説明

蓋固定部材及び該蓋固定部材を用いる容器

【課題】
加熱による包装工程を必要とせず、かつ改ざんや偶発的な開封を有効に防止できる蓋固定部材、並びに該蓋固定部材を用いる容器を提供すること。
【解決手段】
蓋固定部材1は、容器本体2と該容器本体2の開口部を閉塞する蓋3とは別体に形成された可撓性部材である。容器本体2のフリンジ部21と蓋3のフリンジ部31が接し合った状態で、蓋3のフリンジ部31を押さえながら、蓋固定部材1の所定部位(スカート部位122)を撓み変形させながら容器本体2のフリンジ部21の内側領域211へ押し込むことにより、前記フリンジ部21,31同士を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改ざん防止に役立つ蓋固定技術に関する。より詳しくは、容器本体と蓋とは別体に形成された可撓性部材からなる蓋固定部材、並びに該蓋固定部材を用いる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体と蓋(例えば、かぶせ蓋、落とし蓋、キャップなど)から構成される容器に、食品や物品などの内容物を収容し、これを商品として店頭に陳列する場合がある。当該商品を購入した消費者は、蓋を容器本体から取り外して開封し、内容物を食したり、取り出して用いたりする。
【0003】
ところが、流通段階や店頭陳列時に、意図的に蓋が取り外されて内容物が改ざんされる場合や偶発的な衝撃等によって偶然に蓋が外れて内容物が露出してしまう場合がある。このため、容器の設計において、容器本体から蓋を容易に取り外しできないようにする工夫が施されている。特に、食品を収容する容器では、改ざん防止機能の開発が益々盛んになっている。
【0004】
例えば、容器と蓋の嵌合部をシュリンクフィルムで固定する方法、ヒートシールを用いて封をする方法などの技術が採用されている。いずれの方法も、包装工程において、加熱を必要とする。
【0005】
ここで、特許文献1には、改ざん防止に適したシュリンクシールが開示されている。特許文献2には、ヒートシール技術を利用して改ざん防止を図る冷菓用カップ容器が開示されている。
【特許文献1】特開2003−231539号公報。
【特許文献2】特開2003−221055号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シュリンクフィルムやヒートシールを用いて、蓋と容器本体を密着させて改ざん防止を図る従来技術においては、製品の包装工程において容器に熱を加える工程が必要となる。しかし、冷温条件下で流通しなければならない冷菓などの食品では、品質管理上本来的に、熱を加える包装工程は避けるべきである。
【0007】
また、シュリンクフィルムやヒートシールを採用せずに改ざん防止等を図るため、市販のソフトクリームアイス容器などでは、容器本体に対して蓋をねじ込むように装着する工夫がなされているが、依然として、改ざん事故や商品ストッカーでの偶発的開封の問題が起きている。
【0008】
そこで、本発明は、加熱による包装工程を必要とせず、かつ改ざんや偶発的開封を有効に防止できる蓋固定部材、並びに該蓋固定部材を用いる容器を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本発明は、容器本体と該容器本体の開口部を閉塞する蓋とは別体に形成された可撓性部材(例えば、合成樹脂)であって、容器本体と蓋のフリンジ部同士が接し合った状態で、蓋フリンジ部を押さえながら(蓋フリンジ部の浮き上がりを押さえながら)、前記可撓性部材の所定部位を容器本体フリンジ部の内側へ押し込むことにより、前記フリンジ部同士を固定する蓋固定部材を提供する。
【0010】
この蓋固定部材は、該部材の可撓性を利用して、所定部位を撓み変形させて容器本体フリンジ部の内側へ押し込み、容器本体と蓋のフリンジ部同士を、かしめる如きに密着させて固定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る蓋固定部材は、例えば、外側へ末広がる所定長のスカート状部位を備えるリング状部材として設計できる。このリング状部材を、前記容器本体と接し合っている蓋フリンジ部を覆うように定着させて、前記スカート状部位を撓み変形させながら容器本体のフリンジ部の内側へ押し込むようにする。また、このスカート状部位に、周方向に並ぶ凹部群を形成することによって、撓み変形がスムーズに行われ、フリンジ部の内側への押し込み工程を確実かつ容易化できる。
【0012】
本発明に係る蓋固定部材を用いる好適な場合は、容器本体に加熱包装工程が好ましくない冷菓などの食品を収容する場合である。
【0013】
次に、本発明は、(1)容器本体と、(2)該容器本体の開口部を閉塞する蓋と、(3)容器本体と蓋のフリンジ部同士が接し合った状態で、蓋フリンジ部を押さえながら、前記部材の所定部位を撓み変形させて容器本体フリンジ部の内側へ押し込むことにより、前記フリンジ部同士を固定する蓋固定部材と、以上(1)〜(3)の部材から構成される容器を提供する。
【0014】
本容器を構成するこれら(1)〜(3)の部材は、すべて共通の材料から形成してもよく、あるいはそうでなくてもよい。(2)の蓋固定部材については、可撓性を有する材質、例えば、合成樹脂で形成する。本容器を構成する三つの部材は、蓋固定部材を介して、容器本体と蓋を一体化する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱による包装工程を必要とせず、かつ改ざんや偶発的開封を有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る好適な実施形態について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明の一実施形態を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
まず、図1は、本発明に係る蓋固定部材の一実施形態を上方から視たときの平面図、図2は、同実施形態を側方(図1矢印S方向)から視たときの側面図、図3は、図2中のX部分の拡大側面図である。
【0018】
図1等に示された蓋固定部材は、外力により撓み変形可能な可撓性部材、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニール(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂から形成されており、用途に応じて、耐寒強度の向上のための配合上の工夫がなされている。
【0019】
この蓋固定部材1は、上方から視たときには、内側領域に円形孔11を備えた略リング状の形態を呈している。蓋固定部材1の円形孔11を取り囲む周縁部12は、特に図2を参照するとわかるように、段差状に形成された蓋押さえ部121と、外側方向に末広がって略スカート状を呈するスカート部122と、を備える。
【0020】
スカート部122には、内側方向へ窪んだ凹部1221,1221・・が並設されている。また、該スカート部122の一部からは、外側に突出するように形成された舌片状のつまみ部13が設けられている。なお、つまみ部13は、蓋固定部材1をつまみ上げて容器から取り外すときに用いる部位として機能する。
【0021】
ここで、スカート部122の部分拡大図である図3(図2中のX部拡大図)、図3のI−I方向矢視断面図である図4、並びに図3のII−II方向矢視断面図である図5に基づいて、スカート部122の形態構成を詳しく説明する。
【0022】
スカート部122は、湾曲する底面を有し、縦断面視、略杓子状の形態をなす凹部1221が、周方向(図1の矢印C参照)に、所定間隔を置いて、並設されている。この凹部1221,1221の間には、縦断面視、鈍角なL字形状をなす形態の平坦部1222が介在している。なお、凹部1221の形状は、撓み変形を容易化する形状であれば、特に限定されない。例えば、側面視したときに三角形をなすような凹部も有効と考えられる。
【0023】
上記形態構成を備える蓋固定部材1は、容器本体に嵌合、定着、係止等された蓋が、いたずらや偶然の衝撃等によって、容易に外れないようするための部材として機能する。この機能を図6〜図9に示された実施形態に基づいて、説明する。なお、図6、図7には、ソフトクリームアイス用の容器が代表例として表されている。
【0024】
図示されたソフトクリームアイス用の容器は、一般に、コーン菓子(図示せず。)が収容される略円錐状の容器本体2と、該容器本体2の上縁に、外側に折り返されるように形成されたフリンジ部21に介して嵌合する山高状の蓋3と、からなる。
【0025】
蓋3内には、コーン菓子に対して盛り上げ充填されたソフトクリームアイス(図示せず。)がその内壁面に接触しない状態で収容される。しかし、この種の変形容器は、流通や売り場において衝撃が加わると、偶発的に蓋3が容器本体2から外れてしまうことがあり、問題になることが多い。また、売り場では、故意に蓋3がはずされ、中身が改ざんされるという問題も起こる。
【0026】
蓋固定部材1は、これらの問題を未然に防止するために役立つ。具体的には、図6に示されているように、蓋3の天頂部32を、蓋固定部材1の円形孔11に差し込み、続いて、該蓋固定部材1を蓋3のフリンジ部31に向かって、落とし込む等して移動させる(図6の矢印Y参照)。
【0027】
蓋3のフリンジ部31は、容器本体2のフリンジ部21に係止されたり、ねじ込まれたりした状態で嵌合する。この係止又は嵌合状態にあるフリンジ部21,31に対して、フリンジ部31の浮き上がりを押さえ込むように、蓋固定部材1(の蓋押さえ部121)を定着し、続いて、外側からの力を受けて、スカート部122が撓み変形しながら、フリンジ部21の内側領域211へ押し込まれる。
【0028】
押し込まれたスカート部122は、そのままの形状を維持して、フリンジ部21、31を挟持したような状態を保持する。これにより、容器本体2に対して蓋3が確実に固定される。なお、蓋3を開封する際には、つまみ部13を引き上げて、強制的に蓋固定部材1を取り外すことによって行う。改ざん等により、不正に蓋固定部材1を取り外されたときには、蓋固定部材1にその痕跡が明らかに残るので、当該改ざん行為を事前に認識することができる。
【0029】
図8は、スカート部122が撓み変形しながら、フリンジ部21の内側領域211へ押し込まれるときの様子を、段階的に示した図である。
【0030】
まず、図8の(A)は、蓋固定部材1が蓋3のフリンジ部31に対して定着したときの状態を示している。<A-1>は、そのときの部分縦断面図であり、<A−2>は、蓋固定部材1を側方から視たときの部分図である。この状態では、スカート122は、撓み変形していないため、凹部1221も初期形状を維持している。
【0031】
まず、図8の(B)は、蓋固定部材1のスカート部122に対して、外側からの外力Pが加えられたことによって、容器本体2のフリンジ部21の内側領域211に向けて、スカート部122が押し込まれ始めたときの状態を示している。<B-1>は、そのときの断面図であり、<B−2>は、蓋固定部材1を側方から視たときの部分図である。
【0032】
この状態では、<A−2>と比較するとわかるように、凹部1221に対して矢印Z方向の力が加わるため、該凹部1221が更にへこむように(凹部1221の開口部が閉じるように)、たわみ変形する。このため、このときの凹部1221bを側方視ときの幅Wbは、当初の凹部1221aの幅Waと比べて小さくなる(Wb<Wa)。
【0033】
このように、杓子状にへこんだような形態をなす凹部1221は、外力Pの作用を受けたときのスカート部122のたわみ変形を、円滑化、容易化するという機能を発揮する。蓋固定部材1が、例えば、合成樹脂で形成された場合では、たわみ変形の際に、材質が白濁したり、折れたり、破断したりすることないので、スカート部122を容器本体2のフリンジ部21の内側領域211へ円滑に押し込むことができる。
【0034】
図8の(C)は、蓋固定部材1のスカート部122に対して、外側からの外力Pが加えられた後、続いて上方への外力Pが加えられた結果、容器本体2のフリンジ部21の内側領域211にスカート部122が押し込まれたときの状態を示している。<C-1>は、そのときの部分縦断面図であり、<C−2>は、蓋固定部材1を側方から視たときの部分図である。
【0035】
この段階では、図8の<C−2>に示されているように、スカート部122は、フリンジ部21の内側領域211に完全に押し込まれているため、これを側方から観察することができない状態となる。
【0036】
図9は、本発明に係る蓋固定部材1を適用できる他の容器形態を示す図である。
【0037】
図9に符号4で示された容器本体は、平底の容器であり、該容器本体4の上縁には、上面が平坦なフリンジ部41が形成されている。蓋5は、いわゆる落し蓋であって、フリンジ部51の下面が、前記フリンジ部41の上面に定着することによって、容器本体4の開口部42を閉塞する。
【0038】
蓋5の中央には、上方へ突出する尖塔部52が設けられており、また、該尖塔部52からフリンジ部51へ放射状に延びるリブ53が3本形成されている。尖塔部52は、落し蓋形式である蓋5を容器本体4から取り外すときに、指でつまんで引き上げるときに使用される。リブ53は、蓋5の補強のために形成されている。
【0039】
蓋固定部材1は、容器本体4に蓋5が定着した状態で、蓋5のフリンジ部51を押さえ込むように、上からかぶせられ、その後、スカート部122を容器本体4のフリンジ部41の内側領域へ押し込むことによって、蓋5を容器本体4に固定する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、容器内容物の改ざん防止、あるいは偶発的な容器開封事故を防止できる容器部材、あるいは容器として利用できる。シュリンクフィルムやヒートシールに替わる、蓋と容器本体を密着技術として利用できる。特に、加熱包装が好ましくない冷菓などを収容する容器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る蓋固定部材の一実施形態を上方から視たときの平面図である。
【図2】同実施形態を側方(図1矢印S方向)から視たときの側面図である。
【図3】図2中のX部分の拡大側面図である。
【図4】図3のI−I方向矢視断面図である。
【図5】図3のII−II方向矢視断面図である図5に基づいて、
【図6】蓋固定部材(1)が採用されたソフトクリームアイス容器の構成を説明するための図である。
【図7】蓋固定部材(1)によって封がされた状態のソフトクリームアイス容器を説明するための図である。
【図8】スカート部(122)が撓み変形しながら、容器本体(2)のフリンジ部(21)の内側領域(211)へ押し込まれるときの様子を、段階的に示した図である。
【図9】本発明に係る蓋固定部材(1)を適用できる他の容器形態例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 蓋固定部材
2,4 容器本体
3,5 蓋
11 円形孔
12 周縁部12
13 つまみ部
121 蓋押さえ部
122 スカート部
1221 凹部
C 周方向を示す矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と該容器本体の開口部を閉塞する蓋とは別体に形成された可撓性部材であって、容器本体と蓋のフリンジ部同士が接し合った状態で、蓋フリンジ部を押さえながら、前記可撓性部材の所定部位を撓み変形させながら容器本体フリンジ部の内側へ押し込むことにより、前記フリンジ部同士を固定する蓋固定部材。
【請求項2】
合成樹脂から形成されたことを特徴とする請求項1記載の蓋固定部材。
【請求項3】
外側へ末広がる所定長のスカート状部位を備えるリング状部材であり、
前記容器本体と接し合っている蓋フリンジ部を覆うように定着し、前記スカート状部位が撓み変形して容器本体のフリンジ部の内側へ押し込まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋固定部材。
【請求項4】
前記スカート状部位は、周方向に、所定間隔おいて並ぶ凹部群を備えることを特徴とする請求項3記載の蓋固定部材。
【請求項5】
前記容器本体は、加熱包装工程が好ましくない食品を収容することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の蓋固定部材。
【請求項6】
前記食品は、冷菓であることを特徴とする請求項5記載の蓋固定部材。
【請求項7】
容器本体と、該容器本体の開口部を閉塞する蓋と、容器本体と蓋のフリンジ部同士が接し合った状態で、蓋フリンジ部を押さえながら、前記部材の所定部位を撓み変形させて容器本体フリンジ部の内側へ押し込むことにより、前記フリンジ部同士を固定する蓋固定部材と、から構成されたことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−143225(P2006−143225A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331547(P2004−331547)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(596151906)東名化学工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】