説明

蓋装置

【課題】蓋部材の所定の開位置を維持し得る構成を簡単な機構で実現し得る蓋装置を提供する。
【解決手段】機器に設けられる蓋装置において、機器外装の一部を覆う閉位置と該機器外装の一部を露呈させる開位置との間で揺動する蓋部15aと蓋部から延出する腕部15bと腕部に穿設された孔部とを有する蓋部材15と、蓋部により覆われる被覆部外の近傍部位に形成され孔部に嵌合する庇状凸部からなる抜け止め部とを具備し、孔部と抜け止め部とは、蓋部材が開位置に配置されたときには孔部と抜け止め部とは締まり嵌め状態となって蓋部材の揺動を規制して蓋部材の開位置を保持し、蓋部材が開位置以外の位置にあるときには孔部と抜け止め部とは隙間嵌め状態となって蓋部材の揺動を許容する嵌合手段を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓋装置、詳しくは機器の外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材と、その蓋部材の開閉機構を構成する蓋装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカメラ等の機器は、機器の基本構成を形成する本体ユニットと、この本体ユニットの外面を覆う外装部材等によって形成されているものがある。そして、その本体ユニット内部に配設されている構成部材に対して外部からのアクセスを許容するために、外装部材の一部を開閉可能とするように形成した扉形式の蓋部材等からなる蓋装置を備えて構成されるものがある。
【0003】
このような形態の蓋装置において、上記蓋部材は、機器の本体ユニット内に形成される電池室や記録媒体収納室等の開口部,外部機器接続用コネクタの配設部等を外部に露呈する開位置(開状態)と、これらを外部から遮蔽する閉位置(閉状態)との間で変位し得るように、例えば支持軸部(軸部材が存在するとは限らない)を中心として、本体ユニットに対して蓋部材が回動若しくは揺動可能に構成した開閉構造を有している。
【0004】
したがって、この蓋装置は、例えば機器の通常使用時においては、蓋部材を閉位置に配置することによって、本体ユニット内部の電池室や記憶媒体収納室の開口部,外部機器接続用コネクタの配設部等を外部から遮蔽した状態とすることができる。その一方、電池や記録媒体を着脱したり、外部機器接続用コネクタに接続ケーブルのコネクタを装着して外部機器とのケーブル接続を行おうとする場合等には、蓋部材を開位置へと移動させることによって、電池室や記憶媒体収納室等の開口部,外部機器接続用コネクタの配設部等を外部に露呈させることができる。
【0005】
扉形式の蓋部材を開閉する構成としては、蝶番を用いることが普通であるが、カメラ等の小型機器における蓋装置においては、空間の確保,部品点数の削減,組立性の向上等の観点から、蝶番やバネ部材を廃し、蓋部材とこれを支持する本体ユニット側の形状を工夫して開閉機構を実現している。この場合において、蓋部材が閉位置にあるときには、その閉位置を維持するロック機構を有しているのが普通である。一方、この閉位置ロック機構が使用者により解除された後、蓋部材が開状態とされたときには、蝶番が無いことから蓋部材が開状態で所定の位置に固定されず不安定な状態になってしまう。
【0006】
したがって、蓋部材が開状態で所定の開位置で保持されていない場合には、蓋部材を開状態にしたときに行われる操作、例えば電池室,記録媒体収納室等への電池,記録媒体等の着脱操作や外部機器接続用コネクタへのコネクタ挿抜操作等において蓋部材自身が邪魔になり、これら操作に支障をきたす可能性があり、よって、それらの作業性が著しく低下してしまうという問題点がある。
【0007】
従来の蓋装置においては、蓋部材を開状態としたときに、蓋部材が所定の開位置にて維持されるようにするための機構を有するものが、例えば実公昭55−6357号公報等によって種々提案されている。
【0008】
上記実公昭55−6357号公報によって開示されている手段は、蓋付きケースやびん等において、ポリプロピレン等の樹脂部材をヒンジ部分に用い、その弾性を利用して蓋部材の開位置,閉位置を維持し得るように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭55−6357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、実公昭55−6357号公報によって開示されている手段は、ポリプロピレン等の樹脂部材の屈曲が開閉操作のたびに繰り返される構成となっていることから、長期にわたって使用された場合、耐久性に不安があるという問題点がある。例えば、カメラ等の電子機器や機械製品においては、比較的長期間(例えば5年〜10年程度)にわたって継続的に使用される可能性があることから、このような機器における蓋装置に対して上記公報等に開示される手段を採用するには問題がある。
【0011】
また、上記公報による手段は、蓋付きケースやびん等の日常品に適用することを前提としたものであって、外観デザインや操作性についての考慮がなされていない。しかしながら、カメラ等の機器においては、高級感を持たせるために外観デザインや操作性についての考慮が必要になるので、上記公報に開示の手段等の従来の手段を採用するには不適である。
【0012】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材を備えたカメラ等の機器に適用する蓋装置において、外観デザインや操作性を損ねることなく、蓋部材の所定の開位置を維持し得る構成を簡単な機構で実現することのできる蓋装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の蓋装置は、機器に設けられる蓋装置において、機器外装の一部を覆う閉位置と該機器外装の一部を露呈させる開位置との間で揺動する蓋部と上記蓋部から延出する腕部と該腕部に穿設された孔部とを有する蓋部材と、上記蓋部により覆われる被覆部外の近傍部位に形成され上記孔部に嵌合する庇状凸部からなる抜け止め部とを具備し、上記孔部と上記抜け止め部とは、上記蓋部材が開位置に配置されたときには上記孔部と上記抜け止め部とは締まり嵌め状態となって上記蓋部材の揺動を規制して該蓋部材の開位置を保持し、上記蓋部材が開位置以外の位置にあるときには上記孔部と上記抜け止め部とは隙間嵌め状態となって上記蓋部材の揺動を許容する嵌合手段を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材を備えたカメラ等の機器に適用する蓋装置において、外観デザインや操作性を損ねることなく、蓋部材の所定の開位置を維持し得る構成を簡単な機構で実現することのできる蓋装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の蓋装置を備えた機器(カメラ)の全体構成を示す外観斜視図であって、蓋部材が閉位置にある状態を示す図、
【図2】本発明の一実施形態の蓋装置を備えた機器(カメラ)の全体構成を示す外観斜視図であって、蓋部材が開位置にある状態を示す図、
【図3】図1の機器(カメラ)の主要構成部材のみを示す分解斜視図、
【図4】図3の[IV]部(抜け止め部)を拡大して示す要部拡大図、
【図5】本発明の一実施形態の蓋装置における蓋部材のみを取り出して拡大して示す拡大平面図、
【図6】図5の矢印[VI]方向から見た側面図、
【図7】図5の[VII]−[VII]線に沿う断面図、
【図8】図1の機器(カメラ)の横断面図であって、蓋部材が閉位置にある状態を示す図、
【図9】図8の[IX]部を拡大して示す要部拡大図、
【図10】図1の機器(カメラ)の横断面図であって、蓋部材が開位置にある状態を示す図、
【図11】図10の[XI]部を拡大して示す要部拡大図、
【図12】本実施形態の蓋装置の主に前面側を示す外観斜視図、
【図13】図12の[XIII]部を拡大して示す要部拡大斜視図、
【図14】本実施形態の蓋装置において蓋部材が閉状態の正面図、
【図15】図14の[XV]部を拡大して示す要部拡大正面図、
【図16】本実施形態の蓋装置において蓋部材が開状態の正面図、
【図17】図16の[XVII]部を拡大して示す要部拡大正面図、
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
本発明の一実施形態は、本発明を適用する機器として、例えば光学レンズにより形成される光学像を固体撮像素子を用いて光電変換し、これによって得られる画像信号を静止画像や動画像を表わすデジタルデータとして記録媒体に記録し、また記録媒体に記録されたデジタル画像データに基いて静止画像や動画像を表示装置に再生表示し得るように構成される撮影機器(以下、単にカメラという)を例示するものである。
【0017】
なお、本実施形態においては、カメラの使用時に被写体に対向する面(撮影レンズの配設されている面)をカメラの前面というものとする。カメラの使用時に使用者が対面する面(表示装置の表示面が配設されている面)をカメラの背面というものとする。また、操作部材のうちシャッターレリーズボタンが配設されている面を上面というものとする。そして、カメラの上面に対向する面を底面というものとする。さらに、カメラの通常の使用状態で両側に配置される面を左側面及び右側面というものとする。この場合における左右の判別は、被写体側からカメラの前面に向かって見たときの左側又は右側をそれぞれ左又は右として区別する。
【0018】
また、以下の説明に用いる各図面においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係は、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0019】
まず、本発明の一実施形態の蓋装置を備えた機器であるカメラの概略構成を、図1〜図3を用いて以下に説明する。
図1,図2は、本発明の一実施形態の蓋装置を備えた機器(カメラ)の全体構成を示す外観斜視図である。このうち、図1は、本実施形態の蓋装置における蓋部材が閉位置にある状態を示している。図2は、蓋装置における蓋部材が開位置にある状態を示している。図3は、本実施形態の蓋装置を備えた機器(カメラ)の主要構成部材のみを示す分解斜視図である。
【0020】
本実施形態の蓋装置を備えた機器であるカメラ1は、図に示すように、前カバー11,後カバー12,上カバー13,レンズ鏡筒14と、蓋部材15と、本体ユニット16(図1,図2では不図示。図3参照)等を基本的な構成部材として構成されている。
【0021】
前カバー11は、本体ユニット16の前面と左右側面の前面寄りの部位と底面の一部を覆うように配設される外装部材である。前カバー11は、例えば薄板状の金属部材を加工して形成される。前カバー11の前面の略中央部分には、略円形状の開口11xが形成されている(図3参照)。この開口11xには、レンズ鏡筒14が配設される。
【0022】
後カバー12は、本体ユニット16の背面と左右側面の背面寄りの部位を覆うように配設される外装部材である。後カバー12は、例えば樹脂モールド成形品等によって形成される。後カバー12の背面の大部分の領域にわたって開口12xが形成されている(図3参照)。この開口12xには、不図示の表示装置がその表示面を背面側に向けて配設される。また、後カバー12には、図示を省略しているが、各種の操作部材等が配設される。そのために、各操作部材等に対応した複数の開口12aが形成されている(図3参照))。
【0023】
上カバー13は、本体ユニット16の上面を覆うように配設される外装部材である。上カバー13は、上記前カバー11と同様に、例えば薄板状の金属部材を加工して形成される。上カバー13には、図に示す如く、複数の操作部材、例えば電源オンオフ操作部材(押しボタン)21,シャッターレリース操作部材(押しボタン)22,ズーム操作部材(レバー)23,動作モード選択操作部材(ダイヤル)24等やアクセサリ取付部25等が配設される。
【0024】
レンズ鏡筒14は、略円筒形状に形成される樹脂モールド成形品等によって形成される。レンズ鏡筒14は、上述したように前カバー11の開口11x,本体ユニット16の開口16xと一致する部位から前面側に向けて突出するように配設されている。レンズ鏡筒14の外周面上には、例えば焦点調節用のピントリング等の操作部材14bが光軸O(図1参照)周りに揺動自在に配設されている。また、レンズ鏡筒14の内部には、撮影光学系を構成する複数の光学レンズ14a(図1参照),該光学レンズを保持する複数の保持部材(不図示),該保持部材を光軸Oに沿う方向に駆動させる駆動機構等(不図示)の構成部材が配設されている。なお、レンズ鏡筒14自体の内部詳細構成は、本発明とは直接関連しない部分であるので、従来一般のカメラに適用される構成のものが用いられているものとして、その説明は省略する。なお、レンズ鏡筒14は、カメラ1の本体ユニット16に対して固定配置されるレンズ固定式の形態であってもよいし、本体ユニット16に対して着脱自在に構成されるレンズ交換式の形態であってもよい。
【0025】
本体ユニット16は、本カメラ1の基本構成部材の主要部を構成するものである。本体ユニット16は、上記後カバー12,レンズ鏡筒14等と同様に、例えば樹脂モールド成形品等によって形成される。本体ユニット16の内部には、各種の構成部材(不図示)、例えば本カメラ1の動作を制御する制御用回路や外部機器接続用コネクタ等を実装した回路基板等が配設されていると共に、電池室,記録媒体収納室等の空間が所定の部位に形成されている。
【0026】
蓋部材15は、本実施形態の蓋装置の主要構成部材であって、本実施形態に示す構成においては、本カメラ1の左側面に形成される外部機器接続用コネクタ配設部1z(図2,図3参照。詳細は後述する。なお図3の符号12z,16zも参照)を外部から遮蔽する閉位置(図1に示す状態)と、上記外部機器接続用コネクタ配設部1zを外部に露呈する開位置(図2に示す状態)との間で揺動変位自在に配設されている。
【0027】
この場合において、蓋部材15は、図1に示すY軸に沿う仮想軸線を揺動中心として、カメラ1の左側面に対しY軸周りに揺動自在となっている。
ここで、カメラ1における座標軸を図1に示すX軸,Y軸,Z軸によって表わすものとする。X軸,Y軸,Z軸は互いに直交するように設定した方向を示している。このうちX軸はカメラ1の水平方向に延びる軸とする。また、Y軸はカメラ1の垂直方向に平行な軸とする。そして、Z軸は光軸Oに平行な軸とする。
【0028】
そして、蓋部材15は、閉位置に配置されたとき(図1の状態となったとき)には、本カメラ1の左側面の上記外部機器接続用コネクタ配設部1zを覆う外装部材の一部として機能する。また、蓋部材15は、上記閉位置以外の開状態とされたときには、上記外部機器接続用コネクタ配設部1z内に設けられている外部機器接続用コネクタ(不図示)に対するアクセスを許容するように構成されている。
【0029】
なお、以下の説明において、蓋部材15の閉位置とは、図1に示す状態のみを指すものとする。この状態においては、蓋部材15は後述するロック機構によって該閉位置が保持されている状態にある。
一方、以下の説明において、蓋部材15の開位置とは、図2に示す状態のみを挿すものとする。この状態においては、蓋部材15は後述する保持機構により該開位置が保持されている状態にある。ここで、蓋部材15の開位置とは、該蓋部材15が充分に開いた状態を示し、例えば外部機器接続用コネクタ配設部1zを充分に露呈し得る状態であって、かつ蓋部材15が外部機器接続用コネクタへのアクセスを阻害しない状態とする規定の位置をいうものとする。
【0030】
つまり、蓋部材15は、上述したように、上記閉位置と上記開位置との間で揺動自在に構成され、上記閉位置と上記開位置の各位置にあるときには、揺動が規制された状態となる。したがって、蓋部材15が上記閉位置と上記開位置の各位置にあるとき以外の状態、即ち上記閉位置におけるロック状態が解除されている状態で、かつ上記開位置における保持状態が確保されていない状態にあって、揺動自在にある場合は、単に開状態というものとする。
【0031】
上述したように、本カメラ1の左側面には、外部機器接続用コネクタ配設部1z(図2,3参照)が形成されている。この外部機器接続用コネクタ配設部1zには、二つのコネクタ開口1y(図3参照)が設けられ、各コネクタ開口1yには、それぞれに各対応する外部機器接続用コネクタ、例えばHDMI規格,USB規格等の接続用コネクタ等が配置されている(不図示)。
【0032】
詳述すると、上記二つのコネクタ開口1yは、本体ユニット16の左側面の一部を切り欠いて形成される切欠部16yと、後カバー12の左側面の一部を切り欠いて形成される切欠部12yとによって形成される開口部である。
【0033】
つまり、本体ユニット16の前面側に前カバー11を組付けると共に、本体ユニット16の背面側に後カバー12を組み付けることで本カメラ1を組み立てた状態としたときに、本カメラ1の左側面には、本体ユニット16の切欠部16yと、後カバー12の切欠部12yとによって二つのコネクタ開口1yが形成される。また、前カバー11の左側面には、切欠部11yが形成されている。この切欠部11yは、前カバー11を本体ユニット16の前面に組付けたとき、前カバー11によって上記二つのコネクタ開口1yを覆ってしまうことのないように、前カバー11の左側面において該二つのコネクタ開口1yに対向する部位を切り欠いて形成されている。
【0034】
一方、後カバー12の左側面において、上記切欠部12yの周縁部には、後カバー12の表面に対して一段下がった凹状部12zが形成されている。同様に、本体ユニット16の左側面において、上記切欠部16yの周縁部には、本体ユニット16の表面に対して一段下がった凹状部16zが形成されている。
【0035】
この構成により、後カバー12と本体ユニット16とを組み合わせたときには、上述したように二つのコネクタ開口1yが形成されると共に、上記凹状部12zと上記凹状部16zとの床面は略連続した同一表面となるように所定の床面積を有する凹部が形成される。即ち、こうして上記凹状部12zと凹状部16zとによって形成される凹部が外部機器接続用コネクタ配設部1zであり、蓋部材15によって覆われる被覆部である。
【0036】
この外部機器接続用コネクタ配設部1zには、蓋部材15が配置される(図1の状態;蓋部材15が閉位置にある状態)。そのために、外部機器接続用コネクタ配設部1zのサイズ(床面積)は、蓋部材15における遮蔽部となる蓋部15aと略同じサイズ(面積)となるように設定されている(詳細は後述する)。また、外部機器接続用コネクタ配設部1zに蓋部材15が配置されて、該蓋部材15が閉位置とされた状態となったとき、蓋部材15の該表面とカメラ1の外装表面(11,12)とが略面一となるように、外部機器接続用コネクタ配設部1zの凹部深さ寸法と、蓋部材15の厚み寸法とが設定されている。
【0037】
他方、本体ユニット16の左側面には、上記凹状部16zの近傍に抜け止め部16wが形成されている。この抜け止め部16wは、本実施形態の蓋装置の一部を構成する構成部である(図3参照;詳細構成は図4によって後述する)。
【0038】
本カメラ1の概略構成は、以上述べた通りである。なお、上述していないその他の構成は、従来一般的なカメラの構成と略同様であるので、詳細説明は省略し、本発明に直接関連する部分について以下に詳述する。
【0039】
上記カメラ1に適用される本実施形態の蓋装置の詳細構成を、図4〜図7を用いて以下に説明する。
図4は、図3の[IV]部(抜け止め部)を拡大して示す要部拡大図である。図5は、本実施形態の蓋装置における蓋部材のみを取り出して拡大して示す拡大平面図である。図6は、図5の矢印[VI]方向から見た側面図である。図7は、図5の[VII]−[VII]線に沿う断面図である。
【0040】
本実施形態の蓋装置は、本カメラ1の左側面の一部、即ち外部機器接続用コネクタ配設部1zを開閉する蓋部材15と、この蓋部材15を揺動自在に支持する抜け止め部16w等とによって主に構成されている。
まず、抜け止め部16wの詳細構成を説明する。抜け止め部16wは、図4に示すように、上記本体ユニット16の左側面に一体に形成されており、上記凹状部16zのZ方向前寄り縁部から前方(Z軸方向)に向けて延出するように形成された庇状凸部である。
【0041】
抜け止め部16wは、上記凹状部16z寄りの基端部16aと、この基端部16aの先端側の先端部16bとによって形成されている。上記基端部16aの外側の面は、上記凹状部16zの床面と略同一平面となるように形成されている。また、上記先端部16bは、水平方向(X軸方向)に沿う面で切断した断面形状が斜面を有する略三角形状からなり、その先端鋭角となる部位がR形状に丸められた曲面形状に形成されている。そして、この先端部16bの斜面の外面は、上記基端部16aの上記外側の面よりさらに外側に向けて段差部を形成している(図4参照)。この先端部16bの斜面の外面は、本体ユニット16の前面に前カバー11が取り付けられたとき、前カバー11の内面に当接するようになっている。
【0042】
詳細は後述するが、抜け止め部16wには、蓋部材15の腕部15bの孔部15gが嵌合するようになっている。この状態で、本体ユニット16の前面に前カバー11が取り付けられる。これにより、蓋部材15は、抜け止め部16wによって揺動自在に支持されると共に、抜け止め部16wの先端部16bの外面が前カバー11の内面に当接しているので、孔部15gが抜け止め部16wに対して移動しても、該抜け止め部16wが孔部15gから離脱することがなく、両者の嵌合状態が常に維持されるようになっている。
【0043】
本体ユニット16の左側面において、上記抜け止め部16wが形成されている部位の周囲近傍には、凹状空間部16cが形成されている(図4参照)。この凹状空間部16cは、後述するように蓋部材15が揺動する際に、腕部15bが配置され、その移動を許容するための空間部となっている。
【0044】
また、抜け止め部16wの先端部16bの巾寸法W2(図4参照)は、基端部16aの巾寸法W1(図4参照)よりも小となるように形成されている(W2<W1)。つまり、先端部16bは、基端部16aよりも巾狭に形成されている。換言すれば、図4の矢印A方向から見た場合における抜け止め部16wの平面形状は、基端部16aから先端部16bに向けて凸形状となっている。
一方、抜け止め部16wの先端部16bの巾寸法W2(図4参照)は、蓋部材15の孔部15gの巾寸法W3(図5参照)よりも大となるように形成されている(W3<W2)。 このような形状とすることによって、抜け止め部16wと上記蓋部材15の孔部15gとを嵌合させたときに、該抜け止め部16wは蓋部材15の開位置を維持することができるようになっている。つまり、抜け止め部16wの形状が、開位置保持機構の一部を形成している(詳細は後述する)。
【0045】
次に、蓋部材15は、図5〜図7に示すように、本カメラ1を構成する他の主要部材(11,12,13,14,16)とは独立して形成され、本カメラ1の外装部材の一部として機能すると共に、上記外部機器接続用コネクタ配設部1zを開閉する機能を有する主要構成部材の一つである。
【0046】
ここで、図5に示すX軸,Y軸,Z軸は、蓋部材15がカメラ1に取り付けられ閉位置に配置された際のカメラ1の座標軸に一致するよう示している。
【0047】
蓋部材15は、遮蔽部となる蓋部15aと、ヒンジ部となる腕部15bとによって主に構成されている。蓋部15aは、図7に示すように断面がチャンネル形状に形成され、該蓋部材15の外面を主に覆うように形成されている。
また、腕部15bは、図7に示すように、さらに内側部位15kと、二つの突出部15bbと、二つの係止突部15fとを有して構成される。
【0048】
このうち、内側部位15kは、上記蓋部15aの内面を覆うように形成されている部位である。
また、二つの突出部15bbは、上記内側部位15kから図7のX2方向に延出した後、同図Z1方向に延出するように形成され、断面がL字形状を有している。該L字形状のZ1方向への延出部は、図5〜図7に示すように上記蓋部15aの外縁部位よりも外部に突出している。
二つの係止突部15fは、後述する閉位置ロック機構の一部を構成する部位である。この係止突部15fは、図7に示すように上記内側部位15kの外縁部であって、上記突出部15bbに対向する側の縁部に設けられ、上記蓋部15aの平面に直交する矢印X2方向に突出するように、かつ所定の巾寸法を有して、例えば略半円柱形状等に形成されている。なお、二つの係止突部15fは、Y方向に沿って所定の間隔を置いて、該蓋部材15のY方向における両端縁部近傍に形成されている。
【0049】
つまり、蓋部材15は、二色成形で形成された合成樹脂(例えば熱可塑性プラスチック)からなる射出成形部品であって、上記蓋部15aと上記腕部15bとは異なる材質により形成されている。蓋部15aの材質としては例えばポリカーボネート(PC;Polycarbonate)等が適用される。また、腕部15bの材質としては、例えばポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU;Thermoplastic PolyUrethane)等のゴム状弾性体が適用される。
【0050】
また、蓋部15aには、上記突出部15bbが配設される部位に対向する側の外縁部位に、図5に示すように蓋部15aの平面方向から矢印Z2方向の外部に向けて突出しかつ図6,図7に示すように蓋部15aの外表面から矢印Z2,X1方向の外側へと若干の角度を持って斜め方向に離間するように突出する指掛け部15cが形成されている。この指掛け部15cは、閉位置にある蓋部材15を開状態とする際に、使用者が指等を掛けるために設けられる部位である。
【0051】
腕部15bは、上述したように内側部位15kと、ここから延出する突出部15bbとによって構成される。このうち内側部位15kには係止突部15f(閉位置ロック機構の一部。詳細は後述する)が二つ形成されている。
一方、突出部15bbには、孔部15gと、X方向位置規制突部15dと、Y方向位置規制突部15eとが形成されている。
孔部15gは、図5に示すように、突出部15bbの中程の部位に穿設された孔であって、その形状は、矢印Z1方向(蓋部材15が揺動する方向に対し径方向)に向けた凸形状の孔として形成されている。
X方向位置規制突部15dは、図5に示すように、上記突出部15bbの先端寄りの外側隅部上面部に形成された突起であって、その突出方向は、図6,図7に示すように矢印X1方向に向けて突設されている。
Y方向位置規制突部15eは、図5に示すように、突出部15bbの先端寄りの両側面部位に形成された突起であって、矢印Y1,Y2方向に向けてそれぞれ突設されている。
【0052】
孔部15gは、上述したように図5に示す平面形状において蓋部15a寄りの基端部から先端部に向けて(即ち矢印Z1方向に向けて)凸形状となっている。
ここで、孔部15gの先端側の孔巾寸法W3(図5参照)は、基端側孔巾寸法W4(図5参照)よりも巾狭に形成されている(W3<W4)。
そして、孔部15gの先端側の巾寸法W3は、上記抜け止め部16wの基端部16aの巾寸法W1よりも若干小となるように巾狭に形成されている(W3<W1)。
また、凹状空間部16cの巾寸法W5は、腕部15bの突出部15bbの巾寸法W6と両サイドのY方向位置規制突部15eの突出寸法W7×2とを加えた寸法(W6+W7×2)よりも若干小とするか、若しくは略同寸法となるように設定されている(W5≦(W6+W7×2))。
【0053】
このような形状とすることによって、抜け止め部16wと上記蓋部材15の孔部15gとを嵌合させた状態で蓋部材15を開位置に配置したときには、該孔部15gは上述した抜け止め部16wと協働して締まり嵌め(しまりはめ)状態(W3<W1)になり、蓋部材15の揺動を規制して、その開位置を維持することができるようになっている。ここで、孔部15gの形状は、上記抜け止め部16wの形状と共に開位置保持機構の一部を形成している。
【0054】
さらに、Y方向位置規制突部15eは、蓋部材15を開位置に配置したとき、腕部15bの突出部15bbが凹状空間部16c内に挟み込まれることで、孔部15gと抜け止め部16wとの締まり嵌め状態(W8≧W5)を補佐する役目をしている。
【0055】
一方、抜け止め部16wと上記蓋部材15の孔部15gとを嵌合させた状態で蓋部材15が開位置以外の位置にあるときには、該孔部15gと抜け止め部16wとは隙間嵌め(すきまはめ)状態(W4>W1)となって、蓋部材15の揺動を許容し自由に変位させ得る状態にしている。
このように、本蓋装置においては、孔部15gと抜け止め部16wとによって構成される嵌合手段を有していることによって、蓋部材15の開位置での安定保持を行っている。
【0056】
また、X方向位置規制突部15dは、蓋部材15が閉位置に配置されたときには、先端が前カバー11の内面に当接することで、該蓋部材15のX方向への変位を規制している(後述する図9参照)。これにより、閉位置にある蓋部材15が不安定になるのを抑止する役目をしている。
【0057】
また、これから説明するように、本実施形態の蓋装置においては、蓋部材15を閉位置に配置したときに、該閉位置を維持するための構成、即ち閉位置ロック機構を有している。
【0058】
従来のカメラ等の機器においても、蓋部材を閉位置に配置したときに、その閉位置を維持するための構成を有しているものがある。
例えば、従来の蓋装置においては、エラストマー等の合成樹脂によって形成される蓋部材から突出した爪形状の係止部材が、機器本体側に形成された凹形状の被係止部に嵌合することにより、クリック感を有しつつ、蓋部材を閉位置に維持するような構成のロック機構がある。
【0059】
この種の構成を有する従来の蓋装置の閉位置ロック機構は、蓋部材側の係止部材と機器本体側の被係止部との嵌合によって構成されているので、上記係止部材と上記被係止部との位置関係がクリック感や係止力量に影響を及ぼすことになる。つまり、上記係止部材と上記被係止部との位置関係が高精度に維持されていなければ、クリック感や係止力量に個体差が生じてしまう可能性がある。
例えば、係止部材を有する蓋部材と、この蓋部材を支持する機器側の構成部材と、被係止部を設けた機器側の構成部材とが、それぞれ別体に形成されて、これらを組み合わせて機器本体を構成するような場合には、上記三つの構成部材のそれぞれの工作精度の偏差が積算されることになって、上記係止部材と上記被係止部との間の位置関係を高精度に維持することができない可能性が高くなる。
【0060】
そこで、従来においては、例えば、係止部材を有する蓋部材を支持する部位と、該係止部材を係止する被係止部を設ける部位とを、機器本体側における同一の構成部材上に設けることで、上記係止部材と上記被係止部との位置関係を高精度に維持する等の工夫がなされている。
しかしながら、このような従来の手段では、設計上の制約が多くなってしまうという問題点がある。
【0061】
このような点を考慮して、本実施形態の蓋装置における閉位置ロック機構においては、以下に示すような工夫を施すことにより、係止部材と被係止部との位置関係が部品工作精度等に起因してバラツキを生じても、これを吸収することができ、蓋部材を閉位置に配置したとき、その閉位置を常に確実に維持し得るように構成している。以下に、その構成を詳述する。
【0062】
図8,図10は、図1の機器(カメラ)の横断面図を示し、図8は、蓋部材が閉位置にある状態を、図10は、蓋部材が開位置にある状態をそれぞれ示している。なお、図9,は、図8の[IX]部を拡大して示す要部拡大図である。図11は、図10の[XI]部を拡大して示す要部拡大図である。
【0063】
上述したように、蓋部材15の腕部15bの内側部位15kには、閉位置ロック機構の係止部材として機能する二つの係止突部15fが形成されている。
この二つの係止突部15fは、蓋部材15が閉位置に配置されたときに、該蓋部材15の閉位置を維持するために設けられており、本蓋装置における閉位置ロック機構の一部を構成している。
【0064】
係止突部15fは、上述したように上記蓋部15aの平面に直交する矢印X2方向(図7参照)に突出するように形成されている。この係止突部15fの先端部位は、例えば略円柱形状に、若しくは略三角柱形状でかつ頂点部断面がR形状となるように形成されている。そして、係止突部15fの先端部位には、図9に示すようなクビレ(ボトルネック)形状が形成されている。さらに、該係止突部15fの先端部位において、Z2方向に突出する爪形状に形成されるクリック発生部15fcと、上記クビレ形状によって形成される導入部15frとが設けられている。
クリック発生部15fcは、蓋部材15が閉位置に配置される際に係止突部15fが後述する被係止孔12fに嵌合したときにクリック感を発生させる部位である。導入部15frは、係止突部15fが後述する被係止孔12fに嵌合するのをガイドするために設けられる部位である。
【0065】
このような係止突部15fに対して、蓋部材15が閉位置に配置されたとき(図8の状態)に、上記二つの係止突部15fが対向する位置であって、後カバー12側の所定の部位には、図9,図11に示すように、上記二つの係止突部15fのそれぞれが嵌合する二つの被係止部である被係止孔12fが形成されている。
【0066】
被係止孔12fは、幅広の開口を有し、蓋部材15の閉方向(図11のX2方向)に向けて鋭角となる錐状に形成されている。被係止孔12fの開口の周縁部は、R面取り処理及びC面取り処理が施されている。詳しくは、図11に示すように、当該開口の機器背面よりの部位にC面取り部12fcが形成され、機器前側寄りの部位にR面取り部12frが形成されている。このような形状とすることによって、蓋部材15が閉位置に配置される際の係止突部15fの被係止孔12fへの嵌合がスムースに行われるようになっている。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の蓋装置は、外装部材の一部を構成する蓋部材15と、本カメラ1の基本的な構成部材のうち後カバー12の一部である凹状部12z,被係止孔12f等の構成部と、本体ユニット16の一部である凹状部16z,抜け止め部16w等の構成部等によって構成されている。
このように構成された本実施形態の蓋装置において、蓋部材15は、図10に示す矢印R方向に揺動自在となっている。
【0068】
次に、本実施形態の蓋装置の作用を、図8〜図16を用いて以下に説明する。
【0069】
図12,図14,図16は、本実施形態の蓋装置を示す外観図であって、図12は主に前面側を示す外観斜視図、図14は蓋部材が閉状態の正面図、図16は蓋部材が開状態の正面図である。また、図13,図15,図17は、該蓋装置の一部を拡大して示す要部拡大図であって、図13は図12の[XIII]部を拡大して示す要部拡大斜視図、図15は図14の[XV]部を拡大して示す要部拡大正面図、図17は図16の[XVII]部を拡大して示す要部拡大正面図である。
【0070】
まず、本実施形態の蓋装置の蓋部材15が閉位置に配置されている状態(図1,図8,図9,図12〜図15)においては、
蓋部材15の腕部15bの孔部15gに本体ユニット16の抜け止め部16wが隙間嵌め状態で係合しており(図13参照)、
蓋部材15の蓋部15aが外部機器接続用コネクタ配設部1z(凹状部12z,16z)に収納されている(特に図12,図13参照)。
このとき、蓋部材15の係止突部15fは、被係止孔12fに嵌入した状態にある(図9参照)。
また、抜け止め部16wの先端部16bの斜面の外面が前カバー11の内面に当接している(不図示)。同時に、蓋部材15の腕部15bのX方向位置規制突部15dが前カバー11の内面に当接している(図9参照)。
これにより、蓋部材15は、安定した状態で外部機器接続用コネクタ配設部1zを外部から遮蔽している。
【0071】
この閉位置にある蓋部材15を開状態とするためには、本カメラ1の使用者は、蓋部材15の指掛け部15cに指等をかけて、該蓋部材15を開方向(図9の矢印R1方向)へと変位させる力量を加える。
【0072】
すると、まず蓋部材15の係止突部15fは、自身の弾性力に抗して変形して被係止孔12f内から抜去され、両者の嵌合状態が解除される。このとき、X方向位置規制突部15dは、前カバー11の内面に沿って図9の矢印R1方向に向けて凹状空間部16c内を移動する。この移動中においても、孔部15gと抜け止め部16wとは、常に隙間嵌め状態での係合が維持されている。
【0073】
やがて、腕部15bの先端部位が本体ユニット16の外面(図9に示す符号16d)に当接する。腕部15bの先端部位は、この本体ユニット16の外面に沿って、さらに移動を続ける。このとき、腕部15bの先端部位は、本体ユニット16の外面によって押圧されて、該蓋部材15を腕部15bの延出方向に沿う方向であって、図5の矢印Z2方向へと押し出す。このときにも、孔部15gと抜け止め部16wとの係合は、隙間嵌め状態が維持されている。
【0074】
そして、蓋部材15は、所定の開位置に配置されることになる。蓋部材15が開位置に配置された状態(図2,図10,図11,図16,図17)において、蓋部材15は、図11,図16に示すように、カメラ1の左側面において、蓋部15aの表面が矢印X1に略平行となるように配置される。
このとき、腕部15bの孔部15gの先端側の部位に対し、抜け止め部16wの基端部16aが嵌合される。上述したように、孔部15gの先端側の巾寸法W3(図5参照)は、抜け止め部16wの基端部16aの巾寸法W1よりも小となるように形成されている(W3<W1)。したがって、このとき孔部15gの先端部位と抜け止め部16wの先端部16bとが締まり嵌め状態となる(図17参照)。
【0075】
これに加えて、この状態においては、図17に示すように腕部15bの突出部15bbが凹状空間部16c内に嵌合している。上述したように、突出部15bbの両サイドにY方向位置規制突部15eが設けられている。つまり、蓋部材15を開位置に配置したとき、突出部15bbは、Y方向位置規制突部15eを介して凹状空間部16c内に嵌合し、挟み込まれる。
【0076】
したがって、この状態にあるとき、孔部15gと抜け止め部16wとが締まり嵌め状態で嵌合して、抜け止め部16wが孔部15gを矢印Y1,Y2方向に押し広げようとする力量が孔部15gに対して生じても、突出部15bbが凹状空間部16c内で嵌合規制されているので、孔部15gと抜け止め部16wとの締まり嵌め状態が補佐される。
これにより、蓋部材15は、図11,図16等に示す開位置を維持することができる。
【0077】
この状態から、使用者が蓋部材15を図11の矢印F1方向に押圧すると、蓋部材15は同図11の矢印R2方向に揺動して、最終的に図9の閉位置に配置される状態になる。
このように、蓋部材15を閉位置に配置する際の作用を、以下に説明する。
図9の閉位置の状態となる直前において、まず、蓋部材15の係止突部15fが後カバー12の被係止孔12fの開口部近傍に当接する。このとき、蓋部材15は、上述した機構によって孔部15gと抜け止め部16wとの隙間嵌め状態にある。そして、この状態で、蓋部材15は、カメラ1の左側面部から離脱しない状態にあって、かつカメラ1の左側面に対して孔部15gの長手方向であり、抜け止め部16wの延出方向に沿って移動可能となっている。
【0078】
この構成によって、本実施形態の蓋装置においては、蓋部材15の係止突部15fと後カバー12の被係止孔12fとの位置関係が、部品工作精度等に起因するバラツキがによるズレが生じていたとしても、蓋部材15自体が移動することにより、当該バラツキを吸収する。
そのために、係止突部15fの先端部位が被係止孔12fの開口部近傍に当接したとき、導入部15frがR面取り部12frによって被係止孔12f内に導かれる。この状態で、使用者は、指掛け部15cを外面側から図9に示す矢印F2方向に押圧する。すると、クリック発生部15fcは、弾性変形しながら被係止孔12f内に嵌入する。そして、クリック発生部15fcは、被係止孔12fを通過した後、クリック音を発生させると共に、自身の弾性力によって形状を復帰させる。こうして、係止突部15fが被係止孔12f内に嵌入することにより、蓋部材15の閉位置は維持される。
【0079】
以上説明したように上記一実施形態によれば、外装部材の一部を開閉可能とする蓋部材を備えたカメラ等の機器に適用する蓋装置において、蓋部材15にはヒンジ部となる腕部15bを設けると共に、本体ユニット16側には上記腕部15bを支持する抜け止め部16wを設けている。そして、蓋部材15を開位置に配置したときには、上記腕部15bの孔部15gと抜け止め部16wの先端部16bとが締まり嵌め状態となって、蓋部材15の揺動を規制し蓋部材15の開位置を保持するように構成している。また、蓋部材15が開位置以外の位置にあるときには、腕部15bの孔部15gと抜け止め部16wとが隙間嵌め状態となって蓋部材15の揺動を許容するように構成している。
【0080】
本実施形態の蓋部材においては、上述のように構成した嵌合手段(腕部15b,抜け止め部16w)を有していることによって、従来の蓋装置における操作性を損ねることなく、蓋部材15の開位置における安定性を保持することができる。
また、本実施形態における蓋部材15の腕部15bの一部である突出部15bbは、蓋部材15の開状態において、抜け止め部16wの基端部16aの側壁面16aaと、側壁面16aaと対向して凹状空間部16cを挟む側壁面16ccの1つとで挟まれる挟持手段として上述したように機能する。
【0081】
そして、蓋部材15を所定の開位置に安定状態で保持できるので、蓋部材15を開状態にしたときに行われる操作、即ち外部機器接続用コネクタへのコネクタ挿抜操作等に支障をきたすことなく、当該所望の操作を行なうことができる。よって、機器の操作性の向上に寄与することができる。
【0082】
また、この構成によれば、ヒンジ部である腕部15bとこれを支持する抜け止め部16wとが前カバー11によって遮蔽される部位に形成されているので、機器の外観デザインを損ねてしまうこともない。
【0083】
また、蓋部材15のヒンジ部となる腕部15bと本体ユニット16の抜け止め部16wとは、閉位置から開位置の間で変位する開状態にあるとき、隙間嵌め状態で支持されるように構成したので、蓋部材15が開閉操作によって揺動する際に、部材に対し屈曲等の無理な力量がかからないので、耐久性に優れた蓋装置を実現できる。
【0084】
なお、上述の一実施形態においては、本発明の蓋装置を適用した機器として、カメラを例に挙げて説明しているが、この例に限られることはなく、カメラ以外の他の様々な機器に適用できる。
また、上述の一実施形態においては、蓋装置を外部機器接続用コネクタ配設部に適用した場合の例を説明しているが、この例に限られることはない。本発明の蓋装置は、例えばカメラ等の機器における電池室,記録媒体収納室等に適用することも、全く同様に可能である。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、カメラに限らず、他の形態の電子機器、例えば携帯電話,録音機器,電子手帳,パーソナルコンピュータ,ゲーム機器,テレビ,時計,GPS(Global Positioning System)を利用したナビゲーション機器等、各種の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1……カメラ
1y……コネクタ開口
1z……外部機器接続用コネクタ配設部
11……前カバー
12……後カバー
12f……被係止孔
13……上カバー
14……レンズ鏡筒
15……蓋部材
15a……蓋部
15b……腕部
15bb……突出部
15c……指掛け部
15d……X方向位置規制突部
15e……Y方向位置規制突部
15f……係止突部
15g……孔部
15k……内側部位
16……本体ユニット
16w……抜け止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられる蓋装置において、
機器外装の一部を覆う閉位置と該機器外装の一部を露呈させる開位置との間で揺動する蓋部と、上記蓋部から延出する腕部と、上記腕部に穿設された孔部と、を有する蓋部材と、
上記蓋部により覆われる被覆部外の近傍部位に形成され、上記孔部に嵌合する庇状凸部からなる抜け止め部と、
を具備し、
上記孔部と上記抜け止め部とは、上記蓋部材が開位置に配置されたときには、上記孔部と上記抜け止め部とは締まり嵌め状態となって上記蓋部材の揺動を規制して該蓋部材の開位置を保持し、
上記蓋部材が開位置以外の位置にあるときには、上記孔部と上記抜け止め部とは隙間嵌め状態となって上記蓋部材の揺動を許容する嵌合手段を形成していることを特徴とする蓋装置。
【請求項2】
上記嵌合手段は、上記孔部の形状が上記蓋部材の揺動方向の径方向に突出する凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓋装置。
【請求項3】
上記蓋部材の上記腕部は、合成樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の蓋装置。
【請求項4】
上記蓋部材は、二色成形で形成された合成樹脂からなる射出成形部品からなり、上記蓋部と上記腕部とは異なる材質によって形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の蓋装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−141511(P2012−141511A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−798(P2011−798)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】