説明

薄板用クランプ、および、薄板収納枠

【課題】薄板の端部を薄板に撓みを生じさせることがない態様で収納枠に支持させることができるようにする。
【解決手段】ラッチ手段は、ボタン体を停止位置に位置づけると共に、この停止位置からのボタン体の第一押し込み操作によってこの停止を解いて付勢手段4の付勢によるボタン体の後退移動を生じさせ、かつ、後退移動され切ったボタン体の第二押し込み操作によって再びこのボタン体を停止位置に位置づけるよう構成されている。ボタン体が後退移動され切った位置において、一対の挟持片3、3が挟持位置に位置づけられ、かつ、このボタン体の停止位置において、ボタン体の前端部に形成された接触部26が挟持片3に突き当てられて一対の挟持片3、3が離隔位置に位置づけられるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薄板を運搬したり保管したりするにあたって用いられる薄板収納枠に取り付けられて、この薄板収納枠内において薄板を板面を略鉛直に配させた姿勢で保持させるために用いられるクランプ、および、かかるクランプを含んで構成される薄板収納枠の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シートやフィルムのように薄い基板などの薄板を、複数枚、隣り合って収納される薄板同士が接触しないように、この薄板の板面を略鉛直に配させた姿勢で収納する収納枠として、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
かかる収納枠にあっては、収納枠の側部に薄板の端部が入り込む支持溝が形成されていると共に、この支持溝の一方の溝壁側から押しボタンの操作によりラッチ部をこの支持溝内に突き出させるラッチ部材が備えられており、かかる支持溝内に薄板の端部を入れ込ませた後、収納枠の外側に位置されるラッチ部材の押しボタンを押圧してラッチ部を突き出させることにより、このラッチ部と支持溝の他方の溝壁との間で薄板の端部を挟み込んでかかる薄板を支持するようにしている。
【0004】
しかるに、かかる収納枠にあっては、薄板の端部の挟み付けの過程において、この薄板の一面側からラッチ部材のラッチ部がこの薄板の端部に押し当てられることになるため、挟み付けが終了するまでの間で薄板の少なくとも端部を移動させてしまうものであった。すなわち、かかる収納枠にあっては、薄板の収納支持にあたり、薄板に少なくとも一時的に撓みを生じさせてしまうものであった。
【特許文献1】特開2003−54679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、シートやフィルムのように薄い基板などの薄板の端部を、この薄板に撓みを生じさせることがない態様で、この薄板の収納枠に支持させることができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、この発明にあっては、薄板用クランプを以下の(1)〜(6)の構成を備えたものとした。
(1)ベース、ボタン体、一対の挟持片、ボタン体の付勢手段、および、ラッチ手段とを有しており、
(2)ベースは、薄板収納枠の側部への取り付け部を備えると共に、後部開口を有しており、
(3)ボタン体は、前後方向に移動可能にベースに納められると共に、後端操作部を利用して付勢手段の付勢に抗して前方に押し込み操作できるようになっており、
(4)一対の挟持片は、縦向きの回転軸によって挟持位置と離隔位置とに亘る回動可能に組み合わされていると共に、この離隔位置において一対の挟持片間に入れ込ませた薄板の端部をこの挟持位置において挟み付けるようになっており、
(5)ラッチ手段は、ボタン体を停止位置に位置づけると共に、この停止位置からのボタン体の第一押し込み操作によってこの停止を解いて付勢手段の付勢によるボタン体の後退移動を生じさせ、かつ、後退移動され切ったボタン体の第二押し込み操作によって再びこのボタン体を停止位置に位置づけるよう構成されており、
(6)このボタン体が後退移動され切った位置において、一対の挟持片が挟持位置に位置づけられ、かつ、このボタン体の停止位置において、ボタン体の前端部に形成された接触部が挟持片に突き当てられて一対の挟持片が離隔位置に位置づけられるようにしてある。
【0007】
かかる構成によれば、ボタン体を停止位置に位置づけた状態において、薄板収納枠内に入れ込ませた薄板の端部を離隔位置にある一対の挟持片間に入り込ませることができ、この後、ボタン体を第一押し込み操作することにより、一対の挟持片を挟持位置に位置づけてこのように入り込ませた薄板の端部をワンタッチで挟み付けることができる。かかる挟み付けは、薄板の端部の一面側からこの端部を挟み付けるように移動される一方の挟持片と、薄板の端部の他面側からこの端部を挟み付けるように移動される他方の挟持片とによってなされることから、薄板の端部がこの挟み付けによってできる限り移動されないようにすることができ、薄板に一時的にもできる限り撓みが生じないようにすることができる。そしてこれにより、クランプを介して薄板収納枠内に薄板をこの薄板の板面を略鉛直に配させた状態で保持させることができる。また、この状態からボタン体を第二押し込み操作することにより、再びボタン体を停止位置に位置づけて一対の挟持片による薄板の端部の挟み付け状態をワンタッチで解くことができ、これにより薄板収納枠内に収納保持された薄板をそこから取り出せる状態を直ちに作り出すことができる。
【0008】
前記一対の挟持片を、付勢手段によって挟持位置に向けて常時付勢させるようにすると共に、
ボタン体の停止位置において、ボタン体の前端部に形成された接触部が挟持片に突き当てられてこの付勢手段の付勢に抗して一対の挟持片が離隔位置に位置づけられるようにしておくこともある。
【0009】
かかる構成よれば、停止位置にあるボタン体を第一押し込み操作してこのボタン体を付勢手段の付勢により後退移動させその接触部と一対の挟持片との接触を解除することにより、速やかに一対の挟持片を挟持位置に回動させて間に入れられた薄板の端部をこの一対の挟持片によって確実に挟み付けることができる。また、付勢手段の設定を変更することで、かかる挟み付け力を容易に調整することができる。
【0010】
前記ラッチ手段を、
ピン先端を揺動可能にしてベースに備えられたトレースピンと、
ボタン体に備えられてトレースピンのピン先端を案内すると共に、ハート頂部を前方に向け、かつ、ハート凹部を後方に向けたハート状突部を巡るカム溝とから構成させると共に、
ボタン体の停止位置においてトレースピンのピン先端がボタン体の付勢手段の付勢によりハート凹部に引っかかるようにしておくこともある。
【0011】
かかる構成によれば、ボタン体の停止位置においてラッチ手段を構成するトレースピンのピン先端をボタン体の付勢手段の付勢によりラッチ手段を構成するハート凹部に引っかけるようにしていることから、この停止位置にボタン体を安定的に位置づけることができると共に、前記第一押し込み操作によってこのハート凹部からピン先端を抜き出させてピン先端をカム溝の復路に導入させ、前記付勢手段によりボタン体を円滑に後退移動させることができる。また、ボタン体が後退移動され切った位置からボタン体を第二押し込み操作することにより、トレースピンのピン先端をカム溝の往路の導入させると共に、第二押し込み操作の終了位置においてハート凹部に引っかけて停止位置にボタン体を再び位置づけさせることができる。
【0012】
また、この発明にあっては、薄板収納枠を、側部に貫通穴を有しており、この貫通穴に、前記薄板用クランプをこの薄板収納枠の内方に一対の挟持片を位置させた状態で入れ込み取り付けてなるものとした。
【0013】
かかる構成によれば、薄板収納枠の内側に位置される離隔位置にある一対の挟持片の間に薄板の端部を位置させるようにしてこの薄板収納枠内に薄板を入れ込ませた後、この薄板収納枠の外側からボタン体を第一押し込み操作することにより、一対の挟持片を挟持位置に回動させて薄板の端部をこの一対の挟持片によって挟み付け、この薄板を薄板収納枠内において起立状態に保持させることができる。また、この保持状態を、薄板収納枠の外側からのボタン体の第二押し込み操作によって解くことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、薄板の端部を、この薄板に撓みを生じさせることがない態様で、この薄板の収納枠に支持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1ないし図8に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
なお、ここで図1は、実施の形態にかかるクランプKを構成する各部品を分解して示している。また、図8は、かかるクランプKを含んで構成される薄板収納枠Wの要部を平断面の状態として示している。
【0017】
また、図2及び図3は、クランプKを構成する一対の挟持片3、3が挟持位置にあり、ボタン体2が後退移動され切った位置にある状態を示している。
【0018】
また、図4及び図5は、図2および図3の状態からボタン体2を第二押し込み操作によって、クランプKを構成する一対の挟持片3、3が離隔位置にあり、ボタン体2が停止位置にあるようになった状態を示している。
【0019】
また、図6及び図7は、図4及び図5の状態から、ボタン体2を第一押し込み操作した直後の状態を示しており、この第一押し込み操作によって図2及び図3の状態に復帰される。
【0020】
この実施の形態にかかるクランプKは、各種の電気機器ないしは電子機器を構成するシートやフィルムのように薄い基板などの薄板Pを運搬したり保管したりするにあたって用いられる薄板収納枠Wに取り付けられて、この薄板収納枠W内において薄板Pを板面Paを略鉛直に配させた姿勢で保持させるために用いられるものである。
【0021】
また、この実施の形態にかかる薄板収納枠Wは、かかるクランプKを含んで構成されるものである。
【0022】
かかる薄板収納枠Wは、典型的には、四つの側部と底部とを有し、この四つの側部のうちの向き合った一対の側部内面に薄板Pの板面Paを略平行にさせた状態でその開放された上部からその内部に薄板Pを受け入れ納めるように構成される。前記クランプKは、かかる薄板収納枠Wの四つの側部のうちの薄板Pの上下方向に沿った端部Pbに向き合う残りの一対の側部Wa、Waにそれぞれ複数個取り付けられる。かかる一対の側部Wa、Waにはそれぞれ、左右方向において隣り合うクランプKとの間に略等しいピッチを開けて複数のクランプKが取り付けられるようになっている。薄板Pは、かかる一対の側部Wa、Waの一方に取り付けられたクランプKに一方の端部Pbを保持され、かつ、かかる一対の側部Wa、Waの他方に取り付けられたクランプKに他方の端部Pbを保持されて、薄板収納枠W内にその板面Paを略鉛直に配した状態で収納されるものとされ、また、この収納は、隣り合って収納されている薄板Pの板面Paとの間に前記クランプKのピッチ分の間隔を確保させた状態でなされる。
【0023】
(クランプK)
この実施の形態にかかるクランプKは、
(1)ベース1と、
(2)ボタン体2と、
(3)一対の挟持片3、3と、
(4)ボタン体2の付勢手段4と、
(5)ラッチ手段5とを有している。
【0024】
(ベース1)
ベース1は、薄板収納枠Wの側部Waへの取り付け部101を備えると共に、後部開口102を有している。
【0025】
図示の例では、かかるベース1は、幅広の両側部103、103と幅狭の上部104および下部105を備えた略角筒状をなすように構成されている。そして、薄板収納枠Wへの取り付け状態において、このベース1の前部106は薄板収納枠Wの内方に位置され、かつ、後部開口102は薄板収納枠Wの外方に配されるようになっている。このベース1におけるかかる後部開口102からその内部にボタン体2が入れ込まれるようになっている。
【0026】
また、このベース1の前部106に一対の挟持片3、3が取り付けられるようになっている。図示の例では、前部106の上部と下部とにそれぞれ、そこから前方に突き出す突片107が設けられていると共に、上下の突片107にはそれぞれ、回転軸108の通し穴107aが形成されており、この通し穴107aを利用してベース1の前部106にベース1の前面との間に間隔を開けて上下方向に沿って支持される回転軸108を軸穴32aに通すことにより、かかるベース1の前部106に一対の挟持片3、3が回動可能に取り付けられるようになっている。
【0027】
また、ベース1の前部106における上下方向略中程の位置には、後述するトレースピン51の基部512の保持部109が形成されており、図示の例では、コ字状に屈曲されて左右一対のピン脚511、511を持ったトレースピン51のこの左右一対のピン脚511、511の基端間を連接させる基部512を、この保持部109を挟んだ一方側にある貫通穴110からピン脚511の一方をベース1内に入れ込み、かつ、この保持部109を挟んだ他方側にある貫通穴110からピン脚511の他方をベース1内に入れ込ませた状態で、この保持部109において挟み付け状に保持させることにより、ピン脚511の先端を後方に向けるようにしてベース1にトレースピン51を組み付けさせている。かかるトレースピン51のピン脚511の先端はさらに対をなす他方のピン脚511の側に屈曲されており、この屈曲された先端がトレースピン51のピン先端513となっている。そして、このようにベース1に組み付けられるトレースピン51の一対のピン脚511、511間に、ボタン体2の前端部側が入り込むようになっている。
【0028】
また、ベース1の前部106における保持部109を挟んだ上側と下側とにはそれぞれ、左右一対をなすボタン体2の接触部26の通し部111が形成されている。そして、前記ボタン体2の停止位置において、ボタン体2の前端部に形成された四カ所の接触部26がそれぞれ、対応する通し部111を通じてベース1の前面よりも先に突き出されるようになっている。
【0029】
また、ベース1の前部106の内面には、保持部109を挟んだ上下にそれぞれ、圧縮コイルバネ41のバネ一端の保持突起112が形成されている。図示の例では、この保持突起112にバネ一端を保持される圧縮コイルバネ41のバネ他端側が入れ込まれる穴25がボタン体2の前端部側に形成されており、この圧縮コイルバネ41の作用によってボタン体2は後方に向けて常時付勢されるようになっている。
【0030】
また、ベース1の上部には、前後方向に沿って長い貫通穴113が形成されており、ボタン体2はこの貫通穴113にその上部に備えられた抜け止め爪27を入れ込ませた状態でベース1内に入れ込まれている。図示の例では、前記圧縮コイルバネ41が前記ボタン体2の付勢手段4として機能するものとされ、また、後述する停止位置からのボタン体2の第一押し込み操作によって、ボタン体2は前記貫通穴113における穴後端に抜け止め爪27を引っかける位置まで後退移動されるようになっている。
【0031】
(ボタン体2)
ボタン体2は、前後方向に移動可能にベース1に納められると共に、後端操作部21を利用して付勢手段4の付勢に抗して前方に押し込み操作できるようになっている。
【0032】
図示の例では、かかるボタン体2は、一対の幅広の側部22、22と、上部23および下部24を備えている。かかるボタン体2の一対の幅広の側部22、22の外面間の寸法は、ベース1の両側部103、103の内面間の寸法にほぼ等しく、また、 かかるボタン体2の上部23外面と下部24外面間の寸法は、ベース1の上部104内面と下部105内面間の寸法にほぼ等しくなっている。
【0033】
このベース1の前端部には、その上側と下側とにそれぞれ、前記コイルバネ41の他端側が入れ込まれる穴25が形成されている。また、上側の穴25の左右両側と、下側の穴25の左右両側にはそれぞれ、ベース1の前面から前方に突き出す板状をなす接触部26が形成されている。
【0034】
また、この実施の形態にあっては、かかるボタン体2に、前記トレースピン51のピン先端513を案内すると共に、ハート頂部522を前方に向け、かつ、ハート凹部523を後方に向けたハート状突部521を巡るカム溝52が設けられている。
【0035】
図示の例にあっては、ボタン体2の一対の幅広の側部22、22の双方にそれぞれ、その前端部側に、かかるカム溝52が形成されている。そして、前記トレースピン51のピン脚511の一方がそのピン先端513をボタン体2の一対の幅広の側部22の一方に形成されたカム溝52に案内され、かつ、前記トレースピン51のピン脚511の他方がそのピン先端513をボタン体2の一対の幅広の側部22の他方に形成されたカム溝52に案内されるようになっている。
【0036】
(一対の挟持片3、3)
一対の挟持片3、3は、縦向きの回転軸108によって挟持位置と離隔位置とに亘る回動可能に組み合わされていると共に、この離隔位置においてこれらの間に入れ込ませた薄板Pの端部Pbをこの挟持位置において挟み付けるようになっている。
【0037】
図示の例では、かかる一対の挟持片3、3は、上下に長い略長方形状をなす挟持板31を有している。また、この挟持板31における後側に位置される長辺の上部と下部とにはそれぞれ、そこから後方に向けて張り出すと共に、前記回転軸108の通される軸穴32aを備えた軸受け部32が形成されている。また、この軸受け部32における挟持板31の挟持面側、つまり、前記挟持位置において他方の挟持板31との間で薄板Pの端部Pbを挟み付ける面側に位置される箇所には、前記停止位置においてベース1の通し部111から先に突き出されるボタン体2の接触部26に突き当てられる被接触部33が形成されている。
【0038】
また、上側の軸受け部32と下側の軸受け部32との間には、後述する付勢手段35となるねじりコイルバネ35aのバネ端の係止部34が形成されている。
【0039】
そして、かかる一対の挟持片3、3は、一方の挟持片3の上側の軸受け部32の下方に他方の挟持片3の上側の軸受け部32を位置させ、かつ、一方の挟持片3の下側の軸受け部32の下方に他方の挟持片3の下側の軸受け部32を位置させた状態で、これらの軸受け部32に形成された軸穴32aとベース1の突片107の通し穴107aとに前記回転軸108を通すことにより、ベース1の前部106に前記のような回動を可能とした状態で組み付けられるようになっている。前記ねじりコイルバネ35aは、他方の挟持片3の上側の軸受け部32と一方の挟持片3の下側の軸受け部32との間において回転軸108に巻装されるように備えられると共に、そのバネ一端を一方の挟持片3の係止部34に係止させ、かつ、そのバネ他端を他方の挟持片3の係止部34に係止させており、図示の例では、一対の挟持片3、3がその片前端を離れ出させる向きに回動されればされるほど、この一対の挟持片3、3をこれと逆向きに回動させる向きの付勢力がこのねじりコイルバネ35aに蓄えられるようになっている。
【0040】
(ラッチ手段5)
ラッチ手段5は、ボタン体2を停止位置に位置づけると共に、この停止位置からのボタン体2の第一押し込み操作によってこの停止を解いて付勢手段4の付勢によるボタン体2の後退移動を生じさせ、かつ、後退移動され切ったボタン体2の第二押し込み操作によって再びこのボタン体2を停止位置に位置づけるよう構成されている。
【0041】
この実施の形態にあっては、ラッチ手段5を、
ピン先端513を揺動可能にしてベース1に備えられた前記トレースピン51と、
ボタン体2に備えられてトレースピン51のピン先端513を案内すると共に、ハート頂部522を前方に向け、かつ、ハート凹部523を後方に向けたハート状突部521を巡る前記カム溝52とから構成させている。
【0042】
そして、かかるボタン体2の停止位置においてトレースピン51のピン先端513がボタン体2の付勢手段4の付勢によりハート凹部523に引っかかるようになっている。
【0043】
それと共に、このボタン体2が後退移動され切った位置において、一対の挟持片3、3が挟持位置に位置づけられ、かつ、このボタン体2の停止位置において、ボタン体2の前端部に形成された接触部26が挟持片3の被接触部33に突き当てられて一対の挟持片3、3が離隔位置に位置づけられるようにしてある。
【0044】
(機能)
これにより、この実施の形態にかかるクランプKによれば、ボタン体2を停止位置に位置づけた状態において、薄板収納枠W内に入れ込ませた薄板Pの端部Pbを離隔位置にある一対の挟持片3、3間に入り込ませることができ、この後、ボタン体2を第一押し込み操作することにより、一対の挟持片3、3を挟持位置に位置づけてこのように入り込ませた薄板Pの端部Pbをワンタッチで挟み付けることができる。かかる挟み付けは、薄板Pの端部Pbの一面側からこの端部Pbを挟み付けるように移動される一方の挟持片3と、薄板Pの端部Pbの他面側からこの端部Pbを挟み付けるように移動される他方の挟持片3とによってなされることから、薄板Pの端部Pbがこの挟み付けによってできる限り移動されないようにすることができ、薄板Pに一時的にもできる限り撓みが生じないようにすることができる。そしてこれにより、クランプKを介して薄板収納枠W内に薄板Pをこの薄板Pの板面Paを略鉛直に配させた状態で保持させることができる。また、この状態からボタン体2を第二押し込み操作することにより、再びボタン体2を停止位置に位置づけて一対の挟持片3、3による薄板Pの端部Pbの挟み付け状態をワンタッチで解くことができ、これにより薄板収納枠W内に収納保持された薄板Pをそこから取り出せる状態を直ちに作り出すことができる。
【0045】
また、この実施の形態にあっては、かかる一対の挟持片3、3は、付勢手段35、つまり、前記ねじりコイルバネ35aによって前記挟持位置に向けて常時付勢されていることから、停止位置にあるボタン体2を第一押し込み操作してこのボタン体2を付勢手段35の付勢により後退移動させその接触部26と一対の挟持片3、3との接触を解除することにより、速やかに一対の挟持片3、3を挟持位置に回動させて間に入れられた薄板Pの端部Pbをこの一対の挟持片3、3によって確実に挟み付けることができる。また、付勢手段35の設定を変更することで、かかる挟み付け力を容易に調整することができる。
【0046】
また、この実施の形態にあっては、ボタン体2の停止位置においてラッチ手段5を構成するトレースピン51のピン先端513をボタン体2の付勢手段4の付勢によりラッチ手段5を構成するハート凹部523に引っかけるようにしていることから、この停止位置にボタン体2を安定的に位置づけることができると共に、前記第一押し込み操作によってこのハート凹部523からピン先端513を抜き出させてピン先端513をカム溝52の復路526に導入させ、前記付勢手段4によりボタン体2を円滑に後退移動させることができる。また、ボタン体2が後退移動され切った位置からボタン体2を第二押し込み操作することにより、トレースピン51のピン先端513をカム溝52の往路525の導入させると共に、第二押し込み操作の終了位置においてハート凹部523に引っかけて停止位置にボタン体2を再び位置づけさせることができる。
【0047】
図示の例にあっては、カム溝52は、ボタン体2の前端部において溝前端を開放させており、ボタン体2が後退移動されきった状態から前記第二押し込み操作をすることにより、この溝前端にあるトレースピン51のピン先端513がカム溝52の往路525内に入り込むようになっている。ハート状突部521の下方に往路525が形成され、往路525の終端がハート凹部523となり、ハート状突部521の上方に復路526が形成され、復路526の始端がハート凹部523となっている。また、復路526はハート頂部522の前方において往路525と合流している。この合流位置の前方ではカム溝52の溝上壁527が溝前端に向かうに連れてこのカム溝52の溝幅を広げ出させる向きに傾斜されている。ボタン体2が停止位置にある状態から前記第一押し込み操作を行うとハート凹部523からピン先端513が後方に抜き出る。このハート凹部523の後方にあるカム溝52の溝壁528は斜め後方に傾斜しており、抜き出されたピン先端513はこの傾斜に案内されて復路526に入り込む。付勢手段4の付勢によるボタン体2の後退移動によって復路526に入り込んだピン先端513は前記合流位置を通って溝前端に至る。ボタン体2が後退移動され切った位置からボタン体2を第二押し込み操作すると、トレースピン51のピン先端513はカム溝52の溝前端側の傾斜された溝上壁527に案内されて合流位置から復路526に入り込むことなく往路525の終端となるハート凹部523近傍まで移動される。そして、図示の例にあっては、トレースピン51の一方のピン脚511のピン先端513を案内するカム溝52と他方のピン脚511のピン先端513を案内するカム溝52(図示は省略する。)の形状をやや異ならせることにより、動作の過程においてトレースピン51の基端が弾性的にややねじられるようになっており、第二押し込み操作の終了位置においてトレースピン51の弾発によりそのピン先端513が前記ハート凹部523に入り込むようになっている。
【0048】
(薄板収納枠W)
以上に説明したクランプKを、側部Waに貫通穴Wbを有している薄板収納枠Wの、この貫通穴Wbに、この薄板収納枠Wの内方に一対の挟持片3、3を位置させた状態で入れ込み取り付けることにより、薄板PをこのクランプKによって保持した状態で収納する薄板収納枠Wが構成される。
【0049】
図示の例では、薄板収納枠Wの向き合った一対の側部Wa、Waにそれぞれ、複数の貫通穴Wbが隣り合う貫通穴Wbとの間に間隔を開けて形成されており、薄板収納枠Wの外側からこの貫通穴Wbにその穴口にクランプKを構成するベース1の前後方向略中程の位置に形成された張り出し部114が突き当たる位置まで挟持片3の側を先頭にしてクランプKをはめ込むことにより、この薄板収納枠WにクランプKを取り付けることができるようになっている。すなわち、図示の例では、かかるベース1における貫通穴Wbへのはめ込み部分が取り付け部101として機能される。
【0050】
かかる薄板収納枠Wにあっては、薄板収納枠Wの内側に位置される離隔位置にある一対の挟持片3、3の間に薄板Pの端部Pbを位置させるようにしてこの薄板収納枠W内に薄板Pを入れ込ませた後、この薄板収納枠Wの外側からボタン体2を第一押し込み操作することにより、一対の挟持片3、3を挟持位置に回動させて薄板Pの端部Pbをこの一対の挟持片3、3によって挟み付け、この薄板Pを薄板収納枠W内において起立状態に保持させることができる。また、この保持状態を、薄板収納枠Wの外側からのボタン体2の第二押し込み操作によって解くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】クランプKの分解斜視構成図
【図2】同要部破断側面構成図
【図3】図2の状態における平面構成図
【図4】クランプKの要部破断側面構成図
【図5】図4の状態における平面構成図
【図6】クランプKの要部破断側面構成図
【図7】図6の状態における平面構成図
【図8】クランプKを含んで構成された薄板収納枠Wの要部破断平面構成図
【符号の説明】
【0052】
P 薄板
Pb 端部
W 薄板収納枠
Wa 側部
K クランプ
1 ベース
101 取り付け部
102 後部開口
108 回転軸
2 ボタン体
21 後端操作部
26 接触部
3 挟持片
4 付勢手段
5 ラッチ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース、ボタン体、一対の挟持片、ボタン体の付勢手段、および、ラッチ手段とを有しており、
ベースは、薄板収納枠の側部への取り付け部を備えると共に、後部開口を有しており、
ボタン体は、前後方向に移動可能にベースに納められると共に、後端操作部を利用して付勢手段の付勢に抗して前方に押し込み操作できるようになっており、
一対の挟持片は、縦向きの回転軸によって挟持位置と離隔位置とに亘る回動可能に組み合わされていると共に、この離隔位置において一対の挟持片間に入れ込ませた薄板の端部をこの挟持位置において挟み付けるようになっており、
ラッチ手段は、ボタン体を停止位置に位置づけると共に、この停止位置からのボタン体の第一押し込み操作によってこの停止を解いて付勢手段の付勢によるボタン体の後退移動を生じさせ、かつ、後退移動され切ったボタン体の第二押し込み操作によって再びこのボタン体を停止位置に位置づけるよう構成されており、
このボタン体が後退移動され切った位置において、一対の挟持片が挟持位置に位置づけられ、かつ、このボタン体の停止位置において、ボタン体の前端部に形成された接触部が挟持片に突き当てられて一対の挟持片が離隔位置に位置づけられるようにしてあることを特徴とする薄板用クランプ。
【請求項2】
一対の挟持片は、付勢手段によって挟持位置に向けて常時付勢されていると共に、
ボタン体の停止位置において、ボタン体の前端部に形成された接触部が挟持片に突き当てられてこの付勢手段の付勢に抗して一対の挟持片が離隔位置に位置づけられるようにしてあることを特徴とする請求項1記載の薄板用クランプ。
【請求項3】
ラッチ手段が、
ピン先端を揺動可能にしてベースに備えられたトレースピンと、
ボタン体に備えられてトレースピンのピン先端を案内すると共に、ハート頂部を前方に向け、かつ、ハート凹部を後方に向けたハート状突部を巡るカム溝とから構成されており、
ボタン体の停止位置においてトレースピンのピン先端がボタン体の付勢手段の付勢によりハート凹部に引っかかるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の薄板用クランプ。
【請求項4】
側部に貫通穴を有しており、この貫通穴に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄板用クランプをこの薄板収納枠の内方に一対の挟持片を位置させた状態で入れ込み取り付けてなることを特徴とした薄板収納枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−143249(P2006−143249A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333165(P2004−333165)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(591056097)淀川ヒューテック株式会社 (25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】