薬物として用いる、筋力を回復する能力がある改変アグリン断片
少なくともヒトアグリンのドメインLG2およびLG3を、共有結合性に連結した形で含み、かつニューロトリプシンによって切断され得ないように改変された、薬物として用いる、インビボ活性を有する改変アグリン断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物として用いる改変アグリン断片について言及する。加えて、本発明は、種々の、特に、筋肉疾患または運動ニューロン疾患の処置だけでなく、さらなるニューロトリプシン関連疾患の処置にも用いる薬物の製造のための改変アグリン断片の使用に言及する。さらに、本発明は、種々の疾患の処置における改変アグリン断片の使用に言及する。最後に、本発明は、改変アグリン断片を含む薬学的組成物、および特定の改変アグリン断片に関する。
【背景技術】
【0002】
60歳以上の高齢者は、除脂肪体重の容赦ない下降に直面する。これはごく普通のことであるため、長い間、その根本的な機構を調べることに価値があるとは考えられていなかった。現在、除脂肪体重の加齢性下降は、サルコペニアまたは虚弱(frailty)と呼ばれている。
【0003】
サルコペニアおよび虚弱はどちらも、高齢者における機能性および自立度に関して、非常に関連性の深い実体である。サルコペニアは、その末期に虚弱および身体障害に至る、筋量および筋力における退行性加齢性下降とみなされている。サルコペニア患者の筋量の下降速度は、その疾患に罹っていない人々の下降速度より有意に速い。サルコペニアは静的な状態ではなく、加齢と共に悪化する。それのゆっくりとした発症のため、人々は通常、すでに進行期に達しているときまでサルコペニアに気づかない。
【0004】
サルコペニアの筋量は、筋線維数の連続的な縮小によって特徴づけられる。線維サイズはより不均一であり、線維タイプの群化が観察される。線維タイプの群化は、繰り返される除神経/神経再生によって引き起こされると考えられる。加えて、老化した筋肉は、脂肪および結合組織の浸潤を特徴とする。これ全てが筋力および運動速度の下降の原因となる。多くの筋肉に観察される加齢性変化は、それらの筋肉線維の神経支配における加齢性変化によってある程度、引き起こされると考えられる。老化の間、機能する運動単位(MU)の概算数の有意かつ漸進的な低下が観察される。同様に、MUの実質的損失と関連した明らかな筋力下降が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または重症度の低い型の脊髄性筋萎縮症(SMA)などの運動ニューロン疾患に苦しんでいる個体に観察される。
【0005】
筋線維の除神経/神経再支配のサイクルはシナプス可塑性を必要とする。シナプス可塑性の過程はまだ詳細にはわかっていない。しかしながら、この数年で、神経筋接合部(NMJ)の形成および維持におけるいくつかの重要なプレーヤーが同定された(SongおよびBalice−Gordon、2008)。十分特徴づけられたタンパク質アグリン(BezakovaおよびRuegg、2003)は、発生中のNMJのシナプス後装置の形成および維持を援助することによってシナプス形成において中心的役割を果たす。
【0006】
アグリンは、400〜600kDaの分子量を有する大きなヘパランプロテオグリカンである。(データベースアクセッション番号NP_940978)。タンパク質コアは、約2000個のアミノ酸からなり、その質量は約225kDaである。それは、9個のK(クニッツ型)ドメイン、2個のLE(ラミニン−EGF様)ドメイン、1個のSEA(精子のタンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリン)ドメイン、4個のEG(上皮増殖因子様)ドメイン、および3個のLG(ラミニン球状)ドメインで構成される多ドメインタンパク質である(図1)。アグリンは、非常に重要なタンパク質であり、アグリン欠損マウスは、呼吸不全により出生時に死ぬ。これは、アグリンが筋線維の正常な神経支配に厳重に必要とされるという事実、およびこれらのマウスが正常なNMJを構築することができないという事実によって引き起こされる。
【0007】
アグリンは、いくつかのスプライスバリアントとして存在し、N末端のNtA(N末端アグリン)ドメインを含む分泌性タンパク質として発現することができ、その分泌性タンパク質がアグリンの最も豊富にある形であり、その優勢形は運動ニューロンに発現する。それは、そのニューロンの神経細胞体において産生され、軸索を下へと輸送され、運動神経の軸索終末からNMJのシナプス間隙へ放出される。ここで、それは、LRP4のアゴニストとして働き、基底層の成分になる場合もある。CNSにおいて、たいていのアグリンは、N末端のNtAドメインを欠くN末端における選択的スプライシングによるII型膜貫通タンパク質として発現する(BezakovaおよびRuegg、2003)。
【0008】
アグリンにおけるセリン/スレオニン(S/T)リッチなセグメントは、高度のグリコシル化に関与しており、いくつかのグリコシル化部位、および大質量のプロテオグルカンを生じるグルコサミノグリカン付着部位を含む。第1のEGドメインから始まるアグリンのC末端の75kDaの部分は、筋肉細胞においてアセチルコリン受容体(AChR)クラスター形成活性における完全活性に必要とされるが、最もC末端の20kDaの断片が、AChR凝集を誘導するのに十分である(BezakovaおよびRuegg、2003)。α−ジストログリカン、ヘパリン、いくつかのインテグリン、およびLRP4を含むアグリンの相互作用パートナーについてのいくつかの結合部位は、C末端領域にマッピングされる。大きなヘパラン硫酸側鎖は、ヘパリン結合タンパク質、例えば、いくつかの増殖因子についての結合部位である。
【0009】
ヒトアグリンのC末端部分において、2つの選択的スプライス部位、yおよびzがある。y部位には、0個、4個、17個、または21(4+17)個のアミノ酸の挿入断片が存在する場合があり、z部位では、0個、8個、11個、または19(8+11)個のアミノ酸の挿入断片が存在する場合がある。y部位におけるその4つの挿入アミノ酸の機能は、ヘパリン結合部位を形成することである。運動ニューロンは、主にy4アグリンを発現する。NMJ成熟に関して最も重要なアグリンのスプライス部位はz部位であり、それは、アグリンに、アセチルコリン受容体クラスター形成作用物質として活性がある能力を与える。スプライス部位yにおける4個のアミノ酸の挿入断片の存在下でz部位に8個のアミノ酸の挿入を含む完全長アグリン(y4z8)が、培養筋管クラスター形成アッセイにおいて35pMの最大半量AChRクラスター形成活性を有するアグリンバリアントを生じることはよく知られている。11個のアミノ酸の挿入は、5nMの最大半量AChRクラスター形成活性を生じるが、19個のアミノ酸の挿入は結果として、110pMの最大半量AChRクラスター形成活性を生じる。この部位において挿入がないアグリンは、インビトロ培養筋管上でアセチルコリン受容体をクラスター形成することに活性はない(BezakovaおよびRuegg、2003)。したがって、クラスター形成アッセイにおいて最も活性の高い形のアグリンは、y4z8バリアントであり、それは運動ニューロンによって発現する。
【0010】
LG2、EG4、およびLG3ドメインを含むアグリン(y4z8)の約40kDaのC末端断片は、AChRクラスター形成に活性があり、AchRクラスター形成活性において130pMのEC50をもつことが見出されているが、より短い断片は、より低い活性を有するだけである。z8挿入を含むC末端LG3ドメインは、13nMだけの最大半量AChRクラスター形成活性を示し、その活性は、40kDaの断片の100分の1の率である(BezakovaおよびRuegg、2003)。
【0011】
NMJの発生および成熟中、アグリンは、アセチルコリン受容体のクラスター形成に関与する重要なプレーヤー分子である。NMJが、神経伝達物質のアセチルコリンによって不安定化されるが、運動ニューロンによって分泌されるアグリンは、膜結合受容体型チロシンキナーゼであるMuSKのリン酸化を介して、AChRのクラスターを安定化し、増加させる。アグリンのMuSKとの相互作用は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)関連タンパク質であるLRP4を通して媒介されると仮定される。アグリン(y4z8)がアグリン(y4z0)より約10倍高いLRP4への親和性を有し、そのことが、インビトロ培養筋管アッセイにおいて観察される種々のアグリンのスプライスバリアントの示差的なAChRクラスター形成活性を生じることが見出された。アグリン結合によって、LRP4は、MuSKの自己リン酸化を引き起こし、それが、その後、アセチルコリン受容体の発現およびクラスター形成についてのシグナル伝達系を活性化する。
【0012】
ニューロトリプシンは、脊髄抽出物に見出され、運動ニューロンによって産生される。ニューロトリプシンは、CNSニューロンによって、加えて運動ニューロンによっても産生される分泌性のトリプシン様セリンプロテアーゼである(Stephanら、2008)。ニューロトリプシンは、プロリンリッチ塩基性(PB)セグメントを含むN末端の非触媒性部分、クリングル(KR)ドメイン、4つのスカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメイン、およびC末端のプロテアーゼドメインからなる(Gschwendら、1997)。ヒトにおいて、エクソン7における4bpの欠失は、重篤な非症候性精神遅滞をもたらす。その突然変異は、プロテアーゼドメインを欠く切断型ニューロトリプシンを生じ、したがって、酵素のタンパク質分解性機能を無能にする。
【0013】
現在のところ、アグリンがニューロトリプシンの唯一の知られた標的である。ニューロトリプシンは、アグリンをα部位およびβ部位と呼ばれる2つの別個の部位で切断する(図1)。α部位は、アグリンのSEAドメインからN末端側に位置し、β部位は、アグリンのLG3ドメインの前に配置される。α部位での切断は、4〜12%のビストリスSDSゲルにおいて約130kDaに流れる約100kDaのC末端アグリン断片を生じる。β部位での切断は、そのゲルにおいて約22kDaに流れるC末端LGSドメインを遊離させる(Molinariら、2002;Reifら、2007)。全てのC末端断片は、マウスの脳抽出物および脊髄抽出物に検出することができた(Stephanら、2008)。ニューロトリプシンのノックアウトマウスにおいて、その断片のいずれも検出することができなかった。結果として、ニューロトリプシンは、アグリンを有意な量でその2つの切断部位において切断する唯一のプロテアーゼであるように思われる。ニューロトリプシンによるアグリンの切断は、神経筋可塑性およびリモデリングに寄与する。
【0014】
ニューロトリプシン(NT)過剰発現マウス、いわゆるサルコペニアマウス(muslik、M491S)(Stephanら、2008)は、サルコペニアの早期発症を示す。サルコペニアマウスの体系的分析からの詳細な知見により、ヒトデータに対して良い相関が存在することが実証されている。米国特許出願第12/007,928号は、その動物モデルの記載を示している。簡単に述べれば、サルコペニアマウス(muslik M491S)は以下を示す。
(i)マウス横隔膜の神経線維は、個々の終板に向かって成長すること、
(ii)最終的には個々の終板の消失(すなわち、シナプス前部およびシナプス後部の喪失)をもたらす、横隔膜筋肉上の断片化された終板、
(iii)ニューロトリプシン過剰発現動物におけるマウスヒラメ筋の線維数の低下および線維サイズの均一性の減少。サルコペニアマウスは、線維数の低下(約30%)および線維サイズの不均一性の増加がある。
【0015】
国際公開第97/21811号において、筋肉を冒す疾患の処置方法においてアグリンまたはアグリン断片を用いることが提案されている。しかしながら、そのような試みは、今日まで成功したということは示されていない。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、機能性NMJおよび/または運動単位(MU)の低下を含む種々の筋肉障害についての治療を提供することである。
【0017】
一般的に、本発明は、ニューロトリプシンのタンパク質分解活性に抵抗性であり、かつサルコペニアまたはさらなるニューロトリプシン関連疾患を患っているヒトの処置のための生物学的治療試薬として働く、遺伝子工学的に操作されたヒトまたはマウスの新規アグリンタンパク質バリアントを提供する。ニューロトリプシンの活性に対する抵抗性は、例えば、アグリン断片の切断部位、特にβ切断部位を適宜、改変することによって、または断片から切断部位を除去することによって、達成することができる。
【0018】
本出願人の調査により、アグリン断片のインビボ活性が、LG2およびLG3の両方のドメインが一緒に存在することに主に依存することが示されている。WO97/21811は、LG3単独についてのAChRクラスター形成のインビトロ活性を示した。しかしながら、LG3のインビボ活性は示すことができなかった。同様に、LRP4単独の活性化は完全なインビボ活性を達成するのに十分ではない。
【0019】
それゆえに、本発明の1つの重要な特徴は、ドメインLG2およびLG3が、インビボでニューロトリプシンの活性のせいで分離されないことである。そのような分離を避けるために、本発明に従って用いられるアグリン断片は、それが、ドメインLG2とドメインLG3の間に存在する天然のアグリンにおけるニューロトリプシンのβ切断部位をもはや含まないように改変されている。
【0020】
本出願において用いられる場合、LG2およびLG3という用語は、上記で述べられているように、これらのドメインの可能性のある全ての種々のスプライスバリエーションを含むものとする。例えば、配列番号1は、y部位に4個のアミノ酸の挿入断片(配列番号5)を有するドメインLG2のヒト配列を示し、一方、配列番号2は、z部位に8個のアミノ酸の挿入断片(配列番号8)を有するドメインLG3の配列を示す。配列番号1に示されているように、ドメインLG2において、y部位はプロリン115とバリン120の間にある。そのバリンの位置はyスプライス部位における挿入断片の長さに依存して変化し得ることは理解されている。配列番号2に示されているように、ドメインLG3において、z部位は、セリン19とグルタミン酸28の間にある。ここでもまた、そのグルタミン酸の位置はzスプライス部位における挿入断片の長さに依存して変化し得ることは明らかである。言及されたスプライス部位における挿入断片の配列についてのさらなる例は下記に示されている。
【0021】
追加として、生物活性に影響しない配列のバリエーションは可能であるため、本発明は、ドメインLG2およびLG3の種々のスプライスバリアントの示された配列に限定するものではなく、少なくとも90%、好ましくは95%の同一性を有するそれらのバリアントもまた含むものとする。
【0022】
本発明は、インビボ活性を有し、かつ同時にインビボでニューロトリプシンによって切断されないアグリン断片を提供する。
【0023】
本出願に用いられる場合のインビボ活性は、サルコペニアマウス(muslik M491S)における全体重減少および筋力低下の予防から全体重および筋力の回復まで及ぶ効果を含むものとする。
【0024】
本出願に用いられる場合のアグリン断片という用語は、ニューロトリプシンについての少なくとも認識部位βにおける、および場合により部位αにおける塩基性アミノ酸のアルギニンおよび/またはリジンが、任意の他のアミノ酸へ突然変異して、少なくとも部分的にニューロトリプシン抵抗型のアグリンを生じている、分泌型または膜貫通型のアグリンを網羅する。それは、少なくともアグリンのLG3およびLG2ドメインを含む断片だけでなく、追加として、アグリンに天然で存在する少なくとも1つのさらなるドメイン、例えば、LG1およびEG1〜4ドメインを含む断片も包含する。
【0025】
または、アグリン断片は、ニューロトリプシンまたはニューロトリプシン様セリンプロテアーゼによるタンパク質分解性切断を阻止するように、化学的に改変することができる。
【0026】
追加として、本発明に該当するアグリン断片は、スプライス部位yおよびzにおいて任意の天然または非天然で挿入されるアミノ酸を含むものとする。
【0027】
一実施形態において、本発明は、少なくともニューロトリプシンβ切断部位を含むC末端アグリン断片であって、この切断部位が、ニューロトリプシンまたはニューロトリプシン様プロテアーゼがそれを切断できないように改変されている、C末端アグリン断片を対象とする。ニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/Aと呼ばれる特に好ましい改変アグリン断片は、図2bに示された配列番号3によるアミノ酸配列を含む。略語K/Aは、β切断部位におけるK(リジン)からA(アラニン)への突然変異を表す。C44y0z8K/A(ヒト)、C44y0z8K/A(マウス)、C44y4z0K/A(ヒト)、およびC44y4z8K/A(マウス)と呼ばれる、さらなる好ましい改変アグリン断片は、図7〜10に示された配列番号11〜14によるアミノ酸配列を含む。
【0028】
そのようなアグリン断片は、実施例においてアグリン断片C44y4z8K/Aについて記載されているように、通常の組換え操作によって得ることができる。それらの実験について、本出願人らは、N末端に導入されたHis8を用いることによって精製された断片を用いた。本文ではC44K/Aと呼ばれる断片は、配列番号4による配列を有する。
【0029】
ニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/AとC44K/Aの唯一の違いは、後者のタンパク質が追加として、断片を試験する前に除去されなかったHis8−タグを含むことである。
【0030】
実施例に示されているように、本発明による改変アグリン断片は、サルコペニアを患っているマウスにおいて筋肉発生を誘導することができる。それゆえに、本発明の1つの重要な態様は、特許請求されているアグリン断片の、薬物としての使用である。
【0031】
本発明のさらなる態様は、非限定的に、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含む、神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患の処置のための、またはそれらの処置用の薬物の製造のための改変アグリン断片の使用である。
【0032】
言及された疾患は別として、改変アグリン断片は、一般的に、ニューロトリプシンレベルが、例えば過剰発現によって上昇している全ての疾患の処置に用いることができる。
【0033】
さらなる態様は、長期の不動状態後に起こり得る、筋量および筋力の喪失を伴う筋肉の廃用性萎縮(筋萎縮症)の処置である。長期不動状態の例は、長期のベッドでの療養、または体の部分、例えば、手足にギブスをはめていること、または肺疾患を患う患者における機械的人工換気である。筋量の萎縮を引き起こす多くの疾患および状態もある。例えば、がんやAIDSなどの疾患は、「悪液質」と呼ばれる消耗症候群を誘発し、その消耗症候群は、重篤な筋萎縮が顕著に見られる。この型の萎縮は、その状態が重篤でない限り、運動で逆転させることができる。廃用性萎縮は、神経筋接合部におけるリモデリングを引き起こすことが知られている。観察される神経筋変化および可塑性は、老化した(サルコペニア性)NMJについてだけでなく、廃用性萎縮についての特徴でもある。
【0034】
本発明は、サルコペニアおよび筋肉疾患を処置するための、薬学的に許容される媒体に本発明による改変アグリン断片を含む薬学的組成物を提供する。そのような処置は、積極的な運動トレーニングまたは栄養最適化を含む治療的アプローチと組み合わせてもよい。
【0035】
1つの好ましい投与様式は皮下注射であることはわかっている。好ましくは、そのための薬学的組成物は、そのような注射を可能にする担体を含む。しかしながら、その断片を筋肉内に、または静脈内に、または髄腔内に、または経口で、または経皮的に、または経上皮的に、または肺内に、または鼻腔内に投与することも考えられる。以下の製剤または装置(マイクロカプセル化、マイクロプロジェクションリポソーム、アグリン断片のPEG化もしくはPEG化誘導体、またはナノ粒子)を用いてもよい。そのような薬学的組成物もまた本発明に網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アグリンのドメイン構造の概略図である。
【図2a】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44の概略図である。
【図2b】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z8のアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。
【図3】IMACによるC44K/A(配列番号4)の精製を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図4】C44K/AおよびヒトアグリンC44y4z8のヒトニューロトリプシンでのタンパク質限定分解性消化を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図5】C44K/Aまたは媒体で処理されたマウスの体重の進展を示すグラフである。
【図6a】C44K/Aまたは媒体で処理された野生型同腹仔マウスおよびサルコペニアマウスにおける実験の13日目での前肢の握力を示す図である。
【図6b】C44K/Aまたは媒体で処理された野生型同腹仔マウスおよびサルコペニアマウスにおける実験の13日目での後肢の握力を示す図である。
【図7】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y0z8K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号11)を示す図である。
【図8】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y0z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号12)を示す図である。
【図9】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z0のアミノ酸配列(配列番号13)を示す図である。
【図10】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号14)を示す図である。
【図11】C44K/A断片のタンパク質限定分解性消化を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図12】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す図である。
【図13a】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢の握力を示す図である。
【図13b】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての後肢の握力を示す図である。
【0037】
図1は、アグリンの概略図である。アグリンは、約225kDaのコアタンパク質質量を有する。それは、9個のK(クニッツ型)ドメイン、2個のLE(ラミニン−EGF様)ドメイン、1個のSEA(精子のタンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリン)ドメイン、4個のEG(上皮増殖因子様)ドメイン、および3個のLG(ラミニン球状)ドメインで構成される多ドメインタンパク質である。SEAドメインの両側に、セリン/スレオニンリッチな(S/T)領域が見出される。アグリンはいくつかのアイソフォームとして存在する。分泌性アイソフォームは、切り離されるシグナル配列(SS)を含み、その後にN末端アグリンドメイン(NtA)が続く。II型膜貫通結合型は、膜貫通(TM)領域を含み、そのすぐ後に第1のクニッツ型ドメインが続く。第1のEGドメインで始まるアグリンのC末端の75kDaの部分は、筋肉細胞においてアセチルコリン受容体(AChR)クラスター形成活性における完全活性に必要とされるが、最もC末端側の20kDaの断片が、低い作用強度でAChR凝集を誘導するのには十分である。α−ジストログリカン、ヘパリン、いくつかのインテグリン、およびLRP4を含むアグリンの相互作用パートナーについてのいくつかの結合部位は、C末端領域にマッピングされる。大きなヘパラン硫酸側鎖(ロリポップ鎖)は、ヘパリン結合タンパク質、例えば、いくつかの増殖因子についての結合部位である。ロリポップはグリコシル化部位を示す。x、y、zは、アグリンのC末端領域における選択的スプライス部位を割り当てる。x部位(ニワトリおよびカエルでは欠損する)において、挿入された0個、3個、または12個のアミノ酸が存在し得、y部位において、挿入された0個または4個のアミノ酸が存在し得、z部位において、挿入された0個、8個、11個、または19(8+11)個のアミノ酸が存在し得る。「α切断およびβ切断」は、2つの保存されたニューロトリプシン切断部位を示す。ニューロトリプシン切断後のタンパク質分解性断片のおおまかなタンパク質コア質量は上記に示されている。
【0038】
図1に用いられた略語は以下の意味をもつ。SS:シグナル配列;NtA:N末端アグリンドメイン;TM:膜貫通セグメント;K:クニッツ型ドメイン;LE:ラミニンEGF様ドメイン;S/T:セリン/スレオニンリッチなセグメント;SEA:精子タンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリンドメイン;EG:上皮増殖因子様ドメイン;LG:ラミニン球状ドメイン。
【0039】
図2aは、本発明に従って用いられる改変アグリン断片の概略図である。断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニューロトリプシンのβ切断部位は欠失している。
【0040】
図2bは、アグリンのニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/A断片のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニューロトリプシンのβ切断部位は、リジンのアラニンへの突然変異によって欠失している。
【0041】
図2に用いられた略語は以下の意味をもつ。LG:ラミニン球状ドメイン;EG:上皮増殖因子様ドメイン;yおよびzは、アグリンのC末端部分の選択的スプライス部位を示す。線を引いて抹消されたβ切断:ニューロトリプシン抵抗性アグリン断片を与える、ニューロトリプシンについてのβ切断部位における突然変異。
【0042】
図3は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにおけるC44K/Aの精製工程を示すSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。C44K/Aの遺伝子を含むpEAK8ベクターでトランスフェクションされたHEK293細胞由来の培養上清を、Ni2+で標識された10mlのIMACカラムに負荷した。適切な緩衝液でカラムを洗浄した後、結合したタンパク質を、500mMのイミダゾールを含む緩衝液で溶出した(5〜9)。レーン1:Biorad Prescission plusタンパク質マーカー;レーン2:濃縮された培養上清;レーン3:通過画分;レーン4:洗浄画分;レーン5〜9:溶出画分。
【0043】
図4は、C44K/AおよびヒトアグリンC44y4z8のヒトニューロトリプシンでのタンパク質分解性消化を実証するSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。C44K/AまたはヒトアグリンC44y4z8を、ヒトニューロトリプシンと37℃で3.5時間、インキュベートし(1+3)、その後、SDS−PAGEに供した。対照として、アグリン断片を、同じ条件で緩衝液とインキュベートした(2+4)。β切断部位におけるKからAへの突然変異は、アグリン断片の切断を無効にした。レーン1:ヒトニューロトリプシンを添加したC44K/A;レーン2:ヒトニューロトリプシンを添加していないC44K/A;レーン3:ヒトニューロトリプシンを添加したヒトアグリンC44y4z8;レーン4:ヒトニューロトリプシンを添加していないヒトアグリンC44y4z8。
【0044】
図5は、媒体またはC44K/Aで処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す。マウスの体重は、22日目まで実験の全期間を通して毎日決定された。マウスの体重は、媒体で処理された野生型同腹仔に対するパーセンテージとして表されている。処理は1日目から始まり、13日目に終わった。握力は13日目に測定された。
【0045】
図6aおよびbは、媒体(媒体)またはC44K/A(C44K/A)で処理されたサルコペニアマウスについての前肢および後肢の握力を示す。握力は13日目に測定される。種々の処理群の握力は、媒体で処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0046】
図7は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y0z8K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号11)を示す。
【0047】
図8は、ニューロトリプシン抵抗性マウスアグリンC44y0z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【0048】
図9は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z0K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【0049】
図10は、ニューロトリプシン抵抗性マウスアグリンC44y4z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【0050】
図7〜10に示された全ての断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニュートリプシンのβ切断部位は、リジンからアラニンへの突然変異によって欠失している。
【0051】
図11は、ニューロトリプシンアッセイにおいてさらなるC44断片のタンパク質分解性消化を実証するSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。図7〜10に示された種々のC44断片およびヒトアグリンC44y4z8K/A(図2b)をアッセイにおいてヒトニューロトリプシンと共に(hNT+)、およびそれを含まずに(hNT−)、37℃で3.5時間、インキュベートし、その後、SDS−PAGEに供した。対照として、precissionマーカーおよびβ切断部位に突然変異をもたないヒトアグリンC44y0z0を同じ条件でインキュベートした。この場合もやはり、β切断部位におけるKからAへの突然変異が、その突然変異型アグリン断片のニューロトリプシンによる切断を効率的に無効にすることは明らかである。レーン1:precissionマーカー;レーン2:突然変異を含まないC44y0z0(hNT−);レーン3:突然変異を含まないC44y0z0(hNT+);レーン4:ヒトアグリンC44y4z0K/A(hNT−);レーン5:ヒトアグリンC44y4z0K/A(hNT+);レーン6:ヒトアグリンC44y0z8K/A(hNT−);レーン7:ヒトアグリンC44y0z8K/A(hNT+);レーン8:マウスアグリンC44y0z8K/A(hNT−);レーン9:マウスアグリンC44y0z8K/A(hNT+);レーン10:ヒトアグリンC44y4z8(hNT−);レーン11:ヒトアグリンC44y4z8(hNT+);レーン12:マウスアグリンC44y4z8K/A(hNT−);レーン13:マウスアグリンC44y4z8K/A(hNT+)。
【0052】
図12は、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す。マウスの体重は、22日目まで実験の全期間を通して毎日決定された。マウスの体重は、媒体で処理された野生型同腹仔に対するパーセンテージとして表されている。処理は1日目から始まり、13日目に終わった。
【0053】
図13aおよびbは、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢および後肢の握力を示す。握力は13日目に測定される。種々の処理群の握力は、媒体で処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0054】
本出願人らは初めて、サルコペニアマウスが、既知の欠乏に加えて、健康な野生型マウスと比較して除脂肪体重の下降(図5)および握力の低下(図6)も生じることを示した。
【0055】
この事実から始まって、本出願人らは、例えば、図2aに示されているようで、かつ図2bに示されているような配列を含むニューロトリプシン抵抗性アグリンC44K/Aが、図5、6a、6bに示されているように、サルコペニアマウス、すなわち、ニューロトリプシン過剰発現マウスの体重および握力を増加させ得ることを示すことができた。
【0056】
回復効果は、C44K/A断片の皮下投与後に達成される。効果は、注射部位へ局所的に限定されず、全体重および筋力に有益な効果を生じる。処理されたサルコペニアマウスは、より強くなり、前肢および後肢の両方における握力が増加している。
【0057】
C44K/Aの投与はまた、異所性AChRクラスターにおいて筋線維の神経再支配を促進し、新しく形成されたNMJの安定化および成熟をもたらすであろう。したがって、C44K/Aの投与はまた、筋線維または筋肉の神経再支配が必要とされるリハビリテーション過程において有益であろう。
【0058】
本明細書で特許請求されているニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンと対照的に、(WO97/21811に記載されているような)ニューロトリプシンについての無傷の切断部位を有するアグリン断片は、それらがニューロトリプシンによって迅速に分解され、それらのAChRクラスター形成活性を喪失するであろうため、有益ではないであろう。
【0059】
アグリンは、2つの部位でニューロトリプシンによって切断される(図1)。α切断部位は、アルギニン1102(R1102)とアラニン1103(A1103)の間に位置する。β切断部位は、リジン1859(K1859)とセリン1860(S1860;番号付けはヒトアグリンNP_940978に対応する)の間に位置する。β部位におけるニューロトリプシンによるアグリン切断は、S1860からC末端までの範囲である約20kDaの断片(アグリンC22)を生じる。
【0060】
本発明に従って用いられるニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンは、アグリンのLG2、EG4、およびLG3ドメインからなるC末端アグリン断片であり、ニューロトリプシンの不活性化されたβ切断部位を内在する。そのP1リジン残基(K1859)は、アラニンに突然変異されており、そのことが、ニューロトリプシンがこの部位でアグリンをもはや切断することができないことの原因となっている(図3)。
【0061】
本発明において定義されているようなニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、配列番号3の44kDaのC末端アグリン断片であり、その塩基性アミノ酸リジン1859(NP_940978)(または配列番号3におけるリジン227)がアラニンに突然変異されて、ニューロトリプシンによって切断されないアグリン断片を生じる。この断片はさらに、アミノ酸P1751とV1752(NP_940978)の間に位置するy部位において挿入を含まなくてもよく、またはアミノ酸S1884とE1885(NP_940978)の間に位置するz部位において挿入を含まなくてもよいし、8個、11個、もしくは19個のアミノ酸の挿入を含んでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。y部位における挿入される配列は、KSRK(y4、配列番号5)、VLSASHPLTVSGASTPR(y17、配列番号6)、およびKSRKVLSASHPLTVSGASTPR(y21、配列番号7)、ならびにz部位において、ELANEIPV(z8、配列番号8)、PETLDSGALHS(z11、配列番号9)、またはELANEIPVPETLDSGALHS(z19、配列番号10、配列番号8と配列番号9の組み合わせ)であってもよい。
【0062】
本出願において、ヒトアグリンC44y4z8に言及される場合には、そのようなアグリン断片は、配列番号3に示された断片に対応するものとし、ただし、示された配列の位置227のアラニンがヒトアグリンC44y4z8におけるリジンによって置き換えられているという唯一の違いをもつ。
【0063】
本発明において、用語「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」もまた、y部位に挿入が導入されておらず、もしくはz部位に挿入が導入されておらず、または8個のアミノ酸挿入の代わりに、配列番号9および配列番号10に対応する11個もしくは19個のアミノ酸挿入がz部位に挿入されている、配列番号3によって定義されるタンパク質のアグリンバリアントを含む。これはまた、y部位およびz部位に可能なアミノ酸を導入することによって生じる全ての可能なバリアントの組み合わせを含む。
【0064】
用語「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」はまた、N末端またはC末端に追加のアミノ酸を含む配列番号3のアグリン断片を含む。N末端におけるそのような追加のアミノ酸は、例えば、組換え合成および適切な細胞における発現による調製方法により存在する。「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」の定義に該当するそのようなタンパク質の例は、実施例1により調製されたタンパク質C44K/A配列番号4であり、それは、精製を単純化するためにprescissionプロテアーゼ切断部位と共にHis8タグを含む(図4)。
【0065】
アグリンの天然N末端に至るまでの、アグリンの1つまたは複数のドメインによるN末端における伸長を含む、ニューロトリプシンによって切断され得ないタンパク質や、加えて、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンのグリコシル化された、または他の様式で、翻訳後に、酵素的に、もしくは化学的に改変されたタンパク質バリアントも含まれる。
【0066】
実施例に示されているように、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、ニューロトリプシンの過剰発現によって引き起こされたサルコペニア表現型を回復する能力を有する。
【0067】
運動神経によるニューロトリプシンの不自然な高分泌は、LRP4と複合体化されたアグリンの過剰消化を引き起こすため、MuSKを介してAChRクラスター形成を誘導する適切なシグナル伝達が消失する。これは、NMJの損失、その後、対応する筋線維の損失、およびサルコペニアをもたらす。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、LRP4のアゴニストとして働くことができ、MuSK経路を刺激する。ニューロトリプシンによる切断が起こり得ないため、その複合体は安定したままであり、シグナル伝達は長期間、維持される。これは、AChRの発現およびNMJの維持をもたらす。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、ニューロトリプシンのアクセスによって引き起こされるサルコペニアの処置に役立ち、NMJの一般的な不安定化が認められる疾患においても助けとなる可能性がある。
【0068】
サルコペニアの処置のためのニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の効果の根底にある新しい機構は、神経由来不適応の治療であり、筋線維または筋肉全体の代謝に影響を及ぼそうとする試みではない。
【0069】
本発明はまた、脊髄損傷後のリハビリテーション処置のための、例えば、使用依存性治療の増強のためのニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンの使用に関する。そのような治療は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8により、AChRクラスター形成を促進するその能力のおかげで増強することができ、無傷NMJを維持し、または筋線維上の前もって形成された異所性AChRクラスターへの成長中の神経終末の付着を促し、運動に必要とされる新しいNMJの生成を促進する。
【0070】
さらにニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の産生が記載され、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8をコードするDNAが適切な発現系において発現し、その後、生じたタンパク質が精製される。いくつかの原核生物および真核生物の発現系がニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の産生および分泌に適している。原核生物発現系には、大腸菌における発現が挙げられるが、それに限定されない。真核生物発現系には、マウス骨髄腫細胞における発現、昆虫細胞におけるバキュロウイルス媒介性発現、加えて、ヒト胚性腎(HEK)細胞における発現、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における一過性発現、およびピキア・パストリスにおける安定発現が挙げられる。これらの系は、上清における混入タンパク質の量を低下させるための無血清条件に容易に適応でき、かつラージスケール産生に適応できるという利点をもつ。加えて、様々な細胞系を用いてもよく、それらには、HEK293T細胞およびHEK293細胞、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、H9細胞、ジャーカット細胞、NIH3T3細胞、C127細胞、CV1細胞、CAP細胞、またはSF細胞が挙げられる。
【0071】
ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の精製について、標準タンパク質精製テクノロジーが適用される。Hisタグ付きタンパク質は、IMACを用いて精製することができるが、イオン交換クロマトグラフィーまたはヘパリンカラムを用いるアフィニティー精製も同様に用いることができる。アグリンのC末端部分に対して産生された抗体による精製もまた用いることができる。その後、溶出されたタンパク質はさらに、ヒドロキシアパタイトカラムを用いて、またはゲル濾過により精製することができる。
【0072】
以下の実施例は、本発明を例証するが、それに限定されない。これらの実施例を読む当業者は、他の関連した条件を適用することができるであろうし、これらもまた本発明の範囲内にある。
【実施例1】
【0073】
<ニューロトリプシン抵抗性の44kdのヒトアグリンC末端断片(C44K/A)のクローニング>
初めに、N末端NtAドメインを欠くこと以外は完全長ヒトアグリンy0z0(ヒトアグリンy0z0デルタNTAはアクセッション番号NP_940978のタンパク質配列における位置K156から始まる)を、PCRによって、ヒトカルシンテニン−1の分泌シグナルのコード配列を含むpEAK8ベクター中に適切な制限部位およびプライマーを介してクローン化した(Reifら、2007)。ヒトアグリンについての鋳型として、ベクターpCMV−XL5−Agrin(Origene USAから購入)を用いた。
【0074】
その後に続く2ステップにおいて、y4z8挿入に必要とされる対応するコドンを、標準技術を用いる部位特異的突然変異誘発により導入し、その結果として、完全長ヒトアグリンy4z8デルタNtAを含むpEAK8ベクターが生じた。
【0075】
このベクターを鋳型として用い、44kdのヒトアグリンC末端断片をコードする遺伝子を増幅し、その翻訳されたタンパク質のN末端にHis8タグのコード領域およびprescissionプロテアーゼ切断部位を導入した。
【0076】
アグリンの切断部位βにおいてリジンのコドンの場所にアラニンのコドンを導入する、プライマーを用いる急速交換(quick change)突然変異誘発段階において、ニューロトリプシン抵抗型のヒトアグリンC44K/Aが生成された。
【0077】
このプラスミドは、トランスフェクションされた細胞の培養上清において、(シグナル配列を含まずに)アグリン部分のアミノ酸がロイシン21から始まる、配列番号4の配列を有するタンパク質を産生する。
【実施例2】
【0078】
<ヒトアグリンC44およびニューロトリプシン抵抗性C44K/Aの発現および精製>
Excell293培地で1×106細胞/mlの密度まで増殖した500mlのHEK293細胞を、Sorvall−RC5C遠心機における100×gで30分間の遠心分離によってペレット化した。37℃に予熱された500mlのRPMI1640培地中に細胞を再懸濁した。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の発現のための1.25mgの挿入断片含有pEAK8を、25mlの150mM NaCl中に希釈した。25kDaの3.75mgのポリエチレンイミン(PEI)を25mlの150mM NaCl中に希釈した。両方の溶液をプールし、室温で10分間、インキュベートした。後で、1000mlのスピナーフラスコに移された細胞懸濁液に、この溶液を加えた。細胞懸濁液を、加湿雰囲気下の5%CO2および37℃でのインキュベーター内に置かれた撹拌プラットフォームにおいて75rpmで7日間、インキュベートした。
【0079】
7日後、培養上清を、Sorvall−RC5C遠心機における500rpmでの遠心分離によって回収した。残存する粒子を、0.22umのMillipore滅菌濾過装置による濾過によって除去した。濾過された培養上清を、PelliconのPLCGC−10kDaカットオフ接線流カートリッジを用いて10回、濃縮し、20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClに対して少なくとも1:1000で透析した。Ni2+で標識された10mlの卓上His選択カラムを用いてHis8タグを利用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に供した。濃縮および透析された細胞培養上清の負荷後、カラムを100mlの透析緩衝液で洗浄し、結合したタンパク質を500mMのイミダゾールを含む10mlの透析緩衝液で5回、溶出した。精製の成功の後、SDS−PAGEを行った(図D)。陽性画分をプールし、Sigma−4K15遠心機において3000×gでAMICONの30kDaカットオフ濾過装置を用いて10回、濃縮し、20mMのMOPS(pH8.5)、200mMのNaClに対して1:10000で透析した。精製されたC44K/Aの濃度を、0.725cm2/mgの吸光係数を用いるUV分光分析法によって決定した。
【実施例3】
【0080】
<prescissionプロテアーゼ切断によるHis8タグの除去>
His8タグが除去されるべきである場合、0.5mlのタンパク質溶液の緩衝液を50mMのTris−HCL(pH7.2)、150mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのNa2EDTAに、その緩衝液であらかじめ平衡化したNAP−5カラムを用いて交換した。タンパク質溶液を、1mlの同じ緩衝液中に溶出した。1μlの1M DTTをタンパク質溶液に加え、チューブを数回、指ではじくことによって混合した。20μlのprescissionプロテアーゼ(1U/μl)を加え、チューブを、数回、指ではじくことによって混合した。反応を、4℃で一晩、行った。0.5mlの重力流グルタチオンセファロースカラムを、1mMのDTTを追加した5mlのPBSで平衡させた。消化されたタンパク質溶液を負荷し、通過画分を収集した。カラムを、1mMのDTTを追加した1mlのPBSで3回、洗浄し、その通過画分を、前の通過画分と同じチューブに収集した。収集された通過画分を、DTTおよびEDTAを除去するために、20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClの5lに対して2時間を2回、透析した。
【0081】
切断されたHis8タグを除去するために、2回目のIMACを実施した。Ni2+イオンであらかじめ標識された1mlのキレート化セファロースFFカラムを、5mlの20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClで平衡させた。透析されたタンパク質溶液をそのカラムにアプライし、通過画分を収集した。カラムを1mlの20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClで3回洗浄し、通過画分を同じチューブに収集した。プールされた画分を、AMICONの30kDaカットオフ濃縮器で0.5mlに濃縮し、緩衝液を、20mMのMOPS(pH8.5)、200mMのNaClであらかじめ平衡化したNAP−5カラムを用いて交換した。濃度を、0.725cm2/mgの吸光係数を用いるUV分光分析法によって決定した。タンパク質を、さらなる実験のために新鮮な状態で用い、または使用まで−80℃で保存した。対応するタンパク質のタンパク質配列は、グリシン19から始まる配列番号3の部分に対応する。
【実施例4】
【0082】
<ヒトニューロトリプシンによるC44およびC44K/Aのインビトロ消化>
a)ニューロトリプシンがニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8K/Aを消化することができないことを実証するために、そのタンパク質をニューロトリプシンアッセイに供した。対照として、ヒトアグリンC44y4z8を用いた。アッセイにおいて、アグリンC44基質を1μMの濃度で用い、ヒトニューロトリプシンを加えた。反応を、20mMのMOPS(pH 8.3)、150mMのNaCl、5mMのCaCl2、0.1%PEG6000中で実施した。消化を37℃で6時間、行った。そのセットアップを4〜12%NuPAGE−SDSゲルに負荷し、Syproルビーで染色した(図4)。
【0083】
b)a)と類似したさらなるアッセイにおいて、図2bおよび7〜10に示されているようなC44K/A断片がニューロトリプシンによって消化されないことが示された(図11)。
【実施例5】
【0084】
<マウスにおけるニューロトリプシン抵抗性ヒトC44K/Aの投与>
実験に用いられるサルコペニアマウスモデルは、C57BL/6NCRLバックグラウンドにおけるthy−1作動性ニューロトリプシン過剰発現体(Stephanら、2008)およびそれらの野生型同腹仔である。雄および雌の両方の動物が含まれ、この年齢での若いマウスにおいて性別間で体重および筋力に違いがないためである。マウスはP8(生後8日目)で実験に入った。
【0085】
群あたり3匹のマウスで、以下の3群を用いた。1.媒体処理される野生型マウス、2.C44K/Aで処理されるサルコペニアマウス(M491S)、3.媒体処理されるサルコペニアマウス。
【0086】
マウスに、C44K/Aまたは媒体を6.4mg/kg/日の総用量で皮下注射する。投薬は1日目に始まり、13日目まで続いた。実験における全てのマウスについて、体重を毎日1回、測定した。体重は、各処理群について平均され、実験日ごとにプロットされる(図5)。実験の開始時点で、サルコペニアマウスにおいて体重のわずかな低下がすでに見られる。サルコペニアのC44K/Aでの処理は、媒体処理マウスと比較して体重の有意な増加をもたらした。C44K/Aで処理されたサルコペニアマウスは完全に回復し、さらに野生型同腹仔に観察されたのと同じ発育であった。ヒトにおいて、虚弱患者は、1年あたり5kgを超える体重減少に悩まされている(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。これは、全体重の約7%の損失に相当する。媒体対照で処理されたサルコペニアマウスは、著しい体重低下を示した。実験中、サルコペニアマウスは体重が約5%減少した。
【実施例6】
【0087】
<握力の測定>
実施例5に記載された実験の13日目において、前肢および後肢の握力を、精密フォースゲージにより、加えられたピークフォースを保持するデジタルフォースメーター(Columbus Instruments、Columbus OH)で測定した。フォースメーターは頑丈な土台に固定され、フォーストランスデューサと共に、約1mmの直径の三角形の引っ張り棒に接続される。データは、コンピュータとのRS232接続を通してオンラインで収集され、Grip Strength Meterソフトウェア(Columbus Instruments)により.datファイルで保存され、データ管理および統計解析のためにexcelに転送された。最大フォースの測定についての単位としてグラム(g)が用いられた。測定前、マウスを実験室に移動させ、10分間慣れさせた。各マウスを、約3mmの直径の金属棒をその前足で握るようにさせた。その後、マウスを、フォースメーターから顔を背けるように、引っ張り棒に接近させ、それの前足または後足で引っ張り棒のワイヤーを握るようにさせた。マウスを、その尾で引っ張り棒と平行にフォースメーターの方へ、約10cm/秒の速度で引っ張った。
【0088】
引っ張りは、マウスの前肢、それぞれ、後肢が放すまで一定の速度に保たれた。実験セッションは、後肢握力についての5回の試行からなった。試行と試行の間に、マウスに約1分間の休息時間を許した。実際の実験セッションの少なくとも1日前に、マウスを記載された手順で訓練した。各実験セッションを、望ましくない実験的バイアスを避けるために盲検方式で行った。
【0089】
データを、以下の方法で解析した。各マウスについて、最高値および最低値を除外し、残りの3つの値を平均した。その後、データを、各処理群について平均し、媒体処理された野生型群に対して標準化した。
【0090】
13日目に、媒体処理されたサルコペニアマウスは、野生型と比較して約20%の筋力を失っているが、C44K/A処理されたマウスは、媒体処理された野生型と類似した握力を有する。
【0091】
ヒトについて、約20歳の成人が約70歳の個体と比較された場合、筋力の減少は約20〜40%であり、それは90代の個体と比較した場合、50%より上まで増加し得る(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。この実験において、本出願人らは、握力の20%の低下が約14日間、阻止されることを実証している。
【0092】
アグリンの断片がインビボで活性があることが示されているのはこれが最初である。皮下投与後、タンパク質C44K/Aは、身体に分布し、サルコペニア様症状を患っているマウスに有益な効果を発揮した。
【実施例7】
【0093】
<マウスにおけるニューロトリプシン抵抗性ヒトC44y0z8K/Aおよび(マウスアグリンC44y0z8K/A)の投与>
実験に用いられるサルコペニアマウスモデルは再び(実施例5においてのように)、C57BL/6NCRLバックグラウンドにおけるThy−1作動性ニューロトリプシン過剰発現体(Stephanら、2008)およびそれらの野生型同腹仔である。雄および雌の両方の動物が含まれ、この年齢での若いマウスにおいて性別間で体重および筋力に違いがないためである。マウスはP8(生後8日目)で実験に入った。
【0094】
群あたり4匹のマウスで、以下の4群を用いた。1.媒体処理される野生型マウス;2.C44K/A(0,8)で処理されるサルコペニアマウス(M491S);3.マウスアグリンC44(0,8)K/Aで処理されるサルコペニアマウス(M491S);4.媒体処理されるサルコペニアマウス。
【0095】
マウスに、20mg/kg/日の総用量で皮下注射する。投薬は1日目に始まり、13日目まで続いた。実験における全てのマウスについて、体重を毎日1回、測定した。体重は、各処理群について平均され、実験日ごとにプロットされる。媒体処理された野生型と比較したパーセンテージでの相対的体重は、各処理群について示されている(図12)。サルコペニアマウスのヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aでの処理は、媒体処理されたサルコペニアマウスと比較して体重の有意な増加をもたらした。C44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウスは完全に回復し、さらに野生型同腹仔に観察されたのと同じ発育であった。ヒトにおいて、虚弱患者は、1年あたり5kgを超える体重減少に悩まされている(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。これは、全体重の約7%の損失に相当する。媒体対照で処理されたサルコペニアマウスは、著しい体重低下を示した。実験中、サルコペニアマウスは体重が約5%減少した。
【実施例8】
【0096】
<握力の測定>
測定を、実施例6に記載されているように、行った。
【0097】
図13aおよび13bは、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウス、および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢および後肢の握力を示す。握力を13日目に測定する。異なる処理群の握力は、媒体処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0098】
[文献リスト]
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物として用いる改変アグリン断片について言及する。加えて、本発明は、種々の、特に、筋肉疾患または運動ニューロン疾患の処置だけでなく、さらなるニューロトリプシン関連疾患の処置にも用いる薬物の製造のための改変アグリン断片の使用に言及する。さらに、本発明は、種々の疾患の処置における改変アグリン断片の使用に言及する。最後に、本発明は、改変アグリン断片を含む薬学的組成物、および特定の改変アグリン断片に関する。
【背景技術】
【0002】
60歳以上の高齢者は、除脂肪体重の容赦ない下降に直面する。これはごく普通のことであるため、長い間、その根本的な機構を調べることに価値があるとは考えられていなかった。現在、除脂肪体重の加齢性下降は、サルコペニアまたは虚弱(frailty)と呼ばれている。
【0003】
サルコペニアおよび虚弱はどちらも、高齢者における機能性および自立度に関して、非常に関連性の深い実体である。サルコペニアは、その末期に虚弱および身体障害に至る、筋量および筋力における退行性加齢性下降とみなされている。サルコペニア患者の筋量の下降速度は、その疾患に罹っていない人々の下降速度より有意に速い。サルコペニアは静的な状態ではなく、加齢と共に悪化する。それのゆっくりとした発症のため、人々は通常、すでに進行期に達しているときまでサルコペニアに気づかない。
【0004】
サルコペニアの筋量は、筋線維数の連続的な縮小によって特徴づけられる。線維サイズはより不均一であり、線維タイプの群化が観察される。線維タイプの群化は、繰り返される除神経/神経再生によって引き起こされると考えられる。加えて、老化した筋肉は、脂肪および結合組織の浸潤を特徴とする。これ全てが筋力および運動速度の下降の原因となる。多くの筋肉に観察される加齢性変化は、それらの筋肉線維の神経支配における加齢性変化によってある程度、引き起こされると考えられる。老化の間、機能する運動単位(MU)の概算数の有意かつ漸進的な低下が観察される。同様に、MUの実質的損失と関連した明らかな筋力下降が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または重症度の低い型の脊髄性筋萎縮症(SMA)などの運動ニューロン疾患に苦しんでいる個体に観察される。
【0005】
筋線維の除神経/神経再支配のサイクルはシナプス可塑性を必要とする。シナプス可塑性の過程はまだ詳細にはわかっていない。しかしながら、この数年で、神経筋接合部(NMJ)の形成および維持におけるいくつかの重要なプレーヤーが同定された(SongおよびBalice−Gordon、2008)。十分特徴づけられたタンパク質アグリン(BezakovaおよびRuegg、2003)は、発生中のNMJのシナプス後装置の形成および維持を援助することによってシナプス形成において中心的役割を果たす。
【0006】
アグリンは、400〜600kDaの分子量を有する大きなヘパランプロテオグリカンである。(データベースアクセッション番号NP_940978)。タンパク質コアは、約2000個のアミノ酸からなり、その質量は約225kDaである。それは、9個のK(クニッツ型)ドメイン、2個のLE(ラミニン−EGF様)ドメイン、1個のSEA(精子のタンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリン)ドメイン、4個のEG(上皮増殖因子様)ドメイン、および3個のLG(ラミニン球状)ドメインで構成される多ドメインタンパク質である(図1)。アグリンは、非常に重要なタンパク質であり、アグリン欠損マウスは、呼吸不全により出生時に死ぬ。これは、アグリンが筋線維の正常な神経支配に厳重に必要とされるという事実、およびこれらのマウスが正常なNMJを構築することができないという事実によって引き起こされる。
【0007】
アグリンは、いくつかのスプライスバリアントとして存在し、N末端のNtA(N末端アグリン)ドメインを含む分泌性タンパク質として発現することができ、その分泌性タンパク質がアグリンの最も豊富にある形であり、その優勢形は運動ニューロンに発現する。それは、そのニューロンの神経細胞体において産生され、軸索を下へと輸送され、運動神経の軸索終末からNMJのシナプス間隙へ放出される。ここで、それは、LRP4のアゴニストとして働き、基底層の成分になる場合もある。CNSにおいて、たいていのアグリンは、N末端のNtAドメインを欠くN末端における選択的スプライシングによるII型膜貫通タンパク質として発現する(BezakovaおよびRuegg、2003)。
【0008】
アグリンにおけるセリン/スレオニン(S/T)リッチなセグメントは、高度のグリコシル化に関与しており、いくつかのグリコシル化部位、および大質量のプロテオグルカンを生じるグルコサミノグリカン付着部位を含む。第1のEGドメインから始まるアグリンのC末端の75kDaの部分は、筋肉細胞においてアセチルコリン受容体(AChR)クラスター形成活性における完全活性に必要とされるが、最もC末端の20kDaの断片が、AChR凝集を誘導するのに十分である(BezakovaおよびRuegg、2003)。α−ジストログリカン、ヘパリン、いくつかのインテグリン、およびLRP4を含むアグリンの相互作用パートナーについてのいくつかの結合部位は、C末端領域にマッピングされる。大きなヘパラン硫酸側鎖は、ヘパリン結合タンパク質、例えば、いくつかの増殖因子についての結合部位である。
【0009】
ヒトアグリンのC末端部分において、2つの選択的スプライス部位、yおよびzがある。y部位には、0個、4個、17個、または21(4+17)個のアミノ酸の挿入断片が存在する場合があり、z部位では、0個、8個、11個、または19(8+11)個のアミノ酸の挿入断片が存在する場合がある。y部位におけるその4つの挿入アミノ酸の機能は、ヘパリン結合部位を形成することである。運動ニューロンは、主にy4アグリンを発現する。NMJ成熟に関して最も重要なアグリンのスプライス部位はz部位であり、それは、アグリンに、アセチルコリン受容体クラスター形成作用物質として活性がある能力を与える。スプライス部位yにおける4個のアミノ酸の挿入断片の存在下でz部位に8個のアミノ酸の挿入を含む完全長アグリン(y4z8)が、培養筋管クラスター形成アッセイにおいて35pMの最大半量AChRクラスター形成活性を有するアグリンバリアントを生じることはよく知られている。11個のアミノ酸の挿入は、5nMの最大半量AChRクラスター形成活性を生じるが、19個のアミノ酸の挿入は結果として、110pMの最大半量AChRクラスター形成活性を生じる。この部位において挿入がないアグリンは、インビトロ培養筋管上でアセチルコリン受容体をクラスター形成することに活性はない(BezakovaおよびRuegg、2003)。したがって、クラスター形成アッセイにおいて最も活性の高い形のアグリンは、y4z8バリアントであり、それは運動ニューロンによって発現する。
【0010】
LG2、EG4、およびLG3ドメインを含むアグリン(y4z8)の約40kDaのC末端断片は、AChRクラスター形成に活性があり、AchRクラスター形成活性において130pMのEC50をもつことが見出されているが、より短い断片は、より低い活性を有するだけである。z8挿入を含むC末端LG3ドメインは、13nMだけの最大半量AChRクラスター形成活性を示し、その活性は、40kDaの断片の100分の1の率である(BezakovaおよびRuegg、2003)。
【0011】
NMJの発生および成熟中、アグリンは、アセチルコリン受容体のクラスター形成に関与する重要なプレーヤー分子である。NMJが、神経伝達物質のアセチルコリンによって不安定化されるが、運動ニューロンによって分泌されるアグリンは、膜結合受容体型チロシンキナーゼであるMuSKのリン酸化を介して、AChRのクラスターを安定化し、増加させる。アグリンのMuSKとの相互作用は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)関連タンパク質であるLRP4を通して媒介されると仮定される。アグリン(y4z8)がアグリン(y4z0)より約10倍高いLRP4への親和性を有し、そのことが、インビトロ培養筋管アッセイにおいて観察される種々のアグリンのスプライスバリアントの示差的なAChRクラスター形成活性を生じることが見出された。アグリン結合によって、LRP4は、MuSKの自己リン酸化を引き起こし、それが、その後、アセチルコリン受容体の発現およびクラスター形成についてのシグナル伝達系を活性化する。
【0012】
ニューロトリプシンは、脊髄抽出物に見出され、運動ニューロンによって産生される。ニューロトリプシンは、CNSニューロンによって、加えて運動ニューロンによっても産生される分泌性のトリプシン様セリンプロテアーゼである(Stephanら、2008)。ニューロトリプシンは、プロリンリッチ塩基性(PB)セグメントを含むN末端の非触媒性部分、クリングル(KR)ドメイン、4つのスカベンジャー受容体システインリッチ(SRCR)ドメイン、およびC末端のプロテアーゼドメインからなる(Gschwendら、1997)。ヒトにおいて、エクソン7における4bpの欠失は、重篤な非症候性精神遅滞をもたらす。その突然変異は、プロテアーゼドメインを欠く切断型ニューロトリプシンを生じ、したがって、酵素のタンパク質分解性機能を無能にする。
【0013】
現在のところ、アグリンがニューロトリプシンの唯一の知られた標的である。ニューロトリプシンは、アグリンをα部位およびβ部位と呼ばれる2つの別個の部位で切断する(図1)。α部位は、アグリンのSEAドメインからN末端側に位置し、β部位は、アグリンのLG3ドメインの前に配置される。α部位での切断は、4〜12%のビストリスSDSゲルにおいて約130kDaに流れる約100kDaのC末端アグリン断片を生じる。β部位での切断は、そのゲルにおいて約22kDaに流れるC末端LGSドメインを遊離させる(Molinariら、2002;Reifら、2007)。全てのC末端断片は、マウスの脳抽出物および脊髄抽出物に検出することができた(Stephanら、2008)。ニューロトリプシンのノックアウトマウスにおいて、その断片のいずれも検出することができなかった。結果として、ニューロトリプシンは、アグリンを有意な量でその2つの切断部位において切断する唯一のプロテアーゼであるように思われる。ニューロトリプシンによるアグリンの切断は、神経筋可塑性およびリモデリングに寄与する。
【0014】
ニューロトリプシン(NT)過剰発現マウス、いわゆるサルコペニアマウス(muslik、M491S)(Stephanら、2008)は、サルコペニアの早期発症を示す。サルコペニアマウスの体系的分析からの詳細な知見により、ヒトデータに対して良い相関が存在することが実証されている。米国特許出願第12/007,928号は、その動物モデルの記載を示している。簡単に述べれば、サルコペニアマウス(muslik M491S)は以下を示す。
(i)マウス横隔膜の神経線維は、個々の終板に向かって成長すること、
(ii)最終的には個々の終板の消失(すなわち、シナプス前部およびシナプス後部の喪失)をもたらす、横隔膜筋肉上の断片化された終板、
(iii)ニューロトリプシン過剰発現動物におけるマウスヒラメ筋の線維数の低下および線維サイズの均一性の減少。サルコペニアマウスは、線維数の低下(約30%)および線維サイズの不均一性の増加がある。
【0015】
国際公開第97/21811号において、筋肉を冒す疾患の処置方法においてアグリンまたはアグリン断片を用いることが提案されている。しかしながら、そのような試みは、今日まで成功したということは示されていない。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、機能性NMJおよび/または運動単位(MU)の低下を含む種々の筋肉障害についての治療を提供することである。
【0017】
一般的に、本発明は、ニューロトリプシンのタンパク質分解活性に抵抗性であり、かつサルコペニアまたはさらなるニューロトリプシン関連疾患を患っているヒトの処置のための生物学的治療試薬として働く、遺伝子工学的に操作されたヒトまたはマウスの新規アグリンタンパク質バリアントを提供する。ニューロトリプシンの活性に対する抵抗性は、例えば、アグリン断片の切断部位、特にβ切断部位を適宜、改変することによって、または断片から切断部位を除去することによって、達成することができる。
【0018】
本出願人の調査により、アグリン断片のインビボ活性が、LG2およびLG3の両方のドメインが一緒に存在することに主に依存することが示されている。WO97/21811は、LG3単独についてのAChRクラスター形成のインビトロ活性を示した。しかしながら、LG3のインビボ活性は示すことができなかった。同様に、LRP4単独の活性化は完全なインビボ活性を達成するのに十分ではない。
【0019】
それゆえに、本発明の1つの重要な特徴は、ドメインLG2およびLG3が、インビボでニューロトリプシンの活性のせいで分離されないことである。そのような分離を避けるために、本発明に従って用いられるアグリン断片は、それが、ドメインLG2とドメインLG3の間に存在する天然のアグリンにおけるニューロトリプシンのβ切断部位をもはや含まないように改変されている。
【0020】
本出願において用いられる場合、LG2およびLG3という用語は、上記で述べられているように、これらのドメインの可能性のある全ての種々のスプライスバリエーションを含むものとする。例えば、配列番号1は、y部位に4個のアミノ酸の挿入断片(配列番号5)を有するドメインLG2のヒト配列を示し、一方、配列番号2は、z部位に8個のアミノ酸の挿入断片(配列番号8)を有するドメインLG3の配列を示す。配列番号1に示されているように、ドメインLG2において、y部位はプロリン115とバリン120の間にある。そのバリンの位置はyスプライス部位における挿入断片の長さに依存して変化し得ることは理解されている。配列番号2に示されているように、ドメインLG3において、z部位は、セリン19とグルタミン酸28の間にある。ここでもまた、そのグルタミン酸の位置はzスプライス部位における挿入断片の長さに依存して変化し得ることは明らかである。言及されたスプライス部位における挿入断片の配列についてのさらなる例は下記に示されている。
【0021】
追加として、生物活性に影響しない配列のバリエーションは可能であるため、本発明は、ドメインLG2およびLG3の種々のスプライスバリアントの示された配列に限定するものではなく、少なくとも90%、好ましくは95%の同一性を有するそれらのバリアントもまた含むものとする。
【0022】
本発明は、インビボ活性を有し、かつ同時にインビボでニューロトリプシンによって切断されないアグリン断片を提供する。
【0023】
本出願に用いられる場合のインビボ活性は、サルコペニアマウス(muslik M491S)における全体重減少および筋力低下の予防から全体重および筋力の回復まで及ぶ効果を含むものとする。
【0024】
本出願に用いられる場合のアグリン断片という用語は、ニューロトリプシンについての少なくとも認識部位βにおける、および場合により部位αにおける塩基性アミノ酸のアルギニンおよび/またはリジンが、任意の他のアミノ酸へ突然変異して、少なくとも部分的にニューロトリプシン抵抗型のアグリンを生じている、分泌型または膜貫通型のアグリンを網羅する。それは、少なくともアグリンのLG3およびLG2ドメインを含む断片だけでなく、追加として、アグリンに天然で存在する少なくとも1つのさらなるドメイン、例えば、LG1およびEG1〜4ドメインを含む断片も包含する。
【0025】
または、アグリン断片は、ニューロトリプシンまたはニューロトリプシン様セリンプロテアーゼによるタンパク質分解性切断を阻止するように、化学的に改変することができる。
【0026】
追加として、本発明に該当するアグリン断片は、スプライス部位yおよびzにおいて任意の天然または非天然で挿入されるアミノ酸を含むものとする。
【0027】
一実施形態において、本発明は、少なくともニューロトリプシンβ切断部位を含むC末端アグリン断片であって、この切断部位が、ニューロトリプシンまたはニューロトリプシン様プロテアーゼがそれを切断できないように改変されている、C末端アグリン断片を対象とする。ニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/Aと呼ばれる特に好ましい改変アグリン断片は、図2bに示された配列番号3によるアミノ酸配列を含む。略語K/Aは、β切断部位におけるK(リジン)からA(アラニン)への突然変異を表す。C44y0z8K/A(ヒト)、C44y0z8K/A(マウス)、C44y4z0K/A(ヒト)、およびC44y4z8K/A(マウス)と呼ばれる、さらなる好ましい改変アグリン断片は、図7〜10に示された配列番号11〜14によるアミノ酸配列を含む。
【0028】
そのようなアグリン断片は、実施例においてアグリン断片C44y4z8K/Aについて記載されているように、通常の組換え操作によって得ることができる。それらの実験について、本出願人らは、N末端に導入されたHis8を用いることによって精製された断片を用いた。本文ではC44K/Aと呼ばれる断片は、配列番号4による配列を有する。
【0029】
ニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/AとC44K/Aの唯一の違いは、後者のタンパク質が追加として、断片を試験する前に除去されなかったHis8−タグを含むことである。
【0030】
実施例に示されているように、本発明による改変アグリン断片は、サルコペニアを患っているマウスにおいて筋肉発生を誘導することができる。それゆえに、本発明の1つの重要な態様は、特許請求されているアグリン断片の、薬物としての使用である。
【0031】
本発明のさらなる態様は、非限定的に、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含む、神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患の処置のための、またはそれらの処置用の薬物の製造のための改変アグリン断片の使用である。
【0032】
言及された疾患は別として、改変アグリン断片は、一般的に、ニューロトリプシンレベルが、例えば過剰発現によって上昇している全ての疾患の処置に用いることができる。
【0033】
さらなる態様は、長期の不動状態後に起こり得る、筋量および筋力の喪失を伴う筋肉の廃用性萎縮(筋萎縮症)の処置である。長期不動状態の例は、長期のベッドでの療養、または体の部分、例えば、手足にギブスをはめていること、または肺疾患を患う患者における機械的人工換気である。筋量の萎縮を引き起こす多くの疾患および状態もある。例えば、がんやAIDSなどの疾患は、「悪液質」と呼ばれる消耗症候群を誘発し、その消耗症候群は、重篤な筋萎縮が顕著に見られる。この型の萎縮は、その状態が重篤でない限り、運動で逆転させることができる。廃用性萎縮は、神経筋接合部におけるリモデリングを引き起こすことが知られている。観察される神経筋変化および可塑性は、老化した(サルコペニア性)NMJについてだけでなく、廃用性萎縮についての特徴でもある。
【0034】
本発明は、サルコペニアおよび筋肉疾患を処置するための、薬学的に許容される媒体に本発明による改変アグリン断片を含む薬学的組成物を提供する。そのような処置は、積極的な運動トレーニングまたは栄養最適化を含む治療的アプローチと組み合わせてもよい。
【0035】
1つの好ましい投与様式は皮下注射であることはわかっている。好ましくは、そのための薬学的組成物は、そのような注射を可能にする担体を含む。しかしながら、その断片を筋肉内に、または静脈内に、または髄腔内に、または経口で、または経皮的に、または経上皮的に、または肺内に、または鼻腔内に投与することも考えられる。以下の製剤または装置(マイクロカプセル化、マイクロプロジェクションリポソーム、アグリン断片のPEG化もしくはPEG化誘導体、またはナノ粒子)を用いてもよい。そのような薬学的組成物もまた本発明に網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アグリンのドメイン構造の概略図である。
【図2a】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44の概略図である。
【図2b】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z8のアミノ酸配列(配列番号3)を示す図である。
【図3】IMACによるC44K/A(配列番号4)の精製を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図4】C44K/AおよびヒトアグリンC44y4z8のヒトニューロトリプシンでのタンパク質限定分解性消化を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図5】C44K/Aまたは媒体で処理されたマウスの体重の進展を示すグラフである。
【図6a】C44K/Aまたは媒体で処理された野生型同腹仔マウスおよびサルコペニアマウスにおける実験の13日目での前肢の握力を示す図である。
【図6b】C44K/Aまたは媒体で処理された野生型同腹仔マウスおよびサルコペニアマウスにおける実験の13日目での後肢の握力を示す図である。
【図7】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y0z8K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号11)を示す図である。
【図8】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y0z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号12)を示す図である。
【図9】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z0のアミノ酸配列(配列番号13)を示す図である。
【図10】ニューロトリプシン抵抗性アグリンC44y4z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号14)を示す図である。
【図11】C44K/A断片のタンパク質限定分解性消化を示すSDS−PAGEゲルを表示する図である。
【図12】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す図である。
【図13a】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢の握力を示す図である。
【図13b】媒体(媒体)またはヒトC44K/A(0.8)またはマウスC44K/A(0.8)で処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての後肢の握力を示す図である。
【0037】
図1は、アグリンの概略図である。アグリンは、約225kDaのコアタンパク質質量を有する。それは、9個のK(クニッツ型)ドメイン、2個のLE(ラミニン−EGF様)ドメイン、1個のSEA(精子のタンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリン)ドメイン、4個のEG(上皮増殖因子様)ドメイン、および3個のLG(ラミニン球状)ドメインで構成される多ドメインタンパク質である。SEAドメインの両側に、セリン/スレオニンリッチな(S/T)領域が見出される。アグリンはいくつかのアイソフォームとして存在する。分泌性アイソフォームは、切り離されるシグナル配列(SS)を含み、その後にN末端アグリンドメイン(NtA)が続く。II型膜貫通結合型は、膜貫通(TM)領域を含み、そのすぐ後に第1のクニッツ型ドメインが続く。第1のEGドメインで始まるアグリンのC末端の75kDaの部分は、筋肉細胞においてアセチルコリン受容体(AChR)クラスター形成活性における完全活性に必要とされるが、最もC末端側の20kDaの断片が、低い作用強度でAChR凝集を誘導するのには十分である。α−ジストログリカン、ヘパリン、いくつかのインテグリン、およびLRP4を含むアグリンの相互作用パートナーについてのいくつかの結合部位は、C末端領域にマッピングされる。大きなヘパラン硫酸側鎖(ロリポップ鎖)は、ヘパリン結合タンパク質、例えば、いくつかの増殖因子についての結合部位である。ロリポップはグリコシル化部位を示す。x、y、zは、アグリンのC末端領域における選択的スプライス部位を割り当てる。x部位(ニワトリおよびカエルでは欠損する)において、挿入された0個、3個、または12個のアミノ酸が存在し得、y部位において、挿入された0個または4個のアミノ酸が存在し得、z部位において、挿入された0個、8個、11個、または19(8+11)個のアミノ酸が存在し得る。「α切断およびβ切断」は、2つの保存されたニューロトリプシン切断部位を示す。ニューロトリプシン切断後のタンパク質分解性断片のおおまかなタンパク質コア質量は上記に示されている。
【0038】
図1に用いられた略語は以下の意味をもつ。SS:シグナル配列;NtA:N末端アグリンドメイン;TM:膜貫通セグメント;K:クニッツ型ドメイン;LE:ラミニンEGF様ドメイン;S/T:セリン/スレオニンリッチなセグメント;SEA:精子タンパク質、エンテロキナーゼ、およびアグリンドメイン;EG:上皮増殖因子様ドメイン;LG:ラミニン球状ドメイン。
【0039】
図2aは、本発明に従って用いられる改変アグリン断片の概略図である。断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニューロトリプシンのβ切断部位は欠失している。
【0040】
図2bは、アグリンのニューロトリプシン抵抗性C44y4z8K/A断片のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニューロトリプシンのβ切断部位は、リジンのアラニンへの突然変異によって欠失している。
【0041】
図2に用いられた略語は以下の意味をもつ。LG:ラミニン球状ドメイン;EG:上皮増殖因子様ドメイン;yおよびzは、アグリンのC末端部分の選択的スプライス部位を示す。線を引いて抹消されたβ切断:ニューロトリプシン抵抗性アグリン断片を与える、ニューロトリプシンについてのβ切断部位における突然変異。
【0042】
図3は、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにおけるC44K/Aの精製工程を示すSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。C44K/Aの遺伝子を含むpEAK8ベクターでトランスフェクションされたHEK293細胞由来の培養上清を、Ni2+で標識された10mlのIMACカラムに負荷した。適切な緩衝液でカラムを洗浄した後、結合したタンパク質を、500mMのイミダゾールを含む緩衝液で溶出した(5〜9)。レーン1:Biorad Prescission plusタンパク質マーカー;レーン2:濃縮された培養上清;レーン3:通過画分;レーン4:洗浄画分;レーン5〜9:溶出画分。
【0043】
図4は、C44K/AおよびヒトアグリンC44y4z8のヒトニューロトリプシンでのタンパク質分解性消化を実証するSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。C44K/AまたはヒトアグリンC44y4z8を、ヒトニューロトリプシンと37℃で3.5時間、インキュベートし(1+3)、その後、SDS−PAGEに供した。対照として、アグリン断片を、同じ条件で緩衝液とインキュベートした(2+4)。β切断部位におけるKからAへの突然変異は、アグリン断片の切断を無効にした。レーン1:ヒトニューロトリプシンを添加したC44K/A;レーン2:ヒトニューロトリプシンを添加していないC44K/A;レーン3:ヒトニューロトリプシンを添加したヒトアグリンC44y4z8;レーン4:ヒトニューロトリプシンを添加していないヒトアグリンC44y4z8。
【0044】
図5は、媒体またはC44K/Aで処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す。マウスの体重は、22日目まで実験の全期間を通して毎日決定された。マウスの体重は、媒体で処理された野生型同腹仔に対するパーセンテージとして表されている。処理は1日目から始まり、13日目に終わった。握力は13日目に測定された。
【0045】
図6aおよびbは、媒体(媒体)またはC44K/A(C44K/A)で処理されたサルコペニアマウスについての前肢および後肢の握力を示す。握力は13日目に測定される。種々の処理群の握力は、媒体で処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0046】
図7は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y0z8K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号11)を示す。
【0047】
図8は、ニューロトリプシン抵抗性マウスアグリンC44y0z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号12)を示す。
【0048】
図9は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z0K/A(h)のアミノ酸配列(配列番号13)を示す。
【0049】
図10は、ニューロトリプシン抵抗性マウスアグリンC44y4z8K/A(m)のアミノ酸配列(配列番号14)を示す。
【0050】
図7〜10に示された全ての断片は、アグリンのC末端ドメインLG2、EG4、およびLG3を含む。ニュートリプシンのβ切断部位は、リジンからアラニンへの突然変異によって欠失している。
【0051】
図11は、ニューロトリプシンアッセイにおいてさらなるC44断片のタンパク質分解性消化を実証するSyproルビー染色されたSDS−PAGEゲルである。図7〜10に示された種々のC44断片およびヒトアグリンC44y4z8K/A(図2b)をアッセイにおいてヒトニューロトリプシンと共に(hNT+)、およびそれを含まずに(hNT−)、37℃で3.5時間、インキュベートし、その後、SDS−PAGEに供した。対照として、precissionマーカーおよびβ切断部位に突然変異をもたないヒトアグリンC44y0z0を同じ条件でインキュベートした。この場合もやはり、β切断部位におけるKからAへの突然変異が、その突然変異型アグリン断片のニューロトリプシンによる切断を効率的に無効にすることは明らかである。レーン1:precissionマーカー;レーン2:突然変異を含まないC44y0z0(hNT−);レーン3:突然変異を含まないC44y0z0(hNT+);レーン4:ヒトアグリンC44y4z0K/A(hNT−);レーン5:ヒトアグリンC44y4z0K/A(hNT+);レーン6:ヒトアグリンC44y0z8K/A(hNT−);レーン7:ヒトアグリンC44y0z8K/A(hNT+);レーン8:マウスアグリンC44y0z8K/A(hNT−);レーン9:マウスアグリンC44y0z8K/A(hNT+);レーン10:ヒトアグリンC44y4z8(hNT−);レーン11:ヒトアグリンC44y4z8(hNT+);レーン12:マウスアグリンC44y4z8K/A(hNT−);レーン13:マウスアグリンC44y4z8K/A(hNT+)。
【0052】
図12は、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウス(491S)および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての全体重の進展を示す。マウスの体重は、22日目まで実験の全期間を通して毎日決定された。マウスの体重は、媒体で処理された野生型同腹仔に対するパーセンテージとして表されている。処理は1日目から始まり、13日目に終わった。
【0053】
図13aおよびbは、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウスおよび媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢および後肢の握力を示す。握力は13日目に測定される。種々の処理群の握力は、媒体で処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0054】
本出願人らは初めて、サルコペニアマウスが、既知の欠乏に加えて、健康な野生型マウスと比較して除脂肪体重の下降(図5)および握力の低下(図6)も生じることを示した。
【0055】
この事実から始まって、本出願人らは、例えば、図2aに示されているようで、かつ図2bに示されているような配列を含むニューロトリプシン抵抗性アグリンC44K/Aが、図5、6a、6bに示されているように、サルコペニアマウス、すなわち、ニューロトリプシン過剰発現マウスの体重および握力を増加させ得ることを示すことができた。
【0056】
回復効果は、C44K/A断片の皮下投与後に達成される。効果は、注射部位へ局所的に限定されず、全体重および筋力に有益な効果を生じる。処理されたサルコペニアマウスは、より強くなり、前肢および後肢の両方における握力が増加している。
【0057】
C44K/Aの投与はまた、異所性AChRクラスターにおいて筋線維の神経再支配を促進し、新しく形成されたNMJの安定化および成熟をもたらすであろう。したがって、C44K/Aの投与はまた、筋線維または筋肉の神経再支配が必要とされるリハビリテーション過程において有益であろう。
【0058】
本明細書で特許請求されているニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンと対照的に、(WO97/21811に記載されているような)ニューロトリプシンについての無傷の切断部位を有するアグリン断片は、それらがニューロトリプシンによって迅速に分解され、それらのAChRクラスター形成活性を喪失するであろうため、有益ではないであろう。
【0059】
アグリンは、2つの部位でニューロトリプシンによって切断される(図1)。α切断部位は、アルギニン1102(R1102)とアラニン1103(A1103)の間に位置する。β切断部位は、リジン1859(K1859)とセリン1860(S1860;番号付けはヒトアグリンNP_940978に対応する)の間に位置する。β部位におけるニューロトリプシンによるアグリン切断は、S1860からC末端までの範囲である約20kDaの断片(アグリンC22)を生じる。
【0060】
本発明に従って用いられるニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンは、アグリンのLG2、EG4、およびLG3ドメインからなるC末端アグリン断片であり、ニューロトリプシンの不活性化されたβ切断部位を内在する。そのP1リジン残基(K1859)は、アラニンに突然変異されており、そのことが、ニューロトリプシンがこの部位でアグリンをもはや切断することができないことの原因となっている(図3)。
【0061】
本発明において定義されているようなニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、配列番号3の44kDaのC末端アグリン断片であり、その塩基性アミノ酸リジン1859(NP_940978)(または配列番号3におけるリジン227)がアラニンに突然変異されて、ニューロトリプシンによって切断されないアグリン断片を生じる。この断片はさらに、アミノ酸P1751とV1752(NP_940978)の間に位置するy部位において挿入を含まなくてもよく、またはアミノ酸S1884とE1885(NP_940978)の間に位置するz部位において挿入を含まなくてもよいし、8個、11個、もしくは19個のアミノ酸の挿入を含んでもよく、またはそれらの組み合わせでもよい。y部位における挿入される配列は、KSRK(y4、配列番号5)、VLSASHPLTVSGASTPR(y17、配列番号6)、およびKSRKVLSASHPLTVSGASTPR(y21、配列番号7)、ならびにz部位において、ELANEIPV(z8、配列番号8)、PETLDSGALHS(z11、配列番号9)、またはELANEIPVPETLDSGALHS(z19、配列番号10、配列番号8と配列番号9の組み合わせ)であってもよい。
【0062】
本出願において、ヒトアグリンC44y4z8に言及される場合には、そのようなアグリン断片は、配列番号3に示された断片に対応するものとし、ただし、示された配列の位置227のアラニンがヒトアグリンC44y4z8におけるリジンによって置き換えられているという唯一の違いをもつ。
【0063】
本発明において、用語「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」もまた、y部位に挿入が導入されておらず、もしくはz部位に挿入が導入されておらず、または8個のアミノ酸挿入の代わりに、配列番号9および配列番号10に対応する11個もしくは19個のアミノ酸挿入がz部位に挿入されている、配列番号3によって定義されるタンパク質のアグリンバリアントを含む。これはまた、y部位およびz部位に可能なアミノ酸を導入することによって生じる全ての可能なバリアントの組み合わせを含む。
【0064】
用語「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」はまた、N末端またはC末端に追加のアミノ酸を含む配列番号3のアグリン断片を含む。N末端におけるそのような追加のアミノ酸は、例えば、組換え合成および適切な細胞における発現による調製方法により存在する。「ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8」の定義に該当するそのようなタンパク質の例は、実施例1により調製されたタンパク質C44K/A配列番号4であり、それは、精製を単純化するためにprescissionプロテアーゼ切断部位と共にHis8タグを含む(図4)。
【0065】
アグリンの天然N末端に至るまでの、アグリンの1つまたは複数のドメインによるN末端における伸長を含む、ニューロトリプシンによって切断され得ないタンパク質や、加えて、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンのグリコシル化された、または他の様式で、翻訳後に、酵素的に、もしくは化学的に改変されたタンパク質バリアントも含まれる。
【0066】
実施例に示されているように、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、ニューロトリプシンの過剰発現によって引き起こされたサルコペニア表現型を回復する能力を有する。
【0067】
運動神経によるニューロトリプシンの不自然な高分泌は、LRP4と複合体化されたアグリンの過剰消化を引き起こすため、MuSKを介してAChRクラスター形成を誘導する適切なシグナル伝達が消失する。これは、NMJの損失、その後、対応する筋線維の損失、およびサルコペニアをもたらす。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、LRP4のアゴニストとして働くことができ、MuSK経路を刺激する。ニューロトリプシンによる切断が起こり得ないため、その複合体は安定したままであり、シグナル伝達は長期間、維持される。これは、AChRの発現およびNMJの維持をもたらす。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8は、ニューロトリプシンのアクセスによって引き起こされるサルコペニアの処置に役立ち、NMJの一般的な不安定化が認められる疾患においても助けとなる可能性がある。
【0068】
サルコペニアの処置のためのニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の効果の根底にある新しい機構は、神経由来不適応の治療であり、筋線維または筋肉全体の代謝に影響を及ぼそうとする試みではない。
【0069】
本発明はまた、脊髄損傷後のリハビリテーション処置のための、例えば、使用依存性治療の増強のためのニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンの使用に関する。そのような治療は、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8により、AChRクラスター形成を促進するその能力のおかげで増強することができ、無傷NMJを維持し、または筋線維上の前もって形成された異所性AChRクラスターへの成長中の神経終末の付着を促し、運動に必要とされる新しいNMJの生成を促進する。
【0070】
さらにニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の産生が記載され、ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8をコードするDNAが適切な発現系において発現し、その後、生じたタンパク質が精製される。いくつかの原核生物および真核生物の発現系がニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の産生および分泌に適している。原核生物発現系には、大腸菌における発現が挙げられるが、それに限定されない。真核生物発現系には、マウス骨髄腫細胞における発現、昆虫細胞におけるバキュロウイルス媒介性発現、加えて、ヒト胚性腎(HEK)細胞における発現、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における一過性発現、およびピキア・パストリスにおける安定発現が挙げられる。これらの系は、上清における混入タンパク質の量を低下させるための無血清条件に容易に適応でき、かつラージスケール産生に適応できるという利点をもつ。加えて、様々な細胞系を用いてもよく、それらには、HEK293T細胞およびHEK293細胞、COS細胞、CHO細胞、HeLa細胞、H9細胞、ジャーカット細胞、NIH3T3細胞、C127細胞、CV1細胞、CAP細胞、またはSF細胞が挙げられる。
【0071】
ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の精製について、標準タンパク質精製テクノロジーが適用される。Hisタグ付きタンパク質は、IMACを用いて精製することができるが、イオン交換クロマトグラフィーまたはヘパリンカラムを用いるアフィニティー精製も同様に用いることができる。アグリンのC末端部分に対して産生された抗体による精製もまた用いることができる。その後、溶出されたタンパク質はさらに、ヒドロキシアパタイトカラムを用いて、またはゲル濾過により精製することができる。
【0072】
以下の実施例は、本発明を例証するが、それに限定されない。これらの実施例を読む当業者は、他の関連した条件を適用することができるであろうし、これらもまた本発明の範囲内にある。
【実施例1】
【0073】
<ニューロトリプシン抵抗性の44kdのヒトアグリンC末端断片(C44K/A)のクローニング>
初めに、N末端NtAドメインを欠くこと以外は完全長ヒトアグリンy0z0(ヒトアグリンy0z0デルタNTAはアクセッション番号NP_940978のタンパク質配列における位置K156から始まる)を、PCRによって、ヒトカルシンテニン−1の分泌シグナルのコード配列を含むpEAK8ベクター中に適切な制限部位およびプライマーを介してクローン化した(Reifら、2007)。ヒトアグリンについての鋳型として、ベクターpCMV−XL5−Agrin(Origene USAから購入)を用いた。
【0074】
その後に続く2ステップにおいて、y4z8挿入に必要とされる対応するコドンを、標準技術を用いる部位特異的突然変異誘発により導入し、その結果として、完全長ヒトアグリンy4z8デルタNtAを含むpEAK8ベクターが生じた。
【0075】
このベクターを鋳型として用い、44kdのヒトアグリンC末端断片をコードする遺伝子を増幅し、その翻訳されたタンパク質のN末端にHis8タグのコード領域およびprescissionプロテアーゼ切断部位を導入した。
【0076】
アグリンの切断部位βにおいてリジンのコドンの場所にアラニンのコドンを導入する、プライマーを用いる急速交換(quick change)突然変異誘発段階において、ニューロトリプシン抵抗型のヒトアグリンC44K/Aが生成された。
【0077】
このプラスミドは、トランスフェクションされた細胞の培養上清において、(シグナル配列を含まずに)アグリン部分のアミノ酸がロイシン21から始まる、配列番号4の配列を有するタンパク質を産生する。
【実施例2】
【0078】
<ヒトアグリンC44およびニューロトリプシン抵抗性C44K/Aの発現および精製>
Excell293培地で1×106細胞/mlの密度まで増殖した500mlのHEK293細胞を、Sorvall−RC5C遠心機における100×gで30分間の遠心分離によってペレット化した。37℃に予熱された500mlのRPMI1640培地中に細胞を再懸濁した。ニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8の発現のための1.25mgの挿入断片含有pEAK8を、25mlの150mM NaCl中に希釈した。25kDaの3.75mgのポリエチレンイミン(PEI)を25mlの150mM NaCl中に希釈した。両方の溶液をプールし、室温で10分間、インキュベートした。後で、1000mlのスピナーフラスコに移された細胞懸濁液に、この溶液を加えた。細胞懸濁液を、加湿雰囲気下の5%CO2および37℃でのインキュベーター内に置かれた撹拌プラットフォームにおいて75rpmで7日間、インキュベートした。
【0079】
7日後、培養上清を、Sorvall−RC5C遠心機における500rpmでの遠心分離によって回収した。残存する粒子を、0.22umのMillipore滅菌濾過装置による濾過によって除去した。濾過された培養上清を、PelliconのPLCGC−10kDaカットオフ接線流カートリッジを用いて10回、濃縮し、20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClに対して少なくとも1:1000で透析した。Ni2+で標識された10mlの卓上His選択カラムを用いてHis8タグを利用する固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に供した。濃縮および透析された細胞培養上清の負荷後、カラムを100mlの透析緩衝液で洗浄し、結合したタンパク質を500mMのイミダゾールを含む10mlの透析緩衝液で5回、溶出した。精製の成功の後、SDS−PAGEを行った(図D)。陽性画分をプールし、Sigma−4K15遠心機において3000×gでAMICONの30kDaカットオフ濾過装置を用いて10回、濃縮し、20mMのMOPS(pH8.5)、200mMのNaClに対して1:10000で透析した。精製されたC44K/Aの濃度を、0.725cm2/mgの吸光係数を用いるUV分光分析法によって決定した。
【実施例3】
【0080】
<prescissionプロテアーゼ切断によるHis8タグの除去>
His8タグが除去されるべきである場合、0.5mlのタンパク質溶液の緩衝液を50mMのTris−HCL(pH7.2)、150mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのNa2EDTAに、その緩衝液であらかじめ平衡化したNAP−5カラムを用いて交換した。タンパク質溶液を、1mlの同じ緩衝液中に溶出した。1μlの1M DTTをタンパク質溶液に加え、チューブを数回、指ではじくことによって混合した。20μlのprescissionプロテアーゼ(1U/μl)を加え、チューブを、数回、指ではじくことによって混合した。反応を、4℃で一晩、行った。0.5mlの重力流グルタチオンセファロースカラムを、1mMのDTTを追加した5mlのPBSで平衡させた。消化されたタンパク質溶液を負荷し、通過画分を収集した。カラムを、1mMのDTTを追加した1mlのPBSで3回、洗浄し、その通過画分を、前の通過画分と同じチューブに収集した。収集された通過画分を、DTTおよびEDTAを除去するために、20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClの5lに対して2時間を2回、透析した。
【0081】
切断されたHis8タグを除去するために、2回目のIMACを実施した。Ni2+イオンであらかじめ標識された1mlのキレート化セファロースFFカラムを、5mlの20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClで平衡させた。透析されたタンパク質溶液をそのカラムにアプライし、通過画分を収集した。カラムを1mlの20mMのMOPS(pH8.5)、400mMのNaClで3回洗浄し、通過画分を同じチューブに収集した。プールされた画分を、AMICONの30kDaカットオフ濃縮器で0.5mlに濃縮し、緩衝液を、20mMのMOPS(pH8.5)、200mMのNaClであらかじめ平衡化したNAP−5カラムを用いて交換した。濃度を、0.725cm2/mgの吸光係数を用いるUV分光分析法によって決定した。タンパク質を、さらなる実験のために新鮮な状態で用い、または使用まで−80℃で保存した。対応するタンパク質のタンパク質配列は、グリシン19から始まる配列番号3の部分に対応する。
【実施例4】
【0082】
<ヒトニューロトリプシンによるC44およびC44K/Aのインビトロ消化>
a)ニューロトリプシンがニューロトリプシン抵抗性ヒトアグリンC44y4z8K/Aを消化することができないことを実証するために、そのタンパク質をニューロトリプシンアッセイに供した。対照として、ヒトアグリンC44y4z8を用いた。アッセイにおいて、アグリンC44基質を1μMの濃度で用い、ヒトニューロトリプシンを加えた。反応を、20mMのMOPS(pH 8.3)、150mMのNaCl、5mMのCaCl2、0.1%PEG6000中で実施した。消化を37℃で6時間、行った。そのセットアップを4〜12%NuPAGE−SDSゲルに負荷し、Syproルビーで染色した(図4)。
【0083】
b)a)と類似したさらなるアッセイにおいて、図2bおよび7〜10に示されているようなC44K/A断片がニューロトリプシンによって消化されないことが示された(図11)。
【実施例5】
【0084】
<マウスにおけるニューロトリプシン抵抗性ヒトC44K/Aの投与>
実験に用いられるサルコペニアマウスモデルは、C57BL/6NCRLバックグラウンドにおけるthy−1作動性ニューロトリプシン過剰発現体(Stephanら、2008)およびそれらの野生型同腹仔である。雄および雌の両方の動物が含まれ、この年齢での若いマウスにおいて性別間で体重および筋力に違いがないためである。マウスはP8(生後8日目)で実験に入った。
【0085】
群あたり3匹のマウスで、以下の3群を用いた。1.媒体処理される野生型マウス、2.C44K/Aで処理されるサルコペニアマウス(M491S)、3.媒体処理されるサルコペニアマウス。
【0086】
マウスに、C44K/Aまたは媒体を6.4mg/kg/日の総用量で皮下注射する。投薬は1日目に始まり、13日目まで続いた。実験における全てのマウスについて、体重を毎日1回、測定した。体重は、各処理群について平均され、実験日ごとにプロットされる(図5)。実験の開始時点で、サルコペニアマウスにおいて体重のわずかな低下がすでに見られる。サルコペニアのC44K/Aでの処理は、媒体処理マウスと比較して体重の有意な増加をもたらした。C44K/Aで処理されたサルコペニアマウスは完全に回復し、さらに野生型同腹仔に観察されたのと同じ発育であった。ヒトにおいて、虚弱患者は、1年あたり5kgを超える体重減少に悩まされている(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。これは、全体重の約7%の損失に相当する。媒体対照で処理されたサルコペニアマウスは、著しい体重低下を示した。実験中、サルコペニアマウスは体重が約5%減少した。
【実施例6】
【0087】
<握力の測定>
実施例5に記載された実験の13日目において、前肢および後肢の握力を、精密フォースゲージにより、加えられたピークフォースを保持するデジタルフォースメーター(Columbus Instruments、Columbus OH)で測定した。フォースメーターは頑丈な土台に固定され、フォーストランスデューサと共に、約1mmの直径の三角形の引っ張り棒に接続される。データは、コンピュータとのRS232接続を通してオンラインで収集され、Grip Strength Meterソフトウェア(Columbus Instruments)により.datファイルで保存され、データ管理および統計解析のためにexcelに転送された。最大フォースの測定についての単位としてグラム(g)が用いられた。測定前、マウスを実験室に移動させ、10分間慣れさせた。各マウスを、約3mmの直径の金属棒をその前足で握るようにさせた。その後、マウスを、フォースメーターから顔を背けるように、引っ張り棒に接近させ、それの前足または後足で引っ張り棒のワイヤーを握るようにさせた。マウスを、その尾で引っ張り棒と平行にフォースメーターの方へ、約10cm/秒の速度で引っ張った。
【0088】
引っ張りは、マウスの前肢、それぞれ、後肢が放すまで一定の速度に保たれた。実験セッションは、後肢握力についての5回の試行からなった。試行と試行の間に、マウスに約1分間の休息時間を許した。実際の実験セッションの少なくとも1日前に、マウスを記載された手順で訓練した。各実験セッションを、望ましくない実験的バイアスを避けるために盲検方式で行った。
【0089】
データを、以下の方法で解析した。各マウスについて、最高値および最低値を除外し、残りの3つの値を平均した。その後、データを、各処理群について平均し、媒体処理された野生型群に対して標準化した。
【0090】
13日目に、媒体処理されたサルコペニアマウスは、野生型と比較して約20%の筋力を失っているが、C44K/A処理されたマウスは、媒体処理された野生型と類似した握力を有する。
【0091】
ヒトについて、約20歳の成人が約70歳の個体と比較された場合、筋力の減少は約20〜40%であり、それは90代の個体と比較した場合、50%より上まで増加し得る(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。この実験において、本出願人らは、握力の20%の低下が約14日間、阻止されることを実証している。
【0092】
アグリンの断片がインビボで活性があることが示されているのはこれが最初である。皮下投与後、タンパク質C44K/Aは、身体に分布し、サルコペニア様症状を患っているマウスに有益な効果を発揮した。
【実施例7】
【0093】
<マウスにおけるニューロトリプシン抵抗性ヒトC44y0z8K/Aおよび(マウスアグリンC44y0z8K/A)の投与>
実験に用いられるサルコペニアマウスモデルは再び(実施例5においてのように)、C57BL/6NCRLバックグラウンドにおけるThy−1作動性ニューロトリプシン過剰発現体(Stephanら、2008)およびそれらの野生型同腹仔である。雄および雌の両方の動物が含まれ、この年齢での若いマウスにおいて性別間で体重および筋力に違いがないためである。マウスはP8(生後8日目)で実験に入った。
【0094】
群あたり4匹のマウスで、以下の4群を用いた。1.媒体処理される野生型マウス;2.C44K/A(0,8)で処理されるサルコペニアマウス(M491S);3.マウスアグリンC44(0,8)K/Aで処理されるサルコペニアマウス(M491S);4.媒体処理されるサルコペニアマウス。
【0095】
マウスに、20mg/kg/日の総用量で皮下注射する。投薬は1日目に始まり、13日目まで続いた。実験における全てのマウスについて、体重を毎日1回、測定した。体重は、各処理群について平均され、実験日ごとにプロットされる。媒体処理された野生型と比較したパーセンテージでの相対的体重は、各処理群について示されている(図12)。サルコペニアマウスのヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aでの処理は、媒体処理されたサルコペニアマウスと比較して体重の有意な増加をもたらした。C44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウスは完全に回復し、さらに野生型同腹仔に観察されたのと同じ発育であった。ヒトにおいて、虚弱患者は、1年あたり5kgを超える体重減少に悩まされている(BauerおよびSieber、2008;Lauretaniら、2003)。これは、全体重の約7%の損失に相当する。媒体対照で処理されたサルコペニアマウスは、著しい体重低下を示した。実験中、サルコペニアマウスは体重が約5%減少した。
【実施例8】
【0096】
<握力の測定>
測定を、実施例6に記載されているように、行った。
【0097】
図13aおよび13bは、媒体(媒体)またはヒトC44y0z8K/AまたはマウスC44y0z8K/Aで処理されたサルコペニアマウス、および媒体で処理された野生型同腹仔(野生型媒体)についての前肢および後肢の握力を示す。握力を13日目に測定する。異なる処理群の握力は、媒体処理された野生型同腹仔マウスに対するパーセンテージとして示されている。標準偏差はエラーバーとして示されている(各群についてN=5)。
【0098】
[文献リスト]
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたはマウスのアグリンの少なくともドメインLG2およびLG3を、共有結合性に連結した形で含み、かつニューロトリプシンによって切断され得ないように改変された、薬物として用いるための、インビボ活性を有する改変アグリン断片。
【請求項2】
β切断部位が欠失し、または改変されていることを特徴とする、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項3】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項4】
筋肉に影響を及ぼす神経筋疾患、または神経、筋肉および神経筋接合部の疾患の処置のための医薬の製造のための、請求項1に記載のアグリン断片の使用。
【請求項5】
前記筋肉に影響を及ぼす神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患が、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含むことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ニューロトリプシン関連疾患、特にニューロトリプシンレベルの上昇を伴う疾患の処置に用いるための、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項7】
神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患の処置に用いる、請求項1または6に記載の改変アグリン断片。
【請求項8】
前記神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患が、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含むことを特徴とする、請求項7に記載の改変アグリン断片。
【請求項9】
廃用性筋萎縮症または身体消耗症候群の処置に用いるための、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項10】
請求項1または2に記載のアグリン断片と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項11】
ヒトアグリンの少なくともドメインLG2およびLG3を、共有結合性に連結した形で含み、かつニューロトリプシンによって切断され得ないように改変された、インビボ活性を有する改変アグリン断片。
【請求項1】
ヒトまたはマウスのアグリンの少なくともドメインLG2およびLG3を、共有結合性に連結した形で含み、かつニューロトリプシンによって切断され得ないように改変された、薬物として用いるための、インビボ活性を有する改変アグリン断片。
【請求項2】
β切断部位が欠失し、または改変されていることを特徴とする、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項3】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項4】
筋肉に影響を及ぼす神経筋疾患、または神経、筋肉および神経筋接合部の疾患の処置のための医薬の製造のための、請求項1に記載のアグリン断片の使用。
【請求項5】
前記筋肉に影響を及ぼす神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患が、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含むことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ニューロトリプシン関連疾患、特にニューロトリプシンレベルの上昇を伴う疾患の処置に用いるための、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項7】
神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患の処置に用いる、請求項1または6に記載の改変アグリン断片。
【請求項8】
前記神経筋疾患、または神経、筋肉、および神経筋接合部の疾患が、サルコペニア、筋衰弱、虚弱、筋萎縮症および筋ジストロフィー症、筋無力症、筋強直症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、ならびに原発性側索硬化症を含むことを特徴とする、請求項7に記載の改変アグリン断片。
【請求項9】
廃用性筋萎縮症または身体消耗症候群の処置に用いるための、請求項1に記載の改変アグリン断片。
【請求項10】
請求項1または2に記載のアグリン断片と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項11】
ヒトアグリンの少なくともドメインLG2およびLG3を、共有結合性に連結した形で含み、かつニューロトリプシンによって切断され得ないように改変された、インビボ活性を有する改変アグリン断片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【公表番号】特表2013−503825(P2013−503825A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527233(P2012−527233)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005372
【国際公開番号】WO2011/026615
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509309581)ニューロチューン・アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005372
【国際公開番号】WO2011/026615
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509309581)ニューロチューン・アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
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