説明

薬品払出装置

【課題】搬器が深くても既投入量が多くても丸物の薬品類を搬器へ的確に投入する。
【解決手段】アンプル等の薬品類6をカセット14に整列収納しておき排出機構18にて排出してから移送機構20にて移送して搬器8に投入する薬品払出装置10において、移送機構20が、排出薬品類6を受け取るときには移送容器42+51+61の下面を閉じて移送容器に上面から入れ、薬品類6を移送容器から搬器8へ投入するときには移送容器を下げて移送容器の下面を搬器の内部空間に入れてから移送容器の下面を開けるようにし、さらに、伝動機構30+63の伝動経路に支承による伝動部を組み込んで、移送容器の下降を阻止されると移送容器を下げる駆動力や運動の伝達を断つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院薬局等における調剤業務を支援するための薬品払出装置に関し、詳しくは、種々の薬品類を予め多数のカセットに分けて収納しておき必要に応じて自動的に払い出す薬品払出装置に関する。
なお、この薬品払出装置が取り扱う薬品類は、アンプル等の円柱状容器に入れられた注射薬など、いわゆる丸物の医薬品である。輸液ボトル等も、円柱状容器に入っていれば、該当する。
【背景技術】
【0002】
薬品類を横にした状態でカセットに整列収納しておき排出機構にて一つずつ排出して移送機構にて移送する薬品払出装置が開発されている(例えば特許文献1,2参照)。
その従来装置は、アンプル等の円柱状容器入り薬品類を横にして整列収納する多数のカセットと、これらのカセットを引出可能に又は着脱可能に保持する支持機構と、各カセットから収納薬品類を一つずつ排出させる排出機構と、その排出薬品類を受け取って移送する移送機構とを備えている。また、その移送機構は、ベルトコンベア等の水平搬送機構にて移送薬品類を支持機構の横脇の搬器へ送り込むようになっている。
【0003】
このような薬品払出装置では、カセットから移送機構への移載時も、移送機構から搬器への移載時も、自然落下や傾斜面上の転動落下にて移った薬品類が移載先の底面や側壁面に軽く衝突して止まるようになっていた。このため、移載時に多少の衝撃が掛かるが、アンプル入りであっても大抵の薬品類は壊れないので、移送機構を比較的簡便な側壁付きベルトコンベアや角形ボックスなどで具体化していた。
しかしながら、薬品類が首部をプリカットされたアンプルの場合、指先で軽く押しても頭部と胴部とが分離するようになっているので、衝撃を小さく抑えなければならない。特に、端部に掛かる衝撃は、十分に小さく抑えなければならない。
【0004】
そこで、丸物の薬品類を優しく移送しうるようになった薬品払出装置が開発されている(例えば特許文献3参照)。この従来装置にあっては、アンプル等の円柱状容器入り薬品類を横にした状態でカセットに整列収納しておき排出機構にて一つずつ排出して移送機構にて移送する薬品払出装置において、容器本体部と容器蓋部とで水平な回転中心線の周りの割筒状湾曲部と開閉可能で閉時には先細りのテーパ状になる突出部とを形成し、上記突出部を斜め上に向けて且つ開けて上記カセットから排出薬品類を横にしたまま受け取り、上記突出部を閉めた状態で下に向けて又は斜め下に向けてから開けることにより移送薬品類を横にしたまま降ろして引き渡す移送容器が、上記移送機構に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−275550号公報
【特許文献2】特開2005−237712号公報
【特許文献3】特開2007−209599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の薬品払出装置では、薬品類を移送機構にて搬器へ投入するとき、比較的壊れにくい薬品類については一つずつ分かれていようが複数個が纏まっていようが気にしないで搬器の上方の移送機構から搬器の上部開口へ薬品類を落として搬器の内部空間に薬品類を収容することで投入操作を能率良く実行する一方、壊れやすい薬品類については薬品類を一つずつ移送するとともに移送容器の先端部を搬器の内部空間に入れてから搬器の内底へゆっくり下ろすことで投入操作を優しく実行するようになっている。
そして、何れの方式の薬品払出装置であっても、搬器が余り深くない浅めのものであったり、薬品類がばらけて多段には重ならない程度に薬品類の投入数量が収まっている、といった使用状況下では、実用に供されて好評を博している。
【0007】
また、そのような薬品払出装置の使用経験が積まれ、自動払出の有益性が認識されるに連れて、自動化に対する要求レベルが高まってきた。具体的には、運搬作業等の能率向上のため、従来より深めの搬器を使用したい、更には投入数量に制約されないで搬器を空からほぼ満杯まで気軽に使用したい、といった要請が生じた。
しかしながら、搬器が深いと、薬品類を搬器に投入するときに搬器の上部開口から内部空間へ薬品類を自然落下させる方式は薬品類の損壊を招きやすいので採用しがたい。また、薬品類を一つずつ移送して搬器に投入するのは、薬品類が壊れやすいもののときに制御や運用で限定するのは仕方ないとしても、移送能率が低いので出来るだけ避けたい。
そこで、搬器が浅くても深くても丸物の薬品類を搬器へ的確に投入しうる薬品払出装置を実現することが基本的な技術課題となる。
【0008】
さらに、薬品類を搬器に投入するときに移送容器の先端部を搬器の内部空間に入れる方式は、薬品類の投入数量が多くて一つの搬器への投入動作が複数回になったり、上流の調剤機で搬器に薬品類が先行投入されていたりで、搬器の内底が投入済み薬品類によって底上げされていると、投入済み薬品類と移送容器の先端部とが衝突するおそれがあり、その衝撃が強いと薬品類の損壊を招きやすいので、従来のままでは採用しがたい。
そこで、搬器が浅くても深くても既投入量が少なくても多くても丸物の薬品類を搬器へ的確に投入しうる薬品払出装置を実現することが更なる技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬品払出装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、アンプル等の円柱状容器入り薬品類をカセットに整列収納しておき排出機構にて排出してから移送機構にて移送して搬器に投入する薬品払出装置において、前記移送機構が、前記カセットからの排出薬品類を受け取る位置とこの薬品類を前記搬器へ投入する位置とを行き来する移動体と、前記移動体に縦方向移動許容態様で装備されており上面が解放されており下面が開閉しうる移送容器と、前記移動体に装備されており前記移送容器の縦方向移動と下面開閉とを駆動する開閉駆動機構と、前記開閉駆動機構の駆動を前記移送容器に伝達する伝動機構とを具備していて、前記排出薬品類を受け取るときには前記移送容器の下面を閉じて前記移送容器に上面から入れ、この薬品類を前記移送容器から前記搬器へ投入するときには前記移送容器を下げて前記移送容器の下面を前記搬器の内部空間に入れてから前記移送容器の下面を開けるようになっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬品払出装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬品払出装置であって、前記伝動機構が、支承による伝動部を含んでいて前記移送容器の下降を阻止されると前記移送容器を下げる駆動の伝達を断つようになっていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の薬品払出装置は(解決手段3)、上記解決手段2の薬品払出装置であって、前記伝動機構が、前記移送容器を下げる駆動の伝達を断ったときでも前記移送容器の下面を開ける駆動は伝達するようになっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の薬品払出装置は(解決手段4)、上記解決手段3の薬品払出装置であって、前記移送容器の前記移動体に対する装備が、縦方向移動に加えて横方向移動も許容する態様でなされており、前記移送容器は、少なくとも一部は横方向移動可能に構成されていて、それが前記伝動機構にて横方向移動させられるとその横方向移動に随伴して下面を開けるようになっている、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の薬品払出装置は(解決手段5)、上記解決手段2〜4の薬品払出装置であって、前記伝動機構の前記伝動部がカム機構からなり、前記カム機構のカム原節が前記移動体に装備されており、前記カム機構のカム従節が前記移送容器に装備されており、前記移送容器とその装備品が総て受動部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の薬品払出装置にあっては(解決手段1)、カセットから排出された薬品類を受け入れて搬器の所へ移送する移送容器が、受入を解放上面で行い投入を開閉下面で行うもので簡素化しやすいうえ、下降した移動体から更に下降して下面を搬器の内部空間に入れてから下面を開けて投入するようになっているため、搬器が浅いときはもちろんのこと搬器が深いときでも、放下開始位置が低くて搬器の内底に近いので、放下薬品類が一つであれ複数であれ薬品類が落下時の衝撃で壊れるおそれがない。
したがって、この発明によれば、搬器が浅くても深くても丸物の薬品類を搬器へ的確に投入しうる薬品払出装置を実現することができる。
【0015】
また、本発明の薬品払出装置にあっては(解決手段2)、既に投入されている薬品類が多かったり偶然に立っていたりして、そのような傷害物に移送容器の先端部が当接して下降を阻止されると、移送容器を下げる駆動の伝達すなわち駆動力や運動の伝達が伝動機構によって断たれるので、この場合も、薬品類が衝突の衝撃で壊れるおそれがない。しかも、そのような伝動機構は、上下に離接自在であれば足りる支承による伝動部で具現化されているので、移送機構の不所望な複雑化や大形化が簡便に回避される。
従って、この発明によれば、搬器が浅くても深くても既投入量が少なくても多くても丸物の薬品類を搬器へ的確に投入しうる薬品払出装置を実現することができる。
【0016】
さらに、本発明の薬品払出装置にあっては(解決手段3)、移送容器の下降が阻止されたときでも、移送容器の下面が開くので、搬器への薬品類投入を完遂することができる。
【0017】
また、本発明の薬品払出装置にあっては(解決手段4)、上述のように移送容器を縦方向移動させる駆動力や運動が支承にて伝達されるところ、移送容器の下面を開閉する駆動すなわち駆動力や運動の伝達が移送容器を横方向移動させることで行われるようにしたことにより、縦方向移動と開閉という異質な動作の伝達が、縦方向移動と横方向移動という同質な二次元の動作の伝達で代行されるため、移送容器を下げる駆動力や運動の伝達を断ったときでも移送容器の下面を開ける駆動力や運動は伝達するという伝動機構を容易かつ簡素に具体化することができる。
【0018】
また、本発明の薬品払出装置にあっては(解決手段5)、移送容器が軽量化の難しい電動モータ等の能動部材を装備していないことから移送容器とその装備品が軽量になるので下降阻止時の衝撃が弱くて済むこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1について、薬品払出装置の構造を示し、(a)が薬品払出装置の正面図、(b)及び(c)が薬品払出装置の平面図、(d)が移送機構の正面図である。
【図2】移送機構の構造を示し、(a)が移送機構の側面図、(b)が移送機構の正面図と薬品類受入保持部材の断面図である。
【図3】移送機構の構造を示し、(a)が移送機構の展開図、(b)〜(d)が薬品類受入保持部材の断面図である。
【図4】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、カセットから薬品類を移送機構が受け取っているところを示している。
【図5】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、カセットから薬品類を移送機構が受け取り終えたところを示している。
【図6】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、搬器の直上に移送機構が下降したところを示している。
【図7】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、移送容器を搬器の中に入れたところを示している。
【図8】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、移送容器の下面を開けて薬品類を搬器の中へ放下しているところを示している。
【図9】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、移送容器を搬器の中に入れているときに移送容器の下降が妨げられたところを示している。
【図10】薬品払出装置の要部の正面図と薬品類受入保持部材の断面図であって、移送容器を開けて薬品類を搬器の中へ放下しているところを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このような本発明の薬品払出装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜9に示した実施例1は、上述した解決手段1〜5(出願当初の請求項1〜5)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電動モータ等の駆動源,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0021】
本発明の薬品払出装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が薬品払出装置10の正面図、(b)及び(c)が薬品払出装置10の平面図、(d)が移送機構移送機構20とその周辺部の正面図である。また、図2は、(a)が移送機構20の側面図、(b)が移送機構20の正面図と薬品類受入保持部材27+26+51+61の断面図である。さらに、図3は、(a)が移送機構20の展開図、(b)〜(d)が薬品類受入保持部材26+51+61の断面図である。
【0022】
この薬品払出装置10は(図1(a)参照)、他の自動調剤機とのインライン接続に適するよう、下部に搬送部15が配され、上部に電装部11が配され、中間に二つの庫部13が並置され、左右の庫部13に挟まれて真ん中に移送部12が配されている。
電装部11には図示しない電源やコントローラが格納されており、コントローラが図示しない操作卓やホストコンピュータ等から処方データや調剤データを入力し更に動作指令を生成して各部12,13,15の動作を制御するようになっている。
搬送部15には、払出すべき薬品類6を収容する搬器8を搬入するとともに薬品類6を収容した搬器8を搬出するために、例えばベルトコンベアからなる搬送機構16が設けられていて、搬器8を水平方向に搬送するようになっている。
【0023】
庫部13(支持機構)には、多数のカセット14が多段(図では9段)に装着されている。カセット14は(図1(a)〜(c)参照)、アンプル等の円柱状容器入り薬品類6を横にした状態で一列に並べて整列収納するものであって逐次排出に適していれば良く、例えば、上面解放の箱体の先端に排出用可動蓋を付設した既成のものでも(例えば特許文献1,2参照)、他の構造のものでも良い。庫部13は各々のカセット14を水平状態で又は傾斜状態で引出可能に又は着脱可能に保持するようになっており、例えば、カセット14が前後に単列の場合(図1(b)参照)、カセット14を横にして手で持ち、その手を伸ばして庫部13に前から差し込んだり前へ抜き取ったりするようにしても良い。また、カセット14が前後に複列の場合(図1(c)参照)、庫部13の各段毎に引出17を設けて、カセット14を着脱するときには引出17を引き出すようにしても良い。
【0024】
各カセット14は庫部13に装着されたとき排出口が移送部12を臨むようになっており、カセット14の排出口の位置するところには、それぞれ、排出機構18が設けられている(図1(d)参照)。排出機構18は、ガイドプレートだけを図示したが、排出用可動蓋を開閉させる図示しない電動モータや伝動機構といった適宜な駆動手段や作動部材も具わっており、これらが庫部13に纏めて或いはカセット14や移送部12などにも適宜分散して設けられていて、コントローラの排出指令に応じて該当カセット14から収納薬品類を一つずつ移送部12側へ排出させるようになっている。
移送部12には、カセット14から排出された薬品類6を受け取って移送する移送機構20が、左方の庫部13用と右方の庫部13用とで、二つ設けられている。
【0025】
移送機構20は(図1(d),図2,図3参照)、カセット14から排出機構18にて排出されて移送部12に来た薬品類6を受け取って下方へ移送してから搬器8に投入するものであり、そのために、上下に延びた案内部材21と、図示しないモータにて駆動されると案内部材21に案内されて上下移動する移動体22と、この移動体22に設けられており而も移動体22に対する相対的な縦方向移動は全部(42+51)が許容されるが移動体22に対する相対的な横方向移動は一部(61)が許容される態様で装備されている移送容器42+51+61と、やはり移動体22に設けられおり軸回転運動はするが縦横の相対移動はしない態様で移動体22に装備されていて移送容器42+51+61の縦方向移動と下面開閉とを駆動する開閉駆動機構23及び不図示のモータと、開閉駆動機構23の出す駆動力や運動を移送容器42+51+61に伝達する伝動機構30+63とを具えている。
【0026】
また、移送機構20は、コントローラの動作指令に応じて各モータを作動させるようになっている。具体的には、移動体22を上下に移動させて、移動体22とその装備品に、カセット14から排出された薬品類6を受け取る位置と、この薬品類6を搬器8へ投入する位置とを、行き来させるようになっている。移動体22の上下移動は庫部13の各段のカセット14と搬送部15の搬器8との間を行き来するためであり、カセット14や搬送機構16の配置状態が異なる場合は水平移動や斜め移動も組み合わせられる。さらに、移送機構20は、開閉駆動機構23及びモータにて、伝動機構30+63を介して、移送容器42+51+61を移動体22に対して縦方向にも横方向にも相対移動させるようになっている。
【0027】
詳述すると、移送機構20は(図3(a)参照)、上述したように案内部材21に案内されて昇降する移動体22を基礎的なものとして、それに加え、移動体22に対して固定的に装着されている縦方向案内部材25と斜板26と斜板27と、上述した開閉駆動機構23と同様に移動体22に対して軸回転運動のみ可能に装着されたカム原節30と、移動体22に対して縦方向(上下方向・鉛直方向)にだけ相対移動しうる縦移動部40と、縦移動部40に対して相対的に揺動(限定範囲で双方向回転)しうる揺動部50と、縦移動部40に対して横方向(左右方向・水平方向)にだけ相対移動しうる横移動部60とを具えたものとなっている。
【0028】
開閉駆動機構23は、モータの回転出力をカム原節30に伝達できれば、図示のような単純なギアでも他の減速ギヤでもベルト等でも良い。本例では、回転中心24からの駆動力および回転運動の出力が前端部と後端部の二カ所で行われるようになっている。
縦方向案内部材25は、縦移動部40を円滑に縦方向移動させることができれば、例えば直線移動方向を縦向きにしたスライダ機構のうちの固定部材部分で良く、本例では、前端部と後端部との二カ所に設けられている。
【0029】
斜板26,27は、前端部から後端部に至る長い板体からなり、上面が平坦であってカセット14や排出機構18に近いところでは高いが離れたところでは低い状態で傾いている。移動体22の側面のうち排出機構18寄りのところに形成されている図示しない受入口の直ぐ下に、斜板26,27の排出機構18寄り端部が位置している(図2(b)参照)。そして、カセット14から排出機構18にて排出された薬品類6が移動体22の受入口から移動体22の内部に転がり込んで来て斜板26,27の傾斜上面に載ると、その薬品類6を自重で転動させることで、薬品類6を傾斜上面で移送容器42+51+61へ導くものであり、合わさって一枚になっていても良く、三枚以上に分かれていても良い。
【0030】
カム原節30は(図2,図3(a)参照)、その回転中心31を開閉駆動機構23の回転中心24に一致させた状態で移動体22に直に又は開閉駆動機構23を介在させて移動体22に装着されていて、開閉駆動機構23の駆動力や軸回転運動に従って限定範囲で双方向回転することにより、コロ32を弧状軌跡上で往復動させるものとなっている。コロ32は、後述のカム輪郭曲線65に当接して低摩擦でカム従節63を移動させながら往復動できれば、単純な滑り棒体でも軸受付き転動輪でも良い。本例では、カム原節30も前端部と後端部との二カ所に設けられている。
【0031】
縦移動部40は(図2,図3(a)参照)、縦方向案内部材25の相方の可動部材と、それに固定された横方向案内部材41及び端板42とを具えている。本例では、縦移動部40も前端部と後端部との二カ所に設けられている。
横方向案内部材41は、横移動部60を円滑に横方向移動させることができれば、例えば直線移動方向を横向きにしたスライダ機構のうちの固定部材部分で良い。
端板42は、移送容器42+51+61の前側と奥側の両端部を搬器8が零れて落ちないように塞ぐことができれば、他の形状のものでも良い。本例では、揺動部50を軸支する単純な又は軸受等の付いた穴からなる揺動中心43が端板42に形成されている。
【0032】
揺動部50は(図2,図3(a)参照)、前端部から後端部に至る長い板体からなる揺動板51と、揺動板51の前端部と後端部に一つずつ固定装着された揺動腕52を具えたものであり、揺動中心53を縦移動部40の揺動中心43に一致させた状態で縦移動部40に装着されていて、揺動腕52を双方向回転させると揺動板51も双方向回転するようになっている。また、揺動部50は、揺動腕52が横移動部60の後述するコロ62に寄り掛かる形で係合しているので、横移動部60が縦移動部40に対して横移動すると、揺動腕52が揺動し、それと一緒に揺動板51も揺動して、揺動板51が傾き具合を変えるようになっている。さらに、揺動部50は、縦移動部40を介して移動体22に連結されているので、移動体22に対しては縦方向移動と揺動とが行えるものとなっている。
【0033】
横移動部60は(図2,図3(a)参照)、横方向案内部材41の相方の可動部材と、前端部から後端部に至る長い板体からなる横移動板61と、上述のように斜め上から寄り掛かってくる揺動腕52を受け止めつつ横移動時に円滑な相対移動を可能とするコロ62と、上述したカム原節30と組になってカム機構をなすカム従節63とを具えたものであり、縦移動部40を介して移動体22に連結されているので、移動体22に対しては縦方向移動も横方向移動も行える。本例では、横移動板61は単一であるが、可動部材とコロ62とカム従節63は前端部と後端部との二カ所に設けられており、横移動板61は両端部が、コロ62は前端部のものも後端部のものも、カム従節63に吊り下げられた形で固定装着されていて、カム従節63に随伴してカム従節63と一緒に移動体22に対し縦方向と横方向に相対移動するようになっている。
【0034】
これらの部材のうち、前後二枚の鉛直な端板42と傾斜している左方の揺動板51と右方の鉛直な横移動板61とによって、薬品類6の受け入れのために上面の解放されている移送容器42+51+61が構成されている(図2,図3(b)参照)。また、斜板26,27と揺動板51と横移動板61が薬品類受入保持部材27+26+51+61になっている。そして、移送容器42+51+61は、薬品類6の受け入れ時には斜板26の直ぐ下のところに来ているが、移動体22に対する縦移動部40の下降に伴って(図3(b)矢付き実線を参照)、下降し(図3(c)参照)、移動体22に対する横移動部60特に横移動板61の右方向移動とそれに随伴する揺動板51の時計回り揺動とによって(図3(c)矢付き実線を参照)、下面を開くようになっている(図3(d)参照)。
【0035】
しかも、移送容器42+51+61は、移動体22に対する横移動部60特に横移動板61の左方向移動とそれに随伴する揺動板51の反時計回り揺動とによって(図3(d)矢付き破線を参照)、下面を閉じ(図3(c)参照)、移動体22に対する縦移動部40の上昇に伴って(図3(c)矢付き破線を参照)、斜板26のところまで上昇するようになっている(図3(b)参照)。そして、このような移送容器42+51+61は、上面が常に解放されており、伝動機構30+63にて横方向移動させられるとその横移動板61の横移動とそれに随伴する揺動板51の揺動とで下端部を離接させることにより下面が開閉するものとなっている。
【0036】
このような移送容器42+51+61とその装備品40+50+60は、総て受動部材からできており、その動作は、開閉駆動機構23の駆動力と回転運動を伝達する伝動機構30+63のカムによって規定されている。伝動機構30+63は、カム機構をなすカム原節30とカム従節63とを組み合わせたものであり、そのうちカム原節30は移動体22に装備されており、カム従節63は、横移動部60において横移動板61に連結されおり、横移動板61を介して移送容器42+51+61に装備されたものとなっている。
【0037】
伝動機構30+63のカム従節63には刳り抜きや打ち抜きにて大きなカム逃げ場64が形成されされており、その上辺と左辺および右辺の上部がカム原節30のコロ32と当接するカム輪郭曲線65になっており、コロ32の運動とカム輪郭曲線65の形とによって、カム従節63の軌跡ひいては縦移動部40と揺動部50と横移動部60の運動が規定されている。カム原節30のコロ32は、コントローラの制御に従い、回転中心31から見て左上と右との間を、下回りで揺動するようになっている(図3(a)の矢付き実線と矢付き破線を参照)。
【0038】
しかも、この伝動機構30+63にあっては、上述したようにカム従節63のカム輪郭曲線65の下側にはカム原節30のコロ32より大きなカム逃げ場64が空いており、そのようなカム逃げ場64の上辺のカム輪郭曲線65に対してカム原節30のコロ32が下から受け止めるように当接しているので、カム原節30がカム従節63を上下方向離接自在に支承するようになっている。また、そのような支承による伝動部である支承伝動部32+65を含んだ伝動機構30+63は、移送容器42+51+61の下降を阻止されると移送容器42+51+61を下げる駆動力や運動の伝達を断つものとなっている。
【0039】
さらに、カム従節63においてカム逃げ場64の左右にはカム原節30のコロ32に横から離接自在に当接する部材が存在しているので、伝動機構30+63は、カム原節30のコロ32がカム従節63のカム輪郭曲線65から離れて、移送容器42+51+61を下げる駆動力や運動の伝達を断ったときでも、コロ32がカム従節63の左辺部分か右辺部分を押すことで、カム従節63を横移動させ、ひいては横移動板61を横移動させて、移送容器42+51+61の下面を開ける駆動力や運動を伝達するものとなっている。
【0040】
そして(図3(a)の矢付き実線を参照)、カム原節30のコロ32が回転中心31の左上から下まで揺動すると、縦移動部40と揺動部50と横移動部60が下降し、更にコロ32が回転中心31の下から右まで揺動すると、横移動部60が右方向移動するとともに揺動部50が時計回りに揺動して移送容器42+51+61の下面が開き更に縦移動部40と揺動部50と横移動部60が少し上昇する。逆に(図3(a)の矢付き破線を参照)、カム原節30のコロ32が回転中心31の右から下まで揺動すると、縦移動部40と揺動部50と横移動部60が少し下降し、更にコロ32が回転中心31の下から左上まで揺動すると、横移動部60が左方向移動するとともに揺動部50が反時計回りに揺動して移送容器42+51+61の下面が閉じ更に縦移動部40と揺動部50と横移動部60が上昇するようになっている。
【0041】
また、コントローラによるカム原節30のコロ32の制御は、薬品類6の受け取り動作や搬器8への投入動作に適うように行われるので、移送機構20が排出薬品類6を受け取るときには、薬品類6を排出しようとしているカセット14及び排出機構18のところへ移動体22を昇降させるとともに、移送容器42+51+61の下面を閉じて当該移送容器に上面から薬品類6を入れるが、薬品類6を移送容器42+51+61から搬器8へ投入するときには、移動体22を下降させてから更に移送容器42+51+61を下げ、それで移送容器42+51+61の下面ひいては容器下端部を搬器8の内部空間に入れ、それから移送容器42+51+61の下面を開けるようになっている。
【0042】
この実施例1の薬品払出装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図4〜図10は、何れも、薬品払出装置10の要部の正面図と、薬品類受入保持部材27+26+51+61の断面図である。そのうち、図4は、移送機構20が薬品類6をカセット14から受け取っているところを示しており、図5は、移送機構20が薬品類6をカセット14から受け取り終えたところを示している。
【0043】
また、図6は、移送機構20が搬器8の直上に下降したところを示しており、図7は、移送容器42+51+61を搬器8の中に入れたところを示しており、図8は、移送容器42+51+61の下面を開けて薬品類6を搬器8の中へ放下しているところを示している。さらに、図9は、移送容器42+51+61を搬器8の中に入れているときに移送容器42+51+61の下降が妨げられたところを示しており、図10は、移送容器42+51+61の下降が妨げられた後に移送容器42+51+61の下面を開けて薬品類6を搬器8の中へ放下しているところを示している。
【0044】
自動払出に先だって各種の薬品類6を各々のカセット14に整列収納しておく(特許文献1,2参照)。そして、調剤指示が与えられると、即ちコントローラに処方箋データや調剤データが入力されると、それに基づき、コントローラの制御プログラムが実行されて、払出動作が自動遂行される。また、図示しない隣接の搬器供給装置や調剤機から搬器8が搬送機構16に移載され、その搬器8が搬送機構16によって移送部12の真下に置かれる。そして、調剤対象の薬品類6が該当するカセット14から排出機構18にて排出され、その薬品類6が移送機構20にて搬器8へ移送される。それが繰り返されて必要な薬品類6が搬器8に収集されると、搬器8が搬送機構16によって図示しない隣接の搬器収納装置や調剤機へ送り出される。
【0045】
以下、上記動作のうち、薬品類6を排出しようとするカセット14の排出機構18のところへ移送機構20が昇降したところから、排出された薬品類6が移送機構20によって受け取られてから搬器8に投入されるところまでを、詳述する(図4〜図10参照)。
先ず(図4参照)、排出予定のカセット14から排出薬品類6を受け取る位置に移動体22が着いたとき、移送機構20はコロ32を回転中心31の左上に止めておくので、移送容器42+51+61は移動体22に対して相対的に上昇したところに位置するとともに下面を閉じている。そのため、排出機構18から放出された排出薬品類6は、移動体22の受入口から移送機構20に入り、それから斜板27と斜板26の上面を転動して、移送容器42+51+61の中に転がり込む。
【0046】
そして、一つであれ複数個であれ指定数(図では3個)の薬品類6が移送容器42+51+61に収容されると(図5参照)、移送機構20が下降して移動体22が搬器8の直ぐ上に来たところで停止する(図6参照)。それから、カム原節30のコロ32が回転中心31の左上から下向きに揺動して回転中心31の下まで来ると(図7参照)、大きな移動体22は止めたまま、そこから移送容器42+51+61が下降して、移送容器42+51+61のうち下面を含む大部分が搬器8の内部空間に入り込む。その移送容器42+51+61に収容されて移送されて来た薬品類6も、移送容器42+51+61と共に搬器8の内部空間に入り、搬器8の内底に近づく。
【0047】
さらに、カム原節30のコロ32が揺動を続けて回転中心31の下を通過して右まで来ると(図8参照)、横移動板61が右方向移動し、それに随伴して揺動板51が時計回りに揺動して、移送容器42+51+61が下面を開けながら少し上昇する。そうすると、移送容器42+51+61から薬品類6が搬器8の内部空間へ放下されるが、薬品類6は搬器8の内底に近いところから落下するだけなので落下の衝撃で壊れるおそれはない。
こうして安全に薬品類6を搬器8に投入した移送機構20は、上述したのと逆順に動作して、次の排出予定のカセット14から排出薬品類6を受け取る位置まで上昇する。
【0048】
そして(図9参照)、薬品類6の移送が繰り返されて搬器8の中に薬品類6が溜まってきて、薬品類6の積み重なりの高さ増してくると、やがて移送容器42+51+61が下降して搬器8の中に入ったときに例えば横移動板61の下端が最上段の薬品類6に突き当たることにもなるが、その場合、その当接によって移送容器42+51+61の更なる下降が阻止されると、伝動機構30+63に含まれている支承伝動部32+65においてコロ32からカム輪郭曲線65が離れて、それまでは開閉駆動機構23から伝動機構30+63を介して移送容器42+51+61に伝達されていた駆動すなわち移送容器42+51+61を下げる駆動力や運動が伝達されなくなって、移送容器42+51+61は薬品類6に不所望な衝撃を与えることなく薬品類6に当接したところで下降を停止する。
【0049】
それから(図10参照)、移送容器42+51+61が薬品類6を放下するために下面を開かなければならないが、伝動機構30+63が移送容器42+51+61を下げる駆動の伝達が断たれたときでも移送容器42+51+61の下面を開ける駆動力は伝達されるようになっているので、このときも、移送容器42+51+61が横移動板61を右方向移動させるとともに揺動板51を時計回りに揺動させて下面を開けながら少し上昇する。そうして、移送容器42+51+61から薬品類6が搬器8の内部空間へ放下されるが、薬品類6は直ぐ下の薬品類6の上に優しく落下するだけなので、何れの薬品類6も落下の衝撃で壊れるおそれはない。
【0050】
[その他]
なお、移送容器42+51+61のうち揺動板51の揺動は強制的でないので揺動板51が揺動にて薬品類6を損傷させるおそれはないが、移送容器42+51+61のうち横移動板61の右方向移動は強制的なので、横移動板61の下端部や下半部には、当接時や横移動時の衝撃を緩和するために、緩衝材を採用したり、変形や揺動して逃げるような改造を加えると、一層良い。
また、上記の実施例では、庫部13や移送機構20が二つずつ設けられていたが、庫部13は一つでも良く三つ以上でも良く、移送機構20は共用可能ならば庫部13より少数でも良い。また、カセット14を手前にして移送部12を後背側に配置しても良く、カセット14を排出機構18の無い方から着脱するようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
6…薬品類、8…搬器、10…薬品払出装置、
11…電装部、12…移送部、13…庫部、14…カセット、
15…搬送部、16…搬送機構、17…引出、18…排出機構、
20…移送機構、
21…案内部材、22…移動体、23…開閉駆動機構、
24…回転中心、25…縦方向案内部材、26,27…斜板、
30…カム原節(カム機構,伝動機構)、31…回転中心、32…コロ、
40…縦移動部、41…横方向案内部材、42…端板(移送容器)、43…揺動中心、
50…揺動部、51…揺動板(移送容器)、52…揺動腕、53…揺動中心、
60…横移動部、61…横移動板(移送容器)、62…コロ、
63…カム従節(カム機構,伝動機構)、64…カム逃げ場、65…カム輪郭曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンプル等の円柱状容器入り薬品類をカセットに整列収納しておき排出機構にて排出してから移送機構にて移送して搬器に投入する薬品払出装置において、前記移送機構が、前記カセットからの排出薬品類を受け取る位置とこの薬品類を前記搬器へ投入する位置とを行き来する移動体と、前記移動体に縦方向移動許容態様で装備されており上面が解放されており下面が開閉しうる移送容器と、前記移動体に装備されており前記移送容器の縦方向移動と下面開閉とを駆動する開閉駆動機構と、前記開閉駆動機構の駆動を前記移送容器に伝達する伝動機構とを具備していて、前記排出薬品類を受け取るときには前記移送容器の下面を閉じて前記移送容器に上面から入れ、この薬品類を前記移送容器から前記搬器へ投入するときには前記移送容器を下げて前記移送容器の下面を前記搬器の内部空間に入れてから前記移送容器の下面を開けるようになっていることを特徴とする薬品払出装置。
【請求項2】
前記伝動機構が、支承による伝動部を含んでいて前記移送容器の下降を阻止されると前記移送容器を下げる駆動の伝達を断つようになっていることを特徴とする請求項1記載の薬品払出装置。
【請求項3】
前記伝動機構が、前記移送容器を下げる駆動の伝達を断ったときでも前記移送容器の下面を開ける駆動は伝達するようになっていることを特徴とする請求項2記載の薬品払出装置。
【請求項4】
前記移送容器の前記移動体に対する装備が、縦方向移動に加えて横方向移動も許容する態様でなされており、前記移送容器は、少なくとも一部は横方向移動可能に構成されていて、それが前記伝動機構にて横方向移動させられるとその横方向移動に随伴して下面を開けるようになっている、ことを特徴とする請求項3記載の薬品払出装置。
【請求項5】
前記伝動機構の前記伝動部がカム機構からなり、前記カム機構のカム原節が前記移動体に装備されており、前記カム機構のカム従節が前記移送容器に装備されており、前記移送容器とその装備品が総て受動部材であることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された薬品払出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−139249(P2012−139249A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291892(P2010−291892)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】