説明

蓚酸の製造方法

【課題】簡単容易化された工程や製造設備により、処理の安定性,確実性,イニシャルコスト,ランニングコスト等に優れつつ、蓚酸を、高い収率で大量生産可能であり、もって、蓚酸の大幅な低価格化が実現される、蓚酸の製造方法を提案する。
【解決手段】この製造方法では、水溶液中に溶存するフェノール等の芳香族化合物が、次のプロセスを辿ることにより、蓚酸が合成される。第1プロセスでは、水酸基の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水酸基の水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰すると共に、酸素原子を二重結合化させる。第2プロセスでは、炭素原子に付く水素原子の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水素原子を奪って参加し、自身は水に回帰する。第3プロセスでは、炭素原子の不対電子にOHラジカルが付加して、水酸基が生成される。第4プロセスでは、分極したカルボニル基が、発生期の水素に基づき還元される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓚酸の製造方法に関する。すなわち、フェノール等の芳香族化合物を酸化分解することに基づき、蓚酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
蓚酸(HOOC−COOH)は、もっとも簡単な構造の2価のカルボン酸であり、植物の葉や茎等に多く含まれている。そして工業的には、染色原料,染色助剤,漂白剤,艶出剤,分析試薬,還元剤等々として、広く使用されている。
【0003】
《従来技術》
さて、工業的な蓚酸の製造方法としては、化学合成法が主流である。そして、エチレングリコール酸化法,一酸化炭素カップリング法,一酸化炭素蟻酸ナトリウム法、等が代表的である。
エチレングリコール酸化法では、エチレングリコールを酸化することにより、蓚酸の2水和物が合成される。一酸化炭素カップリング法では、一酸化炭素とアルコールを使用し、相互作用による結合に基づき、蓚酸が合成される。一酸化炭素蟻酸ナトリウム法では、一酸化炭素と水酸化ナトリウムを反応させて蟻酸ナトリウムを生成し、カルシウム塩としたのち硫酸で分解することにより、蓚酸が合成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このようなエチレングリコール酸化法や一酸化炭素蟻酸ナトリウム法は、例えば、次の非特許文献1中に示されている。
【非特許文献1】社団法人 有機合成化学協会編「有機化合物辞典」の465頁(講談社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来技術については、次の課題が指摘されていた。
従来技術のエチレングリコール酸化法については、原料であるエチレングリコールを予め化学合成し、準備しておかなければならないという問題と共に、蓚酸の製造装置自体の事後処理が面倒であるという指摘があった。
すなわちエチレングリコールは、化学的に安定した物質である反面、製造装置内を事後に洗浄,廃水処理する際、その付着残留分が、通常の微生物処理では酸化分解困難である。もって、製造装置を事後に洗浄,廃水処理する際、化学的酸化分解処理を要していた。
又、従来技術の一酸化炭素カップリング法や一酸化炭素蟻酸ナトリウム法では、原料として人体に有害な一酸化炭素を使用するので、製造装置の運用に際し、厳重な安全性への配慮が要請されていた。もって、蓚酸製造装置に多くの監視装置や事故防止装置が付設されていた。
このように、従来技術の蓚酸の製造方法については、事前の化学合成準備や事後の化学的酸化分解処理、更には監視装置や事故防止装置の付設、等を要しており、製造コスト面に問題が指摘されていた。すなわち、工程が複雑であり、製造効率が悪く、製造設備が大掛りとなり、イニシアルコストやランニングコストが嵩み、製造された蓚酸の単価が、例えば他の汎用基礎化成品に比し高額となっていた。又、製造処理の安定性や確実性にも、問題が指摘されていた。
【0006】
《本発明について》
本発明の蓚酸の製造方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、蓚酸が簡単容易に、製造コスト面等に優れて製造可能となる、蓚酸の製造方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
まず、請求項1については、次のとおり。
請求項1の蓚酸の製造方法は、水溶液中に溶存する芳香族化合物を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解することに基づき、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する。そして、次の第1,第2,第3,第4プロセスを順不同に適宜回数辿って、最終的に蓚酸が合成される。
該第1プロセスでは、水酸基(−OH)の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水に回帰すると共に、水酸基の酸素原子(O)を二重結合化させる。
該第2プロセスでは、炭素原子(C)に付く水素原子の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰する。
該第3プロセスでは、炭素原子の不対電子に対しOHラジカルが付加して、水酸基が生成される。
該第4プロセスでは、分極したカルボニル基(C=O)が、発生期の水素に基づき還元されること、を特徴とする。
【0008】
請求項2については、次のとおり。
請求項2の蓚酸の製造方法では、請求項1において、該第4プロセスでは、分極したカルボニル基のカチオン化した炭素原子(C)に対し、発生期の水素に基づき生成されたヒドリドイオン(H)が、還元付加反応する。
これと共に、分極したカルボニル基のアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素に基づき生成されたプロトン(H)が、還元付加反応すること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。
請求項3の蓚酸の製造方法では、請求項2において、芳香族化合物は、フェノール(COH)よりなり、1モルのフェノールから3モルの蓚酸が合成されること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。
請求項4の蓚酸の製造方法では、請求項2において、合成される蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出すること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。
請求項5の蓚酸の製造方法では、請求項2において、合成された蓚酸は、事後、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと酸化分解される可能性があるが、酸化分解された二酸化炭素は、分極した一方のカルボニル基が発生期の水素に基づき還元され、もって蓚酸が再合成されること、を特徴とする。
【0009】
請求項6については、次のとおり。
請求項6の蓚酸の製造方法では、請求項2において、OHラジカルは、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を、添加して生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする
請求項7については、次のとおり。
請求項7の蓚酸の製造方法では、請求項2において、OHラジカルは、フェントン法に基づき、水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を、添加して生成される。
そして発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成されること、を特徴とする。
請求項8については、次のとおり。
請求項8の蓚酸の製造方法では、請求項2において、OHラジカルは、マイクロリアクタを利用した光酸化法により、光照射にて光触媒に形成された正孔(hole)が、水分子を酸化しラジカル分裂させること、に基づき生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする。
【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)フェントン処理装置のフェントン処理槽や、マイクロリアクタのマイクロ流路に、フェノール等の芳香族化合物の溶存水が供給される。
(2)フェントン処理槽では、OHラジカルが生成されるが、発生期の水素も、水分子の酸化分解やヒドロペルオキシラジカルを経由して生成される。
(3)マイクロ流路では、OHラジカルが、光触媒への光照射、そして水分子の酸化,ラジカル分裂に基づき生成されるが、発生期の水素も、水分子の酸化分解により生成される。
(4)そして、フェノール等の芳香族化合物について、水相分散したOHラジカルに基づく酸化分解プロセスや付加プロセスを繰り返すと共に、発生期の水素に基づく還元プロセスも加わることによって、時間経過と共に蓚酸が合成される。
(5)なお、合成された蓚酸は、更に、次の各ルートを辿ることが考えられる。まずルート1として、OHラジカルにて二酸化炭素へと酸化分解される可能性があるが、生成された二酸化炭素は、発生期の水素にて分極,還元されて、元の蓚酸へと再合成,再生,回帰される。
(6)ルート2として、合成され濃度が上昇した蓚酸は2水和物となり、飽和すると晶出する。
(7)ルート3として、合成された蓚酸について、グリオキサールそしてエチレングリコールを生成する還元反応が、進行する可能性もある。
(8)さて上述したように、本発明は、フェントン処理装置や光触媒担持マイクロリアクタを利用し、OHラジカルや発生期の水素を生成して、フェノール等の芳香族化合物を、酸化分解,付加,還元し、もって蓚酸を合成する。このように、簡単容易な構成と工程により、スムーズ,安定的,かつ確実に、蓚酸を製造可能である。
(9)そこで、本発明の蓚酸の製造方法は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
蓚酸が、簡単容易に製造コスト面等に優れて、製造可能となる。すなわち、本発明の製造方法では、フェントン法や光触媒担持マイクロリアクタを利用し、強力な酸化力,還元力と共に簡単容易化された工程や製造設備により、処理の安定性,確実性,イニシアルコスト,ランニングコスト等々に優れつつ、蓚酸を高い収率で大量生産可能となる。更に、工業的価値の高いグリオキサールそしてエチレングリコールへの変換も、容易である。
又、前述したこの種従来技術の製造方法のように、事前の化学合成準備や、事後の化学的酸化分解処理、更には監視装置や事故防止装置の付設等も、要することがなく、これらの面からも蓚酸の大幅コストダウン,低価格化が実現される。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る蓚酸の製造方法について、発明を実施するための形態の説明に供し、フェントン処理装置の構成ブロック図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、マイクロリアクタを示し、(1)図は、要部を拡大した断面説明図、(2)図は、分解斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《説明順序》
本発明の蓚酸の製造方法について、まず、前提となるフェントン法、フェントン法におけるOHラジカルの生成反応、および、フェントン法における発生期の水素の生成、等について説明する。
次いで、マイクロリアクタにおけるOHラジカルおよび発生期の水素の生成について、説明する。
それから、蓚酸合成の概要、蓚酸合成プロセス1、蓚酸合成プロセス2、ヒドリドイオンやプロトンの生成、蓚酸合成プロセス3、および、蓚酸合成の総括反応式、等について説明する。
そして更に、二酸化炭素の生成(その後のルート1)、蓚酸の再合成、蓚酸水和物(その後のルート2)、および、グリオキサールやエチレングリコールの生成(その後のルート3)、等の順に説明する。そして最後に、作用等について説明する。
【0014】
《フェントン法》
まず、図1を参照して、本発明の前提となるフェントン法に基づくOHラジカルの生成について、説明する。
すなわち、本発明の蓚酸の製造方法では、OHラジカル(・OH)を生成し、更には発生期の水素(H+e)を生成して、芳香族化合物を酸化,付加,還元することによって、蓚酸(HOOC−COOH)を生成する。
OHラジカルの生成法としては、フェントン法が代表的であるので、まずフェントン法について説明する。図示したフェントン処理装置1は、原水槽2,フェントン処理槽3,回収槽4、等を順に備えている。そしてフェントン処理槽3には、過酸化水素添加手段5,鉄イオン添加手段6,pH調整手段7,8、等が付設されている。
【0015】
このようなフェントン法について、更に詳述する。まず原水槽2には、溶媒である純水に芳香族化合物が溶質として溶解された溶存水、例えばフェノール溶存水(以下、適宜単にフェノール溶存水を例にとって説明する)が、原水として準備される。
フェントン処理槽3は、pH調整手段7にて硫酸(HSO)や、pH調整手段8にてカセイソーダ(NaOH)が必要に応じ添加され、もって常時pH3〜5程度の弱酸性に調整されている。そして、原水槽2からフェントン処理槽3に供給されたフェノール溶存水に対し、反応当初において、過酸化水素添加手段5から過酸化水素(H)の水溶液が、全量添加される。
それから、過酸化水素が添加されたフェントン処理槽3に対し、間欠的に複数サイクル繰り返して、鉄イオン添加手段6から2価の鉄イオン(Fe2+)溶液が、分割添加される。
すなわち、液中で2価の鉄イオンを生じる物質、例えば硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO)が、このような鉄塩として代表的に使用されるが、その他の無水塩や含水塩、例えば塩化鉄(FeCl)やその水和物も使用可能である。なお、鉄イオン添加手段6から添加される鉄イオンとしては、2価の鉄イオン(Fe2+)が代表的であるが、これに代え3価の鉄イオン(Fe3+)も使用可能である。
フェントン処理槽3内では、供給されたフェノール溶存水について、添加された過酸化水素と鉄イオンにて、OHラジカル(・OH)が生成される。OHラジカルつまりヒドロキシラジカルは、周知のように強力な電子奪取力,酸化力,分解力を有すると共に、ラジカルで反応性に富んでおり、反応が激しいだけに存在時間が瞬間的であり、寿命の短い化学種でもある。
フェントン法については、以上のとおり。
【0016】
《フェントン法におけるOHラジカルの生成反応》
次に、このようなフェントン法に基づく、OHラジカルの生成反応について、説明しておく。フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内では、以下の反応式に基づきOHラジカルが生成される。
第1に、まず、添加された過酸化水素が、添加された鉄イオンにて還元されて、OHラジカルが生成される。次の化1,化2の反応式を参照。化1と化2の反応式を合成すると、化3の反応式となる。これがフェントン主反応である。
【0017】
【化1】

【化2】

【化3】

【0018】
第2に、上記第1のようにOHラジカルが生成されると共に、上記化2の反応式の過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオン(OH)が、上記化1の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルが生成される。次の化4,化5の反応式を参照。このように、付随的,副次的,連鎖的な、OHラジカル生成も考えられる。
【0019】
【化4】

【化5】

【0020】
第3に、更に前記化3(化1,化2)や上記化4,化5の反応式にて生成されたOHラジカルが、溶媒の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応も、付随的,副次的,連鎖的に考えられる。次の化6,化7の反応式を参照。
【0021】
【化6】

【化7】

フェントン法では、このようにフェントン処理槽3において、主反応や各付随的,副次的,連鎖的反応によって、水溶液中に酸化剤であるOHラジカルが生成される。
フェントン法におけるOHラジカルの生成反応については、以上のとおり。
【0022】
《フェントン法における発生期の水素の生成》
次に、前提となる発生期の水素の生成工程について、図1も参照して説明しておく。フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内の水溶液中での発生期の水素(H+e)の生成については、次の第1又は第2の工程が考えられる。次の第1,第2のいずれかの工程により、発生期の水素が生成される。
まず、第1の生成工程については、次のとおり。この工程において、発生期の水素は、水分子が前述により生成されたOHラジカルにて酸化攻撃され、酸化分解されることにより、生成される。
すなわち、フェントン処理槽3内では、下記の化8の反応式のように、OHラジカルは、水分子(HO)から水素原子を奪って酸化分解し、自身は水に回帰すると共に、酸素分子(O)を発生させつつ、発生期の水素(H+e)を、生成せしめる。還元剤として機能する発生期の水素(発生期の原子状水素,水素ラジカルとも称される)が、生成されて水相に拡散遊離する。
なお生成された発生期の水素が、水素分子化することは、3価の鉄イオンが触媒的に作用することにより、抑制される(この点は、後述する第2の生成工程についても同様)。
すなわちフェントン法では、フェントン処理槽3内に、前述したように2価の鉄イオンや3価の鉄イオンが存在する(化1,化5の反応式を参照)。そして、2価の鉄イオン(Fe2+)の3価の鉄イオン(Fe3+)への酸化時に、電子が放出され、3価の鉄イオンの2価の鉄イオンへの還元時に、電子が捕捉されることに基づき、発生期の水素(H+e)の水素分子(H)化が抑制される。一旦捕捉されていた電子が放出され、もってプロトンと共に発生期の水素となる。
【0023】
【化8】

【0024】
第2の生成工程については、次のとおり。この工程において、発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素(H)との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成される。
すなわち、フェントン処理槽3内では、前記化3(化1)の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンと、添加されていた過酸化水素とが、下記の化9の反応式にて反応し、ヒドロペルオキシラジカルが生成される可能性がある。過酸化水素がプロトン(H)を遊離し、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元,再生されると共に、ヒドロペルオキシド(HO)に電子1個が付加されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)が生成される。
他方、前述により生成されたOHラジカルが、下記の化10の反応式にて、過酸化水素と反応することによっても、ヒドロペルオキシラジカルが生成される可能性もある。OHラジカルが過酸化水素の水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰すると共に、ヒドロペルオキシラジカルを生成せしめる。
そして、このように生成されたヒドロペルオキシラジカルは、次の化11の反応式にて、発生期の水素(H+e)と酸素分子とに容易に分解される。このような生成反応に基づき、発生期の水素が生成される。
【0025】
【化9】

【化10】

【化11】

フェントン法における発生期の水素の生成については、以上のとおり。
【0026】
《マイクロリアクタ9におけるOHラジカルおよび発生期の水素の生成について》
次に、図2を参照して、光触媒10担持マイクロリアクタ9について、説明する。本発明では、前提となるOHラジカルの生成や発生期の水素の生成について、上述したフェントン法に換え、光触媒10担持マイクロリアクタ(MR)9を、採用することも可能である。
すなわちOHラジカルが、マイクロリアクタ9を利用した光酸化法により、紫外線等の光照射にて光触媒10に形成された正孔が、水分子を酸化しラジカル分裂させることに基づき生成される。そして発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成される。
【0027】
このようなマイクロリアクタ9について、更に詳述する。フェノール溶存水が、原水として原水槽2から、シリンジポンプ等のマイクロポンプ11やマイクロチューブ12を経由して、例えば肉厚2mm程度の3枚重ねのガラスプレート13製のマイクロリアクタ9のマイクロ流路14に、圧入供給される。もってフェノール溶存水が、微細構造のマイクロ流路14内を層流となって流れる。
マイクロ流路14は、流路幅が数10μm〜数1,000μm程度、例えば100μm〜500μm程度で、流路深さが数μm〜数100μm程度、例えば25μm〜100μm程度よりなる。図示例のマイクロ流路14は、チャンネル状,略ジグザグ蛇行状に、中央のガラスプレート13に刻設形成されている。
これと共に、マイクロ流路14に対しては、代表的には、UV−LED等の紫外線照射手段15から、例えば波長20nm〜300nm程度の紫外線(光量子hν)が、照射される。なお紫外線照射に代え、例えば波長400nm〜700nm程度の可視光線を、照射することも可能である。
もって、マイクロ流路14に塗布され付着コートされた例えば二酸化チタンよりなる光触媒10は、表面の原子構造の外殻軌道(定常軌道)の電子(e)が、光励起され引き抜かれて、励起軌道に移る。このような光反応により、光触媒10の外殻軌道には、電子欠損空孔である正孔(hole)が形成される。下記化12の反応式を参照。
すると、フェノール溶存水の溶媒である水分子(HO)は、接触する光触媒10の正孔にて、電子(e)が引き抜かれ収奪されて酸化される。このような水−正孔反応により、水分子は、プロトン(H)とOHラジカル(・OH)とに、ラジカル分裂する。下記化13の反応式を参照。
そして、水相に生成されたOHラジカルが、溶媒の水分子を酸化分解する。このようなOHラジカルによる水分子の酸化分解反応により、OHラジカルは、酸素分子(O)を生成,遊離しつつ発生期の水素(H+e)を生成せしめ、自らは水に回帰する。下記化14の反応式を参照。化12,13,14の反応式を合成すると、化15の反応式となる。
なお、生成されて水相に遊離した発生期の水素は、光触媒10に形成された正孔に一旦吸着されるか、電子が一旦引き抜かれた後に放電されるので、その水素分子化は抑制され、水相にプロトンが遊離する。
【0028】
【化12】

【化13】

【化14】

【0029】
【化15】

マイクロリアクタ9におけるOHラジカルおよび発生期の水素の生成については、以上のとおり。
【0030】
《蓚酸合成の概要》
以下、蓚酸合成について説明する。まず、蓚酸合成の概要について説明する。本発明では、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内や、光触媒10担持マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内において、水溶液中に溶存する芳香族化合物を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解することに基づき、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する。
すなわち、フェノール(COH)等の芳香族化合物の溶存水が、次の第1,第2,第3,第4プロセスを、順不同に適宜回数辿ることにより、時間経過と伴に蓚酸が合成される。
第1プロセスでは、水酸基(−OH)の有無を判定し、有の場合、OHラジカル(・OH)が水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水(HO)に回帰すると共に、過渡的電子状態の変化に伴い、水酸基の酸素原子(O)を二重結合化(=O)させる。
第2プロセスでは、炭素原子(C)に付く水素原子(H)の有無を判定し、有の場合、OHラジカル(・OH)が水素原子を奪って酸化し、自身は水(HO)に回帰する。
第3プロセスでは、第2プロセスその他により生成された炭素原子(C)の不対電子(−)に対し、OHラジカル(・OH)が付加して、水酸基(−OH)が生成される。
第4プロセスでは、分極したカルボニル基(C=O)が、発生期の水素(H+e)に基づき還元される。
すなわち第4プロセスでは、分極したカルボニル基のカチオン化した炭素原子(C)に対し、発生期の水素に基づき生成されたヒドリドイオン(H)が、還元付加反応する。これと共に、分極したカルボニル基のアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素に基づき生成されたプロトン(H)が、還元付加反応する。
【0031】
このような各プロセスを辿ることにより、蓚酸(HOOC−COOH)が合成される。例えば、1モルのフェノールから3モルの蓚酸が合成される。
このように本発明は、芳香族化合物の芳香環の員環構造を対象として、OHラジカルによる酸化分解プロセス,付加プロセスや、発生期の水素に基づく還元プロセスを辿って、蓚酸を合成する。例えば、ベンゼン環の6員環構造について、酸化分解,付加,還元プロセスを辿って、蓚酸を合成する。
なお、芳香族化合物について、官能基等の置換基は、プロセス当初において分離,遊離する。すなわち、プロセスの初期段階において、OHラジカルにて酸化攻撃を受けた際、芳香環の員環構造(例えばフェニル基等のアリール基)内の電子移動に伴い、置換基は、員環構造との結合が切断されて分離,遊離する。勿論、置換基と員環構造間の結合が、多くの場合単結合であることも、その一因となる。
蓚酸合成の概要については、以上のとおり。
【0032】
《蓚酸合成プロセス1》
次に、このような蓚酸合成プロセスについて、更に詳細に説明する。前述したように、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内には、フェノール溶存水又はその他の芳香族化合物の溶存水が供給されると共に、OHラジカルが生成されて水相分散する。発生期の水素も生成される。
以下、フェノールを例にとって、芳香族化合物の酸化分解等に基づく蓚酸合成プロセスについて詳述する。
まず、蓚酸合成プロセス1について説明する。下記の化16,化17,化18は、その構造式のプロセス模式図である。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、まず、化16,化17,化18の構造式の酸化反応が進行する。
【0033】
【化16】

【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
まず、上記化16の構造式に示したように、フェノール(COH)は、OHラジカルによる酸化雰囲気下において、OHラジカルの最初の酸化攻撃を受ける。もってフェノールは、その水酸基(ヒドロキシル基,OH)の水素原子を、OHラジカルにより奪われて酸化され、OHラジカルは水に帰す。
そして、このような酸化プロセスにより、水酸基の酸素原子が、電気陰性度の強さから炭素原子と2重結合されて、カルボニル基(C=O)が生成される。これに伴い、フェノールの芳香環は、電子移動(二重結合の移動による結合手の組換え)により、過渡的に電子状態が変化する。もって、生成されたカルボニル基の隣の炭素原子に、不対電子が残ることになる。
この段階で、親水基である水酸基は無くなるが、芳香環は維持される。もって、上記化17の構造式に示したように、上記不対電子を有する炭素原子に、引き続くOHラジカルが付加する。この炭素原子の不対電子は、π結合電子であり、OHラジカルの攻撃は容易である。
しかる後、このようなOHラジカルの付加により生成された水酸基(OH)を対象に、上記化18の構造式に示したように、引き続くOHラジカルが酸化攻撃する。もって水酸基は、水素原子をOHラジカルにて奪われて酸化され、OHラジカルは水に帰す。そして、残った水酸基の酸素原子は炭素原子と二重結合化し、もってアルデヒド基(ホルミル基,CHO)化する。
これらと伴に、下記の化19の構造式のプロセス模式図に示したように、芳香環は、隣接する単結合が切断され開環して鎖状化し、切断されて端末化した一端に、上記アルデヒド基が生成される。これと共に、端末化した他端の炭素原子の不対電子に、OHラジカルが付加する。
蓚酸合成プロセス1については、以上のとおり。
【0036】
《蓚酸合成プロセス2》
次に、蓚酸合成プロセス2について、説明する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、下記の化19の構造式による還元反応も進行する。
すなわち、上記化18のプロセスとラップして、化16のプロセスで生成されたカルボニル基(C=O)の部分分極(C−O)が、発生期の水素(H+e)に基づき還元される。
【0037】
【化19】

【0038】
このような還元プロセスについて、化19の構造式に基づき、更に詳述する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、前述したように、水溶液中での発生期の水素の生成が考えられる。
すなわち、前述により生成されたカルボニル基を含む残基については、OHラジカルによる酸化攻撃は不能である。そこでOHラジカルが、水分子や過酸化水素を酸化攻撃することに基づいて、発生期の水素が生成される。もって、これまでの酸化雰囲気に換え、発生期の水素による還元雰囲気が形成される。
そして、このような還元雰囲気下において、鎖状に開環した残基中のカルボニル基(C=O)は、分子式の炭素原子と酸素原子間の電気陰性度の差異に基づき、炭素原子より電気陰性度が強い酸素原子の影響で、部分分極している。
そして、このように分極,電離状態のカルボニル基を、発生期の水素が還元攻撃する。すなわち、分極したカルボニル基のプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、発生期の水素に基づき生成されたヒドリドイオン(H)が、還元付加反応する。
これと共に、分極したカルボニル基のマイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素に基づき生成されたプロトン(H)が、随伴して還元付加反応する。もってCH−OHが生成する(後述する化26の構造式も参照)。
蓚酸合成プロセス2については、以上のとおり。
【0039】
《ヒドリドイオンやプロトンの生成について》
ここで、上記化19の構造式で還元剤として用いられるヒドリドイオンやプロトンの生成について、説明しておく。
ヒドリドイオン(H,つまりH+2e)は、水素原子に電子1個が付加して生じたイオン、つまり陰イオン化した水素であり、上記化19の構造式では、1モルのヒドリドイオンと1モルのプロトンとが必要とされる。
そして、フェントン法の場合は、フェントン処理槽3内において、下記化20,化21の反応式にて、発生期の水素に基づき、それぞれ生成される。マイクロリアクタ9の場合は、マイクロ流路14内において、下記化22,化23の反応式にて、発生期の水素に基づき、それぞれ生成される。
【0040】
【化20】

【化21】

【0041】
【化22】

【化23】

【0042】
これらについて、更に詳述する。まずフェントン法の場合は、次のとおり。プロトンは、上記化20の反応式にて生成される。すなわち、前述により生成されていた発生期の水素(H+e)と、同様に生成されていた3価の鉄イオン(Fe3+)とが反応し、もって、発生期の水素の電子を3価の鉄イオンが奪うことにより、2価の鉄イオン(Fe2+)と共に、プロトン(H)が生成される。
ヒドリドイオンは、上記化21の反応式にて生成される。すなわち、発生期の水素(H+e)と添加された2価の鉄イオン(Fe2+)とが反応し、もって、発生期の水素が2価の鉄イオンから電子を奪うことにより、3価の鉄イオン(Fe3+)と共に、ヒドリドイオン(H)が生成される。
これに対しマイクロリアクタ9の場合は、次のとおり。まずプロトンは、上記22の反応式のように発生期の水素−正孔反応により、生成される。
すなわち、発生期の水素と、光触媒10に前述により形成された正孔(hole)とが反応し、もって、発生期の水素の電子を正孔が奪うことにより、充電された正孔(hole)と共にプロトン(H)が生成される。
ヒドリドイオンは、上記23の反応式にて生成される。すなわち、発生期の水素と充電された正孔(hole)とが反応し、もって、発生期の水素が正孔から放電される電子を奪うことにより、ヒドリドイオン(H)が生成される。つまり、上述したフェントン法における3価の鉄イオン(Fe3+)に、正孔(hole)が相当し、2価の鉄イオン(Fe2+)に、充電された正孔(hole)が相当する。
【0043】
このように、フェントン法でもマイクロリアクタ9でも、1モルのプロトンの生成に、1モルの発生期の水素を要し、1モルのヒドリドイオンの生成にも、1モルの発生期の水素を要する。結局、計2モルの発生期の水素を要する。
そこで、フェントン法による場合で、発生期の水素が、水のOHラジカルによる酸化分解にて生成される場合は(前記化8の反応式を参照)、下記24の反応式により、2モルの発生期の水素が生成,供給,使用される。
これに対し、フェントン法による場合で、発生期の水素が、OHラジカルと過酸化水素との反応に基づき生成される場合は(前記化9,化11を参照)、下記25の反応式により、2モルの発生期の水素が生成,供給,使用される。
又、マイクロリアクタ9による場合、発生期の水素は、水のOHラジカルによる酸化分解にて生成され、前記化14の反応式により、2モルの発生期の水素が生成,供給,使用される(下記化24の反応式と同一式となる)。
このように、フェントン法でもマイクロリアクタ9でも、前記化19の反応式に必要な1モルのプロトンと1モルのヒドリドイオンの生成には、2モルの発生期の水素が必要であり、2モルの発生期の水素の生成には、2モルのOHラジカル(下記化24や化25中では、マル5,マル6付で表示)が必要となる。
【0044】
【化24】

【化25】

ヒドリドイオンやプロトンの生成については、以上のとおり。
【0045】
《蓚酸合成プロセス3》
次に、蓚酸合成プロセス3について、説明する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、前記化18そして化19の構造式に示した酸化反応や還元反応に続き、まず、下記の化26の構造式のプロセス模式図に示した酸化反応が、進行する。
【0046】
【化26】

【0047】
上記化26の構造式については、次のとおり。鎖状に開環した残基において、前述したように、部分分極したカルボニル基が発生期の水素に基づき還元付加反応されて生成されたCH−OHは、OHラジカルの酸化攻撃により、アルデヒド基(CHO)化する。
すなわち、OHラジカルにて再び形成された酸化雰囲気下において、OHラジカルが、CH−OHの水酸基の水素原子を奪って酸化し、OHラジカルは水に帰すと共に、残った水酸基の酸素原子が炭素原子と二重結合化し、もってアルデヒド基化する。
そして、このアルデヒド基が、隣の一端末に前述により生成されていたアルデヒド基と共に、グリオキサール((CHO))(化26中ではマル1付のグリオキサールとして表示)を生成する。そして、このように生成されたグリオキサールは、残基本体との単結合が切断されて分離,遊離する。
他方、残基本体の他端末の水酸基も、OHラジカルの酸化攻撃を受け、水素原子を奪われると共に、酸素原子が炭素原子と二重結合化し、もってアルデヒド基(CHO)化する。OHラジカルは水に帰す。
このような化26の構造式の酸化分解反応の後、下記の化27の構造式のプロセス模式図に示した酸化反応へと進む。
【0048】
【化27】

【0049】
上記化27の構造式については、次のとおり。前記化26の構造式において、グリオキサールが分離した残基本体について、この切断,分離に伴い不対電子有となった一端末の炭素原子、および他端末のアルデヒド基化に伴い不対電子有となった炭素原子に、それぞれOHラジカルが付加する。
もって、生成された両水酸基が、それぞれ、OHラジカルの酸化攻撃を受けて、水素原子を奪われると共に、酸素原子が炭素原子と二重結合化して、アルデヒド基(CHO)化する。OHラジカルは、それぞれ水に帰す。
このような化27の構造式の反応の後、下記の化28の構造式のプロセス模式図に示した酸化分解反応へと進む。
【0050】
【化28】

【0051】
上記化28の構造式については、次のとおり。残基本体の他端側では、前記化27の構造式にて新たに生成されたアルデヒド基と既存の他端末のアルデヒド基とにより、グリオキサール((CHO))(化28中ではマル2付のグリオキサールとして表示)が生成される。そして、このように生成されたグリオキサールは、残基との単結合が切断されて分離,遊離する。
そして、一端末のアルデヒド基を含む残基については、この切断,分離に伴い不対電子有となった炭素原子に、OHラジカルが付加する。
このような化28の構造式の酸化分解反応の後、下記の化29の構造式のプロセス模式図に示した酸化反応へと進む。
【0052】
【化29】

【0053】
上記化29の構造式については、次のとおり。前記化28の構造式においてOHラジカルの付加により生成された水酸基が、OHラジカルの酸化攻撃を受ける。もって水素原子を奪われると共に、酸素原子が炭素原子と二重結合化して、アルデヒド基(CHO)化する。OHラジカルは水に帰す。
もって、このように生成されたアルデヒド基と既存のアルデヒド基により、グリオキサール((CHO))(化29中ではマル3付のグリオキサールとして表示)が生成される。
【0054】
フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、前記化26,化28,化29の構造式で、それぞれ生成された各グリオキサール((CHO))について、それぞれ、下記の化30のプロセス模式図に示した酸化反応が進行する。
すなわちグリオキサールは、それぞれ、OHラジカルの酸化攻撃を受ける。そしてグリオキサールは、両炭素原子に付く水素原子を、対応するOHラジカルにて奪われて酸化され、もって、OHラジカルは水に帰すと共に、不対電子有化した両炭素原子にOHラジカルが付加する。
このようにして、蓚酸(HOOC−COOH)が合成されるに至る。
【0055】
【化30】

蓚酸合成プロセス3については、以上のとおり。
【0056】
《蓚酸合成の総括反応式等について》
さて、以上詳述した各プロセスを辿ることにより、蓚酸が合成される。すなわちフェノールを出発物質とし、前記化16〜化30の構造式を辿ることにより、そして化24(化14)又は化25の反応式を加えることにより、蓚酸が生成物質として合成される。
ところで、下記の化31の合算反応式は、まず、前記化16〜化29の構造式を合算すると共に、これに、発生期の水素が水のOHラジカルによる酸化分解にて生成,供給される場合を、加算したものである。
つまり、化31の合算反応式は、前記化24(化14)の反応式により、フェントン法やマイクロリアクタ9を利用して、2モルの発生期の水素が、2モルの水のOHラジカル2モルによる酸化分解にて、2モルの水と1モルの酸素と共に生成,供給される場合を、加算したものである。
この化31の合算反応式のように、1モルのフェノール(COH)を出発物質とし、14モルのOHラジカル(・OH)による酸化分解,付加により、3モルのグリオキサール((CHO))が、7モルの水と1モルの酸素と共に、生成される。
この化31の合算反応式において、1モルのフェノールについては、前記化16の構造式を参照。14モルのOHラジカルについては、前記化16〜化29の構造式および前記化24又は化25の反応式中、マル1〜マル14付のOHラジカル表示を参照。3モルのグリオキサールについては、前記化26,化28,化29の構造式中のマル1〜マル3付のグリオキサール表示を参照。7モルの水については、前記化16〜化29の構造式中のマル1〜マル7付の水分子表示を参照。1モルの酸素については、前記化24の反応式を参照。
【0057】
【化31】

【0058】
上記化31の合算反応式では、このように3モルのグリオキサールが生成される。そして、前記化30の構造式により、1モルのグリオキサールあたり、4モルのOHラジカルにて、1モルの蓚酸と2モルの水が生成される。
そこで、3モルのグリオキサールについては、12モル(4モル×3)のOHラジカルが必要となり、もって、3モル(1モル×3)の蓚酸と、6モル(2モル×3)の水が生成されることになる。
従って、上記化31の合算反応式に、これらを加算すると、下記の化32の総括反応式が得られる。
すなわち、出発物質のフェノール1モルを、26モル(14モル+12モル)のOHラジカルで酸化分解,付加することにより、3モルの蓚酸が、生成物質として合成されることになる。付随して、13モル(7モル+6モル)の水と、1モルの酸素も生成される。
【0059】
【化32】

【0060】
【化33】

【0061】
なお、上記化33の総括反応式については、次のとおり。発生期の水素が、上述したように水のOHラジカルによる酸化分解(化24,化14の反応式)によらず、OHラジカルによる過酸化水素の酸化に基づき生成,供給される場合は、上記化32の総括反応式によらず、上記化33の総括反応式となる。
すなわち、前記化25の反応式では、2モルの発生期の水素が、2モルの過酸化水素のOHラジカル2モルによる酸化分解にて、2モルの水と2モルの酸素と共に生成,供給される。この前記化25反応式を、上記化32の総括反応式の前提となった前記化24の反応式と比較すると、原料系に2モルの過酸化水素を追加すると共に、生成系に1モルの酸素を追加することが必要となる。
従って、上記化32の総括反応式に、これらを加算すると、上記化33の総括反応式が得られる。つまり上記化33の総括反応式は、上記化32の総括反応式について、原料系に2モルの過酸化水素が加わると共に、生成系に2モルの水と1モルの酸素とが追加されたものとなる。
フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、化32の総括反応式又は化33の総括反応式に基づき、出発物質である1モルのフェノールから、3モルの蓚酸が生成物質として合成される。もって、蓚酸の水溶液が、遂時的,連続的に回収槽4に回収される。
蓚酸合成の総括反応式等については、以上のとおり。
【0062】
《二酸化炭素の生成(その後のルート1)》
次に、このようにフェノール等の芳香族化合物の酸化,付加,還元によって合成された蓚酸について、その後のルートの可能性について、図1,図2も参照して説明する。合成された蓚酸は、更にその後、それぞれ遂時的,連鎖的に、次の各ルート1,2,又は3へと、反応等が進行して行く可能性がある。
まず、蓚酸合成後のルート1として、二酸化炭素の生成について、説明する。前述により合成された蓚酸(HOOC−COOH)は、事後、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと、酸化分解される可能性がある。
化34は、その構造式のプロセス模式図である。
【0063】
【化34】

【0064】
このような二酸化炭素の生成について、上記化34の構造式を参照して更に詳述する。前述したように、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内や、光触媒10担持マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内では、所期の通り、水溶液中に蓚酸が合成される。
しかし合成された蓚酸は、前述により生成されていたOHラジカルの酸化攻撃を受けることにより、その2モルのカルボキシル基(COOH)の水酸基(OH)の水素原子2モルを、OHラジカルにより奪われて酸化され、OHラジカルは水に帰す。
そして、電子移動に伴い電子状態が変化する。すなわち、それぞれ水素原子を奪われた酸素原子2モルは、それぞれ、酸素原子端の不対電子と、C−C結合の対電子の1個ずつの取り分けとにより、炭素原子と2重結合化つまりカルボニル基(C=O)化する。このように、OHラジカルによる酸化雰囲気下では、炭素原子に対する酸素原子の酸化度合いが高められ、分極構造(C−O)はカルボニル構造化する。
このようにして水溶液中では、1モルの蓚酸が2モルの二酸化炭素へと、酸化分解される可能性がある。
二酸化炭素の生成(その後のルート1)については、以上のとおり。
【0065】
《蓚酸の再合成》
次に、蓚酸の再合成について、説明する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、上述したように蓚酸が酸化分解されて生成された溶存二酸化炭素は、その分極化する一方のカルボニル基に対し、発生期の水素が還元付加反応することにより、元の蓚酸へと再合成,回帰,再生される。
すなわち、生成された二酸化炭素について、一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)とアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素(H+e)の電子(e)とプロトン(H)が、それぞれ還元付加反応し、もって、2モルの二酸化炭素の炭素間が単結合することにより、1モルの蓚酸が再合成されることになる。
次の化35は、その反応式であり、化36,化37は、その構造式のプロセス模式図である。
【0066】
【化35】

【0067】
【化36】

【化37】

【0068】
このような蓚酸の再合成について、更に詳述する。前述したように、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、水溶液中に発生期の水素が生成されることが考えられ、もって還元雰囲気が形成される。
還元雰囲気下においては、溶存炭酸ガスつまり二酸化炭素(O=C=O)は、次のようになる。すなわち、その(共鳴的に移動する)いずれか一方のカルボニル基(C=O)は、分子式の炭素原子と酸素原子間の電気陰性度(2原子間の電子引き付け度)の差異に基づき、炭素原子より電気陰性度が強い酸素原子の影響で、部分分極している。カルボニル構造の電子は、カルボニル構造が崩され酸素原子側に引き付けられることで、結合が分極化する(酸化雰囲気下のカルボニル構造C=Oから、還元雰囲気下の分極構造C−Oへ)。化36の構造式を参照。
【0069】
そして、このように分極した二酸化炭素を、発生期の水素(H+e)が還元攻撃する。すなわち、分極してプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、発生期の水素の電子(e)が、還元付加反応する。これと共に、マイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素のプロトン(H)が、還元付加反応する。
このように、発生期の水素(その生成については、前述した所を参照)は、電子とプロトンの供給源となり、両者に連鎖的に弁別され、分極状態の二酸化炭素(O=C−O)に取付いて反応する。その結果、2モルの二酸化炭素の炭素の不対電子(上述により炭素に還元付加反応した電子)同士が、共有電子対となって結合することにより、つまりカルボキシル基(COOH)間で炭素が単結合することにより、蓚酸(HOOC−COOH)が二量体として合成される。化37の構造式を参照。
フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、このようにして、蓚酸が酸化分解して生成された2モルの二酸化炭素が、2モルの発生期の水素にて還元されて、1モルの蓚酸が再合成される。化35の反応式を参照。もって、蓚酸の水溶液が、遂時的,連続的に回収槽4に回収されるようになる。
蓚酸の再合成については、以上のとおり。
【0070】
《蓚酸水和物(その後のルート2)》
次に、蓚酸合成後のルート2として、蓚酸水和物について説明する。前述した所に基づきフェノール等の芳香族化合物の酸化,付加,還元によって合成される蓚酸は、その濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出する。
化38,化39,化40は、これらの構造式のプロセス模式図である。
【0071】
【化38】

【0072】
【化39】

【化40】

【0073】
このような蓚酸水和物について、更に詳述する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、酸化等に基づく蓚酸の合成反応が進展し、水溶液中の蓚酸濃度が向上していく。
そして蓚酸濃度の上昇は、蓚酸の電離平衡変化を促すが、それに見合う水の電離変化も促す。そして、電離した水(H+OH)が、蓚酸の2モルのカルボニル基(C=O)の分極(C−O)と反応する。化38の構造式を参照。
そして、このような分極が、部分的な水の電離を吸収する形で、蓚酸の2水和物(HOOC−COOH・2HO)が形成される。化39の構造式を参照。つまり、同一炭素原子に接続する2モルの水酸基(−OH)は、構造水(HO)と、炭素原子に接続する二重結合の酸素原子(=O)と、みなせる。
そして回収槽4には、このような蓚酸の2水和物が回収される。水溶液中の蓚酸の濃度が更に上昇して飽和点に達すると、蓚酸の2水和物は、液体からの結晶化,固体化が始まり、2水和物結晶として晶出する。化39の構造式を参照。
この2分子の結晶水を含む蓚酸の2水和物結晶つまり結晶蓚酸は、水溶液の系外に出たことになり、2水塩で安定する(水の電離で生じている水酸イオンOHが求核剤となり、そのカチオン化した炭素原子Cに対し、付加和合する)。そして、濾過等により取出される。
なお結晶水を飛ばすと、粉状の無水和物である無水蓚酸の結晶となる。化40の構造式を参照。
蓚酸水和物については、以上のとおり。
【0074】
《グリオキサール,エチレングリコールの生成(その後のルート3)》
次に、蓚酸合成後のルート3として、グリオキサール,エチレングリコールの生成について、説明する。フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、前述したように、酸化等に基づく蓚酸の合成が進展する。
そして、このように合成された蓚酸(最も簡単な2価のカルボン酸)は、グリオキサール((CHO))(最も簡単な2価のアルデヒド)、そして、エチレングリコール(HOCHCHOH)(最も簡単な2価のアルコール)へと、還元反応される可能性がある。化41,化42,化43,化44は、これらの構造式のプロセス模式図である。
【0075】
【化41】

【化42】

【0076】
【化43】

【化44】

【0077】
このようなグリオキサール,エチレングリコールの生成について、更に詳述する。まず蓚酸は、前述した水和物結晶化前の水溶液中にあることを前提に、その濃度上昇に伴い、カルボニル基(C=O)が分極化し電離状態となり易い。化41の構造式を参照。分極化については、前記化38の構造式や発生期の水素による還元雰囲気等について、前述した所を参照。
そして、分極してプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、ヒドリドイオン(H)が還元付加反応する。これと共に、マイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素等のプロトン(H)が随伴して、還元付加反応する。化41の構造式を参照。発生期の水素に基づくヒドリドイオンやプロトンの生成については、前述した所を参照。
もって、グリオキサール((CHO))が、生成される。化42の構造式を参照。グリオキサールは、防腐保存液,皮なめし,レーヨン防縮加工等に用いられる。
そして、このように生成されたグリオキサールは、融点の15℃以上であれば晶出することなく水溶液として存在するので、前述に準じ、そのカルボニル基が分極化する。化43の構造式を参照。そして、ヒドリドイオンやプロトンが還元付加反応することにより、常温下で液体のエチレングリコール(HOCHCHOH)が生成される。化44の構造式を参照。
エチレングリコールは、周知のように、PET樹脂,ポリエステル,不凍液,ダイナマイト,溶媒等々、プラスチック,合成繊維,その他の原料として広く用いられる。
グリオキサール,エチレングリコールの生成(その後のルート3)については、以上のとおり。
【0078】
《作用等》
本発明の蓚酸の製造方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)フェノール(COH)等の芳香族化合物の溶存水が、原水槽2から、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3や、マイクロリアクタ9のマイクロ流路14に、供給される(図1,図2を参照)。
【0079】
(2)フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内では(図1を参照)、まず、前提となるOHラジカル(・OH)が、過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を用いるフェントン法に基づき、生成される(化1〜7を参照)。
又、次の前提となる発生期の水素(H+e)も、OHラジカルにて、水分子を酸化分解することにより(化8を参照)、又は、OHラジカルが過酸化水素と反応しヒドロペルオキシラジカル(HO・)を経由することにより、生成される(化10,化11を参照)。
ヒドロペルオキシラジカルそして発生期の水素は、3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素の反応によっても、生成される(化9,化11を参照)。
【0080】
(3)他方、マイクロリアクタ9のマイクロ流路14内では(図2を参照)、まず、前提となるOHラジカルが、光触媒10への紫外線等の光照射そして水分子の酸化,ラジカル分裂に基づき、生成される(化12,化13を参照)。
又、次の前提となる発生期の水素も、OHラジカルによる水分子の酸化分解にて生成される(化14,化15を参照)。
【0081】
(4)もって、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、水相分散したOHラジカルが、水溶液中に溶存するフェノール等の芳香族化合物を酸化分解することに基づき、蓚酸(HOOC−COOH)が合成される(フェノールについて、化16〜化30を参照)。
すなわち、フェノール溶存水又はその他の芳香族化合物の溶存水について、OHラジカルによる酸化分解プロセスや付加プロセスを繰り返すと共に、発生期の水素に基づく還元プロセスが加わることによって、時間経過と共に蓚酸が合成される。例えば、1モルのフェノールから、3モルの蓚酸が合成される(化32,化33を参照)。
【0082】
(5)フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、このようにフェノール等の芳香族化合物の酸化分解に基づき合成された蓚酸は、更にその後、それぞれ遂時的,連鎖的に、次の各ルート1,2,又は3を辿る可能性がある。
まず、合成後のルート1として、合成された蓚酸は、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと酸化分解される可能性がある(化34を参照)。そして、このように生成された二酸化炭素は、発生期の水素(H+e)にて分極,還元されて、元の蓚酸へと再生,回帰される(化35,化36,化37を参照)。
【0083】
(6)合成後のルート2として、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、このように合成されて行く蓚酸は、濃度上昇に伴い次のようになる。
すなわち蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基(C=O)の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出する(化38,化39,化40を参照)。
【0084】
(7)更に、合成後のルート3として、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内において、合成される蓚酸については、次のように還元される可能性もある。
すなわち蓚酸について、カルボニル基の分極と、ヒドリドイオン(H)やプロトン(H)の還元付加反応とに基づき、グリオキサール((CHO))、そしてエチレングリコール(HOCHCHOH)を生成する反応が、進行することも考えられる(化41,化42,化43,化44を参照)。
【0085】
(8)以上のように、本発明の蓚酸の製造方法は、フェントン処理装置1や光触媒10担持マイクロリアクタ9を利用し、OHラジカルそして発生期の水素を生成して、フェノール等の芳香族化合物を酸化分解,付加,更には還元し、もって蓚酸を合成する。
このように、フェントン法やマイクロリアクタ9を利用することにより、簡単容易な構成の製造設備と、強力な酸化力そして還元力によるスムーズな工程とにより、蓚酸が、安定的かつ確実に高い収率で製造可能となる。
本発明の作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0086】
1 フェントン処理装置
2 原水槽
3 フェントン処理槽
4 回収槽
5 過酸化水素添加手段
6 鉄イオン添加手段
7 pH調整手段
8 pH調整手段
9 マイクロリアクタ
10 光触媒
11 マイクロポンプ
12 マイクロチューブ
13 ガラスプレート
14 マイクロ流路
15 紫外線照射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に溶存する芳香族化合物を、OHラジカル(・OH)にて酸化分解することに基づき、蓚酸(HOOC−COOH)を製造する方法であって、次の第1,第2,第3,第4プロセスを順不同に適宜回数辿って、最終的に蓚酸が合成され、
該第1プロセスでは、水酸基(−OH)の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水酸基の水素原子(H)を奪って酸化し、自身は水に回帰すると共に、水酸基の酸素原子(O)を二重結合化させ、
該第2プロセスでは、炭素原子(C)に付く水素原子の有無を判定し、有の場合、OHラジカルが水素原子を奪って酸化し、自身は水に回帰し、
該第3プロセスでは、炭素原子の不対電子に対しOHラジカルが付加して、水酸基が生成され、
該第4プロセスでは、分極したカルボニル基(C=O)が、発生期の水素(H+e)に基づき還元されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、該第4プロセスでは、分極したカルボニル基のカチオン化した炭素原子(C)に対し、発生期の水素に基づき生成されたヒドリドイオン(H)が、還元付加反応すると共に、
分極したカルボニル基のアニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素に基づき生成されたプロトン(H)が、還元付加反応すること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、芳香族化合物は、フェノール(COH)よりなり、1モルのフェノールから3モルの蓚酸が合成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、合成される蓚酸は、濃度上昇に伴う水の電離(H+OH)を吸収する形で、そのカルボニル基の分極に基づき2水和物(HOOC−COOH・2HO)となり、飽和すると晶出すること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、合成された蓚酸は、事後、OHラジカルにて二酸化炭素(CO)へと酸化分解される可能性があるが、酸化分解された二酸化炭素は、分極した一方のカルボニル基が発生期の水素に基づき還元され、もって蓚酸が再合成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項6】
請求項2において、OHラジカルは、フェントン法に基づき水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を添加して生成され、
発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項7】
請求項2において、OHラジカルは、フェントン法に基づき水溶液に対し過酸化水素(H)と2価の鉄イオン(Fe2+)溶液を添加して生成され、
発生期の水素は、OHラジカルの生成に際し得られた3価の鉄イオン(Fe3+)と過酸化水素との反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル(HO・)や、過酸化水素とOHラジカルとの反応にて生成されたヒドロペルオキシラジカル、に基づき生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。
【請求項8】
請求項2において、OHラジカルは、マイクロリアクタを利用した光酸化法により、光照射にて光触媒に形成された正孔(hole)が、水分子を酸化しラジカル分裂させること、に基づき生成され
発生期の水素は、水分子がOHラジカルにて酸化分解されることにより生成されること、を特徴とする蓚酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−246271(P2012−246271A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121247(P2011−121247)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】