説明

薬剤およびその使用

本発明は、医学において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤を提供する。特に、本発明の薬剤は、リンパ腫(たとえば、マントル細胞リンパ腫)などの癌の治療に有用である。本発明は、本発明の薬剤の医薬組成物の他にも前記薬剤の方法および使用をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学において使用するためにSox11を活性化することができる薬剤を提供する。特に、癌(たとえば、リンパ腫)の治療において使用するためにSox11の活性を調節することができる薬剤およびその医薬組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
神経転写因子Sox11は、マントル細胞リンパ腫(MCL)1の診断抗原であり、Sox11の核発現は、最近ではMCLにおける長期全生存を示すものと主張されている2。最近の調査では、Sox11の核発現はバーキットリンパ腫(BL)ならびに前駆BおよびT細胞リンパ芽球性腫瘍3においても観察されることが実証され、リンパ球増殖性疾患細胞には最初に予想されていたよりも広範囲に存在していることを示している。さらに、固形腫瘍の分析により、卵巣上皮癌(EOC)におけるSox11の強い核発現が明らかにされ、この核発現は長期無再発生存と相関していることが示された4。Sox11は、胎児中枢神経系(CNS)にも髄芽細胞腫5および悪性神経膠腫6などのCNS由来悪性腫瘍にも非常に豊富であることはすでに知られている。
【0003】
現在まで、非悪性組織におけるSox11の主要な役割は、胎児発生中の神経発生8,9および器官形成10に対するその必要性であったが、その調節機序は依然としてはっきりしない。Sox11は高移動度グループ(HMG)ボックスタンパク質スーパーファミリー内の20の転写因子のグループに属しており、この転写因子はそのDNA結合HMGドメイン内の高配列相同性により特徴付けられる11。このドメインの外側には、Soxタンパク質が異なるタンパク質とパートナーを組むことを可能にする大きな変異性が存在している12。in vitroデータによれば、Sox11はOct-3およびBrn-2とパートナーを組み、転写を活性化することが明らかにされている13。他のデータによれば、Sox11とBrn-1の相互作用は、両タンパク質が隣接するDNAエレメントに結合することに依存しており、そのそれぞれのトランス活性化ドメインの存在を必要とすることが明らかにされている10。したがって、HMGドメインが2つの機能、すなわちDNA結合の他にも特定の遺伝子および転写因子へのSoxタンパク質の選択的動員を可能にしうるパートナー選択を果たすモデルがますます支持されている。
【0004】
広範に研究されているにもかかわらず、ヒト疾患におけるSox11の治療的価値はまだ同定されていない。上記のように、主に診断法において使用するためのSox11が提案されてきた。
【0005】
必然的に、ヒト疾患の治療のための新たな治療法の持続する必要性が残っている。したがって、本発明は癌の治療のための新たな治療薬を提供しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第94/10323号
【特許文献2】国際公開第03/106491号
【特許文献3】米国特許第4,816,567号
【非特許文献】
【0007】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の態様は、医学において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤を提供する。誤解を避けるために、本発明の第1の態様とその実施形態のすべて(下に明記される)は、医学において使用するための薬物の調製におけるSox11を活性化することができる薬剤の使用も含むおよび/または前記薬剤の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
「薬剤」にはあらゆる化学物質、たとえば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬および小化合物が含まれる。
【0010】
「Sox11を活性化する」には、具体的には
(a)Sox11 mRNAの量または安定性、
(b)Sox11タンパク質の量または安定性、
(c)Sox11のその同族受容体への結合および/または前記受容体の活性化、
(d)Sox11のその結合パートナー(Oct-3、Brn-1およびBrn-2を含む)への結合および/または前記パートナーの活性化、ならびに
(e)Sox11関連下流シグナル伝達
を増加させる能力が含まれる。
【0011】
したがって、本発明の薬剤は、Sox11タンパク質に間接的にもしくは直接的に作用することにより、または上流もしくは下流シグナル伝達エフェクター分子を調節することにより、細胞内でSox11媒介シグナル伝達事象を増加するいかなる部分でもよい。
【0012】
そのような薬剤は、当技術分野で周知の方法を使用して、たとえば、
(i)たとえば、サザンブロット法または関連するハイブリダイゼーション技法によってSox11 mRNAの発現レベルに対する試験薬剤の効果を判定することにより、
(ii)たとえば、抗Sox11抗体を使用する免疫アッセイによってSox11タンパク質のレベルに対する試験薬剤の効果を判定することにより、および
(iii)たとえば、メチル-3H-チミジン(MTT)組込みによって(実施例A参照)、癌細胞増殖のin vitroまたはin vivoでの抑制に対する試験薬剤の効果を判定することにより、
同定しうる。
【0013】
有利には、前記薬剤はSox11を選択的に活性化することができる。
【0014】
「選択的に」とは、前記薬剤が他のタンパク質を活性化するよりも大きな程度にSox11を活性化することを意味する。好ましくは、前記薬剤はSox11を活性化するだけであるが、癌細胞内の他のタンパク質の発現および活性がSox11の活性化の下流結果として変化しうることは認識されるであろう。したがって、遺伝子発現および/または癌細胞増殖に対する実質的に非特異的効果を有する薬剤は排除される。
【0015】
本発明の第2の態様は、癌の治療において使用するためにSox11を活性化することができる薬剤を提供する。誤解を避けるために、本発明の第2の態様とその実施形態のすべて(下に明記される)は、癌の治療において使用するための薬物の調製におけるSox11を活性化することができる薬剤の使用も含むおよび/または前記薬剤の使用に関する。
【0016】
一実施形態では、癌は、乳癌、胆管癌、中枢神経系(たとえば、脳)および他の神経細胞の癌、結腸癌、胃癌、生殖器癌、肺および気道の癌、皮膚癌、胆嚢癌、肝臓癌、上咽頭癌、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腺癌、骨癌(骨髄癌を含む)、脾臓癌、血管および消化管の癌からなる群から選択される。
【0017】
追加の実施形態では、癌はリンパ腫または白血病である。
【0018】
したがって、リンパ腫または白血病は表1に収載されるリンパ腫および白血病の群から選択しうる。
【0019】
【表1A】

【0020】
【表1B】

【0021】
したがって、リンパ腫または白血病はB細胞リンパ腫でありうる。
【0022】
たとえば、リンパ腫は、濾胞性リンパ腫(FL)、マンテル細胞リンパ腫(MCL)またはびらん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)でもよい。
【0023】
代わりの実施形態では、癌は急性単核球白血病である。
【0024】
たとえば、急性単核球白血病は急性骨髄性白血病(AML)でありうる。
【0025】
さらに代わりの実施形態では、癌は上皮細胞の癌である。
【0026】
たとえば、癌は卵巣上皮癌(EOC)でありうる。
【0027】
好ましい一実施形態では、前記薬剤は癌細胞の増殖を抑制することができる。
【0028】
前記癌細胞は、Sox11発現性(たとえば、MCLまたはDLBCL)でも非Sox11発現性(たとえば、FL)でもよい。
【0029】
有利には、前記薬剤は癌細胞の増殖をin vivoで抑制することができる。
【0030】
一実施形態では、前記薬剤は、前記薬剤に曝露されたことがない癌細胞の増殖に比べて、20%以上、たとえば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超の癌細胞の増殖を抑制することができる。
【0031】
別の好ましい実施形態では、前記薬剤は癌細胞死の速度を増加することができる。
【0032】
有利には、前記薬剤は癌細胞の増殖をin vivoで抑制することができる。
【0033】
一実施形態では、前記薬剤は、前記薬剤に曝露されたことがない癌細胞の細胞死速度に比べて、20%以上、たとえば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超の癌細胞死の速度を増加することができる。
【0034】
上で詳述されたように、本発明における使用のための前記薬剤は、いかなる適切な手段によってもSox11を活性化しうる。たとえば、前記薬剤はSox11の転写、翻訳、結合特性、生物活性および/もしくは安定性、ならびに/またはそれにより誘導されるシグナル伝達を増加しうる。
【0035】
一実施形態では、前記薬剤はSox11の転写を増加する。たとえば、前記薬剤はSox11プロモーター領域のメチル化を減少しうる、妨げうるまたは抑制しうる。
【0036】
代わりに、前記薬剤はSox11転写物(すなわち、Sox11 mRNA)の安定性を増加しうる。
【0037】
追加の実施形態では、前記薬剤はSox11の翻訳を増加する。
【0038】
さらに追加の実施形態では、前記薬剤はSox11の結合特性を増加する。たとえば、前記薬剤は、Oct-3、Brn-1および/もしくはBrn-2などのその結合パートナーへのSox11の結合ならびに/または前記パートナーの活性化を増加しうる。
【0039】
試験化合物と標的タンパク質の相互作用を検出するための方法は、当技術分野では周知である。たとえば、イオンスプレー質量分析/HPLC法を用いる限外濾過または他の物理的分析的方法を使用しうる。さらに、2つの蛍光標識物質の結合を、互いに近接近しているときの蛍光標識の相互作用を測定することにより測定しうる蛍光エネルギー共鳴移動(FRET)法を使用しうる。
【0040】
巨大分子、たとえば、DNA、RNA、タンパク質およびリン脂質へのポリペプチドの結合を検出する代わりの方法には、たとえば、Plant et al、1995、Analyt Biochem 226(2)、342〜348頁に記載されている表面プラズモン共鳴アッセイが挙げられる。方法は、たとえば、放射性標識または蛍光標識で標識されているポリペプチドを利用しうる。
【0041】
追加の実施形態では、前記薬剤は、(内在性)Sox11タンパク質の生物活性を増加する。
【0042】
別の実施形態では、前記薬剤はSox11の(mRNAレベルでのまたはタンパク質レベルでの)安定性を増加する。
【0043】
さらに追加の実施形態では、前記薬剤はSox11媒介シグナル伝達を増加する。
【0044】
Sox11媒介シグナル伝達の増加は、直接的効果(たとえば、Sox11 mRNAおよび/もしくはタンパク質に対する)を通じてならびに/または間接的効果(たとえば、上流および/もしくは下流シグナル伝達エフェクターに対する)を通じて実現されうることは当業者であれば認識するであろう。
【0045】
したがって、一実施形態では、前記薬剤は、配列番号1(図9参照)に従ったポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片、バリアント、融合物もしくは誘導体を含むまたはからなる。
【0046】
配列番号1はヒトSox11タンパク質に一致する(データベース受託番号BAA88122、AAH25789、およびAAB08518も参照)。
【0047】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、別段特定されなければ、その従来の意味、つまりペプチド結合を介して互いに連結されている複数のアミノ酸のことである。
【0048】
本発明のポリペプチド実施形態を表す式では、アミノ末端基およびカルボキシ末端基は、明確に示されていないことが多いが、別段特定されなければ、生理的pH値でそれらがとると考えられる形態であると理解されるであろう。したがって、生理的pHでのN末端H2+およびC末端O-は、必ずしも特定され示されていなくとも、特定の例においてまたは一般式において存在すると理解される。本明細書において使用されるポリペプチド表記では、標準使用および習慣に従って前記分子の左手端はアミノ末端であり右手端はカルボキシ末端である。非生理的pH値で形成される塩を含む塩基付加塩および酸付加塩も、本発明のポリペプチドに含まれる。
【0049】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」には、標準の20個の遺伝子的にコードされたアミノ酸およびその「D」型(天然の「L」型と比べて)の対応する立体異性体、オメガアミノ酸、他の天然に存在するアミノ酸、非定型のアミノ酸(たとえば、α,α二置換アミノ酸、Nアルキルアミノ酸など)および化学的に誘導体化されたアミノ酸が含まれる(下参照)。
【0050】
「アラニン」または「Ala」または「A」など、アミノ酸が具体的に列挙されている場合、前記用語は、別段明確に述べられていなければ、LアラニンとDアラニン両方のことである。他の非定型アミノ酸も、その目的の機能特性がそのポリペプチドにより保持されている限り、本発明のポリペプチドに適切な成分でありうる。示されているペプチドでは、各コードされたアミノ酸残基は、必要に応じて、従来のアミノ酸の慣用名に応じた単文字呼称により表される。
【0051】
たとえば、本発明のポリペプチドは、Lアミノ酸を含みうるまたはからなりうる。
【0052】
好ましい一実施形態では、前記薬剤は配列番号1に従ったポリペプチドを含むまたはからなる。
【0053】
代わりの好ましい実施形態では、前記薬剤は、配列番号1に従ったポリペプチドの生物学的に活性な断片を含むまたはからなる。したがって、前記断片は配列番号1の少なくとも100の連続するアミノ酸、たとえば、配列番号1の少なくとも5、10、15、25、35、50、75、100、125、150、200、250、300、350、400または440の連続するアミノ酸を含みうるまたはからなりうる。
【0054】
「生物学的に活性な断片」とは、野生型Sox11ポリペプチドの活性を保持しているSox11の断片を意味する。特に、前記断片は、癌細胞の増殖を抑制する親Sox11タンパク質の能力を保持している。
【0055】
別の実施形態では、前記薬剤は配列番号1に従ったポリペプチドまたはその断片の生物学的に活性なバリアントを含むまたはからなる。したがって、前記バリアントは配列番号1に従ったポリペプチドまたはその断片と少なくとも70%の配列同一性、たとえば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有しうる。
【0056】
「生物学的に活性なバリアント」は、野生型Sox11ポリペプチドの活性を保持しているSox11のバリアントを意味する(上参照)。
【0057】
2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、適切なコンピュータプログラム、たとえば、ウィスコンシン大学Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定してよく、パーセント同一性は配列が最適に整列されているポリペプチドに関連して計算されることは認識されるであろう。
【0058】
前記アラインメントは、代わりにClustal Wプログラム(Thompson et al.、1994、Nuc. Acid Res. 22:4673〜4680頁に記載されている)を使用して実施しうる。
【0059】
使用されるパラメータは以下の通りでよく、すなわち:
ファースト対アラインメントパラメータ: K-タプル(ワード)サイズ; 1、ウィンドウサイズ; 5、ギャップペナルティ; 3、上対角線の数; 5、スコアリング法; xパーセント
多重アラインメントパラメータ:ギャップ開始ペナルティ; 10、ギャップ伸長ペナルティ; 0.05
スコアリングマトリックス: BLOSUM
である。
【0060】
代わりに、BESTFITプログラムを使用してローカル配列アラインメントを決定してもよい。
【0061】
既知アミノ酸配列のバリアントは、当技術分野で周知の方法を使用して作製しうる(たとえば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd edition、Sambrook & Russell、2001、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されており、文書が参照により本明細書に組み込まれている関連する開示である)。たとえば、配列変動は、エラープローンPCR(Leung et al、Technique、1: 11〜15頁、1989)、GeneMorph II(商標)ランダム変異誘発キット(Stratagene社製)ならびにランダム変異誘発、部位特異的変異誘発およびタンパク質工学という他の公知の方法を使用して導入しうる。
【0062】
当業者であれば、核酸ベース薬剤もSox11の活性化薬として使用しうることは認識されるであろう。
【0063】
したがって、代わりの実施形態では、前記薬剤は、配列番号1に従ったポリペプチドまたは生物学的に活性なその断片、バリアント、融合物もしくは誘導体をコードする核酸分子を含むまたはからなる。
【0064】
たとえば、前記薬剤は、配列番号1に従ったポリペプチドをコードする核酸分子を含みうるまたはからなりうる。
【0065】
好ましい一実施形態では、前記核酸分子は、配列番号2に従ったヌクレオチド配列(図10参照)またはその断片、バリアント、融合物もしくは誘導体を含むまたはからなる。代わりに、前記核酸分子はそのようなヌクレオチド配列の変性物を含みうるまたはからなりうる。
【0066】
有利には、前記核酸分子は、DNA、RNA、PNA(ペプチド核酸)、LNA(ロックド核酸)、GNA(グリコール核酸)、TNA(トレオース核酸)またはPMO(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)を含むまたはからなる。好ましくは、前記核酸分子はcDNAまたはmRNAを含むまたはからなる。
【0067】
一実施形態では、前記核酸は核位置シグナル(nuclear location signal)をコードする配列を含みうる。
【0068】
オリゴヌクレオチドは、細胞内在性ヌクレアーゼにより分解されるまたは不活化されやすいことは当業者であればさらに認識するであろう。この問題に取り組むために、たとえば、天然に存在するホスホジエステル結合が別の結合で置き換えられている変更されたヌクレオチド間結合を有する改変オリゴヌクレオチドを使用することが可能である。たとえば、Agrawal et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、7079〜7083頁は、オリゴヌクレオチドホスホロアミド酸およびホスホロチオエートを使用して組織培養におけるHIV-1の抑制が増加したことを示した。Sarin et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85、7448〜7451頁は、オリゴヌクレオチドメチルホスホン酸を使用してHIV-1の抑制が増加したことを示した。Agrawal et al (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、7790〜7794頁は、ヌクレオチド配列特異的オリゴヌクレオチドホスホロチオエートを使用して、初期感染細胞培養物と慢性的感染細胞培養物の両方におけるHIV-1複製の抑制を示した。Leither et al (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87、3430〜3434頁は、オリゴヌクレオチドホスホロチオエートによる組織培養でのインフルエンザウイルス複製の抑制を報告している。
【0069】
人工結合を有するオリゴヌクレオチドは、in vivoでの分解に抵抗性であることが明らかにされた。たとえば、Shaw et al (1991)は、Nucleic Acids Res. 19、747〜750頁において、他の点では非改変のオリゴヌクレオチドが3'末端である種のキャッピング構造体により塞がれている場合in vivoでヌクレアーゼに対してより抵抗性になり、キャップのないオリゴヌクレオチドホスホロチオエートはin vivoで分解されないことを報告している。
【0070】
オリゴヌクレオチドホスホロチオエート合成へのHホスホン酸アプローチの詳細な説明は、Agrawal and Tang (1990) Tetrahedron Letters 31、7541〜7544頁に提供されており、これによりその教唆は参照により本明細書に組み込まれている。オリゴヌクレオチドメチルホスホン酸、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、ホスホン酸エステル、架橋ホスホロアミド酸および架橋ホスホロチオエートの合成は当技術分野では公知である。たとえば、Agrawal and Goodchild (1987) Tetrahedron Letters 28、3539頁; Nielsen et al (1988) Tetrahedron Letters 29、2911頁; Jager et al (1988) Biochemistry 27、7237頁; Uznanski et al (1987) Tetrahedron Letters 28、3401頁; Bannwarth (1988) Helv. Chim. Acta. 71、1517頁; Crosstick and Vyle (1989) Tetrahedron Letters 30、4693頁; Agrawal et al (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87、1401〜1405頁を参照されたい。前記文献の教唆は参照により本明細書に組み込まれている。合成または生産のための他の方法も可能である。好ましい実施形態では、前記オリゴヌクレオチドはデオキシリボ核酸(DNA)であるが、リボ核酸(RNA)配列も合成し適用しうる。
【0071】
本発明において有用なオリゴヌクレオチドは、好ましくは内在性核酸分解酵素による分解に抵抗するように設計される。オリゴヌクレオチドがin vivo分解されると、長さが減少したオリゴヌクレオチド分解産物が生成する。そのような分解産物は非特異的ハイブリダイゼーションを行う可能性が増え、その完全長対応物と比べて効果的である可能性は少ない。したがって、身体内で分解に抵抗性であり標的細胞に到達することができるオリゴヌクレオチドを使用するのが望ましい。本オリゴヌクレオチドは、天然のリン酸ジエステル結合の代わりに1つまたは複数の内部人工ヌクレオチド間結合を使用することにより、たとえば、結合中のリン酸を硫黄で置き換えることによりin vivoでの分解に一層抵抗性にすることが可能である。使用しうる結合の例には、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸、スルホン、硫酸、ケチル、ジチオリン酸、様々なホスホロアミド酸、リン酸エステル、架橋ホスホロチオエートおよび架橋ホスホロアミド酸が挙げられる。当技術分野では他のヌクレオチド間結合が周知であるために、そのような例は、限定的というよりむしろ説明的なものである。混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを作製するための合成経路を含む、これらの結合のうちの1つまたは複数がリン酸ジエステルヌクレオチド間結合の代わりに使用されるオリゴヌクレオチドの合成は当技術分野では周知である。
【0072】
オリゴヌクレオチドは、5'または3'末端ヌクレオチドに類似する基を「キャッピングする」または組み込むことにより内在性酵素による伸長に対して抵抗性にすることが可能である。キャッピングのための試薬は、Applied BioSystems Inc、Foster City、CAからAmino-Link II(商標)として市販されている。キャッピングのための方法は、たとえば、Shaw et al (1991) Nucleic Acids Res. 19、747〜750頁およびAgrawal et al (1991) Proc. Natl. Acad. Sci USA 88(17)、7595〜7599頁により記載されている。
【0073】
オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ攻撃に抵抗性にする追加の方法は、Tang et al (1993) Nucl. Acids Res. 21、2729〜2735頁により記載されているようにオリゴヌクレオチドが「自己安定化する」ことである。自己安定化したオリゴヌクレオチドはその3'末端にヘアピンループ構造を有しており、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ、DNAポリメラーゼIおよびウシ胎児血清による分解に対する増加した抵抗性を示す。前記オリゴヌクレオチドの自己安定化領域は相補的核酸とのハイブリダイゼーションに干渉せず、マウスにおける薬物動態および安定性研究により、その線形対応物に関して自己安定化オリゴヌクレオチドのin vivo持続性が増加することが明らかにされている。
【0074】
一実施形態では、前記薬剤は、プラスミドまたはウイルスなどの遺伝子治療ベクターを含むまたはからなる。
【0075】
たとえば、ウイルスまたはプラスミドは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、レンチウイルス、泡沫状ウイルスベースのベクターおよびレオウイルスからなる群から選択してよい。
【0076】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド薬剤を投与するための方法も当技術分野では周知である(Dass、2002、J Pharm Pharmacol. 54(1):3〜27頁; Dass、2001、Drug Deliv. 8(4):191〜213頁; Lebedeva et al.、2000、Eur J Pharm Biopharm. 50(1):101〜19頁; Pierce et al.、2005、Mini Rev Med Chem. 5(1):41〜55頁; Lysik & Wu-Pong、2003、J Pharm Sci. 2003 2(8): 1559〜73頁; Dass、2004, Biotechnol Appl Biochem. 40(Pt 2): 113〜22頁; Medina、2004、Curr Pharm Des. 10(24):2981〜9頁参照)。
【0077】
たとえば、本発明の構築物は、前記構築物が細胞のゲノムに挿入されるように、レトロウイルスを含む方法により細胞内に導入されうる。たとえば、Kuriyama et al (1991) Cell Struc. and Func. 16、503〜510頁では精製されたレトロウイルスが投与されている。上記のポリヌクレオチドを含むレトロウイルスDNA構築物は、当技術分野で周知の方法を使用して作製しうる。そのような構築物から活性なレトロウイルスを作製するためには、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)において増殖されるエコトロピックpsi2パッケージング細胞系統を使用するのが普通である。前記細胞系統のトランスフェクションはリン酸カルシウム共沈殿によるのが都合よく、安定な形質転換体は、最終濃度1mg/mlまでG418を添加することにより選択される(レトロウイルス構築物がneoR遺伝子を含有していると仮定して)。独立したコロニーは単離され、増殖され、培養上清を取り除き、0.45μmの孔径フィルターを通して濾過し-70℃で保存した。レトロウイルスを腫瘍細胞へ導入するためには、10μg/mlポリブレンが添加されているレトロウイルス上清を直接注入するのが都合がよい。径が10mmを超えた腫瘍では、レトロウイルス上清を0.1mlから1ml、好ましくは0.5ml注入するのが適切である。
【0078】
代わりに、Culver et al (1992) Science 256、1550〜1552頁に記載されているように、レトロウイルスを産生する細胞が注入される。そのようにして導入されたレトロウイルス産生細胞は、ベクターの連続産生が腫瘍内でin situに起こるようにレトロウイルスベクター粒子を活発に産生するよう操作されている。したがって、増殖している細胞は、レトロウイルスベクター産生細胞と混合されるとin vivoで首尾よく形質導入されることが可能である。
【0079】
標的レトロウイルスも本発明で使用するために利用可能である。たとえば、特異的結合親和性を与える配列を操作して既存のウイルスenv遺伝子内に導入しうる(遺伝子治療のためのこの標的ベクターおよび他の標的ベクターの概要についてはMiller & Vile (1995) Faseb J. 9、190〜199頁参照)。
【0080】
他の方法は、限られた時間またはゲノムへの組込みに続いてもっと長時間、そこでの発現のために前記構築物を細胞内に単純に送達することを含む。後者のアプローチの例にはリポソームが挙げられる(Nassander et al (1992) Cancer Res. 52、646〜653頁)。
【0081】
免疫リポソームの調製のために、MPB-PE(N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル]-ホスファチジルエタノールアミン)がMartin & Papahadjopoulos (1982) J. Biol. Chem. 257、286〜288頁の方法に従って合成される。MPB-PEはリポソーム二重層内に組み込まれて、抗体またはその断片のリポソーム表面への共有結合を可能にする。たとえば、前記薬剤の溶液中で前記リポソームを形成し、続いて最大0.8MPaの窒素圧力下で0.6μmおよび0.2μm孔径のポリカーボネート膜フィルターを通しての連続押出しにより、標的細胞への送達のために、前記リポソームに本発明の薬剤(たとえば、DNAまたは他の遺伝子構築物)を負荷するのが都合がよい。押出し後、封入されたDNA構築物は、45分間80,000×gで超遠心分離することにより遊離のDNA構築物から分離される。脱酸素緩衝液中の新たに調製されたMPB-PEリポソームは新たに調製された抗体(またはその断片)と混合され、一晩連続回転下、4℃窒素雰囲気の中でカップリング反応は実施される。免疫リポソームは、45分間80,000×gでの超遠心分離により非コンジュゲート抗体から分離される。免疫リポソームは、腹腔内にまたは直接腫瘍内に注入してよい。
【0082】
他の送達方法には、抗体ポリリジン架橋(Curiel Prog Med Virol 40、1〜18頁参照)および担体としてのトランスフェリンポリカチオンコンジュゲート(Wagner et al (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87、3410〜3414頁)を介して外部DNAを担持するアデノウイルスが挙げられる。これらのうちの第一の方法では、ポリカチオン抗体複合体が本発明のオリゴヌクレオチド薬剤を用いて形成され、前記抗体は野生型アデノウイルスまたは前記抗体に結合する新しいエピトープが導入されているバリアントアデノウイルスのどちらかに特異的である。前記ポリカチオン部分は、リン酸骨格との静電気的相互作用を介して前記オリゴヌクレオチド薬剤に結合する。アデノウイルスは不変の線維およびペントンタンパク質を含有しているために、細胞内に内部移行され、細胞内に一緒に本発明のオリゴヌクレオチド薬剤を運び入れる。前記ポリカチオンがポリリジンであれば好ましい。
【0083】
前記オリゴヌクレオチド薬剤は、前記薬剤が、たとえば、下記のようにアデノウイルス粒子内に存在するアデノウイルスにより送達されてもよい。
【0084】
代わりの方法では、受容体媒介エンドサイトーシスを使用してDNA巨大分子を細胞内に運び入れる高効率核酸送達システムが用いられる。
【0085】
これは、鉄輸送タンパク質のトランスフェリンを核酸に結合するポリカチオンにコンジュゲートすることにより実現される。ヒトトランスフェリンまたはニワトリ相同物のコンアルブミンまたはその組合せは、ジスルフィド結合を通じて小DNA結合タンパク質のプロタミンにまたは様々なサイズのポリリジンに共有結合している。これらの改変トランスフェリン分子は、その同族受容体に結合して細胞内への効率的鉄輸送を媒介する能力を維持している。トランスフェリン-ポリカチオン分子は、核酸サイズとは無関係に(短オリゴヌクレオチドから21キロ塩基対のDNAまで)、本発明のDNA構築物または他の遺伝子構築物と電気泳動的に安定な複合体を形成する。トランスフェリン-ポリカチオンと本発明のDNA構築物または他の遺伝子構築物の複合体が腫瘍細胞に供給されると、細胞内での前記構築物からの高レベルの発現が予想される。
【0086】
Cotten et al (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89、6094〜6098頁の方法により作製される欠損または化学的に不活性なアデノウイルス粒子のエンドソーム崩壊活性を使用する本発明のDNA構築物または他の遺伝子構築物の高効率受容体媒介送達を使用してもよい。アデノウイルスは、そのDNAをリソソームを通過せずにエンドソームから放出させるように適応しており、たとえば、本発明のDNA構築物または他の遺伝子構築物に結合しているトランスフェリンの存在下で、前記構築物がアデノウイルス粒子と同じ経路により細胞に取り込まれるという事実に、このアプローチは依拠していると思われる。
【0087】
このアプローチには、複雑なレトロウイルス構築物を使用する必要がない、レトロウイルス感染の場合に起こるようなゲノムの永続的改変がない、および標的発現システムは標的送達システムと連結しており、したがって、他の細胞型への毒性を減少させるという利点がある。
【0088】
「ネイキッドDNA」ならびにカチオン性および中性脂質と複合体を形成しているDNAも、本発明のDNAを治療を受ける個人の細胞内に導入するのに有用でありうることは認識されるであろう。遺伝子治療への非ウイルスアプローチは、Ledley (1995) Human Gene Therapy 6、1129〜1144頁に記載されている。
【0089】
典型的にはDNAがアデノウイルスまたはアデノウイルス様粒子内に担持されている国際公開第94/10323号に記載されている改変アデノウイルスシステムなどの代わりの標的送達システムも公知である。Michael et al (1995) Gene Therapy 2、660〜668頁は、細胞選択的部分を線維タンパク質に付加させるアデノウイルスの改変を記載している。Bischoff et al (1996) Science 274、373〜376頁に記載されているアデノウイルスなどのp53欠損ヒト腫瘍細胞において選択的に複製する変異アデノウイルスも、本発明の遺伝子構築物を細胞内に送達するのに有用である。したがって、本発明の追加の態様は本発明の遺伝子構築物を含むウイルスまたはウイルス様粒子を提供することは認識されるであろう。他の適切なウイルスまたはウイルス様粒子にはHSV、AAV、ワクシニアおよびパルボウイルスが挙げられる。
【0090】
本発明の薬剤は、Sox11のポリペプチドベースのまたは核酸ベースの活性化薬である必要がないことは当業者であれば認識するであろう。
【0091】
したがって、代わりの実施形態では、前記薬剤は小分子またはそのプロドラッグを含むまたはからなる。
【0092】
たとえば、前記プロドラッグは標的細胞により選択的に活性化されうる。
【0093】
本出願において使用される用語「プロドラッグ」とは、親ドラッグと比べて癌細胞への細胞障害性が少なく、酵素的に活性化されるまたはさらに活性な親型に変換されることができる薬学的に活性な物質の前駆体または誘導型のことである(たとえば、D.E.V. Wilman 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」 Biochemical Society Transactions 14、375〜382頁 (615th Meeting, Belfast 1986)および V.J. Stella et al 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」Directed Drug Delivery R. Borchardt et al (ed.) 247〜267頁 (Humana Press 1985)参照)。
【0094】
そのようなプロドラッグ剤を作製するための適切な方法は当技術分野では周知である(たとえば、Denny、2004、Cancer Invest. 22(4):604〜19頁; Rooseboom et al.、2004、Pharmacol Rev. 2004 56(1):53〜102頁; 国際公開第03/106491号参照)。
【0095】
一実施形態では、前記薬剤はリポプレックスまたはポリプレックスを含む。
【0096】
追加の実施形態では、前記薬剤は、癌細胞への前記薬剤のターゲティング送達のための部分を含む。たとえば、癌細胞への前記薬剤のターゲティング送達のための部分は、抗体またはその抗原結合断片でもよい。
【0097】
「抗体」には、実質的に無傷の抗体分子の他にもキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(天然に存在するヒト抗体と比べて少なくとも1つのアミノ酸が変異されている)、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモダイマーとヘテロダイマー、ならびに前記同一物の抗原結合断片と誘導体が挙げられる。
【0098】
「抗原結合断片」とは、標的エピトープに結合することができる抗体の機能的断片を意味する。
【0099】
好ましくは、抗原結合断片は、Fv断片(たとえば、一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(たとえば、Fab断片、Fab'断片およびF(ab)2断片)、単一可変ドメイン(たとえば、VHおよびVLドメイン)ならびにドメイン抗体(dAb、単一およびデュアルフォーマット[すなわち、dAb-リンカー-dAb]を含む)からなる群から選択される。
【0100】
全抗体ではなく抗体断片を使用する利点は、数倍になる。断片のサイズが小さいほど、固体組織へのより優れた浸透などの薬理学的性質が改良されうる。さらに、Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片などの抗原結合断片は大腸菌において発現され、大腸菌から分泌されることが可能であり、したがって、大量の前記断片の容易な産生が可能になる。
【0101】
たとえば、ポリエチレングリコールまたは他の適切なポリマーの共有結合により改変される抗体およびその抗原結合断片の改変版も本発明の範囲に含まれる。
【0102】
抗体および抗体断片を作製する方法は当技術分野では周知である。たとえば、抗体分子のin vivo産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi. et al、1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:3833〜3837頁; Winter et al.、1991、Nature 349:293〜299頁)、または培養細胞系統によるモノクローナル抗体分子の作製を用いるいくつかの方法のうちのいずれか1つを介して抗体は作製しうる。これらの方法には、ハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法、およびエプスタインバーウイルス(EBV)ハイブリドーマ技法が挙げられる(Kohler et al.、1975. Nature 256:495〜497頁; Kozbor et al.、1985. J. Immunol. Methods 81:31〜42頁; Cote et al.、1983. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026〜2030頁; Cole et al.、1984. Mol. Cell. Biol. 62:109〜120頁)が、これらに限定されない。
【0103】
選択された抗原に対する適切なモノクローナル抗体は、公知の技法、たとえば、「Monoclonal Antibodies: A manual of techniques」、H Zola (CRC Press、1988)および「Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications」、J G R Hurrell (CRC Press、1982)に開示されている技法により調製しうる。
【0104】
抗体断片は、当技術分野で周知の方法を使用して得ることが可能である(たとえば、Harlow & Lane、1988、「Antibodies A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、New York参照)。たとえば、本発明に従った抗体断片は、抗体のタンパク質分解加水分解により、または断片をコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳動物細胞における発現(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養もしくは他のタンパク質発現系)により調製することが可能である。代わりに、抗体断片は、従来の方法による全抗体のペプシンまたはパパイン消化により得ることが可能である。
【0105】
ヒト治療または診断法のためには、ヒト化抗体を使用するのが好ましいことは当業者であれば認識されるであろう。非ヒト(たとえば、マウス)抗体のヒト化型は、好ましくは非ヒト抗体由来の最小部分を有する遺伝的に操作されたキメラ抗体または抗体断片である。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、目的の機能性を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域由来の残基で置き換えられている抗体を含む。いくつかの例では、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置き換えられている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもフレームワーク配列の外来の相補性決定領域にも見出せない残基も含みうる。一般には、ヒト化抗体は、相補性決定領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体の相補性決定領域と一致している、およびフレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連するヒトコンセンサス配列のフレームワーク領域に一致している、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト抗体由来のFc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部も含む(たとえば、Jones et al、1986 Nature 321: 522〜525頁、Riechmann et al、1988、Nature 332: 323〜329頁、Presta、1992、Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593〜596頁参照)。
【0106】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野では周知である。一般的に、ヒト化抗体は、1つまたは複数のアミノ酸残基が非ヒトである供給源からヒト化抗体に導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、外来残基と呼ばれることが多いが、典型的には外来可変ドメインから取られている。ヒト化は、ヒト相補性決定領域を対応するげっ歯類相補性決定領域で置換することにより、基本的には記載された通りに実施することが可能である(たとえば、Jones et al、1986、Nature 321: 522〜525頁、Reichmann et al、1988 Nature 332: 323〜327頁、Verhoeyen et al、1988、Science 239: 1534〜15361頁、米国特許第4,816,567号参照)。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的に無傷のヒト可変ドメインより少ない部分が非ヒト種由来の対応する配列により置換されているキメラ抗体である。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの相補性決定領域残基およびおそらくいくつかのフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似の部位由来の残基により置換されているヒト抗体でありうる。
【0107】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む当技術分野で公知の様々な技法を使用して同定することも可能である(たとえば、Hoogenboom & Winter、1991、J. Mol. Biol. 227:381頁; Marks et al.、1991、J. Mol. Biol. 222:581頁; Cole et al.、1985、In: Monoclonal antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、77頁; Boerner et al.、1991. J. Immunol. 147:86〜95頁参照)。
【0108】
適切な抗体が得られたら、抗体は、たとえば、ELISAにより活性について試験しうる。
【0109】
本発明の第1のまたは第2の態様の特に好ましい実施形態では、前記薬剤は、標的細胞に選択的に送達されるまたは標的細胞により選択的に活性化されることができる。
【0110】
「選択的に」とは、Sox11の生物活性に対する前記薬剤の抑制作用は、癌細胞に向けてまたは癌細胞内部で優先的に発揮される(癌細胞の部位への前記薬剤の局所的投与以外は)ことを意味する。
【0111】
薬剤を癌細胞などの特定の細胞型に標的するための方法は当技術分野では周知である(たとえば、Vasir & Labhasetwar、2005、Technol Cancer Res Treat. 4(4):363〜74頁; Brannon-Peppas & Blanchette、2004、Adv Drug Deliv Rev. 56(11): 1649〜59頁およびZhao & Lee、2004、 Adv Drug Deliv Rev. 56(8):1193〜204頁参照)。
【0112】
たとえば、前記薬剤は標的細胞特異的部分を含みうる。
【0113】
癌細胞への前記薬剤のターゲティング送達のための部分は、標的癌細胞上の物質を認識し結合しうる。標的細胞と接触すると、標的細胞特異的部分は、Sox11活性化薬部分と一緒に内部移行されうる。
【0114】
ターゲティング部分に認識される物質は標的癌細胞上で優勢に、好ましくは独占的に発現される。ターゲティング部分は、同じ標的細胞型上で発現される異なる物質に対する1つもしくは複数の結合部位、または2つもしくはそれ以上の異なる標的細胞型上で発現される異なる物質に対する1つもしくは複数の結合部位を含有しうる。
【0115】
好ましくは、前記ターゲティング部分は標的癌細胞を高結合活性で認識する。
【0116】
「高結合活性」とは、標的細胞特異的部分が標的細胞を、少なくともKd=10-6M、好ましくは少なくともKd=10-9M、適切にはKd=10-10M、さらに適切にはKd=10-11M、さらに適切にはKd=10-12M、さらに好ましくはKd=10-15MまたはKd=10-18Mの結合定数で認識することを意味する。
【0117】
認識される物質は、癌細胞により発現される適切などんな物質でもよい。多くの場合、認識される物質は、抗原、たとえば、CD20またはCD22であろう。
【0118】
本発明の第3の様態は、患者の癌を治療する方法であって、本発明の第1または第2の態様に従って患者に薬剤を投与することを含む方法を提供する。
【0119】
本発明の方法により治療可能な癌の種類は、本発明の第2の態様に関連して上に記載されている。
【0120】
好ましくは、患者はヒトである。
【0121】
有利には、前記薬剤は、癌細胞に選択的に送達されるまたは癌細胞により選択的に活性化される。
【0122】
「治療」には、患者の治療的処置も予防的処置も含まれる。用語「予防的」は、患者または対象の癌の可能性を予防するまたは減少する本明細書に記載されるポリペプチドまたは製剤の使用を包含するように使用される。
【0123】
用語「有効量」は、その変化が寛解であれ、有利な生理学的結果であれ、治療される病態または状態の逆転または減弱であれ、生じる状態または病態の可能性の予防または減少であれ、治療される疾患または状態に応じて、治療される疾患または状態に有利な変化をもたらすように使用されうる本発明に従った化合物の濃度または量を記載するのに本明細書では使用される。
【0124】
本発明の第4の態様は、本発明の態様1または2に従った薬剤を含む医薬組成物および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を提供する。
【0125】
一実施形態では、前記医薬組成物は非経口投与に適している。有利には、前記医薬組成物は癌細胞への前記薬剤の標的された送達ができる。
【0126】
本発明は、本発明の薬剤の薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩を含む組成物も含む。本発明において有用な前述の塩基化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために使用される酸は、無毒の酸付加塩、すなわち、数ある中でも、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸およびパモ酸[すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3ナフトエ酸)]塩などの薬学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成する酸である。
【0127】
薬学的に許容される塩基付加塩は、本発明に従った化合物の薬学的に許容される塩形態を生成するためにも使用されうる。
【0128】
自然状態では酸性である本化合物の薬学的に許容される塩基塩を調製するために試薬として使用しうる化学塩基は、そのような化合物と無毒の塩基塩を形成する化学塩基である。そのような無毒の塩基塩には、数ある中でも、アルカリ金属カチオン(たとえば、カリウムとナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン(たとえば、カルシウムとマグネシウム)などの薬学的に許容されるカチオン、アンモニウムまたはN-メチルグルカミン-(メグルミン)などの水溶性アミン付加塩、ならびに低級アルカノールアンモニウムおよび薬学的に許容される有機アミンの他の塩基塩由来の塩基塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
本明細書で使用されるように、「医薬製剤」とは、本発明に従った治療的に有効な製剤を意味する。
【0130】
上で考察されるように、本明細書で使用される「治療的有効量」または「有効量」または「治療的に有効な」とは、所与の状態および投与計画に治療効果を与える量のことである。これは、必要な添加剤および希釈剤、すなわち担体または投与媒体と共同して目的の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質である。さらに、これらの用語は、宿主の活性、機能および応答の臨床的に重大な欠損を減らし、もっとも好ましくは予防するのに十分な量を意味するよう意図されている。代わりに、治療的有効量は宿主における臨床的に重大な状態を改善するのに十分である。当業者に認識されているように、化合物の量はその特定の活性に応じて変化しうる。適切な投与量は、必要な希釈剤と共同して目的の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性組成物を含有しうる。本発明の組成物の製造のための方法および使用においては、治療的有効量の前記活性成分が提供される。治療的有効量は、当技術分野で周知のように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、通常の熟練した医療または獣医療従事者が決定することが可能である。
【0131】
本発明の薬剤は、意図される投与経路および標準的医薬慣行に関して選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して一般に投与されることになることは当業者であれば認識されるであろう(たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995、Ed. Alfonso Gennaro、Mack Publishing Company、Pennsylvania、USA参照)。適切な投与経路は下で考察され、局所的、静脈内、経口、肺、鼻、耳、目、膀胱およびCNS送達が挙げられる。
【0132】
たとえば、本発明の薬剤およびその医薬製剤は、微粒子などの注射可能な徐放性薬物送達システムを使用して送達してよい。これらは、特に注射回数を減らすように設計される。そのようなシステムの例には、注射されるとrhGHを持続期間にわたりゆっくりと放出する生分解性微粒子に組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を被包しているニュートロピンデポ(Nutropin Depot)である。
【0133】
代わりに、本発明の薬剤およびその医薬製剤は、薬物を目的の部位に直接放出する外科的埋め込みデバイスにより投与することが可能である。
【0134】
エレクトロポレーション療法(EPT)システムも薬剤投与に用いることが可能である。細胞にパルス電界を送達するデバイスは薬物に対する細胞膜の透過性を増加させて、細胞内薬物送達を著しく増強させる。
【0135】
薬剤は、エレクトロインコーポレーション(EI)によっても送達することが可能である。EIは、皮膚表面上の径が最大30ミクロンの小粒子が、エレクトロポレーション法で使用される電気パルスと同一のまたは類似する電気パルスを受けると起こる。EIでは、これらの粒子は角質層を通過して皮膚の深層へと推進される。前記粒子には薬物もしくは遺伝子を負荷するもしくは被膜することが可能であり、または単に薬物が通過することができる細孔を皮膚に開ける「弾丸」として働くことが可能である。
【0136】
薬剤送達の代わりの方法は、熱感受性のReGel注射液である。体温より下では、ReGelは注射可能な液体であるが、体温ではReGelは直ちにゲルリザーバーを形成し、ゆっくりと侵食され溶解して既知の安全な生分解性ポリマーになる。前記活性薬物は、前記バイオポリマーが溶解するに従って、時間をかけて送達される。
【0137】
薬剤は経口的に送達することも可能である。そのような1つのシステムは身体内でのビタミンB12の経口摂取のための自然過程を用いて、タンパク質とポリペプチドを同時送達する。ビタミンB12摂取システムに乗ることによって、タンパク質またはポリペプチドは腸壁を通過することができる。ビタミンB12類似物と薬物の間で、複合体のビタミンB12部分に内因子(IF)に対する著しい親和性と複合体の薬物部分の著しい生物活性の両方を保持している複合体が生成される。
【0138】
好ましくは、本発明の医薬製剤は、前記活性成分の1日量もしくは単位、1日のサブ用量もしくはその適切な画分を含有する単位投与量である。代わりに、単位投与量は、もっと長い、たとえば、隔週、毎週、隔月、毎月またはそれよりも長い間隔での送達のための用量(もしくはサブ用量)を含有しうる。
【0139】
本発明の薬剤および医薬製剤は、活性成分を含む医薬製剤の形態で、随意に無毒有機または無機、酸性または塩基性付加塩の形態で、薬学的に許容される剤形で、通常は経口的にまたは任意の非経口経路により投与されることになる。治療される障害および患者の他にも投与経路に応じて、前記組成物は異なる用量で投与されうる。
【0140】
ヒト治療において、本発明の薬剤は単独で投与することが可能であるが、一般には、意図される投与経路および標準的薬務に関して選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤または担体との混合で投与されることになる。
【0141】
たとえば、本発明の薬剤は、速放性、遅延放出または制御放出適用のために、香味料または着色剤を含有しうる錠剤、カプセル、胚珠、エリキシル剤、溶液または懸濁液の形態で、経口的に、頬側に、または舌下に投与することが可能である。本発明の薬剤は海綿体内注射を介して投与してもよい。
【0142】
代わりに、本発明の薬剤は、錠剤の形態で投与しうる。そのような錠剤は、微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくは、コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン)、デンプングリコールナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合硅酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチンおよびアカシアなどの造粒結合剤を含有しうる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクなどの平滑剤を含みうる。
【0143】
類似の種類の固形組成物もゼラチンカプセルの注入剤として用いうる。この点に関する好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤では、本発明の化合物は、様々な甘味料または香味料、着色物質または染料と、乳化剤および/または懸濁化剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤およびその組合せと組み合わせうる。
【0144】
本発明の薬剤は、非経口的に、たとえば、静脈内に、関節内に、動脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、脳室内に、胸骨内に、脳内に、筋肉内にもしくは皮下に投与することも可能であり、または本発明の薬剤は、インフュージョン法により投与してもよい。本発明の薬剤は、他の物質、たとえば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有しうる無菌水溶液の形態で使用されるのがもっともよい。前記水溶液は、必要であれば、適切に(好ましくは、3〜9のpHまで)緩衝されるほうがよい。無菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当技術分野の当業者に周知の標準製薬技法により容易に実現される。
【0145】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を目的とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含有しうる水性および非水系無菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含みうる水性および非水系無菌懸濁液が挙げられる。前記製剤は、単位用量または多用量容器、たとえば、密封アンプルおよびバイアルで提示しうるし、使用する直前に無菌液体担体、たとえば、注射用水を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保存しうる。即時の注射液および懸濁液は、すでに記載されている種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製しうる。
【0146】
ヒト患者への経口および非経口投与では、本発明の化合物の日投与量レベルは通常、成人あたり1〜1000mg(すなわち、約0.015〜15mg/kg)になり、単回または分割用量で投与される。
【0147】
したがって、たとえば、本発明の化合物の錠剤またはカプセルは、必要に応じて一度に1個または2個またはそれ以上の投与のために1mg〜1000mgの活性化合物を含有しうる。いずれにしても医師がどんな個々の患者にももっとも適切である実際の投与量を決定することになり、前記投与量は特定の患者の年齢、体重および応答とともに変化する。上記投与量は平均的症例の例にすぎない。当然のことながら、もっと高投与量またはもっと低投与量範囲が有利になる個々の例もありえ、そのような例は本発明の範囲内にある。
【0148】
本発明の薬剤は鼻腔内にまたは吸入により投与することも可能であり、適切な推進剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A3)もしくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)などのハイドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適切な気体を使用する加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから乾燥粉末吸入器またはエアゾールスプレー提示の形態で送達されるのが都合がよい。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを提供することにより決定してもよい。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、たとえば、潤滑剤、たとえば、ソルビタントリオレエート(trioleate)をさらに含有しうる、エタノールと溶媒としての推進剤の混合物を使用して、前記活性化合物の溶液または懸濁液を含有しうる。吸入器または注入器で使用するためのカプセルおよびカートリッジ(たとえば、ゼラチンから作られる)は、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末ベースの粉末混合物を含有するように処方しうる。
【0149】
エアゾールまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各計量された用量または「パフ」が患者への送達のために本発明の化合物を少なくとも1mg含有するように調整される。エアゾールを有する全1日用量は患者によって変わり、1日を通して単回用量または、さらに通常では、分割用量で投与しうることは認識されるであろう。
【0150】
代わりに、本発明の薬剤は、座薬もしくはペッサリーの形態で投与することが可能であり、または本発明の薬剤は、ローション、溶液、クリーム、軟膏もしくは散布剤の形態で局所的に適用しうる。本発明の化合物は、たとえば、皮膚用パッチを使用することにより経皮的にも投与しうる。本発明の化合物は、眼球経路によっても投与しうる。
【0151】
眼部使用では、本発明の薬剤は、等張pH調整無菌生理食塩水中の微粒子化懸濁液として、または好ましくは等張pH調整無菌生理食塩水溶液として、随意に塩化ベンジルアルコニウムなどの保存剤と組み合わせて処方することが可能である。代わりに、本発明の薬剤は、ワセリンなどの軟膏で処方されうる。
【0152】
皮膚への局所的適用では、本発明の薬剤は、たとえば、以下の:ミネラルオイル、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水のうちの1つまたは複数との混合液中に懸濁されたまたは溶解された活性化合物を含有する適切な軟膏として処方することが可能である。代わりに、本発明の薬剤は、たとえば、以下の:ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水のうちの1つまたは複数との混合液中に懸濁されたまたは溶解された適切なローションまたはクリームとして処方することが可能である。
【0153】
口腔への局所投与に適した製剤には、風味付けされた主薬、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガント中に活性成分を含むロゼンジ、ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性主薬中に活性成分を含むトローチ、ならびに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤が挙げられる。
【0154】
一般に、ヒトでは、本発明の薬剤の経口または非経口投与が好ましい経路であり、もっとも好都合である。
【0155】
そのような有効量の薬剤またはその製剤は、単回ボーラス投与(すなわち、急性投与)として、またはさらに好ましくは、時間をかけた一連の用量(すなわち、慢性投与)として送達しうることは当業者であれば認識されるであろう。
【0156】
本発明の薬剤および医薬製剤は医学分野でも獣医学分野でも有用性があることは当業者であればさらに認識されるであろう。したがって、本発明の方法は、ヒトと非ヒト動物(たとえば、ウマ、イヌおよびネコ)の両方の治療に使用されうる。しかし、好ましくは、患者はヒトである。
【0157】
獣医学使用では、本発明の薬剤は、普通の獣医学慣行に従って適切に許容される製剤として投与され、獣医が特定の動物にもっとも適切になる投与計画および投与経路を決定することになる。
【0158】
本発明の好ましい態様は、以下の図を参考にして以下の非限定的実施例に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】Sox11プロモーター領域におけるCpGアイランドを示す図である。Sox11転写開始の2000bp上流の分析により、GC含量が50パーセントを超える4つのCpGアイランドが明らかにされた(www.urogene.org/methprimer/)15。CpGジヌクレオチドは縦棒として表されている。-435から-222を増幅するプライマーを亜硫酸水素塩シーケンシングにおいて使用して、Sox11プロモーター領域のメチル化状態をSox11発現と比較した。
【図2】NEW-Sox11発現と相関しているSox11プロモーター領域のメチル化状態を示す図である。Sox11プロモーターのメチル化状態(28の考えうるCpGメチル化部位のうちのメチル化CpGの割合として記載される)は、直接亜硫酸水素塩シーケンシングにより分析され(右Y軸)、19のリンパ系または単球系細胞系統におけるmRNA(左Y軸)およびタンパク質レベルに関してSox11発現と相関していた(Table 2(表2))。△CT(SOX11+RT, SOX11-RT)<|2|を有するすべての試料が陰性と見なされ、RQはそれらの試料について0.01に設定された。RQ値はGRANTA-519においてSOX11発現に関係しており、エラーバーは95%信頼区間を示している。
【図3】5-Aza-CdRを用いた処置がリンパ腫細胞系統増殖を減少させたことを示す図である。脱メチル化剤5-Aza-CdRは、未処置対照と比べて72時間後メチル化(RAJIおよびTHP-1)と非メチル化(GRANTA-519)細胞系統の両方において増殖速度を50%以上減少させた。
【図4A】原発性臨床的リンパ腫試料におけるSox11 DNAメチル化およびタンパク質発現を示す図である。臨床検体におけるSox11プロモーターのメチル化パターンは、個々の対立遺伝子の亜硫酸水素塩シーケンシングにより決定され、Sox11タンパク質発現と相関していた。すべての行が独自の対立遺伝子を表しており、列は潜在的にメチル化されたCpG部位を表している。a)Sox11は正常な扁桃腺では全体がメチル化されておらずタンパク質は検出されなかった。
【図4B】原発性臨床的リンパ腫試料におけるSox11 DNAメチル化およびタンパク質発現を示す図である。臨床検体におけるSox11プロモーターのメチル化パターンは、個々の対立遺伝子の亜硫酸水素塩シーケンシングにより決定され、Sox11タンパク質発現と相関していた。すべての行が独自の対立遺伝子を表しており、列は潜在的にメチル化されたCpG部位を表している。b)MCL試料では、プロモーターはメチル化されないままでありSOX11は検出可能である。
【図4C】原発性臨床的リンパ腫試料におけるSox11 DNAメチル化およびタンパク質発現を示す図である。臨床検体におけるSox11プロモーターのメチル化パターンは、個々の対立遺伝子の亜硫酸水素塩シーケンシングにより決定され、Sox11タンパク質発現と相関していた。すべての行が独自の対立遺伝子を表しており、列は潜在的にメチル化されたCpG部位を表している。c)FLおよびDLBCLにおけるSOX11タンパク質の欠如には50%超のメチル化対立遺伝子が付随する。
【図5A】Sox11のsiRNAノックは増殖を増加させることを示す図である。a)24時間目と48時間目のmRNAに対する、GRANTA-519とREC-1におけるSox11遺伝子のsiRNA誘導ノックダウンの効果。Eg5遺伝子を標的にする対照siRNAは陽性対照として使用された(bにおいて示されているのみ)。図aにおけるすべての値は、1に設定されているスクランブルsiRNA対照と比べた相対量(RQ)である。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図5B】Sox11のsiRNAノックは増殖を増加させることを示す図である。b)それぞれ72時間目と48時間目のタンパク質レベルに対する、GRANTA-519とREC-1におけるSox11遺伝子のsiRNA誘導ノックダウンの効果。Eg5遺伝子を標的にする対照siRNAは陽性対照として使用された(bにおいて示されているのみ)。図aにおけるすべての値は、1に設定されているスクランブルsiRNA対照と比べた相対量(RQ)である。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図5C】Sox11のsiRNAノックは増殖を増加させることを示す図である。c)24時間目、48時間目と72時間目の増殖に対する、GRANTA-519とREC-1におけるSox11遺伝子のsiRNA誘導ノックダウンの効果。Eg5遺伝子を標的にする対照siRNAは陽性対照として使用された(bにおいて示されているのみ)。図aにおけるすべての値は、1に設定されているスクランブルsiRNA対照と比べた相対量(RQ)である。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図6A】Sox11の過剰発現は増殖を減少させることを示す図である。a)6つのB細胞リンパ腫細胞系統におけるSox11遺伝子の過剰発現後24時間目のSox11のmRNA発現。図Aでは、すべての値がGRANTA519についての1に設定されたGFP値にスケール変更されている相対量(RQ)である。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図6B】Sox11の過剰発現は増殖を減少させることを示す図である。b)トランスフェクション後48時間目の増殖アッセイは、減少を24時間後にすでに見ることができたBLABを除いて、すべての細胞系統において細胞増殖の減少を示した。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図6C】Sox11の過剰発現は増殖を減少させることを示す図である。c)24時間目のウェスタンブロット分析により、wt(左)と対照ベクター(中間)と比べて、Sox11トランスフェクト試料(右)におけるSox11過剰発現が確証され、負荷対照(GAPDH)は下に見られる。図Cでは、すべての細胞系統は、1に設定されているそのそれぞれのGFP値にスケール変更されている。データは3つの独立したアッセイを代表している。
【図7】原発性および腫瘍細胞系統のSNP分析(RS4371338)を示す図である。分析によれば、MCL細胞系統では非MCL細胞系統と比べて対立遺伝子の使用が偏っており、後者は白色人種について報告されている通りに正常な分布を示すことが示された。これほど明確ではないが、原発性MCLにおける対立遺伝子の使用も偏っているように思われる。R-A/G
【図8】様々なB細胞リンパ腫細胞系統の包括的メチル化解析を示す図である。解析により、試料間よりも複製物間でより大きな変動が示された。実験は、供給業者は異なるが結果が類似するキットを用いて繰り返された。
【図9】ホモサピエンスSRY(性決定領域Y)-box11(SOX11)、アミノ酸(gi|4507161|ref|NP_003099.1)を示す図である。
【図10】ホモサピエンスSRY(性決定領域Y)-box11(SOX11)、cDNA(gi|30581115|ref|NM_003108.3)を示す図である。
【図11】Sox11のOmicsLink(商標)発現クローンのCDS配列(EX-M0425-M60)を示す図である。
【図12】(A)2つのMCL細胞系統から抽出されたタンパク質のウェスタンブロットによれば、どちらの抗Sox11抗体を使用してもSox11の予想される約60kDaバンドが示される。(B)レーン標識Sox11は、特異的siRNAを用いたノックダウンおよび抗Sox11C-termを用いた染色後のGranta 519細胞抽出物を示しており、このレーンは陰性および対照レーンにおいて示されるSox11バンドと対照的にバンドを生じなかった。これらのレーンは、それぞれスクランブル配列siRNAと非トランスフェクト細胞を用いたヌクレオフェクション後の抽出物を含有している。(C)Sox11N-term適用後、弱い核シグナルを有するMCL(MCL1)の場合はSox11C-termを使用して強くなった。別のMCL(MCL2)は、Sox11C-termと免疫反応するまで細胞質シグナルのみを発し、その後核シグナルが現れた(ヘマトキシリン対比染色のDAB、Olympus BX45、倍率×125、アドビフォトショップを用いた取得後色修正)。(D)抗Sox11C-termを用いた染色後の強い核Sox11シグナルは真性バーキットリンパ腫において見られる。(E)バーキットリンパ腫中間型/びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は核染色を示していない(シグナルは細胞質に限られる)。(F)リンパ芽球性腫瘍における陽性染色は、成人結節型T-LBL(挿入図、TdT染色)の症例により例示される。(G)B-ALLを有する髄にシグナルが存在する。(H)幼児期軌道B-LBLもSox11を発現する。(I)DBA.44(挿入図、上左)、CCND1(挿入図、下右)および抗Sox11C-termを有するSox11を発現したHCL、症例9の骨髄を示している(ヘマトキシリン対比染色のDAB、D×230を除いて倍率×125)。
【図13】生後6〜8週間のオスとメスNOD-SCIDマウスを使用して、5百万または50万Z138細胞(マントル細胞リンパ種細胞系統)のどちらかを使用したスクランブル対照(scr)と比べたSOX11ノックダウンのin vivo効果のアッセイを示す図である。データによれば、スクランブル対照と比べて、SOX11がノックされたときの異常な体重減少または腫瘍増殖の他の兆候に起因する死亡または屠殺までの時間(日数)が短くなっていることが示される。実験の終了点は腫瘍細胞注射の8週間後であり、この時点で残りの動物(n=6)は屠殺された。このようにin vivoデータは、SOX11の腫瘍抑制機能を支持している。
【発明を実施するための形態】
【0160】
(実施例)
(実施例A)
序文
転写因子Sox11は、最近、卵巣上皮癌(EOC)における改善された予後と相関することが明らかにされているマントル細胞リンパ腫(MCL)の新規の診断マーカーである。Sox11は中枢神経系の胚発生に重要な役割を果たしているが、その発生以外の機能は依然として未知である。したがって、一部の悪性腫瘍について報告されているSox11の異常な発現の原因と結果は以前説明されていなかった。
【0161】
Sox11が非発現悪性組織においてプロモーターメチル化を通じてサイレンシングされると、腫瘍においてSox11の後成的調節が起こることを今や我々は明らかにしている。さらに、siRNA媒介ノックダウンと異所性過剰発現の両方により評価される場合、Sox11が異なる癌細胞系列において増殖を直接抑制することを我々ははじめて明らかにしている。これらのデータは、Sox11の異所性過剰発現により非MCL細胞系統の増殖が増加したので、Sox11が傍観者というだけでなく、細胞増殖の活発な調節因子でもあることを実証している。
【0162】
材料と方法
細胞系統の培養
Table 2(表2)に示される、9つがMCL由来、4つが濾胞性リンパ腫(FL)由来、3つがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)由来、3つがバーキットリンパ腫(BL)由来、1つが急性単球性白血病(MONO-L)由来、1つがBリンパ芽球性リンパ腫由来の21の癌細胞系統を使用して、Sox11遺伝子を調べた。10%(v/v)ウシ胎児血清(Invitrogen)で補充された45% optiMEM(HyClone)、45% IMDM(HyClone)で培養されたULAを除いて、すべての細胞系統は、10%(v/v)ウシ胎児血清(Invitrogen Gibco、Carlsbad、CA、USA)と2mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)を補充したRPMI-1640(HyClone、Sout Logan、UT)培地(これ以降R10培地と呼ばれる)で培養された。
【0163】
Sox11の遺伝子発現解析
様々な細胞系統中のSox11の遺伝子発現値が、以前記載された通りに同定された1, 14。手短に言えば、すべての試料が、Affymetrix U133プラス2.0アレイ(Santa Clara、CA)上で解析され、MAS5(Affymetrix)を使用して100の全体標的値にアレイをスケール変更した。図2に示されるSox11 mRNA値は、Affymetrix内部プローブid 204914_s_atから導かれた。
【0164】
Sox11のシーケンシング
ゲノムDNAは、QIAamp DNA MINI Kit(QIAgen、Hilden、Germany)を使用し続いてリボヌクレアーゼ処理(Fermentas Life Science、Ontario、Canada)して、Table 2(表2)に収載されるすべての細胞系統から単離された。各Sox11エクソンのシーケンシングは、57の異なる配列特異的プライマー(詳細な一覧はTable 4(表4)参照)を使用してEurofins MWG GmbH (Ebersberg、Germany)により実施された。
【0165】
RS13419910とRS4371338のSNP解析
一塩基多型(SNP)解析は、Sample-to-SNPキット(Applied Biosystem、Foster City、CA、USA)とそれぞれRS13419910 (dbSNP cluster id、www.ncbi.nlm.nih.goc/SNP)およびRS4371338に対応するTaqmanアッセイC_32195818_20およびC_27292007_10を使用して実施された(配列については補足データTable 5(表5)参照)。手短に言えば、3切片(10μm)のパラフィン包埋組織は、常用のプロトコールを使用してキシレンと無水エタノール中で脱パラフィンされ再水和された(試料一覧はTable 6(表6)参照)。Sample-to-SNPプロトコールに従い、試料は3分間で95℃まで加熱することにより指定された緩衝液中に溶解され、その後中和緩衝液を直ちに添加した。懸濁細胞培養液の解析では、2mlの対数期培養物は洗浄されペレット化された。続いて、前記細胞は室温で3分間、指定された緩衝液中に溶解され、その後中和緩衝液を直ちに添加した。5μlの細胞ライセートは各25μl反応液(Taqmanアッセイ混合液、マスター混合液および無デオキシヌクレアーゼ水)に添加された。40サイクル(95℃、3秒: 60℃、30秒)は7500FAST qPCR(Applied Biosystem)において実施された。
【0166】
一次試料の収集および精製
リンパ球は、以前に記載された通りに14、密度遠心分離を通じて5つの小児扁桃腺、4つのMCL、5つのFLおよび1つのDLBCLから単離された。扁桃腺試料のうちの2つ(扁桃腺4および5)は、以前に記載された通りに14、T細胞枯渇によりさらに精製された。5つのFL試料すべてとMCL試料のうちの2つ(MCL1およびMCL6)は、製造業者のプロトコールに従ってDynabeads Pan Mouse IgG磁気ビーズ(Invitrogen Dynal)に結合されたCD19特異的抗体(clone HD37、DAKO、Glostrup、Denmark)を使用して、ポジティブ選択により精製された。フローサイトメトリーを使用して、扁桃腺4と5、MCL3と4およびDLBCLの純度を決定した。データはすべてTable 7(表7)に示されている。
【0167】
DNAメチル化解析
MethPrimer(www urogene org/methpnmer/)15を使用して、CpGアイランドの存在についてSOX11転写開始部位のすぐ上流の2000bp領域(SOX11プロモーター領域)を解析した。MethPrimerデフォルトアルゴリズムを使用して、3つのCpGアイランドが、GとC含量50%超および観測/予測CpG率0.6超の200bp超領域として同定された。その他の基準を変えずに領域サイズの制約が100bpまで下げられると、1つの追加のCpGアイランドが検出された(図1)15。5'プロモーター領域のメチル化状態は、亜硫酸水素ナトリウムシーケンシングにより決定された16。手短に言えば、全ゲノムDNAが、製造業者のプロトコールに従ってQIAamp DNA MINIキット(QIAgen)を使用して、細胞系統または一次試料あたり500万細胞から抽出された。DNA濃度はNanoDrop(商標)(NanoDrop Technologies、Delaware、USA)により決定された。非メチル化シトシンをウラシルに変換するために、EpiTect Bisulfiteキット(QIAgen)を用いて0.5〜1μgのDNAの亜硫酸水素変換を実施した。213bpを含むSox11転写開始部位の上流‐435〜‐222bpであるCpGアイランドは、プライマー5'-AGA GAG ATT TTA ATT TTT TGT AGA AGG A-3'および5'-CCC CCT TCC AAA CTA CAC AC-3'を使用して、亜硫酸水素変換DNAから増幅された。白金Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)がすべてのPCR反応において使用された。PCR産物は両方とも直接塩基配列決定される他にもベクターpCR.21-TOPOにライゲートされ、化学的にコンピテントな大腸菌TOP10に形質転換された。直接配列分析およびクローン分析は、それぞれ亜硫酸水素変換DNAに特異的なプライマーおよびベクター特異的プライマーM13(-29)を用いて行われた。すべてのシーケンシングは、ABI 3730XL機器上でサイクルシーケンシング技術を使用して、Eurofins MWG GmbHにより実施された。メチル化データの品質管理は、BiQアナライザーソフトウェアを使用して標準化された方法で実施された17(http//biq-analyzer.bioinf.mpi-inf.mpg.de/index.php)。図4A〜CのCpGメチル化の画像は、BiQアナライザーからの出力ファイルを使用して、BDPCウェブサーバー18を使用して構築された。本研究に含まれるすべての単位複製配列が、(i)非メチル化非CpG C:s対T:sに対して95%を超える亜硫酸水素変換率および(ii)元のゲノム配列と比べて90%を超える配列同一性を有していた。
【0168】
脱メチル化アッセイ
脱メチル化研究では、メチル化Sox11プロモーター領域を有する2つの細胞系統(RAJIおよびTHP-1)ならびに1つの非メチル化細胞系統(GRANTA-519)が、1μMの5'-Aza-2'-デオキシシチジン(5-Aza-CdR、Sigma)を72時間単独で用いて、または5-Aza-CdRを72時間、続いて5-Aza-CdRとTrichostatinA(TsA)処理を24時間用いてのどちらかで処理された。1μM(5-Aza-CdR)の補充は24時間ごとに行った。等量のR10培地のみがモック処理細胞に添加された。
【0169】
包括的メチル化決定
包括的メチル化解析は、製造業者のプロトコールに従って、Methylamp Global DNA Methylation Quantification Ultra Kit (Epigentek Group Inc.、New York、NY、USA)を使用して実施された。手短に言えば、100ngのDNAは、高親和性条片上に2通りに固定化された。5-メチルシトシン特異的抗体を検出用に使用し、酵素的産物は、ELISA読取り機(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を使用して490nmで読み取られた。普遍的にメチル化された対照DNAを使用して標準曲線を作成し、メチル化CpGの割合が続いて計算された。
【0170】
ヌクレオフェクション
懸濁細胞系統のヌクレオフェクションについてのAmaxaプロトコール(http.//www.lonzabio.com/protocols. html)に従い、プログラム0-017および細胞系統ヌクレオフェクター溶液T(Amaxa Biosystems、Cologne、Germany)を使用した。ノックダウン実験では、5×106細胞は各反応において50pmolのsiRNA(Ambion、Austin、TX、USA)と混合され、スクランブル配列とGFP産生プラスミドは対照として使用された。Sox11遺伝子を標的にするプール中のsiRNAの配列はTable 3(表3)に見出すことができる。過剰発現実験では、5×106細胞は各反応において2μgのOmicsLink(商標)Expression Clone for Sox11 (EX-M0425-M60配列は図11に見出すことができる)と混合され、GFP対照ベクターは対照として使用された(両方ともGeneCopoeia社製、Germantown、MD、USA)。
【0171】
RNA単離およびリアルタイム定量的PCR
ノックダウン実験において、RNA単離は、以前記載された通りに9、Trizol(Invitrogen)を使用して実施された。cDNA合成はRevertAid(商標)First Strand cDNA Synthesisキットプロトコール(Fermentas)に概要を述べられている通りに実施された。1μgのRNAを0.2μgのランダムヘキサマープライマーと混合させ、逆転写酵素を添加してcDNAを作製した。リアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)のための試料は、iQ(商標) SYBR Green Supermixプロトコール(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)に従って調製された。cDNAの濃度は1.25〜2.5μg/lであり、プライマーの濃度は250nM(MWG、High-Point、NC、USA)であった。前記プライマーは以下の通りであった。Sox11(ノックダウン実験):5'-CCAGGACAGAACCACCTGAT-3'(配列番号71)および5'-CCCCACAAACCACTCAGACT-3'(配列番号72)、GAPDH:5'-TGGTATCGTGGAAGGACTC-3'(配列番号73)および5'-AGTAGAGGCAGGGATGATG-3'(配列番号74)、Sox11 (過剰発現実験):5'-GGTGGATAAGGATTTGGATTCG-3'(配列番号75)および5'-GCTCCGGCGTGCAGTAGT-3'(配列番号76)、Eg5:5'-GTTTGGCCATACGCAAAGAT-3'(配列番号77)および5'-GAGGATTGGCTGACAAGAGC-3'(配列番号78)。RT-qPCRは、内在性対照としてのGAPDHと一緒に以前記載された9 2段階増幅および溶融曲線プログラム(Bio-Rad)を使用して3通りに行われた。同様に、過剰発現実験、非改変細胞系統および脱メチル化アッセイでは、製造業者のプロトコールに従って、細胞の溶解とcDNA合成のためにFast SYBR Green Cells-to-CTキット(Applied Biosystems)が使用された。手短に言えば、0.1〜1×105細胞がPBS中で洗浄され、デオキシリボヌクレアーゼを用いて溶解され処理された。ライセートは逆転写され、cDNAはSox11とGAPDHのどちらかに特異的なプライマーを用いて3つの技術的複製物に増幅された。q-PCR条件は以下の通りであり: 95℃で20秒間酵素活性化、95℃で3秒間PCRサイクル変性および60℃で30秒間アニーリング/伸長が7500リアルタイムqPCRシステム(Applied Biosystems)上で行われた。すべての試料は3通りに実行された。非改変細胞系統では、逆転写において、ゲノムSOX11およびGAPDHのバックグラウンド増幅について調べるために、対照試料は、ライセートは含有するが逆転写酵素(RT)は含有しないで実行された。GAPDH(+RT)およびGAPDH(-RT)についての△CT>4はすべての非改変細胞系統で実現された。同様に、SOX11(+RT)およびSOX11(-RT)についての△CTは、SOX11が非改変細胞系統において発現されるのかどうかを判定するために定量的対照として使用された。△CT(SOX11+RT、SOX11-RT)<|2|の試料はすべて陰性と見なされ、それらの試料についてRQは0.01に設定された。最後に、RQは、各細胞系統をGRANTA-519と比較して2‐(△△CT(SOX11-GAPDH))として計算される。qPCRデータに関するエラーバーは、95%の信頼水準の標準誤差(SE)を使用して計算された。
【0172】
タンパク質精製および定量化
ヌクレオフェクション72時間後に、0.5〜2×106細胞が収穫され、洗浄され200μlの溶解緩衝液(PBS中1% NP40/Protease Inhibitorカクテル(Roche、Basel、Switzerland))に入れ氷上で30分間インキュベートされた。遠心分離(4℃で30分間、16,000×g)を使用して細胞残渣を取り除いた。タンパク質濃度は、標準としてのBSA(0.08〜0.4mg/ml)を用いてBCA Kit for Protein Determination (Sigma)を使用して決定された。前記試料はBCA作業試薬と混合され、37℃で30分間インキュベートされ、562nmで吸光度が測定された。ウェスタンブロット解析のためのタンパク質ライセートは、上記の通りに0.5〜1×106細胞から調製された。
【0173】
Sox11ノックダウンおよび差次的発現のウェスタンブロット解析
19のリンパ腫細胞系統および15の切除検体におけるタンパク質ライセート、ノックダウン実験では3または7μg、過剰発現実験では3.5μg、野生型発現では32μgが、130Vで約45分間還元条件下でNuPAGE 10%Bis-Trisゲル(Invitrogen)上に流された。分離されたタンパク質は30分間(15V)PVDF膜、Amersham Hybond-P (GE Healthcare、Uppsala、Sweden)上にブロットされ、5%ミルクPBS中で一晩ブロックされた。Sox11タンパク質発現は、以前記載された通りに1,19、Sox11C-term(図2〜5)またはSox11N-term(図6)を使用して確認された。一次抗体Eg5(Becton Dickinson、NJ、USA)またはGAPDH(Abcam)は負荷対照として使用された。HRP標識ブタ抗ウサギ抗体またはウサギ抗マウス抗体(DAKO)は二次抗体として使用され、検出は製造業者のプロトコールに従って、SuperSignal West Femto Max Sensitivity Substrate (Pierce)を用いて行われた。ブロットは、Kodak X-OMAT 1000 processor (Kodak Nordic AB、Upplands Vasby、Sweden)においてECL Hyperfilm (GE Healthcare)上でSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate (Nordic Biolabs、Taby、Sweden)を使用して現像された。
【0174】
Sox11含量および5-Aza-CdRの変更によるB細胞リンパ腫細胞系統における増殖の評価
すべての増殖アッセイは、以前記載された通りに20、メチル-3H-チミジン(MTT)組込みを使用して定量された。試料ごとに50000細胞が3通りに蒔かれた。すべての増殖結果では、±1標準偏差(SD)が示されている。
【0175】
結果
MCLと非MCL細胞系統間の対立遺伝子使用の違い
遺伝子の異常発現は、mRNAのコード配列と3'-UTRの両方における変異を含む様々な原因を有しうる21。我々は、Sox11陽性と陰性組織および細胞系統を比較して、コード鎖でも非コード鎖でも、Sox11遺伝子配列の潜在的差異の調査に着手した。
【0176】
20の異なるB細胞リンパ腫細胞系統のシーケンシングを通して、Sox11において2つの連結した反復遺伝子多型が同定された(Table 2(表2)参照)。これら2つのSNPは非翻訳3'領域の5732bp位と7388bp位に位置しており、それぞれ定義されたSNP RS13419910とRS4371338に対応していた(Table 5(表5)参照)。これら2つのSNPを標的にするTaqmanアッセイ(C_32195818_20とC_27292007_10)は、4つの解析された細胞系統についての直接シーケンシングと同じ結果を出した。続いてこれらTaqmanアッセイを使用して、原発性扁桃腺、FLおよびMCL試料をスクリーニングした。一般に、C_27292007_10のほうがC_32195818_20よりも明確な予想を与えた。シーケンシングを使用して以前見られたように、前記2つのSNPは連結しており、解析されたすべての試料で一致する結果を出した(Table 2(表2)参照)。これら2つの遺伝子多型を解析すると、MCLと非MCL細胞系統を比較して対立遺伝子の使用には差異があるが、統計的有意性は弱いことが示された(ピアソンの二乗検定、p=0.1921)。非MCL細胞系統の分布は白人について報告された正規分布と一致していた(45%、45%、10%、(www.ncbi.nlm.nih.goc/SNP、dbSNP cluster id))。一次試料のわずかな材料のその後の解析では、FLとMCL腫瘍を比較して差異は示されなかった(図7)。
【0177】
Sox11プロモーター領域のメチル化状態はリンパ腫細胞系統におけるタンパク質発現に相関している
悪性リンパ腫組織および細胞系統におけるSox11発現の調節をさらに評価するために、Sox11発現の、プロモーターメチル化解析により評価される後成的調節が調べられた。
【0178】
Sox11の転写開始部位の上流2000bp領域の解析により、4つのCpGアイランドが同定された(図1)。そのようなアイランドのDNA高度メチル化は腫瘍進行において一般的事象であり、対応遺伝子のサイレンシングをもたらす28。8つのMCL、3つのDLBCL、4つのFL、3つのBLおよび1つの急性単球性白血病(MONO-L)(Table 2(表2))を含む、異なるB細胞悪性腫瘍に由来する19の細胞系統におけるSox11プロモーターのメチル化状態は亜硫酸水素シーケンシングを使用して判定された。
【0179】
亜硫酸水素シーケンシングはSox11転写開始部位に隣接し、28の独特のCpG部位に及ぶCpGアイランド上で実施された(図1)。メチル化と非メチル化亜硫酸水素ナトリウム変換DNAの両方を増幅する1組のプライマーが使用された。亜硫酸水素変換およびシーケンシングの質を評価するために、BiQアナライザーソフトウェアにより2つの異なる質測定が用いられた。本研究に含まれるすべての単位複製配列が、(i)非メチル化非CpG C:s対T:sでは95%を超える亜硫酸水素変換率、および(ii)元のゲノム配列と比べて90%を超える配列類似性を有していた。前記単位複製配列は直接塩基配列決定されて、細胞集団におけるメチル化の程度の平均を出し、mRNAおよびタンパク質レベルに関するSox11発現は、対応する細胞系統のウェスタンブロット解析に関するのと同様に、以前の遺伝子チップデータを通じて確認された。
【0180】
Sox11プロモーターメチル化の顕著な差異は、MCLと非MCLリンパ腫細胞系統間で検出された(図2)。前記結果は、前記細胞系統のうちの7つについてTOPO-TAクローニングを用いて個々の対立遺伝子で確認された(Table 1(表1))。非MCL細胞系統の解析により、すべての場合(11/11)に高レベルのSOX11プロモーターメチル化が明らかにされ、SOX11 mRNAとタンパク質発現の両方の欠如に一致していた(図2)。これとは対照的に、大多数(7/8)のMCL由来細胞系統ではSOX11プロモーターメチル化はなく、SOX11 mRNAおよびタンパク質発現は前記細胞系統のうちの6つ(GRANTA-519、HBL-2、JEKO-1、REC-1、SP53およびZ138)で明白であった(図2)。UPN-2は部分的にメチル化されておりSOX11発現を欠いている。JVM-2は、SOX11 mRNAおよびタンパク質を欠く唯一のMCL細胞系統であったが、そのプロモーターは調べた28のCpGのどれもメチル化されていないが、Sox11タンパク質もmRNAも発現していなかった。非MCL細胞系統においてSox11プロモーターが全体的ゲノムメチル化の非特異的増加を通じてメチル化されていた可能性を排除するために、包括的DNAメチル化を定量するためのELISAベースのアッセイが実施された。これらの包括的メチル化解析は、異なる供給業者製の試薬を使用して繰返し実施され、すべてが高標準偏差のデータを生み出した。しかし、特定の腫瘍実体の異なる細胞系統間の変動は腫瘍実体間の差よりも大きく、したがって、我々は、Sox11のメチル化は細胞系統の全体的メチル化状態と関係付けることはできないと結論付けた(図8参照)。その結果、Sox11プロモーター領域は、非MCLリンパ腫細胞系統において特にメチル化されている。
【0181】
プロモーターメチル化解析はこのように、Sox11発現がin vitroでは後成的にサイレンシングされることが可能であることを示唆している。したがって、我々は、Sox11発現が、Sox11陰性細胞系統の包括的脱メチル化を通して再活性化することが可能であるかどうかを調べることに興味を持った。したがって、2つのSOX11陰性B細胞リンパ腫細胞系統(THP-1およびRAJI)は、脱メチル化剤5-Aza-CdRを単独でまたは、ヒストン脱アセチル化酵素が転写的に活性なヒストン中のアセチル基を取り除くのを妨げるTsAと組み合わせて用いて処理された22。5-Aza-CdRは細胞系統の増殖に強い影響を及ぼし、処理された細胞系統の増殖速度は未処理の対照と比べると50%超減少した(図3)。しかし、処理された細胞から抽出された亜硫酸水素変換DNAのメチル化解析により、Sox11プロモーターメチル化は、潜在的に増殖が不十分であることに起因してこれらの薬剤の影響を受けないことが明らかにされ(データは示されていない)、その結果、対照として対応する未処理の細胞系統とSox11陽性GRANTA-519細胞系統を使用するqPCRを用いて決定した場合、Sox11発現は誘導されなかった。これらの実験は2度繰り返され、同じ結果を得た。
【0182】
悪性および非悪性臨床検体におけるSox11タンパク質のレベルはプロモーターメチル化状態との相関を示している
非悪性B細胞(扁桃腺、n=5)、原発性MCL(n=4)、FL(n=5)および単一症例のDLBCLにおけるメチル化状態を評価するために、未処理の臨床検体が収集された(Table 7(表7)参照)。大半の試料は、CD3枯渇またはCD19被膜ビーズ上の陽性選択のどちらかを使用して、精製された(Table 7(表7)参照)。扁桃腺4および5のフローサイトメトリー解析により、95%超のCD19陽性細胞を有する高度に精製されたB細胞集団が示され、MCL3および4はそれぞれ80%と96%の間の純度を示し、CD3+集団は両方の場合で2〜3%を構成するのみであった(Table 7(表7))。したがって、解析された試料がB細胞を優勢に構成するが、純粋なB細胞集団内の腫瘍細胞の頻度は、実体間で異なる。
【0183】
全体として、正常なB細胞から単離されたDNAはSox11プロモーター領域でメチル化されていなかった(図4A)。試料1および5は散発性のメチル化を示し、いくつかの完全にメチル化された対立遺伝子が扁桃腺2、3および4では検出された。にもかかわらず、プロモーターのメチル化状態とは無関係に、正常B細胞試料ではSox11タンパク質を検出することはできなかった(図4A)。B細胞リンパ腫のin vitroモデルでのデータと一致して、Sox11プロモーター領域は、試験材料のタンパク質解析(図4B下パネル)と一致して原発性MCL(図4B)でもメチル化されていない。さらに、おそらく非悪性B細胞による汚染のせいで対立遺伝子においてメチル化されているのが50%未満であるFL1は別として、広範なDNAメチル化が1つのDLBCLおよび大半のFLにおいて見られた(図4C)。予想通りに、試験された非MCLサブタイプでSox11タンパク質に対して陽性であるものはなかった(図4C)。その結果、FLおよびDLBCL試料のメチル化状態と比べて正常扁桃腺およびMCLにおけるメチル化の欠如は、解析されたすべてのSox11陰性B細胞リンパ腫における過剰メチル化に起因する特定のSox11サイレンシングを指している。
【0184】
MCL細胞系統におけるSox11ノックダウンは細胞増殖の増加を伴う
Sox11が全または無再発生存の改善と相関されてきた以前の研究では1, 7、Sox11が腫瘍細胞増殖を調節する可能性があることが示されている。したがって、このことをさらに調べるために、我々はMCLのよく特徴付けられたin vitroモデル(GRANTA-519およびREC-1)の他にも対照としてSox11陰性FL細胞系統、RLを使用して、細胞増殖に対するSox11の機能的効果を評価した。ヌクレオフェクションおよび特定のsiRNAを使用したSox11発現の一過性サイレンシング(Table 3(表3)参照)は、mRNA(図5A)とタンパク質レベル(図5B)の両方で著しい減少を媒介し、すでに24時間後には増殖は50%超と著しく増加した(図5C)。濾胞性リンパ腫細胞系統は全くSox11を発現せず、その結果、増殖の変化は検出されなかった(データは示されていない)。mRNA発現に対する効果は、GRANTA-519ではすでに24時間目に、REC-1では48時間目に最大減少に達し(図5A)、それに続くタンパク質レベルの減少は、GRANTA-519では72時間目に、REC-1では48時間目にもっとも明白になった(図5B)。細胞増殖に対する機能的効果は、両方のMCL細胞系統で48時間目に50%超の増加を示し(図5C)、Sox11の増殖調節役割が確証された。
【0185】
Sox11陰性細胞系統におけるSox11過剰発現は増殖を抑制する
Sox11ノックダウンに続いて見られる増殖の増加は、間接的効果、たとえば、Sox11がシグナル伝達経路における制限要因であることに起因する可能性があるので、増殖に対するSox11の直接的効果を陽性と陰性細胞系統の両方においてSox11の過剰発現を使用して調べた(Table 2(表2)参照)。CMVプロモーターの制御下でSox11のコード配列を両方含有する適切なプラスミドベクター(図11参照)をヌクレオフェクションを通じて導入した。GFPを含有するベクターは対照として使用された。解析されたすべての細胞系統、元来Sox11に対して陰性であった細胞系統(SC-1、JVM-2)でも陽性であった細胞系統(BJAB、JEKO-1、GRANTA-519およびZ138)でも、24時間目には様々な程度のmRNA過剰発現が明白であった(図6A)。注目すべきことに、元来Sox11陰性細胞系統のうちの一部は、野生型レベルの過剰発現の数千倍のSox11 mRNAの過剰発現を示した。mRNAとタンパク質レベル間に直接的相関を見ることはできず、実際、BJABはタンパク質レベルのもっとも強い増加を示した(図6C)が、mRNAの増加は比較的低い方にあった(それでも100倍の過剰発現)。逆に、JVM-2はタンパク質レベルの弱い増加を示しただけであったが、mRNAレベルは3000倍増加した。すべての細胞系統がSox11タンパク質の変わりやすい過剰発現を示した(図6C)が、低い量のタンパク質が生み出すWBデータ品質は、Z138およびJEKO-1では不十分であった(データは示されていない)。しかし、24時間目と48時間目で増殖を測定すると、すべての細胞系統がSox11過剰発現のせいで著しく遅くなっていることが明らかであり、24時間目に増殖の減少が見られたBJAB以外のすべての細胞系統では48時間目で非常に明白な効果があった(図6B)。増殖に対するもっとも強い効果はGRANTA-519、Z138およびJVM-2で見られた(図6B)。したがって、Sox11は、その元来のSox11状態とは無関係に解析されたすべての細胞系統において増殖を直接調節する。Sox11の過剰発現は一過性であったために、6日目には過剰発現も機能的効果も見られなかった。実際、GFP対照ベクターでトランスフェクトされた細胞とは対照的に、6日間の抗体を用いた選択のせいでSox11発現を強制された細胞は死滅し(データは示されていない)、Sox11はより遅い増殖をもたらすだけではなく、細胞死の誘導も可能にすることが示された。
【0186】
考察
B細胞リンパ腫のin vitroモデルの配列解析を通じて、他のB細胞リンパ腫細胞系統と比べて、MCL細胞系統において大きな比率を示すSox11の3'UTRにおいて我々は2つのSNPを同定したが、その差異は統計的には弱かった。3'UTRにおける遺伝子多型も転写レベルに影響を与えうることが明らかにされ21、これがMCLにおけるSox11の異常発現に対するいくつかの説明のうちの1つでありうる。
【0187】
さらに一般的には、細胞は、メチル基がメチルトランスフェラーゼによりCpG-シトシンに付加されているプロモーター領域におけるCpGアイランドのDNAメチル化などの後成的機序によりある種の遺伝子の発現を調節しうる(DNMT1、DNMT3aおよびDNMT3b)。これらの部位はゲノム中に均等に分配されてはおらず、多くの遺伝子の5'プロモーター領域に位置しているCpGアイランドと呼ばれるCpGが密な領域で見出される23, 24。大半の細胞では、これらのアイランドは通常、低メチル化されているが25、組織特異的な形で26メチル化されて標的遺伝子を特異的に抑圧する27ことが可能である。様々な遺伝子、もっとも多くの場合腫瘍抑制遺伝子のメチル化媒介サイレンシングは、多くの癌においてよく研究されている現象であり28、ますます多くの高度メチル化された遺伝子がリンパ腫において報告されている29〜36。これらの遺伝子は、細胞周期制御29、サイトカインシグナル伝達33、DNA修復およびアポトーシス34などの様々な細胞機能に関与している。
【0188】
Sox11プロモーターの解析によりCpGアイランドの存在が確認され、亜硫酸水素変換に続く個々のクローンの直接シーケンシングまたはシーケンシングにより、B細胞リンパ腫細胞系統でも原発性腫瘍でもプロモーターメチル化状態とSox11 mRNAおよびタンパク質レベルの間に強い相関が実証された。したがって、以前にも報告されたように、細胞系統からのデータは主要組織のメチル化状態をかなりよく表している37。しかし、我々の実験が例証し他者の実験により報告されているように、メチル化の規模は細胞系統では増加している。なぜならば、細胞系統は完全にメチル化されているかメチル化されていないかのいずれかであるからである38。まとめると、SOX11発現の非存在は原発性腫瘍試料中のメチル化されたプロモーターと緊密に結びついていることは明白である。
【0189】
生存との相関が報告されているので1, 2、異常Sox11発現の原因を調べることに加えて、Sox11発現と細胞増殖の関係も調査した。CNSの外側でのSox11の機能は未知のままである。CNS中のSox11の機能は、マウス神経芽細胞腫細胞系統においておよび培養マウス後根神経節ニューロンにおいてsiRNAを使用して以前評価されており、Sox11は、たとえば、アポトーシス促進性遺伝子BNIP3の発現を増加し、抗アポトーシス遺伝子TANKの発現を減少することにより細胞生存および細胞死に関与している他のいくつかの無関係なmRNAのレベルを調節することが示された41。これとは対照的に、SOX11は、誘導された神経細胞分化および発癌性plagl1の発現が無効にされることによりin vivoで神経膠腫生成を妨げることが最近明らかにされた46。最近の臨床研究では、生存に対するSOX11の正と負両方の相関が示されており、その結果追加の研究ではこのマーカーの臨床的意義を完全に探究することが欠けていた47, 2, 4。本研究では、一過性ノックダウン実験により、レベルが減少するとMCLのいくつかのin vitroモデルにおいて増殖の増加が誘導されるので、Sox11の腫瘍抑制機能が確証されている。Sox11がシグナル伝達カスケードにおいて制限要因であるのかどうか、またはSox11が場合により支配的調節特性を示すのかどうかをさらに解明するために、我々は、野生型Sox11発現の程度が変わりやすい様々なB細胞リンパ腫細胞系統においてSox11を過剰発現させた。過剰発現は、元来のSox11状態とは無関係に、すべての細胞系統において実現され、Sox11タンパク質の変わりやすい増加に反映されていた。注目すべきは、すべての細胞系統が機能的に影響を受けており、その増殖速度は著しく減少していた。Sox11レベルを増加することによる増殖に対する直接的効果により、Sox11が支配的調節因子であり、Sox11の機能的効果はMCLに特異的ではなく、他のB細胞リンパ腫における発現により誘導することが可能であることが確証されている。
【0190】
したがって、SOX11は、正常なマウスCNS41と比べてB細胞リンパ腫および神経膠腫46において正反対の効果を有するように思われ、この効果は異なる転写因子パートナーに結合するせいである可能性がある。以前の研究により、特定の細胞における遺伝子発現はPOU(pic、octおよびunc転写因子ファミリー)とSOXファミリーメンバー10の特定の組合せに影響されることが示唆されており、SOX442, 43および他のいくつかの転写因子44, 45について報告されているように、SOX11が細胞状況およびタンパク質パートナーに応じて腫瘍抑制因子としても癌遺伝子としても作用することができる可能性がないわけではない。
【0191】
要約すると、Sox11の発現は特定のプロモーターメチル化を通して調節されることを我々ははじめて明らかにした。さらに、Sox11が腫瘍抑制様機能を有しており、腫瘍細胞増殖の支配的調節因子であることを実証している。転写因子SOX11の発現は造血器悪性腫瘍における特定のプロモーターメチル化と逆相関しており、SOX11は腫瘍抑制様機能を有することを我々ははじめて明らかにした。したがって、実験と以前の臨床観察結果の両方に基づいて、これによりSOX11がリンパ腫腫瘍細胞増殖の支配的調節因子として作用することが示されている。
【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
【表4A】

【0195】
【表4B】

【0196】
【表5】

【0197】
【表6】

【0198】
【表7】

(参考文献)
【0199】
(実施例B)
本研究では、リンパ腫を調査して、マントル細胞リンパ腫関連Sox11転写因子の発現の範囲およびサイクリンD1とのその関係を決定した。172の検体がSox11 NおよびC末端について免疫染色された。CCND1はIHCおよびqRT-PCRにより検出され、必要な場合にはt(11;14)に対するin situハイブリダイゼーションが適用された。
【0200】
核Sox11は、大半のBおよびT-リンパ芽球性白血病/リンパ腫、小児期バーキットリンパ腫(BL)の半数において強力に発現され、一部のヘアリー細胞白血病においては弱く発現されるだけであった。中間型BL/DLBCL、骨髄腫、ホジキンおよび成熟T細胞とNK/T細胞リンパ腫の場合すべてと同じように、慢性リンパ性白血病/リンパ腫、周辺帯およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫はSox11に陰性であった。
【0201】
核Sox11発現はCCND1から独立しておりリンパ腫瘍におけるトランスロケーションに起因する可能性はない。マントル細胞リンパ腫に加えて、Sox11はリンパ芽球性悪性腫瘍およびBLにおいて強力に発現されている。
【0202】
序文
Sox11転写因子は、通常は発生中の中枢神経系で発現されるが、マントル細胞リンパ腫(MCL)において異常に転写され発現されている(1)(2)(3)。一般MCLシミュレーターは核Sox11を発現しないが、サイクリンD1(CCND1)とのその関係に関しては疑問が残っている。我々は、Sox11について、上昇したCCND1(5〜7)により特徴付けられる、形質細胞腫/骨髄腫(4)およびヘアリー細胞白血病(HCL)を含むBおよびT細胞リンパ腫の大半の範疇を調査した。
【0203】
設計および方法
現行のWHO臨床、組織学および免疫表現型基準(8)を使用して、補助的フローサイトメトリーおよび分子研究を用いてまたはなしで、以前未報告の172の症例(年齢幅数ヶ月から89歳;M:F=1.7:1)をホルマリン固定パラフィン切片上で診断した。すべての生物学的材料は、我々の施設で確立された研究倫理原則に従って使用された。
【0204】
B細胞リンパ腫(BCL)、T細胞リンパ腫(TCL)、NK/T細胞リンパ腫およびホジキンリンパ腫は成熟(末梢性)リンパ腫を含み、B/Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫は未熟範疇を含んでいた(Table 8(表8))。CD5+BCLは認識されたリンパ腫実体内にサブグループを含む。バーキットリンパ腫は、典型的な星空および核形態学、主に腹腔内起源、Ki-67インデックス95%超および一貫したCD10+とBCL2-染色により区別された(8)。中間型バーキットリンパ腫/びらん性大細胞型B細胞リンパ腫(DL/DLBCL)は類似の増殖インデックスおよび星空パターンを有していたが、大部分が結節状で、BLと一致しない核、細胞および免疫表現型特徴(すべての場合で強いBCL2+またはCD10-)を示した。
【0205】
免疫組織学
切片は、Tris/EDTA(Sox11緩衝液、pH9、8+7分間)中で抗原回復のためにマイクロ波処理され、次に、下で詳細に述べるように、Sox11抗体および必要に応じてウサギモノクローナル抗CCND1抗体(1:70、NeoMarker、USA)を使用して自動免疫染色機で染色された。シグナルはEnvision(Dako)および3,3'-ジアミノベンジジンを使用して検出された。
【0206】
Sox11抗体の特徴付け
2つの一次ウサギ抗ヒトSox11抗体はHPRプロジェクトにより産生された(9、10)。最初のSox11N-termはSox11のN末端を標的にし、これはMCLにおいて首尾よく使用された(2)。前記免疫原はSox4とのある程度の相同性を示すが、SOX11N-termは、Sox4を発現することが知られている扁桃腺切片において核反応性を全く示さない。
【0207】
Sox11C-termは免疫原
EDDDDDDDDDELQLQIKQEPDEEDEEPPHQQLLQPPGQQPSQLLRRYNVAKVPASPTLSSSAESPEGASLYDEVRAGATSGAGGGSRLYYSFKNITKQHPPPLAQPALSPASSRSVSTSSS
[配列番号79]
すなわちSox11に特異的な121アミノ酸カルボキシ末端ペプチドに対して産生された。
【0208】
両抗体の特異性は、MCL細胞系統、SP53およびGranta-519において、還元SDS-PAGE(NuPAGE 10% Bis-Trisゲル、Invitrogen、CA、USA)により分離された抽出されたタンパク質のウェスタンブロットを使用して検証された。各ウェルは約6×105細胞由来のライセートを負荷され、ゲルは30分間(15V)PVDF膜(Amersham Hybond-P、GE Healthcare、Sweden)上にブロットされ、5%ミルク/PBS中で一晩ブロックされた。Sox11N-termまたはSox11C-termは1:500で30分間適用された。PBSでの洗浄後、HRP標識ヤギ抗ウサギ抗体は、1:10,000希釈されて、適用された。バンドは製造業者のプロトコールに従ってSuperSignal West Femto Max Sensitivity Substrate (Pierce)を用いて検出された。
【0209】
siRNAノックダウン研究
洗浄されたGranta-519細胞は、5×106細胞/試料で100μlヌクレオフェクター溶液(Reactionlab、Sweden)中に懸濁された。次に、各キュベットは50pmolのsiRNA((Ambion、Austin、USA)アンチセンスSox11.1からなる[プール] UAACGUACCAACAUACUUGuu [配列番号8]、UGCGUCACGACAUCUUAUCuu [配列番号9]、UCUUCGAGGAGCCUAGAGGuu [配列番号10]およびAGACCGACAAGCUUCAAACuu [配列番号11])(または相補的センスoligoRNAを使用する対照)を負荷され、トランスフェクトされ(Amaxa Biosystems、Germany)、その後37℃で3時間R-10培地においてインキュベートされ、0.50〜0.75×106細胞/mlの密度で蒔かれ、2〜3日増殖された。
【0210】
定量的リアルタイムPCR
手短に言えば、逆転写されたRNA鋳型を蛍光発生5'ヌクレアーゼアッセイにおいて使用して、Rotorgene cycler (Corbett Research)上でCT値を決定した。CCND1および参照遺伝子TBPのためのプライマーおよびプローブならびにサイクリング条件は公表されている(11)。各試料は、陽性対照としてGranta-519 cDNA、1つの陰性水対照およびDNase I処理RNAを使用する2つの鋳型なし対照を用いて3通りに実行された。遺伝子発現は、適切な式を使用する良性結節キャリブレーターと比べて正規化されたCCND1 CT値の倍増を決定するために計算された(12)。
【0211】
間期FISH/CISH
0.5%ペプシンで消化された厚い切片から全核を単離した。濾過された核はガラススライド上に広げられ、Carnoy固定液で固定された後、0.1% Triton-100中でプレハイブリダイズされ、0.3mg/mLプロナーゼで消化され、グリシン/PBSですすがれ、エタノール中で脱水され、風乾された。二重色二重融合トランスロケーションプローブ(Vysis、USA)を以前報告された通りにハイブリダイズした(2)。黄色融合シグナルはt(11;14)の証拠である。良性結節および濾胞性リンパ腫由来の350の総核における融合総数に基づいているカットオフ値6を使用して、検体ごとに、50の核が融合シグナルの数についてスコアー化された。
【0212】
CISH、すなわち発色性in situハイブリダイゼーションは、製造業者のプロトコールに従って、CCND1遺伝子座に隣接する配列を標的にするTexas RedプローブとFITC標識プローブの混合物(Dako DuoCISH(商標))を使用して実施された。重なり合っている青と赤シグナルは共局在を示しており、分裂したシグナルはCCND1遺伝子座の切断を示していた。いくつかのMCLが陽性対照として使用された。
【0213】
結果
両抗体がウェスタンブロット上にSox11に対応する約60kDaバンドを生じ(図12A); Sox11ノックダウン後前記バンドはSox11C-termを使用して検出できなかった(図12B)。
【0214】
最初の報告中の19のMCLはSox11C-termを用いて再解析され、前記2つの抗体間の結果は、染色強度に時折差異があることは別として高度に調和していた。1つの症例はどちらの抗体を用いても陰性のままであり、1つの症例は陽性に変換し(図12C)、2つの症例は免疫陰性になった。細胞質染色(2)は両抗体とも核強度に相互に関係しているように思われ、スコアー化されなかった。
【0215】
23の新しいMCL検体のうち、19(83%)が核Sox11を発現した。前記23のうち5つは分子技法を用いて調べられ、CCND1発現の15〜99倍増およびFISH融合シグナルを有する核が14から72%を示し、t(11;14)を確証した。CCND1染色強度、CCND1転写レベルとSox11染色の強度間には一貫した関係は明白ではなかった。たとえば、CCND1 mRNAの22と34倍増を示す2つのMCLは核Sox11タンパク質を欠いていた。
【0216】
Sox11解析も分子解析も、CD5+シミュレーターをMCLから区別することができた(Table8(表8))。MZL、CD23-CLL/SLL、CD5+DLBCLおよびBCL NOSを含む29の非MCLはMCLからのその区別に問題を含んでいた。これらのうちの12はさらに解析され、FISHによりすべてがt(11;14)について陰性であるおよび/または正常なCCND1転写レベルを有していた。12はすべて核Sox11についても免疫陰性であり、分子技法を用いて試験された6つのCCND1+MCLすべてがSox11を発現した。予想通り、他の典型的なCLL/SLL、FL、MZLおよびDLBCLも核内においてSox11を欠いていた。NK/T細胞リンパ腫を含むホジキンリンパ腫およびT細胞リンパ腫サブタイプは同様に陰性であった。以前報告されたように(2)、全範疇のうち核Sox11を欠く大半の腫瘍が変動的に強い細胞質シグナルを発した。
【0217】
意外なことに、表現型(B/T-ALL/LBL)とは無関係に、小児期バーキットリンパ腫(BL)と急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫の両方で強い核Sox11染色が見られた。14のBLのうち7つが陽性であり、これはSox11C-term染色を用いて再確認された(図12D)。重要なことは、BLとDLBCL(Table 1(表1)脚注参照)の中間にある6つの高悪性度成人B細胞リンパ腫のうちSox11N-term抗体に陽性のものはなかった(図12E)。さらに印象的なのは、10のT-LBL(図2F)すべてと9つの染色B-ALL/LBLのうちの8つ(図12G)はSox11N-termに陽性であった。Sox11C-termは3つのB-LBLにおいて前記タンパク質を確認したが、両染色B-ALLでは陰性であり、5つの試験されたT-LBLのうちの4つもSox11C-termでは陽性であった。2つのT-LBLは、その他の点では典型的な形態上のおよび免疫表現型の特徴にもかかわらず、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)では全くIHCシグナルを発しないか弱いIHCシグナルを発したという事実は注目すべきであった。Sox11N-termと比べたSox11C-termの感度の明らかにわずかな減少は、利用できるSox11C-termが限られていたためにそれ以上の評価はできなかった。
【0218】
HCLは典型的に、前記タンパク質に対する免疫染色が弱い中程度に上昇したCCND1転写を示す。我々の以前の研究では、Sox11転写の上方調節は示されなかったが、それにもかかわらず、12(DBA44*/Annexin-1*)の症例のうちの6つにおいて非常に弱いSox11N-term免疫染色が見られ(Table 9(表9))、これは一般にCCND1シグナルの強度に匹敵し、MCLにおいて顕著な染色の共分散の欠如とは対照的であった。さらに、試験された3つのHCL症例のうちの2つにおいて、Sox11タンパク質の存在はSox11C-term抗体を用いて確認されたが、1つの検体(Table 9(表9)における症例9)のみが中程度の強さのシグナルを発した(図12HからI)。
【0219】
CCND1転写が頻繁に中程度に上方調節される第三のサブタイプは7つのCCND1+骨髄腫(5)/形質細胞腫(2)および2症例のCCND1-骨髄腫により表される(Table 8(表8))。CCND1状態とは無関係に、核Sox11シグナルは一貫して存在しなかった。
【0220】
考察
転写因子のSoxファミリーは動物に広く分布しており、Soxタンパク質は、マウス胚幹細胞の分化(13)、神経発生および軟骨形成(14)などの基本的発生過程に関与している。Sox11は、発生中のヒト神経系(15)、髄芽腫(16)および神経膠腫(17)において発現されるが、Bリンパ球個体発生においては明確な役割がない。リンパ腫瘍におけるSox11の強い核発現は、2つの成熟B細胞腫瘍、すなわちマントル細胞リンパ腫および真性バーキットリンパ腫、ならびに未成熟リンパ芽球性腫瘍を含む3つの異なる範疇に限定されるように思われることは興味をそそられる。
【0221】
興味深いことに、臨床的に、形態学的におよび遺伝的に典型的なBLにおける頻繁な核Sox11発現は、成人中間型BL/DLBCLにおける発現とは対応していなかった。
【0222】
我々は、将来を見越して研究されたMCLの大多数において核Sox11発現を再確認した。t(11;14)(q13;q32)のあるまたはないMCLのまれな臨床的におよび形態学的に典型的な症例は、感受性ウサギモノクローナル抗体(2、18)を使用して、CCND1について染色することができない可能性がある。この研究により、補助的分子技法がCCND1-MCLを除外するのに利用可能ではない可能性のある、一般的周辺帯B細胞リンパ腫サブタイプの問題のあるCD5+バリアントを含む、一般的MCLシミュレーターの核における一貫したSox11免疫陰性が確証されている。
【0223】
Sox11調節不全の機序は現在では未知であるが、CCND1+骨髄腫細胞における我々の陰性核Sox11免疫染色は、前記タンパク質がCCND1に依存していないことを示している。骨髄腫では、上方調節されたCCND1は症例の半数において多染色体性第11染色体のせいであり、6のうちの約1つの症例において、上方調節されたCCND1は、MCLの場合と同じトランスロケーションt(11;14)(q13;q32)のせいである(4)。さらに、強いSox11特異的シグナルは、t(11;14)は欠いているが転写因子に関連するトランスロケーションを含む多種多様な他のトランスロケーションを含有しうる腫瘍である、バーキットリンパ腫およびTとBリンパ芽球性腫瘍においては高頻度で生じた。これらの事実により、いかなる認識された構造的または数的染色体変化も上昇したSox11の直接原因である可能性はない。これとは対照的に、HCLは、前記検体の約半数において存在した核Sox11染色は一般に非常に弱く、その調節が変更された遺伝子量のせいでもt(11;14)のせいでもない弱いまたは陰性サイクリンD1の染色に匹敵している点で、上記腫瘍すべてとは著しく異なっていた(5)。成人リンパ芽球性リンパ腫がMCLのまれな形態学上の模倣物であることを考慮すると、リンパ芽球性白血病/リンパ腫におけるSox11の存在はMCLに対するこのマーカーの使用に重要な警告をもたらすことに注目されたい。
【0224】
結論として、リンパ腫における強い核Sox11発現はリンパ芽球性およびバーキットリンパ腫でさえも含むように拡張され、リンパ腫形成における前記タンパク質の役割が以前報告されたよりも広いことを示している。
【0225】
【表8A】

【0226】
【表8B】

【0227】
【表9】

【0228】
(実施例C)
序文
以前の生存データは、Sox11の増殖促進機能および抗増殖機能の両方を示しており1,2、大きな患者同齢集団と実験データの必要性を強調している。しかし、我々の最近のin vitroデータは、SOX11についての腫瘍抑制機能を示している。SOX11のノックダウンはマントル細胞リンパ腫細胞系統における増殖の増加を誘導する(使用されたMCL細胞系統の一覧表は実施例A参照)。したがって、我々は動物モデルを使用してSOX11サイレンシングのin vivo効果を実証した。
【0229】
材料および方法
Z138マントル細胞リンパ腫細胞においてSOX11をサイレンシングする
Z138細胞は、10%(v/v)ウシ胎児血清(Invitrogen Gibco、Carlsbad、CA、USA)および2mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を補充されたRPMI-1640(HyClone、Sout Logan、UT)培地(今後R10培地と呼ばれる)で培養された。shRNA-SOX11(5'-CAAGUAUGUUGGUACGUUAuuと3'-UAACGUACCAACAUACUUGuuを標的にする)およびスクランブル対照(5'-AGUACUGCUUACGAUACGGUUuu)は、BgI IIおよびHind III部位を使用してレトロウイルスベクターpRSMX-PG3に導入され;前記ベクターは感染マーカーとして緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を担持している。前記構築物を含有しているレトロウイルス粒子(RD114エンベロープを有する)は、Vektorenheten (Lund University)により作製された。wt Z138細胞は、RPMI-1640、2mM Lグルタミン、8μg/mlポリブレンにおいて多重感染4でウイルスを一晩感染させた。陰性対照として、wt Z138細胞は同じ方法で処理されたが、ウイルスの添加はなかった。細胞は、陰性対照細胞がすべて死滅するまで、5〜15μg/mlのピューロマイシン(InvivoGen、San Diego、USA)を用いて選択された。ウイルス感染ピューロマイシン耐性細胞は、フローサイトメトリーによりさらに解析され、すべてGFPについて陽性であった(100%)。ピューロマイシンを取り除いた後、Q-PCRおよびWBにより確認されるように、スクランブル対照と比べて、SOX11の安定なノックダウンはshRNA-SOX11感染細胞において実現された(データは示されていない)。Q-PCR実験では、SOX11遺伝子は、以下のプライマー:5'-CCCCACAAACCACTCAGACT-3'および5'-CCAGGACAGAACCACCTGAT-3'を使用して増幅された。ウェスタンブロットは、モノクローナル抗SOX11抗体(Atlas Antibodies、Stockholm、Sweden)を使用して実施された。
【0230】
動物飼育および注射
NOD-SCIDマウスはBarriaren、Lund University、Swedenで飼われ、すべての手順が地元の委員会(Lund and Malmo djuretiska namnd)から倫理的承認(Dnr 229/09)を得て実施された。500万または50万Z138細胞がマウスの尾部の静脈内に注射され、対照マウスはPBSを注射された。前記動物は毎日視覚的に検査され、週に2度体重測定された。異常な頻度の動き、体重減少または神経症状を含む腫瘍増殖の兆候を示した動物は屠殺された。残った動物はすべて、腫瘍細胞注射から8週間後には屠殺され、これが研究の終了点であった。
【0231】
結果
PBSを注射された動物は、腫瘍増殖の兆候なしで8週間モニターされた。サイレンシングされたSOX11またはスクランブル対照細胞を注射された動物は、(i)腫瘍増殖の兆候が現れた時点、または(ii)注射後8週間の終了時点で屠殺された。SOX11サイレンシングされた(SOX11low)由来の動物もスクランブル対照群(SOX11high)由来の動物も発病したが、SOX11をサイレンシングされたZ138細胞を注射された動物のほうが比較的短い期間の後に症状を見せたことを我々のデータは示しており、リンパ腫細胞の増殖の増加がSOX11ノックダウンにより観察された以前のin vitroデータと一致していた(実施例A参照)。
【0232】
考察
SOX11はMCLについての重要な診断抗原であることが最近明らかにされた4〜7。本研究では、マウスモデルを使用して、マントル細胞リンパ腫細胞における変更されたSOX11レベルの機能的効果を調べた。SOX11レベルが変更されたマントル細胞リンパ腫細胞系統Z138を使用して、SOX11lowを注射されたマウスでは、SOX11high腫瘍細胞を注射された対照マウスと比べて、得られたマントル細胞リンパ腫は腫瘍増殖に関連する症状/死亡までの時間が短いことを我々は明らかにすることができた。したがって、SOX11はマントル細胞リンパ腫における治療戦略のための重要な標的である。
(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医学において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤。
【請求項2】
癌の治療において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤。
【請求項3】
癌が、乳癌、胆管癌、中枢神経系(たとえば、脳)および他の神経細胞の癌、結腸癌、胃癌、生殖器癌、肺および気道の癌、皮膚癌、胆嚢癌、肝臓癌、上咽頭癌、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腺癌、骨癌(骨髄癌を含む)、脾臓癌、血管および消化管の癌からなる群から選択される、請求項3に記載の薬剤。
【請求項4】
癌が、リンパ腫または白血病である、請求項2または3に記載の薬剤。
【請求項5】
リンパ腫または白血病が、Table 1(表1)に収載されるリンパ腫および白血病の群から選択される、請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
リンパ腫または白血病が、B細胞リンパ腫である、請求項4または5に記載の薬剤。
【請求項7】
リンパ腫が、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)またはびらん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
リンパ腫がDLBCLである、請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
リンパ腫がMCLである、請求項7に記載の薬剤。
【請求項10】
リンパ腫がFLである、請求項7に記載の薬剤。
【請求項11】
癌が急性単球性白血病である、請求項3または4に記載の薬剤。
【請求項12】
癌が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項11に記載の薬剤。
【請求項13】
癌が上皮細胞の癌である、請求項3に記載の薬剤。
【請求項14】
癌が卵巣上皮癌(EOC)である、請求項13に記載の薬剤。
【請求項15】
癌細胞の増殖を抑制することができる、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項16】
薬剤に曝露されたことがない癌細胞の増殖に比べて、20%以上、たとえば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超の癌細胞の増殖を抑制することができる、請求項15に記載の薬剤。
【請求項17】
癌細胞死の速度を増加することができる、請求項1から16のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項18】
薬剤に曝露されたことがない癌細胞の細胞死速度に比べて、10%以上、たとえば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超の癌細胞死の速度を増加することができる、請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
Sox11の転写、翻訳、結合特性、生物活性および/もしくは安定性、ならびに/またはそれにより誘導されるシグナル伝達を増加する、請求項1から18のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項20】
Sox11の転写を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
Sox11プロモーター領域のメチル化を減少する、妨げるまたは抑制する、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
Sox11の翻訳を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項23】
Sox11の結合特性を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項24】
その結合パートナー、たとえば、Oct-3、Brn-1および/またはBrn-2へのSox11の結合を増加する、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
Sox11の生物活性を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項26】
Sox11の安定性を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項27】
Sox11 mRNAの安定性を増加する、請求項26に記載の薬剤。
【請求項28】
Sox11ポリペプチドの安定性を増加する、請求項26に記載の薬剤。
【請求項29】
Sox11媒介シグナル伝達を増加する、請求項19に記載の薬剤。
【請求項30】
配列番号1に従ったポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片、バリアント、融合物もしくは誘導体を含むまたはからなる、請求項1から29のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項31】
配列番号1に従ったポリペプチドを含むまたはからなる、請求項30に記載の薬剤。
【請求項32】
配列番号1に従ったポリペプチドの生物学的に活性な断片を含むまたはからなる、請求項30に記載の薬剤。
【請求項33】
断片が、配列番号1の少なくとも100の連続するアミノ酸、たとえば、配列番号1の少なくとも150、200、250、300、350、400または440の連続するアミノ酸を含むまたはからなる、請求項32に記載の薬剤。
【請求項34】
配列番号1に従ったポリペプチドまたはその断片の生物学的に活性なバリアントを含むまたはからなる、請求項33に記載の薬剤。
【請求項35】
バリアントが、配列番号1に従ったポリペプチドまたはその断片と少なくとも70%の配列同一性、たとえば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する、請求項34に記載の薬剤。
【請求項36】
配列番号1に従ったポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片、バリアント、融合体もしくは誘導体をコードする核酸分子を含むまたはからなる、請求項1から27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項37】
配列番号1に従ったポリペプチドをコードする核酸分子を含むまたはからなる、請求項36に記載の薬剤。
【請求項38】
核酸分子が、配列番号2に従ったヌクレオチド配列またはその断片、バリアント、融合物もしくは誘導体を含むまたはからなる、請求項36または37に記載の薬剤。
【請求項39】
核酸分子が、DNA、RNA、PNA、LNA、GNA、TNAまたはPMOを含むまたはからなる、請求項36から38のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項40】
核酸分子がcDNAまたはmRNAを含むまたはからなる、請求項36から39のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項41】
遺伝子治療ベクターを含むまたはからなる、請求項36から40のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項42】
遺伝子治療ベクターがプラスミドまたはウイルスである、請求項41に記載の薬剤。
【請求項43】
ウイルスが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)、レンチウイルス、泡沫状ウイルスベースのベクターおよびレオウイルスからなる群から選択される、請求項42に記載の薬剤。
【請求項44】
小分子またはそのプロドラッグを含むまたはからなる、請求項1から29のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項45】
リポプレックスまたはポリプレックスを含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項46】
癌細胞への薬剤のターゲティング送達のための部分を含む、請求項1から45のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項47】
癌細胞への薬剤のターゲティング送達のための部分が、抗体またはその抗原結合断片である、請求項46に記載の薬剤。
【請求項48】
抗体またはその抗原結合断片が、Fv断片、Fab様断片、単一可変ドメインおよびドメイン抗体からなる群から選択される、請求項47に記載の薬剤。
【請求項49】
抗体またはその抗原結合断片がヒト化されている、請求項47または48に記載の薬剤。
【請求項50】
請求項1から49のいずれか一項に記載の薬剤を患者に投与する工程を含む、患者において癌を治療する方法。
【請求項51】
癌が、乳癌、胆管癌、中枢神経系(たとえば、脳)および他の神経細胞の癌、結腸癌、胃癌、生殖器癌、肺および気道の癌、皮膚癌、胆嚢癌、肝臓癌、上咽頭癌、腎臓癌、前立腺癌、リンパ腺癌、骨癌(骨髄癌を含む)、脾臓癌、血管および消化管の癌からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
癌がリンパ腫または白血病である、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
リンパ腫または白血病がTable 1(表1)に収載されるリンパ腫および白血病の群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
リンパ腫または白血病がB細胞リンパ腫である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
リンパ腫が、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)またはびらん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項1から49のいずれか一項に記載の薬剤および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項57】
非経口投与に適している請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
製剤が癌細胞への薬剤の標的された送達をすることができる、請求項56または57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
明細書を参照して実質的に本明細書に記載されている、医学において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤。
【請求項60】
明細書を参照して実質的に本明細書に記載されている、癌の治療において使用するための、Sox11を活性化することができる薬剤。
【請求項61】
明細書を参照して実質的に本明細書に記載されている医薬組成物。

【図1】
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【図4C】
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【図6A】
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【図6C】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−530120(P2012−530120A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515556(P2012−515556)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001200
【国際公開番号】WO2010/146370
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(509267188)イミュノヴィア・アーベー (3)
【Fターム(参考)】