説明

薬剤の肝毒性の判定

本発明は、肝毒性のための種々のバイオマーカー及び該バイオマーカーを使用する種々の方法を提供する。本発明の範囲内のバイオマーカーのいくつかは、コレート、グリコケノデオキシコレート、グリココレート、タウリン、3−ヒドロキシ−2−エチルプロピオネート、4−イミダゾールアセテート、チラミン、アントラニレート、2’−デオキシシチジン、N−アセチルアスパルテート(NAA)、ベータ−ヒドロキシヘキサノエート、及びサルコシン(N−メチルグリシン)である。該バイオマーカーを使用する方法は、第1の肝細胞培養物を試験薬剤に曝露するステップ、及び第1の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカーのレベルを、該試験薬剤を含まない第2の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカーのレベルと比較するステップを含み、ここで、第2の肝細胞培養物におけるレベルと比較した第1の肝細胞培養物における1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルは、該試験薬剤が肝毒物であることを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体の内容が、参照により本明細書に組み込まれている、2009年2月6日に出願された米国特許仮出願第61/150,535号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に、対象において肝毒性のバイオマーカーを同定する方法及び利用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤への曝露に起因する肝毒性は、該薬剤への曝露後に早期且つ容易に予想可能である必要がある。肝臓は、体内に摂取される化学薬剤の代謝に中心的な役割を果たし、そのようなものとして、薬剤及び/又はその代謝産物の有毒な副作用の影響を受けやすい。この要素は、薬物発見及び開発活動のための重要な考慮すべき事柄である。900種を超える薬物が、肝臓の損傷を引き起こすことに関わりを有することが報告されている(Friedman,Scott E.;Grendell,James H.;McQuaid,Kenneth R.(2003年)、Current diagnosis & treatment in gastroenterology、New York:Lang Medical Books/McGraw−Hill、664〜679頁)。製薬会社は、新たな化学物質を、前臨床から臨床段階までの開発過程を通して肝臓への毒性作用について広範囲にわたって試験しているが、それでもなお、薬物は、肝毒性が後になって発見されることによって市場から排除され続けている。
【0004】
肝機能の利用可能な試験は、動的試験並びに必須及び専門の静的試験に分けることができる。動的試験は、時間の次元も考慮されるリアルタイムの肝機能を反映し、該試験では、試験物質のクリアランス又は生体物質(biochemical)の生成率が肝臓の実際の能力を反映する。使用の難しさのため、多くの動的試験は、広範囲に及ぶ臨床的又は実験室用途を見出していない。
【0005】
伝統的な静的試験は、より単純であるが、肝機能又は肝臓の損傷の間接的な尺度に過ぎず、単一の時点におけるバイオマーカーの測定を伴う。肝機能障害の必須の静的試験には、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(肝細胞傷害用)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)、アルカリホスファターゼ(AP)(胆汁うっ滞、肝浸潤用)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GT)(胆汁うっ滞、アルコール依存症用)、ビリルビン(抱合、排せつ機能、重篤性の評価のため)、コリンエステラーゼ、アルブミン、及びγ−グロブリン(慢性疾患の経過に続く慢性肝炎、肝硬変用)が含まれる。
【0006】
これらの従来の肝機能試験に関係するいくつかの制限が存在する。例えば、肝酵素及び凝固因子の試験結果は、血液成分の置換によって影響を受けることがある。アミノトランスフェラーゼの値の低下は、代謝機能の回復を伴う場合のみ安心してよい。アミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ及びビリルビンは、器官特異性を欠く。コリンエステラーゼの長い血漿内半減期によって、肝機能における迅速な変化の検出が可能にならない。最も重要なのは、従来の試験が、限定的な予後診断価値の試験でしかないことである。
【0007】
より専門的な静的試験には、排せつ機能及び門脈体静脈シャンティングを示す胆汁酸、減少した尿素合成のマーカーとしてのアンモニア、並びにアミノ末端基プロコラーゲンIII型ペプチド及び他のよく知られている試験などの線維性活性を反映するパラメーターが含まれる。Sherlockら、Assessment of liver function in Diseases of the Liver and Biliary System、第9版、Oxford:Blackwell Scientific Publications、17〜32頁、353頁(1993年)。さらなる診断基準には、体液性免疫応答を示す免疫グロブリン並びに自己免疫肝疾患及びウイルス性肝炎マーカーの評価のための自己抗体が含まれる。血清ヒアルロン酸は、慢性ウイルス肝炎における肝硬変の重篤性の非侵襲的指標及び抗ウイルス療法への反応の尺度として提案されている。アルコール性肝臓疾患において、血清ヒアルロン酸は、血行動態変化の評価に応用することができる。血清アルファ−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)は、移植片拒絶反応に応用される、肝細胞傷害を示す新しい静的試験である。しかし、これらの試験は、肝細胞又は他の細胞又は器官培養物を使用するインビトロアッセイに有用ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、薬剤が肝毒物であるかを判定する方法が提供される。この方法は、(a)試験薬剤の存在下で第1の肝細胞培養物をインキュベートするステップ、(b)該試験薬剤の非存在下で第2の肝細胞培養物をインキュベートするステップ、(c)第1及び第2の肝細胞培養物において表(単数又は複数)1、2、及び18にリストされたバイオマーカーの群から選択される1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(単数又は複数)を測定するステップ、並びに(d)第1の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(単数又は複数)を第2の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と比較するステップを含み、ここで、第2の肝細胞培養物中のレベル(単数又は複数)と比較した第1の肝細胞培養物中の1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)の差次的レベル(単数又は複数)は、該試験薬剤が肝毒物であることを示している。
【0009】
1つのさらなる実施形態において、試験薬剤を対象に投与するステップ、該対象から得られる生体試料中の表1、2、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び18にリストされたバイオマーカーから選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップ、及び該試験薬剤が肝毒物であるかを判定するために、試料(単数又は複数)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を、1種又は複数のバイオマーカーの肝毒性陽性参照レベル及び/又は肝毒性陰性参照レベルと比較するステップを含む、薬剤が肝毒物であるかを判定する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、肝毒性のバイオマーカーに関する。対象における薬剤に反応した肝毒性を検出するための方法、システム、及び組成物が提供される。対象における肝機能への薬剤の影響(即ち、肝毒性)を予想するための1種又は複数の(例えば、多分析物)バイオマーカーを同定及び利用する方法及びシステムも提供される。本発明をさらに詳しく記載する前に、最初に以下の用語が定義される。
【0011】
定義:
バイオマーカーの「参照レベル」は、特定の疾患状態、表現型、又はそれらの欠如、及び疾患状態、表現型、又はそれらの欠如の組合せを示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「陽性」参照レベルは、特定の疾患状態又は表現型を示すレベルを意味する。バイオマーカーの「陰性」参照レベルは、特定の疾患状態又は表現型の欠如を示すレベルを意味する。例えば、バイオマーカーの「肝毒性陽性参照レベル」は、対象における肝毒性の陽性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味し、バイオマーカーの「肝毒性陰性参照レベル」は、対象における肝毒性の陰性診断を示すバイオマーカーのレベルを意味する。バイオマーカーの「参照レベル」は、バイオマーカーの絶対的若しくは相対的量若しくは濃度、バイオマーカーの存在若しくは非存在、バイオマーカーの量若しくは濃度の範囲、バイオマーカーの最小及び/若しくは最大量若しくは濃度、バイオマーカーの平均量若しくは平均濃度、並びに/又はバイオマーカーの中央量又は中央濃度であってよく、さらに、バイオマーカーの組合せの「参照レベル」も、2種以上のバイオマーカーの互いの絶対的又は相対的量又は濃度の割合であってよい。特定の疾患状態、表現型、又はその欠如についてのバイオマーカーの適切な陽性及び陰性参照レベルは、1つ若しくは複数の適切な対象又は細胞系における所望のバイオマーカーのレベルを測定することによって判定することができ、このような参照レベルは、対象の特定の個体群に対して合わせることができる(例えば、参照レベルは、特定の年齢の対象からの試料中のバイオマーカーレベルと、特定の年齢群における特定の疾患状態、表現型、又はその欠如についての参照レベルとの間で、比較が行えるよう年齢をそろえることができる)。このような参照レベルは、生体試料におけるバイオマーカーのレベルを測定するために使用される特定の技術に合わせることもでき(例えば、LC−MS、GC−MSなど)、ここで、バイオマーカーのレベルは、使用される特定の技術に基づいて異なり得る。
【0012】
1種又は複数のバイオマーカーの「レベル」は、試料中のバイオマーカーの絶対的又は相対的量又は濃度を意味する。
【0013】
「試料」又は「生体試料」は、対象から分離された生体物質を意味する。生体試料は、所望のバイオマーカーの検出に適する任意の生体物質を含有することができ、対象由来の細胞物質及び/又は非細胞物質を含むことができる。上記試料は、例えば、血液、血漿、血清、尿、又は肝組織などの任意の好適な生体組織又は体液から分離することができる。
【0014】
本明細書に記載されたバイオマーカーは、メタボロームプロファイリング技術(metabolomic profiling techniques)を使用して発見された。このようなメタボロームプロファイリング技術は、下記に記載される実施例並びにその全体の内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,005,255号、7,329,489号、7,550,258号、7,550,260号、7,553,616号、7,635,556号及び米国特許出願第11/301,077号(公開第2006/0134676号)、第11/301,078号(公開第2006/0134677号)、及び第11/301,079号(公開第2006/0134678号)において、より詳細に記載されている。
【0015】
一般的に、代謝プロフィールは、肝毒性を有する対象由来の生体試料について、肝毒性を有さない他の対象と比較して求めた。バイオマーカーを、本明細書でより詳しく検討する。発見されたバイオマーカーは、以下の群と一致する。
1.(表6にリストされた)肝毒性を示す尿中のバイオマーカー、
2.(表7にリストされた)壊死を示す尿中のバイオマーカー、
3.(表8にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す尿中のバイオマーカー、
4.(表9にリストされた)ヒトにおいて肝毒性を示すが、それについて、ラットにおいて関連した組織病理又は臨床化学変化が存在しない尿中のバイオマーカー、
5.(表10にリストされた)肝毒性を示す血漿中のバイオマーカー、
6.(表11にリストされた)壊死を示す血漿中のバイオマーカー、
7.(表12にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す血漿中のバイオマーカー、
8.(表13にリストされた)ヒトにおいて肝毒性を示すが、それについて、ラットにおいて関連した組織病理又は臨床化学変化が存在しない血漿中のバイオマーカー、
9.(表14にリストされた)肝毒性を示す肝組織中のバイオマーカー、
10.(表15にリストされた)壊死を示す肝組織中のバイオマーカー、
11.(表16にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す肝組織中のバイオマーカー、
12.(表17にリストされた)ヒトにおいて肝毒性を示すが、それについて、ラットにおいて関連した組織病理又は臨床化学変化が存在しない肝組織中のバイオマーカー、並びに
13.肝毒性を示す組み合わせたバイオマーカー(表18)。
【0016】
バイオマーカー及び非バイオマーカー化合物のいくつかのアイデンティティは、現時点で知られていないが、「無名の」化合物は、このような同定を可能にする分析技術によって十分に特徴付けられているので、このようなアイデンティティは、対象からの生体試料中のバイオマーカー又は非バイオマーカー化合物の同定に必要ではない。全てのこのような「無名の」化合物の分析的特徴付けは、実施例に記載されている。このような「無名の」バイオマーカー及び非バイオマーカー化合物は、本明細書で、後に特定の代謝産物番号が続く「代謝産物」という命名を使用して呼ばれる。
【0017】
いくつかの実施形態において、試験薬剤を対象に投与するステップ、該対象から得られる生体試料における表6、10、14、及び18にリストされているバイオマーカーから選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップ、並びに該試験薬剤が肝毒物であるかを判定するために、該試料(単数又は複数)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を、1種又は複数のバイオマーカーの肝毒性陽性及び/又は肝毒性陰性参照レベルと比較するステップを含む、薬剤が肝毒物であるかを判定するための方法が提供される。試料タイプに特異的な(例えば、尿、血漿、及び肝組織)バイオマーカーが提供され(例えば、表6(尿)、10(血漿)、及び14(肝組織))、試料の各タイプについての特定の肝臓傷害のバイオマーカー(即ち、表7(壊死を示す尿中のバイオマーカー)、8(胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す尿中のバイオマーカー)、11(壊死を示す血漿中のバイオマーカー)、12(胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す血漿中のバイオマーカー)、15(壊死を示す肝組織中のバイオマーカー)、及び16(胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す肝組織中のバイオマーカー))が同様に提供される。場合によっては、1つの方法に使用されるバイオマーカーは、3−ヒドロキシ−2−エチルプロピオネート、4−イミダゾールアセテート、チラミン、アントラニレート、2’−デオキシシチジン、N−アセチルアスパルテート(NAA)、ベータ−ヒドロキシヘキサノエート、及びサルコシン(N−メチルグリシン)を含み得る。
【0018】
ヒトにおける肝毒性を示すが、それについて、ラットにおける関連の組織病理又は臨床化学変化が存在しないバイオマーカーが発見された。これらのバイオマーカーも、試料に特異的(例えば、表9、13、及び17)である。このようなバイオマーカーは、ヒト特異的に肝毒性を引き起こす薬品の可能性を予想する上で有益である。
【0019】
試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)が求められた後、このレベル(単数又は複数)は、試験薬剤が肝毒物であるかを判定するのに役立てるため又は判定するために、肝毒性陽性及び/又は肝毒性陰性参照レベルと比較される。肝毒性陽性参照レベルに対応する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同一であるレベル、参照レベルと実質的に同一であるレベル、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る且つ/若しくは下回るレベル、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、試験薬剤が肝毒物であることを示している。肝毒性陰性参照レベルに対応する試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(例えば、参照レベルと同一であるレベル、参照レベルと実質的に同一であるレベル、参照レベルの最小及び/若しくは最大を上回る且つ/若しくは下回るレベル、並びに/又は参照レベルの範囲内であるレベル)は、試験薬剤が肝毒物ではないことを示している。さらに、肝毒性陰性参照レベルと比較した、試料中に(特に統計的に有意なレベルにおいて)異なって存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、試験薬剤が肝毒物であることを示している。肝毒性陽性参照レベルと比較した、試料中に(特に統計的に有意なレベルにおいて)異なって存在する1種又は複数のバイオマーカーのレベルは、試験薬剤が肝毒物ではないことを示している。
【0020】
1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を判定するために生体試料中のバイオマーカーを検出するために任意の好適な方法を使用することができる。好適な方法には、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー)、質量分析(例えば、MS、MS−MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、抗体結合、他の免疫化学技術、及びこれらの組合せ(例えば、LC−MS−MS)が含まれる。さらに、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)は、間接的に、例えば、測定されることが望まれるバイオマーカー(単数又は複数)のレベルと一致する化合物(又は複数の化合物)のレベルを測定するアッセイを使用することによって検出することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、バイオマーカーの検出における使用のための生体試料は、試料中のバイオマーカーのレベルの分析又は検出の前に分析用試料に変換される。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)又はタンデム質量分析(MS−MS)、又はこれらの組合せによる分析の前に、試料を変換するためにタンパク質抽出を行うことができる。別の実施形態において、試料は、例えば、タンデム質量分析法による分析の間に変換することができる。
【0022】
任意の数のバイオマーカーを、本明細書に開示された方法に使用することができる。即ち、開示された方法は、表4及び/又は表4Bにおけるバイオマーカーの全ての組合せを含めて、1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカー、15種以上のバイオマーカーなどのレベル(単数又は複数)の判定を含むことができる。別の態様において、開示された方法における使用のためのバイオマーカーの数は、約25種以下のバイオマーカー、20種以下、15種以下、10種以下、9種以下、8種以下、7種以下、6種以下、5種以下のバイオマーカーのレベルを含む。別の態様において、開示された方法における使用のためのバイオマーカーの数は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、20種、又は25種のバイオマーカーのレベルを含む。
【0023】
一実施形態において、本発明の方法における使用のための臨床的エンドポイントの単一分析物又は複数分析物診断バイオマーカーは、尿、血清、又は血液を含む非侵襲的に得られた生体試料の大規模分子アッセイから同定することができる。場合によっては、多数の分析物の反応は、効能、毒性、疾患、又は生理的変化を示す生理機能の変化を反映し、データセットの総合的な性質によって全般的な反応の全体評価が可能になる。Robertson(2005年)Toxicological Sciences 85巻:809〜822頁。質量分析(MS)及び核磁気共鳴(NMR)を含む、様々な分光法を、複合生体試料の大規模分子アッセイからの総合的なデータセットを生成するために使用することができる。Lindonら(2004年)Biomarkers 9巻:1〜31頁を参照されたい。MS及びNMR手法は、補完的であり、様々なバイオマーカーの組に対する情報をもたらす。しかし、MSを実験手法として使用した文献中の哺乳類系に対する報告されたメタボノミック(metabonomic)研究はほとんど存在せず、新規なバイオマーカーを同定したものはさらに少ない。Lindonらを参照されたい。さらに、このようなバイオマーカーを実際に生成することによって、多数の分析的、計算的及び生物学的な課題が提起される。したがって、薬剤のインビボ肝毒性を予想するために有用な一般的な単一分析物又は多分析物肝毒性バイオマーカーの同定の需要が残っている。
【0024】
本明細書に記載されたバイオマーカーの1種又は複数は、インビトロの薬剤の毒性を予想又はインビボの薬剤の毒性作用を測るのに使用することができる。試薬及び標準を使用するバイオマーカーの単一の組を、例えば、前臨床種における試験を通して、また潜在的に治験において、初期スクリーニングからの治療的な候補化合物を評価するために使用することができる。さらに、このような分析物は、農薬又は環境薬剤などの他の化学薬剤(例えば、生体異物、マイコトキシン)の毒性を予想するのに有用であり得る。毒性のこのような広域指示薬は、1つ又は複数の利点を提供し得る。例えば、それらは、種々の薬品クラスを含めて、多様な作用機序を有する毒性化合物を正しく同定することができる。さらに、これらのバイオマーカーにおける変化は、一定で、定量化可能であり得、毒性傷害の程度、タイプ、又は過程を反映し得る。同様に、アッセイは、ひどく高価にならずにハイスループット技術に適合させることができる。さらに、インビボの試料の収集は、侵襲のない又は少ない、例えば、尿又は血液であり得る。本開示は、これらの利点の1つ又は複数を提供し得る、インビトロ及びインビボの両方での特定の化合物についての肝毒性の発生率を予想するための肝毒性バイオマーカーを使用するシステム及び方法を提供する。
【0025】
したがって、本発明は、a)試験物質の存在下及び非存在下で肝細胞をインキュベートするステップ、及びb)前記試験物質の存在下及び非存在下で、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2(即ち、肝毒性パネル)又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされたバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルを比較するステップを含み、ここで、試験物質の存在下のバイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、試験物質が肝毒性を引き起こすことが予想されることを示す、試験物質の肝毒性を予想する方法を包含する。バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、例えば、前記試験物質の存在下及び非存在下の前記バイオマーカー(単数又は複数)の相対存在量を求めるための、タンデム質量分析と結合された高速液体クロマトグラフィーを含む、バイオマーカー(単数又は複数)を測定するために利用可能な任意の方法を使用して測定することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、表(単数又は複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされた1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、ある試験物質の肝毒性の予想における使用のために、バイオマーカー(単数又は複数)の参照レベルと比較することができる。
【0027】
他の実施形態において、試験物質の存在下で培養された細胞によって生成された表(単数又は複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされている1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、該試験物質の非存在下で培養された細胞によって生成された各々のバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(「対照」レベル(単数又は複数))と比較することができる。このような比較は、試験物質への曝露からの1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)の異なるレベル(例えば、増加又は減少)を検出するために使用することができる。任意の数のバイオマーカーを、本明細書に開示された方法に使用することができる。即ち、開示された方法は、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18におけるバイオマーカーの全ての組合せを含む、1種のバイオマーカー、2種以上のバイオマーカー、3種以上のバイオマーカー、4種以上のバイオマーカー、5種以上のバイオマーカー、6種以上のバイオマーカー、7種以上のバイオマーカー、8種以上のバイオマーカー、9種以上のバイオマーカー、10種以上のバイオマーカー、15種以上のバイオマーカーなどのレベル(単数又は複数)の判定を含むことができる。別の態様において、開示された方法における使用のためのバイオマーカーの数は、約30種以下のバイオマーカー、25種以下、20種以下、15種以下、10種以下、9種以下、8種以下、7種以下、6種以下、5種以下のバイオマーカーのレベルを含む。別の態様において、開示された方法における使用のためのバイオマーカーの数は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種、11種、12種、13種、14種、15種、20種、25種、又は30種のバイオマーカーのレベルを含む。
【0028】
一実施形態において、以下のステップ:a)対象(例えば、動物、哺乳類、ラット、マウス、イヌ、ウサギ、ヒト以外の霊長類、ヒト)に試験物質を投与するステップ、及びb)前記試験物質の投与前及び前記試験物質の投与後の1つ又は複数の時点の該対象からの試料における、表(単数又は複数)1及び/又は2(即ち、肝毒性パネル)にリストされたバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルを比較するステップを含み、ここで、該試験物質の投与後に集められた試料における前記バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、該物質が、肝毒性を引き起こすことが予想されるかを示し、ここで、前記バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、前記試験物質の存在下及び非存在下の前記バイオマーカー(単数又は複数)の相対存在量を求めるために、例えば、タンデム質量分析と結合された高速液体クロマトグラフィーを使用して測定される、対象において肝毒性を検出する方法が提供される。
【0029】
別の実施形態において、対象において肝毒性の進行/退縮をモニターする方法が提供され、ここで、該方法は、対象からの第1の生体試料を分析して、該試料における肝毒性の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を判定するステップ(ここで、1種又は複数のバイオマーカーが、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18から選択され、第1の試料が、第1の時点で該対象から得られる)、対象からの第2の生体試料を分析して、1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を判定するステップ(ここで、第2の試料は、第2の時点で該対象から得られる)、及び第1の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を、該対象における肝毒性の進行/退縮をモニターするために、第2の試料中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と比較するステップを含む。
【0030】
別の実施形態において、以下のステップ:a)対象(例えば、動物、哺乳類、ラット、マウス、イヌ、ウサギ、ヒト以外の霊長類、ヒト)に、試験物質を投与し、前記物質の投与後の様々な時点で、生体試料を得るステップ、及びb)前記試験物質が投与された該対象からの試料中の、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2(即ち、肝毒性パネル)又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされたバイオマーカーからなる群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーのレベルを、前記バイオマーカーの参照レベルと比較するステップを含む、対象において肝毒性を検出する方法が提供され、ここで、該試験物質の投与後に集められた試料中の前記バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、該物質が肝毒性を引き起こすことが予想されるかを示し、ここで、前記バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、前記試験物質の存在下及び非存在下の前記バイオマーカー(単数又は複数)の相対存在量を求めるために、例えば、タンデム質量分析と結合された高速液体クロマトグラフィーを使用して測定される。
【0031】
1つのさらなる実施形態において、前記バイオマーカー(単数又は複数)のレベルは、前記化合物の肝毒性のレベルを判定するために有用である指標又は評点を生成するために使用される。試料は、既知の肝毒物(単数又は複数)に曝露された細胞培養物から得られる。パネル(例えば、表(単数又は複数)1及び/又は2にリストされている1種又は複数バイオマーカー)における各々の生体物質のレベルを、各々の試料について判定する。各々の試料について肝毒性の程度を上記パネル中の生体物質のレベルと相互に関連させるクラシファイヤー(classifier)が作られている。生体物質のパネルにおける各生体物質のレベルを、試験細胞培養物から誘導される試料について判定する。次いで、上記クラシファイヤーを、該試験試料における肝毒性の存在を判定するために使用する。いくつかの実施形態において、試料供給源は、(例えば、ラット、マウス、ウサギ、イヌ又は他の哺乳類などのモデル動物系を使用して)薬剤へのインビボでの曝露後に得ることができ、試料供給源は、無制限に、血液、血清、尿、細胞、組織又はこれらの任意の組合せを含む群から選択される1つ又は複数の試料供給源であり得る。
【0032】
本発明の方法における使用のためのクラシファイヤーは、細胞試料における任意の程度又はタイプの肝毒性と相互に関連付けることができる。例えば、クラシファイヤーは、無毒性、低レベルの毒性、中レベルの毒性、高レベルの毒性、又は非常に高レベルの毒性などの毒性のレベル又は程度に、マーカーを分類するために使用することができる。別法として、肝毒性の程度を、CIOMS/RUCAMスケールなどの肝毒性の臨床的な基準と相互に関連付けるクラシファイヤーを作ることができる。例えば、CIOMS/RUCAMスケールは、1から8以上のスケールにレベルをカテゴリー化するために表(単数又は複数)1及び/又は2にリストされた1種又は複数のバイオマーカーのレベルを相互に関連させるために使用することができ、ここで、8を上回る評点は、毒性の「確実な又はほぼ確実な」カテゴリーを意味し、6から8の評点は、毒性の「有望な」カテゴリーを意味し、3〜5の評点は、毒性の「可能性のある」カテゴリーを意味し、1〜2の評点は、毒性の「見込みのない」カテゴリーを意味し、ゼロの評点は、毒性のカテゴリーから「排除されたもの」を意味する。
【0033】
本発明の方法における使用のためのクラシファイヤーは、壊死/アポトーシス、肝炎、胆汁うっ滞、脂肪症、リン脂質症、肉芽腫、血管病変、新生物、及び硬化症などの肝毒性のタイプ、段階、又は組織病理と相互に関連付けることもできる。
【0034】
いくつかの実施形態において、クラシファイヤーは、コンピュータプログラムに実行される。適切なアプリケーションインターフェースを備えたコンピュータプログラムを作り、コンピュータシステム及び/又はプログラム記憶装置に貯蔵して、本発明の方法の実行を支援することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされたバイオマーカーのレベルは、存在する毒物に応じて異なり得る。例えば、1種のバイオマーカーのレベルは、1種の毒物に起因する毒性に反応して増加し得るが、異なる毒物の毒性に反応して減少し得る(又は変化がないことがある)。
【0036】
いくつかの実施形態において、試験細胞又は対象において肝毒性を判定する方法が提供され、以下のステップを含む。試料を、培養された細胞又は毒物に曝露された、又は毒物に曝露されたことが疑われる対象から得る。この試料について、生体物質のパネル(例えば、表(単数若しくは複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18にリストされた1種又は複数のバイオマーカー)における各生体物質のレベルを判定する。これらのレベルを、パネルに関係するクラシファイヤーにインプットする。該クラシファイヤーからアウトプットが得られ、該アウトプットは、肝毒性が対象において生じているかを示す。試料中の生体物質のレベルを、任意の方法によって判定することができる。
【0037】
本明細書に開示された方法のいずれかにおける使用のための細胞は、肝臓への毒性物質又は毒性を有することが疑われる物質と一緒に培養し得る細胞の任意の供給源から得ることができる。一実施形態において、ヒト、ラット、モルモット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、又はヒト以外の霊長類などの哺乳類の対象の肝組織から細胞が得られる。このような肝細胞は、利用可能な任意の培養法を使用して培養することができる。
【0038】
本明細書に開示された方法は、無制限に、1種又は複数の分析物のAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、GLDH(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)、AP(アルカリホスファターゼ)、γ−GT(γ−グルタミルトランスフェラーゼ)、ビリルビン、コリンエステラーゼ、アルブミン、及びγ−グロブリン又はこれらの任意の組合せを含む、他の既知の分析物バイオマーカーと併せて使用することができる。当業者には明らかなように、これらの方法に使用されるクラシファイヤーは、コンピュータ又は他の電子装置に具体化することができる。さらに、上記に記載された方法を実施するためのキットが提供される。
【0039】
表(単数又は複数)1及び/又は2は、様々な肝毒物に反応して変化するバイオマーカーのリストを提供し、これらの1種又は複数は、本明細書に開示された方法において使用することができる。リストされたバイオマーカーは、様々な薬剤に様々な反応を示す。例えば、いくつかのバイオマーカーのレベルは、1種の特定の毒物に反応して増加するが、異なる毒物に反応して減少する。さらに、毒物のレベルは、最初増加することがあり、次いで、6時間、1日、2、3、4、5、6、7又はそれを超える日数などの期間にわたってピークレベルを下回って又は対照レベルさえ下回って減少することがある。別法として、毒物のレベルは、最初減少することがあり、次いで、6時間、1日、2、3、4、5、6、7又はそれ以上の日数などの期間にわたって谷レベルを上回って又は対照レベルさえ上回って増加することがある。
【表1】


【表2】

【0040】
「Toxicology of the liver」、第2版、G.L.Plaa及びW.R.Hewitt編、Target Organ Toxicology Series、1997年に記載されている動物及び/又は人間に肝損傷を引き起こすことが広く知られている化合物が、表2にリストされている。類似のタイプの肝毒性(例えば、壊死、脂肪症、胆汁うっ滞)を示すいくつかの化合物によるバイオマーカーレベルの調節は、同じタイプの毒性を引き出すさらなる化合物と類似していることが予想される特徴的なプロフィールを規定する。したがって、これらの生体物質のプロフィールは、未知の化合物の潜在毒性の予想のために使用することができる。したがって、肝毒素のクラスを示すのに有用な特徴的なプロフィールが規定される。
【0041】
したがって、一実施形態において、本発明は、化合物の少なくとも1つの毒性作用を予想する方法に関し、該方法は、該化合物に曝露された組織、細胞又は動物試料中の表(単数又は複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18からの1種又は複数のバイオマーカーのレベルを検出するステップを含み、ここで、無毒性参照レベル又は表(単数又は複数)1及び/若しくは2又は表6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び/若しくは18における1種又は複数のバイオマーカーの対照レベルに対する差次的存在量は、少なくとも1つの毒性作用を示す。
【0042】
一実施形態において、バイオマーカーレベルは、ダンシル化後の同位体希釈LC−MS−MSによる尿及び血漿生体マトリックス中のアミノ酸及びアミンの高感度定量法であるダンシル化アッセイを使用して判定する。
【0043】
ダンシル化生成物は、一般的に、純粋な分析物種に比べて、逆相ESI−及びAPCI−LC−MSにおける有意なシグナル増強を示す。この増強は、塩基性ジメチルアミノ部分の導入による増加したイオン化及びダンシル化生成物の増加した疎水性による。塩基性ジメチルアミノは、分析物のプロトン化を改善する。疎水性が高ければ高いほど、逆相条件下での移動相のより高い有機溶媒含有量における溶出が促進される。揮発性有機溶媒の含有量が高ければ高いほど、LC−MSインターフェースにおける移動相のより早くより良い蒸発によるイオン化が強化される。
【0044】
本方法の一実施形態において、試料を、同位体で安定に標識された内部標準でスパイクする。尿が生体マトリックスとして使用される場合、さらなる試料の前処理を必要とせず、ダンシルクロリドで直接誘導体化することができる。タンパク質(例えば、血漿、CSF、細胞、組織)を含有する生体試料は、有機溶媒と混合することによるタンパク質沈殿ステップを必要とする場合がある。遠心分離によるタンパク質の除去後、除タンパク抽出物の一部をダンシルクロリドで誘導体化する。それぞれの反応混合物のアリコートを、さらなる加工を行わず、逆相U−HPLCカラムを備えたLC−MS−MSシステムに直接注入する。それぞれの分析物の生成物イオンのピーク面積を、同位体標識された内部標準の生成物イオンのピーク面積に対して測定する。重みつき線形最小二乗回帰分析を使用して定量化を行う。
【実施例】
【0045】
(例1)
化合物の肝毒性を判定/予想するためのバイオマーカーの同定
薬物又は他の薬品などの組成物によって誘発される肝毒性の特異的な生化学的マーカー(及び種々のタイプの肝毒性の生化学的マーカー)を判定するために、並びに表(単数又は複数)1及び/又は2の特定された肝毒性マーカーをさらに確認するために、以下の実験を実施した。
【0046】
ラットに、(表3に示されたように)低用量及び高用量における既知の肝毒物の単一経口用量、並びに毒物のいずれも含有しないビヒクル対照を毎日処置した。表3にリストされた肝毒性薬剤は、表4に記載された明確なタイプの肝組織病理を誘発することが知られている。血漿、尿、及び肝臓試料を、メタボローム解析(metabolomic analysis)、肝組織病理、及び通常の臨床化学(即ち、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、総ビリルビン(TBIL)、アルカリホスファターゼ(ALP))のために第2日及び第5日に集めた。
【表3】


【表4】

【0047】
肝組織病理及び通常の臨床化学(即ち、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、総ビリルビン(TBIL)、及びアルカリホスファターゼ(ALP))の結果が表5に示されている。「〜」は、組織病理又は臨床化学における変化が、その時点においていくつかの対象で測定されたが、全ての対象ではなかったことを示し、「−」は、変化が、いずれの時点(第2日又は第5日)でも検出されなかったことを示している。
【表5】

【0048】
上記に示されたように、毒物のカルバマゼピン、クロルゾキサゾン、フルタミド、ニメスリド、及びバルプロエートは、「非ラット毒性/ヒト特異性」として分類され、肝毒性的変化を有さなかった。即ち、カルバマゼピン、クロルゾキサゾン、フルタミド、ニメスリド、及びバルプロエートは、ヒトに対する既知の肝毒素であるが、本実施例でラットに毒性を誘発しないことが確かめられた。したがって、この毒物のカテゴリーに基づいて、下記に論じられるように、ヒトにおける肝毒性を示すが、このために、ラットにおいて関連の組織病理又は臨床化学が存在しないバイオマーカーが発見された。このようなバイオマーカーは、ヒト特異的に肝毒性を引き起こす薬品の可能性を予想するために有用である。これらのマーカーは、前臨床薬物開発中にラットにおける毒性作用について薬物をスクリーンするため、及びヒトにおける肝臓への毒性作用についてラットにおいて他の薬剤(例えば、農業用殺虫剤)をスクリーンするために有用である。
【0049】
血漿、尿、及び肝臓試料を、試料において検出可能であった全ての生体物質のレベルについて分析し、それらの全てを、参照によりそれらの全体を本明細書に組み込んでいる米国特許第7,635,556号、7,433,686号、7,561,975号、及び米国特許出願公開第2009/0179147号に記載された方法を使用する生化学的プロファイリングを使用する非標的大域生化学的プロファイリング分析的プラットフォームを使用して測定した。肝毒性に関連する生体物質が表18に示されている。
【0050】
対照としてビヒクルのみの群を使用して(即ち、各バイオマーカーのための参照標準レベルを判定するために)、尿、血漿、及び肝組織からの生体物質のレベルの分析によって、肝毒性及び無肝毒性の間に異なって存在する(増加又は減少、p<0.05)バイオマーカーが明らかになった。さらに、ヒトに肝毒性を示すが、それについて、ラットに関連の組織病理又は臨床化学変化が存在しないバイオマーカーが発見された。薬物に反応して有意に(p<0.05)変化し毒性と関係するバイオマーカーを同定するために、t検定を使用する統計分析を実施した。毒性との関係を、全ての薬物にわたってバイオマーカーデータを分析して他の薬物反応(例えば、治療反応)と毒性のバイオマーカーを区別することによって判定した。薬物処理に対する共通の反応である減少した給餌の影響に由来するバイオマーカーを排除するために、結果を、絶食対象に対しても分析した。特に、以下のバイオマーカーの群が発見された。
1.(表6にリストされた)肝毒性を示す尿中のバイオマーカー、
2.(表7にリストされた)壊死を示す尿中のバイオマーカー、
3.(表8にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す尿中のバイオマーカー、
4.(表9にリストされた)ヒトにおける肝毒性を示すが、それについて、ラットにおける関連の組織病理又は臨床化学変化が存在しない尿中のバイオマーカー、
5.(表10にリストされた)肝毒性を示す血漿中のバイオマーカー、
6.(表11にリストされた)壊死を示す血漿中のバイオマーカー、
7.(表12にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す血漿中のバイオマーカー、
8.(表13にリストされた)ヒトにおける肝毒性を示すが、それについて、ラットにおける関連の組織病理又は臨床化学変化が存在しない血漿中のバイオマーカー、
9.(表14にリストされた)肝毒性を示す肝組織中のバイオマーカー、
10.(表15にリストされた)壊死を示す肝組織中のバイオマーカー、
11.(表16にリストされた)胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す肝組織中のバイオマーカー、並びに
12.(表17にリストされた)ヒトにおける肝毒性を示すが、それについて、ラットにおける関連の組織病理又は臨床化学変化が存在しない肝組織中のバイオマーカー。
【0051】
毒物のタイプ(例えば、脂肪症、胆汁うっ滞、壊死)と共に有意に(t検定によって、p<0.05)変化するバイオマーカーは、毒物によって誘発される毒性のタイプを判定するためのバイオマーカーである。これらのバイオマーカーは、薬剤によって引き起こされる肝毒性のタイプに特徴的な様式で増加又は減少する。
【表6−1】


【表6−2】


【表7】


【表8−1】


【表8−2】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14−1】


【表14−2】


【表15】


【表16】


【表17】

【0052】
(例2)
肝毒性のランダムフォレスト解析
表:18にリストされたバイオマーカーを、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる種々の試料において測定した。次いで、ランダムフォレスト解析を使用して個体を分類した。「アウトオブバッグ(Out−of−Bag)」(OOB)誤差率は、いかに正確に新しい観測を、ランダムフォレストモデルを使用して予想することができるかの予想を与える。
【表18−1】


【表18−2】


【表18−3】


【表18−4】

【0053】
尿試料からの肝毒性判定の結果
表:18にリストされたバイオマーカーを、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる尿試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対象を、>97%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表19】

【0054】
表:18にリストされている、名付けられた(無名の代謝産物は含まれなかった)バイオマーカーを、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる尿試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対象を、>96%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表20】

【0055】
この分析は、上記の肝毒性バイオマーカーの表における代謝産物のリストに基づいているが、試料中の全てのバイオマーカーを測定したわけではない。以下の化合物は、尿試料中で検出しなかった。
1.12−デヒドロコレート
2.6−ベータ−ヒドロキシリトコレート
3.ベータ−ムリコレート
4.ケノデオキシコレート
5.グリコデオキシコレート
6.ヒオデオキシコレート
7.タウロ−ベータ−ムリコレート
8.タウロコレネートサルフェート*
9.タウロデオキシコレート
10.タウロリトコレート
11.タウロリトコレート3−サルフェート
【0056】
肝臓試料からの肝毒性判定の結果
表:18にリストされているバイオマーカーを、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる肝臓試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対象を、>95%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表21】

【0057】
表:18にリストされている名付けられたバイオマーカー(無名の代謝産物は含まれなかった)を、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる肝臓試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対象を、>91%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表22】

【0058】
リストにおける以下の化合物:タウリン及びタウロコレートは検出しなかった。
【0059】
血漿試料からの肝毒性判定の結果
表18:肝毒性バイオマーカーにリストされたバイオマーカーを、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる血漿試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対象を、>86%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表23】

【0060】
表18:肝毒性バイオマーカーにリストされている名付けられたバイオマーカー(無名の代謝産物は含まれなかった)を、薬物の毒性用量を受けた対象及び偽処置を受けた対象から得られる血漿試料中で測定した(例1を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、対照を、>88%の精度で、薬物により誘発された肝毒性を有する対象(毒)又は毒性を有さない対象(対照)に分類した。
【表24】

【0061】
検出しなかったリスト中の2種の化合物:ケノデオキシコレート及びタウロリトコレートが存在した。
【0062】
(例3)
肝毒性のタイプのランダムフォレスト解析
表:18にリストされたバイオマーカーを、壊死、脂肪症又はヒト特異性作用を引き起こす薬物の毒性用量を受けた対象から得られる種々の試料中で測定した。次いで、ランダムフォレスト解析を使用して個体を分類した。「アウトオブバッグ(Out−of−Bag)」(OOB)誤差率は、いかに正確に、新しい観測が、ランダムフォレストモデルを使用して予想することができるかの予想を与える。
【0063】
尿試料からの肝毒性のタイプ判定の結果
表18:肝毒性バイオマーカーにリストされたバイオマーカーを、壊死、脂肪症又はヒト特異性作用を引き起こす薬物の毒性用量を受けた対象から得られる尿試料中で測定した(例1及び表4を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、名付けられたバイオマーカー及び無名のバイオマーカーを使用する約91%の精度、並びに名付けられたバイオマーカーのみを使用する>93%の精度で、対象を、ヒト特異性、壊死又は脂肪症のいずれかを有する対象に分類した。
【表25】


【表26】

【0064】
肝臓試料からの肝毒性のタイプ判定の結果
表18:肝毒性バイオマーカーにリストされているバイオマーカーを、壊死、脂肪症又はヒト特異性作用を引き起こす薬物の毒性用量を受けた対象から得られる肝臓試料中で測定した(例1及び表4を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、名付けられたバイオマーカー及び無名のバイオマーカーを使用する約98%の精度、並びに名付けられたバイオマーカーのみを使用する約98%の精度で、対象を、ヒト特異性、壊死又は脂肪症のいずれかを有する対象に分類した。
【表27】


【表28】

【0065】
血漿試料からの肝毒性のタイプ判定の結果
表18:肝毒性バイオマーカーにリストされたバイオマーカーを、壊死、脂肪症又はヒト特異性作用を引き起こす薬物の毒性用量を受けた対象から得られる血漿試料中で測定した(例1及び表4を参照されたい)。ランダムフォレスト解析を使用して、名付けられたバイオマーカー及び無名のバイオマーカーを使用する約91%の精度、並びに名付けられたバイオマーカーのみを使用する>88%の精度で、対象を、ヒト特異性、壊死又は脂肪症のいずれかを有する対象に分類した。
【表29】


【表30】

【0066】
(例4)
ダンシル化アッセイ
以下に記載されるのは、予言的なダンシル化アッセイである。
【0067】
ダンシル化生成物は、一般的に、純粋な分析物種に比べて逆相ESI−及びAPCI−LC−MSにおける有意なシグナル増強を示す。この増強は、塩基性ジメチルアミノ部分の導入による増加したイオン化及びダンシル化生成物の増加した疎水性による。塩基性ジメチルアミノは、分析物のプロトン化を改善する。より高い疎水性は、逆相条件下で移動相のより高い有機溶媒含有量において溶出を促進する。揮発性有機溶媒のこのより高い含有量は、LC−MSインターフェースにおける移動相のより速くより良い蒸発によってイオン化を高める。尿を、内部標準でスパイクし、ダンシルクロリドで誘導体化する。血漿試料を、最初にタンパク質沈殿にかけ、抽出物の一部をダンシルクロリドで誘導体化する。反応混合物のアリコートを、さらに加工することなく、逆相U−HPLCカラムを備えたLC−MS−MSシステムに直接注入する。
【0068】
それぞれの分析物の生成物イオンのピーク面積を、内部標準の生成物イオンのピーク面積に対して測定する。重みつき線形最小二乗回帰分析を使用して定量化を行う。
【0069】
手順:
尿:
20.0μLの尿試料を、クリンプキャップガラスバイアル中に入れる。20.0μLの内部標準溶液を添加する。次いで、20.0μLの重炭酸ナトリウム溶液(0.1M)を添加し、次いで50.0μLのダンシルクロリド溶液(アセトン中の2mg/mL)を添加する。バイアルをクリンプキャップで密封し、内容物を混合し、その後、60℃に10分間加熱する。次いで、バイアルを遠心分離し、反応混合物のアリコートをLC−MS−MSで分析する。
【0070】
血漿:
20.0μLの血漿試料を、ガラスバイアル中に入れる。20.0μLの内部標準溶液を添加する。タンパク質を沈殿させるために、400μLのメタノールを添加する。試料を混合し、その後遠心分離にかける。50.0μLの透明な上澄みに、20.0μLの重炭酸ナトリウム溶液(0.1M)を添加し、次いで、50.0μLのダンシルクロリド溶液(アセトン中の2mg/mL)を添加した。バイアルをクリンプキャップで密封し、内容物を混合し、その後、60℃に10分間加熱する。次いで、バイアルを遠心分離にかけ、反応混合物のアリコートをLC−MS−MSで分析する。
【0071】
肝細胞:
20.0μLの肝細胞試料を、ガラスバイアル中に入れる。20.0μLの内部標準溶液を添加する。タンパク質を沈殿させるために、400μLのメタノールを添加する。試料を混合し、その後、遠心分離にかける。50.0μLの透明な上澄みに、20.0μLの重炭酸ナトリウム溶液(0.1M)を添加し、次いで、50.0μLのダンシルクロリド溶液(アセトン中の2mg/mL)を添加する。バイアルをクリンプキャップで密封し、内容物を混合し、その後、60℃に10分間加熱する。次いで、バイアルを遠心分離にかけ、反応混合物のアリコートをLC−MS−MSで分析する。
【0072】
(例5)
既知の肝毒性薬剤によるインビトロアッセイ
肝細胞を、表3に記載された次第に肝毒性作用を有する薬剤の種々のレベル(例えば、0(対照)、500、1000mg/kgのアセトアミノフェン)において、表2から選択される肝毒物に曝露する。表(単数又は複数)1及び/又は2にリストされている生体物質(即ち、毒性バイオマーカー)を含む、試料中で測定することができる全ての生体物質の大域非標的分析のために、毒物の投与後の様々な時点(例えば、第2日及び第5日)で、細胞を回収する。
【0073】
(例6)
試験薬剤の肝毒性の判定
実施し得るインビトロ及びインビボアッセイの予言的な例が以下に記載される。
インビトロアッセイ
肝細胞を薬剤に曝露する。試料を、分析のために、薬剤が投与された後に様々な時点で回収する。表(単数又は複数)1及び/又は2にリストされた肝毒性生体物質のパネル中のそれぞれの生体物質のレベルを、試料について判定する。レベルをパネルと関連したクラシファイヤーにインプットする。アウトプットがクラシファイヤーから得られ、このアウトプットは、肝毒性が生じているかを示す。このアウトプットは、薬剤の肝毒性の指標であり、その薬剤の肝毒性評点として報告される。
【0074】
インビボアッセイ
対象(例えば、マウス、ラット、イヌ、ヒト、哺乳類)を、薬剤に曝露する。分析のため、この薬剤を投与した後の様々な時点において試料を回収する。試料は、血液、血清、及び/又は尿である。表(単数又は複数)1及び/又は2にリストされている肝毒性生体物質のパネル中のそれぞれの生体物質のレベルを、試料について測定する。レベルをパネルに関連したクラシファイヤーにインプットする。アウトプットがクラシファイヤーから得られ、このアウトプットは、肝毒性が対象において生じているかを示す。このアウトプットは、薬剤の肝毒性の指標であり、その薬剤の肝毒性評点として報告される。
【0075】
(例7)
無名のバイオマーカー化合物の分析的特徴付け
以下の表19は、上記の表中にリストされた無名の代謝産物のそれぞれの分析的特徴付けを含む。LC−MS技術を使用する代謝産物の分析方法は、米国特許第7,433,787号及び7,561,975号、米国特許出願公開第20090017464号に提供されており、GC−MS技術を使用する代謝産物の分析方法は、Lawtonら、Pharmacogenomics 9巻(4号):383〜397頁(2008年)に提供されている。表は、それぞれのリストされた代謝産物について、上記に記載された分析的方法を使用して得られる、保持時間(RT)、保持指標(RI)、質量、及び極性を含む。「質量」は、化合物の定量化に使用される親イオンのC12同位体の質量を意味する。「極性」は陽性(+)又は陰性(−)のいずれかである量的イオンの極性を示す。「プラットフォーム」は、化合物がGS/MS又はLC/MS/MSを使用して測定されたことを示す。
【表31−1】


【表31−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が肝毒物であるかを判定する方法であって、
(a)試験薬剤の存在下で第1の肝細胞培養物をインキュベートするステップ、
(b)該試験薬剤の非存在下で第2の肝細胞培養物をインキュベートするステップ、
(c)第1及び第2の肝細胞培養物において表1、2、及び18にリストされたバイオマーカーの群から選択される1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(単数又は複数)を測定するステップ、並びに
(d)第1の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)のレベル(単数又は複数)を第2の肝細胞培養物において得られる1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)と比較するステップを含み、ここで、第2の肝細胞培養物中のレベル(単数又は複数)と比較した第1の肝細胞培養物中の1種又は複数のバイオマーカー(単数又は複数)の差次的レベル(単数又は複数)は、該試験薬剤が肝毒物であることを示している上記方法。
【請求項2】
前記薬剤が、薬剤化合物、殺虫剤、又は農薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薬剤が肝毒物であるかを判定する方法であって、
試験薬剤を対象に投与するステップ、
該対象から得られる生体試料中の表1、2、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び18にリストされたバイオマーカーから選択される1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を測定するステップ、及び
該試験薬剤が肝毒物であるかを判定するために、該試料(単数又は複数)中の1種又は複数のバイオマーカーのレベル(単数又は複数)を、1種又は複数のバイオマーカーの肝毒性陽性参照レベル及び/又は肝毒性陰性参照レベルと比較するステップを含む上記方法。
【請求項4】
前記対象が、哺乳類である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、ラットである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、ヒトである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が、尿を含み、前記バイオマーカーが、表6にリストされたバイオマーカーの群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオマーカーが、表7にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における壊死を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカーが、表8にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、ヒトであり、前記バイオマーカーが、表9にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、肝毒性を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料が、血漿を含み、前記バイオマーカーが、表10にリストされたバイオマーカーの群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオマーカーが、表11にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における壊死を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記バイオマーカーが、表12にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、ヒトであり、前記バイオマーカーが、表13にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、肝毒性を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記生体試料が、肝組織を含み、前記バイオマーカーが、表14にリストされたバイオマーカーの群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記バイオマーカーが、表15にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における壊死を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バイオマーカーが、表16にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、前記対象における胆汁うっ滞及び/又は脂肪症を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、ヒトであり、前記バイオマーカーが、表17にリストされたバイオマーカーの群から選択され、前記試料と前記肝毒性陰性参照レベルとの間の1種又は複数のバイオマーカーの差次的レベルが、肝毒性を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオマーカーが、3−ヒドロキシ−2−エチルプロピオネート、4−イミダゾールアセテート、チラミン、アントラニレート、2’−デオキシシチジン、N−アセチルアスパルテート(NAA)、ベータ−ヒドロキシヘキサノエート、及びサルコシン(N−メチルグリシン)を含む、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2012−517596(P2012−517596A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549293(P2011−549293)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/023372
【国際公開番号】WO2010/091290
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(508038677)メタボロン インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】METABOLON INC.
【住所又は居所原語表記】800 Capitola Drive, Suite 1, Durham, NC 27612 (US)
【Fターム(参考)】