引き出され、蓄熱槽52で貯蔵される。蓄熱槽52において貯蔵されている蓄熱性物質のスラリーは、スラリ送りポンプ53により負荷側熱交換器54に送られ、熱利用に供される。即ち、蓄熱性物質のスラリーが負荷側熱交換器54において別の熱媒体と熱交換を行うことにより、当該蓄熱性物質が蓄積していた潜熱エネルギーを当該別の熱媒体に移動させ、空調に用いられる。この熱エネルギーの移動を通じて蓄熱性物質は原料液体に戻るので、蓄熱性物質のスラリーは負荷側熱交換器54を通過した後、原料液体の状態で蓄熱槽52に戻される。蓄熱槽52中の原料液体は、原料液体ポンプ50により引き出され、混合槽60に戻され、製造装置G内に再導入される。
【0277】
なお、スラリタンク15において蓄熱性物質のスラリーから分離された熱媒液体は、スラリタンク15から熱媒液体戻しポンプ63により引き出され、熱媒液体タンク55に送られる。また、熱媒液体タンク55において熱媒液体から分離された原料液体は、原料液体戻し配管64を通じて、当該熱媒液体タンク55からスラリポンプ51により引き出され、スラリタンク15の下流に送られる。
【0278】
原料液体および熱媒液体は、混合槽60においてその少なくとも一部が互いに接触した後に、原料液体・熱媒液体ポンプ61により導入管401に供給され、引き続き製造装置G内に同時に導入される。
【0279】
スラリタンク15にはスクリーン72が設けられ、遠心分離機構により熱媒液体から分離された原料液体に含まれる蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子が除去され、図示しない大粒子排出手段により排出される。
【0280】
蓄熱性物質のスラリーを製造して蓄熱を行う蓄熱式空調設備において、本発明の各蓄熱性物質の製造装置を用いることにより、下記の効果を奏することができる。
【0281】
1)熱媒液体と原料液体とを直接接触させ、熱交換させるため、熱交換性能が良い。
【0282】
2)熱媒液体と原料液体の移動方向を変更する移動機構を備えているので、両液体間の熱交換効率を高めることができる。
【0283】
3) 遠心分離により熱媒液体と原料液体とを分離するため、分離機構をコンパクトにすることができ、分離のための動力を小さくできる。
【0284】
4)直接接触熱交換を行った後の原料液体と熱媒液体との分離をより効果的に行うことができ、蓄熱性物質の製造を長時間にわたり又は連続的に安定して行うことができるため、製造した蓄熱性物質を用いる蓄熱式空調設備を安定して運転することができる。また、外部に熱交換器が不要であり、機器構成がシンプルである、等の効果がある。
【符号の説明】
【0285】
1…主軸管、2…回転内管、3,31…回転体、4,34…案内羽根、5,36…スクレーパ、6,35…回転部材、7…熱媒液体供給管、8…原料液体供給管、9…回転内管プーリ、10…主軸管プーリ、11…連結部材、12…上部液体収容部、13…ケーシング、15…下部液体収容部、16…上蓋部、17…上部筒体、18,41…下部排液口、19…下部筒体、20…調整板、21…上部排液口、22…羽根固定板、23…障害板、32…回転体の上蓋、33…回転体回転軸、37…スクレーパアーム、38…スクレーパ回転軸、39…棚板、40…原料液体供給管・熱媒液体供給管、50…原料液体ポンプ、51…スラリポンプ、52…蓄熱槽、53…スラリ送りポンプ、54…負荷側熱交換器、55…熱媒液体タンク、56…熱媒液体ポンプ、57…冷凍機、58,63…熱媒液体戻しポンプ、59…追掛運転用熱交換器、60…混合槽、61…原料液体・熱媒液体ポンプ、62…熱媒液体熱交換器、64…原料液体戻し配管、401…導入管、I…導入機構、T…移動機構、C…接触領域、S…遠心分離機構、R…原料液体、M…熱媒液体、H…蓄熱性物質、G…製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させる蓄熱性物質の製造装置であって、
前記原料液体および前記熱媒液体を導入する導入機構と、
前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動機構と、
前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体を回転させ、遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、
を備えることを特徴とする蓄熱性物質の製造装置。
【請求項2】
前記移動機構は、回転部材を備え、前記導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転部材の回転の作用により前記遠心分離機構に向けて移動させる機構であることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項3】
温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を導入する導入機構と、
該導入機構により導入された前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換を開始する接触領域と、
該接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動機構と、
前記接触領域のまわりで回転する回転体を備え、前記該移動機構により移動方向が変更された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体の作用により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離機構と、
を具備することを特徴とする蓄熱性物質の製造装置。
【請求項4】
前記回転体は、上部と下部のそれぞれの位置に、前記接触領域が位置する内側から回転体の外側に向けて液体の移動を可能にする排出機構を更に具備することを特徴とする請求項3に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項5】
前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を除去する付着物除去機構を更に具備することを特徴とする請求項3又は4に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項6】
前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体に含まれる前記蓄熱性物質のうち比較的大きな粒子を、前記原料液体から選択的に分離する選択分離機構を更に具備することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記回転体と同軸に回転する回転部材を備え、前記接触領域において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転部材の回転の作用により前記遠心分離機構に向けて移動させる機構であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項8】
前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転主面に向けて放出する機構であることを特徴とする請求項7に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項9】
前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転軸に沿って前記回転部材の回転主面の回転中心又はその近傍に向けて放出する機構であることを特徴とする請求項7に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項10】
前記回転部材は、水平に配置され、前記回転体と同方向に回転する回転主面を有しており、前記導入機構は、原料液体用配管および熱媒液体用配管を通じてそれぞれ前記原料液体および前記熱媒液体を前記回転部材の回転主面に向けて放出する機構であり、前記原料液体用配管および熱媒液体用配管は、一方が他方の管内に位置するか又は一方が他方の管内に位置することなく互いに隣接若しくは近接して位置する配管であることを特徴とする請求項7に記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項11】
前記遠心分離機構により前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部をスクレーパを用いて除去する付着物除去機構を更に備え、前記スクレーパは、前記接触領域および前記回転部材から離隔した位置にあって、前記回転体と同軸で且つ異なる速度で、前記回転部材とともに回転するスクレーパであることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の蓄熱性物質の製造装置。
【請求項12】
温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を互いに直接接触させて、前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させる蓄熱性物質の製造方法であって、
前記原料液体および前記熱媒液体を導入する導入工程と、
前記導入工程において導入された前記原料液体および前記熱媒液体の移動方向を変更させる移動工程と、
前記移動工程により移動方向が変更された前記原料液体および前記熱媒液体を回転体により回転させ、遠心力の作用により分離させる遠心分離工程と、
を有することを特徴とする蓄熱性物質の製造方法。
【請求項13】
温度変化に起因してその一部が蓄熱性物質に変化する原料液体および該原料液体と異なる比重を有する熱媒液体を導入する導入工程と、
該導入工程において導入された前記原料液体および前記熱媒液体のそれぞれの少なくとも一部を接触領域において互いに直接接触させ、それにより前記原料液体から前記蓄熱性物質を生成させるために必要な熱交換を開始する接触工程と、
該接触工程において直接接触した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記接触領域のまわりで回転する回転体に向けて移動させる移動工程と、
該移動工程において前記接触領域から移動した前記原料液体および前記熱媒液体を、前記回転体により回転させ、それにより生じる遠心力の作用により分離させる遠心分離工程と
を具備することを特徴とする蓄熱性物質の製造方法。
【請求項14】
前記遠心分離工程において分離された前記原料液体および前記熱媒液体を、前記接触領域が位置する前記回転体の内側から外側に向けて移動させる排出工程を更に具備することを特徴とする請求項13に記載の蓄熱性物質の製造方法。
【請求項15】
前記遠心分離工程において前記熱媒液体から分離された前記原料液体と接触する部材の表面に付着した前記蓄熱性物質の少なくとも一部を除去する付着物除去工程を更に具備することを特徴とする請求項13又は14に記載の蓄熱性物質の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−211296(P2012−211296A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160298(P2011−160298)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、省エネルギー革新技術開発事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)