説明

薬液除去装置

【課題】従来に比して性能を低下させることなく薬液の除去を行うことができるとともに、ブラシの交換作業を容易に行うことができ、しかも、薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減を可能とする薬液除去装置の提供。
【解決手段】薬液を塗布された木材Mが搬送供給される除去室2と、この除去室2内において前記木材Mの側面のそれぞれに当接するように配置された複数の除去用ブラシ部材3とを備えており、前記複数の除去用ブラシ部材3は、前記除去室2に固定される固定部4と、該固定部4に取り付けられるとともに一定方向に毛束が植設されたブラシ部5とをそれぞれ備えており、前記固定部4に対して前記ブラシ部5は、それぞれ前記木材Mの進行方向と直交する方向にスライド着脱可能に構成された薬液除去装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の微小孔が形成された木材に防腐防蟻用の薬液を塗布した後、該木材に付着した薬液以外の余分な薬液を除去する薬液除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材に対して、シロアリ、ヒラタキクイムシなどによる食害や、腐朽菌などによる腐れを防止するために、防腐防蟻処理を施すことが行われている。この防腐防蟻処理の一例として、予め木材の表面に、例えばのみ刃によって適当な間隔でのみ目を切り込んでおき、のみ目から薬液を木材内部に浸透させる方法があり、木材の表面にのみ目などの微小孔を切り込む加工がインサイジング加工と称されている。このインサイジング加工を利用して木材の内部への防腐防蟻用の薬液の浸透性を図った技術として、例えば特許文献1に記載された薬液塗布装置が知られている。
【0003】
この薬液塗布装置には、薬液が塗布された木材の表面を上下方向および左右方向から擦る複数の回転ブラシが設けられている。そして、これら複数の回転ブラシは駆動機構によって回転する回転軸に取り付けられており、この回転軸とともに回転しながら、連続的に搬送される木材の表面を擦ることにより、余分な薬液を効果的に除去できる構成となっている。
【特許文献1】特開2000−225607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような回転ブラシは、前記駆動装置によって回転しながら連続的に木材の表面を擦っている状態であるため、毛先の向きに癖が付いたり、毛先が磨耗したりすることから、定期的に交換作業を行う必要があった。
【0005】
ところが、この交換作業は、前記回転ブラシと回転軸とを固定しているブラシ固定用ボルトを取り外し、新しい回転ブラシと交換してから、再度、ブラシ固定用ボルトで新しい回転ブラシを前記回転軸に固定しなければならず手間であった。
【0006】
一方、前記回転ブラシを連続的に回転させるために、前記駆動装置は作業中、常に稼動している状態となっていることから、連続的に搬送される木材において先行する木材と、後続する木材との間隔が広かった場合には、前記複数の回転ブラシは後続の木材が到達するまで空回りし続けなければならず無駄であった。
【0007】
そこで、上記のような駆動装置を用いずとも、木材の表面から効果的に薬液を除去できるような技術の開発が望まれていた。さらには、このような技術の開発によって薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減を可能とする技術の開発が強く望まれていた。
【0008】
本発明の課題は、従来に比して性能を低下させることなく薬液の除去を行うことができるとともに、ブラシの交換作業を容易に行うことができ、しかも、薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減を可能とする薬液除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図4に示すように、多数の微小孔mが形成された木材Mに防腐防蟻用の薬液を塗布した後、該木材Mに付着した薬液以外の余分な薬液を除去する薬液除去装置1において、
薬液を塗布された木材Mが搬送供給される除去室2と、この除去室2内において前記木材Mの側面のそれぞれに当接するように配置された複数の除去用ブラシ部材3とを備えており、
前記複数の除去用ブラシ部材3は、前記除去室2に固定される固定部4と、該固定部4に取り付けられるとともに一定方向に毛束が植設されたブラシ部5とをそれぞれ備えており、
前記固定部4に対して前記ブラシ部5は、それぞれ前記木材Mの進行方向と直交する方向にスライド着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記木材Mの側面とは、木材Mの両端面以外の面を言う。すなわち、断面四角形の木材Mを安定的に搬送するために、該木材Mの長さ方向と搬送方向とが平行となるように横臥させた際、木材Mの搬送方向における前面および後面以外の上面と、下面と、左面と、右面とに該当する。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、薬液を塗布された木材Mが搬送供給される除去室2内に、前記木材Mの側面のそれぞれに当接する複数の除去用ブラシ部材3が配置されていることから、前記木材Mが前記除去室2内を進行するだけで、前記木材Mの側面に塗布された薬液が、前記複数の除去用ブラシ部材3によって擦り取られるようにして除去されるようになっているので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。
また、前記固定部4に対して前記ブラシ部5は、前記木材Mの進行方向に直交する方向にスライド着脱可能となっていることから、例えば、前記ブラシ部5の毛先が磨耗したり、毛先の向きに癖が付いたりした際にも、前記ブラシ部5を前記木材Mの進行方向に直交する方向にスライドさせて取り外し、新しいブラシ部5をスライドさせて取り付けるだけで、容易に交換作業を行うことができる。
そして、従来とは異なり、駆動装置を用いずとも薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができるとともに、ブラシの交換作業も容易に行うことができるので、延いては、木材Mへの薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減が可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、例えば図3(a)、(b)に示すように、請求項1に記載の薬液除去装置1において、
前記固定部4には該固定部4の長さ方向に貫通する蟻溝状の切欠部4aが形成され、前記ブラシ部5には前記切欠部4aに嵌合する蟻ほぞ状の突出部5aが形成されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記切欠部4aおよび突出部5aは蟻接ぎによる嵌合構造であるが、他の嵌合構造であっても良く、例えば、図5に示すように、断面略T字状の突出部5aとこの断面略T字状の突出部5aと嵌合するように略T字状の溝部が形成された切欠部4a等が用いられる。すなわち、直交する一方向に対しては強固な嵌合強度を有し、他方向には前記切欠部4aに対して前記突出部5aをスライドさせることができるような構造を有する嵌合構造であれば良い。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前記蟻溝状の切欠部4aに対して前記蟻ほぞ状の突出部5aは、前記固定部4の長さ方向に容易にスライド着脱させることができ、前記固定部4の長さ方向と直交する方向に対しては強固な嵌合強度を発揮するので、例えば、前記ブラシ部5の毛先が磨耗したり、毛先の向きに癖が付いたりした際にも、前記ブラシ部5を前記固定部4の長さ方向にスライドさせて取り外し、新しいブラシ部5をスライドさせて取り付けるだけで、容易にブラシ部5の交換作業を行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、例えば図1または図2に示すように、請求項1または2に記載の薬液除去装置1において、
前記複数の除去用ブラシ部材3は、前記木材Mの上下方向および左右方向において該木材Mの側面に当接するようにそれぞれ配置され、前記木材Mの進行方向に沿って並設されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記複数の除去用ブラシ部材3を前記木材Mの上下方向および左右方向において該木材Mの側面に当接するようにそれぞれ配置することによって、前記木材Mの側面に付着した薬液以外の余分な薬液を効果的に除去することができ、さらには、これら複数の除去用ブラシ部材3を前記木材Mの進行方向に沿って並設することによって、前記木材Mの側面に塗布された薬液が、前記複数の除去用ブラシ部材3によって擦り取られるようにして除去されるようになっているので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、例えば図1または図2に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液除去装置1において、
前記複数の除去用ブラシ部材3は、それぞれ毛先が前記多数の微小孔mが形成された木材Mの側面に当接するように設定されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、前記木材Mの側面に付着した薬液以外の余分な薬液を除去することができるので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。
すなわち、前記多数の微小孔mの内部に付着した薬液はそのまま微小孔m内部に留まらせることができ、前記木材Mの側面に塗布された薬液だけを除去することができるようになっているので、延いては、前記木材Mに対して効果的に薬液を浸透させることが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、例えば図4に示すように、請求項1に記載の薬液除去装置1において、
多数の微小孔mが形成された木材Mに薬液を塗布する薬液塗布室7に連続して前記除去室2が設けられており、
これら薬液塗布室7および除去室2の下部には、前記木材Mに付着した薬液以外の余分な薬液を回収する薬液回収部8が設けられているとともに、この薬液回収部8の下方には、回収した薬液を再び前記薬液塗布室7に循環供給させる循環供給装置9が設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、前記木材Mの表面に付着した薬液以外の余分な薬液を回収して、再び循環供給することができるので、薬液の無駄遣いを防ぐことができるとともに、木材Mの表面に付着させる分だけの適量の薬液を容易、かつ確実に木材Mに塗布することができ、その上、搬送供給される木材Mが大量であった場合においても、より多くの木材Mに対して薬液を塗布することができ、これにより、薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薬液を塗布された木材が、複数の除去用ブラシ部材が設けられた除去室内を進行するだけで、前記木材の側面に塗布された薬液が、前記複数の除去用ブラシ部材によって擦り取られるようにして除去されるようになっているので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。また、前記複数の除去用ブラシ部材のブラシ部を前記木材の進行方向に直交する方向にスライドさせて取り外し、新しいブラシ部をスライドさせて取り付けるだけで、容易に交換作業を行うことができる。
そして、従来とは異なり、駆動装置を用いずとも薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができるとともに、ブラシの交換作業も容易に行うことができるので、延いては、木材への薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る薬液除去装置1の実施の形態について説明する。
【0023】
本実施の形態の薬液除去装置1は、図1〜図4に示すように、多数の微小孔mが形成された木材Mに防腐防蟻用の薬液を塗布した後、該木材Mに付着した薬液以外の余分な薬液を除去するものであり、
薬液を塗布された木材Mが搬送供給される除去室2と、この除去室2内において前記木材Mの側面のそれぞれに当接するように配置された複数の除去用ブラシ部材3とを備えており、
前記複数の除去用ブラシ部材3は、前記除去室2に固定される固定部4と、該固定部4に取り付けられるとともに一定方向に毛束が植設されたブラシ部5とをそれぞれ備えており、
前記固定部4に対して前記ブラシ部5は、それぞれ前記木材Mの進行方向と直交する方向にスライド着脱可能に構成されている。
【0024】
なお、本実施の形態の薬液除去装置1は、図1または図2に示すように、多数の微小孔mが形成された木材Mに薬液を塗布することによって該木材Mの防腐防蟻処理を行う薬液塗布装置Aの一部に設けられている。
また、前記薬液塗布装置A内には、前記木材Mを連続的に搬送する木材搬送装置6が設けられている。そして、この木材搬送装置6は、図1に示すように、多数のローラ6aを有するローラコンベアから構成されており、これらローラ6aの左右両端部をそれぞれ回動自在に支持するローラ支持部(図示せず)とから形成されている。
【0025】
前記木材Mは、図4に示すように、インサイジング加工により表面に多数の微小孔mが形成されている。
ここで、インサイジング加工とは、図示はしないが、周方向に所定間隔で多数の刃が形成されてなるインサイジング刃物を回転させつつ、前記刃物によって木材Mの表面を切り込むことであり、このような作業を行うインサイジング装置によって、木材Mの表面に多数の微小孔mを形成できるようになっている。そして、木材Mの表面に薬液を塗布することにより、前記多数の微小孔mから木材Mの内部に薬液が浸透するようになっている。
【0026】
前記薬液は、シロアリ、ヒラタキクイムシなどによる食害や腐朽菌などによる腐れを防止するために、前記木材Mに対して塗布するものである。また、その有効成分や濃度を変えることによって、薬剤としての性能や木材Mに対する浸透度が異なり、用いられる木材Mの用途によって適宜変更して用いる。
【0027】
前記除去室2は、図1または図2に示すように、該除去室2および後述する薬液塗布室7を囲むようにして薬液の飛び散りを防ぐ壁部2aが設けられており、図示はしないが、前記木材Mの進行方向の前後に位置する前記壁部2aの下部中央には、前記木材Mを通過させるための搬送口が設けられ、木材Mが通過できるようになっている。
【0028】
前記除去用ブラシ部材3は、図1または図2に示すように、前記除去室2に固定される固定部4と、該固定部4に取り付けられるとともに一定方向に毛束が植設されたブラシ部5とをそれぞれ備えており、前記除去室2内において前記木材Mの上下方向および左右方向において該木材Mの側面に当接するようにそれぞれ配置され、前記木材Mの進行方向に沿って並設されている。
そして、このように前記複数の除去用ブラシ部材3が前記木材Mの上下方向および左右方向において該木材Mの側面に当接するようにそれぞれ配置されていることによって、前記木材Mの側面に付着した薬液以外の余分な薬液を効果的に除去することが可能となる。さらには、これら複数の除去用ブラシ部材3が前記木材Mの進行方向に沿って並設されていることによって、前記木材Mの側面に塗布された薬液が、前記複数の除去用ブラシ部材3によって擦り取られるようにして除去されるようになるので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができるようになっている。
なお、図示はしないが、本実施の形態の複数の除去用ブラシ部材3において、前記木材Mの上側面に当接する複数の除去用ブラシ部材3を昇降させて位置調整を行う高さ調整機構と、前記木材Mの左右面に当接する複数の除去用部材どうし間の距離を調整する幅調整機構とが設けられており、前記木材Mの大きさに合わせてそれぞれの位置調整ができるように構成されている。
【0029】
また、前記複数の除去用ブラシ部材3は、それぞれ毛先が前記多数の微小孔mが形成された木材Mの側面に当接するように設定されていることによって、前記木材Mの側面に付着した薬液以外の余分な薬液を除去することができるので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。
すなわち、前記多数の微小孔mの内部に付着した薬液はそのまま微小孔m内部に留まらせることができ、前記木材Mの側面に塗布された薬液だけを除去することができるようになっているので、延いては、前記木材Mに対して効果的に薬液を浸透させることが可能となる。
【0030】
一方、図3(a)、(b)に示すように、前記固定部4には、該固定部4の長さ方向に貫通する蟻溝状の切欠部4aが形成されているとともに、前記ブラシ部5には、前記切欠部4aに嵌合する蟻ほぞ状の突出部5aが形成されており、前記蟻溝状の切欠部4aに対して前記蟻ほぞ状の突出部5aは、前記固定部4の長さ方向に容易にスライド着脱させることができ、前記固定部4の長さ方向と直交する方向に対しては強固な嵌合強度を発揮するようになっている。
これによって、例えば、前記ブラシ部5の毛先が磨耗したり、毛先の向きに癖が付いたりした際にも、前記ブラシ部5を前記固定部4の長さ方向にスライドさせて取り外し、新しいブラシ部5をスライドさせて取り付けるだけで、容易にブラシ部5の交換作業を行うことが可能となる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、前記切欠部4aおよび突出部5aは蟻接ぎによる嵌合構造であるが、他の嵌合構造であっても良く、例えば、図5に示すように、断面略T字状の突出部5aとこの断面略T字状の突出部5aと嵌合するように略T字状の溝部が形成された切欠部4a等が用いられる。すなわち、直交する一方向に対しては強固な嵌合強度を有し、他方向には前記切欠部4aに対して前記突出部5aをスライドさせることができるような構造を有する嵌合構造であれば良い。
また、他にも、図6に示すように、断面略円状の突出部5aと、この断面略円状の突出部5aと嵌合するように略円状の溝部が形成された切欠部4aとによる嵌合構造であっても、直交する一方向に対しては強固な嵌合強度を有し、他方向には前記切欠部4aに対して前記突出部5aをスライドさせることができるようになっている。
このように、本実施の形態における切欠部4aおよび突出部5aの嵌合構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0032】
前記薬液塗布装置Aは、図1または図2に示すように、多数の微小孔mが形成された木材Mに薬液を塗布する薬液塗布室7と、この薬液塗布室7に連続して前記除去室2が設けられており、これら薬液塗布室7および除去室2の下部には、前記木材Mに付着した薬液以外の余分な薬液を回収する薬液回収部8が設けられているとともに、この薬液回収部8の下方には、回収した薬液を再び前記薬液塗布室7に循環供給させる循環供給装置9が設けられている。
【0033】
前記薬液塗布室7は、図4に示すように、前記木材Mの側面に薬液を塗布する複数の噴射ノズル7aを備えている。また、図1または図2に示すように、該薬液塗布室7を囲むようにして薬液の飛び散りを防ぐ界壁部7bが設けられており、図示はしないが、前記界壁部7bの下部中央には、前記木材Mを通過させるための搬送口が設けられ、木材Mが通過できるようになっている。
また、前記薬液塗布室7および前記除去室2には、図1に示すように、その上面を覆うようにして天面部材A1が設けられており、前記界壁部7bと同様に薬液の飛び散りを防ぐことができるようになっている。
なお、前記噴射ノズル7aは、前記木材Mの前後面および側面に対して薬液を噴射できるように、噴射角度を調節したり、木材Mに薬液を効果的に塗布するに適した数の噴射ノズル7aを設けたりすることが望ましい。
【0034】
前記薬液回収部8は、図4に示すように、前記薬液塗布室7および前記除去室2の下部に位置しており、前記薬液塗布室7から排出される余分な薬液と、前記除去室2から除去され排出される余分な薬液とを回収する。また、このように回収した薬液を落下排出させる排出口8aが、該薬液回収部8の最下部に設けられている。
【0035】
前記循環供給装置9は、図1または図4に示すように、前記薬液回収部8の排出口8aに直下に位置し、前記余分な薬液を貯留する薬液タンク10と、この薬液タンク10に貯留された薬液を再び前記薬液塗布室7に循環供給させる循環装置11とを備えている。
【0036】
前記薬液タンク10は、図1または図2に示すように、上部が開放された箱体で構成されている。また、図4に示すように、同様に構成された薬液タンク10を用意しておき、これら薬液タンク10の配置を適宜入れ替えることによって、異なる種類の薬液を貯留して循環供給できるようになっている。
このように、異なる種類の薬液を用意することによって、上述したように、薬液の有効成分や濃度を変えることができ、木材Mに対する薬液の性能の向上や浸透度を変えることができるようになっている。
【0037】
また、前記薬液タンク10には、図4に示すように、前記薬液を排出するための排出管10aと、これら排出管10aの中途に設けられ、前記薬液の流路を開閉するコック部10bと、前記排出管10aの先端が取り付けられるとともに、前記循環装置11に接続される継手部材10cとが設けられている。
【0038】
前記循環装置11は、図1または図4に示すように、前記薬液タンク10側に延出して設けられる吸引ホース11aと、前記薬液塗布室7側に延出して設けられる吐出ホース11bと、これら吸引ホース11aと吐出ホース11bとの間に設けられ、前記薬液タンク10に貯留された薬液を、前記吸引ホース11aを通じて吸引するとともに前記吐出ホース11bを通じて吐出する循環ポンプ11cとを備えている。
【0039】
このような薬液塗布装置Aによれば、前記木材Mの表面に付着した薬液以外の余分な薬液を回収して、再び循環供給することができるので、薬液の無駄遣いを防ぐことができるとともに、木材Mの表面に付着させる分だけの適量の薬液を容易、かつ確実に木材Mに塗布することができ、その上、搬送供給される木材Mが大量であった場合においても、より多くの木材Mに対して薬液を塗布することができ、これにより、薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減が可能となる。
【0040】
以上のような構成の薬液除去装置1によって木材Mの側面に付着した薬液以外の余分な薬液を除去するには、図1または図4に示すように、まず、インサイジング加工によって多数の微小孔mが形成された木材Mを前記木材搬送装置6によって薬液塗布装置Aに向かって連続的に搬送していく。
【0041】
次に、前記薬液塗布装置A内の薬液塗布室7に前記木材Mを搬送供給し、前記薬液塗布室7内において前記噴射ノズル7aから薬液を噴射して前記木材Mの側面に防腐防蟻用の薬液を塗布する。
この時、前記木材Mの側面に付着しなかった余分な薬液は、図4に示すように、前記薬液塗布室7の下部に設けられた前記薬液回収室に向かって流れて回収されるようになっている。
【0042】
その後、薬液を塗布された木材Mを前記木材搬送装置6によって前記除去室2に搬送供給する。前記除去室2内において前記木材Mは、図1に示すように、前記木材搬送装置6により搬送されながら、該木材Mの側面のそれぞれに当接するように配置された複数の除去用ブラシ部材3によって余分な薬液が除去されるようになっている。この時、前記複数の除去用ブラシ部材3のそれぞれの毛先は、前記木材Mの側面のみに当接して、前記多数の微小孔mの内部にまでは達しないようになっているので、該多数の微小孔mの内部に残留した薬液は、その後、前記木材Mの内部に浸透して、防腐防蟻処理がなされるようになっている。
また、前記複数の除去用ブラシ部材3によって除去された余分な薬液は、図4に示すように、前記除去室2の下部に設けられた前記薬液回収部8に向かって流れて回収されるようになっている。
なお、このように余分な薬液を除去された木材Mは、図示はしないが、前記木材搬送装置6によりさらに搬送されて、自然乾燥もしくは乾燥装置によって乾燥作業が行われるようになっている。
【0043】
そして、前記薬液回収部8に回収された余分な薬液は、図4に示すように、この薬液回収部8の排出口8aの直下に位置する薬液タンク10に貯留されるようになっている。また、貯留された薬液は、前記薬機タンクおよび前記薬液塗布室7に通じて設けられた循環装置11によって、前記薬液塗布室7に再び循環供給されるようになっている。
【0044】
一方、以上のような構成の薬液除去装置1において、前記木材Mの側面に直接当接する前記ブラシ部5を交換するには、図3(a)、(b)に示すように、前記除去用ブラシ部材3において前記固定部4に、該固定部4の長さ方向に貫通する蟻溝状の切欠部4aを形成し、前記ブラシ部5に、前記切欠部4aに嵌合する蟻ほぞ状の突出部5aを形成しておき、そして、前記ブラシ部5を前記固定部4の長さ方向にスライドさせて取り外し、最後に、新しいブラシ部5をスライドさせて取り付けて、前記ブラシ部5の交換作業を行うようにする。
【0045】
以上のように、本実施の形態の薬液除去装置1によれば、薬液を塗布された木材Mが、複数の除去用ブラシ部材3が設けられた除去室2内を進行するだけで、前記木材Mの側面に塗布された薬液が、前記複数の除去用ブラシ部材3によって擦り取られるようにして除去されるようになっているので、従来と比しても、その薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができる。また、前記複数の除去用ブラシ部材3のブラシ部5を前記木材Mの進行方向に直交する方向にスライドさせて取り外し、新しいブラシ部5をスライドさせて取り付けるだけで、容易に交換作業を行うことができる。
そして、従来とは異なり、駆動装置を用いずとも薬液除去性能を低下させることなく薬液除去作業を行うことができるとともに、ブラシの交換作業も容易に行うことができるので、延いては、木材Mへの薬液塗布作業に係る全体的なコストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の薬液除去装置が設けられた薬液塗布装置を示す側面図である。
【図2】図1に示す薬液塗布装置の平面図である。
【図3】薬液除去装置内に設けられた除去用ブラシ部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図4】薬液塗布装置内に設けられた薬液の塗布および除去、回収、循環供給の流れを示す説明図である。
【図5】図3に示す除去用ブラシ部材の他の実施例を示す側面図である。
【図6】図3に示す除去用ブラシ部材の他の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 薬液除去装置
2 除去室
3 除去用ブラシ部材
4 固定部
5 ブラシ部
A 薬液塗布装置
M 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の微小孔が形成された木材に防腐防蟻用の薬液を塗布した後、該木材に付着した薬液以外の余分な薬液を除去する薬液除去装置において、
薬液を塗布された木材が搬送供給される除去室と、この除去室内において前記木材の側面のそれぞれに当接するように配置された複数の除去用ブラシ部材とを備えており、
前記複数の除去用ブラシ部材は、前記除去室に固定される固定部と、該固定部に取り付けられるとともに一定方向に毛束が植設されたブラシ部とをそれぞれ備えており、
前記固定部に対して前記ブラシ部は、それぞれ前記木材の進行方向と直交する方向にスライド着脱可能に構成されていることを特徴とする薬液除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液除去装置において、
前記固定部には該固定部の長さ方向に貫通する蟻溝状の切欠部が形成され、前記ブラシ部には前記切欠部に嵌合する蟻ほぞ状の突出部が形成されていることを特徴とする薬液除去装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の薬液除去装置において、
前記複数の除去用ブラシ部材は、前記木材の上下方向および左右方向において該木材の側面に当接するようにそれぞれ配置され、前記木材の進行方向に沿って並設されていることを特徴とする薬液除去装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液除去装置において、
前記複数の除去用ブラシ部材は、それぞれ毛先が前記多数の微小孔が形成された木材の側面に当接するように設定されていることを特徴とする薬液除去装置。
【請求項5】
請求項1に記載の薬液除去装置において、
多数の微小孔が形成された木材に薬液を塗布する薬液塗布室に連続して前記除去室が設けられており、
これら薬液塗布室および除去室の下部には、前記木材に付着した薬液以外の余分な薬液を回収する薬液回収部が設けられているとともに、この薬液回収部の下方には、回収した薬液を再び前記薬液塗布室に循環供給させる循環供給装置が設けられていることを特徴とする薬液除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−240155(P2006−240155A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60825(P2005−60825)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000114086)ミサワホーム株式会社 (288)
【Fターム(参考)】