薬剤容器
本発明は、液状製剤用の薬剤容器（１）に関する。薬剤容器（１）は、排出口（３）及び形状記憶合金からなる少なくとも１つの変形部材（４）を備えた変形可能なバッグ（２）を含む。少なくとも１つの変形部材（４）は、形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグ（２）を変形するように配置され、それによって変形部材（４）の形状を変え、そして薬剤の投与量を、排出口（４）を通してバッグ（２）から絞り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、液状製剤用の薬剤容器、排出口を備えたバッグを含む薬剤容器に関する。
【背景技術】
【０００２】
多くの薬剤は体内に注入されなければならない。これは特に、例えば、タンパク質（インスリン、成長ホルモン及びインターフェロンなど）、糖類（例えば、ヘパリン）、抗体及びワクチンの大部分などの、経口投与によって失活する又はそれらの有効性が著しく低下する薬剤に当てはまる。そのような薬剤は主に、シリンジ、薬剤ペン又は薬剤ポンプを使って注入される。
【０００３】
いくつかの薬剤は、それらをいわゆる吸入器からの吸入によって投与されなければならない。
【０００４】
特許文献１は、吸入器を開示しており、その中で、吸入される薬剤は薬剤容器の形をしたバッグに保存される。
【０００５】
特許文献２は、患者に埋め込むことができる薬物送達デバイスを開示している。薬物送達デバイスには、薬物が放出できる少なくとも１つの排出口を備えた薬物用リザーバを含む。形状記憶合金を含む駆動部材は、その弾性特性によって、減少させる薬物がリザーバの容積を利用できるようにさせ、そしてリザーバ内の薬物をリザーバから排出させるように、その変形した形状から回復することによって、直接又は間接的にリザーバに対して作動させるために変形した形状で、デバイスに配置される。
【０００６】
特許文献３は、液状製剤用の薬剤容器を開示しており、その薬剤容器は排出口及び形状記憶合金からなる少なくとも１つの変形部材の付いた変形可能なバッグを含み、形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグを変形するように配置され、それによって変形部材の形状を変え、そして薬剤の投与量を排出口を通してバッグから絞り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】国際公開公報第２００９／０６９５１８Ａ１号
【特許文献２】国際公開公報第０２／０５８７６５Ａ１号
【特許文献３】ドイツ特許第１０２１９７５０Ｃ１号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明の目的は、より優れた送達の制御を提供する、改善された薬剤容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
その目的は、請求項１に記載の薬剤容器によって達成される。
【００１０】
本発明の好ましい実施態様は、従属クレームに示されている。
【００１１】
本発明に記載の液状製剤用の薬剤容器は、排出口及び形状記憶合金からなる少なくとも１つの変形部材を備えた変形可能なバッグを含む。少なくとも１つの変形部材は、形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグを変形するように配置され、それによって変形部材の形状が変わりそして薬剤の投与量を、排出口を通してバッグから絞り出す。
【００１２】
薬剤容器は、数個の連続した変形部材を含む。数個の独立に作動可能な変形部材は、変形部材を次々に作動させてバッグを増加的に空にすることにより、送達のより優れた制御を提供する。これは、例えば、数回の連続した投与量で薬剤を投与すべきときに有利である。
【００１３】
形状記憶合金からなる変形部材によって、変形可能なバッグは、形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するときに的確に変形される。変形部材を適切に配置することによって、バッグの変形が薬剤の投与量を、排出口を通してバッグから絞り出す。本発明のデザインは、従って、ピストンロッドのような外部の移動メカニズム無しで薬剤を押し出すことを可能にする。可動部品を必要としないので、摩擦は回避される。さらに本発明は、非常に軽量で、コンパクトなそして安価な薬剤容器を可能にする。
【００１４】
本発明の好ましい実施態様では、薬剤容器は、変形部材の温度を変えてその形状記憶合金の相転移を起こさせるための温度調節手段を含む。これは、変形部材の温度を変えることによって、変形部材の形状の変化及び薬剤の排出を起こすことを可能にする。
【００１５】
温度調節手段は、各変形部材を電源に接続するための電気的接続を含んでもよい。これは、電力を使う簡単で効果的な方法で変形部材の温度調節を可能にする。
【００１６】
代わりの実施態様では、形状記憶合金は、磁性形状記憶合金である。その形状又はサイズを変えるそのような合金の相転移は、加えた磁場によって誘導することができる。そのような合金の使用は、磁場によって引き起こされる相転移は温度誘導の相転移よりも迅速に且つより効率的にすることが出来るという利点を有する。
【００１７】
従って、この実施態様では、薬剤容器は、磁性形状記憶合金の相転移を起こさせる磁場を発生させるための少なくとも１つの磁場発生器を含むことが好ましい。
【００１８】
好ましくは、少なくとも１つの変形部材は、少なくともバッグの縦伸び部分にわたって伸びる。これは、変形部材によってバッグの少なくとも一部の変形を可能にする。
【００１９】
好ましくは、少なくとも１つの変形部材は、バッグの外面に位置する。そのような位置は、バッグの外面に位置する変形部材がバッグの少なくとも一部を収縮させることよってバッグを圧縮することを可能にする。
【００２０】
１つの実施態様では、少なくとも１つの変形部材は、その形状記憶合金の第１の相で真っ直ぐに伸び、その形状記憶合金の第２の相で螺旋状に巻き上げられる。この様式で変形部材を巻き上げると、薬剤がバッグの排出口を通って排出されるように変形可能バッグを巻き上げることが出来る。
【００２１】
好ましくは、この実施態様の薬剤容器は、少なくとも１つの変形部材がその形状記憶合金の第２の相で螺旋状に周囲に巻き上げられるコアを含む。コアは、変形部材が周囲に巻き上げられ、そしてそれによって変形部材が巻き上げられる様式を有利に調節し安定化させる軸を画成する。さらに、コアは、変形部材が巻き上げられたとき、かなりの量の薬剤がバッグの内側に残ることを回避させ、それによって薬剤の投与量の投与の精度を改善し、特に高価な薬剤の場合に有利な投与後のバッグの内側の残りを少なくする。
【００２２】
或いは又はさらに、少なくとも１つの変形部材はバッグの周囲に螺旋のままで広がり、その螺旋の半径は、形状記憶合金の第１の相におけるよりも第２の相においてより小さい。この実施態様では、バッグは、螺旋状の変形部材で包まれており、形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するとき螺旋の半径が減少することによって収縮及び圧縮され、それによって薬剤をバッグの排出口を通して放出させる。
【００２３】
好ましくは、この実施態様の薬剤容器は、螺旋の軸上に伸びるコアを含む。コアは、変形部材がその周囲に螺旋状になりそしてそれによって形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するときの螺旋の収縮を有利に調節し安定化させる軸を画成する。さらに、コアは、かなりの量の薬剤がバッグの内側に残ることを回避させ、そしてそれは上述した利益をもたらす。
【００２４】
さらなる実施態様では、薬剤容器は、数個の連続した変形部材、そして好ましくは変形部材の形状記憶合金の相転移を互いに独立に起こさせる温度調節手段又は少なくとも１つの磁場発生器を含む。そのような実施態様は、変形部材を次々に作動させてバッグを増加的に空にすることを可能にする。これは、例えば、数回の連続した投与量で薬剤を投与すべきときに有利である。
【００２５】
排出口は、中空注射針を受け容れるためのインターフェースを含んでもよい。或いは、その針は薬剤容器と一体化されていてもよい。
【００２６】
薬剤容器は、ヒト又は動物に液状製剤を送達するための注射装置又は吸入装置の一部であってもよい。
【００２７】
注射装置は、バルブ及び患者の皮膚を突き刺す中空針を含んでもよく、バルブ及び針は薬剤容器の排出口に配置される。ジェット式注射器の場合は、針の代わりに、ジェットノズルが配置されればよい。
【００２８】
薬剤容器は、鎮痛剤、抗凝固剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、タンパク質、抗体及び複合糖質の１つを送達するために使われる。
【００２９】
本発明の適用性のさらなる範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び改変は当業者にはこの詳細な説明から明らかになるので、詳細な説明及び特定の例は、発明の好ましい実施例を示しているが、例証としてだけの目的で示されると理解されるべきである。
【００３０】
本発明は、以下に示す詳細な説明及び例証としてのみ提示され、従って本発明を制限しない添付の図面から、より完全に理解されるようになる；
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】変形可能バッグ及び形状記憶合金からなる変形部材を含み、形状記憶合金の第１の相においてバッグの縦軸に沿って真直ぐに伸びる薬剤容器の概略断面図である。
【図２】変形部材及びバッグが螺旋状に巻き上げられる形状記憶合金の第２の相における図１の薬剤容器の概略断面図である。
【図３】変形可能バッグ及び数個の連続したループ様の形状記憶合金からなる変形部材を含み、各変形部材がそれぞれの形状記憶合金の相に依存した直径でバッグの周囲に１回巻きついた薬剤容器の概略断面図である。
【００３２】
全ての図面で対応するパーツは、同じ参照記号でマークされる。
【発明を実施するための形態】
【００３３】
図１は、薬剤容器１の最初の実施例の概略断面図であり、それは液状製剤を送達するための注射装置Ｉの一部分である。薬剤容器１は、排出口３及び変形部材４の付いた細長い変形可能バッグ２を含む。
【００３４】
変形部材４は、形状記憶合金からなり、形状記憶合金の第１の相においてバッグ２の縦軸に沿って真直ぐに伸びる。変形部材４は、バッグ２の外面に位置し、それに堅く取り付けられる。
【００３５】
バッグ２は、液状製剤を保存する。排出口３は、バッグ２の第１の末端２．１に位置し、薬剤容器１用のハウジング５に固定される。バッグ２の第２の末端２．２の近くに、薬剤容器１は硬質のコア６を含み、それは排出口３の変形部材４が位置する側とは反対側の外面に位置し、バッグ２に堅く取り付けられる。
【００３６】
変形部材４は、電気的接続７を介して電源に接続され、それを通して形状記憶合金の相転移を起こさせるための電気的エネルギーを変形部材４に供給することが出来る。
【００３７】
注射装置Ｉは、さらに、患者の皮膚を刺し刺すための中空針８を含む。針８は、薬剤がバッグ２の内部から排出口３を通って針８に流れるように、排出口３に接続される。図１に示される注射装置Ｉは、さらに針８を排出口３に取り付けるためのインターフェース９を含んでいてもよい。代りの実施態様では、針８は、インターフェース９無しでハウジング５又は薬剤容器１に堅く取り付けられていてもよい。
【００３８】
図２は、図１の注射装置Ｉ内の、形状記憶合金が第２の相にある薬剤容器１の概略断面図を示す。その相では、変形部材４は、バッグ２の第２の末端２．２を兼ねる第２の末端からバッグ２の第１の末端２．１を兼ねる第１の末端まで、螺旋状に巻き上げられる。バッグ２の第２の末端２．２に付けられたコア６の存在、及びバッグ２の外面への変形部材４の貼り付けの故に、変形部材４がコア６の周囲に螺旋状になりそれによって巻き上がり、薬剤がバッグ２から絞られ排出口３を通って針８に向かうようにバッグ２を圧縮する。バッグ２の第１の末端２．１をハウジング５に固定することは、従って、バッグ２の内部と排出口３の接続を維持する働きをする。
【００３９】
形状記憶合金の第１の相から第２の相への相転移は、形状記憶の温度を十分に高める電気的エネルギー量を、電気的接続７を通して変形部材４に供給することによって引き起こされる。
【００４０】
図３は、注射装置Ｉ内の、薬剤容器１の第２の実施態様の概略断面図を示す。図１及び２に示した第１の実施態様におけるように、薬剤容器１は、液状製剤を貯蔵するための細長い変形可能バッグ２を含み、バッグ２の第１の末端２．１は、針８に接続されるバッグ２の排出口３の位置でバッグ２のハウジング５に固定される。
【００４１】
第１の実施態様とは対照的に、薬剤容器１は、数個の連続したループ様の、形状記憶合金からなる変形部材４を含む。各変形部材４は、バッグ２の周囲のバッグ２の縦軸にほぼ直角な面に１回巻きつく。
【００４２】
さらに、薬剤容器１は、バッグ２の第１の末端２．１から第２の末端２．２に真直ぐにそしてこの縦軸とほぼ平行に伸びるコア６を含む。コア６は、バッグ２の内部又はバッグ２の外面若しくは内表面に位置すればよい。もしそれがバッグ２の内部に位置するなら、排出口３を閉じないように配置される。もしそれがバッグ２の外面に位置するなら、変形部材がコア６の周囲に巻きつくことが出来るように、全てのループ様の変形部材４を通して送り込まれる。
【００４３】
形状記憶合金の第１の相では、変形部材４は最初の直径Ｄを有する。第２の相では、それは最初の直径Ｄよりも小さい第２の直径ｄである。それ故、第１の相から第２の相に変化するとき、変形部材４はサイズが縮まり、それによって、それがバッグ２に巻きつく位置のバッグ２を圧縮する。
【００４４】
薬剤容器１は、連続する変形部材４の温度を互いに独立に変えるための温度調節手段（示されない）を含む。そのような温度調節手段は、バッグ２の第２の末端２．２に最も近い変形部材４からバッグ２の第１の末端２．１に最も近い変形部材４まで連続的に変形部材４に電気エネルギーを供給するため、それぞれの変形部材４を電源と接続するための電気的接続を含んでいてもよい。この方法で、バッグ２は、第２の末端２．２から第１の末端２．１まで連続的に空にすることが出来る。図３は、バッグ２の後部の第２の末端２．２が対応する変形部材４の収縮によって既に空になったが、バッグ２の残りの部分は未だ液状製剤で満たされている場合の、バッグ２のそのような連続的排出の中間段階を示す。
【００４５】
薬剤容器１は、好ましくは、鎮痛剤、抗凝固剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、タンパク質、抗体及び複合糖質の１つを送達するために使用し得る。
【００４６】
参照記号表
１ 薬剤容器；
２ バッグ；
２．１ 第１の末端；
２．２ 第２の末端；
３ 排出口；
４ 変形部材；
５ ハウジング；
６ コア；
７ 電気的接続；
８ 針；
９ インターフェース；
Ｄ 第１の直径；
ｄ 第２の直径；
Ｉ 注射装置。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、液状製剤用の薬剤容器、排出口を備えたバッグを含む薬剤容器に関する。
【背景技術】
【０００２】
多くの薬剤は体内に注入されなければならない。これは特に、例えば、タンパク質（インスリン、成長ホルモン及びインターフェロンなど）、糖類（例えば、ヘパリン）、抗体及びワクチンの大部分などの、経口投与によって失活する又はそれらの有効性が著しく低下する薬剤に当てはまる。そのような薬剤は主に、シリンジ、薬剤ペン又は薬剤ポンプを使って注入される。
【０００３】
いくつかの薬剤は、それらをいわゆる吸入器からの吸入によって投与されなければならない。
【０００４】
特許文献１は、吸入器を開示しており、その中で、吸入される薬剤は薬剤容器の形をしたバッグに保存される。
【０００５】
特許文献２は、患者に埋め込むことができる薬物送達デバイスを開示している。薬物送達デバイスには、薬物が放出できる少なくとも１つの排出口を備えた薬物用リザーバを含む。形状記憶合金を含む駆動部材は、その弾性特性によって、減少させる薬物がリザーバの容積を利用できるようにさせ、そしてリザーバ内の薬物をリザーバから排出させるように、その変形した形状から回復することによって、直接又は間接的にリザーバに対して作動させるために変形した形状で、デバイスに配置される。
【０００６】
特許文献３は、液状製剤用の薬剤容器を開示しており、その薬剤容器は排出口及び形状記憶合金からなる少なくとも１つの変形部材の付いた変形可能なバッグを含み、形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグを変形するように配置され、それによって変形部材の形状を変え、そして薬剤の投与量を排出口を通してバッグから絞り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００７】
【特許文献１】国際公開公報第２００９／０６９５１８Ａ１号
【特許文献２】国際公開公報第０２／０５８７６５Ａ１号
【特許文献３】ドイツ特許第１０２１９７５０Ｃ１号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明の目的は、より優れた送達の制御を提供する、改善された薬剤容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
その目的は、請求項１に記載の薬剤容器によって達成される。
【００１０】
本発明の好ましい実施態様は、従属クレームに示されている。
【００１１】
本発明に記載の液状製剤用の薬剤容器は、排出口及び形状記憶合金からなる少なくとも１つの変形部材を備えた変形可能なバッグを含む。少なくとも１つの変形部材は、形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグを変形するように配置され、それによって変形部材の形状が変わりそして薬剤の投与量を、排出口を通してバッグから絞り出す。
【００１２】
薬剤容器は、数個の連続した変形部材を含む。数個の独立に作動可能な変形部材は、変形部材を次々に作動させてバッグを増加的に空にすることにより、送達のより優れた制御を提供する。これは、例えば、数回の連続した投与量で薬剤を投与すべきときに有利である。
【００１３】
形状記憶合金からなる変形部材によって、変形可能なバッグは、形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するときに的確に変形される。変形部材を適切に配置することによって、バッグの変形が薬剤の投与量を、排出口を通してバッグから絞り出す。本発明のデザインは、従って、ピストンロッドのような外部の移動メカニズム無しで薬剤を押し出すことを可能にする。可動部品を必要としないので、摩擦は回避される。さらに本発明は、非常に軽量で、コンパクトなそして安価な薬剤容器を可能にする。
【００１４】
本発明の好ましい実施態様では、薬剤容器は、変形部材の温度を変えてその形状記憶合金の相転移を起こさせるための温度調節手段を含む。これは、変形部材の温度を変えることによって、変形部材の形状の変化及び薬剤の排出を起こすことを可能にする。
【００１５】
温度調節手段は、各変形部材を電源に接続するための電気的接続を含んでもよい。これは、電力を使う簡単で効果的な方法で変形部材の温度調節を可能にする。
【００１６】
代わりの実施態様では、形状記憶合金は、磁性形状記憶合金である。その形状又はサイズを変えるそのような合金の相転移は、加えた磁場によって誘導することができる。そのような合金の使用は、磁場によって引き起こされる相転移は温度誘導の相転移よりも迅速に且つより効率的にすることが出来るという利点を有する。
【００１７】
従って、この実施態様では、薬剤容器は、磁性形状記憶合金の相転移を起こさせる磁場を発生させるための少なくとも１つの磁場発生器を含むことが好ましい。
【００１８】
好ましくは、少なくとも１つの変形部材は、少なくともバッグの縦伸び部分にわたって伸びる。これは、変形部材によってバッグの少なくとも一部の変形を可能にする。
【００１９】
好ましくは、少なくとも１つの変形部材は、バッグの外面に位置する。そのような位置は、バッグの外面に位置する変形部材がバッグの少なくとも一部を収縮させることよってバッグを圧縮することを可能にする。
【００２０】
１つの実施態様では、少なくとも１つの変形部材は、その形状記憶合金の第１の相で真っ直ぐに伸び、その形状記憶合金の第２の相で螺旋状に巻き上げられる。この様式で変形部材を巻き上げると、薬剤がバッグの排出口を通って排出されるように変形可能バッグを巻き上げることが出来る。
【００２１】
好ましくは、この実施態様の薬剤容器は、少なくとも１つの変形部材がその形状記憶合金の第２の相で螺旋状に周囲に巻き上げられるコアを含む。コアは、変形部材が周囲に巻き上げられ、そしてそれによって変形部材が巻き上げられる様式を有利に調節し安定化させる軸を画成する。さらに、コアは、変形部材が巻き上げられたとき、かなりの量の薬剤がバッグの内側に残ることを回避させ、それによって薬剤の投与量の投与の精度を改善し、特に高価な薬剤の場合に有利な投与後のバッグの内側の残りを少なくする。
【００２２】
或いは又はさらに、少なくとも１つの変形部材はバッグの周囲に螺旋のままで広がり、その螺旋の半径は、形状記憶合金の第１の相におけるよりも第２の相においてより小さい。この実施態様では、バッグは、螺旋状の変形部材で包まれており、形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するとき螺旋の半径が減少することによって収縮及び圧縮され、それによって薬剤をバッグの排出口を通して放出させる。
【００２３】
好ましくは、この実施態様の薬剤容器は、螺旋の軸上に伸びるコアを含む。コアは、変形部材がその周囲に螺旋状になりそしてそれによって形状記憶合金が第１の相から第２の相に変化するときの螺旋の収縮を有利に調節し安定化させる軸を画成する。さらに、コアは、かなりの量の薬剤がバッグの内側に残ることを回避させ、そしてそれは上述した利益をもたらす。
【００２４】
さらなる実施態様では、薬剤容器は、数個の連続した変形部材、そして好ましくは変形部材の形状記憶合金の相転移を互いに独立に起こさせる温度調節手段又は少なくとも１つの磁場発生器を含む。そのような実施態様は、変形部材を次々に作動させてバッグを増加的に空にすることを可能にする。これは、例えば、数回の連続した投与量で薬剤を投与すべきときに有利である。
【００２５】
排出口は、中空注射針を受け容れるためのインターフェースを含んでもよい。或いは、その針は薬剤容器と一体化されていてもよい。
【００２６】
薬剤容器は、ヒト又は動物に液状製剤を送達するための注射装置又は吸入装置の一部であってもよい。
【００２７】
注射装置は、バルブ及び患者の皮膚を突き刺す中空針を含んでもよく、バルブ及び針は薬剤容器の排出口に配置される。ジェット式注射器の場合は、針の代わりに、ジェットノズルが配置されればよい。
【００２８】
薬剤容器は、鎮痛剤、抗凝固剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、タンパク質、抗体及び複合糖質の１つを送達するために使われる。
【００２９】
本発明の適用性のさらなる範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び改変は当業者にはこの詳細な説明から明らかになるので、詳細な説明及び特定の例は、発明の好ましい実施例を示しているが、例証としてだけの目的で示されると理解されるべきである。
【００３０】
本発明は、以下に示す詳細な説明及び例証としてのみ提示され、従って本発明を制限しない添付の図面から、より完全に理解されるようになる；
【図面の簡単な説明】
【００３１】
【図１】変形可能バッグ及び形状記憶合金からなる変形部材を含み、形状記憶合金の第１の相においてバッグの縦軸に沿って真直ぐに伸びる薬剤容器の概略断面図である。
【図２】変形部材及びバッグが螺旋状に巻き上げられる形状記憶合金の第２の相における図１の薬剤容器の概略断面図である。
【図３】変形可能バッグ及び数個の連続したループ様の形状記憶合金からなる変形部材を含み、各変形部材がそれぞれの形状記憶合金の相に依存した直径でバッグの周囲に１回巻きついた薬剤容器の概略断面図である。
【００３２】
全ての図面で対応するパーツは、同じ参照記号でマークされる。
【発明を実施するための形態】
【００３３】
図１は、薬剤容器１の最初の実施例の概略断面図であり、それは液状製剤を送達するための注射装置Ｉの一部分である。薬剤容器１は、排出口３及び変形部材４の付いた細長い変形可能バッグ２を含む。
【００３４】
変形部材４は、形状記憶合金からなり、形状記憶合金の第１の相においてバッグ２の縦軸に沿って真直ぐに伸びる。変形部材４は、バッグ２の外面に位置し、それに堅く取り付けられる。
【００３５】
バッグ２は、液状製剤を保存する。排出口３は、バッグ２の第１の末端２．１に位置し、薬剤容器１用のハウジング５に固定される。バッグ２の第２の末端２．２の近くに、薬剤容器１は硬質のコア６を含み、それは排出口３の変形部材４が位置する側とは反対側の外面に位置し、バッグ２に堅く取り付けられる。
【００３６】
変形部材４は、電気的接続７を介して電源に接続され、それを通して形状記憶合金の相転移を起こさせるための電気的エネルギーを変形部材４に供給することが出来る。
【００３７】
注射装置Ｉは、さらに、患者の皮膚を刺し刺すための中空針８を含む。針８は、薬剤がバッグ２の内部から排出口３を通って針８に流れるように、排出口３に接続される。図１に示される注射装置Ｉは、さらに針８を排出口３に取り付けるためのインターフェース９を含んでいてもよい。代りの実施態様では、針８は、インターフェース９無しでハウジング５又は薬剤容器１に堅く取り付けられていてもよい。
【００３８】
図２は、図１の注射装置Ｉ内の、形状記憶合金が第２の相にある薬剤容器１の概略断面図を示す。その相では、変形部材４は、バッグ２の第２の末端２．２を兼ねる第２の末端からバッグ２の第１の末端２．１を兼ねる第１の末端まで、螺旋状に巻き上げられる。バッグ２の第２の末端２．２に付けられたコア６の存在、及びバッグ２の外面への変形部材４の貼り付けの故に、変形部材４がコア６の周囲に螺旋状になりそれによって巻き上がり、薬剤がバッグ２から絞られ排出口３を通って針８に向かうようにバッグ２を圧縮する。バッグ２の第１の末端２．１をハウジング５に固定することは、従って、バッグ２の内部と排出口３の接続を維持する働きをする。
【００３９】
形状記憶合金の第１の相から第２の相への相転移は、形状記憶の温度を十分に高める電気的エネルギー量を、電気的接続７を通して変形部材４に供給することによって引き起こされる。
【００４０】
図３は、注射装置Ｉ内の、薬剤容器１の第２の実施態様の概略断面図を示す。図１及び２に示した第１の実施態様におけるように、薬剤容器１は、液状製剤を貯蔵するための細長い変形可能バッグ２を含み、バッグ２の第１の末端２．１は、針８に接続されるバッグ２の排出口３の位置でバッグ２のハウジング５に固定される。
【００４１】
第１の実施態様とは対照的に、薬剤容器１は、数個の連続したループ様の、形状記憶合金からなる変形部材４を含む。各変形部材４は、バッグ２の周囲のバッグ２の縦軸にほぼ直角な面に１回巻きつく。
【００４２】
さらに、薬剤容器１は、バッグ２の第１の末端２．１から第２の末端２．２に真直ぐにそしてこの縦軸とほぼ平行に伸びるコア６を含む。コア６は、バッグ２の内部又はバッグ２の外面若しくは内表面に位置すればよい。もしそれがバッグ２の内部に位置するなら、排出口３を閉じないように配置される。もしそれがバッグ２の外面に位置するなら、変形部材がコア６の周囲に巻きつくことが出来るように、全てのループ様の変形部材４を通して送り込まれる。
【００４３】
形状記憶合金の第１の相では、変形部材４は最初の直径Ｄを有する。第２の相では、それは最初の直径Ｄよりも小さい第２の直径ｄである。それ故、第１の相から第２の相に変化するとき、変形部材４はサイズが縮まり、それによって、それがバッグ２に巻きつく位置のバッグ２を圧縮する。
【００４４】
薬剤容器１は、連続する変形部材４の温度を互いに独立に変えるための温度調節手段（示されない）を含む。そのような温度調節手段は、バッグ２の第２の末端２．２に最も近い変形部材４からバッグ２の第１の末端２．１に最も近い変形部材４まで連続的に変形部材４に電気エネルギーを供給するため、それぞれの変形部材４を電源と接続するための電気的接続を含んでいてもよい。この方法で、バッグ２は、第２の末端２．２から第１の末端２．１まで連続的に空にすることが出来る。図３は、バッグ２の後部の第２の末端２．２が対応する変形部材４の収縮によって既に空になったが、バッグ２の残りの部分は未だ液状製剤で満たされている場合の、バッグ２のそのような連続的排出の中間段階を示す。
【００４５】
薬剤容器１は、好ましくは、鎮痛剤、抗凝固剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、ロベノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、タンパク質、抗体及び複合糖質の１つを送達するために使用し得る。
【００４６】
参照記号表
１ 薬剤容器；
２ バッグ；
２．１ 第１の末端；
２．２ 第２の末端；
３ 排出口；
４ 変形部材；
５ ハウジング；
６ コア；
７ 電気的接続；
８ 針；
９ インターフェース；
Ｄ 第１の直径；
ｄ 第２の直径；
Ｉ 注射装置。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
液状製剤用の薬剤容器（１）であって、排出口（３）、及び形状記憶合金から成り、その形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグ（２）を変形し、それによって変形部材（４）の形状を変え、そして薬剤の投与量を、排出口（４）を通してバッグ（２）から絞り出す、少なくとも１つの変形部材（４）を備えた変形可能なバッグ（２）を含み、数個の連続した変形部材（４）によって特徴付けられる、薬剤容器（１）。
【請求項２】
変形部材（４）の温度を変えて、その形状記憶合金の相転移を起こさせるための温度調節手段によって特徴付けられる、請求項１に記載の薬剤容器（１）。
【請求項３】
温度調節手段が、各変形部材４を電源に接続するための電気的接続（７）を含むことを特徴とする、請求項２に記載の薬剤容器（１）。
【請求項４】
形状記憶合金が磁性形状記憶合金であることを特徴とする、請求項１に記載の薬剤容器（１）。
【請求項５】
磁性形状記憶合金の相転移を起こさせる磁場を発生させるための少なくとも１つの磁場発生器によって特徴付けられる、請求項４に記載の薬剤容器（１）。
【請求項６】
少なくとも１つの変形部材（４）が、少なくともバッグ（２）の縦伸び部分にわたって伸びることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項７】
少なくとも１つの変形部材（４）がバッグ（２）の外面に位置することを特徴とする、請求項１〜６のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項８】
少なくとも１つの変形部材（４）が、その形状記憶合金の第１の相で真っ直ぐに伸び、そしてその形状記憶合金の第２の相で螺旋状に巻き上げられることを特徴とする、請求項６又は７に記載の薬剤容器（１）。
【請求項９】
少なくとも１つの変形部材（４）が、その形状記憶合金の第２の相で螺旋状に周囲に巻き上げられるコア（６）によって特徴付けられる、請求項８に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１０】
少なくとも１つの変形部材（４）が、バッグ（２）の周囲に螺旋のままで伸び、その螺旋の半径は、形状記憶合金の第１の相におけるよりも第２の相においてより小さいことを特徴とする、請求項６〜９のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１１】
螺旋の軸上に伸びるコア（６）によって特徴付けられる、請求項１０記載の薬剤容器（１）。
【請求項１２】
連続した変形部材（４）の形状記憶合金の相転移を互いに独立に起こさせる温度調節手段又は少なくとも１つの磁場発生器によって特徴付けられる、請求項１〜１１のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１３】
請求項１〜１２のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）を含む液状製剤を送達するための、注射装置（Ｉ）。
【請求項１４】
患者の皮膚に刺し刺すためのバルブ及び中空針（８）が、排出口（３）に配置されることを特徴とする、請求項１３記載の注射装置（Ｉ）。
【請求項１５】
請求項１〜１２のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）を含む、液状製剤を送達するための吸入装置。
【請求項１】
液状製剤用の薬剤容器（１）であって、排出口（３）、及び形状記憶合金から成り、その形状記憶合金が相転移によって第１の相から第２の相に変化するときに変形可能なバッグ（２）を変形し、それによって変形部材（４）の形状を変え、そして薬剤の投与量を、排出口（４）を通してバッグ（２）から絞り出す、少なくとも１つの変形部材（４）を備えた変形可能なバッグ（２）を含み、数個の連続した変形部材（４）によって特徴付けられる、薬剤容器（１）。
【請求項２】
変形部材（４）の温度を変えて、その形状記憶合金の相転移を起こさせるための温度調節手段によって特徴付けられる、請求項１に記載の薬剤容器（１）。
【請求項３】
温度調節手段が、各変形部材４を電源に接続するための電気的接続（７）を含むことを特徴とする、請求項２に記載の薬剤容器（１）。
【請求項４】
形状記憶合金が磁性形状記憶合金であることを特徴とする、請求項１に記載の薬剤容器（１）。
【請求項５】
磁性形状記憶合金の相転移を起こさせる磁場を発生させるための少なくとも１つの磁場発生器によって特徴付けられる、請求項４に記載の薬剤容器（１）。
【請求項６】
少なくとも１つの変形部材（４）が、少なくともバッグ（２）の縦伸び部分にわたって伸びることを特徴とする、請求項１〜５のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項７】
少なくとも１つの変形部材（４）がバッグ（２）の外面に位置することを特徴とする、請求項１〜６のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項８】
少なくとも１つの変形部材（４）が、その形状記憶合金の第１の相で真っ直ぐに伸び、そしてその形状記憶合金の第２の相で螺旋状に巻き上げられることを特徴とする、請求項６又は７に記載の薬剤容器（１）。
【請求項９】
少なくとも１つの変形部材（４）が、その形状記憶合金の第２の相で螺旋状に周囲に巻き上げられるコア（６）によって特徴付けられる、請求項８に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１０】
少なくとも１つの変形部材（４）が、バッグ（２）の周囲に螺旋のままで伸び、その螺旋の半径は、形状記憶合金の第１の相におけるよりも第２の相においてより小さいことを特徴とする、請求項６〜９のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１１】
螺旋の軸上に伸びるコア（６）によって特徴付けられる、請求項１０記載の薬剤容器（１）。
【請求項１２】
連続した変形部材（４）の形状記憶合金の相転移を互いに独立に起こさせる温度調節手段又は少なくとも１つの磁場発生器によって特徴付けられる、請求項１〜１１のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）。
【請求項１３】
請求項１〜１２のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）を含む液状製剤を送達するための、注射装置（Ｉ）。
【請求項１４】
患者の皮膚に刺し刺すためのバルブ及び中空針（８）が、排出口（３）に配置されることを特徴とする、請求項１３記載の注射装置（Ｉ）。
【請求項１５】
請求項１〜１２のいずれか１項に記載の薬剤容器（１）を含む、液状製剤を送達するための吸入装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公表番号】特表２０１３−５０４３４８（Ｐ２０１３−５０４３４８Ａ）
【公表日】平成２５年２月７日（２０１３．２．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１２−５２８３４５（Ｐ２０１２−５２８３４５）
【出願日】平成２２年９月８日（２０１０．９．８）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２０１０／０６３１３７
【国際公開番号】ＷＯ２０１１／０２９８２８
【国際公開日】平成２３年３月１７日（２０１１．３．１７）
【出願人】（３９７０５６６９５）サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Ｆターム（参考）】
【公表日】平成２５年２月７日（２０１３．２．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年９月８日（２０１０．９．８）
【国際出願番号】ＰＣＴ／ＥＰ２０１０／０６３１３７
【国際公開番号】ＷＯ２０１１／０２９８２８
【国際公開日】平成２３年３月１７日（２０１１．３．１７）
【出願人】（３９７０５６６９５）サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Ｆターム（参考）】
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