説明

薬剤投与装置を管理するためのシステム

述べられている例示的方法およびシステムでは、医療機器は、例えば、情報をローカルおよびサーバーの別のデータベースに格納することができる。機器が故障するまたは患者が第2の機器に移動される場合、情報は、第2の機器が、最初の医療機器が中止した時点での複雑な治療を再開できるように、第2の機器に転送されることができる。複雑な治療システムを再開するのに必要なデータには、当該薬物に対する患者の生理学的反応を取得するモデルに従う、特定の基本的な患者特有のパラメータを含めることができる。その結果、第2の機器が複雑な治療を再開し、最初の一連の基本的な前提に逆戻りする必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「Systems and Methods for Managing and Delivering Patient Therapy through Electronic Drug Delivery Systems」という題を有する、2009年12月17日に出願された、米国仮出願特許第61/287,579号明細書の非仮出願である、2010年12月16日に出願された米国特許第12/970,777号明細書の利益および優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、薬剤治療の自動化に関し、より詳細には、例えば、注入ポンプ、および患者の生理学的特徴や治療に対する反応を測定するためのセンサー、モニター、またはメーターを含む、電子薬剤投与システムにより患者の治療を管理および提供するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
入院患者の処置には、多くの場合、静脈点滴(IV)注入ポンプを通して、液体、薬剤、および栄養の投与に合わせて、1つまたは複数の生理学的パラメータを制御することが含まれている。現在のシステムは、臨床医がモニターされた変数と「書類による」プロトコルに基づき、手作業で注入レートを調整することによる治療介入に頼っており、その調整は経験および/または医学文献に提示されるエビデンスから導かれている。
【0004】
しかしながら、手動の制御(滴定)プロセスでは、ケア提供者に重荷となり、患者に対して最適なケアを達成できない場合がある。一部においては、これは生理学的制御の問題の複雑さ、患者の状態のモニターに活用できるリソースが限定されていること、および適合プロトコルの静的特性のためである。人による介入はさらに、例えば、計算、データ入力、またはIVポンプのプログラミングの間に投薬上の誤りが入り込んでしまう機会も与えてしまう。さらに、ベッドサイドの看護師により使用される書類による医療計画および/またはノモグラムは、必然的に簡単なものの場合があり、広く多様な患者の薬物感受性、非線形の薬物反応特性、および時間経過による動的特性を補償することは不可能な場合がある。
【0005】
人による介入を利用する可能性のある処置が必要な状態の一例として、高血糖症または高血糖は、血漿のグルコース循環の量が過剰な状態である。顕著な高血糖症は、急性罹患患者のおよそ75%に発生しており、罹患率および死亡率の深刻な増大と関連付けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】GoodwinおよびSin著、Adaptive Filtering, Prediction and Control、1984
【非特許文献2】Cannon、C.、J.Dingemanse、C.Kleinbloesem、T.Jannett、K.Curry、およびC.Valcke著、「Automated Heparin−Delivery System to Control Activated Partial Thromboplastin Time: Evaluation in Normal Volunteers」、Circulation、1999年、99:751〜756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
研究によると、インスリンの静脈点滴(IV)注入により通常の血中グルコースレベルを維持することが、急性罹患患者の治療結果の改善につながる場合があることが示されている。このような訳で、高血糖症の処置では、可能な場合には根本原因の除去が必要とされ、例えば、糖尿病が原因の場合には、糖尿病の治療、そして多くの場合、医学的監視の下で、インスリンの直接投与が行われる。しかし、集中的なインスリン治療を伴う高血糖症を治療するための現在の臨床診療は、頻繁な(1〜2時間)血中グルコースの測定、そしてその後のIVインスリンの注入レートの手作業による調整を伴う負担となる業務である。インスリンの注入の変更は、患者ごとの相違を適切に示すことができずに、高血糖症の高いリスクを示す場合がある、プロトコルにより指示される。したがって、医療スタッフによる人による監督では、ヒューマンエラーの発生の可能性が増大する場合があり、薬物治療に対する特定の患者の反応を考慮していないことがよくある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で述べられている方法例では、電子薬剤投与システムを通して患者の治療を管理および提供するための方法が提供されており、それには、注入ポンプ、ならびに患者の生理学的特性または治療に対する反応を測定するためのセンサー、モニター、またはメーターが含まれる場合がある。方法には、患者に対応する患者IDを受信する患者に接続された第1薬剤投与システムを含んでおり、第1薬剤投与システムは、(i)患者に提供される治療および(ii)治療に対して観察された患者特有の反応に基づき、基本となる患者特有の制御変数を推定する。(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいて、第1薬剤投与システムでは、患者に対して更新された治療を提供する。方法はさらにリモートシステムに転送を行う第1薬剤投与システムを含んでおり、リモートシステムには、1つまたは複数のコンピュータ、インターフェース、およびデータベース、ならびに患者に提供された更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録が含まれる場合がある。第2薬剤投与システムが患者に接続されると、第2薬剤投与システムは患者IDを受信し、第2薬剤投与システムはリモートシステムと通信して、患者IDに関連付けられた更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録にアクセスする。
【0009】
以下で述べられる方法例を使用して、第2薬剤投与システムは、リモートシステムから患者IDと関連付けられた治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を受信し、治療が第1薬剤投与システムによって以前に報告されたり、必要に応じて中断されたりした時点での患者に対する治療を継続する。
【0010】
他の態様では、本明細書で述べられている例示システムは、薬剤投与システムを通して患者の治療の管理および提供を行う。システムには、患者に対応する患者IDを受信する患者に接続された第1薬剤投与システムが含まれ、(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいて、第1薬剤投与システムは患者に対して更新された治療を提供する。第1薬剤投与システムはリモートシステムに、患者に提供された更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する。システムはさらに、患者IDを受信する第2薬剤投与システムを含み、リモートシステムと通信して、患者IDに関連付けられた更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録にアクセスする。
【0011】
さらに他の態様では、コンピューティングデバイスが特定の機能を実行できるようにするために、コンピューティングデバイスによって実行可能な命令をそこに格納しているコンピュータ読み取り可能媒体が提供されている。機能には、第1電子薬剤投与システムから、患者の推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を受信することが含まれる。基本的な患者特有の制御変数は、(i)患者に提供された治療および(ii)治療に対して観察された患者特有の反応に基づいている。機能にはさらに、第1電子薬剤投与システムから患者に提供された更新された治療を受信することが含まれる。更新された治療は、(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいている。機能にはさらに、第2電子薬剤投与システムに、患者に提供された更新された治療および患者に関連付けられた推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送することが含まれる。
【0012】
前述のサマリーは例示的な目的のみで、何ら限定することを意図するものではない。上述の例示的態様、実施形態、および特徴に加えて、図面および以下の詳細な説明を参照すると、さらなる態様、実施形態、および特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うための例示的構成を示す図である。
【図2】薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うための別の例示的構成を示す図である。
【図3】薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うためのさらに別の例示的構成を示す図である。
【図4】医療機器を使用して薬剤治療を提供するための例示的な方法を示す図である。
【図5】1つの医療機器から別のものへデータを転送するための構成の一例を示す図である。
【図6】1つの医療機器から別のものへデータを転送するための方法の別の例を示す図である。
【図7】患者のデータ記録および患者特有の変数記録を格納するためのメモリーの一例を示す図である。
【図8】治療に対する患者の反応をモデル化し、基本的な患者特有の制御変数を計算するための統合されたオンボードコントローラを有する、例示的な医療機器を含むブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付図面に対して参照が行われている。図面では、文脈で他のものを指示していない限り、類似した記号は通常、類似した構成部品であることを明らかにしている。詳細な説明、図面、および請求項で述べられている例示的実施形態は、限定することを意味してはいない。本明細書で提示された主題の趣旨または範囲を逸脱しない、他の実施形態が利用されることも、他の変更が行われることもできる。一般的に本明細書で述べられ、図面で例示されている、本開示の各態様は、広く多様なさまざまな構成でアレンジされ、置き換えられ、組み合わされ、設計されることが可能であることが容易に理解されるはずであり、そのすべては、明示的に想到され、この開示の一部とされる。
【0015】
注入システムなどの、システムによる治療の自動化は、ワークフローの改善、ユーザーエラーの低減化、および望ましい治療成果の実現の機会を提供している。例えば、注入プロトコルアルゴリズムは、入力の誤りの低減化、ワークフローの改善、および効率の改善を行うためのシステムのさらなる自動化のために注入ポンプに含められることができる。さらに、注入、テスト、およびモニタリング機器は、情報を他の機器に転送されることを可能にするために病院設定のサーバーおよび他のコンピュータとともにネットワーク化されることができる。そのような情報には、例えば、薬剤情報、投薬レート、注入される数量、期間、頻度、ケア提供者、機器および患者ID、モニターされる値、およびケア時点でのテストデータが含まれる。
【0016】
述べられている例示的方法およびシステムでは、医療機器は、例えば、情報をローカルおよびサーバーの別のデータベースに格納することができる。機器が故障し、患者が第2の機器に移動される場合、情報は、最初の医療機器が中止した時点で、第2の機器が複雑な治療を再開できるように、第2の機器に転送されることができる。複雑な(例えば、反復または繰り返し)治療システムを再開するのに必要なデータには、当該薬物に対する患者の生理学的反応を取得するモデルに従う、特定の計算または推定された基本的な患者特有の制御変数またはパラメータを含めることができる。結果として、第2の機器は、第1の機器が患者の反応についてモデル化または認識している時間表の任意の時点で複雑な治療を開始し、複雑な治療に関して最初の一連の基本的な前提から第2の機器を再開しなければならないのではなく、該当する情報を使用することが可能である。あるいは、第1の機器から治療の累積履歴の一部または全体が第2の機器に転送または送信されることができ、患者特有の制御変数は履歴情報を使用して、第2の機器によって再計算されることができる。
【0017】
次に図を参照すると、図1では、電子薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うための例示的構成を示している。病院情報システム102が備えられており、例えば、病院または医療グループ全体で患者データの入院、退院、および転院をサポートしている。病院情報システム102は、例えば、サーバーまたは他のタイプのワークステーションの形をとることができ、ネットワークまたは他のインターフェースを介してデータベース104に接続されることができる。データベース104には、患者の処置に関係する患者特有の情報を含めることができる。ワークステーション106はさらに、例えば、患者データを入力し、さらにレポートの生成、インスリン皮下投薬の指示の生成および印刷、ならびに構成パラメータの変更を行う機能を提供する目的で病院管理者または看護師による使用のため、データベース104に接続されることができる。その上、病院情報システム102、データベース104、およびワークステーション106は、病院の敷地または病院外の敷地に配置されることができる。
【0018】
患者のベッドサイドに配置された医療機器108は、無線または有線接続のいずれかを使うネットワークを使用して、病院情報システム102、データベース104、またはワークステーション106と通信することができ、入退転院、薬剤情報システム、検査情報システムからのデータを含めることができる、患者特有データを受信し、患者110に対して患者の治療を提供する。看護師112または他の病院スタッフは設定を医療機器108に入力して、医療機器108が接続されている患者110に対して治療を提供することができる。測定ユニット114は、患者の生理学的特性または治療に対する反応を検出、モニター、または測定するため、患者110に動作可能状態で接続、関連付け、または使用されることができる。血液または他の液体は、患者から採取され、測定ユニット114によりリモートでテストまたは分析されることができる。例えば、測定ユニット114には、血圧モニター、血中グルコースモニター、または必要に応じて、患者110の必要な特性を測定するための他のモニター/メーターを含めることができる。
【0019】
一例では、医療機器108は、ストレスがかかり、危険な病状の患者の血糖制御のためのフィードバックメカニズムを含むソフトウェアアルゴリズムを使用し、患者のグルコースのレベルを制御する注入ポンプとすることができる。例えば、医療機器108は、ホスピラ社(Lake Forest,Illinois)から市販されているEndoTool(R)などのソフトウェアを実行する、同じホスピラ社から市販されているSymbiq(R)注入システム、ポンプ、または注入器とすることができ、その機器は、集中的なインスリン治療を提供するために、適切なインスリン用量/レートおよびグルコース測定間隔を計算する方法を行う。方法では、臨床医に、例えばポンプインターフェースを通して、インスリンの用量、D50W用量(デキストロース50%水溶液)、およびテストの頻度(次回のグルコーステストの時間)の推奨事項が提供することができる。臨床医が推奨されたインスリン注入レートを確認または変更すると、ポンプ注入レートは自動的に変更されることができる。
【0020】
インスリン注入の推奨レートを提供することに加えて、医療機器108では、次回のグルコース測定の時間を表示することができる。グルコースの測定は、上述のように提供されることができるか、測定ユニット114に臨床医により実行されるハンドヘルドグルコメーターを含めることができる。測定ユニット114は配線接続または無線接続を介して医療機器108と通信することができるか、あるいは測定ユニット114は臨床医にポンプに手動で入力する測定値を提供する。臨床医は、インターフェースを通して患者の血中グルコースレベルを更新するために、ポンプインターフェースを通して指定されたタイミングで注意を喚起することができる。一連のアラートおよび/またはアラームは、グルコースの測定が指定された時間に受信されなかった場合に、医療機器108から生成される。
【0021】
医療機器108はサーバーあるいは病院情報システム102、データベース104、またはワークステーション106のいずれかに接続されなくても自立的動作が可能なものとすることができる。しかし、医療機器108は、臨床ケア領域(Clinical Care Area:CCA)特定および病院特定の構成または他の患者データを受入れるために、ワークステーション106を使用し、医療機器108のインターフェースを使用する看護師112によって構成されることができる。
【0022】
図2では、薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うための別の例示的構成を示している。この構成では、病院情報システム202はデータベース204に接続されており、ワークステーション206はさらに、図1に関連して述べたものと同様に、データベース204に接続されることができる。その上、病院情報システム202、データベース204、およびワークステーション206は、病院の敷地または病院外の敷地に配置されることができ、例えばネットワークを通して接続されることができる。
【0023】
医療ネットワークサーバー208は、患者特有データ、CCA情報、または病院スタッフにとって有用な他の情報へのアクセスおよびそれらの受信を行うために、データベース204に接続されることができる。医療ネットワークサーバー208はさらに、データベース210に接続されることができる。医療ネットワークサーバー208およびデータベース210も、同様に、病院、患者のベッドサイドから離れて、患者の病室で、または病院敷地外に配置されるこができる。
【0024】
患者214に薬剤治療を提供するため、医療機器212も備えられている。医療機器は、例えば、薬剤ライブラリ情報を受信し、患者のデモグラフィック、状態、およびイベント情報を医療ネットワークサーバー212に送信するために、医療ネットワークサーバー212と通信することができる。一例では、医療機器212は、上述のように注入ポンプとすることができる。同様に、上述のとおり測定ユニット216も備えることができる。
【0025】
医療ネットワークサーバー208では、データベース204または210のいずれかから医療機器212への構成パラメータの転送サポートすることができる。医療ネットワークサーバー208は、医療機器212に使用され、関連するすべてのデータを集めて、データベース204または210に入力することができる。例えば、インスリン皮下投薬の指示が生成されるように、患者中心のデータ、CCA中心のデータ、およびイベントログのレポートが医療ネットワークサーバー208を通して提供されることができる。
【0026】
図3は、薬剤投与システムにより患者の治療の管理および提供を行うためのさらに別の例示的構成を示している。この構成では、図2の構成と同様に、病院情報システム302が医療ネットワークサーバー304に接続されている。しかし、医療ネットワークサーバー304に接続される、データベース306が1つのみ備えられている。医療機器308は、薬剤治療を患者310に提供するために医療ネットワークサーバー304と通信する。医療機器308は、例えば図1または図2の医療機器と同様に動作することができる。図3で示されている構成にはさらに、例えば、患者に接続され、医療機器308および/または医療ネットワークサーバー304と通信する測定ユニット(図示せず)も含めることができる。
【0027】
図1、図2、または図3の構成のいずれかで、医療機器は、例えば、薬剤治療を患者に投与し、患者特有の情報、薬剤投与情報、またはイベントログを送受信するために、サーバーおよびデータベースと通信することができる。
【0028】
図1に戻ると、医療機器108は患者110への薬剤投与を制御するために動作される。医療機器108は、例えば、点滴ラインを介して患者に接続されることができる。図4では、医療機器108を使用して薬剤治療を提供するための例示的な方法を示している。
【0029】
最初に、402で示されているとおり、医療機器108は患者に対応する患者IDを受信することができる。患者IDには、例えば、ブレスレットをスキャンすることで受信されることができる患者のブレスレットについて含められることができる。次に、医療機器108はデータベース104または病院情報システム102から患者特有の情報を取り出すために、患者IDを使用することができる。
【0030】
次に、医療機器108は患者110に対する薬剤治療を開始できる。ブロック404で示されているように、そのようにするためには、医療機器は、患者110用に計算された治療に基づき、そして治療に対して観察された(すなわち、測定された)患者特有の反応に基づく基本的な患者特有の制御変数(例えば、血中グルコースレベル)を推定することができる。治療は、身長、体重などのすべての患者特有変数に応じて計算されることができ、適切な処置が患者の状態に対して決定される。
【0031】
医療機器108は治療に対する患者の反応を観察するので、医療機器108は患者のニーズにより良く対処するため、治療を更新することができる。こうして、ブロック406で示されているように、推定された基本的な患者特有の制御変数、治療に対して観察された患者特有の反応、および治療目的に基づいて、医療機器108では、患者に対して更新された治療を提供する。
【0032】
医療機器108は、必要に応じて治療を継続的に更新するために、治療に対する患者の反応のモニターおよび観察を継続する。医療機器108は、ブロック408で示されているように、例えばデータベース104などの、リモートシステムに、患者に提供される更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送することができる。医療機器108からデータベース104に転送される治療情報には、測定された患者の反応および測定が行われた時間も含めることができる。当然、測定されたデータは測定ユニット114からデータベース104に直接転送されることもできる。こうして、更新された治療情報は、バックアップのために代替機器に格納されることも、治療の制御を別の機器に移行することもできる。例えば、ブロック410で示されているように、第2薬剤投与システムが患者に接続されると、第2薬剤投与システムは患者IDを受信し、それからブロック412に示されているように、第2薬剤投与システムはリモートシステムと通信し、患者IDに関連付けられた更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録にアクセスする。そして、第2薬剤投与システムは患者に対する治療を継続することができる。その後、医療機器108が患者から切断されると、第2薬剤投与システムは医療機器が中断した時点での治療を継続することができる。このような方式で、治療は最初の開始時点から再開しなければならないのではなく、第2薬剤投与システムは更新された治療を維持および継続するために、第1医療機器108により収集された情報を使用することができる。
【0033】
図5は、1つの医療機器から別のものへデータを転送するための構成の一例を示している。図4の方法400に関連して説明されたように、医療機器108は更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数をデータベース104に転送することができる。第2医療機器114を患者110に接続する前、その間、またはその後に、第2医療機器114は治療を継続するために、データベース104から更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数を取り出すことができる。
【0034】
図6は、1つの医療機器から別のものへデータを転送するための方法の別の例を例示している。最初に、ブロック602で示されているように、基本的な患者特有の制御変数が第1医療機器を使用して推定され、そしてリモートサーバーに転送される。推定された基本的な患者特有の制御変数は、例えば、第1医療機器によって、継続的に、あるいは特定の状態またはログレポートの時点、あるいは治療の終了時に転送されることができる。ブロック604で示されているように、第1医療機器によって提供された治療が終了すると、ブロック606に示されているように、治療許可は第1の機器から除去される。例えば、サーバーは、第1医療機器が患者への治療を中断するように、第1医療機器に指示する制御メッセージを送信できる。
【0035】
第2医療機器は、ブロック608で示されているように、患者に対する治療を継続するために、患者IDを受信することができる。看護師は第2医療機器を患者に接続し、患者IDを入力して処置のための治療を選択することができる。次に、第2医療機器は、ブロック610で示されているように、推定された基本的な患者特有の制御変数について医療ネットワークサーバー(例えば、リモートサーバー)に照会できる。ブロック612で示されているように、推定された基本的な患者特有の制御変数がリモート医療ネットワークサーバーまたはそれに接続されているデータベースで見つけられる場合、情報は無線または有線インターフェースを介して第2医療機器に転送される。
【0036】
治療データの転送は、ブロック614で示されているように、第2の機器で確認される。例えば、第2の機器が医療ネットワークサーバーにデータの受信を示す確認信号を送信することも、看護師が手動で、第2の機器でのデータの受信を確認することもできる。次に、医療ネットワークサーバーは、ブロック616で示されているように、第2の機器を使用して開始する治療を許可し、医療ネットワークサーバーは制御変数を第2の機器に転送する。その後、ブロック618で示されているように、治療は第2の機器を使用して以前の時点から再開され継続される。
【0037】
多くの場合、治療の投与を1つの医療機器から別のものに移行することが望ましい場合がある。例えば病院の場合、患者は病室間を移される場合があり、各病室は異なる医療機器を含む場合がある。第2の病室内でフィードバックに関連した処置を継続するために、第1医療機器により収集されたデータが第2の病室の第2医療機器に転送され、中断された時点での処置を再開することができる。こうして、患者が集中治療室(ICU)から病院/手術室の一般病棟に移され、治療が継続される場合、第2ポンプの使用に切り換える前に、第2の病室のポンプを設定することが望ましい場合がある。治療は指定された時間に1つのポンプでのみ投与されることができるが、例えば、設定手順を開始または第2ポンプをスタンバイ状態にするために、データが第2ポンプに転送されることができる。このような方式で、患者のケアは場所や特定の機器に関係なく、ケアの継続性が維持されることが可能である。
【0038】
さらに、治療が反復または繰り返しのやり方で継続的に更新されるデータに依存する場合には、1つの医療機器から別のものに治療データを転送することが望ましい場合がある。こうして、治療が第1の医療機器を使用して最初の段階から始まり、数日間行われた場合、治療に対する患者の反応に基づき、治療はやがて変わることになる。その後、患者が別の病室に移され、第2の医療機器に移行される場合、最初の段階から治療を再開するよりは、更新されたデータを使用した治療の継続、再開、または再計算を行うために、データも同様に転送されることが有益なはずである。
【0039】
最終的に、新しい機器で、第1の機器により提供された治療に依存する、新規であるが関連治療が提供される場合には、1つの医療機器から別のものに治療データを転送することが望ましい場合がある。例えば、第1の機器が特定の治療でIV投薬を提供するために使用され、一方、第2の機器が同じ治療を継続するが、異なる薬剤提供ルートを使用する場合がある。特定の例の場合、静脈インスリン投与ポンプは、患者を病院からちょうど退院させる前に、皮下インスリンポンプに置き換えることができる。
【0040】
患者に対して提供されている治療のタイプに応じて、第1医療機器から第2医療機器に転送されているデータには、多くの共通の変数および患者特有の変数を含めることができる。そのような共通の変数には、例えば、グルコース管理、ヘパリン管理、液体管理、ペイン管理、敗血症蘇生、心臓血管制御などの、治療IDを含めることができる。他の共通変数には、患者IDまたは医療記録番号(MRN)、ポンプID情報、日付と時間、および注入状態(インスリン注入量)と患者の反応(最後のグルコースレベル)などの治療状態が含まれる。さらに他の共通変数には、システムクロックまたは投与された治療と行われた測定のタイミングを含めることができる。
【0041】
第1医療機器から第2医療機器に転送されることができる推定された患者特有の制御変数には、推定されたインスリン感度Si、推定されたインスリン基本投与レート(BR)(細胞グルコースとアミノ酸取り込みを制御するなどの目的のために必要とされる継続的なインスリン供給のレート)、推定されたフィードバック利得、推定されたモデルパラメータ、推定されたインスリン・クリアランス・レートP、推定された内因性グルコース産生、および推定された飽和条件などの情報を含めることができる。情報がさらに転送されることができるかは提供されている治療のタイプによって左右され、追加情報の例には、以下で述べられている式(1)〜(9)のいずれかの内に見つけられる変数のいずれかを含めることができる。
【0042】
方法例では、アルゴリズムおよび適応コントローラが患者の変数とともに使用され、治療の決定を個別化し、投薬の推奨を可能にするために、治療に対する患者の反応を認識するようにする。医療機器は、推定された患者特有の制御変数を認識するような方式で、患者の治療を管理および提供するソフトウェアシステムを使って動作されることができる。
【0043】
制御変数は、特定の投薬に対する患者の反応のモデルを提示し、やがて計算される。例えば、グルコース測定および注入レートの時系列で2つの変数が再帰的に計算されることができる。計算された制御パラメータが最適な値に集中すると、グルコース管理の質が向上する。
【0044】
治療の一例では、1組の制御変数pVが、インスリン測定値、グルコース濃度、および関連された治療イベントの観察された履歴に基づいて、今後のグルコースを管理するための情報を提供する。例えば、推定されたインスリン、pV.SIおよび内因性グルコースクリアランス、pV.PGによって、グルコース濃度の今後の推定および制御が可能になる。あるいは、患者の変数には、非線形投薬条件のために、推定された糸球体ろ過量率(GFR)、バックグラウンドまたは基本注入レート、および追加の増倍率を含めることができる。
【0045】
患者の変数を認識するプロセスは、プロセスが薬剤注入情報と組み合わせた診断情報に基づいて行われるので、時間とコストを要する場合がある。診断測定に関連する直接の費用の他に、臨床医のワークフローと患者の不快症状に関連付けられた間接コストもかかる。さらに、収集されるデータの情報内容は、測定での薬剤反応の時間および頻度に限定される場合がある。例えば、グルコースの管理の場合、患者の時間経過によるグルコースプロファイルは通常、痛みを伴い不便な採血に基づいて記録される。この時系列の診断値および記録された注入済みインスリンは、患者の変数を計算するために使用される。
【0046】
患者特有の変数の収集と処理のプロセスはコストがかさむ場合があるので、患者に対する時間と痛みの両方の観点で、例えば、処置が第2医療機器でも継続される場合には、そのような情報を第1医療機器から第2医療機器に転送することが有用なはずである。
【0047】
以下は、患者の処置のために患者特有の変数が使用されるモデル例である。他の多くのモデルが、例えば、患者に提供されている治療に応じて存在する。
【0048】
実施例1
モデル予測的制御とともに使用される患者特有の制御パラメータを定義する外因性入力を伴う自己回帰移動モデル(ARX)。
【0049】
グルコース管理の場合、最適なインスリン注入量を決めるためにモデルが使用される場合があるので、インスリン治療に対する患者のグルコース反応の実証的モデルを作成することは利点となる。モデルでは、どのように現在のグルコース測定が前のグルコース濃度および注入されたインスリンに関連されているかを示しており、モデルは処置を受ける患者固有の方式でパラメータ化されている。より詳細には、一例では、外因性入力を伴う自己回帰モデル(ARX)が、式によりインスリン治療に対する特定の患者の反応を表すために使用される:
【数1】

ここで
【数2】

は時間tで推定されるグルコース濃度で、gは時間tで測定されたグルコース濃度で、uは時間tに注入されたインスリンで、pはα自己回帰パラメータの合計数を表し、qは外因性入力条件の合計数で、αとβはそれぞれi回前のグルコース測定およびインスリン投与量に関連付けられた患者特有の基本的な制御パラメータである。この例では、モデルパラメータαとβは、p前のグルコース測定およびq前のインスリン投与量の履歴に基づいて、時間tにおける患者グループ
【数3】

の計算を可能にするために選択される。
【0050】
あるいは、上式は次のように記述されることができる:
【数4】

ここで、θtは時間tのパラメータαとβのベクトルで、Tは転置演算子で、φtは前のグルコース測定およびインスリン投与量のベクトルである。詳細には、
【数5】

および
【数6】

【0051】
各時間tで、θは次のとおり再帰的最小二乗推定量を使って更新される:
【数7】

ここで、λは更新アルゴリズムのメモリー水平を表す(正定数)忘却因子で、Kは利得行列で、Pは共分散行列で、Iは単一性行列で、φは上記で定義されており、ηはθの更新式のステップサイズで、eは観察されたgと推定されたグルコース濃度の間のエラーである。
【0052】
したがって、時間の各時点で、基本的な患者特有の制御パラメータθは、モデルが特定のインスリン治療に対する患者の今後のグルコース反応を正確に予測できるようになるまで、治療を受ける患者に適応される。例えばθは、現時点のθが事実上、前のθ測定に等しい、または許容可能なエラー数量内であるような時点まで、ステップサイズおよび観察されたエラーeに基づいて更新される。
【0053】
やがて、式(1)〜(3)で表現されたモデルは、モデルが患者に対して個別化されるにつれてより正確になり、患者に対して時間とともにおよび今後にわたり、血中グルコースの最適な推定を提供する。
【0054】
式(1)〜(3)で示されたモデルは、最適なインスリン入力を判定するために、モデル予測コントローラ、または良く知られている別のモデルベースの適応コントロールスキームで使用されることができる。基本的に、インスリン推奨の質は、モデルの質および再帰的に推定されるパラメータθの正確さに直接関連される場合がある。
【0055】
患者特有の制御変数の有用な値および変数を計算するコストを考慮すると、注入ポンプインターフェースを介して提供された決定サポートアプリケーションは一連の患者の変数をファイル、データベース、またはメモリーの場所に記録することができる。注入機器の置換時に、患者特有の制御変数が第2の機器に転送される場合には、患者特有の制御変数の再計算のプロセスを再開始される必要はない。
【0056】
治療に関連された患者特有の特性は、対象の治療に有用な情報を失うことなく、置換注入機器により使用されることが可能な患者特有の制御変数の組によって示されることができる。
【0057】
治療を受ける、第1注入システムに接続された患者には、例えば、少なくとも、医療記録番号(MRN)などの患者IDおよびGFRなどの計算された患者特有の制御変数を含む患者治療記録、グルコースクリアランス、インスリン利用定数、飽和条件、ならびに式(1)〜(3)で上述されたような変数が提供される。患者治療記録には、例えば、測定頻度、推奨される治療決定、グルコース測定、および関連されるサンプルタイミング、注入レートと関連される調整タイミング、患者の体重、患者の性別、患者の糖尿病タイプ、患者の血中クレアチニン値、患者のステロイドの使用、患者の年齢、患者のイベント、ならびにデータ要素に関連されるタイミングなどの追加変数が含まれる。
【0058】
図7では、患者のデータ記録704および患者特有の変数記録706〜714を格納するためのメモリー702の一例を示している。メモリー702は、例えば、病院情報システム、サーバー、データベース、または医療機器などの任意の数の装置内に含められることができる。
【0059】
上述のとおり、患者のデータ記録704には、患者IDと、患者の特性に関係する他の情報が含まれる。患者特有の変数記録706〜714には、提供されている治療に対する時間経過による患者の反応に基づく患者特有の情報を含めることができる。メモリー702には、(患者の更新された反応を格納するために)所定の時間間隔で、新しい患者特有の変数706〜714を格納することができ、その後の各記録には更新された情報を含めることができる。例えば、記録714には現在の患者特有の変数を含めることができ、記録712〜706には順次より古い患者特有の変数を含めることができる。
【0060】
計算された患者特有の制御変数は、個人に対する治療の個別化の基礎を提供するので、記録される。上記例はグルコース管理に特有のものだが、患者のデータに基づいて計算される、モデルパラメータなどの制御変数は、患者特有で、ベッドサイドのほとんどすべての治療の個別化に使用されることができる情報を表している。
【0061】
継続的および周期的に、患者特有の変数記録706〜714は、リモートシステムに転送され、データベースに記録される。最新の患者特有の変数記録714は各転送期間に転送されることができ、また前のN個の患者特有の変数記録706〜714も各転送期間に転送されることができる。例示例では、N=5であるが、Nは特定の患者モデルアルゴリズムのニーズにかなうよう調整されることができる。転送は継続的な通信に近づく時間増分で行うことも、1分ごとに定期的に行うこともできる。さらに、転送は非対称とすることができ、治療の更新と併せて行うことができる。
【0062】
例えば、治療が医療機器で確認されると、医療機器は患者のデモグラフィック情報および患者特有の変数記録をリモートサーバーに送信できる。治療が調整される場合はいつでも、同じまたは更新された情報(例えば、新しいグルコース測定)がリモートサーバーに送信される。データは、例えば、無線または有線通信インターフェースを使用したXMLコード化メッセージとしてリモートシステムへ送信されることができる。
【0063】
患者特有の変数記録706〜714が患者に治療を投与する医療機器で格納される場合、医療機器は記録706〜714を、例えばサーバーまたは別の医療機器に転送することができる。医療機器は所定の時間間隔で新しい患者特有の変数記録を格納することができ、収集されたすべての患者特有の変数記録の記憶を保持することができる。しかし、サーバーへの患者特有の変数記録の転送を行うとき、医療機器は、例えば最新の5個の患者特有の変数記録706〜714のみをサーバーに転送することができ、それは第1医療機器を使った治療が中断された時点での治療が再開/継続されることができるように、前の5個のグルコース測定値、基本レートなどをサーバーまたは別の医療機器に送信するためである。
【0064】
記録706〜714は単一のデータユニットとして記録され、特定の間隔でリモートに転送されることも、更新や変更の発生時に転送される正規化構成要素に分割されることもできる。しかし、患者特有の変数記録のリモート転送によって、計算された患者特有の制御変数の継続的な表示が、他のシステムまたは他の装置で使用するために保存されることが可能になる。
【0065】
記録706〜714は、任意の数のデータ転送プロトコルを使用して医療機器からサーバーに転送されることも、サーバーから医療機器に転送されることもできる。例えば、記録706〜714は、ユーザー・データグラム・プロトコル(UDP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ファイル転送プロトコル(FTP)、または必要に応じて独自の他のプロトコルで転送されることができる。さらに、記録706〜714は、任意の数の有線または無線技術を使って転送されることができるので、データの転送を行うために、医療機器またはサーバーには有線または無線インターフェース(例えば、受信機/送信機)を含めることができる。
【0066】
患者から第1注入機器を切断する前または後に、ユーザーは、例えば、停止コマンドを開始でき、その後、リモートシステムへの現在の患者特有の変数記録の転送を開始することができる。しかし、第1注入機器が電源を失い(loose)、不明な理由で障害を起こす場合がある。このため、患者特有の変数を変更する頻繁な更新は、患者の治療情報の記録の適切なバックアップと記録を確実にするために行われることができる。
【0067】
患者特有の変数記録706〜714の転送後、第1注入機器は患者から切断され、第2の機器と置き換えられることができる。臨床医は患者IDを第2の機器に提供する。このことは、医療記録番号の手動入力、バー・コード・スキャナー、または無線IDタグ(RFID)で行われることができる。あるいは、第2の機器と特定の患者IDを関連付けるのに、生体認証メトリックが使用されることもできる。第2の機器はリモートシステムにアクセスして、患者に関連付けられた前の治療を識別することができる。次に、第2の機器では、記録された患者の変数記録に関連付けられた使用可能な治療の選択肢を表示する。あるいは、患者の識別後、ユーザーは必要な治療を選択する。
【0068】
第2の機器はリモートシステムに照会し、関連された患者の制御変数を識別し、ユーザーに前に推定された治療の制御変数を使用して初期化を確認するよう要求する。第2の機器はさらに、例えば、治療情報が十分に新しいことを確認するために、患者の制御変数が最後に更新された時間に関する情報も提供する。
【0069】
確認されると、患者特有の変数記録706〜714がリモートシステムから第2の機器に転送され、第1の機器で治療が中止された先の時点での治療を開始するために使用される。
【0070】
患者の治療制御変数が見つからない、または、使用不可能な場合、システムでは、リモート・システム・インターフェースから取得されることのできる特定の患者変数を手動入力するための手段を提供する。
【0071】
1つの注入システムから別のものへの移行には治療の中断が伴うことを認識して、推奨される、または自動的に注入される薬剤を低減化することを可能にするオプションの安全機能も提供されることができる。プロセスには、治療が中断された時間の判定、時間の限度、および中断の合計時間を考慮する場合も、考慮しない場合もある低減化ルールが関係している。例えば、グルコース管理の場合、治療の中断が30分を超える場合には、注入されるインスリンの自動低減化が80%まで行われることがある。
【0072】
実施例2
患者特有の制御パラメータを使う投薬式。
【0073】
グルコース投薬計算機は次のような形をとる場合がある:
【数8】

ここで、tは時間で、Iは時間tで計算されたインスリン用量で、
【数9】

は前の時間期間にわたり提供されたインスリン用量で、gは時間tでのグルコース測定値で、
【数10】

は計算された基本的な患者特有の制御パラメータのベクトルで、
【数11】

は一連の対象のグルコース濃度で、fはパラメータを推奨されるインスリン用量にマッピングまたは変換する関数である。パラメータベクトル
【数12】

は、基本的な患者特有の制御変数またはパラメータと呼ばれる場合がある。制御パラメータは、インスリン投薬に対する観察されるグルコース反応に基づいて計算されるので、それによって患者特有のインスリン用量の判定が可能になる。
【0074】
より詳細には、式(4)の関数fが定義されることができ、Iの計算は次の非線形式に基づいて行われることができる:
I=M(g−G)+M(g−G) 式(5)
ここで、Iはゼロより大きく、M、Mは、インスリン投薬に対する観察されたグルコース反応と望ましいグルコース反応間の誤差に基づき、時間経過とともに推定される増倍定数である。基本的に、MとMは、
【数13】

の基本的な患者特有の制御パラメータまたは要素である。基本的な患者特有の制御変数を計算する方法は、例えば、再帰的最小二乗推定量、ベイズ推定量、または時間経過による患者のグルコース濃度のレベルと変化に基づく制御ルールを使用して行われることができる。
【0075】
一例として、基本的な患者特有の制御変数を計算する方法は、拡張カルマンフィルター、再帰的最小二乗推定、ベイズ推定、または観察されるグルコース濃度と予測されるグルコース濃度間の相違など、計算される誤差に基づいてMとMを調整するために使用される比例制御ルールなどのパラメータ推定の確立された方法を使用して行われることができる。例えば、GoodwinおよびSin著、Adaptive Filtering, Prediction and Control、1984を参照してください。この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
特定の例示例として、計算されたインスリンレートに対する観察されたグルコース濃度の偏導関数がマイナス(すなわち、グルコースレベルがインスリンの増大で減少)であると仮定すると、観察されたグルコース測定値と望ましいグルコース測定値間の相違に基づきMとMを判定するために、擬似勾配下降アルゴリズムが使用されることができる。例えば、誤差が:
【数14】

とすると、ここで、
【数15】

は時間tでの望ましいまたは対象のグルコース濃度で、パラメータMとMは次に従い更新される。
=M−α・e
=M−β・e ) 式(7)
ここで、αとβは調整可能なプラスの定数である。各測定で、推定された基本的な制御変数は式(5)に従って更新され、やがて、患者のインスリングルコース反応に個別化されるようになる。
【0077】
図8は、基本的な患者特有の制御変数を計算するための例示的な医療機器802を含むブロック図を示している。医療機器802は、コントローラ804およびパラメータ推定器806を含んでいる。医療機器802は患者808に接続されている。医療機器802にはさらに、インターフェース810が含まれ、それは例えば、他のネットワーク機器と通信するために有線または無線インターフェースとすることができる。
【0078】
動作の際、治療に対する対象の反応が特定され、対応する対象の一連のグルコース濃度
【数16】

が医師または医長によって選択される。例えば、対象の治療は約120mg/dLとして、または約100mg/dLから約150mg/dLの範囲内として選択されることができる。対象の一連のグルコース濃度
【数17】

がコントローラ804およびパラメータ推定器806に提供される。さらに、コントローラ804およびパラメータ推定器806は、患者808から記録された、時間tでのグルコース測定値gを受信する。パラメータ推定器806では、計算された基本的な患者特有の制御パラメータ
【数18】

のベクトルをコントローラ804に出力する。同様に、コントローラ804は、上記の式(4)〜(7)のいずれかに従って計算された、時間tでの計算されたインスリン用量
【数19】

をパラメータ推定器806に出力し、計算されたインスリン用量を患者808に投与する。
【0079】
コントローラ804およびパラメータ推定器806は、モジュール、セグメント、プログラムコードの一部を表すことができ、それには、プロセスで特定の論理関数またはステップを実装するために、プロセッサによって実行可能な1つまたは複数の命令を含んでいる。プログラムコードは、例えば、ディスクまたはハードドライブを含む記憶装置などの任意のタイプのコンピュータ読み取り可能媒体で格納されることができる。さらに、コントローラ804およびパラメータ推定器806は、プロセスで特定の論理関数を実行するために配線された回路、または特定の論理関数を実行するためのプロセッサを表すことができる。代替の実装形態は、それなりの当業者により理解されるとおり、含まれる機能性に応じて、実質上同時発生または逆順を含め、機能が示された、または説明された順序とは違って実行されることができる本出願の例示的実施形態の範囲内に含まれる。
【0080】
医療機器802は、基本的な患者特有の制御変数
【数20】



【数21】

および
【数22】

のいずれかをメモリー(図示せず)に格納することができる。それから医療機器802は、このデータのいずれかを、例えばインターフェース810を使ってサーバーまたは他の医療機器に転送することができる。
【0081】
実施例3
目標の活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:aPTT)域を達成するために、自己調整レギュレータとともに使用される患者特有の制御パラメータを伴う薬物動態‐薬力学(Pharmaco−Kinetic Pharmaco−Dynamic:PK−PD)モデル。
【0082】
深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、および虚血性心疾患などの動脈および静脈血栓塞栓性疾患の処置および防止には、ヘパリンが使用される。さらに、ヘパリンは投薬ミスに頻繁に関連付けられる抗凝血剤である。処置の目的は、血栓症または塞栓症を防止または処置するために、患者の凝固メカニズムを治療的に妨害することである。治療は急性病患者治療環境内では共通しているが、抗凝血、および特に、非分画ヘパリンの投薬は、薬効の患者ごとの相違、時間経過による変化、妨害の影響、ならびに上下の治療処置条件に関連付けられたリスクの増大のために複雑である。
【0083】
その結果、非分画ヘパリンの抗凝血の効果は、採血後の検査室分析により特定される、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)によりモニターされることができる。そして、非分画ヘパリンの用量は、観察されるaPTTと目標とされるaPTTの相違をベースとして注入レートの増大または低減を行うプロトコルに基づいて、目標の凝固時間を達成するために調整されることができる。しかし、良く使用されるノモグラムでは、例えば、治療域のすべての患者のaPTTの40%にとどまるとレポートする研究により、比較的芳しくない治療成果となっている。
【0084】
非分画ヘパリンの用量を決める代替方法は、患者を表すために調整されている、知られているPK−PDモデルに基づいて、薬剤に対する患者特有の反応を計算することである場合がある。例えば、自動化されたaPTTの読み取り値と調整実行に基づく非分画ヘパリンに対する患者の反応のモデル化のための制御アルゴリズムを含むシステムについては、Cannon、C.、J.Dingemanse、C.Kleinbloesem、T.Jannett、K.Curry、およびC.Valcke著、「Automated Heparin−Delivery System to Control Activated Partial Thromboplastin Time: Evaluation in Normal Volunteers」、Circulation、1999年、99:751〜756に提示されており、この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。そのようなシステムでは、ヘパリン投与に対する患者の反応方法に基づく治療決定を迅速に個別化するために適応コントローラを採用することによって、患者の安全を向上でき、臨床医が従来の加重ベースのノモグラムより早く治療のaPTTレベルを達成することが可能になる。さらに、臨床医の作業負荷ならびに、投薬ミスの可能性を減らすために、ヘパリン管理サイクルの要素も自動化されることができる。
【0085】
本明細書で開示された方法およびシステムによって、非分画ヘパリン用量の変更を推奨するための高度化されたコントローラを装備された注入システムに、中央検査室からのaPTTの読み取り結果の転送が可能になる。詳細には、新しい検査室からの値の通知の受信後、注入システムのアルゴリズムは更新された非分画ヘパリン注入レートを計算し、臨床医の介入が必要な場合には、アラートを提供する。
【0086】
aPTTの値が治療域内の場合、看護師による即座の処置は必要とされない場合があるので、アラートは送信されない。検査室からの値が域外(すなわち、検査室からの値域は薬剤ライブラリにも格納されることもできる)の場合、アラートが出される。こうして、本明細書で開示されるシステムは、患者データまたは推定された基本的な患者特有の制御パラメータを管理するための集中サーバーを提供し、例えば、1つの機器から別のものへの個別化された治療の自動転送も提供する。
【0087】
ヘパリン注入の推奨レートを提供することに加えて、注入機器では、次回の採血およびaPTT分析の時間を表示することもできる。臨床医は、患者の血中aPTTレベルをチェックして、更新されたヘパリン注入レートがアルゴリズムで判定されることができるように、ユーザーインターフェースおよび/またはリモート通知システムにより指定された時間について注意を喚起される。一連の段階的に増大するアラームは、ヘパリン測定が指定された時間に受信されない場合に生成される。
【0088】
推定された基本的な患者特有の制御変数は、注入システムに組み込まれたフィードバックコントローラにより計算される。最初の投薬の計算後、アルゴリズムは、aPTTの読み取り値と目標域間の相違の履歴に基づき、ボーラスおよび/または継続的なヘパリン注入の更新および次のaPTTの読み取りの時間を提供することによって、フィードバックコントローラとして機能する。凝固時間が目標とされる域未満の場合、ヘパリン注入レートは増大される。反対に、凝固時間が望ましい時間より長い場合には、推奨されるヘパリン注入レートは減少する結果になる。aPTTの読み取り値が治療域内になると、ヘパリン注入レートは変更されず、aPTT測定間のタイミングは24時間に延長される。
【0089】
最初の投与量は、例えば患者の年齢、体重、性別、喫煙履歴、および血清中クレアチニンレベルに基づいて提供される。先験的母集団PK−PD分析に基づく、多変量初期用量アルゴリズムが、特定の処置のモダリティに従い、6時間以内に類似した治療の反応を達成するために、最適化される。その後の読み取り値は、ベイジアン最適化アルゴリズム、拡張カルマンフィルター、または他のパラメータ推定技術のいずれかを使用して、ヘパリン薬力学のPK−PDモデルに関連付けられる、計算された基本的な患者特有の制御変数を更新するために使用される。
【0090】
PK−PDモデルでは、次式により、aPTT反応をヘパリンおよび基本的な患者特有の制御パラメータ、
【数23】

に関係させる:
【数24】

ここで、R(t)はヘパリン投与に対するモデル化されたaPTT反応で、aPTTは基準となるaPTT測定値で、Sはヘパリンに対する薬物感受性で、aとaはヘパリンの除去の飽和メカニズムに関連付けられた定数で、λは除去レート定数で、u(t)はヘパリン注入レートで、Vは分配量である。
【0091】
検査情報システムからの新しいそれぞれのaPTT測定値に加えて、R(t)がより観察されたものに一致するようにベイズまたは他の推定技術を使って、
【数25】

が更新される。
【0092】
最終的に
【数26】

は、最適な推奨される注入レートを判定するために、aPTT予測、R(t+τ)、ここでtは現在の時間で、τ>0、が使用されるモデル予測的制御を通してヘパリン注入レートを調整するために利用される。
【0093】
それぞれの更新時点で、制御パラメータ
【数27】

は、例えば、aPTT観察の履歴、ヘパリン注入、患者ID情報、および時間インデックスとともに、注入機器からリモートシステムに転送され、SQLデータベースに記録されることができる。そのような情報はさらに、時間の他の時点でも同様に転送されることができる。この情報は、例えば、現在の機器が故障するまたは置換が必要とされる場合に、別の注入機器で治療を再開するための情報記録を構成している。さらに情報は、他の医療機器を使用して治療を開始または再開するために、別の医療機器に直接転送されることもできる。
【0094】
実施例4
コンピュータ誘導血中グルコース投与アルゴリズム
【0095】
静脈インスリンは糖尿病管理の方法で、インスリンを投与する方法は複雑で、集中治療室に限定される場合がある。血中グルコースタイミングで柔軟性があり、段階的方式でインスリン投与をアドバイスする静脈インスリンの投与でのアドバイスのためのコンピュータ誘導アルゴリズムが、血糖コントロールを維持するために使用される場合がある。静脈インスリンプロトコルには次の公式が含まれる:
インスリン投与/時間=(血中グルコース−60)×(乗数) 式(9)
【0096】
研究によると、およそ0.02で開始する乗数で望ましい結果が得られることが示されている。乗数は、インスリン投与の公式が目標とされる域内にグルコースを抑えるまで、漸進的に変更されることができる。
【0097】
方法を開始するには、血中グルコース値の測定が行われ、医療機器に入力され、乗数をおよそ0.02に設定して、最初のインスリン注入レートが式(9)に従って計算される。グルコースレベルに対する変更のレートに基づき、医療機器は、次の血中グルコース値が必要な場合(例えば、約20分から約120分の間)には、看護師に通知することができる。例えば、最初の血中グルコースレベルが295mg/dlの場合、0.02の乗数は4.7ユニット/時間の最初のインスリンレートを示す。第2の血中グルコースレベルが256mg/dl(例えば、15%未満)に減少する場合、乗数ではインスリン投与量を4.9ユニット/時に増やすために、25%だけ増大させることができる。その後、連続的に測定される血中グルコースレベルが、血中グルコースレベルが低い方の目標値(例えば、69mg/dlで0.2ユニット/時)未満になるようにうまく減少する場合(例えば、205mg/dlで3.6ユニット/時、168mg/dlで2.7ユニット/時、そして115mg/dlで1.5ユニット/時)、次にその時点で、乗数は下降方向にシフトし、次の2つの血中グルコースレベルとインスリン投与量(例えば、98mg/dlで0.8ユニット/時と110mg/dlで1ユニット/時)は目標域の中心に置かれることができる。
【0098】
血中グルコースレベルの高い方の目標は約120mg/dlと約140mg/dlの間とすることができ、低い方の目標は約80mg/dlと約100mg/dlの間とすることができる。式(9)内で、乗数は約0.01から約0.02で開始されることができ、グルコース測定間の最大時間間隔は約120分である。血中グルコースモニタリングの頻度は、例えば、血中グルコースレベルが約60mg/dl未満に低下しないよう予測される間隔に設定される。血中グルコース値が安定している場合、血中グルコースレベルのモニタリング間の間隔は、設定済みの最大間隔に増大される。
【0099】
上記例で示されているように、乗数が目標の血中グルコースレベルを達成するのを見つけられるまで、多数の血中グルコース測定が行われ、かなりの時間がかかる場合がある。こうして乗数はやがて判定されることのできる基本的な患者特有の制御変数になり、例えば、最初の値からインスリン治療を再開する必要なく、患者への継続的なサービスを維持するために、医療機器間で転送されることができる。さらに、前の乗数、血中グルコース測定値、およびインスリン用量レートは患者に提供される治療の履歴を形成し、さらに患者への治療を投与する医療機器に貴重な情報を提示できる。したがって例えば、最初の値からインスリン治療を再開する必要なく、患者への継続的なサービスを維持するために、医療機器間でそのような履歴情報も転送されることができる。
【0100】
本明細書で開示されている方法、機器、およびシステムは、診断目的または代替および関連された治療のための一治療に関連付けられた患者特有の制御変数を利用するための方式を提供している。方法はリスクレベルが軽減化される治療上の決定のための半自動の方式を提供している。
【0101】
本明細書で述べられているサーバーまたは医療機器のいずれかは、モジュール、セグメント、プログラムコードの一部によって行われる機能を含むまたは有することができ、それには、プロセスで特定の論理関数またはステップを実装するために、プロセッサによって実行可能な1つまたは複数の命令を含んでいる。プログラムコードは、例えば、ディスクまたはハードドライブを含む記憶装置などの任意のタイプのコンピュータ読み取り可能媒体で格納されることができる。さらに、本明細書で述べられているサーバーまたは医療機器は、プロセスで特定の論理関数を実行するために配線された回路、または特定の論理関数を実行するためのプロセッサを含むことができる。代替の実装形態は、それなりの当業者により理解されるとおり、含まれる機能性に応じて、実質上同時発生または逆順を含め、機能が示された、または説明された順序とは違って実行されることができる本出願の例示的実施形態の範囲内に含まれる。
【0102】
各種の態様および実施形態が本明細書で開示されているが、他の態様および実施形態も当業者には明らかになるであろう。本明細書で開示された各種の態様および実施形態は、例示目的であり、限定されることを意図しておらず、正確な範囲は次の特許請求の範囲で示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子薬剤投与システムにより患者の治療を管理および提供するための方法であって、
患者に対応する患者IDを受領する患者に接続された第1電子薬剤投与システムであって、
(i)患者に提供された治療および(ii)治療に対して観察された患者特有の反応に基づく基本的な患者特有の制御変数を推定し、
(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいて、患者に対して更新された治療を提供し、
リモートシステムに、患者に提供された更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する第1電子薬剤投与システムと、
患者に接続する際に、患者IDを受信する第2電子薬剤投与システムであって、
患者IDに関連付けられた更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録にアクセスするためにリモートシステムと通信する第2電子薬剤投与システムとを含む、方法。
【請求項2】
第1電子薬剤投与システムが注入システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基本的な患者特有の制御変数が、インスリン感度、糸球体ろ過量率(GFR)、基本注入レート、増倍率、インスリンクリアランス、インスリン利用定数、飽和条件、薬物感受性、腎機能、および薬物クリアランスレートからなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
リモートシステムに、患者に提供される更新された治療および定期的に推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する第1電子薬剤投与システムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも、推定された基本的な患者特有の制御変数の1つでの変更の各場合に、リモートシステムに対して、患者に提供される更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する第1電子薬剤投与システムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
患者に対する治療を中断することを示す第1電子薬剤投与システムで停止コマンドを受信し、現在の推定された基本的な患者特有の制御変数および更新された治療の記録を、第1電子薬剤投与システムが患者から切断される前に、リモートシステムに応答として転送することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リモートシステムから患者IDと関連付けられた治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を受信し、治療が第1電子薬剤投与システムによって以前に中断された時点での患者に対する治療を継続する第2電子薬剤投与システムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1電子薬剤投与システムが、リモートシステムに、患者に提供される更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を無線で転送する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1電子薬剤投与システムがリモートシステムに、患者に提供される更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送した後、第1電子薬剤投与システムから治療許可を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(i)患者に提供される更新された治療の記録および(ii)定期的に推定された基本的な患者特有の制御変数を格納する第1電子薬剤投与システムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
治療が第1電子薬剤投与システムによって中断された時間と、時間に基づいて提供される治療を低減化する量を判定することと、
第2電子薬剤投与システムによって提供される治療を低減化する量を考慮に入れるために、更新された治療の記録を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者に対して提供される治療が
【数1】

の形の関数に基づいており、ここで、tは時間で、Iは時間tでの計算されたインスリン用量で、
【数2】

は前の時間期間にわたり投与されたインスリン用量で、gは時間tでのグルコース測定値で、
【数3】

は推定された基本的な患者特有の制御変数のベクトルで、
【数4】

は一連の目標とするグルコース濃度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
患者に提供される治療には非分画ヘパリンを含む抗凝血の投与が含まれ、治療に対して観察された患者特有の反応には、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を介してモニターされる非分画ヘパリンの抗凝血効果が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
更新された治療には、観察されたaPTTと目標とするaPTTに基づいて目標の凝固時間を達成するために非分画ヘパリンの用量の調整が含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基本的な患者特有の制御変数がヘパリン注入の更新、次のaPTTの読み取りの時間、ヘパリンに対する薬物感受性、またはヘパリンの除去の飽和メカニズムのレベルからなるグループから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
薬剤投与システムにより患者の治療を管理および提供するためのシステムであって、
患者に接続され、患者に対応する患者IDを受信する第1薬剤投与システムであって、(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいて、患者に更新された治療を提供し、リモートシステムに、患者に対して提供された更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する第1薬剤投与システムと、
患者IDを受信し、リモートシステムと通信して、患者IDに関連付けられた更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録にアクセスする第2薬剤投与システムとを含む、システム。
【請求項17】
第1薬剤投与システムと第2薬剤投与システムが注入システムである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
第2薬剤投与システムがリモートシステムから患者IDと関連付けられた治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を受信し、治療が第1薬剤投与システムによって以前に中断された時点での患者に対する治療を継続する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
第1薬剤投与システムが、リモートシステムに患者に提供される更新された治療および推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を無線で転送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
コンピューティングデバイスによって実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能媒体であって、コンピューティングデバイスに、
第1電子薬剤投与システムから、(i)患者に提供された治療および(ii)治療に対して観察された患者特有の反応に基づいている、患者の推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を受信する機能と、
第1電子薬剤投与システムから、(i)推定された基本的な患者特有の制御変数、(ii)治療に対して観察された患者特有の反応、および(iii)治療目的に基づいている、患者に対して提供された更新された治療を受信する機能と、
第2電子薬剤投与システムに、患者に提供された更新された治療および患者に関連付けられた推定された基本的な患者特有の制御変数の記録を転送する機能を行わせる、実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514834(P2013−514834A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544916(P2012−544916)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061127
【国際公開番号】WO2011/075687
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504308442)ホスピラ・インコーポレイテツド (50)
【Fターム(参考)】