説明

蓄電池

【課題】最大限の汎用性を有し、鉛電極を使用しない改良型蓄電池を提供する。
【解決手段】充電式電池は、錫からなる陽極、亜鉛からなる陰極、及びアルカリ性の電解質を備える。充電時、一部の錫は酸化第二錫に変換され、酸化亜鉛は還元されて亜鉛になる。電池が放電されるとき、酸化第二錫は還元されて酸化第一錫になり、亜鉛は酸化されて酸化亜鉛になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なタイプの蓄電池に関する。陽極は錫からなり、充電時には酸化第二錫に変換される。また、陰極は亜鉛からなる。電解質は、アルカリ金属水酸化物又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのアルカリ水溶液からなり、炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、及びリン酸塩を含む様々な緩衝剤が添加される。放電時には、酸化第二錫は還元されて酸化第一錫になり、亜鉛は酸化されて酸化亜鉛になる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2006年10月12日に出願され、本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願第11/546,793号の一部継続出願である。
親特許出願が2004年1月13日に出願された第10/756,015号である、係属中の特許出願第11/249,223号において、鉛からなる陽極、亜鉛からなる陰極、及びアルカリ性電解質を備える二次電池が開示された。この電池は、低コスト及び高エネルギー密度を含む相当の将来性を示している。しかし、電極が鉛であることから重量によるハンディキャップを背負っており、機動性が必要である場合には適用が制限される。第2に、鉛の毒性が障害である。
【特許文献1】米国特許出願第11/546,793号
【特許文献2】米国特許出願第10/756,015号
【特許文献3】米国特許出願第11/249,223号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最大限の汎用性を有し、鉛電極を使用しない改良型蓄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
蓄電池は、錫からなる陽極及び亜鉛からなる陰極で製造されている。充電中、一部の錫は酸化第二錫に変換される。放電時、酸化第二錫は還元されて酸化第一錫に、亜鉛は酸化されて酸化亜鉛になる。これらの反応は可逆的であり、それによって電池は、要求に応じて電気を供給し、余剰電気を蓄え又は蓄積するという二次電池の両方の機能を実行する。
セルの電解質はアルカリ性である。塩基の水溶液がアルカリ性をもたらす。これらの塩基には、アンモニア、並びにアルカリ金属、つまりリチウム、ナトリウム、カリウム、及びセシウムの水酸化物などがある。さらに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが使用されることもある。
特定の添加物が、電解質において有効な緩衝剤になることができる。これらの添加物には、炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、及びリン酸塩などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明による電池の理論上の電位は、単一の電極電位から決定することができる。これらの電位は、各電極での反応を表す下記式で与えられる。
陽極:
1.SnO+HO+2e→SnO+2OH 0.96V
陰極:
2.Zn+2OH→ZnO+HO+2e 1.216V
これらの式を組み合わせると、セルに対する全体反応が下記のように得られる:
3.SnO+Zn→SnO+ZnO 2.176V
【0006】
電池が放電しても、多少の濃度勾配は存在するが、電解質の平均組成に変化はない。セルの充電中には反応が逆になる。
亜鉛陰極は、いくつかのタイプの二次電池に採用されてきた。しかし、このような用途に対して錫が陽極として報告されたことはない。一懸念は、酸化第一錫及び酸化第二錫の高濃度アルカリ溶液への溶解性である。
緩衝剤は、電解質のアルカリ度を制御するのに使用されている。これら緩衝剤は、炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、及びリン酸塩からなる群から選択されることもある。それらは対応する酸又はそれらそれぞれの塩によって導入される。
【0007】
アルカリ性は、リチウム、ナトリウム、カリウム、及びセシウムを含むアルカリ金属の化合物によってもたらされる。リチウムは、その炭酸塩及びリン酸塩が実質的に水に溶けないため、ある限度を有する。水酸化アンモニウムは溶液中において塩基性であるが、その揮発性がその使用を制限している。最後に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは強アルカリ性として知られている。
【0008】
錫−亜鉛セルの構成に制限はない。しかし、好ましい設計は、複数のセルが単一のパッケージ内に統合されているバイポーラ型電池である。図1がそのような設計を図示している。バイポーラ型電極1は、錫(斜交平行線模様)及び亜鉛(縞模様)で構成されている。これらの電極は、電極及びケーシング3によって形成されている個々の区画内に収容されているアルカリ性電解質2に浸漬されている。電気導線が端部電極に接続している。短絡の危険を最小にするために、電極間にスペーサ(図示せず)が介装されることもある。
バイポーラ型セルは、電気抵抗を最小にしながら電極表面を最大にするという利点を有する。出力電圧が増加するのもプラスになる。本発明の電池に対する用途は、ほぼ無制限である。
【実施例1】
【0009】
実験セルは、直径約44.5mm(1.75インチ)、高さ約88.9mm(3.5インチ)のガラス瓶を備えていた。陽極は、幅約25.4mm(1インチ)、厚さ約9.4mm(0.37インチ)の、金属基準で99.8%錫の錫インゴットからなっていた。陰極は、ルクランシェタイプのサイズがDであるドライセルから取り外された幅約38.1mm(1.5インチ)の亜鉛板から作られていた。スペーサは、ポリプロピレン板から切り取られ電極間に介装された。電解質は家庭用銘柄のアンモニア溶液であった。セルを4.5Vで23分間充電した後に、そのセルに対して開回路電位2.05Vが観察された。放電時、セルは10mAの電流を生成した。運転の後、両方の電極は光っており曇りはなかった。電解質は無色透明であった。
【実施例2】
【0010】
新しい電解質が使われたことを除き、実施例1におけるものと同じセルが使用された。電解質を用意するために、87.9gの重炭酸カリウムがオーブンで260℃(500°F)に加熱されて炭酸カリウムに変換され、水150mlに溶解された。セルを3Vで7分間充電した後に、開回路電圧2.1Vが得られた。セルは80mAの電流を生成し、電球を点灯させた。運転後、錫電極は銀色からつややかな殆ど黒色の濃褐色に変化した。亜鉛電極は滑らかな灰色の表面を有していた。電解質は無色透明であった。
【実施例3】
【0011】
本実験では、ホウ酸ナトリウム溶液の電解質が使用された。電解質を用意するために、35.0gのホウ酸及び21.9gの水酸化ナトリウムが125mlの水に加えられた。実施例1と同じ電極及び容器が使用された。セルを3.5Vで8分間充電した後に、2.15Vの開回路電圧が観測された。放電時70mAの電流が得られ、電球を点滅させた。運転完了後、錫電極は銀色からつややかな褐色に変わっていた。亜鉛電極は灰色で完全な状態に留まっていた。電解質は無色透明であった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明により構成された電池を示す単一の図である。
【符号の説明】
【0013】
1 バイポーラ型電極
2 アルカリ性電解質
3 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)錫からなる陽極と、
(b)亜鉛からなる陰極と、
(c)アルカリ性電解質と、
を備えることを特徴とする蓄電池。
【請求項2】
前記アルカリ性電解質がアルカリ金属の水酸化物の水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。
【請求項3】
前記アルカリ性電解質がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。
【請求項4】
前記アルカリ性電解質が炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、及びリン酸塩の群から選択された緩衝剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−43710(P2009−43710A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147372(P2008−147372)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(505014753)
【氏名又は名称原語表記】John E. Stauffer
【住所又は居所原語表記】6 Pecksland Road,Greenwich,CT 06831,U.S.A.
【Fターム(参考)】