説明

薬液供給システム及び空調システム

【課題】所定量の薬液を安定して供給可能な薬液供給システムを提供する。
【解決手段】冷凍機1と冷却塔2との間を循環する冷却水に薬液を供給するための薬液供給システムであって、冷却水が循環する配管3内に設けられ、冷却水の水流によって回転させられるプロペラ12と、プロペラ12の内部に設けられ、薬液が流れる流路12cと、流路12c内の薬液が吐出される吐出口22とを有し、プロペラ12が回転することによって流路12c内の薬液に生じる遠心力によって、吐出口22から配管3内に薬液を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器と冷却塔との間を循環する冷却水に薬液を供給するための薬液供給システムと、該薬液供給システムを備えた空調システムとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍機などの熱交換器での熱交換によって温度が上昇した冷却水は、冷却塔へ送られ(戻され)、熱交換によって温度が下げられる。具体的には、冷却塔に送られた冷却水は、該冷却塔において外気(空気)と接触する。その際、冷却水の一部が蒸発することにより残りの冷却水が冷却される。そこで、冷却水を効率的に冷却するため、冷却水を滴状にして表面積の大きな充填材に流すことによって、冷却水と外気との接触時間を長くすることが一般的である。また、冷却水と外気とを接触させる方法には、向流型(カウンターフロー方式)と直交流型(クロスフロー方式)とがある。前者では、落下する冷却水に対して外気が下から上へ向けて当てられ、後者では、落下する冷却水に対して外気が直角に当てられる。
【0003】
何れにしても、冷却水の大部分は熱交換器と冷却塔との間を長期間に亘って循環するので、レジオネラ菌などの細菌の発生や繁殖を防止するために、次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液が供給(注入)される。具体的には、ダイヤフラムポンプを用いて少量の液液(数cc/分)を冷却水が循環する配管内に供給している。しかし、圧力の高い配管内に少量の薬液を押し込むためポンプのエアー噛みにより供給不良が多発していた。また、結晶化した薬液成分がポンプ内や配管内に固着し、薬液の円滑な流れが阻害されることもあった。
【0004】
なお、冷却水に薬液を注入するためのシステムではないが、上下水道設備や工業用水施設において液状の薬品を処理水に注入する技術が特許文献1に記載されており、同文献では薬品の固まりによる注入管の詰まりが問題点として指摘されている。具体的には、特許文献1には、次のような薬品攪拌装置が開示されている。すなわち、水道管に挿入された薬品注入管の先端部分を水道管と平行になるようにL字状に折り曲げると共に、その先端に羽根車を回転自在に取り付けた薬品攪拌装置が開示されている。薬品注入管の他端は、薬品貯蔵槽に接続されており、薬品は薬品ポンプによって薬品貯蔵槽から汲み出され、薬品注入管を介して水道管へ送られる。
【0005】
特許文献1によれば、水道管内を流れる処理水によって回転させられる羽根車によって、挿薬品注入管の先端開口部から水道管内に流出する薬品が処理水と効果的に混合されるので、薬品の使用量を減らすことができると共に、挿薬品注入管の詰まりが防止される、とのことである。
【特許文献1】特開平11−5078号公報(段落[0013]、[0020])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の薬品攪拌装置でも薬品(薬液)の注入にポンプを用いているので、ポンプ内で結晶化した薬液成分の固着による不具合を回避することはできない。また、薬液成分の結晶化は、薬液が冷却水と接する場所、すなわち、温度差や濃度差が大きな場所で発生する。特許文献1記載の薬品攪拌装置では、薬品注入管の先端開口部がその場所に相当する。従って、先端開口部の先に設けられた羽根車によって薬液と処理水とを混合しても先端開口部における薬品成分の結晶化を効果的に防止することは困難である。
【0007】
本発明の目的は、所定量の薬液を安定して供給可能な薬液供給システムと、該システムを備えた空調システムとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薬液供給システムは、熱交換器と冷却塔との間を循環する冷却水に薬液を供給するための薬液供給システムであって、冷却水が循環する配管内に設けられ、冷却水の水流によって回転させられるプロペラと、プロペラの内部に設けられ、薬液が流れる流路と、流路内の薬液が吐出される吐出口とを有し、プロペラが回転することによって流路内の薬液に生じる遠心力によって、吐出口から配管内に薬液を吐出させることを特徴とする。また、本発明の空調システムは、上記特徴を有する薬液供給システムを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定量の薬液を安定して供給可能な薬液供給システムと、該システムを備えた空調システムとが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の薬液供給システムの実施形態の一例について説明する。図1は、本実施形態の薬液供給システムを採用した空調システムの概略を示すブロック図である。
【0011】
図1に示されている空調システムは、空調機(不図示)と、熱交換器である冷凍機1と、冷却塔2と、冷凍機1と冷却塔2との間で冷却水を循環させるための流路(配管3)およびポンプ4とを含み、薬液供給システム10は、主に配管3上に設けられている。図1に示す空調システムの配管3のサイズ(内径)は300A(378mm)、冷却水の流速は1.5m/s、冷却水の圧力は0.3MPaである。
【0012】
図2に示すように、薬液供給システム10は、配管3に挿入された中空シャフト11と、中空シャフト11の一端に回転可能に取り付けられたプロペラ12と、薬液が貯留される薬液タンク13と、薬液タンク13に貯留されている薬液をプロペラ12に設けられている吐出口22へ導く薬液流路と、薬液流路の途中に設けられた電磁弁14とを有する。
【0013】
図3(a)に示すように、中空シャフト11は、配管3の管壁を貫通しており、一端(先端)は配管3の内側に位置し、他端(後端)は配管3の外側に位置している。また、中空シャフト11の先端寄りの部分は、配管3内に設けられた支持部材15によって支持されている。一方、中空シャフト11の後端寄りの部分(配管3を貫通している部分)は、配管3に溶接されている。
【0014】
図3(b)に示すように、中空シャフト11の内部には、該シャフト11を軸線方向に貫通する貫通穴11aが形成されており、その貫通穴11aによって薬液流路の一部が形成されている。尚、薬液流路の詳細については後述する。
【0015】
図4(a)(b)に示すように、プロペラ12は、一体に形成されたボス12aと4枚の羽12bとを有する。ボス12aは円形であり、4枚の羽12bはボス12aの周囲に等間隔(90度間隔)で設けられている。プロペラ12の内部には、各羽12bごとに分岐した流路(分岐流路12c)が形成されている。具体的には、図5に示すように、ボス12aの底面には凹部20が形成されており、該凹部20の底面には、薬液が供給される供給口21が開設されている。一方、各羽12bの先端には、薬液が吐出される吐出口22が開設されている。そして、ボス12aおよび各羽12bの内部には、供給口21と吐出口22とを繋ぐ分岐流路12cがそれぞれ形成されている。さらに、各分岐流路12cの途中(羽12bの内部)には、液溜り部23が形成されている。
【0016】
上記構造を有するプロペラ12は、中空シャフト11の先端に回転可能に取り付けられている。具体的には、中空シャフト11の先端はボス12aの凹部20内に挿入されており、対向する中空シャフト11の外周面と凹部20の内周面との間にベアリング24が配置されている。これにより、プロペラ12は、中空シャフト11の外周面上を該シャフト11の軸回りに回転可能である。さらに、凹部20内に挿入された中空シャフト11の先端面は、凹部20の底面に突き当てられ、中空シャフト11の貫通穴11aが底面に開設されている供給口21と連通している。また、中空シャフト11の先端面と凹部20の底面との間にはOリング25が配置され、突き合わせ部分からの液漏れが防止されている。
【0017】
再び図2を参照すると、配管3の外側に引き出されている中空シャフト11の後端は、供給用配管30を介して薬液タンク13に接続されている。具体的には、図3に示すように、中空シャフト11の貫通穴11aの端部には内周面に雌ネジが形成された呼び口11bが形成されており、この呼び口11cに供給用配管30の外周面端部に形成されている雄ネジ(図示)が螺合されることによって、供給用配管30と中空シャフト11の貫通穴11aとが連通している。もちろん、中空シャフト11の呼び口11cに雄ネジを形成し、供給用配管30の外周面端部に雌ネジを形成してもよい。尚、既述の電磁弁14は供給用配管30の途中に設けられている(図2)。
【0018】
以上の説明から明らかなように、供給用配管30、中空シャフト11(貫通穴11a)および分岐流路12cによって、薬液タンク13から各プロペラ12の吐出口22に至る薬液流路が形成されている。
【0019】
次に、本実施形態の薬液供給システム10の動作について説明する。ポンプ4(図1)が駆動されると、配管3内を流れる冷却水の水流によりプロペラ12が回転する。すると、遠心力によって各プロペラ12の液溜り部23(図5)にある薬液が吐出口22から吐出される。また、吐出口22からの薬液の吐出量に応じた量の薬液が薬液流路を介して薬液タンク13から汲み出されて供給される。
【0020】
ここで、薬液が冷却水と接する場所はプロペラ12(羽12b)の先端に設けられている吐出口22である。この吐出口22は、プロペラ12の回転に伴って冷却水中を常時移動している。よって、吐出口22およびその近傍において薬液成分が結晶化することは少なく、仮に結晶化が発生したとしても、薬液の流れを阻害する程度の大きさに成長する前に洗い流される。また、薬液の供給にポンプその他の機構を用いていないので、エアー噛みによる供給不良や供給不能が発生することもない。
【0021】
これまでの説明から、プロペラ12が回転することによって生まれる遠心力により液溜り部23内の薬液に作用する圧力が配管3内の冷却水の圧力よりも高くなると、吐出口22から薬液が吐出されることは明らかである。そして、遠心力により液溜り部23内の薬液に作用する圧力は、液溜り部23内の薬液の重量に依存する。そこで、配管3内の冷却水の圧力が高い場合には液溜り部23の容積を大きくし、冷却水の圧力が低い場合には液溜り部23の容積を小さくすることが望ましく、冷却水の圧力がさらに低い場合には液溜り部23を形成しなくてもよい。
【0022】
本実施形態では、供給用配管30、中空シャフト11(貫通穴11a)および分岐流路12cによって薬液流路が形成されている。しかし、薬液流路の構成は特定の構成に限定されるものではない。例えば、中空シャフト11を延長し、該シャフト11を直接薬液タンク13に接続することによって供給用配管30を省略することもできる。
【0023】
電磁弁14を開放するタイミングは、ポンプ4の駆動開始前でもよく、駆動開始と同時でもよく、駆動開始後であってもよい。さらには、ポンプ4の駆動中に必要に応じて電磁弁14を開閉してもよい。電磁弁14の開閉によって、薬液供給の有無、供給タイミング、供給量などを適宜調整することも可能である。
【0024】
本実施形態では、固定された中空シャフト11にプロペラ12が回転可能に取り付けられている。しかし、中空シャフト11を配管3に回転可能に取り付け、プロペラ12を中空シャフト11に固定してもよい。この場合、中空シャフト11と供給用配管30との接続にユニバーサルジョイントを採用するなど、適宜設計を変更する。
【0025】
配管3内を流れる冷却水の水量や流速などに応じて、プロペラ12の羽12bの枚数、形状、水流に対する角度などを変更することによって、得られる遠心力を調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の薬液供給システムを採用した空調システムの一例を示すブロック図である。
【図2】図1の薬液供給システムの構造を示す模式図である。
【図3】(a)は中空シャフトの配管への取付け構造を示す一部断面の模式図であり、(b)は中空シャフトの構造を示す模式的断面図である。
【図4】プロペラを示す模式図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】プロペラの中空シャフトへの取付け構造を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 冷凍機
2 冷却塔
3 配管
4 ポンプ
10 薬液供給システム
11 中空シャフト
11a 貫通穴
11b 呼び口
12 プロペラ
12a ボス
12b 羽
12c 分岐流路
13 薬液タンク
14 電磁弁
20 凹部
21 供給口
22 吐出口
23 液溜り部
24 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と冷却塔との間を循環する冷却水に薬液を供給するための薬液供給システムであって、
前記冷却水が循環する配管内に設けられ、前記冷却水の水流によって回転させられるプロペラと、
前記プロペラの内部に設けられ、前記薬液が流れる流路と、
前記流路内の薬液が吐出される吐出口とを有し、
前記プロペラが回転することによって前記流路内の薬液に生じる遠心力によって、前記吐出口から前記配管内に薬液を吐出させることを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】
前記配管の管壁を貫通して前記配管内に挿入され、前記流路と連通する中空シャフトを有し、該中空シャフトの内部空間を通して薬液が前記流路に供給されることを特徴とする請求項1記載の薬液供給システム。
【請求項3】
前記プロペラが前記中空シャフトに回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項4】
前記中空シャフトが前記配管に回転可能に取り付けられ、前記プロペラが前記中空シャフトに固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項5】
前記プロペラが複数枚の羽を有し、それら羽の少なくとも2枚以上に前記吐出口および前記流路がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項6】
前記流路の途中に液溜り部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項7】
前記流路に供給される薬液が貯留されるタンクを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項8】
前記タンクから前記流路への薬液の供給を制御する弁を有することを特徴とする請求項7記載の薬液供給システム。
【請求項9】
空調機と、冷凍機と、冷却塔と、前記冷凍機と前記冷却塔との間で冷却水を循環させるための配管およびポンプと、前記配管内に薬液を供給するための薬液供給システムとを有する空調システムであって、
前記薬液供給システムは、
前記配管内に設けられ、前記冷却水の水流によって回転させられるプロペラと、
前記プロペラの内部に設けられ、前記薬液が流れる流路と、
前記流路内の薬液が吐出される吐出口とを有し、
前記プロペラが回転することによって前記流路内の薬液に生じる遠心力によって、前記吐出口から前記配管内に薬液を吐出させることを特徴とする空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−254998(P2009−254998A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109038(P2008−109038)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】