説明

薬液付与装置、携帯式刈払機、及び除草方法

【課題】簡易かつ経済的な手法で除草を行うことができる薬液付与装置等を提供すること。
【解決手段】薬液源21から延びる吐出部材25は、揺動部材25aがバネ81によって時計方向に回転する付勢力を受けた場合に、回転部材26を刈払刃51の側面SA上に適当な力で押し付け、刈払刃51の回転に伴って回転部材26を回転させる。この結果、回転部材26すなわちローラ本体73の回転位置に応じて、薬液源21からパイプ23に導かれた薬液CSをローラ本体73から側面カバー26aに適量滲み出させることができる。これにより、携帯式刈払機100による雑草の刈払いに際して刈払刃51に除草剤等の薬液CSを塗布することができるので、刈払いの作業によって雑草を除去できるだけでなく、刈払い後に残った雑草に付着する除草剤等によって雑草の成長を効率的に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草等を刈るための刈払機に着脱可能に取り付けられる薬液付与装置及びこれを組み込んだ携帯式刈払機、並びに除草方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯式刈払機として、人が操作するためのハンドルを設けた操作桿と、操作桿の根元側に取り付けられる動力源と、操作桿に挿通され動力源からの動力を伝達する伝導軸と、操作桿の先端に設けた回転刃支持部材の先端に支持される回転刃とを備えるものが存在する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の携帯式刈払機では、操作桿の先端を地面に沿って移動させながら回転刃によって雑草等を切断する所謂刈払いを行っても、草の根部分がどうしても残ることになるので、十分な或いは根本的な除草を行うことができない。
【0004】
一方、除草剤の散布によって除草を行うこともできるが、根本的な除草は必ずしも容易でなく、大量の除草剤を散布しなければ十分な効果が得られない場合が多い。しかしながら、経済的な観点や環境保護の観点から、除草剤の散布に頼りすぎるべきでない。
【0005】
そこで、本発明は、簡易かつ経済的な手法で除草を行うことができる薬液付与装置及びこれを組み込んだ携帯式刈払機、並びに除草方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る薬液付与装置は、(a)根元側において薬液源に連通するとともに先端側において刈払刃の側面近傍に延びるパイプと、(b)パイプの先端側に回転可能に支持されるとともに刈払刃の側面に当接させることによって刈払刃の回転に伴って回転する回転部材を有し、当該回転部材を介してパイプの先端側に導かれた薬液を吐出させる吐出部材と、(c)吐出部材を刈払刃の操作桿に対して着脱可能に固定する支持装置とを備える。
【0007】
上記薬液付与装置では、吐出部材が、刈払刃の側面に当接させることによって刈払刃の回転に伴って回転する回転部材を有し、当該回転部材の回転に応じてパイプの先端側に導かれた薬液を吐出させるので、刈払刃の回転動作時にその回転に応じて回転する回転部材によって、吐出部材から薬液を適量吐出させることができる。これにより、雑草等の刈払いに際して、刈払刃の回転に伴って除草剤等の薬剤を回転する刈払刃に塗布することができ雑草等の切り口に薬剤を塗布することができるので、刈払いの作業によって雑草等を除去できるだけでなく、刈払い後に残った雑草等の成長を効率的に抑えることができる。
なお、本発明の薬液付与装置は、支持装置及び操作桿を介して携帯式刈払機に着脱可能になっている。つまり、既存の携帯式刈払機を、刈払刃に薬液を塗布した状態での刈払いを可能にする薬剤塗布型の刈払機に簡易に改変することができ、或いは、このような薬剤塗布型の刈払機を元に戻すことができる。
【0008】
本発明の具体的な態様では、上記薬液付与装置において、支持部材が、吐出部材を揺動可能に支持するとともに、回転部材の側面を刈払刃の側面に所定の力で押し付ける付勢部材を有する。この場合、付勢部材によって回転部材の側面が刈払刃の側面に適度な圧力で接触し、刈払刃の動力が回転部材に確実に伝達される。
【0009】
本発明の別の態様では、支持部材は、吐出部材を揺動可能に支持するとともに、回転部材の側面が前記刈払刃の側面から離反するように付勢し、かつ、刈払刃によって刈り取られた物体(具体的には雑草等)の衝突力によって回転部材の側面を刈払刃の側面に当接させる付勢部材を有する。この場合、回転部材は、雑草が刈られているときには、刈られた雑草等の衝突によって刈払刃に当接されて回転され、それによって薬剤が刈払刃に供給され、また、雑草が刈られていないときには、刈払刃が回転していても、回転部材が刈払刃から離反した状態に復帰されるため、薬剤の供給は停止される。即ち、刈払刃によって雑草等が刈られていないときには、除草剤等の薬剤が吐出されない。したがって、薬剤の無駄な消費を抑えることができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様では、吐出部材が、回転部材を覆うとともに、刈払刃によって刈られて飛散する物体(具体的には雑草等)を受け止めるガードカバーを備える。この場合、回転部材等を刈られた雑草等から保護することができ、回転部材の故障等の低減が図れる。すなわち、刈った雑草等が回転部材又は刈払刃に巻き付いて動作を妨げることや、回転部材に損傷を与えることを防止できる。また、ガードカバーの形状等を任意に設計することができ、刈られた雑草等を有効に受け止め得る形状にすることによって、刈払い作業における雑草等の刈払に対する回転部材による薬剤供給の応答性を高めることができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、吐出部材が、パイプの先端に連設され、周壁に第1吐出口を有する筒状の端部部材を有し、回転部材が、端部部材の側面を覆う状態で端部部材に対して回転可能に支持されるとともに、所定の回転位置で第1吐出口にアライメントされる第2吐出口を有し、刈払刃に側面を当接させることによって刈払刃の回転に伴って回転するローラである。この場合、ローラの回転に際して第1吐出口と第2吐出口とがアライメントされた状態で両吐出口を介して薬液がパルス状に吐出され刈払刃の側面上に滴下されるので、このような薬液は、刈払刃の運動に伴って遠心力を与えられ刈払刃の表面に比較的均一に塗布される。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、ローラが、端部部材に対して軸受けを介して支持される。この場合、ローラの回転が滑らかになって薬液の塗布の制御性を高めることができるとともに、ローラの耐久性を増加させることができ、薬液付与装置の維持が簡単になり薬液付与装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、ローラが、薬液透過性の材料で形成されるとともに刈払刃の側面に接触する側面カバーを有する。この場合、側面カバーを介して薬液を滲み出させることができるので、刈払刃への薬液の塗布が均一化する。また、側面カバーによってローラの側面と刈払刃の側面との密着性を高めることができ、刈払刃の動力を回転部材に効率的に伝達することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様では、薬液源からパイプを介して吐出部材に供給される薬液の通路を開閉するバルブと、当該バルブを動作させるバルブ駆動装置とをさらに備える。この場合、薬液塗布を行わないときは、バルブ駆動装置によってバルブを閉状態とすることができ、薬液源からの薬液が吐出部材から不要時に漏れ出すことを防止できる。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、バルブ駆動装置が、刈払刃の回転停止に応じて動作し、薬液源から吐出部材に供給される薬液の通路を閉止する。この場合、刈払刃の回転停止に応じて薬液の塗布や流出も自動的に停止させることができる。
【0016】
本発明に係る携帯式刈払機は、上述のような薬液付与装置を備える。このような携帯式刈払機によれば、雑草等を刈払いすることができるだけでなく、刈払いに際して除草剤等を刈払刃に塗布することができ、刈払い後の雑草等の切断面に除草剤等を付与することができるので、刈払い後に残った雑草等の成長を抑えることができる。
【0017】
本発明に係る除草方法は、(a)刈払機の刈払刃を回転させつつ当該刈払刃に除草剤を塗布する工程と、(b)除草剤を塗布した前記刈払刃を用いて草の刈払いを行う工程とを備える。このような除草方法によれば、雑草等の刈払いに際して除草剤を刈払刃に塗布するので、刈払い後の雑草等の切断面に除草剤を付与することができ、刈払い後に残った雑草等の成長を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液付与装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
【0019】
この薬液付与装置10は、除草剤等の薬液CSを収納する薬液源21と、薬液源21から延びる適当な径のパイプ23と、パイプ23の先端側に設けられた吐出部材25と、吐出部材25を操作桿41に対して固定するための支持部材27とを備える。
【0020】
薬液源21は、タンク状の容器として、内部空間に適当量の薬液CSを収納するとともに、作業者によって携帯可能になっている。つまり、薬液源21には、図示を省略するが、作業者が携帯するためのベルトやストラップ等が取り付けられている。
【0021】
パイプ23は、根元側で薬液源21に接続されており、先端側で吐出部材25に接続されている。パイプ23の経路上には、流路の開閉量を調節可能にする第1バルブ23aと、流路の開閉を切替可能にする第2バルブ23bとが設けられている。前者の第1バルブ23aは、作業者が調節する流量調整型のバルブであり、このバルブの開放量を作業者自身が調節することによって、薬液源21からパイプ23に供給される薬液CSの流量を調整することができる。後者の第2バルブ23bは、自動的に開閉する電磁バルブであり、刈払機の動力源95によって発電された電力によって動作するバルブ駆動装置31に駆動されて開閉動作する。具体的に説明すると、バルブ駆動装置31は、動力源95の動作開始を検出した場合には、第2バルブ23bを開状態に切り替えて薬液源21からの薬液CSをパイプ23内において流通させる。また、バルブ駆動装置31は、動力源95の動作停止を検出した場合には、第2バルブ23bを閉状態に切り替えて薬液源21からの薬液CSがパイプ23内で流通することを阻止する。以上により、動力源95すなわち刈払機が動作している場合のみ、パイプ23内で薬液CSを流通させることができ、吐出部材25から刈払機の刈払刃51の上面すなわち側面SA上に薬液CSを吐出させることができる。なお、吐出部材25から刈払刃51の側面SA上に吐出させる際の薬液CSの吐出量は、上述のように第1バルブ23aによって調節可能になっている。
【0022】
吐出部材25は、図2にも示すように、揺動部材25aと、固定部材25cと、回転部材26とを備える。揺動部材25aは、金属で形成された細長い平板状の部材であり、支持部材27を介して操作桿41に着脱可能に固定されている。この揺動部材25aは、支持部材27の先端部に支持された状態で揺動可能になっている。なお、揺動部材25aは、図3の分解図に示すように、支持部材27に連結されて枢支される際に支点となる開口25fを有している。固定部材25cは、金属製の管で形成された部材であり、同様に図3に示すように、揺動部材25aの側面に溶接等によって固定されている。この固定部材25cは、一端において図1のパイプ23の先端に連結され、他端において回転部材26を支持している。図2に示す回転部材26は、固定部材25cの先端に形成された筒状の端部部材25h(図3参照)に対して回転可能に固定されている。回転部材26の周囲には、側面カバー26aが貼り付けられており、側面カバー26aを介して刈払刃51の側面SA上に押圧される。これにより、回転部材26を刈払刃51の側面SA上に所望の圧力で当接させることができ、回転部材26を刈払刃51の回転に伴って回転させることができる。ここで、ローラ本体73と側面カバー26aとは、刈払刃51の回転に伴って回転可能なローラを構成する。
【0023】
図4は、図2に示す回転部材26等の断面図であり、回転部材26の端部部材25hに対する固定方法を説明するためのものである。端部部材25hは、真ちゅう製のパイプであり、先端側に段差状に細くなった細径部25iを有し、この細径部25iの両端においてフランジ付き軸受けであるベアリング71,72が外嵌した状態で配置されている。両フランジ付きベアリング71,72の間には、アルミ製で筒状のローラ本体73が挟まれて中心軸AXのまわりに回転可能に保持されている。先端側のフランジ付きベアリング72は、ネジ74等の締め付けによって、細径部25i先端の雌ネジFSに固定される。これにより、ローラ本体73と両ベアリング71,72とが細径部25iの段差SPと雌ネジFSとの間に挟まれてしっかりと固定される。ここで、細径部25iには、軸方向の中間付近に第1吐出口OF1が形成されている。また、ローラ本体73にも、軸方向の中間付近に第2吐出口OF2が形成されている。ローラ本体73は、両ベアリング71,72の存在によって細径部25iに対して滑らかに回転可能になっており、ローラ本体73が適当な回転位置に移動した場合、細径部25iの第1吐出口OF1に対してローラ本体73の第2吐出口OF2がアライメントされ、細径部25iの芯に形成された流路75が、両吐出口OF1,OF2を介して外部に連通する。つまり、流路75中の薬液CSが両吐出口OF1,OF2を介してローラ本体73の外部に吐出され、薬液透過性の材料で形成された側面カバー26aに染み込んで側面カバー26a全体に拡散する。ローラ本体73が一定速度で回転すると、両吐出口OF1,OF2が一定周期で一致するので、第2吐出口OF2から一定周期で薬液CSが吐出され、側面カバー26aを薬液CSで湿らせる。つまり、図2に示すように回転部材26を刈払刃51の側面SAに押圧することによって、刈払刃51の回転に伴ってローラ本体73も回転し、結果的に第2吐出口OF2を介して吐出される薬液CSによって側面カバー26aが薬液CSを十分含んだ状態となり、外周に設けた側面カバー26aを介して刈払刃51の側面SAに薬液が塗布される。
【0024】
図2に戻って、支持部材27は、ヒンジによって開閉するタイプのバンド金具であり、ボルト及びナットからなる第1の締結具28aによって、それ自体が刈払機の操作桿41の先端部分に刈払刃51に近接して固定される。支持部材27の先端側には、ボルト及びナットからなる第2の締結具28bが取り付けられている。第2の締結具28bのボルトは、揺動部材25aに形成された開口25f(図3参照)に通されており、第2の締結具28bの締め付け及び固定により、このボルトを支点として揺動部材25aが揺動可能に支持される。
【0025】
なお、操作桿41において、支持部材27よりも根元側には、バンド金具29が固定されている。このバンド金具29には、付勢部材であるバネ81の一端が連結されており、このバネ81の他端は、揺動部材25aの根元側端に設けられた開口25gに連結されている。このバネ81は、バンド金具29下端の突起と揺動部材25aの根元側端とが互いに近接するように付勢することによって、揺動部材25aを反時計方向に回転させる役割を有する。このようなバネ81の付勢力により、揺動部材25aの先端側端部に設けた回転部材26の側面カバー26aを刈払刃51の側面SA上に所望の圧力で押し付けることができる。以上において、支持部材27、バンド金具29、バネ81等は、吐出部材25を刈払刃51の操作桿41に対して着脱可能に固定するための支持装置を構成する。
【0026】
図5は、図1に示す薬液付与装置10を取り付けた携帯式刈払機の構造及び操作を概念的に説明する図である。
【0027】
図からも明らかなように、携帯式刈払機100は、図1に示す薬液付与装置10の他に、先端に刈払刃51を設けた操作桿41と、操作桿41を利用者が操作するためのハンドル93と、操作桿41の根元側に取り付けられる動力源95とを備える。なお、操作桿41の内部には、動力源95からの動力を伝達する伝導軸(不図示)が挿通されている。操作桿41の先端には、刈払刃51を支持して刈払刃51と上記伝導軸との間に介在する回転刃支持部91bが設けられている。また、操作桿41の先端には、刈払刃51からの飛散物を遮蔽したり、刈払刃51を保護するためのカバー97が取り付けられている。薬液源21から吐出部材25に延びるパイプ23は、操作桿41の適所でバンド99等によって固定されている。
【0028】
なお、携帯式刈払機100において、薬液付与装置10は、支持部材27、バンド99等を介して操作桿41を含む携帯式刈払機100に着脱可能になっており、既存の携帯式刈払機の改変に利用可能となっている。つまり、既存或いは市販の携帯式刈払機に対して図1等に示す薬液付与装置10を取り付けるだけで、刈払刃51に薬液CSを塗布した状態での刈払いを可能にする薬剤塗布型の携帯式刈払機100に改変することができる。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の薬液付与装置10によれば、薬液源21から延びる吐出部材25が回転部材26を有している。この吐出部材25は、揺動部材25aがバネ81によって時計方向に回転する付勢力を受けた場合に、回転部材26を刈払刃51の側面SA上に適当な力で押し付け、刈払刃51の回転に伴って回転部材26を回転させる。この結果、回転部材26すなわちローラ本体73の回転位置に応じて、薬液源21からパイプ23に導かれた薬液CSをローラ本体73から側面カバー26aに適量滲み出させることができる。これにより、携帯式刈払機100による雑草の刈払いに際して刈払刃51に除草剤等の薬液CSを塗布することができるので、刈払いの作業によって雑草を除去できるだけでなく、刈払い後に残った雑草に付着する除草剤等によって雑草の成長を効率的に抑えることができる。
【0030】
図6及び図7は、上記実施形態で開示した薬液付与装置10の変形例の要部を示している。なお、図示しない他の部分は、上記実施形態と同じ構成なので、図示を省略し、また、要部においても、上記実施形態と同じ要素は、同一符号を付して、その要素の説明を省略する。
【0031】
図1等に示す薬液付与装置10では、回転部材26が、刈払刃51の側面SAに対して半径方向の垂直面内で、締結具28bを中心として揺動可能に配設されている。これに対して本変形例の薬液付与装置110では、回転部材26が、刈払刃51の側面SAに対して周方向(半径方向に対して垂直な方向)に揺動可能に配設されている。
【0032】
具体的には、この薬液付与装置110では、吐出部材25の揺動部材25aがヒンジ111によって揺動可能に支持されており、ヒンジ111の軸111aが刈払刃51の半径方向に向けて延設されている。そして、軸111aには、捩じりコイルバネ112が巻回され、一端が支持部材27の下部に係合され、他端が揺動部材25aに係合され、この捩じりコイルバネ112の付勢力によって、回転部材26が刈払刃51の側面SAに当接されている。
【0033】
この変形例の薬剤付与装置110によれば、回転部材26すなわちローラ本体73の母線全長が刈払刃51に均一の圧力で当接されやすく、除草剤等の薬液CSを効率良く刈払刃51に供給することができる。
【0034】
図8及び図9は、本発明の他の実施形態に係る薬液付与装置120の要部を示している。なお、図示しない他の部分は、上記実施形態と同じ構成なので、図示を省略し、また、要部においても、上記実施形態またはその変形例と同じ要素は、同一符号を付して、その要素の説明を省略する。
【0035】
図1等に示す薬液付与装置10では、回転部材26が、刈払刃51の側面SAに常時当接されている。この状態では、刈払刃51の回転に伴って回転部材26が回転され、第2バルブ23bを開いている限りにおいて、薬液が刈払刃51の側面SA上に供給されることになる。これに対して本実施形態の薬液付与装置120では、回転部材26が、通常状態において、刈払刃51の側面SAから離反された位置にあり、刈払刃51によって刈られた草Gの衝突力によって回転部材26を刈払刃51の側面SAに当接させるようにしている。
【0036】
具体的には、この薬液付与装置120では、吐出部材25の揺動部材25aがヒンジ111によって揺動可能に支持されており、ヒンジ111の軸111aが刈払刃51の半径方向に向けて延設されている。そして、軸111aには、捩じりコイルバネ112が巻回され、一端が支持部材27の下部に係合され、他端が揺動部材25aに係合され、この捩じりコイルバネ112の付勢力によって、図9(a)に示すように、回転部材26が刈払刃51の側面SAから離反した位置に維持されている。
【0037】
この薬液付与装置120では、吐出部材25において、ガードカバー121が吐出部材25の本体を覆うように、刈払刃51の回転方向上流側に位置して設置されている。このガードカバー121は、吐出部材25と一定の角度を成して延びており、上端部で吐出部材25に固定され、下端部で吐出部材25から離間している。また、ガードカバー121と、吐出部材25との間には、両者の成す角度を維持するための支持部材122が形成されている。さらに、吐出部材25からは、刈払刃51の側面SA方向に垂直なストッパSTが延びており、回転部材26が垂直状態以上のところまで押されて、回転刃51から離反してしまうのを抑制している。なお、ガードカバー121は、吐出部材25とともに回転部材26を覆っており、回転部材26に雑草の切断片がからみついて回転動作が妨げられるのを防止している。
【0038】
このように構成された薬液付与装置120では、回転する刈払刃51によって刈られた草Gがガードカバー121に衝突し、その衝突力によってガードカバー121とともに、ヒンジ111の軸111aを中心にして吐出部材25が回動され、図9(b)に示すように、回転部材25を刈払刃51の側面SAに当接させる。この際、ガードカバー121の下端部と刈払刃51の側面SAとの間には一定の隙間が形成され、ガードカバー121と刈払刃51との干渉が回避される。なお、上記のような隙間は、刈払刃51の用途等に応じて変更することができ、支持部材122に可変機構を設けることでユーザによる調整を許容することもできる。
【0039】
この薬液付与装置120によれば、回転部材25は、雑草Gを刈っているときのみに刈払刃51に当接して回転される。即ち、雑草Gを刈っているときにのみ薬液が刈払刃51に供給される。したがって、刈払刃51が回転されていても、雑草Gを刈っていない状態においては、薬液が刈払刃51に供給されることはなく、図1の第2バルブ23bを不要とすることができる。
【0040】
また、この薬液付与装置120によれば、草Gが刈られているとき、吐出部材25において、ガードカバー121が、回転部材26を覆うとともに、刈払刃51によって刈られて飛散する草Gを受け止める。即ち、刈った草Gが回転部材26若しくは刈払刃51に巻き付いてこれらの動作を妨げることや、結果的に回転部材25に損傷を与えることを防止できる。
【0041】
なお、以上で説明した第2実施形態の薬液付与装置120を備える携帯式刈払機100は、刈払刃51や操作桿41を左右に振りながら草Gを刈っていくものであるが、2通りの草刈り操作が可能である。即ち、第1の方法は、往復刈りと呼ばれるもので、操作桿41の先端を左から右に移動させる往程と、操作桿41の先端を右から左に移動させる復程との両方において刈払刃51による草刈りを実行する。第2の方法は、片方刈りと呼ばれるもので、操作桿41の先端を左から右又は右から左に移動させる往程のみ草刈りを実行して、復程では草刈りを行わない。本実施形態の薬液付与装置120によれば、上記往復刈り若しくは片方刈りのいずれを行った場合にも、雑草の刈り取り時のみ薬液が吐出され、薬液の無駄な消費を抑えた効率的な運転が可能になる。
【0042】
〔参考試験1〕
図1等に示す薬液付与装置10の効果を調べるための試験を行った。試験を簡単にするため、刈払刃51に代えてはさみを用い、コムギ、オナモミ等の植物の根元付近を切断した。この際、各植物の切断面に除草用の薬液を直接塗布し、薬液を塗布しない比較例に対する殺草効果を調べた。除草用の薬液すなわち化合物としては、ラウンドアップハイロード(商品名)を用いた。化合物の濃度は、10〜100倍の範囲で希釈したものとした。以下の表1は、除草用の薬液を塗布した場合の殺草効果を説明するものである。
【表1】

以上の表1において、コムギやオナモミの下側に設けた欄の数値は、殺草効果の指数0〜10で、殺草効果0の場合、薬剤による殺草効果が殆ど得られなかったことを意味し、10の場合、薬剤による殺草効果が十分得られたことを示す。10〜100倍に希釈したラウンドアップハイロードを各植物の切断面に塗布するだけで、大きな殺草効果が得られ、特に10〜50倍に希釈したラウンドアップハイロードの塗布によって6程度以上の殺草指数を達成できることが分かった。
【0043】
なお、以上の試験で、植物の根元付近を切断するタイミングは、コムギの場合、葉齢が3.5葉期で草丈が26〜30cmであり、オナモミの場合、葉齢が4.0葉期で草丈が12cmであった。殺草効果は、処理の4週間後すなわち28日後とした。以下の表2は、はさみに除草用の薬液を塗布した場合の殺草効果を説明するものである。なお、表2の試験は、はさみを介して間接的に薬液を塗布する点を除いて、表1の試験とほぼ同様の条件下で行われた。
【表2】

以上の表2から明らかなように、10倍に希釈したラウンドアップハイロードを塗布したはさみで切断することによって、各植物の切断面に薬液を直接塗布する場合と同等の効果が得られることが分かった。また、20倍に希釈したラウンドアップハイロードを塗布したはさみで切断することによっても、薬液を直接塗布する場合に匹敵する殺草効果が得られることが分かった。つまり、図1等に示す薬液付与装置10を用いて刈払刃51の表面にラウンドアップハイロード等の茎葉処理剤を塗布することで、刈払後の植物に対して枯殺効果を高め得ることが分かる。
【0044】
図10は、上記表1及び表2に対応するコムギの育成状態を説明する図である。図10(a)〜10(d)は、コムギの切断面に薬液を直接塗布する表1の場合に対応し、図10(e),10(f)は、はさみを介してコムギの切断面に間接的に薬液を塗布する表2の場合に対応する。具体的には、図10(a)は、表1における第1欄の塗布なしに対応するコムギの育成状態を示し、図10(b)は、その第2欄の10倍の薬液塗布に対応するコムギの育成状態を示し、図10(c)は、その第3欄の20倍の薬液塗布に対応するコムギの育成状態を示し、図10(d)は、その第4欄の50倍の薬液塗布に対応するコムギの育成状態を示し、図10(e)は、その第5欄の100倍の薬液塗布に対応するコムギの育成状態を示す。また、図10(f)は、表2における第1欄の10倍の薬液に対応するコムギの育成状態を示し、その第2欄の20倍の薬液に対応するコムギの育成状態を示す。
【0045】
図11は、上記表1及び表2に対応するオナモミの育成状態を説明する図である。図11(a)〜11(d)は、オナモミの切断面に薬液を直接塗布する表1の場合に対応し、図11(e),11(f)は、はさみを介してオナモミの切断面に間接的に薬液を塗布する表2の場合に対応する。具体的には、図11(a)は、表1における第1欄の塗布なしに対応するオナモミの育成状態を示し、図11(b)は、その第2欄の10倍の薬液塗布に対応するオナモミの育成状態を示し、図11(c)は、その第3欄の20倍の薬液塗布に対応するオナモミの育成状態を示し、図11(d)は、その第4欄の50倍の薬液塗布に対応するオナモミの育成状態を示し、図11(e)は、その第5欄の100倍の薬液塗布に対応するオナモミの育成状態を示す。また、図11(f)は、表2における第1欄の10倍の薬液に対応するオナモミの育成状態を示し、その第2欄の20倍の薬液に対応するオナモミの育成状態を示す。
【0046】
以下の表3は、切断面に薬液を塗布した殺草効果と、同時に薬液散布を行った場合の効果と説明するものである。左側の「茎切断固体」の欄は、はさみを介して植物の切断面にラウンドアップハイロードの20倍希釈液を塗布した場合における、その植物の育成状態を示し、右側の「後発雑草」の欄は、はさみを介して植物の切断面にラウンドアップハイロードの20倍希釈液を塗布した場合における、その植物以外の別の植物の育成状態を示す。エンバク、ヒメシバ、ノビエ、イチビ等の先発植物については、約4週間後においても十分な殺草効果が得られていることが分かる。ヒメシバ、イヌビユ、ハキダメギク、ハルジオン等の先発植物については、ラウンドアップハイロードの20倍希釈液を塗布だけでは殺草効果がないことが分かるが、ラウンドアップハイロードの20倍希釈液の塗布と、カーメックスD(200,400gf/10a)の散布とを併用した場合、カーメックスD(商標)による土壌処理剤による十分な殺草効果が得られていることが分かる。
【表3】

【0047】
図12は、上記表3に対応する植物の育成状態を説明する図である。具体的には、図12(a)は、表3における第1欄の塗布にみに対応する育成状態を示し、図12(b)は、その第2欄の薬液塗布及び散布に対応する育成状態を示し、図12(c)は、その第3欄の薬液塗布及び散布に対応する育成状態を示す。
【0048】
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、単なる円板状の刈払刃51に対して回転部材26によって薬液CSを塗布したが、複数箇所で適当な形状の開口が形成された刈払刃51を用いることもできる。この場合、回転部材26から吐出させる薬液CSの量を調節することにより、薬液CSを刈払刃51の側面SA上で広げることができ、刈払刃51の下面にも薬液を塗布することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、薬液CSを刈払刃51に塗布するだけであったが、回転部材26から吐出させる薬液CSの量を調節することにより、刈払刃51の周囲に薬液CSを散布することができ、後発雑草に対する除草効果も期待できる。
【0050】
また、上記実施形態では、開閉量調節用の第1バルブ23aを手動とし、開閉切替用の第2バルブ23bを電動としていたが、両バルブ23a,23bは、電動でも手動でも任意に組み合わせて動作させることができる。
【0051】
また、上記実施形態において、図4は例示であり、回転部材26の形状や構造は適宜変更することができる。例えばベアリング71,72によるローラ本体73の支持は必須でなく、ローラ本体73の側面状態を調整することにより、側面カバー26aを省略することもできる。この際、ローラ本体73の材料は、金属に限らず強化プラスチック等とすることができる。さらに、吐出口OF1,OF2の配置や形状も、薬液CSの塗布量等を考慮して適宜変更することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、バネ81,112によって揺動部材25aを回転させて回転部材26を刈払刃51の側面SA上に押し付けたり、回転部材26を刈払刃51の側面SAから離反させたりしているが、回転部材26を刈払刃51に押し付けたり、離反させたりするための手段には、図示のようなコイルバネに限らず、例えば、板バネ,ゴム等の他の弾性材を用いた様々な機構を用いることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、回転部材26から吐出させて刈払刃51に塗布する薬液CSとして、ラウンドアップハイロードについて説明したが、刈払刃51に塗布する薬液CSは、対象植物、除草効果等に応じて適宜設定することができ、例えばバスタ液剤、プリグロックスL等の公知の各種茎葉処理剤を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態に係る薬液付与装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
【図2】携帯式刈払機に対する薬液付与装置の取付状態を説明する斜視図である。
【図3】図1の薬液付与装置に組み込まれる吐出部材の分解図である。
【図4】吐出部材の先端に取り付けられる回転部材の断面構造を説明する図である。
【図5】図1に示す薬液付与装置を取り付けた携帯式刈払機の構造等を説明する図である。
【図6】第1実施形態に係る薬液付与装置の変形例を説明する要部斜視図である。
【図7】図6の矢視A図であり、回転部材が刈払刃に当接されている状態を示している。
【図8】第2実施形態に係る薬液付与装置を説明する要部斜視図である。
【図9】図8の矢視B図であり、(a)は回転部材が刈払刃から離反した常態位置を示し、(b)は回転部材が刈払刃に当接された作動位置を示している。
【図10】(a)〜(g)は、除草対象であるコムギについて、主に処理後の育成状態を説明する図である。
【図11】(a)〜(g)は、除草対象であるオナモミについて、主に処理後の育成状態を説明する図である。
【図12】(a)〜(c)は、薬液塗布及び散布後の植物の育成状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0055】
10…薬液付与装置、 21…薬液源、 23…パイプ、 23a…第1バルブ、 23b…第2バルブ、 25…吐出部材、 25a…揺動部材、 25c…固定部材、 25f,25g…開口、 25h…端部部材、 26…回転部材、 26a…側面カバー、 27…支持部材、 28a,28b…締結具、 29…バンド金具、 31…バルブ駆動装置、 41…操作桿、 51…刈払刃、 71,72…ベアリング、 73…ローラ本体、 81…バネ、 91b…回転刃支持部、 93…ハンドル、 95…動力源、 97…カバー、 100…携帯式刈払機、 110…薬液付与装置、 111…ヒンジ、 112…捩じりコイルバネ、 120…薬液付与装置、 121…ガードカバー、 AX…中心軸、 CS…薬液、 OF1…第1吐出口、 OF2…第2吐出口、 SA…側面、 G…雑草

【特許請求の範囲】
【請求項1】
根元側において薬液源に連通するとともに先端側において刈払刃の側面近傍に延びるパイプと、
前記パイプの先端側に回転可能に支持されるとともに前記刈払刃の側面に当接させることによって前記刈払刃の回転に伴って回転する回転部材を有し、当該回転部材を介して前記パイプの先端側に導かれた薬液を吐出させる吐出部材と、
前記吐出部材を前記刈払刃の操作桿に対して着脱可能に固定する支持装置と
を備える薬液付与装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記吐出部材を揺動可能に支持するとともに、前記回転部材の側面を前記刈払刃の側面に所定の力で押し付ける付勢部材を有する請求項1記載の薬液付与装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記吐出部材を揺動可能に支持するとともに、前記回転部材の側面が前記刈払刃の側面から離反するように付勢し、かつ、前記刈払刃によって刈り取られた物体の衝突力によって前記回転部材の側面を前記刈払刃の側面に当接させる付勢部材を有する請求項1記載の薬液付与装置。
【請求項4】
前記吐出部材は、前記回転部材を覆うとともに、前記刈払刃によって刈り取られて飛散する物体を受け止めるガードカバーを備える請求項1から請求項3のいずれか一項記載の薬液付与装置。
【請求項5】
前記吐出部材は、前記パイプの先端に連設され、周壁に第1吐出口を有する筒状の端部部材を有し、前記回転部材は、前記端部部材の側面を覆う状態で前記端部部材に対して回転可能に支持されるとともに、所定の回転位置で前記第1吐出口にアライメントされる第2吐出口を有し、前記刈払刃に側面を当接させることによって前記刈払刃の回転に伴って回転するローラである請求項1から請求項4のいずれか一項記載の薬液付与装置。
【請求項6】
前記ローラは、前記端部部材に対して軸受けを介して支持される請求項5記載の薬液付与装置。
【請求項7】
前記ローラは、薬液透過性の材料で形成されるとともに刈払刃の側面に接触する側面カバーを有する請求項6記載の薬液付与装置。
【請求項8】
前記薬液源から前記パイプを介して前記吐出部材に供給される薬液の通路を開閉するバルブと、当該バルブを動作させるバルブ駆動装置とをさらに備える請求項1から請求項7のいずれか一項記載の薬液付与装置。
【請求項9】
前記バルブ駆動装置は、前記刈払刃の回転停止に応じて動作し、前記薬液源から前記吐出部材に供給される薬液の通路を閉止する請求項8記載の薬液付与装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項記載の薬液付与装置を備える携帯式刈払機。
【請求項11】
刈払機の刈払刃を回転させつつ当該刈払刃に除草剤を塗布する工程と、
除草剤を塗布した前記刈払刃を用いて草の刈払いを行う工程と、
を備える除草方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−29323(P2008−29323A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82205(P2007−82205)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】