説明

蓄電装置

【課題】各キャパシタセルとそれぞれ対応するバイパス回路との間において、配線の削減や作業の軽減が図れ、蓄電装置の組立(製造)コストおよび部品コストを低減できるようにする。
【解決手段】蓄電部12のキャパシタセル13は整列状態に配置され、これらのキャパシタセル13を直列または直並列に接続する手段として、絶縁性のある基板14上に各キャパシタセル14の整列位置に対応して複数の配線用ブリッジ20を配置する一方、基板14上に各バイパス回路との接続端子を集積するコネクタ21を搭載すると共に、コネクタ21の各接続端子とそれぞれ対応する配線用ブリッジ20との間をつなぐプリント配線22を基板14上に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電源などに用いられる蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車の駆動用電源などに用いられる蓄電装置として、急速充電が可能で充放電サイクル寿命も長い、電気二重層キャパシタの適用技術が注目される。蓄電装置は、複数(所要数)の電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタセルと称する)を直列または直並列に接続して蓄電部が構成され、キャパシタセルの耐電圧を超える過充電を防止するため、直列のキャパシタセル毎にキャパシタセルと並列に接続される常開のバイパス回路と、キャパシタセルの電圧が設定値以上のキャパシタセルのバイパス回路を作動(閉成)するように制御する手段と、が備えられる(特許文献1,特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−103773
【特許文献2】特開2002−151365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような蓄電装置においては、各キャパシタセルとそれぞれ対応するバイパス回路との間を接続する配線(ハーネス)が必要となるが、車両用の蓄電装置のように蓄電部を構成するキャパシタセルの数が多大の場合、配線の本数が膨大となり、製造(組立)コストおよび部品コストが嵩む、という問題点があった。
【0004】
この発明は、このような問題点を解消するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、複数のキャパシタセルを直列または直並列に接続して構成される蓄電部と、直列のキャパシタセル毎にキャパシタセルと並列に接続される常開のバイパス回路と、キャパシタセルの電圧が設定値以上のキャパシタセルのバイパス回路を閉成するように制御する手段と、を備える蓄電装置において、蓄電部のキャパシタセルは整列状態に配置され、これらのキャパシタセルを直列または直並列に接続する手段として、絶縁性のある基板上に各キャパシタセルの整列位置に対応して複数の配線用ブリッジを配置する一方、前記基板上に各バイパス回路との接続端子を集積するコネクタを搭載すると共に、コネクタの各接続端子とそれぞれ対応する配線用ブリッジとの間をつなぐプリント配線を前記基板上に備えることを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る蓄電装置において、前記基板の表面に配線用ブリッジが配置され、配線用ブリッジをキャパシタセルの整列方向から挟む両側にスリットが配置され、キャパシタセルの一側から突き出る1対の端子は、前記基板の裏面からスリットを挿通して配線用ブリッジに接合されることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に係る蓄電装置において 前記配線用ブリッジは締結手段によって基板上のそれぞれ対応するプリント配線の末端部と接続され、前記キャパシタセルの集電極端子との接合は溶接によることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明においては、基板上の配線用ブリッジにより、各キャパシタセル間の直列または直並列の接続が適確に処理できるほか、基板上のプリント配線により、各キャパシタセルと基板上のコネクタとの間を接続する配線が必要なくなり、各キャパシタセルとそれぞれ対応するバイパス回路との接続を簡単かつ容易に処理できる。つまり、配線の削減や作業の軽減が図れ、蓄電装置の組立(製造)コストおよび部品コストを低減できる。
【0009】
第2の発明においては、スリットにより、キャパシタセルの集電極端子が基板の裏面側から表面側へ挿入可能となり、基板の表面側において、キャパシタセルの集電極端子と配線用ブリッジとの接合を簡単かつ容易に処理できる。
【0010】
第3の発明においては、配線用ブリッジは、プリント配線との接続が締結手段によるため、プリント配線と異なる導電体材料を用いることが可能となる。キャパシタセルの集電極端子は、電解液との相性を考慮してアルミニウム、配線用ブリッジは、キャパシタセルの集電極端子との溶接を考慮してアルミニウム、を用いるのに対し、プリント配線は、例えば、銅が用いられるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図に基づいて、この発明の実施形態を説明する。図1において、蓄電装置10は、ボックス11を備える。ボックス11は、下部の格納部と上部の蓋部(図示せず)とから構成される。
【0012】
ボックスの下部は、蓄電部12を構成するものであり、底壁と側壁と隔壁とから2列の格納空間が画成され、各空間の両端を閉止する端板(図示せず)が組み付けられる。2列の各空間に所定数の電気二重層キャパシタ13(以下、キャパシタセル)が整列状態に収容され、各空間毎にこれらの上面を閉止する基板14が取り付けられる。
【0013】
ボックスの上部は、2列分の各キャパシタセル13と並列に接続される常開のバイパス回路と、各キャパシタセル13の電圧が設定値以上のキャパシタセルのバイパス回路を閉成するように制御する手段と、が備えられる。これらは、絶縁性のある基板上に構成され、各バイパス回路とそれぞれ対応するキャパシタセルとの接続端子を集積するコネクタが基板上に搭載される。基板は、蓋部の内側に配置される。蓋部は、ボックスの下部に対し、基板14の上方に基板が隙間を介して重なる形に組み付けられる。
【0014】
キャパシタセル13については、正極体と負極体とこれらの間を絶縁するセパレータとから構成される積層体と、正極体および負極体のそれぞれに接続される1対の端子15と、これら端子の一部が外部へ突き出る収納状態に積層体を電解液と共に密封する容器16と、から構成される。
【0015】
正極体および負極体は、集電極と分極性電極(活性炭電極)とから組成される。集電極はアルミニウム箔から矩形状に作られ、その矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状のリードが一体に成形される。1対の端子15は、アルミニウム板から短尺状に形成され、容器16の内部において、極性の対応するリードが接合されるのである。
【0016】
基板14は、絶縁性のある材料により形成され、1列分の各キャパシタセル13の整列位置に対応して複数の配線用ブリッジ20が配置される。また、バイパス回路との接続端子を集積するコネクタ21(図2、参照)が搭載され、コネクタ21の各接続端子とそれぞれ対応する配線用ブリッジ20との間をつなぐプリント配線22が設定される。
【0017】
プリント配線22は、銅で形成される。配線用ブリッジ20は、短尺状のアルミニウム板からコ字形に折曲加工され、図2(a)に示す如く、基板14の表面にコ字形の両端部がキャパシタセル13の整列方向へ平行となる取付状態に締結される。プリント配線22は、図の(b)に示す如く、基板14の裏面に銅で形成される。
【0018】
配線用ブリッジ20の締結手段にボルトおよびナットが用いられ、配線用ブリッジ20のコ字形の中間部にボルトの挿入穴30が形成され、基板14を貫通してプリント配線22の配線用ブリッジ側の末端部の中心に開口するボルトの挿入穴31が形成される。配線用ブリッジ20は、基板14の表側から挿入穴30、31を貫通するボルトの先端側(ネジ部)に螺合するナットにより、プリント配線22の末端部と接続状態に締め付けられる。
【0019】
基板14において、各配線用ブリッジ20のコ字形の両端部に沿うスリット23が形成され、各キャパシタセル13の端子15は、基板14の裏側から対応するスリット23に挿入され、基板14の表側において、配線用ブリッジ20の両端部の一方と溶接によって接続状態に接合される。
【0020】
図3は、1列分のキャパシタセル13と基板14の配線用ブリッジ20と基板35(バイパス回路およびその制御手段を備える)との接続状態を説明する概要図であり、1列分のキャパシタセル13は、配線用ブリッジ20を介して直列に接続され、コネクタ21の各接続端子とそれぞれ対応する配線用ブリッジ20との間がプリント配線22で接続される。コネクタ21と基板35のコネクタ(図示せず)との間は、両端に双方のコネクタと対応するコネクタを持つケーブル36を介して接続される。つまり、各キャパシタセル13毎に基板36のバイパス回路が並列に接続される。
【0021】
図2,図3は、1列分のキャパシタセル13について、基板14の構成などを示すものであるが、もう1列分のキャパシタセル13についても、図2,図3と同一の構成により、各キャパシタセル13毎に基板36のバイパス回路が並列に接続される。
【0022】
図3において、28は車両の原動機として搭載されるモータの駆動回路および充電用の電源回路に接続される蓄電部の端子(+)であり、29は1列分のキャパシタセル13ともう1列分のキャパシタセル13との間を直列に接続する端子であり、図外の蓄電部の端子(−)は接地される。図3において、39は制御用の電源回路である。
【0023】
図2において、28aは蓄電部の端子(+)に対応するプリント配線の末端部であり、29aは1列分のキャパシタセル13の間を直列に接続する端子に対応するプリント配線の末端部であり、これらの中心に基板を貫通して開口するボルトの挿入穴38、39が形成され、ボルトおよびナットを用いて配線用ブリッジ(図示せず)が締め付けられ、1列分の前端に位置するキャパシタセルの端子(+),1列分の後端に位置するキャパシタセルの端子(−)が溶接によって接合される。もう1枚の基板についても、同一の構成により、プリント配線の末端部に接続される配線用ブリッジに対し、1列分の前端に位置するキャパシタセルの端子(+),1列分の後端に位置するキャパシタセルの端子(−)が溶接によって接合される。
【0024】
このような構成により、例えば、蓄電部への充電中において、キャパシタセル13の電圧が設定値以上のキャパシタセル13のバイパス回路を作動(閉成)するため、そのキャパシタセル13の電圧が設定値を超える過充電が防止されるのである。
【0025】
この実施形態においては、基板14の配線用ブリッジ20により、各キャパシタセル間の接続が適確に処理できるほか、基板14のプリント配線22により、配線用ブリッジ20とコネクタ21との間を接続する配線が必要なくなり、各キャパシタセル13とそれぞれ対応するバイパス回路との接続を簡単かつ容易に処理できる。つまり、配線の削減や作業の軽減が図れ、蓄電装置の組立(製造)コストおよび部品コストを低減できる。
【0026】
基板14は、スリット23により、キャパシタセル13の端子が基板14の裏面側から表面側へ挿入可能となり、基板14の表面側において、キャパシタセル13の端子と配線用ブリッジ20との接合(溶接)を簡単かつ容易に処理できる。
【0027】
配線用ブリッジ20は、プリント配線22との接続が締結手段によるため、プリント配線22と異なる導電体材料を用いることが可能となる。キャパシタセル13の端子15は、電解液との相性を考慮してアルミニウム、配線用ブリッジ20は、キャパシタセル13の端子15との溶接を考慮してアルミニウム、を用いるのに対し、プリント配線22は、銅が用いられるのである。
【0028】
図4,図5は、別の実施形態を説明するものであり、蓄電部のキャパシタセル13は、整列方向へ隣り合う2つのキャパシタセル13が1組ずつ並列に接続され、各組間が直列に接続される。図5において、隣り合う2つキャパシタセル13は、同極の端子15が重ね合わされ、基板14の裏側からスリット23に挿入される。基板14の表側において、配線用ブリッジ20のコ字形の両端部の一方に溶接によって接合される。配線用ブリッジ20は、ボルト25およびナット26により、基板14に締め付けられ、プリント配線22の端末部と接続される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態を説明する蓄電装置の一部斜視図である。
【図2】同じく基板の表面図(a)および裏面図(b)である。
【図3】同じく基板を中心とする配線状態の概要図である。
【図4】別の実施形態を説明する基板を中心とする配線状態の概要図である。
【図5】同じく基板の一部断面図である。
【符号の説明】
【0030】
12 蓄電部
13 キャパシタセル
14 基板
15 キャパシタセルの端子
20 配線用ブリッジ
21 コネクタ
22 プリント配線
23 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャパシタセルを直列または直並列に接続して構成される蓄電部と、直列のキャパシタセル毎にキャパシタセルと並列に接続される常開のバイパス回路と、キャパシタセルの電圧が設定値以上のキャパシタセルのバイパス回路を閉成するように制御する手段と、を備える蓄電装置において、蓄電部のキャパシタセルは整列状態に配置され、これらのキャパシタセルを直列または直並列に接続する手段として、絶縁性のある基板上に各キャパシタセルの整列位置に対応して複数の配線用ブリッジを配置する一方、前記基板上に各バイパス回路との接続端子を集積するコネクタを搭載すると共に、コネクタの各接続端子とそれぞれ対応する配線用ブリッジとの間をつなぐプリント配線を前記基板上に備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記基板の表面に配線用ブリッジが配置され、配線用ブリッジをキャパシタセルの整列方向から挟む両側にスリットが配置され、キャパシタセルの一側から突き出る1対の端子は、前記基板の裏面からスリットを挿通して配線用ブリッジに接合されることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記配線用ブリッジは締結手段によって基板上のそれぞれ対応するプリント配線の末端部と接続され、前記キャパシタセルの集電極端子との接合は溶接によることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−260067(P2009−260067A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107864(P2008−107864)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】