説明

薬品類カセット

【課題】縦収納型でも先頭薬品類の排出後に残った薬品類に掛かる衝撃が小さくて済む薬品類カセットを簡便に実現する。
【解決手段】押出部材23の回転運動時に押出部材23を通過させる切欠16aを整列収納部の内底部16に形成し、支軸22から外周方向へ渦巻状に突き出ていて支軸22寄りの近心部外周面23dから先端部23a寄りの遠心部外周面23bにかけて単調に渦巻半径を増す渦巻状部材を押出部材23に採用し、支軸22が軸回転させられるとそれに伴って押出部材23の先端部23aが内底部16の上に出て薬品類6のうち最下のものに当接して横送りするとともに薬品類6のうち次に内底部16の上に来るものを押出部材23の外周面23b〜23dが内底部16の下になるまで暫時は下支えするようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品類を整列収納して順次排出・逐次排出する薬品類カセットに関し、詳しくは、薬品類を上下に積み重ねて多数保持するとともに下から順に横送りして排出する薬品類カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に薬品類の外観斜視図を幾つか示したが、そのうちPTP包装剤2は(図5(a)参照)、複数個・多数個の薬剤をPTPシートにて包装したものであり、その典型的な形状は、片面が平坦で他の片面に薬剤収納用突部(ポケット)の列設された角板状である。その典型的なサイズは幅が数十mmで長さが百数十mmであり、典型的な重量・質量は数十mg〜百数十mgであり、典型的な厚みは数mmである。また、そのようなPTP包装剤2を複数枚・多数枚たとえば10枚程度を積み重ねてから透明なポリプロピレンフィルム等の結束帯を捲回して結束したものがPTP結束体4であり(図5(b)参照)、そのPTP結束体4を斜光や密封のためアルミニウム箔やPEフィルム等で二次包装して枕状にしたものがピロー包装体6であり(図5(c)参照)、さらに、それを例えば紙製の箱に詰め込んで直方体状にしたものが箱詰体8である(図5(d)参照)。
【0003】
これらの薬品類2〜8は転がり難いが、転がりやすいアンプル入り注射薬などを取り扱う薬品類カセットについては、整列収納して順次排出するものが実用化されている。具体的には、多数のカセットを組み込んだ薬品払出装置となっており(例えば特許文献1参照)、軸対称など軸回転可能な容器に入った薬品類を整列収納する多数のカセットと、これらのカセットを引出可能に又は着脱可能に保持する支持機構と、前記カセット内の収納薬品類を薬品類排出口に向けて付勢する付勢機構と、前記カセットにおける薬品類収納個数を求める計数手段と、前記カセットの前記薬品類排出口から収納薬品類を取り出して所定の位置に搬送する払出搬送機構と、前記払出搬送機構によって軸回転駆動されて当該カセットの前記薬品類排出口から収納薬品類を排出する軸回転可能な可動蓋と、その排出対象薬品類の容器に付された薬品情報を読み取る読取装置とが設けられている。
この装置では、薬品類が横一列に並べられ、可動蓋が軸回転の前半動作で次の薬品類の前進を阻みながら先頭の薬品類の排出を可能とし、可動蓋の軸回転終了間際に次以降の薬品類が揃って一気に前進するようになっている。
【0004】
また、あまり転がり易くない扁平の輸液ボトルのような薬品類を取り扱う薬品類カセットについても、緩傾斜の滑落面上に薬品類を整列収納して逐次排出するものが実用化されている。この薬品類カセットは(例えば特許文献2参照)、滑落面が傾斜方向にローラを列設して形成されたものであり、平板部と曲板部とを連ねた排出部材が前記滑落面の落下端近傍に設けられ、前記平板部が前記滑落面の延長上に揺動中心を置く状態で揺動可能に支持されており、前記曲板部が前記揺動中心との距離を一定に保って前記平板部のうち前記滑落面寄りの端部から前記平板部の下側へ延びているものであり、前記排出部材を揺動させる駆動源が前記滑落面の裏側下方に設けられている、というものである。
この薬品類カセットでも、薬品類が滑落面上に横一列で並べられ、排出部材が揺動の前半動作で次の薬品類の前進を阻みながら先頭の薬品類の排出を可能とし、排出部材が揺動終了間際に次以降の薬品類が揃って一気に前進するようになっている。この薬品類カセットは、滑落方式なので、上述した転がり難い箱詰体8を取り扱うこともできる。
【0005】
さらに、薬品類を上下に積み重ねて多数保持するとともに下から順に横送りして排出するようになった薬品類カセットもある(例えば特許文献3,4参照)。
そのうち上述したPTP包装剤2の取り扱いに好適な薬品類カセットは(例えば特許文献3参照)、PTP包装剤2を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部と、その中のPTP包装剤2を下から順に長手方向へ横送りして前方へ排出する順次排出機構とを具えている。整列収納部は、下端部に排出口が形成された箱体からなり、PTP包装剤2を上面に載せて保持する内底部材を具えている。順次排出機構は、PTP包装剤2のうち最下のものの後端を引っ掛ける引掛部材と、前記引掛部材を前記内底部材に沿って前送りする送り機構とを具えている。
【0006】
これに対し、上述したPTP結束体4の取り扱いに好適な薬品類カセットは(例えば特許文献4参照)、引掛部材に代えて、PTP結束体4のうち最下のものの後端を押す押出部材を具えている。
何れにしても(特許文献3,4参照)、上下に積み重ねた薬品類を下から順に横送り排出する従来の薬品類カセットでは、最下の薬品類が排出されると、そこに出来た隙間へ、達磨落としのように、二番目以降の薬品類が一気に落下してくるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−125013号公報
【特許文献2】特開2006−288573号公報
【特許文献3】特開2009−131560号公報
【特許文献4】特開2009−165675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の薬品類カセットでは、薬品類を前後に連ねて多数保持する謂わば横収納型の場合(特許文献1,2参照)、多段に配設して薬品類払出装置に組み込んだとき、収納力が大きいという利点があるが、収納薬品類を目視で確認するのが容易でない。
これに対し、薬品類を上下に積み重ねて多数保持する謂わば縦収納型の場合(特許文献3,4参照)、多段に配設して薬品類払出装置に組み込んでも、カセット前面を透明にしたりカセット前面に縦長の窓等を形成する程度のことで容易に、収納薬品類の目視確認が可能になる。また、整列収納部が簡素で済むうえ、排出の高速化もし易い、といった利点もある。とはいえ、積み重ねるので、重たい薬品類や脆い薬品類は、得意でない。
【0009】
このため、アンプルやボトル等に入った薬品類の取り扱いには横収納型の薬品類カセットが多用されるのに対し、一般に軽くて壊れにくいPTP包装剤2やPTP結束体4さらにはその箱詰体8などの取り扱いには、横収納型の薬品類カセットも用いられるが、縦収納型の薬品類カセットの使用が増えて来ている。この傾向は、PTP結束体4と箱詰体8との中間体と言えるピロー包装体6についても、同様である。
しかしながら、ピロー包装体6の場合、重くなく脆弱でもないとは言っても、包装袋が薄いため、乱暴に扱ったり強い衝撃を与えたりすると、包装袋がひしゃげたり包装袋に皺が寄ったりするので、中身の薬の機能は維持していても外観は損なわれてしまう。
【0010】
PTP包装剤2は箱詰体8で供給されることが多いうえ、箱詰体8かPTP結束体4の状態であればピロー包装体6より取り扱い易いので、PTP結束体4や箱詰体8の状態で薬品類カセットに収納したいが、PTP結束体4や箱詰体8の状態でなくピロー包装体6の状態で払い出さなければならない場合もある。そして、その場合は、多数のピロー包装体6を薬品類カセットに整列収納して順次排出することになるが、先頭のピロー包装体6の排出後に二番目以降のピロー包装体6が揃って一気に進行してから排出口手前で急停止すると、二番目のピロー包装体6に衝撃が掛かってしまう。その衝撃は、縦収納型で大きくなりやすいが、ピロー包装体6はもちろん他の薬品類でも、小さいのが望ましい。
そこで、縦収納型でも先頭薬品類の排出後に残った薬品類に掛かる衝撃が小さくて済む薬品類カセットを簡便に実現することが、技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の薬品類カセットは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
内底部の縁上に排出口の形成されている収納空間に多数の薬品類を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部と、前記薬品類のうち最下のものを押出部材で横から押して前記排出口から送り出すことにより前記薬品類を下から順に排出する順次排出機構とを備えた薬品類カセットにおいて、
前記押出部材とは別体の又は一体のものからなり前記押出部材を支持する横向きの支軸と、前記支軸を軸回転させる駆動手段とが、前記順次排出機構に設けられており、
前記押出部材の回転運動時に前記押出部材を通過させる切欠が、前記整列収納部の前記内底部に形成されており、
前記支軸から外周方向へ渦巻状に突き出ていて前記支軸寄りの近心部外周面から先端部寄りの遠心部外周面にかけて単調に外周面半径を増す渦巻状部材が、前記押出部材に採用されており、
前記支軸が軸回転させられると、それに伴って、前記押出部材の先端部が前記内底部の上に出て前記薬品類のうち最下のものに当接して横送りするとともに、前記薬品類のうち次に前記内底部の上に来るものを前記押出部材の外周面が前記内底部の下になるまで暫時は下支えするようになっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の薬品類カセットは(解決手段2)、上記解決手段1の薬品類カセットであって、前記薬品類だけの圧力では揺動しないが前記押出部材の押出力には揺動する揺動留具が揺動端部を前記排出口の外側に位置させて前記整列収納部に装備されており、前記排出口からの薬品類排出を非接触で直接的に検出する光学式の排出センサに加えて、前記揺動留具の揺動に応じて作動することにより間接的に前記排出口からの薬品類排出を検出する揺動センサも、設けられていることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の薬品類カセットは(解決手段3)、上記解決手段2の薬品類カセットであって、前記順次排出機構による薬品類排出動作に対して前記排出センサと前記揺動センサとが共に感応したときには正常状態と判定するが何れか一方しか感応しないときには異常状態と判定して以後の排出動作を停止するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような本発明の薬品類カセットにあっては(解決手段1)、最下の薬品類が押出部材の先端部によって送り出されて、そこが空くと、そこに二番目の薬品類が落ちて来ることになるが、二番目の薬品類が暫く押出部材の外周面によって下支えされる。
その押出部材の外周面が近心部外周面から遠心部外周面にかけて単調に外周面半径を増すことから、二番目の薬品類を暫く下支えする部分が先端部近くの遠心部外周面からそうでない近心部外周面へと移るので、二番目の薬品類は、自由落下するのでなく、押出部材の外周面によって落下速度を規制されて、ゆっくり下降する。
【0015】
そのため、二番目の薬品類とその上に積み重なっている薬品類に掛かる落下衝撃が緩和・解消されることとなる。
しかも、最下の薬品類の横送り機能だけでなく、二番目の薬品類の落下速度規制機能まで、回転して内底部上に出入りする渦巻状の押出部材によって具現化されている。
したがって、この発明によれば、縦収納型でも先頭薬品類の排出後に残った薬品類に掛かる衝撃が小さくて済む薬品類カセットを簡便に実現することができる。
【0016】
また、本発明の薬品類カセットにあっては(解決手段2,3)、排出口からの薬品類排出を光学式の排出センサで非接触かつ直接的に検出するだけでなく、揺動留具の揺動に応じて作動する揺動センサで間接的に検出することも行うようにしたことにより、ダブルチェックが可能となって複数化による信頼性向上が果たされるばかりか、直接検出なので直感的に頼れる排出センサと間接検出だが塵埃汚れ等に強い揺動センサという異質なセンサが補完し合うことにより、複数化の効果を超える高度な信頼性の向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1について、薬品類カセットの構造を示し、(a)が外観正面図、(b)が縦断正面図、(c)が縦断右側面図、(d)及び(e)がPTP払出装置に組み込んだ単体および並設群の縦断側面図である。
【図2】薬品類排出時動作の前半部分を示し、(a)〜(d)何れも縦断右側面図である。
【図3】薬品類排出時動作の後半部分を示し、(a)〜(d)何れも縦断右側面図である。
【図4】本発明の実施例2について、押出部材の構造例を示し、(a)〜(d)が斜視図、(e)〜(f)が側面図である。
【図5】薬品類の外観斜視図であり、(a)がPTP包装剤、(b)がPTP結束体、(c)がピロー包装体、(d)が箱詰体である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このような本発明の薬品類カセットについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜2により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を具現化したものであり、図4に示した実施例2は、押出部材の変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0019】
本発明の薬品類カセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1(a)〜(c)は、単体を真っ直ぐ立てて置いた薬品類カセット10を示しており、(a)が外観正面図、(b)が縦断正面図、(c)が縦断右側面図である。
また、同図(d)は、少し後へ傾けて設置した単体の薬品類カセット10の縦断側面図であり、同図(e)は、傾斜設置の薬品類カセット10を背向かいで多段に組み込んだPTP払出装置30の要部の縦断側面図である。
【0020】
この薬品類カセット10は、既述したピロー包装体6(薬品類)を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部11〜16と、そのピロー包装体6を下から順に横送りして後へ排出する順次排出機構21〜26とを具えている。
整列収納部11〜16は、例えば金属や硬質プラスチック等からなる縦長の箱状体であり、ピロー包装体6の収納空間10aを囲う左側板11と後背板12と右側板13と前板14と内底部16とを具えているが、補充容易化等のため、上面が解放されており、前板14が開閉式になっていて、さらに閉時には磁力等で前板14の閉状態が維持されるようにもなっている。前板14の前面には、図示は割愛したが、補充時の薬品確認やバーコード入力作業が容易かつ的確に行えるよう、例えばピロー包装体6の中の薬品名や識別コードを印刷したラベルが貼り付けられている。
【0021】
また、この整列収納部11〜16は、収納空間10aの中に収納されたピロー包装体6が多数であれ少数であれ、そのピロー包装体6を前方から目視で容易に確認できるよう、前板14の横幅が収納空間10aの横幅より狭くされ、カセット前面から収納空間10aを覗き込めるようになっている。
さらに、この整列収納部11〜16では、後背板12の下端部が内底部16の縁上まで切り欠かれて、そこに排出口10bが形成されている。排出口10bは、ピロー包装体6のうち最下のものは円滑に通過させるが、ピロー包装体6のうち下から二番目のものとそれより上のものは通過させないような大きさに形成されている。
【0022】
また、この整列収納部11〜16では、上端部を揺動中心とする揺動留具15が後背板12の外面に装着されて、その下端部が排出口10bのところに垂れ下がっている。しかも、その揺動留具15がバネ弾撥力や磁力等によって後背板12に向けて常時付勢されているので、最下のピロー包装体6が、何かの拍子で排出口10bから外へ出るような動きをし始めたとしても、付勢力に打ち勝って揺動留具15を揺動させることができなければ、揺動留具15の下端部に移動を阻止されて、収納空間10aの中で内底部16の上面の上にとどまり続けるようになっている。また、後背板12の外面のうち揺動留具15の下端部寄りのところには例えば接触式のメカニカルスイッチ等からなる揺動センサ15aが装着されており、揺動センサ15aは、揺動留具15が揺動範囲内で後背板12に近づくと揺動留具15に押されてオンし、揺動留具15が揺動範囲内で後背板12から遠ざかると揺動留具15から離れてオフ状態になるので、揺動留具15の揺動に応じて作動することにより間接的に排出口10bからの薬品類排出を検出するものとなっている。
【0023】
順次排出機構21〜26は、下部枠21と支軸22と押出部材23と電動モータ24と伝動ギヤ25と排出センサ26とを具えたものであり、整列収納部11〜16の下に設けられて、下部枠21の天板部分が収納空間10aの内底部16を兼ねている。
下部枠21は、例えば金属や硬質プラスチック等の板体を背の低い箱状に組み上げたものであり、下部枠21のうち内底部16を兼ねる天板部分とそれに連なる前板部分には、押出部材23の回転運動時に押出部材23を通過させる切欠16aが、押出部材23と同じ個数だけ形成されている。このような下部枠21に対して、支軸22と押出部材23と電動モータ24と伝動ギヤ25は内蔵され、排出センサ26は外装されている。排出センサ26は、従来カセット(特許文献1〜4参照)に装備されていたものと同じ光学式の排出センサで良く、反射光検出型でも遮光検出型でも良く、排出口10bからの薬品類排出を非接触で直接的に検出するようになっている。
【0024】
支軸22は、丸棒状の例えば金属シャフトからなり、両端部を下部枠21の側板によって軸支されて、軸方向・長手方向を水平かそれに近い方向にした横向きになっている。
電動モータ24及び伝動ギヤ25は、支軸22を軸回転させる駆動手段であり、回転出力軸と支軸22とが伝動ギヤ25を介在させて噛合している。そして、図示しない内蔵の又は外部の制御回路の制御に従い、ピロー包装体6を一つ排出する必要が生じる度に支軸22を軸回転させ、その排出が完了すると、支軸22の軸回転を止めるようになっている。
【0025】
ピロー包装体6の排出の有無は例えば光学式の排出センサ26によって直接的に検出されるが、揺動センサ15aによる揺動留具15の揺動検出によって間接的にも検出されるので、それに基づいて制御回路がダブルチェックするのが望ましく、具体的には、ピロー包装体6を一つ排出する動作を制御回路が順次排出機構21〜26に行わせる度に、揺動センサ15aと排出センサ26とが共に感応してピロー包装体6の排出動作を検出したときには薬品類排出動作が正常であったと制御回路が判定して次の薬品類排出動作を許容するが、揺動センサ15aと排出センサ26とのうち何れか一方しか感応しないときには何らかの異常が発生した状態であると制御回路と判定して以後の排出動作を停止するようになっている。なお、揺動センサ15aも排出センサ26も共に感応しないときには、カセットが空になったと判定するように制御回路がなっている。
【0026】
押出部材23は、この例では二個ほど設けられ、何れも支軸22に外嵌めされて、適度に離れたところで支軸22に固定されている。そのような支軸22の支持により、支軸22が軸回転すると、それに随伴して、押出部材23が回転運動するようになっている。また、押出部材23の端面・側面を支軸22の軸方向から見た押出部材23は、支軸22から外周方向へ渦巻状に突き出た形をしていて、回転時に先端部23aを円運動させるものとなっている。さらに、押出部材23の外周面は、支軸22寄りの近心部外周面23dから中間部外周面23cを経て先端部23a寄りの遠心部外周面23bにかけて単調に外周面半径・渦半径を増す形にされるとともに、円滑面に仕上げられている。
【0027】
そして、電動モータ24によって支軸22が軸回転させられると、それに伴って、押出部材23が回転運動するとともに、その先端部23aが円運動し(図1(c)の二点鎖線を参照)、それによって押出部材23の先端部23aが内底部16の下から内底部16の上に出てピロー包装体6のうち最下のものに当接してその最下のピロー包装体6を横送りするようになっている。また、その横送りにて最下のピロー包装体6を排出口10bからカセット外へ送り出すが、それに加えて、ピロー包装体6のうち次に内底部16の上に来る二番目のものを押出部材23の外周面が内底部16の下になるまで暫時は下支えするようになっている。しかも、その際、下支えする外周面部分が遠心部外周面23b,中間部外周面23c,近心部外周面23dの順で移り変わるようになっている。
【0028】
このような薬品類カセット10は、真っ直ぐ立てて設置しても良いが(図1(a)〜(c)参照)、例えば5゜〜10゜ほど後傾させて設置しても良く(図1(d)参照)、その方が視認性や補充作業性の良くなることが多い。
また、薬品類カセット10に専用の制御回路を付設して、単体の薬品類カセット10を独立動作させても良いが、薬品類払出装置30に多数の薬品類カセット10を組み込むような場合(図1(e)参照)、後背側を向かい合わせにした薬品類カセット10の対を横(紙面貫通方向)に並べるとともに、その下方に排出後のピロー包装体6を収集する搬送機構31を設置して一段分を構成し、それを上下に配設して多段化すると良い。
【0029】
この実施例1の薬品類カセット10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2及び図3は、(a)〜(d)が何れも薬品類カセット10の縦断右側面図であり、ピロー包装体6を排出する動作を時系列で示している。なお、ここでは、個々のピロー包装体6を区別したいときには、6aや6bといった符号を使用する。
【0030】
薬品類カセット10が空の場合は手作業で前板14を開けて解放前面からピロー包装体6を補充する。そのとき、各々のピロー包装体6を横にしたうえで、多数のピロー包装体6の長手方向も短手方向もなるべく同じ向きに揃えて、それらを内底部16の上面に積み上げることで、整列収納部11〜16の収納空間10aの中にピロー包装体6を収納する。それから、収納したピロー包装体6の側面等を指等で押して、後背板12に軽く押し付けるようにして、ピロー包装体6の列を整える。こうして、多数のピロー包装体6が縦長の収納空間10aに整列収納されるので、前板14を閉めると、ピロー包装体6の順次排出の準備が整う(図2(a)参照)。
【0031】
その後、ピロー包装体6を一つずつ排出させるときには、図示しない制御回路に排出の指令や指示を与えて、薬品類カセット10に排出動作を行わせる。具体的には、制御回路が、排出センサ26の反射光不検出を確認しつつ、電動モータ24を作動させる。そうすると、支軸22が軸回転し、それに随伴して押出部材23が回転運動し、前方で上向きになった又は上向きになっていた押出部材23の先端部23aが切欠16aを通過して内底部16より上に出てから後方へ進行する。そして、先端部23aが最下のピロー包装体6aに横から当接し(図2(b)参照)、更に先端部23aが進行して最下のピロー包装体6aを排出口10bへ横送りする(図2(c)参照)。
【0032】
それからも先端部23aが進行を続けて最下のピロー包装体6aと共に揺動留具15の下端部も押し動かし(図2(d)参照)、揺動センサ15aがオンからオフになる。最下のピロー包装体6aがほとんど排出口10bから出かかるころには、下から二番目のピロー包装体6bが最下のピロー包装体6aから外れて押出部材23の外周面に乗り移る(図3(a)参照)。そのとき、二番目のピロー包装体6bが押出部材23の外周面のうち先端部23aに近い遠心部外周面23bに乗り移るが、そこの高さが最下のピロー包装体6aの上面の高さと大差ないので、二番目のピロー包装体6bは最下のピロー包装体6aから押出部材23へ穏やかに乗り移る。
【0033】
さらに、押出部材23が回転して先端部23aが排出口10bの近くまで進むと(図3(b)参照)、最下のピロー包装体6aが揺動留具15から外れて自重で落下し始めるとともに、二番目だったピロー包装体6bを下支えする押出部材23の外周面が遠心部外周面23bから中間部外周面23cに移行する。それから、最下だったピロー包装体6aが排出口10bから後方へ放出されると(図3(c)参照)、それが排出センサ26にて検出されるとともに、そのころには、二番目から最下になったピロー包装体6bを下支えする押出部材23の外周面が中間部外周面23cから近心部外周面23dに移行する。また、それまでに揺動留具15の下端部がピロー包装体6aから離れて排出口10bに戻っていて、その付勢力が押出部材23の外周面とピロー包装体6bの下面との摩擦力に勝るので、ピロー包装体6bは、排出口10bから出ないで、収納空間10aにとどまる。また、揺動留具15の下端部が排出口10bに戻ったことによって揺動センサ15aがオフからオンに戻るので、揺動センサ15aによるピロー包装体6aの排出動作の検出シーケンスが完了する。
【0034】
そして、最後に(図3(d)参照)、押出部材23が一回転を終えて元の位置に戻り、押出部材23が外周面も含めて内底部16の下に来ると、最下になったピロー包装体6bが押出部材23の近心部外周面23dから内底部16の上面に乗り移る。
このように、二番目から最下になる過程で下降する際、ピロー包装体6bがピロー包装体6aの上面から押出部材23の遠心部外周面23bと中間部外周面23cと近心部外周面23dとをその順に経由して内底部16に至るが、押出部材23の外周面の下支え担当部分の高さが漸減するように押出部材23の外周面が形成されているので、ピロー包装体6bもその上に積み重なっている他のピロー包装体6も穏やかに下降する。
また、揺動センサ15aか排出センサ26か何れかが故障すると、異常の判定がなされて、薬品類カセット10の動作が停止し、さらに、ブザー等があれば警報音が発せられ、アラームランプ等があればそれが点滅する。
【実施例2】
【0035】
本発明の薬品類カセットの実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、押出部材23の構造例を幾つか示しており、(a)〜(d)が斜視図、(e)〜(f)が側面図である。
【0036】
図4(a)に示した押出部材23は、上述した実施例1で採用されたものであり、二個の押出部材23が先端部23aの位置(位相角)を揃えて支軸22に装着されている。
図4(b)に示した押出部材23は、先端部23aや遠心部外周面23bは二つに分離しているが、中間部外周面23cや近心部外周面23dが繋がって一体化している。
図4(c)に示した押出部材23は、一個の押出部材23であるが、軸方向の長さが長くなっている。
【0037】
図4(d)に示した押出部材23は、図4(a)のものと同じく二個の押出部材23が支軸22に装着されているが、図4(a)のものと異なり、先端部23aの位置(位相角)が明確にずれた状態で固定されている。
図4(e)に示した押出部材23は、点対称・反対称な二個の押出部材23を一体化したものであり、支軸22の半回転毎に交互に押出部材23が働くようになっている。
図4(f)に示した押出部材23は、放射状に配置した三個の押出部材23を一体化したものであり、支軸22の1/3回転毎に順に押出部材23が働くようになっている。
【0038】
[その他]
なお、上記実施例では、下部枠21の天板部分と収納空間10aの内底部16とが兼用の一体物になっていたが、それらは別体のものであっても良い。
上記実施例では、支軸22と押出部材23とが別体のものからなり押出部材23が支軸22に外嵌めされている構造例を図示したが、それらは、一体成形されたものでも良く、溶着等にて一体化されていても良い。
上記実施例では、伝動部材がギヤ25であったがベルトなど他の部材であっても良く、伝動ギヤ25を省いて支軸22と電動モータ24とを直結させても良い。
【0039】
上記実施例では、最下のピロー包装体6aの排出完了にて支軸22の軸回転を止めるようになっていたが、複数個のピロー包装体6を排出する場合は、一個毎に回転を止めることはしないで、複数個を排出し終えてから支軸22の軸回転を止めるようにしても良い。また、支軸22ひいては押出部材23の回転停止位置を正確にするには、例えば原点センサを順次排出機構21〜26に設けて、その検出結果に基づいて押出部材23の回転位置が確認されるようにすると良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のPTPカセットは、単体で使用できる他、薬剤払出装置の一部や全部に着脱式で組み込んでも良い(例えば特許文献1〜4参照)。
【符号の説明】
【0041】
2…PTP包装剤、4…PTP結束体、6…ピロー包装体、8…箱詰体、
10…薬品類カセット、
10a…収納空間、10b…排出口、11…左側板、12…後背板、
13…右側板、14…前板、15…揺動留具、15a…揺動センサ、
16…内底部、16a…切欠、
21…下部枠、22…支軸、23…押出部材、23a…先端部(作用部)、
23b…遠心部外周面、23c…中間部外周面、23d…近心部外周面、
24…電動モータ、25…伝動ギヤ、26…排出センサ、
30…薬品類払出装置、31…搬送機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底部の縁上に排出口の形成されている収納空間に多数の薬品類を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部と、前記薬品類のうち最下のものを押出部材で横から押して前記排出口から送り出すことにより前記薬品類を下から順に排出する順次排出機構とを備えた薬品類カセットにおいて、前記押出部材とは別体の又は一体のものからなり前記押出部材を支持する横向きの支軸と前記支軸を軸回転させる駆動手段とが前記順次排出機構に設けられており、前記押出部材の回転運動時に前記押出部材を通過させる切欠が前記整列収納部の前記内底部に形成されており、前記支軸から外周方向へ渦巻状に突き出ていて前記支軸寄りの近心部外周面から先端部寄りの遠心部外周面にかけて単調に外周面半径を増す渦巻状部材が前記押出部材に採用されており、前記支軸が軸回転させられるとそれに伴って前記押出部材の先端部が前記内底部の上に出て前記薬品類のうち最下のものに当接して横送りするとともに前記薬品類のうち次に前記内底部の上に来るものを前記押出部材の外周面が前記内底部の下になるまで暫時は下支えするようになっていることを特徴とする薬品類カセット。
【請求項2】
前記薬品類だけの圧力では揺動しないが前記押出部材の押出力には揺動する揺動留具が揺動端部を前記排出口の外側に位置させて前記整列収納部に装備されており、前記排出口からの薬品類排出を非接触で直接的に検出する光学式の排出センサに加えて、前記揺動留具の揺動に応じて作動することにより間接的に前記排出口からの薬品類排出を検出する揺動センサも、設けられていることを特徴とする請求項1記載の薬品類カセット。
【請求項3】
前記順次排出機構による薬品類排出動作に対して前記排出センサと前記揺動センサとが共に感応したときには正常状態と判定するが何れか一方しか感応しないときには異常状態と判定して以後の排出動作を停止するようになっていることを特徴とする請求項2記載の薬品類カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−17503(P2013−17503A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150716(P2011−150716)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】