説明

蓋体付き容器

【課題】 内容物をこぼさずに携帯することができ、運動時等でも簡単な操作で容器から液体の取り出しすることができる蓋体付き容器を提案する。
【解決手段】 上面開口の容器体2周壁4に、平面視円形で天板20前部からノズル22を起立する蓋体10を取り付け、この蓋体10の外周部へ、有頂筒形のカバー30を、該カバー頂壁32に中心点○から一定距離を存して穿設した円弧状のスライド溝40内に上記ノズル22を挿通させて、回動自在に嵌合させ、かつそのスライド溝40周縁部の一部から立設する起立板42の上端部に、上記ノズル22の上端部を液密に閉塞する閉塞板44を付設し、上記カバー30の回動により、閉塞板44に対するノズル22の着脱が自在に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体付き容器、特に各種飲料の収納に適したカップ状の蓋体付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース等の清涼飲料の収納容器として、上面開口で広口の容器体周壁の上部外面に、蓋体頂壁から垂下した周壁を嵌合させた蓋体付き容器は広く使用されているが、例えば人と食事をしながら何度かに分けて飲料を飲む場合に、その度に蓋体を容器から取り外してテーブルの上に置くのは煩わしい。
【0003】
そこで、この種蓋体付き容器の蓋体のうち、該蓋体頂壁中央部を左右方向へ延びる折返し線とこの折り返し線両端から頂壁後縁を経て蓋周壁の後壁部下端へ延びる切離し線とで囲まれる部分で蓋部を形成し、上記切離し線を破断させ、上記折返し線を中心に前方へ折り返した蓋部の先端部分を、上記頂壁の前縁部分へ係止させることが可能に形成して、蓋部折返し後の空所を飲み口とするように設けたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
又上記のように容器に口を付ける飲み方と、ストローを使用した飲み方とを選択できるようにするため、上記蓋体付き容器の蓋体頂壁の左右両端部間に折返し線を横断させるとともにこの折返し線両端から蓋体周壁の下端へ切離し線を穿設し、かつ上記折返し線に対して前後線対称に位置させて、頂壁前部に穿設したストロー挿入用の透孔と、頂壁後部から起立する係止用突起とを設けたものも知られている(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭56−100370号
【特許文献2】実公昭60−18363号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年においては、スポーツドリンク入りの蓋体付き容器をバックなどに入れて携帯し、運動の途中や休憩時にそのドリンクを飲むことが行なわれている。
【0006】
しかるに上記両特許文献の容器は、蓋体の頂壁乃至周壁に穿設した切離し線を破断させることで、蓋体頂壁の一部を折り返して開口するという構造であるので、切離し線を破断した後に容器を倒したりすると、その破断箇所から内容液が洩れる可能性があるので、バックなどに入れて携帯するのには適しない。
【0007】
又、これら両文献では、容器体に口を付けて、或いはストローを使用して飲料を飲むように構成しているが、運動の途中に容器体に直接口を付けて飲料を飲もうとするとこの飲料が飲み口から飛び出すおそれがあり、又運動により体が疲労しているときにストローを容器体に装着するのは面倒である。
【0008】
本発明は、運動時等でも簡単な回動操作で容器から液体の取出しすることができ、かつ液洩れ防止を確実にして携帯性を高めるため、容器体周壁に、天板前部からノズルを起立する蓋体を取り付け、この蓋体の外周部へ、有頂筒形のカバーを、該カバー頂壁に穿設した円弧状の湾曲溝内に上記ノズルを挿通させて回動自在に嵌合させ、かつその湾曲溝周縁部の一部から立設する起立板の上端部に付設した閉塞板で、ノズルの上端部を、カバーの回動により開閉自在に閉塞した蓋体付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段は、上面開口の容器体2周壁4に、平面視円形で天板20前部からノズル22を起立する蓋体10を取り付け、この蓋体10の外周部へ、有頂筒形のカバー30を、該カバー頂壁32に中心軸Oから一定距離を存して穿設した円弧状の湾曲溝40内に上記ノズル22を挿通させて、回動自在に嵌合させ、かつその湾曲溝40周縁部の一部から立設する起立板42の上端部に、上記ノズル22の上端部を液密に閉塞する閉塞板44を付設し、上記カバー30の回動により、閉塞板44に対するノズル22の着脱が自在に構成している。
【0010】
「カバー」は、蓋体上面、特に吸口であるノズルの上面を清潔に保つためのものであり、蓋体上面の形状に対応させた形とすることが望ましい。もっともその形状は適宜変更することができる。又、カバーの筒壁部分(装着筒)外面には回動操作用の摘みを付設すると良い。
【0011】
「湾曲溝」は、上記カバーの回動により、ノズルが湾曲溝の内部を相対的に移動するように形成されている。湾曲溝の長さはノズルから内容物を飲むときに起立板が邪魔とならないような長さとすればよく、例えばカバー頂壁の中心周りに半周長或いは1/3周長の長さとすることができる。
【0012】
「起立板」は、ノズルに他物が当たって動き難いようにノズルの側面に沿って起立することが望ましい。
【0013】
「閉塞板」は、ノズル上部から水平に突出して、その下面をノズルの上端面を密閉するように設ける。閉塞板の下面の中央部は栓部として下方へ浅く膨出させ、該栓部をノズル孔上端内へ嵌合させるとともに、栓部を除く閉塞板下面部分をノズルの上端面に密接させると、液密性を向上することができるので好適である。
【0014】
第2の手段は、上記第1の手段を有し、かつ上記蓋体10の外周部とこの外周部へ嵌合させたカバー30の装着筒34内面とには、相互に係合する凹凸状の係合手段16,36を周設して、これら両係合手段の係合力で上記ノズル22の上端面へ閉塞板44を液密に圧接させている。
【0015】
「凹凸状の係合手段」は、カバーの上方抜出し防止用の機構であり、特に蓋体に対するカバーの回動により、カバーの嵌合が緩むことを防止している。
【0016】
第3の手段は、上記第1の手段又は第2の手段の何れかを有し、かつ上記閉塞板44の下面からは栓部46を短く突出させて、該栓部を上記ノズル22上端開口内へ圧嵌させ、かつ、上記カバーの回動により、上記栓部46がノズル22の筒壁上端を弾性的に乗り越えてノズル22から離脱し、又、ノズル内へ密嵌されるように設けている。
【0017】
「栓部」の下面は、上記カバーの回動によるノズル内からの嵌脱をスムーズにするため、閉塞板の下面周縁部分から緩やかに下方へ張り出させても良い。この栓部は外周部を除く閉塞板部分を逆ドーム状に陥没させると良く、これにより弾性変形が容易となるために、ノズルの上端部内への密閉性が向上する。しかしながらこの形状に限らず閉塞板の上面平坦で下面のみ下方へ張り出す肉厚部に形成することもできる。又、栓部は、上記ノズル22の上端部へスナップ嵌合するように、この開口内縁に対応した底面視形状としても良い。ここでスナップ嵌合とは、嵌合した時にカバーを持つ手にスナップ感を生じるような嵌合をいうものとする。
【0018】
又、栓部がノズルの筒壁上端を弾性的に乗り越えるようにするためには、起立板乃至閉塞板、或いは、ノズルの一方或いは双方を弾性素材で形成すれば良い。
【0019】
第4の手段は、上記第1の手段乃至第3の手段の何れかを有し、かつ上記起立板42は、上記湾曲溝40の一端部周縁部分から半円筒状に起立しており、該起立板42内へノズル22の一半部を収納させている。
【0020】
第5の手段は、上記第1の手段乃至第3の手段の何れかを有し、かつ上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部から立設しており、この起立板立設箇所から、湾曲溝40の両端部何れの側へもノズル22を摺動させることが可能に構成している。
【0021】
第6の手段は、上記第5の手段を有し、かつ上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部の対向縁部分から起立した、一対の対向板部42a,42bで形成し、これら両対向板部の上端部間に上記閉塞板44を架設している。
【発明の効果】
【0022】
第1の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○カバー30は、回動により閉塞板44に対するノズル22の着脱が自在としたから、ストローを併用するタイプの容器に比べて、簡単な操作で内容物を飲食することができる。
○閉塞板44はノズル22上端を液密に閉塞しており、既述の如く蓋体頂壁を折り返すように構成した容器に比べて液密性が高く、携帯に適している。
【0023】
第2の手段に係る発明によれば、上記蓋体10の外周部とこの外周部へ嵌合させたカバー30の装着筒34内面とには、相互に係合する凹凸状の係合手段16,36を周設して、これら両係合手段の係合力で上記ノズル22の上端面へ閉塞板44を液密に圧接させたから、使用しているうちに、蓋体10外周部に対するカバー30の嵌合が緩んで上記ノズル22から内容液が洩れることを防止できる。
【0024】
第3の手段に係る発明によれば、栓部46がノズル22の筒壁上端を弾性的に乗り越えてノズルに対して嵌脱されるように設けたから、ノズルからの液洩れ防止を一層確実にすることができる。
【0025】
第4の手段に係る発明によれば、上記湾曲溝40の一端部周縁部分から起立した半円筒状の起立板42内へ、ノズル22の一半部を収納させたから、このノズルに他物が衝突してノズル22が閉塞板44下方から離脱することを防止することができる。
【0026】
第5の手段に係る発明によれば、上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部から立設したから、この起立板立設箇所から、湾曲溝40の両端部何れの側へもノズル22を摺動させることができ、例えばランニングなどの運動中にカバーの開方向を目視で確認する必要がないので、容器を目視することで足元が疎かになるなどの不都合がなく、スポーツドリンク容器として使い勝手が良い。
【0027】
第6の手段に係る発明によれば、上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部の対向縁部分から起立した、一対の対向板部42a,42bで形成し、これら両対向板部の上端部間に上記閉塞板44を架設したから、この閉塞板によるノズル22上端開口の密閉をより確実とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1乃至図7は、本発明の第1実施形態を示している。
【0029】
本発明に係る容器は、容器体2と蓋体10とカバー30とで形成している。
【0030】
容器体2は、有底円筒状であって広口の周壁4を有している。
【0031】
蓋体10は、天板20の外縁部から周壁12を垂下しており、該蓋体周壁12を上記容器体周壁4の上部外面へ液密に螺合させている。図示例では、上記周壁12の上半部12a下端から鍔部14を介して大径の周壁下半部12bを垂下しており、この下半部分を上記容器体周壁4の上端部へ嵌合している。又、上記周壁の上半部12a外面には、第1係合手段16である突条を周設している。尚、本実施形態の蓋体10は上面から見て円形状に形成している。
【0032】
本実施形態の天板20は、全体としてドーム形状、より正確には中心軸Oに対して回転体形であるドーム形状に隆起させており、この頂壁前部から上面開口のノズル22を起立している。もっとも図示例と異なり、天板を平坦に形成しても良い。又、図示のノズル22は、円筒形に形成している。
【0033】
カバー30は、上記蓋体天板20に対応したドーム形の頂壁32周縁から円筒形の装着筒34を短く垂下し、この装着筒を上記蓋体10の周壁上半部分12a外面へ液密にかつ回動自在に嵌合させている。又この筒壁の内面には、第2係合手段36であるリブを周設し、このリブの下面に上記第1係合手段16が係合可能に形成している。これら両係合手段は相互に係合することでカバー30の上方抜出しを防止し、かつ上記ノズル22上端部を後述の閉塞板下面に圧接するように設けている。又、上記装着筒34の外面の適所には装着筒回動用の摘み38を付設している。
【0034】
上記カバー30の頂壁32には、図2に示す如くその中心軸Oから一定の距離を保って、頂壁前部から一側方を通って頂壁後部に亘って半円弧状の湾曲溝40を穿設している。この湾曲溝の巾は上記ノズル22の基端部外径よりもやや大きくしてこのノズル22の摺動時自在に形成する。この湾曲溝40の前端部には図3に示す如く上記ノズル22を挿通させている。又、この前端部の他側方寄り周縁部分から上記ノズル22の他側方面に沿って半円筒形の起立板42を立設しており、この起立板の上端部から一側方へ、上方から見て円形状の閉塞板44を突出している。図6に示す如くこの閉塞板44の下面中心部分は浅い逆ドーム状に陥没した栓部46に形成しており、該栓部は上記ノズル22のノズル孔内へ液密に嵌合されている。尚、上記起立板42及び閉塞板44は、上記ノズル22からの栓部46の抜出しが可能な程度の弾性を有するものとする。
【0035】
上記構成において、図1の状態で閉塞板44の栓部46は起立板42の弾性力によりノズル22の上端面に圧接されている。又、このノズル22の他側方半部は起立板42内に収納されており、一側方からノズル22に他物が当たっても起立板42の剛性により対抗することができるから、又、他側方からは起立板42に遮られて他物がノズル22に衝突することがないから、その衝突によりノズルが栓部46から抜け出すことを防止できる。従ってこの容器を例えばスポーツバッグなどに入れていても液洩れを生ずることはない。
【0036】
図1の状態から摘み38に指を掛けてカバー30を開方向へ廻すと、図6に示す起立板42に矢示の如く他側方への引っ張り力が加わり、これにより、上記栓部46がノズル22筒壁の他側方半部を弾性的に乗り越えて、ノズル22の筒孔から離脱する。そして更にカバー30を廻すと、ノズル22が湾曲溝40内を相対的に摺動して図5に示す如くこのスライド40の後端部に到るので、この状態でノズル22に口を付けて内容液を飲めばよい。飲み終わったら、カバーを閉方向へ回動すると、図1の状態となる。
【0037】
図8から図10は、本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態において第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付することで説明を省略する。
【0038】
この実施形態では、上記湾曲溝40を頂壁32の前端部側から左右方向後側へそれぞれ1/3周長づつ伸長した優孤形状としたものである。この湾曲溝40前部にノズル22を挿通させている。又その湾曲溝前部分の前後両対向縁部分から、起立板として、前後一対の対向板部42a,42bを立設して、これら両対向板部の上端部間に、下面に栓部を有する閉塞板44を架設している。もっともこの構成は適宜変更することができ、例えば上記両対向板部の一方を省略して他方板部を起立板としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る容器の斜視図である。
【図2】図1容器の平面図である。
【図3】図2のIII−III方向の縦断面図である。
【図4】図2のIV−IV方向の縦断面図である。
【図5】図1容器の作用説明図である。
【図6】図2のVI−VI方向に見た要部縦断面である。
【図7】図6の要部の作用説明面である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
【図9】図8の容器の平面図である。
【図10】図8の容器の作用図である。
【符号の説明】
【0040】
2…容器体 4…周壁 10…蓋体 12…周壁 12a…同上半部 12b…同下半部
14…鍔部 16…第1係合手段 20…天板 22…ノズル 30…カバー 32…頂壁
34…装着筒 36…第2係合手段 38…摘み 40…湾曲溝 42…起立板
44…閉塞板 46…栓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の容器体2周壁4に、平面視円形で天板20前部からノズル22を起立する蓋体10を取り付け、この蓋体10の外周部へ、有頂筒形のカバー30を、該カバー頂壁32に中心軸Oから一定距離を存して穿設した円弧状の湾曲溝40内に上記ノズル22を挿通させて、回動自在に嵌合させ、かつその湾曲溝40周縁部の一部から立設する起立板42の上端部に、上記ノズル22の上端部を液密に閉塞する閉塞板44を付設し、上記カバー30の回動により、閉塞板44に対するノズル22の着脱が自在に構成したことを特徴とする、蓋体付き容器。
【請求項2】
上記蓋体10の外周部とこの外周部へ嵌合させたカバー30の装着筒34内面とには、相互に係合する凹凸状の係合手段16,36を周設して、これら両係合手段の係合力で上記ノズル22の上端面へ閉塞板44を液密に圧接させたことを特徴とする、請求項1記載の蓋体付き容器。
【請求項3】
上記閉塞板44の下面からは栓部46を短く突出させて、該栓部を上記ノズル22上端開口内へ圧嵌させ、かつ、上記カバーの回動により、上記栓部46がノズル22の筒壁上端を弾性的に乗り越えてノズル22から離脱し、又、ノズル内へ密嵌されるように設けたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蓋体付き容器。
【請求項4】
上記起立板42は、上記湾曲溝40の一端部周縁部分から半円筒状に起立しており、該起立板42内へノズル22の一半部を収納させたことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蓋体付き容器。
【請求項5】
上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部から立設しており、この起立板立設箇所から、湾曲溝40の両端部何れの側へもノズル22を摺動させることが可能に構成したことを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蓋体付き容器。
【請求項6】
上記起立板42は、上記湾曲溝40の長手方向中間部の対向縁部分から起立した、一対の対向板部42a,42bで形成し、これら両対向板部の上端部間に上記閉塞板44を架設したことを特徴とする、請求項5記載の蓋体付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−206163(P2006−206163A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24276(P2005−24276)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】