説明

薬剤を生物学的バリアーを横切って送達するための方法及びデバイス

【課題】一層小さな切り口しか作らずに一層効率的な薬物送達(適用量あたり一層大きい薬物送達)を行なう一層良好な薬物送達用デバイスを提供すること。
【解決手段】
薬剤を生物学的バリアーを横切って送達するためのデバイスであって、下記を含む当該デバイス:
第一の極微針;
該極微針に一体化された、薬剤を保持するための第一の貯蔵器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国特許出願第11/198,024号(2005年8月5日出願)の部分継続出願である。この参照された出願の教示を参考として本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬物及び治療剤が、病気との闘いにおいて開発されてきた。しかしながら、これらの薬物のよくある治療限界は、それらの送達であり、如何にして薬物を、通常薬物を治療上有効な速度で輸送しない身体の生物学的バリアー(例えば、皮膚、口内粘膜、血液−脳関門)を横切って輸送するかである。
【0003】
薬物は、一般に、丸薬又はカプセルとして経口投与される。しかしながら、多くの薬物は、この方法では、胃腸管内での分解及び/又は肝臓による排除のために効果的に送達されえない。その上、幾つかの薬物は、効果的に腸粘膜を横切って拡散することができない。患者の服薬遵守も又、例えば、丸薬が長期間にわたって特定の間隔で摂取されることが必要な治療において問題でありうる。
【0004】
生物学的バリアーを横切って薬物を送達するための他の一般的技術は、薬物を皮膚を横切って(通して)輸送するための針(例えば、標準的な注射器又はカテーテルにおいて使用するもの)の使用である。この目的のためには有効であるが、針は、一般に、痛み;挿入部位における皮膚の局所的損傷;病気の伝染の危険を増大させる出血;及び感染部位であるのに十分に大きな傷を生じる。
【0005】
別の送達技術は、通常、薬物の皮膚を横切る拡散に依存する経皮パッチである。しかしながら、この方法は、皮膚の乏しい浸透性(即ち、有効バリアー特性)の故に、多くの薬物にとって有用なものではない。その拡散速度は、部分的に、薬物分子の大きさ及び親水性並びに角質層を横切る濃度勾配に依存する。受動的拡散によって皮膚を通って有効に送達されるために必要な生理化学的特性を有する薬物は、極僅かである。イオントフォレシス、エレクトロポレーション、超音波、及び熱(所謂活性系)が、この送達速度を改善する試みにおいて用いられてきた。変化する増進の程度を与えるが、これらの技術は、すべての種類の薬物に適している訳ではなく、所望のレベルの送達を与えることができない。幾つかの場合において、それらは、やはり痛く、数時間又は数日間の期間にわたる連続的な制御された薬物送達のためには不便であり又は実際的でない。薬物の皮膚を通る活性トランスファーのための別のデバイスをデザインする試みが行なわれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/198,024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、一層小さな切り口しか作らずに一層効率的な薬物送達(適用量あたり一層大きい薬物送達)を行なう一層良好な薬物送達用デバイスへの要求が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それ故、比較的痛くない、制御された、安全な、様々な薬物の一種以上の生物学的バリアーを横切る便利な送達のための極微針デバイスを提供することは、本発明の目的である。一面において、この発明は、一体化された薬剤貯蔵器を有する極微針を含む送達用デバイスに関係する。この一体化された貯蔵器は、例えば、針の幅又は深さの全体に及ぶ開口部又は陥凹を針の一方の側に含むことができる。かかる構成において、薬剤がこの一体化された貯蔵器内に位置されて、この極微針が患者の生物学的バリアー(例えば、皮膚、口内粘膜バリアー、血液脳バリアーなど)に適用される場合、主として極微針の内部体積内に位置した薬剤は、該極微針が該バリアーを通過するので該バリアーとの接触から大いに防護される。これは、バリアーとの接触により引き起こされる薬剤の損失を大いに低減させる。かかる損失は、少量の薬剤が極微針技術により送達されて該薬剤の治療的有効性に影響を与えうるとすれば重大でありうる。
【0009】
一具体例において、一体化貯蔵器は、極微針の体積の20〜50%を包含する。他の具体例において、一体化貯蔵器は、第一の極微針の体積の10%ほどの少ない体積又は及び70%ほどの大きい体積を包含する。この一体化貯蔵器は、一具体例において、生物学的に活性な薬剤例えば薬物又はワクチンで満たされる。
【0010】
様々な具体例において、この極微針は、例えばステンレス鋼、チタン又は生物分解性ポリマーから作られる(制限はしない)。この極微針は、150〜3000ミクロンの長さで、10〜2000ミクロンの幅であってよい。
【0011】
この発明の更なる特徴は、デプスガード(depth guard)を有する極微針及びベースエレメントの利用を含み、これらは、幾つかの具体例において、極微針自体より広い。ベースエレメントは、一層長い極微針に一層大きい構造的安定性を与える。デプスガードは、一層広いベースエレメントが生物学的バリアー内に入るのを防止する(該侵入は、極微針により引き起こされるバリアーの破壊を大きくするであろう)。
【0012】
他の具体例において、極微針は、アレイに組み合わされる。これらの極微針のアレイは、一層大容積の薬物の投与及び多数の薬剤の同時投与を可能にする。これらのアレイ中の極微針は、基材に取り付けることができる。
【0013】
他の面において、この発明は、上記の送達用デバイスの製造に関係する。その製造方法は、極微針を薬剤を含む溶液に浸すことを含むことができる。別の具体例においては、予め決めた体積の薬剤を一体化貯蔵器に分配する。
【0014】
他の面において、この発明は、薬剤を、生物学的バリアーを横切って投与する方法に関係する。この投与方法は、上記の極微針デバイスの一つを生物学的バリアーに対して適用し、それにより、そのバリアーに穴を開けて該一体化貯蔵器を該バリアーを超えて配置することを含む。一具体例において、この方法は、基材に結合された複数の極微針を用意することを含む。少なくとも一つの極微針は、一体化貯蔵器を限定する開口部を含む。この貯蔵器は、薬剤で満たされる。これらの複数の極微針を患者の皮膚に適用して、その皮膚に穴を開けて、該皮膚の表面の下に一体化貯蔵器を配置する。この刺し穴の深さは、極微針の少なくとも一つに結合されたデプスガードにより制限される。
【0015】
図面の簡単な説明
この発明は、下記の図を参照しての下記の説明から一層よく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】この発明の幾つかの説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針を描いている図である。
【図1B】この発明の幾つかの説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針を描いている図である。
【図1C】この発明の幾つかの説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針を描いている図である。
【図1D】この発明の幾つかの説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針を描いている図である。
【図2A】この発明の説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針のアレイを描いている図である。
【図2B】この発明の説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針のアレイを描いている図である。
【図2C】この発明の説明用具体例による、一体化された薬物貯蔵器を有する極微針のアレイを描いている図である。
【図3】この発明の説明用具体例による、薬剤で満たされた一体化薬物貯蔵器を有する極微針を描いている図である。
【図4】この発明の説明用具体例による、射出成形を利用する一体化薬物貯蔵器を有する極微針を形成する方法を描いている図である。
【図5】この発明の説明用具体例による、突き固め法を利用する一体化薬物貯蔵器を有する極微針を形成する方法を描いている図である。
【図6】この発明の説明用具体例による、化学エッチング技術を利用する一体化薬物貯蔵器を有する極微針を形成する方法を描いている図である。
【図7A】この発明の説明用具体例による、極微針一体化薬剤貯蔵器を満たすための方法を描いている図である。
【図7B】この発明の説明用具体例による、極微針一体化薬剤貯蔵器を満たすための方法を描いている図である。
【図7C】この発明の説明用具体例による、極微針一体化薬剤貯蔵器を満たすための方法を描いている図である。
【図7D】この発明の説明用具体例による、極微針一体化薬剤貯蔵器を満たすための方法を描いている図である。
【図8】この発明の具体例による、薬剤を経皮的に患者に投与する方法を示している図である。
【図9】この発明の具体例による、薬剤を経皮的に患者に投与する方法を示している図である。
【図10】この発明の説明用具体例による、一体化薬剤貯蔵器及び外部貯蔵器を有する極微針を組み込んだ医療用デバイス、及びその利用方法を描いている図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例証用具体例の説明
下記の説明中において、値の範囲は、特定の範囲、及び任意の一層小さい範囲、又はその範囲内の単一の値を示すことを意図している。従って、1〜10の範囲は、例えば、1〜10、3〜7、又は5を示す。加えて、同じ参照番号は、同じエレメントを示す。
【0018】
ここに開示したデバイスは、皮膚(又は、その部分);血液−脳関門;粘膜組織(例えば、口腔、鼻腔、眼、膣、尿道、胃腸、呼吸器);血管;リンパ管;又は細胞膜(例えば、物質の細胞内部への導入に関して)を含む生物学的バリアーを横切る物質の輸送に有用である。これらの生物学的バリアーは、ヒトのものであっても又は他の種類の動物のものであっても、並びに植物、昆虫、又は他の生物体のもの、及び胎児のものであってもよい。
【0019】
内部組織については、これらの極微針デバイスの適用は、カテーテル又は腹腔鏡の助成によって達成することができる。薬物の内部組織への送達などの、ある適用について、これらのデバイスは、外科的に移植することができる。
【0020】
皮膚は、ここに開示した極微針デバイスを用いる場合、特に有用な生物学的バリアーである。しかしながら、皮膚は、生物学的バリアーの一つの例に過ぎない。任意の生物学的バリアーが「皮膚」に取って代わりうることは理解されよう。
【0021】
特に、皮膚に関しては、角質層が外側層であり、一般に、10〜50細胞の即ち10〜20μmの厚さである。身体中の他の組織と異なり、この角質層は、架橋されたコラーゲン及びケラトヒアリンで満たされ、脂質の細胞外マトリクスに囲まれた「細胞」を含んでいる。多くの薬物の治療用経皮的投与を妨げるバリアー特性を皮膚に与えていると考えられているのは、この構造である。
【0022】
この角質層の下には、生存力のある表皮があり、それは、50〜100μmの厚みである。これらの生存力のある表皮は、血管を含まず、それは、代謝産物を、真皮との間での拡散によって交換している。これらの生存力のある表皮の下には、真皮があり、それは、1〜3mmの厚さで、血管、リンパ管、及び神経を含んでいる。
【0023】
図1A〜Cは、生物学的バリアーを横切って薬剤を送達するための3つのバージョンの薬剤送達用デバイス(一般に、薬剤送達用デバイス10と称される)を描いている。各薬剤送達用デバイス10は、この発明の説明用具体例による、一体化薬剤貯蔵器102を有する極微針(一般に、極微針100と称される)を含んでいる。極微針100は、極微突起、極微摩耗試験機、ミクロブレード、及び他の、生物学的バリアーの表面を貫通し、切り、又は分断するために用いられるエレメント(サブミクロン〜ミリメートルのスケール)を含んでいる。この極微針100は、金属、セラミック、半導体、有機体、ポリマー(例えば、生物分解性ポリマー)、及び複合体を含む様々な材料から構築することができる。好適な構築材料には、医療用等級のステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、金、錫、クロム、銅、これらの及び他の金属の合金、ケイ素、二酸化ケイ素、及びポリマーが含まれる。代表的な生物分解性ポリマーには、ヒドロキシ酸のポリマー例えば乳酸及びグリコール酸ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、及びPEG、ポリアンヒドリド、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、及びポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)とのコポリマーが含まれる。代表的な非生物分解性ポリマーには、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレンビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))、及びポリエステルが含まれる。
【0024】
一般に、極微針100は、バリアーに挿入される間、同じ場所に数日間維持される間、そして取り出される間、薬剤の送達に関して損なわれないままでいる機械的強度を有するべきである。しかしながら、極微針100が生物分解性ポリマーから形成される具体例において、この機械的必要条件は、極微針100又はその先端は、例えば皮膚において折れるかもしれず、生物分解されるので、一層厳重でない。それ故、生物分解性極微針100は、非生物分解性のものと比較して増大したレベルの安全性を提供することができる。それにもかかわらず、生物分解性極微針100でさえ、依然、少なくとも意図した目的(例えば、その送達機能)に役立つだけ十分長期にわたって破損しないままでいる必要がある。この極微針100は、好ましくは、標準的方法を用いて殺菌することが可能であるべきである。
【0025】
一般に、薬剤を極微針100によって送達する一つの利益は、極微針100は、患者の皮膚を分断しそれにより患者の血流へのアクセスを与えるが、患者の神経からの応答を生じるのに十分に深くは皮膚を分断しないことである。従って、極微針100による薬剤送達は、典型的には、標準的な注射式送達デバイスより痛くない。この目的のために、極微針100の高さ(又は、長さ)は、一般に、約100μm〜3mmである。経皮的適用において、極微針100の「挿入深さ」は、好ましくは、約100μm〜1mmであり、それで、極微針100の皮膚への挿入は、一層下の真皮に侵入しない。かかる適用において、極微針100の実際の長さは、極微針100の先端から離れた幾らかの部分は皮膚に挿入されないので、一層長くてもよく;この挿入されない長さは、特定のデバイスのデザイン及び構成による。
【0026】
傷及び患者への感染の危険を減じるために、極微針100は、10μm〜約2mmの、好ましくは、100〜300μmの幅に形成される。極微針100は、一般に、平面、円筒、円錐、又は方形の形状となる(他の多角形及び不規則な形状も適当であるが)。極微針100の遠位末端は、好ましくは、一点に向かって先細になっている。
【0027】
図1Aに示した薬剤送達用デバイス10aは、極微針100aを含む。極微針100aは、生物学的バリアー例えば皮膚を横切って送達すべき薬剤を保持するための一体化貯蔵器102を含む。一体化貯蔵器102は、極微針100aの側面を通過する開口部よりなる。この一体化貯蔵器102は、極微針100aの体積のかなりの部分を含む。例えば、貯蔵器102は、極微針100aの体積の10〜70%を含む。他の構成においては、この一体化貯蔵器102は、極微針100aの体積の20〜50%を含む。従って、一体化貯蔵器102に貯蔵される任意の薬剤の露出面積は、貯蔵される薬剤の全体積に対して比較的小さい。この一体化貯蔵器102は、極微針100aの物理的範囲内に完全に含まれる。一体化貯蔵器102は、事実上、任意の形状を取ることができる(多角形、不規則形、円形、又は楕円形)。
【0028】
図1Bは、薬剤を生物学的バリアーを横切って送達するための第二の薬剤送達用デバイス10bを描いている。この送達用デバイス10bは、この発明の第二の具体例による、一体化貯蔵器102を有する極微針100bを含む。この極微針100bは、ベースエレメント104に結合している。このベースエレメント104は、更なる強度及び安定性を与えるように極微針100bより一層広くてよい。
【0029】
この送達用デバイス10bは、ベースエレメント104が、挿入中に患者の皮膚の傷を広げるのを防止するために、デプスガード106を含む。このデプスガード106は、ベースエレメント104から極微針100bの遠位末端方向に向かって、ベースエレメント104を超える点まで伸びる固い部材である。別の具体例においては、デプスガード106は、極微針100bから、直接、実質的に垂直に、極微針100bの長さまで伸びる。両具体例において、極微針100bの患者の皮膚への適用の際に、デプスガード106はバリアーとして作用して、極微針100bが皮膚内に深く挿入されて一層広いベースエレメント104が更に皮膚表面を分断することを防止する。ベースエレメント104が実質的に極微針100bより広くない具体例においては、デプスガード106は、極微針100bが深く侵入しすぎるのを防止する。
【0030】
図1Cは、この発明の説明用具体例による、送達用デバイス10cの第三の説明用具体例を描いている。送達用デバイス10cは、一体化貯蔵器102を有する極微針100cを含む。図1A〜1Bに描いた送達用デバイス10a及び10bの特徴に加えて、送達用デバイス10cは、ベースエレメント104が結合された基材108を含む。説明用具体例において、基材108は、ベースエレメント104、極微針100c及びデプスガード106と一体的に形成されている。この基材は、例えば、300〜500μmの幅で、約400μm〜1mmの長さであってよい。示したように、基材108は、一般に、ベースエレメント104及び極微針100cに平行である(他の具体例では、基材108は、一般に、ベースエレメント104及び基材108に対して垂直又はある角度であるが)。この基材108は、複数の極微針100cをアレイに整列させるための2つの整列孔110を含む。これらの整列孔110は、例えば、約100〜300μm離れていてよく、直径約50〜200μmであってよい。
【0031】
図1Dに描いた送達用デバイス10dの他の具体例においては、極微針100dは、極微針100dの側面の全体を貫通しない一体化貯蔵器102dを含む。そうではなくて、一体化貯蔵器102dは、極微針100dの一つ以上の面に陥凹を造ることによって形成され、そこに薬剤を配置することができる。図1Aに関して上記した極微針100aの側面全体を貫通する一体化貯蔵器102のバージョンと同じく、陥凹型の一体化貯蔵器102dは、好ましくは、極微針100dの体積のかなりの部分を占める。この一体化貯蔵器102dは、事実上如何なる形状でも取ることができる(多角形、不規則形、円形、又は楕円形)。
【0032】
図2A〜2Cは、この発明の3つの説明用具体例による、極微針のアレイを示している。極微針のアレイ(一般に、極微針のアレイ200)は、例えば、制限はしないが、少なくとも次の3つの状況で有用である:1)単一の極微針100の貯蔵器102が効果的であるのに十分な体積の薬剤を保持できない場合;2)薬剤を生物学的バリアーの一層大きい表面積に送達することが望ましい場合;及び3)多数の薬剤を同時に投与すべきであって且つそれらの多数の薬剤が単一の極微針100一体化貯蔵器102中に貯蔵し又は投与するのに十分に相容性でない場合。
【0033】
図2Aは、この発明の説明用具体例による、2次元の極微針のアレイ200aを含む送達用デバイス10eを描いている。この2次元の極微針アレイ200aは、図1Aに関連して記載した4つの極微針100aを含む。この2次元極微針アレイ200a中に4つの極微針100aしか含まれていないのは、説明目的のためだけの理由によるものである。この2次元極微針アレイ200aは、一層少数の又は一層多数の極微針100aを含むことができる。例えば、この2次元極微針アレイ200aは、3つ程の少数の極微針100aを含むことができる。この極微針アレイ200aの次元数は、アレイ中の極微針100aの間の幾何学的関係を指し、従って、2つの極微針は、定義により、一次元のアレイしか形成することができない。2次元の極微針アレイは、16以上の多くの極微針100aを含むことができる。他の極微針100器具、例えば、制限はしないが、極微針100b〜100dは、2次元極微針アレイ200aに組み込まれうる。
【0034】
2次元極微針アレイ200a中の極微針100aは、基材108に結合されている。極微針100aは、基材108と一体的に形成されており、又はそれらは、例えば接着剤によって、基材108に物理的に結合されている。この2次元アレイ200aにおいて、基材108は、デプスガード106として役立つ。他の器具において、2次元アレイ200a上の少なくとも一つの極微針100aは、独立のデプスガード106を含む。
【0035】
図2Aに描いた2次元極微針アレイ200aにおいて、2つの極微針100aは、それらの対応する一体化貯蔵器102に貯蔵した第一の薬剤202aを含み、そして2つの極微針100aは、異なる薬剤202bを含む(以後、薬剤は、一般に、薬剤202と呼ぶ)。
【0036】
2次元極微針アレイ200aは又、基材108が患者の皮膚への接着のための接着剤でコートされる特徴をも含むことができる。この接着剤は、皮膚のしたに、極微針100の一体化貯蔵器102を、例えば該貯蔵器102に貯蔵された薬剤の徐々の吸収を可能にする延長された時間にわたって維持する。
【0037】
図2Bは、2次元極微針アレイ200bを有する送達用デバイス10fの第二の説明用具体例を描いている。2次元極微針アレイ200bは、4つの極微針100dを含む。極微針100dは、極微針100aと似ており、前に極微針100cにおいて描いたような整列用の孔110を更に有している。この2次元アレイ200bにおいて、整列用エレメント204は、極微針100dの整列用孔110を通過して、ベース構造206内に進む。極微針100cの間に、それらの間隔を維持してしっかりと据えるために、スペーサー208を配置することができる。
【0038】
図2Cは、この発明の説明用具体例による、一次元極微針アレイ200cを含む送達用デバイス10gを描いている。この一次元極微針アレイ200cは、10の極微針100cを含む。一次元極微針アレイ200cは、10より少ない(2程の)極微針100cを有することができ又は更なる極微針100cを含むことができる。この一次元極微針アレイ200cは、極微針の単一の一体化されたセットを製造することにより、又は独立に各極微針100cを形成してから一緒に結合することによって形成することができる。これらの極微針100cは、例えば、接着剤、ボンディング又は整列用エレメント204を利用して結合することができる。
【0039】
図3は、一体化貯蔵器102中に薬剤202を有する図1Bに描いた送達装置10bを描いている。用語薬剤は、単一の薬剤202又は幾つかの薬剤202の組合せを指す。薬剤202は、生物学的に活性であっても不活性であってもよい。試料薬剤202は、制限はしないが、薬物、ワクチン、抗原、賦形剤、抗凝固剤、界面活性剤、放射線染料若しくはマーカー、毒素、又は生物学的バリアー内への導入に適した任意の他の薬剤、化合物若しくは物質を包含する。貯蔵されれば、これらの薬剤202は、例えば、乾燥しているもの(例えば、フィルム)であってもよいし、半固体状のゲルであってもよい。
【0040】
薬剤202の一つのクラスは、抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染薬;フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブプレノルフィン及び鎮痛剤の組合せを含む鎮痛薬;食欲不振薬;抗関節炎薬;抗喘息薬例えばテルブタリン;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗糖尿病剤;止瀉薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗偏頭痛製剤;鎮暈製剤例えばスコポラミン及びオンダンセトロン;制嘔吐剤;抗新生物薬;パーキンソン病治療薬;止痒剤;抗精神病薬;解熱剤;胃腸及び泌尿器用を含む鎮痙薬;抗コリン作用薬;交感神経様作用薬;キサンチン誘導体;カルシウムチャンネルブロッカー例えばニフェジピンを含む心臓血管用製剤;ベータブロッカー;ベータ−アゴニスト例えばドブタミン及びリトドリン;抗不整脈剤;抗高血圧薬例えばアテノロール;ACEインヒビター例えばラニチジン;ジウレチクス;全身、冠動脈、末梢及び脳血管用を含む血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;咳及び感冒用製剤;鬱血除去剤;診断薬;ホルモン例えば副甲状腺ホルモン;催眠薬;免疫抑制剤;筋弛緩剤;副交感神経遮断剤;副交感神経刺激類似作用剤;プロスタグランジン;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静剤;及び精神安定剤を含む(但し、これらに限られない)すべての主な治療領域の治療剤を含む。これらの薬剤は、ペプチド、タンパク質、炭水化物(単糖類、オリゴ糖類及び多糖類を含む)、核タンパク質、ムコタンパク質、脂質タンパク質、糖タンパク質、核酸分子(任意の形態のDNA例えばcDNA、RNA、又はこれらの断片、オリゴヌクレオチド、及び遺伝子を含む)、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂質、生物学的に活性な有機若しくは無機分子、又はこれらの組合せの形態を取ることができる。
【0041】
薬剤202の更に特別の例は、制限はしないが、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インスリン、インスルトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−p−ロリナミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えば、HGH、HMG、デスモプレッシンアセテートなど)、濾胞ルテオイド、aANF、成長因子例えば成長因子放出因子(GFRF)、bMSH、GH、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来成長因子放出因子、アスパラギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、エポプロステノール(血小板凝集インヒビター)、グルカゴン、HCG、ヒルログ、ヒアルロニダーゼ、アルファインターフェロン、ベータインターフェロン、ガンマインターフェロン、インターロイキン、インターロイキン−10(IL−10)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、グルカゴン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体(例えば、ゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリン、及びナプファレリン、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)及びLH))、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、バソプレッシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレッシン、デスモプレッシン、コルチコトロピン(ACTH)、ACTH類似体例えばACTH(1−24)、ANP、ANPクリアランスインヒビター、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、セレダーゼ、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FAB断片、IgEペプチドサプレッサー、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモン及びアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTH類似体例えばPTH(1−34)、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲタイド、プロテインC、プロテインS、レニンインヒビター、チモシンアルファ−1、血栓溶解薬、TNF、バソプレッシンアンタゴニスト類似体、アルファ−1抗トリプシン(組換え体)、及びTGF−ベータを包含する。
【0042】
生物学的に活性な薬剤202は又、遊離塩基、酸、帯電した若しくはしてない分子、分子複合体の成分又は非刺激性の、薬理学的に許容しうる塩などの様々な形態であってもよい。更に、身体のpHで容易に加水分解される活性薬剤202の単純な誘導体(エーテル、エステル、アミドなど)を用いることができる。
【0043】
追加の薬剤202を、同じ一体化貯蔵器102に治療剤として貯蔵することができ、又はそれらは、別々の極微針100に一体化された一体化貯蔵器102に貯蔵することができる。例えば、一体化貯蔵器102は、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、アジピン酸、シトラコン酸、フマル酸、グルタル酸、イタコン酸、メグルトール、メサコン酸、コハク酸、シトラマル酸、タルトロン酸、クエン酸、トリカルバリル酸、エチレンジアミン四酢酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、炭酸、硫酸、リン酸、塩化水素酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、グリコール酸、グルコン酸、グルクロン酸、乳酸、ピルビン酸、タルトロン酸、プロピオン酸、ペンタン酸、炭酸、アジピン酸、シトラコン酸、及びレブリン酸などの粘度増強剤202を含むことができる。
【0044】
更なる潜在的薬剤202は、ナトリウムラウロアンホアセテート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、セチルピリジニウムクロリド(CPC)、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、ベンザルコニウムクロリド、ポリソルベート例えばツイーン20及びツイーン80、他のソルビタン誘導体例えばソルビタンラウレート、及びアルコキシル化アルコール例えばラウレス−4を含む(制限はしない)両性イオン性、両性、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性などの界面活性剤を包含する。
【0045】
更に別の有用な薬剤202は、ポリマー物質又は両親媒性を有するポリマー例えば制限はしないがセルロース誘導体例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、又はエチルヒドロキシ−エチルセルロース(EHEC)並びにプルロニックを包含する。
【0046】
一体化貯蔵器102における利用に適した更なる薬剤202は、生体適合性キャリアーを包含し、該キャリアーには、ヒトアルブミン、生物工学処理したヒトアルブミン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリヒスチジン、ペントサンポリサルフェート、ポリアミノ酸、スクロース、トレハロース、メレジトース、ラフィノース及びスタキオースが含まれるが、これらに限られない。
【0047】
安定剤202(非還元糖、多糖類又は還元糖を含むことができるが、制限はしない)を、一体化貯蔵器102に貯蔵することができる。この発明の方法及び組成物における利用に適した非還元糖には、例えば、スクロース、トレハロース、スタキオース、又はラフィノースが含まれる。この発明の方法及び組成物における利用に適した多糖類には、例えば、デキストラン、可溶性澱粉、デキストリン、及びインスリンが含まれる。この発明の方法及び組成物における利用に適した還元糖には、例えば、単糖類例えばアピオース、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、ジギトキソース、フコース、ケルシトール、キノボース、ラムノース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、ハマメロース、イドース、マンノース、タガトースなど;及び二糖類例えばピメベロース、ビシアノース、ルチノース、シラビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、メリビオース、ソホロース、及びツラノースなどが含まれる。
【0048】
他の薬剤202は、「経路開通性モジュレーター」を包含し、これは、浸透物質202(例えば、塩化ナトリウム)、双極性化合物(例えば、アミノ酸)及び抗炎症剤例えばベタメタゾン21−リン酸二ナトリウム塩、トリアムシノロンアセトニド21−二ナトリウムホスフェート、塩酸ヒドロコルメート、ヒドロコーチゾン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−リン酸二ナトリウム塩、メチルプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、パラメタゾン二ナトリウムホスフェート及びプレドニゾロン21−コハク酸ナトリウム塩、並びに抗凝固剤例えばクエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、硫酸デキストリンナトリウム、アスピリン及びEDTAを含むことができる(制限はしない)。
【0049】
この発明の更に別の具体例において、一体化貯蔵器102は、可溶化剤/錯化剤202例えばアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリン、ガンマ−シクロデキストリン、グルコシル−アルファ−シクロデキストリン、マルトシル−アルファ−シクロデキストリン、グルコシル−ベータ−シクロデキストリン、マルトシル−ベータ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルベータ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−ガンマ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−ベータ−シクロデキストリン、メチル−ベータ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−アルファ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−ベータ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル7ベータ−シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル−ガンマ−シクロデキストリンを含む。
【0050】
更なる追加の薬剤202は、非水性溶媒例えばエタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド及びポリエチレングリコール400を含む。
【0051】
一体化貯蔵器102の充填を容易にするために、親水性化合物を、一体化貯蔵器102を規定する極微針100の表面に塗布することができる。この親水性化合物は、次の群から選択することができる:ヒドロキシエチル澱粉、デキストラン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ビニルピロリドン)、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物並びに類似ポリマー。疎水性化合物例えばテフロン(登録商標)、ケイ素又は他の低エネルギー物質を、極微針100の残りに塗布することができる。或は、疎水性又は親水性化合物を、貯蔵器102を規定する表面を含む極微針102の全体に塗布することができる。
【0052】
図1A〜1Cに描いたような極微針100は、当分野で公知の様々な微細加工技術を利用して形成することができる。例えば、極微針100は、リソグラフィー;エッチング技術例えば湿式化学的、乾式及びフォトレジスト除去;ケイ素の熱酸化;電気めっき及び無電解めっき;拡散プロセス例えばホウ素、リン、ヒ素、及びアンチモンの拡散;イオン注入;フィルム沈着例えば蒸発(フィラメント、電子ビーム、フラッシュ及びシャドウイング及びステップカバーレージ)、スパッタリング、化学蒸着法(CVD)、エピタキシー(気相、液相及び分子ビーム)、電気めっき、スクリーン印刷、及びラミネーションを利用して加工することができる。一般に、Jaeger, Introduction to Microelectronic Fabrication (Addison-Wesley Publishing Co., Reading Mass. 1988);Runyan等、Semiconductor Integrated Circuit Processing Technology (Addison-Wesley Publishing Co., Reading Mass. 1990);Proceedings of the IEEE Micro Electro Mechanical Systems Conference 1987-1998;Rai-Choudhury等、Handbook of Microlithography. Micromachining & Microfabrication (SPIE Optical Engineering Press, Bellingham, Wash. 1997)を参照されたい。
【0053】
一層詳細には、図4A〜6Cは、図1A〜Cに関連して記載したような一体化薬剤貯蔵器102を有する極微針100を形成する特定の方法を描いている。
【0054】
図4Aは、この発明の説明用具体例による、射出成形技術を利用して極微針100を形成する方法を描いている。図4Aに描かれた第一の工程は、極微針射出成形用鋳型402を用意することを含む。この極微針射出成形用鋳型402は、上記の微細加工工程の少なくとも一つを利用して成形することができる。この極微針射出成形用鋳型402の内側は、極微針100の適当な特徴を含んでいる。図4Bに描かれた第二の工程において、溶融物質例えば溶融した金属又はプラスチックを極微針射出成形用鋳型402内に注入する。溶融物質が固化した後で、極微針射出成形用鋳型402を開けて、図4Cに描かれた極微針100aが生成される。
【0055】
類似の方法においては、極微針射出成形用鋳型402を、透明な物質から成形する。感光性物質を極微針射出成形用鋳型402に注入してから、例えば、紫外線を当てることにより凝固させる。この物質が凝固した後で、極微針射出成形用鋳型402を開けて極微針100aを生成する。
【0056】
図5A〜5Cは、この発明の一つの説明用具体例による、一体化貯蔵器102を有する極微針100を、突き固め法を利用して成形する方法を描いている。図5Aに描かれた第一の工程は、極微針突き固め用鋳型502を用意することを含む。図4Aに関して記載した極微針射出成形用鋳型502と同様に、極微針突き固め用鋳型502を、上記の微細加工技術の少なくとも一つを利用して成形することができる。図5Bに描いたように、この極微針突き固め用鋳型502を、次いで、極微針100を成形するために用いられる材料504に型押しする。この材料は、加熱して、型押し前に半固体又は液体状態にすることができる。もしこの材料を型押し前に加熱するならば、この材料は、極微針突き固め用鋳型502を除去する前に、冷却することができる。この極微針突き固め用鋳型502を除去した後で、過剰の材料があれば除去して、図5Cに描かれた一体化貯蔵器102を有する極微針100を生成する。この突き固め法は、極微針のストリップ又はシートを成形するのに利用することができる。加えて、基材を、リールトゥーリール様式で処理して、極微針の連続的鎖を生成することができる。
【0057】
図4A〜5Cに関連して記載した方法の更なる履行において、極微針100を、射出成形と突き固め法の両方を含む多段階工程を利用して成形することができる。例えば、極微針100(即ち、貯蔵器102を有しない極微針100)の外形を、射出成形又は第一の突き固め工程を利用して成形することができる。その後、型押しは、極微針100を貫いて一体化貯蔵器102を成形することができる。
【0058】
図6A〜6Cは、この発明の説明用具体例による、エッチング工程を利用して一体化貯蔵器102を有する極微針100を成形するモデルを描いている。図6Aに描いたような極微針100が成形される基材602を用意する。基材602は、半導体材料例えば酸化ケイ素、又は患者への挿入に適した任意の他の半導体材料から成形することができる。図6Bは、極微針100の特徴を規定するマスク604の基材602への適用を示している。例えば、このマスクは、貯蔵器部分606を含む。マスク604の化学組成は、エッチにおいて用いる化学による。かかるマスク/エッチ化学の組合せは、半導体基材処理の分野で周知である。例えば、Jansen等、「The Black Silicon Method IV: The Fabrication of Three-Dimensional Structure in Silicon with High Aspect Ratios for Scanning Probe Microscopy and Other Applications」、IEEE Proceedings of Micro Electro Mechanical Systems Conference, p.88-93 (1995)を参照されたい。図6A〜6Cに示したサンプルにおいて、反応性イオンは、マスク604によって保護されてない基材602の部分からエッチングによって去り、それにより、図6Cに描かれた極微針100が生成する。エッチングを、同時に多数の極微針100に利用することができる。例えば、多数の極微針100に対応するマスクを基材を横切って線状に又は二次元に置くことができる。
【0059】
他の具体例において、エッチング方法は、湿式化学エッチング又は湿式と乾式エッチングの組合せを包含する。例えば、最初の工程で、この方法は、極微針100の外側輪郭に対応する第一のマスク604を適用することを含む。乾式エッチングは、基材604のマスクされてない材料を除去する。その後、この方法は、一体化貯蔵器102を成形するために露出された極微針100の領域を残す第二のマスク604を適用することを含む。次いで、様々なエッチング方法及びエッチング時間を採用して、該貯蔵器102を成形する。
【0060】
図4A〜6Cに関連して上記した方法は又、極微針アレイ200を成形するために利用することもできる。特に、一次元の極微針アレイ200cは、乾式エッチング技術を利用して、全アレイ形状に対応するマスクを適用することにより、容易に成形することができる。
【0061】
図7A〜7Dは、この発明の説明用具体例による一体化貯蔵器102を充填する方法を描いている。この一体化貯蔵器102は、完全に充填してもよいし部分的に充填してもよい。図7Aにおいて、一体化貯蔵器102は、浸漬法を利用して充填される。この浸漬法は、極微針100を、薬剤202を含む水又は他の溶媒の溶液702aに物理的に浸漬することを含む。この溶液は、液体状態であっても半固体ゲル様状態であってもよい。この浸漬法は、一次元又は二次元の極微針アレイ200を充填するのによく適している。図3に関連して記載したように、一体化貯蔵器102の外表面は、親水性化合物701でコートすることができ、同時に、極微針100の残りの表面領域を、疎水性化合物703でコートすることができる。これらのコーティング及び表面張力の結果として、極微針100を溶液から取り出すと、一定体積の水溶液702aが、薬剤貯蔵器102内に残るが、極微針100の残りの表面領域は、実質的に、水溶液702aを有しない。別の具体例においては、コーティングを適用せず、残留水溶液702aは、重力のために極微針100から落ち、同時に、一体化貯蔵器102は、表面張力のために充填されたままでいる。
【0062】
図7Bは、この発明の説明用具体例による付着式貯蔵器充填法を描いている。この方法は、一体化貯蔵器102を有する極微針100を用意することを含む。分配装置704(例えば、マイクロピペット又は注射器)は、予め決めた体積の、所望の薬剤202を含む水溶液702bを、一体化貯蔵器102中に付着させる。この水溶液702bは、一体化貯蔵器102中で乾燥し又はゲルを形成する。上記のように、この極微針100の外表面及び一体化貯蔵器102の表面は、疎水性及び親水性化合物でコートしてこの付着方法を助成することができる。
【0063】
図7Cは、この発明の説明用具体例による第三の貯蔵器充填法を描いている。この方法は、平面705中に配置された一体化貯蔵器102を有する多数の極微針100を用意することを含む。分配装置706(例えば、マイクロピペット又は注射器)は、予め決めた体積の、所望の薬剤202を含む水溶液702cを、極微針100の一体化貯蔵器102中に付着させる(工程710)。この水溶液702cは、一体化貯蔵器102中で乾燥し又はゲルを形成する(工程712)。その後、成形用ツールを利用して、これらの極微針を、実質的に平面705に対して垂直になるように曲げる(工程714)。
【0064】
図7Dは、極微針100の貯蔵器102を充填する方法の更に別の履行を描いている。この方法は、平面内に配置された幾つかの極微針100を用意すること(工程720)を含む。これらの極微針100は、極微針100が対応するベースエレメント104と接する付近で平面状支持構造722に付着される。これらの極微針100の貯蔵器102に、次いで、薬剤200を充填する(工程724)。薬剤200が乾燥し又はゲルを形成した後で、これらの極微針100のベースエレメント104に力を加えて、極微針100を平面状構造の平面から外に回転させる(工程726)。
【0065】
薬剤202を一次元の極微針アレイ200c中に付着させる場合には、その方法は、各極微針100又は一次元アレイ中の極微針のサブセットに対応する多数の分配装置704を含むことができる。これらの多数の液体分配装置704は、すべて同じ薬剤を保持することができ、又はそれらは、異なる薬剤を保持することもできる。極微針100は、基材への付着前に充填することもできるし、又はそれらは、かかる付着後に充填することもできる。
【0066】
図8A〜9Cは、この発明の説明用具体例による一体化薬剤貯蔵器102を有する極微針100を利用して薬剤202を投与する方法を描いている。説明目的のために、これらの図中に示した生物学的バリアーは、患者の皮膚である。これらの示した方法は又、薬剤の他の生物学的バリアーを横切る投与にも適用される。図8A〜8Cは、薬剤202の、デプスガード106を有しない極微針100aを利用する、3ステップの投与を描いている(図9A〜9Cの極微針100bは、デプスガード106を有するが)。図8A〜9Cは、単一の極微針100a及び100bを利用する経皮送達を描いているが、その中に示されたこれらの方法は又、極微針アレイ200を利用する経皮送達に適用することもできる。
【0067】
図8Aに描いたように、典型的投与方法は、薬剤202を充填した一体化貯蔵器102を有する極微針100aを用意することを含む。次いで、極微針の利用者(例えば、患者、医師、看護士、認定看護士助手など)が、極微針100aを患者の皮膚802に適用し、それで、極微針100aは、皮膚802を突き通る。この極微針100aは、手動により適用することもできるし又は極微針100aを皮膚に向けて推し進める押込み装置を利用することにより適用することもできる。適用に際して、極微針100aは、図8Bに描かれたように、十分な深さまで達し、それで、一体化貯蔵器102は、皮膚802の表面下に位置されるが、患者における痛みの応答の引き金を引くのに十分な深さには達しない。患者の血流は、図8Cに描かれたように、薬剤貯蔵器102中の薬剤202を吸収する。
【0068】
図9A〜9Cは、図8A〜8Cと類似しているが、図9A〜9Cの極微針100bは、デプスガード106を含む。従って、極微針の利用者が、極微針100bを、患者の皮膚902に適用した場合に、極微針100bは、皮膚902を、デプスガード106が皮膚902の表面で止まる深さまで突き通る。図8A〜8Cで示した方法と同様に、この深さは、一体化貯蔵器102が皮膚902の表面下に位置するのに十分であり、そして極微針100bの適用が患者における痛みの応答の引き金を引かないだけ十分に浅い。図9Bに描いたように、デプスガード106は、一層広いベースエレメント104が極微針100bの適用により生じた刺し傷904を広げるのをも防止する。
【0069】
図10A〜10Eは、この発明の説明用具体例による、一体化薬剤貯蔵器1004を有する極微針1002及び外部貯蔵器1006を組み込んだ医療用デバイス1000、及び同デバイスを利用する方法を描いている。この医療用デバイス1000は、少なくとも一種の薬剤1008を貯蔵する外部貯蔵器1006を含む。極微針1002は、その一体化薬剤貯蔵器1004を外部貯蔵器1006の内部に引き込むことができ且つそれを外部貯蔵器1006の外に押し進めることができるように、外部貯蔵器1006の内側に格納可能に取り付けられている。この外部貯蔵器1006は、極微針1002がシール1010を通って、薬剤1008が外部貯蔵器1006から漏出することなく出し入れできるようにシールされている。
【0070】
運転においては、この極微針1002は、図10Aに描かれたように、格納された位置で始動し、それで、一体化貯蔵器1004は、外部貯蔵器1006内に位置されて、薬剤1008にさらされる。次いで、この医療用デバイス1000は、極微針1002を、図10Bに描いたように、外部貯蔵器1006から押し出し、生物学的バリアー1012を通過させる。一定体積の薬剤1008が、極微針1002の一体化貯蔵器1004内に、毛管力の結果として残り、それにより、薬剤1008が、生物学的バリアー1012を横切って輸送される。一体化貯蔵器1004内の薬剤1008が標的の生物学的組織に吸収される予め決めた時間の後に、極微針1002を、最初の位置に引き込み(図10C参照)、それで、一体化貯蔵器1004は、薬剤1008の追加の体積を充填される。その後、この方法を反復する(図10D及び10E参照)。
【0071】
この格納可能な極微針を有する医療用デバイス1000は、薬剤が長期間にわたって投与される状況において利用することができる。例えば、デバイス1008を、患者に移植することができ、これは、正確な用量で薬剤を内部で連続的に、外的介入を必要とせずに投与することを可能にする。
【0072】
この発明は、その精神又は本質的特徴から離れることなく、他の特定の形態で具体化することができる。それ故、前述の具体例は、この発明の制限ではなく、全面的に例証であると考えるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を生物学的バリアーを横切って送達するためのデバイスであって、下記を含む当該デバイス:
第一の極微針;
該極微針に一体化された、薬剤を保持するための第一の貯蔵器。
【請求項2】
生物学的バリアーが、皮膚である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
第一の貯蔵器が、極微針をある幅及び深さで通過する開口部よりなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
第一の貯蔵器が、極微針中に陥凹を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
第一の貯蔵器が、第一の極微針の体積のかなりの部分を占める、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
上記の部分が、第一の極微針の体積の約5〜70%である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
上記の部分が、第一の極微針の体積の約20〜50%である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
第一の極微針が、ステンレス鋼及びチタンの一つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
第一の極微針が、約150〜3000μm長である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
第一の極微針が、約300〜1500μm長である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
第一の極微針が、約10〜2000μm幅である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
第一の極微針が、約100〜500μm幅である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
薬剤が、皮内送達に適している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
薬剤が、薬物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
薬剤が、ワクチンを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
貯蔵器を、薬剤で充填する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
第二の極微針に一体化された第二の貯蔵器を有する第二の極微針を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
第一の貯蔵器が、第一の薬剤を含み、第二の貯蔵器が、同じ薬剤を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
第一の貯蔵器が、第一の薬剤を含み、第二の貯蔵器が、異なる薬剤を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
第一の極微針が、第一のベースエレメントから伸び、第二の極微針が、第二のベースエレメントから伸び、第一及び第二のベースエレメントが、共通の基材と結合している、請求項17に記載のデバイス。
【請求項21】
第一の極微針が使用者の皮膚に突き通ることのできる幅を制限するためのデプスガードを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
デプスガードが、第一の極微針、第一の極微針が伸びている基材、及び第一の極微針が伸びているベースエレメントの一つから伸びている、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
近位及び遠位末端を有するベースエレメントを含み、該ベースエレメントが、近位末端で遠位末端より広く、下記を特徴とする、請求項21に記載のデバイス:
第一の極微針が、ベースエレメントの遠位末端から伸びており、そして
デプスガードが、ベースエレメントを超えて、第一の極微針の遠位末端に向かって伸びている。
【請求項24】
生物分解性ステントの一つを含み、第一の極微針が、薬剤を血管バリアーを横切って送達するための生物分解性ステントに結合している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
外科用ツールを含み、極微針が、薬剤を内部生物学的バリアーを横切って送達するための該外科用ツールに結合されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
薬剤を生物学的バリアーを横切って送達するためのデバイスを製造する方法であって、下記を含む当該方法:
一体化された薬剤貯蔵器を有する極微針を用意し;そして
該一体化された薬剤貯蔵器に薬剤を充填する。
【請求項27】
一体化された薬剤貯蔵器の充填が、極微針を、薬剤を含む溶液に浸漬することを含む、請求項26に記載の薬剤を経皮送達するためのデバイスを製造する方法。
【請求項28】
一体化された薬剤貯蔵器の充填が、予め決めた体積の薬剤含む溶液を一体化された薬剤貯蔵器に付着させることを含む、請求項26に記載の薬剤を経皮送達するためのデバイスを製造する方法。
【請求項29】
一体化された薬剤貯蔵器の充填が、親水性化合物を一体化された薬剤貯蔵器の内側に塗布すること及び疎水性化合物を極微針の残りに塗布することを含む、請求項26に記載の薬剤を経皮送達するためのデバイスを製造する方法。
【請求項30】
請求項26に記載の薬剤を経皮送達するためのデバイスを製造する方法であって、下記を含む当該方法:
第二の一体化された薬剤貯蔵器を有する第二の極微針を用意し;
第一の極微針及び第二の極微針を基材に結合させ;そして
第二の一体化された薬剤貯蔵器に薬剤を充填する。
【請求項31】
薬剤を経皮的に送達する方法であって、該方法は、下記:
薬剤を充填した一体化薬剤貯蔵器を有する極微針を用意し;
該極微針を患者の皮膚に適用する
ことを含み、それにより、該極微針が該皮膚を突き通して該一体化貯蔵器を該皮膚の表面下に位置させることを特徴とする当該方法。
【請求項32】
経皮的薬剤送達のためのデバイスであって、下記を含む当該デバイス:
基材;
該基材に結合された対応するベースエレメントから伸びる複数の極微針であって、その体積の20〜50%を占めて一体化薬剤貯蔵器を規定する開口部を含む当該極微針;
及び
ベースエレメントの少なくとも一つから伸びる、複数の極微針が表面内に挿入されうる深さを制限するためのデプスガード。
【請求項33】
薬剤を経皮的に送達する方法であって、該方法は、下記:
基材に結合された複数の極微針であって、それらの少なくとも一つが薬剤を保持する一体化貯蔵器を規定する開口部を含む当該複数の極微針を用意し;
該基材を患者の皮膚に適用する
ことを含み、それにより、該皮膚を、極微針の少なくとも一つに結合されたデプスガードが許す深さまで突き通し、それで、一体化貯蔵器が該皮膚の表面下に来ることを特徴とする当該方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78646(P2013−78646A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−238(P2013−238)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2008−525284(P2008−525284)の分割
【原出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(503196606)バイオバルブ テクノロジーズ インコーポレイテッド (6)
【住所又は居所原語表記】9 Campus Drive,2nd Floor East Parsippany,NJ 07054 U.S.A.
【Fターム(参考)】