説明

蓄熱材組成物、蓄熱体及び蓄熱積層体

【課題】本発明は、優れた蓄熱性を有し、かつ、蓄熱材の漏れも無く、加工性、施工性に優れる蓄熱材組成物を提供する。
【解決手段】本発明の蓄熱材組成物は、(A)(メタ)アクリルモノマー、(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー、(C)油溶性重合開始剤、(D)有機潜熱蓄熱剤、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い蓄熱性を有する蓄熱材組成物、蓄熱体及び蓄熱積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギーを蓄える技術、即ち蓄熱技術が、昨今のエネルギー問題を解決する技術の一つとして着目されている。
蓄熱技術は、太陽熱、地熱等の自然エネルギーや、冷暖房器具からの余熱を有効利用する技術で、例えば、住宅においては、安価な夜間電力を使用して、熱を蓄え、多目的な熱源として利用し、日中の電力消費を抑える技術として利用されている。
【0003】
このような蓄熱技術に用いられる蓄熱剤としては、顕熱蓄熱剤、潜熱蓄熱剤が挙げられ、特に、物質の相変化による潜熱を利用した潜熱蓄熱剤が多く採用されている。
【0004】
この潜熱蓄熱剤は、物質が固体から液体に相変化する時に熱を蓄え(蓄熱)、液体から固体に相変化する時に熱を放出(放熱)するという性質を利用し、蓄熱・放熱させるもので、一般に、15℃〜50℃の温度範囲で相変化(固液変化)するものが多い。そのため、液体として取り扱う必要があり、その利用方法としては、液体の状態で密閉型のラミネートシートやプラスチックケースに封入することが一般的である。
【0005】
しかし、ラミネートシートやプラスチックケースでは、定形サイズに限定され、切断等の加工は、潜熱蓄熱剤が漏れ出すため不可能である。また、釘打ち等による施工も、潜熱蓄熱剤が漏れ出すため不可能である。さらに、ラミネートシートやプラスチックケースを縦に固定した場合、蓄熱剤が底部に偏り、有効に蓄熱剤が利用できないという問題もある。
したがって、蓄熱剤を利用する場合、蓄熱式床暖房用の蓄熱剤に代表される平置きの用途にのみ使用されているのが実状である。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1では、塗膜またはシート等に潜熱蓄熱カプセルを担持させることにより、切断等の加工や釘打ち等の施工を可能にし、さらに蓄熱材の底部への偏りも抑えた蓄熱体が提案されている。
また非特許文献1では、石膏ボードのような材料に、潜熱蓄熱剤をカプセル化したものを混ぜ合わせ無機バインダーや樹脂等により固定することにより、同問題を解決している。
【0007】
【特許文献1】特開平10−311693号公報(請求の範囲)
【非特許文献1】日本建築学会計画系論文集 第540号、23−29、2001年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1では、蓄熱剤自体への効果的な熱伝導が阻害されやすくなり、また、蓄熱剤の含有率も少なくなることから、十分な蓄熱性能が得られ難いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、(A)(メタ)アクリルモノマー、(B)重量平均分子量が3000〜10000の(メタ)アクリルポリマー、(C)油溶性重合開始剤、(D)有機潜熱蓄熱剤を混合し重合させて得られたものである蓄熱材組成物から得られる蓄熱体が、優れた蓄熱性を有し、かつ、蓄熱材の漏れも無く、加工性、施工性に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の特徴を含むものである。
1.(A)(メタ)アクリルモノマー、
(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー、
(C)油溶性重合開始剤、
(D)有機潜熱蓄熱剤、
を含有することを特徴とする蓄熱材組成物。
2.(A)(メタ)アクリルモノマー、
(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー、
(C)油溶性重合開始剤、
(D)有機潜熱蓄熱剤、
(E)有機処理された層状の粘土鉱物、
を含有することを特徴とする蓄熱材組成物。
3.(A)成分が、1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有することを特徴とする1.または2.のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
4.(D)成分が長鎖脂肪酸エステルであることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
5.(A)成分100重量部に対し、(B)成分5〜100重量部、(C)成分0.1〜50重量部、(D)有機潜熱蓄熱剤100〜500重量部含有することを特徴とする1.から4.のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
6.(D)有機潜熱蓄熱剤100重量部に対し、(E)有機処理された層状粘土鉱物0.5重量部〜50重量部を含有することを特徴とする2.から5.のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
7.1.から6.のいずれかに記載の蓄熱材組成物を重合して得られる蓄熱体。
8.7.に記載の蓄熱体をシート状とし、少なくとも片面を積層材にて積層したことを特徴とする蓄熱積層体。
9.前記積層材が熱伝導体であることを特徴とする8.に記載の蓄熱積層体。
10.前記積層材が難燃性ないし不燃性の材料であることを特徴とする8.に記載の蓄熱積層体。
11.前記積層材が熱伝導率0.1W/(m・K)未満の断熱体であることを特徴とする8.に記載の蓄熱積層体。
12.前記積層材が発熱体であることを特徴とする8.に記載の蓄熱積層体。
13.さらに前記発熱体に断熱体が積層されていることを特徴とする12.に記載の蓄熱積層体。
14.前記積層材が、少なくとも繊維材料であることを特徴とする8.に記載の蓄熱積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓄熱材組成物から得られる蓄熱体は、高い蓄熱材含有率を有し蓄熱性に優れ、かつ、高い蓄熱材含有率を有しているにもかかわらず経時的に蓄熱材が漏れることがない。さらに蓄熱体を切断したとしても、切断面から蓄熱材が漏れ出すこともなく加工性に優れ、また、釘打ち等による蓄熱材の漏れがないため、取付け施工性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、その実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
【0013】
本発明の蓄熱材組成物は、(A)(メタ)アクリルモノマー(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー(以下、「(B)成分」ともいう。)、(C)油溶性重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)、(D)有機潜熱蓄熱剤(以下、「(D)成分」ともいう。)を含有することを特徴とするものである。
このような蓄熱材組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分が互いに相溶することが可能であり、均一な混合溶液を得ることができる。このような状態から、重合を開始させることによって、高い蓄熱材含有率を有し蓄熱性に優れ、かつ、高い蓄熱材含有率を有しているにもかかわらず経時的に蓄熱材が漏れることがなく、さらに蓄熱体を切断したとしても、切断面から蓄熱材が漏れ出すこともなく加工性に優れ、また、釘打ち等による蓄熱材の漏れがないため、取付け施工性に優れた蓄熱体を得ることができる。
【0014】
(A)成分としては、例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリルモノマー、
(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、
グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリルモノマー、
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、タンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリルモノマー、
アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリルモノマー、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリルモノマー、
トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリルモノマー、
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有(メタ)アクリルモノマー、
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソプロピルメチル、(メタ)アクリル酸トリブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリt−ブチルメチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オタタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等のアルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、等が挙げられる。
【0015】
(A)成分は、特に、1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有することが好ましい。1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有することにより、ポリマーネットワークが形成されやすく、(D)成分をより固定化することができ蓄熱体から(D)成分の漏れをなくし、かつ、より優れた強度、かつ、より優れたフレキシブル性を有する蓄熱体を得ることができる。
1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーは、(A)成分全量に対し、3重量%〜30重量%程度、さらには5重量%〜20重量%程度含有することが好ましい。1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーが多すぎる場合は、フレキシブル性に劣る場合がある。
【0016】
(B)成分は、重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマーである。
このような(B)成分は、(A)成分と相溶しやすく、重合前は(A)成分と(B)成分が均一な混合溶液となりやすい。このような状態から(A)成分を重合させることにより、(A)成分からなるポリマーと(B)成分とが、均等に配置され、優れた強度と優れたフレキシブル性を有する蓄熱体を得ることができる。
また、(B)成分は、(A)成分からなるポリマーをある程度可塑化する働きももっており、優れた強度と優れたフレキシブル性を有する蓄熱体を得ることができる。
さらに、(B)成分は、(A)成分の自由度を制御する働きがあり、(A)成分の重合速度を速める効果もある。
【0017】
このような(B)成分は、上記(A)成分、必要に応じその他のモノマーを混合し、公知の方法で重合して得られるポリマーである。
【0018】
その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、酢酸ビニル、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル、ビニルエーテル、
シリコーンマクロマー、
ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリプロピレングリコールアリルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル、
ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン、
クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸、
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、
ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルアミド、
アクロレイン、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル(イソ)ブチルケトン、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、アセトアセトキシアリルエステル、
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシシラン、ビニルトリエトキシシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、
メタクリロイルイソシアネート、
ビニルオキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン、
プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、
フッ化ビニリデン、
等が挙げられる。
【0019】
(B)成分は、上述した上記(A)成分、必要に応じその他のモノマーを混合し、公知の乳化重合、塊状重合、溶液重合、分散重合、酸化還元重合等の重合方法で、重合すればよい。また、必要に応じ、溶媒、乳化剤、開始剤、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等またはその他の添加剤等を加えてもよい。
重合温度は、特に限定されず、通常、30℃〜100℃程度であればよい。
【0020】
(B)成分を構成するモノマーのうち、(A)成分は50重量%以上、好ましくは、70%以上含有することが好ましい。
(B)成分の重量平均分子量は、3000〜100000、さらには10000〜50000であることが好ましい。このような範囲であることにより、(A)成分と(B)成分が相溶しやすくなる。
重量平均分子量が100000より大きい場合、(A)成分と相溶しにくくなり、強度とフレキシブル性に優れた蓄熱体を得ることができない。重量平均分子量が3000より小さい場合、蓄熱体の強度に劣る場合がある。
【0021】
(B)成分としては、特に、反応性官能基を有するものが好ましい。
例えば、反応性官能基を有する(B)成分と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有するもう一種の(B)成分、反応性官能基を有する(B)成分と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する架橋剤、反応性官能基を有する(B)成分と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を有する(A)成分等の組み合わせにより、(B)成分どうし、または、(B)成分と(A)成分をポリマーネットワークでつなげることができ、蓄熱体中に(D)成分を保持しやすく、より優れた強度を有する蓄熱体を得ることができる。
反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とヒドラジド基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基と金属イオン、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基、アルコキシシリル基どうし、ビニル基どうし等が挙げられる。
【0022】
(B)成分の混合量は、(A)成分100重量部に対し、5重量部〜100重量部、さらには10重量部〜50重量部であることが好ましい。100重量部より多い場合、(A)成分の混合量が少なく、優れた強度を有する蓄熱体が得られ難い。5重量部より少ない場合、優れたフレキシブル性を有する蓄熱体が得られ難い。
【0023】
(C)成分は、油溶性重合開始剤である。
(C)成分は、重合前に、(A)成分、(B)成分とともに均一に混合して用いる。このような(C)成分を使用することによって、速やかに(A)成分の重合が進行し、強度とフレキシブル性に優れた蓄熱体を得ることができる。
(C)成分としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチロバレロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、これらの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(C)成分の混合量は、(A)成分100重量部に対し、0.1重量部〜50重量部、さらには0.5重量部〜20重量部であることが好ましい。
【0025】
本発明では、重合を速やかに進行させるため、また、低い温度でも重合を速やかに進行させるため、レドックス的に重合反応させることができ好ましい。
例えば、アゾ化合物と油溶性の第3級アミン化合物(以下、「(F)成分」ともいう。)との組み合わせ、有機過酸化物と油溶性の第3級アミン化合物の組み合わせ等により、レドックス的に重合を進行させることができる。特に、有機過酸化物と油溶性の第3級アミン化合物との組み合わせが好ましい。
このような(F)成分としては、例えば、N、N’−ジメチル−p−トルイジン、N、N’−ジメチルアニリン、N−ジ(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等が挙げられる。
(F)成分の混合量は、(C)成分100重量部に対し、10重量部〜150重量部、さらには30重量部〜100重量部であることが好ましい。
【0026】
(D)成分は、有機潜熱蓄熱材である。有機潜熱蓄熱材としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらの蓄熱材のうち1種または2種以上を用いることができる。
このような有機潜熱蓄熱材は、沸点が高く揮発しにくいため、蓄熱体形成時における肉痩せがほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱剤を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。さらに、(A)成分、(B)成分、(C)成分と均一に混合しやすい点でも有利である。
【0027】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜30の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、テトラデカン、ペンタデカン(融点6℃)、ヘキサデカン(融点18℃)、ヘプタデカン(融点22℃)、オクタデカン(融点28℃)、ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0028】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜30の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
【0029】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜30の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0030】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜30の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸ステアリル、フタル酸ジステアリル等が挙げられる。
【0031】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0033】
本発明では、特に、長鎖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。長鎖脂肪酸エステルは、(A)成分、(B)成分、(C)成分と均一に混合しやすい点で、特に有利であるとともに、蓄熱体形成時における肉痩せがほとんど無く、長期に亘り蓄熱性能を持続させることができる。
【0034】
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤を用いることが好ましい。相溶化剤を用いることにより、有機潜熱蓄熱材同士の相溶性をより向上させることができる。
【0035】
相溶化剤としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1〜10の非イオン性界面活性剤等が挙げらる。
【0036】
このような脂肪酸トリグリセリドは、特に有機潜熱蓄熱材同士の相溶性を、より向上させることができるため好ましい。脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0037】
親水親油バランス(HLB)が1〜10の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ステアリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタン等が挙げられる。
【0038】
相溶化剤と(D)成分の混合比は、通常(D)成分100重量部に対し、相溶化剤0.1重量部から30重量部(好ましくは0.5重量部から20重量部)程度とすればよい。
【0039】
本発明では、(E)有機処理された層状の粘土鉱物(以下、「(E)成分」ともいう。)を(D)成分とともに混合することが好ましい。
(E)成分は、有機処理されたものであるため、(D)成分が(E)成分の層間に入り込みやすく、また(D)成分が(E)成分の層間に保持されやすい構造となっている。
このような(E)成分と(D)成分を混合することにより、(E)成分の層間に、(D)成分が入り込み、結果として、(D)成分の粘度を上昇させ、蓄熱体内に(D)成分を担持し、より保持し続けることができる。そのため、(D)成分が蓄熱体外部へ漏れ出すのを防ぎ、蓄熱性に優れ、加工性、施工性に優れた蓄熱体を得ることができる。
さらに(E)成分は、(D)成分の相変化温度やその他の各種物性に影響を与えないため、(D)成分の蓄熱剤としての性能を効率よく発揮することができ、蓄熱体としての相変化温度の設定が容易であるため、好ましい。
【0040】
(E)成分の底面間隔は、13.0〜30.0Å(好ましくは15.0〜26.0Å)程度であることが好ましい。このような範囲であることにより、(D)成分が、(E)成分の層間により入り込みやい。なお、底面間隔はX線回折パターンにおける(001)反射から算出される値である。
【0041】
(D)成分と(E)成分混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、(D)成分と(E)成分混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0042】
このような粘度、TI値とすることによって、蓄熱体の製造時においては蓄熱体内に(D)成分が安定して担持されやすく、かつ、蓄熱体の製造後においては蓄熱体内に(D)成分が長期に亘って保持されやすい。そのため、(D)成分が蓄熱体外部へ漏れ出すのを防ぎ、より蓄熱性に優れ、より加工性、施工性に優れた蓄熱体を得ることができる。
【0043】
(E)成分としては、有機処理された層状粘土鉱物であれば特に限定されない。
層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0044】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
【0045】
(D)成分と(E)成分の混合比は、通常(D)成分100重量部に対し、(E)成分を0.5重量部〜50重量部(好ましくは1重量部〜30重量部、より好ましくは3重量部〜20重量部)程度とすればよい。0.5重量部より少ない場合は、(D)成分が蓄熱体内から漏れやすくなる可能性がある。50重量部より多い場合は、(D)成分の粘度が高くなり過ぎ、蓄熱体への担持・保持工程が困難となる場合がある。
【0046】
また、本発明では、熱伝導性物質及び/または難燃剤を(D)有機潜熱蓄熱剤とともに混合することができる。
熱伝導性物質は、蓄熱材の熱効率性を向上させ、より優れた蓄熱性能を得ることができる。
熱伝導性物質としては、例えば、銅、鉄、亜鉛、ベリリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、ジルコニウム、モブリデン、タングステン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の金属およびそれらの合金、あるいはこれらの金属を含む金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物等の金属化合物、また、鱗状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
熱伝導性物質の熱伝導率としては、1W/(m・K)以上、さらには3W/(m・K)以上、さらには5W/(m・K)以上であることが好ましい。このような熱伝導率を有する熱伝導性物質を混合することにより、蓄熱体内の熱の移動をスムーズにし、より効率よく蓄熱材の熱効率性を向上させることができる。
また、熱伝導性物質は、微粒子として用いることが好ましく、平均粒子径は、1〜100μm、さらには5〜50μmであることが好ましい。
【0048】
(D)有機潜熱蓄熱剤と熱伝導性物質の混合比は、通常有機潜熱蓄熱剤100重量部に対し、熱伝導性物質を5重量部〜200重量部(好ましくは10重量部〜80重量部、より好ましくは20重量部〜60重量部)程度とすればよい。5重量部より少ない場合は、蓄熱性能の向上がみられにくい。200重量部より多い場合は、粘度が高くなり、蓄熱体に効率よく担持することが困難となる場合がある。
【0049】
難燃剤としては、例えば、リン系化合物、有機リン系化合物、金属化合物、膨張性黒鉛等が挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、三塩化リン、五塩化リン、ポリリン酸アンモニウム、アミド変性ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、エチレンジアミンリン酸塩、エチレンジアミンリン酸亜鉛塩、1、4−ブタンジアミンリン酸塩などのリン酸アミン塩や、赤燐、リン酸エステル等が挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等が挙げられる。
金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化銅、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ゼオライト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
膨張性黒鉛としては、例えば、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キャッシュグラファイト等の粉末を硫酸、硝酸、酢酸、過塩素酸、過塩素酸塩、、過マンガン酸塩等で処理したもの等が挙げられる。
【0050】
本発明では、特に、膨張性黒鉛を含むものが好ましい。
膨張性黒鉛としては、膨張温度が、潜熱蓄熱材の引火点以下であるものが好ましく、例えば、180℃以下、さらもは170℃以下、さらには160℃以下であるものが好ましい。このような膨張温度であることにより、潜熱蓄熱材の引火点以下で膨張して表面炭化層(断熱層)を形成し、潜熱蓄熱材への引火を防止することができる。このような膨張性黒鉛としては、天然鱗片状グラファイトの層間に酢酸等の有機酸を挿入(処理)したものが好ましい。特に、粒子径が150〜500μmで、膨張容積が150〜300ml/gであるものが好ましい。
【0051】
(D)有機潜熱蓄熱剤と難燃剤の混合比は、通常蓄熱材100重量部に対し、難燃剤を5重量部〜100重量部(好ましくは10重量部〜50重量部)程度とすればよい。5重量部より少ない場合は、難燃性を高めることが困難である。100重量部より多い場合は、蓄熱性能が低下する恐れがある。
【0052】
本発明の蓄熱体は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分等を含有する蓄熱材組成物を混合し、重合して得られることを特徴とする。
本発明では、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分等を均一に混合し、ラジカル重合させることにより蓄熱体を得ることができる。特に、本発明では、水や溶剤を使用せず、無溶剤系で重合させることが好ましい。このような場合、重合中または重合後における蓄熱体の肉痩せがほとんど無いため、好ましい。
重合温度は、特に限定されず、通常、(D)有機潜熱蓄熱剤の融点以上であればよいが、通常0℃〜100℃程度である。また、重合時間は、5分から24時間程度であればよい。
本発明では、(F)成分を混合することにより、(C)成分と(F)成分によりレドックス的に速やかに重合を進行させることができるため、重合温度が低くても、比較的短い時間で重合を進行させることができる。
【0053】
また本発明の蓄熱体は、必要に応じ、顔料、骨材、増粘剤、可塑剤、造膜助剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体、溶剤等またはその他の添加剤等を加えてもよい。
【0054】
このようにして得られる蓄熱体の蓄熱剤含有率は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上とすることができ、優れた蓄熱性能を示すことができる。
【0055】
蓄熱材組成物から得られる蓄熱体の形状としては、シート状、棒状、針状、球状、角状、粉末状等特に限定されない。
【0056】
特に、蓄熱体の形状として、シート状であるものが扱い易いため好ましく、蓄熱体シートの厚さは用途に応じて適宜設定されるが、1〜100mmであることが好ましい。
また、蓄熱体の形状として、粉末状のものも好ましい。粉末状の蓄熱体の大きさとしては、特に限定されないが、10μm〜10mm、さらには50μm〜8mmが好ましい。このような粉末状の蓄熱体は、塗料、インクに添加して、また、建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として、さらには、繊維等に充填し、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具等の材料として好適に用いることができる。また、一般に使用される結合材等と混合して、シート状とすることもでき、このようなシート状蓄熱体は、結合材等を適宜設定することにより、よりフレキシブル性に優れるシート状蓄熱体や、より耐久性、耐候性に優れるシート状蓄熱体等を製造することができ、各種用途に用いることができる。このような粉末状の蓄熱体は、得られた蓄熱体をミキサー等の公知の粉砕機器を用いて、公知の方法で粉砕することにより粉末状の蓄熱体を所望の大きさに調整することができる。
【0057】
このような蓄熱組成物から得られる蓄熱体が、使用される用途としては特に限定されないが、主として、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として好適に使用することができる。さらに、床暖房システム、車輌等の内装材、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に用いる材料としても適用できる。
【0058】
本発明の蓄熱材組成物から得られた蓄熱体は、そのまま各種用途に適用することもできるし、なんらかの積層材を積層し、蓄熱積層体として各種用途に適用することもできる。例えば、蓄熱積層体を得る方法としては、蓄熱体をシート状とし、少なくとも片面を積層材にて積層して得ることができる。
【0059】
具体的に、蓄熱積層体の態様としては以下のものが例示される。
(1)積層材が熱伝導体、好ましくは熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体である積層材を積層した蓄熱積層体(蓄熱積層体1)。
(2)積層材が熱伝導率0.1W/(m・K)未満の断熱体である積層材を積層した蓄熱積層体(蓄熱積層体2)。
(3)積層材が発熱体である積層材を積層した蓄熱積層体(蓄熱積層体3)。
(4)積層材として少なくとも繊維材料を使用した衣類(衣類)。
【0060】
(蓄熱積層体1)
本発明の蓄熱積層体の好適な実施態様は、シート状の蓄熱体に木質板、金属板、樹脂板、ガラス板及び無機質板などの積層材を積層したものであり、該積層材は好ましくは熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体である。本発明の蓄熱積層体には、(i)積層材と蓄熱体とが積層されたパネルないしシート、(ii)積層材が建築物、構築物の構造基体であり、該構造基体の表面に蓄熱体が積層された積層体、があり、(i)のパネルないしシートは、建築物や構築物の壁面、床、窓等に積層固定することにより使用され、(ii)の積層体の表面には、好ましくはさらに積層材が積層される。
【0061】
熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体である積層材としては、特に限定されないが、シート、フィルム又はパネル状の材料、具体的には、ガラス板、アクリル樹脂、ビニル樹脂、PET樹脂等の樹脂板またはシート(フィルムを含む)、ステンレス、銅、アルミニウム、鉄、真鉄、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属板又は金属箔、不織布、織布、ガラスクロス等の繊維材料、紙、合成紙等の紙材、木材、パーティクルボード、合板等の木質材、スレート板、石膏ボード、ALC板、珪酸カルシウム板、木毛セメント板、セラミックペーパー、天然石板、無機サイディングボード等の無機質板、金属サイディングボード等の金属材料を含む複合ボードまたはシート等が挙げられる。これらの熱伝導体の厚さは、0.05mm以上、さらには0.1mm以上15mm以下程度であることが好ましい。
このような熱伝導体は、夜間や冬季においては、結露等を起こすおそれがあるが、本発明の蓄熱体を積層することにより、熱伝導体の温度変化を緩和し、結露を防止することができる。たとえば、ガラスや金属板に本発明の蓄熱体を積層することで、結露防止効果を得ることができる。
【0062】
本発明の蓄熱積層体は主として建築物に使用するものであるため、積層材としては、難燃材、準不燃材および不燃材等の防火材を使用することにより、優れた蓄熱性に加え、防火性を付与することができ、防火性を必要とする部位(例えば、建築物の内装材等)にも適用することができる。
このような防火材としては、例えば、コンクリート板、ガラス板、金属板、木毛セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の平板、金属フィルム、グラスファイバー等のフィルム成形体、発泡性防火材料、難燃材含有材料等が挙げられる。
【0063】
本発明の蓄熱積層体における蓄熱体はシート状であることが好ましい。蓄熱積層体の製造方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。上記(i)の積層体の場合には、例えば、予め蓄熱体を作製しておき、熱伝導体の片面または両面に公知の接着剤や接着テープ等で貼着する方法、また、熱伝導体の片面または両面に直接蓄熱材組成物を塗付する方法が例示される。また上記(ii)の蓄熱積層体の場合には、建築物、構築物の構造基材表面に直接蓄熱材組成物を塗付する方法、さらに必要に応じて上記の積層材(熱伝導体)を積層して貼着する方法、または蓄熱体が形成された後に接着剤などを使用して貼着、積層する方法等が挙げられる。
【0064】
上記蓄熱積層体におけるシート状の蓄熱体の厚さは、特に限定されないが、通常1〜30mm程度が好ましく、2〜20mm程度であることがより好ましい。
【0065】
シート状の蓄熱体の形成方法としては、特に限定されず、押出し成形、型枠成形等、または各種積層材にスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付することにより形成することができる。
【0066】
蓄熱材組成物を層状に積層して硬化させて蓄熱体を形成させる方法の場合、熱伝導体に蓄熱材組成物をスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で積層することにより形成することができる。
また、現場にて直接熱伝導体または構造基材表面に積層することも可能である。
【0067】
蓄熱積層体1は、熱伝導体と蓄熱体が積層していれば特に限定されず、2層または、3層以上で構成されたものでもよい。例えば、3層構造としては、熱伝導体/蓄熱体/熱伝導体の3層構造や、蓄熱体/熱伝導体/蓄熱体の3層構造等が挙げられる。
【0068】
蓄熱積層体1においては、さらに保護層を積層してもよい。保護層は、熱伝導体に積層することもできるし、蓄熱体に積層することもできるが、特に蓄熱体に積層することが好ましい。このような保護層を設けることにより、蓄熱積層体の耐候性、耐久性を向上させることができる。
【0069】
上記の蓄熱積層体1に積層する保護層を構成する材料としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・べオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等の溶剤可溶型、NAD型、水可溶型、水分散型、無溶剤型等のコーティング液やコーティングフィルムを塗付、貼着したもの、繊維質シートなどが例示される。
【0070】
また、蓄熱積層体1においては、必要に応じ、さらに断熱体を積層することもできる。断熱体の積層位置は、特に限定されず、一般的にはパネルとして断熱体を建築物、構築物の構造基体側に位置するように施工する。
【0071】
断熱体としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)の断熱性を有するものであることが好ましい。熱伝導率が0.1W/(m・K)未満である断熱体は、優れた断熱性を有する。断熱体としては上述の断熱体、市販の断熱体、空気層や真空層等が使用可能である。
【0072】
熱伝導率が0.1W/(m・K)未満の断熱体としては、例えば、ポリスチレン発泡体、硬質ポリウレタンフォームなどのポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。
【0073】
蓄熱積層体1は、例えば、住宅やオフィス等の窓ガラス、床、壁、天井や温室、その他保温施設等の用途に用いることができる。
【0074】
例えば、住宅やオフィス等の窓ガラスや温室等に用いる場合は、熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体及び蓄熱体が透明性を有することが好ましい。具体的には、光透過率が、70%以上、さらには80%以上であることが好ましい。このような熱伝導体構成材料としては、ガラス板、樹脂ボードや樹脂シート等が挙げられる。光透過率は、JIS K 7105−1981 5.5「光線透過率及び全光線反射率」に規定する測定法Aに準拠し、積分球式光線透過率測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製)を用いて測定した全光線透過率の値である。
【0075】
蓄熱積層体1は、透明性を有することが好ましい態様であるが、透明性を有さない熱伝導体を積層したものであってもよい。
【0076】
(蓄熱積層体2)
蓄熱積層体2の実施態様は、シート状の蓄熱体に熱伝導率0.1W/(m・K)未満の断熱体を積層材として積層したものである。
【0077】
係る蓄熱積層体2は、例えば、上述した製造方法により得られた蓄熱体と断熱体を公知の接着剤や接着テープ等で貼着する方法、また断熱体の上に直接上述した蓄熱材組成物を塗付する方法等により製造することができる。後者の場合、パネル状の断熱体に蓄熱材組成物をスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付することにより形成することができる。
蓄熱積層体2は、パネル状又はシート状であり、蓄熱体/断熱体の2層からなるものでもよいし、断熱体/蓄熱体/断熱体、蓄熱体/断熱体/蓄熱体等の3層構造、またはそれ以上の多層の構造体であってもよい。また、断熱体、蓄熱体は、それぞれ1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。3層以上の場合でも、上記積層方法と同様の方法で積層することにより製造することができる。
【0078】
断熱体としては、特に限定されないが、上記蓄熱積層体1において例示した断熱体を使用することができる。
【0079】
上記蓄熱積層体2における蓄熱体の形状は、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。シート状である場合、蓄熱断熱体(蓄熱積層体2)の厚さは、用途により適宜設定すればよいが、各蓄熱体が通常1〜30mm(好ましくは、2〜20mm)程度、各断熱体が通常1〜30mm(好ましくは、2〜20mm)程度とすればよい。
【0080】
上記蓄熱積層体2は、特にフレキシブル性を有するものが好ましく、フレキシブル性を有する蓄熱体とフレキシブル性を有する断熱体を適宜選択して積層することにより形成することができる。フレキシブル性を有することにより、湾曲した部位や凹凸を有する部位であっても、隙間無く該蓄熱積層体を積層することができ、気密性に優れ、より蓄熱・断熱性能を向上させることができる。
【0081】
蓄熱積層体2は、主として、住宅等の建築物の内壁材、外壁材、天井材、床材等の内・外装材、車輌等の内装材として好適に用いることができる。さらに、本発明の蓄熱積層体2は、熱電変換システム、冷蔵・冷凍庫、クーラーボックス、保温シート、電気製品、OA機器等の日常品、機械、機器等の工業製品、プラント、タンク等にも適用できる。また各種積層材に貼り合わせて使用することもできる。
【0082】
本発明の蓄熱積層体2においては、使用する用途に合わせて、蓄熱材を適宜設定することができる。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを使用することが好ましい。車輌等の内装材として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを、冷蔵庫として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−10℃〜5℃付近のものを、冷凍庫として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−30〜−10℃付近のものを、それぞれ使用することができる。
【0083】
本発明の断熱体を積層した蓄熱積層体2を建築物や構築物に施工する場合には、上述の積層材の中で建材として使用されるパネル、シート、ボードなどと積層した構造体として使用してもよく、直接施工する場合には、例えば既に形成されたコンクリート、モルタル等の面に断熱体を固定し、次いで蓄熱材組成物を塗付してもよい。
【0084】
本発明の断熱体を積層した蓄熱積層体2の構成は、積層材面と断熱体側が接触するように積層してもよいし、積層材面と蓄熱体側が接触するように積層してもよい。本発明では、空間外側に断熱体、空間内側に蓄熱体、が存在するように積層することが好ましい。このように積層することにより、優れた蓄熱性・断熱性が得られ、空間内の温度変化を緩和することができ、好ましい。
【0085】
積層方法としては、公知の接着材や接着テープ等で貼着する方法や、釘打ち等により固定化する方法等が挙げられる。また、使用用途に合わせて、カッター等で切断し、大きさを合わせ、簡単に積層することができる。
【0086】
本発明は、釘打ちによる固定化や、カッター等で切断したとしても、蓄熱材が漏れ出すことがない。そのため優れた蓄熱性・断熱性を有し、外気温度の変化に対し空間温度の変動が少なく快適な環境を維持でき、効率良く省エネルギー化を図ることができる。
【0087】
また、積層材自体が、断熱性能を有する断熱体である場合は、積層材に蓄熱体のみを公知の接着材や接着テープ等で貼着する方法や、釘打ち等により固定化する方法等により、積層しても、本発明の効果を得ることができる。
【0088】
本発明では、さらに、蓄熱体面側に、熱伝導率が10.0W/(m・K)以上(好ましくは20.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは100W/(m・K)以上)の熱伝導体を積層することが好ましい。熱伝導体を積層することにより、熱の移動速度が速く、蓄熱体の熱効率が向上するため好ましい。10.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄、真鉄、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属材料からなる銅板等、あるいはこれらの金属材料を含む塗膜またはシート等が挙げられる。本発明では、特に、アルミニウム板を好適に用いることができる。
【0089】
熱伝導率体の厚さとしては、特に限定されないが、通常5〜1000μm程度であることが好ましい。本発明における熱伝導率は、熱伝導率計(京都電子工業株式会社製、Kemtherm.QTM−D3(商品名))を用いて測定した値である。
【0090】
また、本発明の断熱体を積層した蓄熱積層体においては、空間内表面側に、さらに表面材を設けることもできる。
【0091】
表面材としては、けい酸カルシウムボード、石膏ボード等の無機系ボード、松、ラワン、ブナ、ヒノキ、合板等の木質材料、塗り材料、シート材料、壁紙等を用いることができ、これらのうち1種または2種以上を積層して用いることができる。
【0092】
塗り材料としては、通常建築物の塗装に使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、JIS K 5663「合成樹脂エマルションペイント」等に規定されるものが好適に使用できる。塗り材料の乾燥膜厚としては、特に限定されないが、200μm以下であることが好ましい。
【0093】
(蓄熱積層体3)
本発明の蓄熱積層体3の実施態様は、シート状の蓄熱体に発熱体、好ましくは面状発熱体とが積層された構造体である。該蓄熱積層体は特に床暖房構造体に適したものである。
【0094】
面状発熱体は、公知の面状発熱体を特に限定なく使用することができる。面状発熱体としては、例えば、ニクロム線を蛇行させて絶縁体表面に配置したもの、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体等が挙げられる。本発明では、電気抵抗発熱体と電極を積層したもの、PTC面状発熱体を好適に用いることができる。
【0095】
電気抵抗発熱体は、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下であることが好ましく、1×10Ω・cm以下であることがより好ましい。係る電気抵抗発熱体としては、樹脂成分と導電性粉末から構成されるものが好ましい。電気抵抗発熱体の電気抵抗値が1×10Ω・cmより大きい場合は、消費電力量が大きくなるため好ましくない。
【0096】
電気抵抗発熱体を構成する樹脂成分としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルシリコン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、プチラール樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム等、あるいはこれらを複合した樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、柔軟性を有する樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、合成ゴム等が好ましく用いられる。
【0097】
電気抵抗発熱体を構成する導電性粉末としては、グラファイト粉末、鱗片状黒鉛、薄片状黒鉛、カーボンナノチューブ等の炭素粉末、グラファイト化された繊維、グラファイトを担持させた繊維等の炭素繊維、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、白金、パラジウム、鉄等の金属微粒子、これらの金属微粒子等の導電性成分を繊維表面に担持させた導電性繊維、また金属微粒子をマイカ、雲母、タルク、酸化チタン等の粉末の表面に担持させた導電性粉末、また、フッ素ドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、導電性酸化亜鉛等の導電性酸化物等を使用することができる。
【0098】
電気抵抗発熱体は、上記導電性粉末を上記樹脂中に均一に分散するように混合し、公知の方法で、フィルム状、シート状に成形することにより、製造することができる。導電性粉末の混合量は、特に限定されないが、電気抵抗発熱体の電気抵抗値を1×10Ω・cm以下に調整できるように混合すればよく、樹脂成分の固形分100重量部に対して、10重量部以上300重量部以下であることが好ましく、30重量部以上100重量部以下であることがより好ましい。
【0099】
また、電気抵抗発熱体には、電気抵抗値が1×10Ω・cm以下にできる範囲であれば、樹脂成分以外に、必要に応じて、消泡剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、変性剤、紫外線吸収剤、硬化剤、硬化触媒、増膜助剤、溶媒等の添加剤を加えることもできる。
【0100】
電気抵抗発熱体の厚さは、3mm以下であることが好ましい。3mmより厚くなると、柔軟性が低下し、また、電気抵抗発熱体に温度ムラが生じやすくなるため、均一な温度に成り難くなる場合がある。
【0101】
電気抵抗発熱体の電極としては、電気抵抗値が電気抵抗発熱体よりも低いものであれば特に限定されないが、好ましくは、金属微粒子からなる電極および/またはそれら金属微粒子を混合したペーストを用いることができる。金属微粒子としては、特に限定されないが、銀、銅、金、白金等を用いることができる。電極は、公知の方法で、電気抵抗発熱体に積層することができる。例えば、スプレー、ローラー、刷毛塗り、デイツプコーティング、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷法、ドクタープレード法等で積層することができる。
【0102】
PTC面状発熱体は、PTC(Positive Temperature Coefficient;正の温度係数)特性を利用したもので、例えばポリエステルフィルムやPETフィルム等の樹脂フィルムに、PTC特性を示す特殊発熱インクを印刷することにより形成することができる。特殊発熱インクの材料としては、イットリウム、アンチモン、ランタンなどの希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックが用いられる。
【0103】
このようなPTC面状発熱体は、PTC特性によって、通電すると素早く昇温し、所定温度に達し、自ら温度を制御、維持することができるため、センサー・コントローラー等を使用しなくてもよい。
【0104】
また、このPTC面状発熱体は、前記特殊発熱インクによる印刷方式であるため、薄型に形成でき、従って軽量化及び薄型化を図ることができる。更に、このPTC面状発熱体は、電源を入れてから所定温度になるまでは抵抗値が低く、昇温に要する消費電力を抑えることができ、さらに所定温度に達すると自己制御機能により消費電力を抑えることができるため、効率的に暖房できる。
【0105】
本発明の蓄熱積層体3は、さらに床材を積層し、床暖房構造体として好適に用いられる。床材としては、例えば、塩化ビニル、ポリオレフイン等の樹脂タイル及び樹脂シート、一枚板、合板、パーティクルボード等の木質材料、繊維質材料、磁器タイル等のセラミックス材料、大理石、御影石、テラゾー等の天然石材料、モルタル等のコンクリート材料、ゴムやリノリウム等の天然樹脂タイル及び天然樹脂シート等を使用することができる。また畳、カーペット、じゅうたん、フローリング材等も床材として使用することができる。本発明では、特に、耐熱性を有するものが、より好ましい。床材の厚さは、通常1〜20mm、好ましくは2〜15mm程度であればよい。
【0106】
本発明の床暖房構造体は、新築やリフォーム等いずれの場合においても使用することができる。本発明床暖房構造体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法により、蓄熱体、面状発熱体、床材を積層すればよい。
【0107】
積層方法としては、例えば、予め、蓄熱体、発熱体、床材からなる床暖房パネルを作製しておき、構造基材(コンクリート、モルタル等)や既存のフローリングの上に積層する方法、基材や既存のフローリングの上に、蓄熱体、発熱体、床材を順に積層する方法等が挙げられる。
【0108】
具体的には、上述した製造方法により得られた蓄熱体の上に、発熱体、床材を順に公知の接着剤や接着テープ等で貼着し床暖房パネルを作製し、積層材や既存のフローリングの上に公知の接着剤や接着テープを介して積層する方法、また、既存の基材やフローリングの上に直接上述した蓄熱体を形成する反応硬化性組成物を塗付し蓄熱体を形成し、その上に発熱体、床材を順に積層する方法等が挙げられる。
【0109】
後者の場合、基材や既存のフローリングに蓄熱体を形成する反応硬化性組成物をスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付することにより蓄熱体を形成することができる。
【0110】
床暖房構造体の厚さは、特に限定されないが、本発明では特に5〜50mm、好ましくは10〜40mm程度であることが好ましい。5〜50mm程度と薄膜化、軽量化することにより、簡便に施工することができ、特にリフォームにおいては、施工後、居住空間が圧迫されることがなく快適な居住空間を維持することができる。
【0111】
また、本発明床暖房構造体は、厚さが5〜50mmと薄くても、優れた蓄熱性能を有するため、消費電力量を抑え、かつ、快適な居住環境を維持することができる。
【0112】
本発明では、さらに断熱体を積層することもできる。断熱体を積層することにより、外部の温度変化を緩和するとともに、発熱体で発熱した熱を外部に逃し難く、効率良く、床面を暖めることができる。
【0113】
断熱体を積層する箇所としては、特に限定されないが、基材や既存のフローリングと蓄熱体の問が好ましい。また、新たに断熱体を積層することもできるが、既に存在する断熱体を用いてもよい。断熱体としては、上記蓄熱積層体1において例示した断熱体を使用することができる。断熱体の厚さは、通常1mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0114】
さらに本発明では、熱伝導体を積層することもできる。熱伝導体を積層する箇所としては、特に限定されないが、蓄熱体と発熱体の間、発熱体と床材の問が好ましい。熱伝導体を積層することにより、発熱体から発熱した熱が、蓄熱体や床材に伝わりやすく、効率良く、床面を暖めることができる。
【0115】
熱伝導体としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄、真鈴、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属材料からなる銅板等、あるいはこれらの金属材料を含む塗膜またはシート等が挙げられる。本発明では、特に、アルミニウム板を好適に用いることができる
【0116】
(衣類)
本発明の蓄熱体を使用し、積層材として少なくとも繊維材料を使用して蓄熱性衣類を構成することができる。係る蓄熱性衣類は、南極やシベリア地方の氷点下を下回る極寒地域でも、火事場等の高温環境下においても、外気温度等の外部環境の影響を抑えることができ、人体の保護に優れている。
【0117】
蓄熱性衣類は、表地と裏地との間に、本発明の蓄熱体が設けられたものであり、外気温度等の外部環境の影響を抑えることができるものである。
【0118】
表地は、外部環境に晒される部分であり、その素材については、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、表地として用いられる素材としては、木綿、麻、羊毛、シルク等の天然繊維、ナイロン、テトロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ビニロン、レーヨン、アラミド、アゾール等の有機繊維、ガラス等の無機繊維、またはこれらを難燃処理・撥水処理した繊維等が挙げられる。また、積層材の一部が金属、樹脂シートやゴム等でもよい。繊維材料は1種または2種以上を複合し用いることができ、繊維材料と金属、樹脂シートやゴムと併用することも可能である。また、表地は耐熱性、防水性、通気性、耐久性等の機能を付与させたものとすることができる。
【0119】
裏地も、公知の裏地が特に限定なく使用可能である。例えば、裏地として用いられる素材としては、上記表地に示すように素材を用いることができる。また、耐熱性、防水性、通気性、吸水性等の機能を付与させたものでもよい。
【0120】
本発明の蓄熱性衣類は、針などを通したとしても、蓄熱体から蓄熱材が漏れ出すことがなく、ハサミ等で切断したとしても蓄熱体から蓄熱材が漏れ出すことがない。そのため、衣類の作製が簡便であり、機能性、デザイン性に優れた衣類を作製することもできる。デザイン等は特に限定されるものではない。
【0121】
蓄熱性衣類は表地と裏地との問に蓄熱体が積層されていれば、その構造は特に限定されるものではなく、蓄熱体と表地及び裏地を接着材やマジックテープ(登録商標、クラレ株式会社製)等で固定してもよいし、糸等で縫い合わせて固定してもよい。本発明の蓄熱体は、上述のように針などを通したとしても、またハサミ等で切断したとしても蓄熱体から蓄熱材が漏れ出すことがないため、衣類の作製が簡便であり、機能性、デザイン性に優れた衣類を作製することができる。衣類にファスナーやポケット等を設け、蓄熱体の収納・取り外しができるようにすることも可能であり、蓄熱体を構成する蓄熱材の相変化温度(融点)を使用用途に合わせて選定することができる。
【0122】
上記の蓄熱性衣類においては、さらに、表地と裏地の問には、蓄熱体以外に、断熱体、衝撃吸収材、吸湿材等が積層されていてもよい。断熱体としては、羽毛、羊毛等の天然素材、アクリル繊維等の繊維素材や、ポリスチレン発泡材、ポリウレタン発泡材、アクリル樹脂発泡材、フェノール樹脂発泡材、ポリエチレン樹脂発泡材、発泡ゴム、グラスウール、発泡セラミック等の市販の断熱体が挙げられる。また、これらを複合して使用することもできる。
【実施例】
【0123】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0124】
(実施例1)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、各原料を均一に混合、攪拌した後、250mm×170mm×3mmの型枠中に流し込み、40℃で60分硬化させ、脱型して蓄熱体1を得た。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【0128】
得られた蓄熱体1を用い、次の蓄熱材漏れ評価試験、蓄熱物性試験、加工性試験、施工性試験を行った。
【0129】
(蓄熱材漏れ評価試験)
得られた蓄熱体1を、10℃または50℃の雰囲気下で72時間放置した後、温度30℃、相対湿度50%RH雰囲気下に移し、蓄熱体1からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れが見られなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れが見られた
【0130】
(蓄熱物性試験)
DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、得られた蓄熱体1の相変化温度(℃)および潜熱量(kJ/kg)を測定した。測定条件としては、アルミニウムをリファレンスとし、昇温温度10℃/min、−20〜60℃の温度領域で測定した。結果は表3に示す。
【0131】
(加工性試験)
温度40℃、相対湿度50%RH雰囲気下において、得られた蓄熱体1をカッターナイフで切断し、切断面からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
【0132】
(施工性試験)
温度40℃、相対湿度50%RH雰囲気下において、得られた蓄熱体1に釘打ちし、釘打ちによる蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
【0133】
(保温性能評価試験)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、各原料を均一に混合、攪拌した後、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いた350mm×350mm×3mmの型枠中に流し込み、40℃で60分硬化させ、脱型して蓄熱体1−1を得た。
得られた蓄熱体1−1のポリエチレンテレフタレートフィルム面とガラス(375mm×375mm、熱伝導率0.8W/(m・K)、厚さ3mm)面を接着剤により積層し、試験体を得た。
図1に示すように、アクリル板(厚さ5mm)とポリスチレンフォーム(厚さ25mm)を接着剤により積層したものを試験体ボックスの側面及び底面とし、アクリル板が内側となるように設置した。さらに、作製した試験体を試験体ボックスの上面とし、蓄熱体1−1面が内側となるように設置し、内寸350mm×350mm×350mmの試験体ボックスを作製した。
試験体表面(蓄熱体1−1面)温度、試験体裏面(ガラス面)温度、空間温度(ボックス内温度)を測定するため、図1に示すように、蓄熱体1−1表面の中心、ガラス表面の中心、試験体ボックスの中心にそれぞれ熱電対を設置した。熱源として、赤外ランプを用い、試験体ボックス上面温度が50℃一定になるようにした。
保温性能評価として、25℃の雰囲気下で24時間静置した後、赤外ランプを照射し、各部位における20分後及び60分後の温度を測定した。結果は表3に示す。
【0134】
(蓄熱断熱性能評価試験)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、各原料を均一に混合、攪拌した後、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いた250mm×170mm×5mmの型枠中に流し込み、40℃で60分硬化させ、脱型して蓄熱体1−2を得た。
得られた蓄熱体1−2のポリエチレンテレフタレートフィルム面とポリウレタンフォーム(250mm×170mm、熱伝導率0.03W/(m・K)、厚さ5mm)面を接着剤により積層し、試験体を得た。
25mmのポリスチレンフォームで作製した外寸330mm×330mm×225mmの簡易ボックス内の4側面に、蓄熱体1−2面がボックス内側になるように試験体を設置し、さらに5mmのけい酸カルシムボードを表面材として設置した。下面には珪酸カルシムボードのみを設置し、上面はポリスチレンフォームのみとした。また、温度測定のため、ボックス内部空間の中心に熱電対を設置した。この試験体ボックスを恒温器内に設置し、恒温器内の温度を外気温度、試験体ボックス内の温度を室内温度と見立て、次の実験を行った。
40℃で設定した恒温器内にボックス上面を開放した状態で、3時間保持し、その後、ボックスの上面を塞ぎ、恒温器内温度を10℃に降温してからの、ボックス内部空間温度変化を経時的に測定した。結果を図3に示す。
【0135】
(床暖房性能評価)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、各原料を均一に混合、攪拌した後、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いた300mm×180mm×5mmの型枠中に流し込み、40℃で60分硬化させ、脱型して蓄熱体1−3を得た。
合板(300mm×180mm×5mm)の上に、蓄熱体1−3、面状発熱体、床材を順に重ね合わせ、試験板を作製した。床材は合板(300mm×180mm×5mm)、面状発熱体はシリコンゴム中にニクロム線を蛇行させたシリコンラバーヒーター(300mm×180mm×2mm)を使用した。
図2に示すように、内寸が300mm×180mm×200mmとなるように、側面及び上面に厚さ25mmのポリスチレンフォームを設置し、底面には試験板の床材側が内側となるように設置し、試験体ボックスを作製した。
さらに、床表面温度、空間温度(ボックス内温度)を測定するため、図2に示すように、床材表面の中心、床材表面の中心から高さ100mmの位置にそれぞれ熱電対を設置した。また、図2に示すように、床表面には表面温度を一定にするため、床表面に温度調節器(サーモスタット)を取り付けた。
この試験体ボックスを恒温器の中に設置し、次の実験を行った。恒温器中の温度を10℃に設定し、15時間放置した。その後恒温器中の温度を10℃に設定したまま、面状発熱体を180分加熱した。床表面は、温度調節器(サーモスタット)により、30℃一定になるように設定した。
床暖房性能評価として、面状発熱体の加熱開始60分後の各部位の温度を測定した。また、180分加熱した後、加熱を停止し、停止60分後の各部位の温度を測定した。結果を表3に示す。
【0136】
(体感試験)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、各原料を均一に混合、攪拌した後、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いた80mm×120mm×2mmの型枠中に流し込み、40℃で60分硬化させ、脱型して蓄熱体1−4を得た。
表地としてポリエステル生地、裏地としてナイロン生地を用いて、防寒用衣服を作製した。この衣服の表地と裏地の問に蓄熱体1−4が収納できるように、左右の胸部、腹部、背部、腰部にポケットをそれぞれ取り付け、蓄熱体1−4を収納した。
上記防寒用衣服を着用して25℃の雰囲気下で10分間歩行した後、5℃の環境下で、20分間椅子に座った。この時の左胸部の裏地表面温度変化(衣服内温度変化)を測定した。結果は図5に示す。
また、図5には、蓄熱体1−4を収納していない衣服の試験結果も同様に示す。
【0137】
(実施例2〜実施例5)
実施例1と同様の方法で、表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、試験体を得た。得られた試験体について、実施例1と同様の試験を行った。結果は表3、図3〜図4に示す。
【0138】
(比較例1〜比較例2)
実施例1と同様の方法で、表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、試験体を作成しようとしたが、硬化が十分進まなかった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の蓄熱体は、主として、シート状に形成・加工したものを、住宅等の建築物の内壁材、外壁材、天井材、床材に貼り合わせた内・外装材、車輌等の内装材として好適に用いられる。さらに、本発明の蓄熱体は、熱電変換システム、冷蔵・冷凍庫、クーラーボックス、保温シート、床暖房構造材等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例1、保温性能評価試験で使用した試験体ボックスの断面図である。
【図2】実施例1、床暖房性能評価試験で使用した試験体ボックスの断面図である。
【図3】実施例1〜実施例5の蓄熱断熱性能評価試験結果を示したグラフである。
【図4】実施例1〜実施例5の体感試験の温度変化を示したグラフである。
【符号の説明】
【0141】
1.蓄熱体1−1
2.ガラス板
3.アクリル板
4.ポリスチレンフォーム
5.熱電対
6.赤外ランプ
7.蓄熱体1−3
8.面状発熱体
9.床材
10.合板
11.ポリスチレンフォーム
12.熱電対
13.温度調節器(サーモスタット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリルモノマー、
(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー、
(C)油溶性重合開始剤、
(D)有機潜熱蓄熱剤、
を含有することを特徴とする蓄熱材組成物。
【請求項2】
(A)(メタ)アクリルモノマー、
(B)重量平均分子量が3000〜100000の(メタ)アクリルポリマー、
(C)油溶性重合開始剤、
(D)有機潜熱蓄熱剤、
(E)有機処理された層状の粘土鉱物、
を含有することを特徴とする蓄熱材組成物。
【請求項3】
(A)成分が、1分子中に少なくとも2個以上の重合性基を有する(メタ)アクリルモノマーを含有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
【請求項4】
(D)成分が長鎖脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
【請求項5】
(A)成分100重量部に対し、(B)成分5〜100重量部、(C)成分0.1〜50重量部、(D)有機潜熱蓄熱剤100〜500重量部含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
【請求項6】
(D)有機潜熱蓄熱剤100重量部に対し、(E)有機処理された層状粘土鉱物0.5重量部〜50重量部を含有することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の蓄熱材組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の蓄熱材組成物を重合して得られる蓄熱体。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄熱体をシート状とし、少なくとも片面を積層材にて積層したことを特徴とする蓄熱積層体。
【請求項9】
前記積層材が熱伝導体であることを特徴とする請求項8に記載の蓄熱積層体。
【請求項10】
前記積層材が難燃性ないし不燃性の材料であることを特徴とする請求項8に記載の蓄熱積層体。
【請求項11】
前記積層材が熱伝導率0.1W/(m・K)未満の断熱体であることを特徴とする請求項8に記載の蓄熱積層体。
【請求項12】
前記積層材が発熱体であることを特徴とする請求項8に記載の蓄熱積層体。
【請求項13】
さらに前記発熱体に断熱体が積層されていることを特徴とする請求項12に記載の蓄熱積層体。
【請求項14】
前記積層材が、少なくとも繊維材料であることを特徴とする請求項8に記載の蓄熱積層体。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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