薬物の注入のためのインサートを有する配管セット
【課題】物質の二重の移動や針の使用を伴わない、血液透析治療における薬物を注入するための配管セットを提供する。
【解決手段】患者の血液の血液透析治療を行うための機器(100)と協同で使用するために適する配管セット(126)であって、患者から該機器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するための血液流出管(102)、フィルター(106)から患者へ血液を戻すための血液流入管(114)、および患者の血液に補充液を与えるために適する、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方に連結された補充管(116)を含む配管セットにおいて、該補充管(116)が、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、前記配管セット。
【解決手段】患者の血液の血液透析治療を行うための機器(100)と協同で使用するために適する配管セット(126)であって、患者から該機器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するための血液流出管(102)、フィルター(106)から患者へ血液を戻すための血液流入管(114)、および患者の血液に補充液を与えるために適する、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方に連結された補充管(116)を含む配管セットにおいて、該補充管(116)が、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、前記配管セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外回路での薬物の注入のためのインサートを含む配管セット、特に、血液透析器とともに使用されることが意図される配管セットに関する。本発明はさらに、上記インサートに取り付けられるのに適するバイアルに関する。
【背景技術】
【0002】
体外回路を必要とする治療において、患者に種々の薬物または治療用物質を投与することがしばしば必要である。上記配管セットの存在は、患者自身に直接あけられた穴を通って薬物の投与が行われることを回避することを可能にする。
【0003】
例として、以降では血液透析治療について検討するが、この理由のために、本発明の範囲は、この特定の用途に限定されない。
【0004】
最近の血液透析器のほとんどは、血液濾過と呼ばれる別の治療を行うためにも配置されている。血液濾過は、急性腎不全のためにほとんど排他的に使用される腎代替療法である。血液濾過の間、患者の血液はフィルターを通され、ここで老廃物および水が除去される。水の除去故に、患者に戻される血液の他に、補充液が必要である。血液濾過は血液透析と組み合わせて使用される場合があり、いわゆる血液透析濾過法の始まりである。
【0005】
上記に鑑みて、最近の血液透析器は、補充液をデリバリーするための特定の回路を備えている。
【0006】
下記では、記載の容易性のために、血液透析のみが言及されるが、血液濾過および血液透析濾過も本発明の範囲内であることが考慮されるべきである。
【0007】
そのような治療中にはしばしば、種々の薬物または治療用物質、例えば鉄、ヘパリン、エリスロポエチンおよびビタミンD、を投与することが必要になる。体外回路におけるそのような物質の注入は、現在、慣用の注入器(syringe)によって行われている。上記物質は、その中に製造者によって上記物質が供給されるところのバイアルから取り出され、次いで、配管セットに沿って供えられた特定の穿刺可能なキャップ(puncturable cap)の中へ注入される。すなわち、物質の二重の移動がある。最初にバイアルから注入器への移動、および次いで注入器から回路への移動である。
【0008】
したがって、そのような操作は、バイアルから配管セットへの物質の移動のためだけに、使い捨て可能な器具、例えば注入器および個々の針、の使用を必要とする。更に、針の使用はいつも、奉仕スタッフが刺されるという危険を伴う。
【0009】
さらに、患者の血液にいくつかの治療用物質を注入する間、溶血を回避するために注意が払われなければならない。
【0010】
最後に、上記で挙げた物質のいくつかは、数分間にわたってゆっくり投与される必要がある。このことから、一人よりも多くの患者に種々の物質を投与することが、上記治療の責任を負う看護師にとってどのように相当の作業負荷であるかを容易に理解できる。
【0011】
ヘパリンのデリバリーのための2つの自動化プロセスが公知文献に開示されている。ヘパリン注入器に作用する特定のポンプが、欧州特許出願公開第1909866号明細書に開示されている。この第一の解決によれば、この特定のポンプは、ヘパリンのためのみに使用され得、一方、他の任意の薬物には使用することができない。
【0012】
異なる解決が米国特許第5,015,226号明細書に開示されている。ここでは、血液ポンプによって血管に誘発される負の圧力を使用して、ヘパリンをバイアルから吸い上げる。血液ポンプは透析フィルターの上流に位置するので、この方法は、フィルター膜を通ることができない薬物とともに使用できるに過ぎない。さらに、そのような方法では、折りたためるバイアルのみが使用され得る。なぜならば、負の圧力によって堅いバイアルから薬物を効果的に吸い上げることはできないからである。
【0013】
体外回路における物質の注入のための他の配管セットおよび関連するアッセンブリは、米国特許第5,693,008号明細書、米国特許第5,983,947号明細書、米国特許出願公開第2009/0101552号明細書および国際公開第2008/106191号パンフレットに詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1909866号明細書
【特許文献2】米国特許第5,015,226号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,008号明細書
【特許文献4】米国特許第5,983,947号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0101552号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/106191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、注入のための公知の配管セットに関して強調された欠点を少なくとも部分的に解決することである。
【0016】
本発明の任務は、物質の二重の移動を回避することである。本発明の他の任務は、慣用の注入器および個々の針の使用を回避することを可能にすることである。
【0017】
本発明の任務は、患者の血液の溶血の危険を伴うことなく、治療用物質の注入を可能にすることである。本発明の別の任務は、任意の薬物のデリバリーの自動化されたプロセスを可能にすること、例えば、それを必要とする薬物のゆっくりの投与を、そうするための奉仕スタッフの積極的参加を必要とすることなく可能にすること、である。
【0018】
本発明の任務は、複数の薬物の同時の注入をすら可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記で示した目的および任務は、請求項1に従う配管セットによって、請求項7に従う注入のためのインサートによって、請求項8に従うバイアルによって、および請求項12に従う方法によって達成される。
【0020】
本発明の特徴およびさらなる利点は、いくつかの実施態様の下記記載から明らかになるであろう。下記の記載は、添付の図面を参照して示すためのものであり、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、従来技術に従う血液透析治療において使用される体外回路を模式的に示す。
【図2】図2は、図1におけるIIで示される、従来技術に従って物質を投与するための穿刺可能なキャップの詳細を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明に従う血液透析治療において使用される体外回路を模式的に示す。
【図4】図4は、図3におけるIVで示される、本発明に従って物質を投与するためのアッセンブリの詳細を模式的に示す。
【図5】図5は、本発明に従う血液透析治療において使用される別の体外回路を模式的に示す。
【図6】図6は、本発明に従う血液透析治療において使用されるさらなる体外回路を模式的に示す。
【図7】図7は、本発明に従うインサートを第一の配置で含む体外回路を模式的に示す。
【図8】図8は、本発明に従うインサートを第二の配置で含む体外回路を模式的に示す。
【図9】図9は、公知機器に適用された本発明に従う配管セットのインサートの前面図である。
【図10】図10は、図9のインサートの前面図(部分的断面図)である。
【図11】図11は、図9のインサートおよびそれに取り付けられるのに適するバイアルの側面図(部分的断面図)である。
【図12】図12は、図9のインサートの透視図である。
【図13】図13は、図12と同様の図であるが、インサートの外側カバーの一部が除去された図である。
【図14】図14は、公知機器に適用された本発明に従う配管セットの別のインサートの前面図である。
【図15】図15は、図14のインサートよびそれに取り付けられたバイアルを含むアッセンブリの前面図(部分的断面図)である。
【図16】図16は、本発明に従うインサートに取り付けられるのに適する本発明に従うバイアルの詳細な断面図である。
【図17】図17は、図16のバイアルの取り付けを受け入れるのに適する本発明に従うインサートの詳細な断面図である。
【図18】図18は、図17の線XVIII-XVIIIに沿った断面図である。
【図19】図19は、図17のインサートへ動かされた図16のバイアルの断面図である。
【図20】図20は、図17の線XX−XXに沿った断面図である。
【図21】図21は、図17のインサートおよびそれに取り付けられた図16のバイアルを含む本発明に従うアッセンブリの断面図である。
【図22】図22は、異なる配置での図20と同様の断面図である。
【図23】図23は、体外回路における本発明に従う配管セットの一部を模式的に示す。
【図24】図24は、体外回路における本発明に従う別の配管セットの一部を模式的に示す。
【図25】図25は、本発明に従う配管セットにおけるインサートに取り付けられるのに適する本発明に従う別のバイアルの詳細な断面図である。
【図26】図26は、図24におけるXXVIで示される部分の詳細、すなわち本発明に従う配管セットにおけるインサートと結合された図25のバイアルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照すると、100は、患者の血液がフィルターを通されて老廃物および水が除去されるところの血液透析器を示す。機器100自体は公知であり、これに、使い捨ての配管セット126が備えられている。上記配管セットは、
患者から機器100のフィルター106へ血液を供給するための血液流出管102、
フィルター106から患者へ血液を戻す血液流入管114、および
患者の血液に補充液を供給するために適する、血液流入管114または血液流出管102の一方に連結した補充管
を含む。
【0023】
本発明に従う配管セット126において、補充管116は、薬物の注入のためのインサート30を含む。
【0024】
本発明のある実施態様によれば、配管セット126はさらに、フィルター106から出る排液を排出するための排出管108、およびフィルター106へ透析液を供給するための透析液管112を含む。
【0025】
本発明のある実施態様によれば、血液流出管102は、上記機器100の血液ポンプ104と協同するのに適している。同様に、排出管108および補充管116は、それぞれ機器100の排出ポンプ110および補充ポンプ118と協同するのに適し得る。
【0026】
本発明の1実施態様によれば、薬物の注入のためのアッセンブリ28が、補充管116に沿っておかれたインサート30、およびバイアル34を含む。インサート30は、好ましくは、
補充管116の流体連続性を確実にするために適する主要ダクト31、
治療用物質を含むバイアル34に連結されるのに適する、機械的結合手段36および水圧的結合手段38を含む少なくとも1のアクセス点32、
水圧的結合手段38の無菌性を確実にするために適し、かつバイアル34を連結することができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜40
を含む。
【0027】
バイアル34は、治療用物質を含むために適し、好ましくは、
インサート30のアクセス点32に取り付けられるために適する、機械的結合手段42および水圧的結合手段44、
水圧的結合手段44の無菌性を確実にするために適し、かつ各アクセス点32にバイアル34を取り付けることができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜46
を含む。
【0028】
アクセス点32は、慣用の注入器および個々の針による中間の移動の必要なしに、バイアル34の取り付けを受け入れるために意図されている。
【0029】
単一バイアル34は、回路26の内側と外側との間の圧力差の存在下ですら気密な取り付けを可能にする結合によって各アクセス点32に取り付けられ得る。そのような結果は、ねじ式結合(threaded coupling)、差し込み式結合(bayonet coupling)、スナップ結合(snap coupling)、締りばめ結合(interference coupling)または類似の結合によって得られ得る。本発明に従うアクセス点32が、どのようにして穿刺可能なキャップの上記解決を使用しないかに注意すべきである。実際、注入器および関連する針の使用は、消費される材料に関連するコスト、関連する操作に要する時間および奉仕スタッフがそれらの使用によって刺されるという危険故に、総体的に不利であると考えられている。
【0030】
上記で述べたことは、もちろん、バイアル34のためのアクセス点32とともに、1以上の公知の穿刺可能なキャップをも含む本発明に従うインサート30の可能性を除外しない。そのような規定は、本発明に従うインサート30が、従来技術とも相入れ、したがって、インサート30との組み合わせで使用するために特に意図されていないありうるストックが使い切られるのを可能にすることを確実にする。
【0031】
いくつかの実施態様によれば、アクセス点32の各々が、単一使用のために設計されている。実際、例えば図11および17を参照すると、アクセス点は、機械的結合手段36および水圧的結合手段38を含む。膜40が、治療用物質の通過にかかわるところの水圧的結合手段38の無菌性を確実にする。膜40は、所望のバイアル34を各アクセス点32と結合できるようにするために、破壊されまたは除去されなければならない。上記治療の間、バイアル34は、それが薬物をもはや含んでいないときですら、アクセス点32に取り付けられたままであり、したがって、アクセス点を外部汚染から保護する。治療の終わりに、インサート30が、それに取り付けられたバイアル34および使い捨て可能な配管セット126全体とともに処理される。
【0032】
いくつかの実施態様によれば、バイアル34はまた、機械的結合手段42および水圧的結合手段44を含む。膜46が、治療用物質の通過にかかわるところの水圧的結合手段44の無菌性を確実にする。膜46は、バイアル34を各アクセス点32と結合できるようにするために、破壊されまたは除去されなければならない。
【0033】
図9〜13は、全体に平行六面体形状を有するインサート30の第一の実施態様を示す。この態様では、アクセス点32が平行六面体の同じ面に配置されかつ互いに平行な軸を有する。図14および15は、全体に管形状を有するインサート30の第二の実施態様を示す。この態様では、アクセス点32が管の周りに放射状に配置されている。
【0034】
公知のやり方では、機器100は、標準的なヘパリン注入器の挿入のための適切な形状および大きさのハウジングを含む。1実施態様によれば、インサート30が、ヘパリン注入器の代わりにそのようなハウジングに位置され得るように、標準的なヘパリン注入器の形状および大きさを有する。そのような解決は、図9および14に示される。
【0035】
本発明に従う配管セット126のいくつかの配置、例えば図7の配置、によれば、インサート30が、補充ポンプ118の下流に配置され得る。したがって、これらの配置では、インサート30に到達する補充液が、大気圧よりも高い圧力下にある。他方、本発明に従う配管セット126のいくつかの他の配置、例えば図8の配置、によれば、インサート30が、補充ポンプ118の上流に配置され得る。したがって、これらの配置では、インサート30に到達する補充液が、大気圧よりも低い圧力下にある。
【0036】
上記で述べたことから、当業者は、バイアル34内に含まれる物質の投与が、場合によって異なる方法で行われるであろうことを理解するであろう。そのような方法は、バイアル34自体の種々のありうる配置をも参照しながら、下記に略述される。
【0037】
補充管116は、血液流出管102または血液流入管114の代わりに治療用物質の注入のために有利に使用される。従って、本発明に従うインサート30は、血液管102、114に沿って配置されるよりもむしろ補充管116に沿って配置される。
【0038】
本発明に従うバイアル34は、ガラスまたは有利にはポリマー物質から作られ得る。これに関して、治療用物質の全てが、ポリマー製バイアルに含まれ得るわけではないことに注意すべきである。それらのいくつかのために、ガラス製バイアルを提供することが必要である。
【0039】
ポリマー製バイアルは例えば、ポリプロピレンからブロー成形によって作られ得る。もちろん、必要ならば、他のポリマーおよび他の技術が特定の要件を満たし得る。ポリマー製バイアルは、その中に含まれる物質を押出すように、有利に絞られ得る。バイアル34が、補充ポンプ118の上流に配置されたインサート30に取り付けられるならば、補充管116内の低下が、バイアル34に含まれる物質を自動的に吸い上げる。物質がこのように投与される可能性は、ポリマー製バイアル34が、その中に含まれる物質の体積が減少するとぺしゃんこになり得るという事実によって確実にされる。
【0040】
他方、インサート30が補充ポンプ118の下流に配置されるならば、補充管116は加圧下にある。この場合には、バイアル34に含まれる物質を投与するために、補充管116内の圧力よりも少なくともわずかに大きい圧力をかける必要がある。この場合には、および物質が一回に少量での代わりに単一溶液で投与され得るならば、例えばバイアル34を手動で絞ることが可能である。
【0041】
ガラス製のバイアル34は、もちろん、含まれる物質を投与するこれらの方法を可能にしない。この場合には、本発明に従うインサート30のアクセス点32が、バイアル34の内部洗浄を誘発してその中身を取り去るように構成され得る。
【0042】
そのような洗浄を可能にするアクセス点32の特定の1つの実施態様は、図16〜22を参照して下記に記載される。
【0043】
図16は、ガラスで作られた本発明に従うバイアル34を示す。図17は、本発明に従うアクセス点32の断面を示す。そのようなアクセス点32は、可動スパイク48を含む。図19に見られるように、バイアル34をアクセス点32まで動かす作用は、最初に、水圧的結合手段38を保護する膜40を破壊することを含む。バイアル34を取り付ける作用を続けると、可動スパイク48がバイアル自体の膜46と接触し、次いでそれを破壊する。上記取り付けをさらに続けると、可動スパイク48が、バイアル34の水圧的結合手段44と接触し、それらによってインサート30の内部の方へ押される。可動スパイク48のこの移動の最終の結果は、図19と図21を比較することによって、および図20と図22を比較することによって見ることができる。図21および22に示される最終の配置では、可動スパイク48の付け根(root)が、インサート30の主要ダクト31を少なくとも部分的に塞ぐ。主要ダクト31において妨げられる流れは、したがって、バイアル34の中へ偏向される。主要の流れは、バイアル34に入り、その中に最初に含まれていた物質と混合し、最後に、可動スパイク48の付け根によって偏向された新しい流体によって押されて出ていく。こうして、上記洗浄が得られ、これは、図21における点線の矢印によって模式的に示される。
【0044】
上記洗浄は、単一の水圧的結合手段44を含む、本発明に従うバイアル34に関して得られる。異なる洗浄システムは、図23〜26に示される型の異なるバイアル34によって得られ得る。そのようなバイアルは、二重の結合手段を含む。すなわち、アクセス点32に取り付けられるのに適する第一の機械的結合手段42’および第一の水圧的結合手段44’;およびバイアル34の反対の端に実質的に配置された第二の機械的結合手段42”および第二の水圧的結合手段44”である。この場合には、補充液の流れが第二の水圧的結合手段44”を通ってバイアル34に入り、その中に含まれる物質と混合し、最後に、第一の水圧的結合手段44’を通って出ていく。
【0045】
図23に模式的に示される実施態様によれば、インサート30が補充管116に沿って置かれる。そのような実施態様では、補充管116が、補充管116から迂回しそして再びそれと連結する補助的分岐120を含む。インサート30は、補助的分岐120と補充管116との連結部に置かれる。バイアル34に入る補充液は、補助的分岐120から来て、再び補充管116に流入する。
【0046】
図24に模式的に示される実施態様によれば、インサート30が、補充管116と血液流入管114との連結部に置かれる。そのような実施態様では、バイアル34に入る流れが、血液流入管114との集合点のすぐ上流の全補充液流である。配管セット126の異なる実施態様によれば、インサート30が、補充管116と血液流出管102との連結部に置かれ得る。
【0047】
バイアル34の中身を洗浄によって投与するための同じ概念が、補充ポンプ118の下流に取り付けられるときのポリマー製バイアルのために利用され得る。
【0048】
上記記載を鑑みて、当業者は、本発明に従う配管セット126が、任意の薬物のデリバリーのための自動化プロセスを行うことを可能にすることを理解し得る。実際、本発明に従う配管セット126の特定の配置が、折りたためるものまたは硬いものの何れであっても任意のバイアルから薬物を自動的に吸い上げるために補充液の流れを利用することを可能にする。そのような解決は、たとえゆっくりの放出が必要であっても、奉仕スタッフの積極的参加を必要とすることなく薬物の投与を可能にする。
【0049】
いくつかの実施態様によれば(例えば図3〜15を参照)、インサート30が、複数のアクセス点32を含む。複数のアクセス点32は、薬物および/または治療用物質の多数のおよび同時の投与を可能にする。
【0050】
本発明は、最後に、薬物を、血液透析器の体外血液回路にデリバリーするための方法に関する。本発明に従う方法は、下記工程:
血液透析器100のフィルター106に血液を供給するために血液流出管102を患者につなぐこと、
フィルター106から血液を患者に戻すために血液流入管114を患者につなぐこと、
血液透析治療の間、フィルター106によって血液から除去された排水を置き換えるための補充液を提供するために、血液流入管114または血液流出管102の一方に補充管116をつなぐこと、ここで補充管116は薬物の注入のためのインサート30を含む、および
インサート30によって薬物を上記補充液に注入すること
を含む。
【0051】
上記方法の1の実施態様によれば、薬物を上記補充液に注入する工程が、バイアル34をインサート30に連結し、そして好ましくは、バイアルから薬物を自動的に吸い上げるために上記補充液の流れを使用する工程を含む。
【0052】
上記記載に鑑みて、当業者は、本発明が、従来技術に関して指摘された欠点のほとんどを克服することを容易に理解するであろう。実際、本発明は、多くの異なる条件で体外回路に任意の薬物を自動的にデリバリーすることを可能にする。特に、上記デリバリーは、フィルターの上流または下流で、補充ポンプの上流または下流で、折りたためるバイアルまたは硬いバイアルから、および種々のデリバリー速度で、行われ得る。
【0053】
当業者は、特定の要件を満たすために、この理由のために特許請求の範囲から逸脱することなく、記載した要素を、上述の本発明に従う配管セット126、インサート30およびバイアル34の実施態様と同等の要素で改変しおよび/または置き換えることができる。
【符号の説明】
【0054】
30 インサート
31 主要ダクト
32 アクセス点
34 バイアル
36 機械的結合手段
38 水圧的結合手段
40 膜
48 可動スパイク
100 血液透析器
102 血液流出管
104 血液ポンプ
106 フィルター
108 排出管
110 排出ポンプ
112 透析液管
114 血液流入管
116 補充管
118 補充ポンプ
120 補助的分岐
126 配管セット
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外回路での薬物の注入のためのインサートを含む配管セット、特に、血液透析器とともに使用されることが意図される配管セットに関する。本発明はさらに、上記インサートに取り付けられるのに適するバイアルに関する。
【背景技術】
【0002】
体外回路を必要とする治療において、患者に種々の薬物または治療用物質を投与することがしばしば必要である。上記配管セットの存在は、患者自身に直接あけられた穴を通って薬物の投与が行われることを回避することを可能にする。
【0003】
例として、以降では血液透析治療について検討するが、この理由のために、本発明の範囲は、この特定の用途に限定されない。
【0004】
最近の血液透析器のほとんどは、血液濾過と呼ばれる別の治療を行うためにも配置されている。血液濾過は、急性腎不全のためにほとんど排他的に使用される腎代替療法である。血液濾過の間、患者の血液はフィルターを通され、ここで老廃物および水が除去される。水の除去故に、患者に戻される血液の他に、補充液が必要である。血液濾過は血液透析と組み合わせて使用される場合があり、いわゆる血液透析濾過法の始まりである。
【0005】
上記に鑑みて、最近の血液透析器は、補充液をデリバリーするための特定の回路を備えている。
【0006】
下記では、記載の容易性のために、血液透析のみが言及されるが、血液濾過および血液透析濾過も本発明の範囲内であることが考慮されるべきである。
【0007】
そのような治療中にはしばしば、種々の薬物または治療用物質、例えば鉄、ヘパリン、エリスロポエチンおよびビタミンD、を投与することが必要になる。体外回路におけるそのような物質の注入は、現在、慣用の注入器(syringe)によって行われている。上記物質は、その中に製造者によって上記物質が供給されるところのバイアルから取り出され、次いで、配管セットに沿って供えられた特定の穿刺可能なキャップ(puncturable cap)の中へ注入される。すなわち、物質の二重の移動がある。最初にバイアルから注入器への移動、および次いで注入器から回路への移動である。
【0008】
したがって、そのような操作は、バイアルから配管セットへの物質の移動のためだけに、使い捨て可能な器具、例えば注入器および個々の針、の使用を必要とする。更に、針の使用はいつも、奉仕スタッフが刺されるという危険を伴う。
【0009】
さらに、患者の血液にいくつかの治療用物質を注入する間、溶血を回避するために注意が払われなければならない。
【0010】
最後に、上記で挙げた物質のいくつかは、数分間にわたってゆっくり投与される必要がある。このことから、一人よりも多くの患者に種々の物質を投与することが、上記治療の責任を負う看護師にとってどのように相当の作業負荷であるかを容易に理解できる。
【0011】
ヘパリンのデリバリーのための2つの自動化プロセスが公知文献に開示されている。ヘパリン注入器に作用する特定のポンプが、欧州特許出願公開第1909866号明細書に開示されている。この第一の解決によれば、この特定のポンプは、ヘパリンのためのみに使用され得、一方、他の任意の薬物には使用することができない。
【0012】
異なる解決が米国特許第5,015,226号明細書に開示されている。ここでは、血液ポンプによって血管に誘発される負の圧力を使用して、ヘパリンをバイアルから吸い上げる。血液ポンプは透析フィルターの上流に位置するので、この方法は、フィルター膜を通ることができない薬物とともに使用できるに過ぎない。さらに、そのような方法では、折りたためるバイアルのみが使用され得る。なぜならば、負の圧力によって堅いバイアルから薬物を効果的に吸い上げることはできないからである。
【0013】
体外回路における物質の注入のための他の配管セットおよび関連するアッセンブリは、米国特許第5,693,008号明細書、米国特許第5,983,947号明細書、米国特許出願公開第2009/0101552号明細書および国際公開第2008/106191号パンフレットに詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1909866号明細書
【特許文献2】米国特許第5,015,226号明細書
【特許文献3】米国特許第5,693,008号明細書
【特許文献4】米国特許第5,983,947号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0101552号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/106191号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、注入のための公知の配管セットに関して強調された欠点を少なくとも部分的に解決することである。
【0016】
本発明の任務は、物質の二重の移動を回避することである。本発明の他の任務は、慣用の注入器および個々の針の使用を回避することを可能にすることである。
【0017】
本発明の任務は、患者の血液の溶血の危険を伴うことなく、治療用物質の注入を可能にすることである。本発明の別の任務は、任意の薬物のデリバリーの自動化されたプロセスを可能にすること、例えば、それを必要とする薬物のゆっくりの投与を、そうするための奉仕スタッフの積極的参加を必要とすることなく可能にすること、である。
【0018】
本発明の任務は、複数の薬物の同時の注入をすら可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記で示した目的および任務は、請求項1に従う配管セットによって、請求項7に従う注入のためのインサートによって、請求項8に従うバイアルによって、および請求項12に従う方法によって達成される。
【0020】
本発明の特徴およびさらなる利点は、いくつかの実施態様の下記記載から明らかになるであろう。下記の記載は、添付の図面を参照して示すためのものであり、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、従来技術に従う血液透析治療において使用される体外回路を模式的に示す。
【図2】図2は、図1におけるIIで示される、従来技術に従って物質を投与するための穿刺可能なキャップの詳細を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明に従う血液透析治療において使用される体外回路を模式的に示す。
【図4】図4は、図3におけるIVで示される、本発明に従って物質を投与するためのアッセンブリの詳細を模式的に示す。
【図5】図5は、本発明に従う血液透析治療において使用される別の体外回路を模式的に示す。
【図6】図6は、本発明に従う血液透析治療において使用されるさらなる体外回路を模式的に示す。
【図7】図7は、本発明に従うインサートを第一の配置で含む体外回路を模式的に示す。
【図8】図8は、本発明に従うインサートを第二の配置で含む体外回路を模式的に示す。
【図9】図9は、公知機器に適用された本発明に従う配管セットのインサートの前面図である。
【図10】図10は、図9のインサートの前面図(部分的断面図)である。
【図11】図11は、図9のインサートおよびそれに取り付けられるのに適するバイアルの側面図(部分的断面図)である。
【図12】図12は、図9のインサートの透視図である。
【図13】図13は、図12と同様の図であるが、インサートの外側カバーの一部が除去された図である。
【図14】図14は、公知機器に適用された本発明に従う配管セットの別のインサートの前面図である。
【図15】図15は、図14のインサートよびそれに取り付けられたバイアルを含むアッセンブリの前面図(部分的断面図)である。
【図16】図16は、本発明に従うインサートに取り付けられるのに適する本発明に従うバイアルの詳細な断面図である。
【図17】図17は、図16のバイアルの取り付けを受け入れるのに適する本発明に従うインサートの詳細な断面図である。
【図18】図18は、図17の線XVIII-XVIIIに沿った断面図である。
【図19】図19は、図17のインサートへ動かされた図16のバイアルの断面図である。
【図20】図20は、図17の線XX−XXに沿った断面図である。
【図21】図21は、図17のインサートおよびそれに取り付けられた図16のバイアルを含む本発明に従うアッセンブリの断面図である。
【図22】図22は、異なる配置での図20と同様の断面図である。
【図23】図23は、体外回路における本発明に従う配管セットの一部を模式的に示す。
【図24】図24は、体外回路における本発明に従う別の配管セットの一部を模式的に示す。
【図25】図25は、本発明に従う配管セットにおけるインサートに取り付けられるのに適する本発明に従う別のバイアルの詳細な断面図である。
【図26】図26は、図24におけるXXVIで示される部分の詳細、すなわち本発明に従う配管セットにおけるインサートと結合された図25のバイアルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照すると、100は、患者の血液がフィルターを通されて老廃物および水が除去されるところの血液透析器を示す。機器100自体は公知であり、これに、使い捨ての配管セット126が備えられている。上記配管セットは、
患者から機器100のフィルター106へ血液を供給するための血液流出管102、
フィルター106から患者へ血液を戻す血液流入管114、および
患者の血液に補充液を供給するために適する、血液流入管114または血液流出管102の一方に連結した補充管
を含む。
【0023】
本発明に従う配管セット126において、補充管116は、薬物の注入のためのインサート30を含む。
【0024】
本発明のある実施態様によれば、配管セット126はさらに、フィルター106から出る排液を排出するための排出管108、およびフィルター106へ透析液を供給するための透析液管112を含む。
【0025】
本発明のある実施態様によれば、血液流出管102は、上記機器100の血液ポンプ104と協同するのに適している。同様に、排出管108および補充管116は、それぞれ機器100の排出ポンプ110および補充ポンプ118と協同するのに適し得る。
【0026】
本発明の1実施態様によれば、薬物の注入のためのアッセンブリ28が、補充管116に沿っておかれたインサート30、およびバイアル34を含む。インサート30は、好ましくは、
補充管116の流体連続性を確実にするために適する主要ダクト31、
治療用物質を含むバイアル34に連結されるのに適する、機械的結合手段36および水圧的結合手段38を含む少なくとも1のアクセス点32、
水圧的結合手段38の無菌性を確実にするために適し、かつバイアル34を連結することができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜40
を含む。
【0027】
バイアル34は、治療用物質を含むために適し、好ましくは、
インサート30のアクセス点32に取り付けられるために適する、機械的結合手段42および水圧的結合手段44、
水圧的結合手段44の無菌性を確実にするために適し、かつ各アクセス点32にバイアル34を取り付けることができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜46
を含む。
【0028】
アクセス点32は、慣用の注入器および個々の針による中間の移動の必要なしに、バイアル34の取り付けを受け入れるために意図されている。
【0029】
単一バイアル34は、回路26の内側と外側との間の圧力差の存在下ですら気密な取り付けを可能にする結合によって各アクセス点32に取り付けられ得る。そのような結果は、ねじ式結合(threaded coupling)、差し込み式結合(bayonet coupling)、スナップ結合(snap coupling)、締りばめ結合(interference coupling)または類似の結合によって得られ得る。本発明に従うアクセス点32が、どのようにして穿刺可能なキャップの上記解決を使用しないかに注意すべきである。実際、注入器および関連する針の使用は、消費される材料に関連するコスト、関連する操作に要する時間および奉仕スタッフがそれらの使用によって刺されるという危険故に、総体的に不利であると考えられている。
【0030】
上記で述べたことは、もちろん、バイアル34のためのアクセス点32とともに、1以上の公知の穿刺可能なキャップをも含む本発明に従うインサート30の可能性を除外しない。そのような規定は、本発明に従うインサート30が、従来技術とも相入れ、したがって、インサート30との組み合わせで使用するために特に意図されていないありうるストックが使い切られるのを可能にすることを確実にする。
【0031】
いくつかの実施態様によれば、アクセス点32の各々が、単一使用のために設計されている。実際、例えば図11および17を参照すると、アクセス点は、機械的結合手段36および水圧的結合手段38を含む。膜40が、治療用物質の通過にかかわるところの水圧的結合手段38の無菌性を確実にする。膜40は、所望のバイアル34を各アクセス点32と結合できるようにするために、破壊されまたは除去されなければならない。上記治療の間、バイアル34は、それが薬物をもはや含んでいないときですら、アクセス点32に取り付けられたままであり、したがって、アクセス点を外部汚染から保護する。治療の終わりに、インサート30が、それに取り付けられたバイアル34および使い捨て可能な配管セット126全体とともに処理される。
【0032】
いくつかの実施態様によれば、バイアル34はまた、機械的結合手段42および水圧的結合手段44を含む。膜46が、治療用物質の通過にかかわるところの水圧的結合手段44の無菌性を確実にする。膜46は、バイアル34を各アクセス点32と結合できるようにするために、破壊されまたは除去されなければならない。
【0033】
図9〜13は、全体に平行六面体形状を有するインサート30の第一の実施態様を示す。この態様では、アクセス点32が平行六面体の同じ面に配置されかつ互いに平行な軸を有する。図14および15は、全体に管形状を有するインサート30の第二の実施態様を示す。この態様では、アクセス点32が管の周りに放射状に配置されている。
【0034】
公知のやり方では、機器100は、標準的なヘパリン注入器の挿入のための適切な形状および大きさのハウジングを含む。1実施態様によれば、インサート30が、ヘパリン注入器の代わりにそのようなハウジングに位置され得るように、標準的なヘパリン注入器の形状および大きさを有する。そのような解決は、図9および14に示される。
【0035】
本発明に従う配管セット126のいくつかの配置、例えば図7の配置、によれば、インサート30が、補充ポンプ118の下流に配置され得る。したがって、これらの配置では、インサート30に到達する補充液が、大気圧よりも高い圧力下にある。他方、本発明に従う配管セット126のいくつかの他の配置、例えば図8の配置、によれば、インサート30が、補充ポンプ118の上流に配置され得る。したがって、これらの配置では、インサート30に到達する補充液が、大気圧よりも低い圧力下にある。
【0036】
上記で述べたことから、当業者は、バイアル34内に含まれる物質の投与が、場合によって異なる方法で行われるであろうことを理解するであろう。そのような方法は、バイアル34自体の種々のありうる配置をも参照しながら、下記に略述される。
【0037】
補充管116は、血液流出管102または血液流入管114の代わりに治療用物質の注入のために有利に使用される。従って、本発明に従うインサート30は、血液管102、114に沿って配置されるよりもむしろ補充管116に沿って配置される。
【0038】
本発明に従うバイアル34は、ガラスまたは有利にはポリマー物質から作られ得る。これに関して、治療用物質の全てが、ポリマー製バイアルに含まれ得るわけではないことに注意すべきである。それらのいくつかのために、ガラス製バイアルを提供することが必要である。
【0039】
ポリマー製バイアルは例えば、ポリプロピレンからブロー成形によって作られ得る。もちろん、必要ならば、他のポリマーおよび他の技術が特定の要件を満たし得る。ポリマー製バイアルは、その中に含まれる物質を押出すように、有利に絞られ得る。バイアル34が、補充ポンプ118の上流に配置されたインサート30に取り付けられるならば、補充管116内の低下が、バイアル34に含まれる物質を自動的に吸い上げる。物質がこのように投与される可能性は、ポリマー製バイアル34が、その中に含まれる物質の体積が減少するとぺしゃんこになり得るという事実によって確実にされる。
【0040】
他方、インサート30が補充ポンプ118の下流に配置されるならば、補充管116は加圧下にある。この場合には、バイアル34に含まれる物質を投与するために、補充管116内の圧力よりも少なくともわずかに大きい圧力をかける必要がある。この場合には、および物質が一回に少量での代わりに単一溶液で投与され得るならば、例えばバイアル34を手動で絞ることが可能である。
【0041】
ガラス製のバイアル34は、もちろん、含まれる物質を投与するこれらの方法を可能にしない。この場合には、本発明に従うインサート30のアクセス点32が、バイアル34の内部洗浄を誘発してその中身を取り去るように構成され得る。
【0042】
そのような洗浄を可能にするアクセス点32の特定の1つの実施態様は、図16〜22を参照して下記に記載される。
【0043】
図16は、ガラスで作られた本発明に従うバイアル34を示す。図17は、本発明に従うアクセス点32の断面を示す。そのようなアクセス点32は、可動スパイク48を含む。図19に見られるように、バイアル34をアクセス点32まで動かす作用は、最初に、水圧的結合手段38を保護する膜40を破壊することを含む。バイアル34を取り付ける作用を続けると、可動スパイク48がバイアル自体の膜46と接触し、次いでそれを破壊する。上記取り付けをさらに続けると、可動スパイク48が、バイアル34の水圧的結合手段44と接触し、それらによってインサート30の内部の方へ押される。可動スパイク48のこの移動の最終の結果は、図19と図21を比較することによって、および図20と図22を比較することによって見ることができる。図21および22に示される最終の配置では、可動スパイク48の付け根(root)が、インサート30の主要ダクト31を少なくとも部分的に塞ぐ。主要ダクト31において妨げられる流れは、したがって、バイアル34の中へ偏向される。主要の流れは、バイアル34に入り、その中に最初に含まれていた物質と混合し、最後に、可動スパイク48の付け根によって偏向された新しい流体によって押されて出ていく。こうして、上記洗浄が得られ、これは、図21における点線の矢印によって模式的に示される。
【0044】
上記洗浄は、単一の水圧的結合手段44を含む、本発明に従うバイアル34に関して得られる。異なる洗浄システムは、図23〜26に示される型の異なるバイアル34によって得られ得る。そのようなバイアルは、二重の結合手段を含む。すなわち、アクセス点32に取り付けられるのに適する第一の機械的結合手段42’および第一の水圧的結合手段44’;およびバイアル34の反対の端に実質的に配置された第二の機械的結合手段42”および第二の水圧的結合手段44”である。この場合には、補充液の流れが第二の水圧的結合手段44”を通ってバイアル34に入り、その中に含まれる物質と混合し、最後に、第一の水圧的結合手段44’を通って出ていく。
【0045】
図23に模式的に示される実施態様によれば、インサート30が補充管116に沿って置かれる。そのような実施態様では、補充管116が、補充管116から迂回しそして再びそれと連結する補助的分岐120を含む。インサート30は、補助的分岐120と補充管116との連結部に置かれる。バイアル34に入る補充液は、補助的分岐120から来て、再び補充管116に流入する。
【0046】
図24に模式的に示される実施態様によれば、インサート30が、補充管116と血液流入管114との連結部に置かれる。そのような実施態様では、バイアル34に入る流れが、血液流入管114との集合点のすぐ上流の全補充液流である。配管セット126の異なる実施態様によれば、インサート30が、補充管116と血液流出管102との連結部に置かれ得る。
【0047】
バイアル34の中身を洗浄によって投与するための同じ概念が、補充ポンプ118の下流に取り付けられるときのポリマー製バイアルのために利用され得る。
【0048】
上記記載を鑑みて、当業者は、本発明に従う配管セット126が、任意の薬物のデリバリーのための自動化プロセスを行うことを可能にすることを理解し得る。実際、本発明に従う配管セット126の特定の配置が、折りたためるものまたは硬いものの何れであっても任意のバイアルから薬物を自動的に吸い上げるために補充液の流れを利用することを可能にする。そのような解決は、たとえゆっくりの放出が必要であっても、奉仕スタッフの積極的参加を必要とすることなく薬物の投与を可能にする。
【0049】
いくつかの実施態様によれば(例えば図3〜15を参照)、インサート30が、複数のアクセス点32を含む。複数のアクセス点32は、薬物および/または治療用物質の多数のおよび同時の投与を可能にする。
【0050】
本発明は、最後に、薬物を、血液透析器の体外血液回路にデリバリーするための方法に関する。本発明に従う方法は、下記工程:
血液透析器100のフィルター106に血液を供給するために血液流出管102を患者につなぐこと、
フィルター106から血液を患者に戻すために血液流入管114を患者につなぐこと、
血液透析治療の間、フィルター106によって血液から除去された排水を置き換えるための補充液を提供するために、血液流入管114または血液流出管102の一方に補充管116をつなぐこと、ここで補充管116は薬物の注入のためのインサート30を含む、および
インサート30によって薬物を上記補充液に注入すること
を含む。
【0051】
上記方法の1の実施態様によれば、薬物を上記補充液に注入する工程が、バイアル34をインサート30に連結し、そして好ましくは、バイアルから薬物を自動的に吸い上げるために上記補充液の流れを使用する工程を含む。
【0052】
上記記載に鑑みて、当業者は、本発明が、従来技術に関して指摘された欠点のほとんどを克服することを容易に理解するであろう。実際、本発明は、多くの異なる条件で体外回路に任意の薬物を自動的にデリバリーすることを可能にする。特に、上記デリバリーは、フィルターの上流または下流で、補充ポンプの上流または下流で、折りたためるバイアルまたは硬いバイアルから、および種々のデリバリー速度で、行われ得る。
【0053】
当業者は、特定の要件を満たすために、この理由のために特許請求の範囲から逸脱することなく、記載した要素を、上述の本発明に従う配管セット126、インサート30およびバイアル34の実施態様と同等の要素で改変しおよび/または置き換えることができる。
【符号の説明】
【0054】
30 インサート
31 主要ダクト
32 アクセス点
34 バイアル
36 機械的結合手段
38 水圧的結合手段
40 膜
48 可動スパイク
100 血液透析器
102 血液流出管
104 血液ポンプ
106 フィルター
108 排出管
110 排出ポンプ
112 透析液管
114 血液流入管
116 補充管
118 補充ポンプ
120 補助的分岐
126 配管セット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液の血液透析治療を行うための機器(100)と協同で使用するために適する配管セット(126)であって、
患者から該機器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するための血液流出管(102)、
フィルター(106)から患者へ血液を戻すための血液流入管(114)、および
患者の血液に補充液を与えるために適する、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方に連結された補充管(116)
を含む配管セットにおいて、該補充管(116)が、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、前記配管セット。
【請求項2】
フィルター(106)から出る排液を排出するための排出管(108)、および
透析液をフィルター(106)へ供給するための透析液管(112)
をさらに含む、請求項1記載の配管セット(126)。
【請求項3】
血液流出管(102)、排出管(108)および補充管(116)がそれぞれ、機器(100)の血液ポンプ(104)、排出ポンプ(110)および補充ポンプ(118)と協同するために適する、請求項1または2記載の配管セット(126)。
【請求項4】
薬物を注入するためのインサート(30)が、補充管(116)と血液流入管(114)または血液流出管(102)との連結部に置かれている、請求項1〜3のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項5】
補充管(116)が、補充管(116)から迂回しそして補充管(116)と再び連結する補助的分岐(120)を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項6】
薬物の注入のためのインサート(30)が、補助的分岐(120)と補充管(116)との連結部に置かれている、請求項5記載の配管セット(126)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の配管セット(126)に含まれるインサート(30)であって、
補充管(116)の流体連続性を確実にするために適する主要ダクト(31)
治療用物質を含むバイアル(34)に連結されるために適する、機械的結合手段(36)および水圧的結合手段(38)を含む少なくとも1のアクセス点(32)、および
水圧的結合手段(38)の無菌性を確実にし、かつバイアル(34)を連結することができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜(40)
を含む、前記インサート(30)。
【請求項8】
治療用物質を含むために適するバイアル(34)であって、
請求項7記載のインサート(30)のアクセス点(32)に取り付けられるために適する、機械的結合手段(42)および水圧的結合手段(44)、および
水圧的結合手段(44)の無菌性を確実にするために適し、かつ各アクセス点(32)にバイアル(34)を取り付けられるように破壊されまたは除去されることが意図された膜(46)
を含む、前記バイアル(34)。
【請求項9】
インサート(30)のアクセス点(32)に取り付けられるために適する、第一の機械的結合手段(42’)および第一の水圧的結合手段(44’)、および
補充管(116)および/または補助的分岐(120)に取り付けられるために適する、第二の機械的結合手段(42”)および第二の水圧的結合手段(44”)
を含む、請求項8記載のバイアル(34)。
【請求項10】
アクセス点(32)が可動スパイク(48)を含み、該可動スパイクは、請求項8記載のバイアル(34)がアクセス点(32)に取り付けられるとき、
バイアル(34)の膜(46)を破壊するために、および
流れをバイアル(34)内へ偏向するようにインサート(30)の主要ダクト(31)を少なくとも部分的に塞ぐために
適する、請求項7記載のインサート(30)。
【請求項11】
インサート(30)が、標準のヘパリン注入器の挿入のために適する形状および大きさの機器(100)のハウジングに置かれるように、上記標準のヘパリン注入器の形状および大きさを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項12】
薬物を血液透析器の体外血液回路にデリバリーする方法であって、下記工程:
血液透析器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するために血液流出管(102)を患者につなぐこと、
フィルター(106)から患者に血液を戻すために血液流入管(114)を患者につなぐこと、
患者の血液に補充液を供給するために適する補充管(116)を、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方につなぐこと、ここで補充管(116)は、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、および
薬物をインサート(30)によって補充液に注入すること
を含む、前記方法。
【請求項13】
薬物を補充液に注入する工程が、バイアル(34)をインサート(30)につなぎ、そして薬物をバイアル(34)から自動的に吸い上げるために補充液の流れを使用する工程を含む、請求項12記載の方法。
【請求項1】
患者の血液の血液透析治療を行うための機器(100)と協同で使用するために適する配管セット(126)であって、
患者から該機器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するための血液流出管(102)、
フィルター(106)から患者へ血液を戻すための血液流入管(114)、および
患者の血液に補充液を与えるために適する、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方に連結された補充管(116)
を含む配管セットにおいて、該補充管(116)が、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、前記配管セット。
【請求項2】
フィルター(106)から出る排液を排出するための排出管(108)、および
透析液をフィルター(106)へ供給するための透析液管(112)
をさらに含む、請求項1記載の配管セット(126)。
【請求項3】
血液流出管(102)、排出管(108)および補充管(116)がそれぞれ、機器(100)の血液ポンプ(104)、排出ポンプ(110)および補充ポンプ(118)と協同するために適する、請求項1または2記載の配管セット(126)。
【請求項4】
薬物を注入するためのインサート(30)が、補充管(116)と血液流入管(114)または血液流出管(102)との連結部に置かれている、請求項1〜3のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項5】
補充管(116)が、補充管(116)から迂回しそして補充管(116)と再び連結する補助的分岐(120)を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項6】
薬物の注入のためのインサート(30)が、補助的分岐(120)と補充管(116)との連結部に置かれている、請求項5記載の配管セット(126)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の配管セット(126)に含まれるインサート(30)であって、
補充管(116)の流体連続性を確実にするために適する主要ダクト(31)
治療用物質を含むバイアル(34)に連結されるために適する、機械的結合手段(36)および水圧的結合手段(38)を含む少なくとも1のアクセス点(32)、および
水圧的結合手段(38)の無菌性を確実にし、かつバイアル(34)を連結することができるように破壊されまたは除去されることが意図された膜(40)
を含む、前記インサート(30)。
【請求項8】
治療用物質を含むために適するバイアル(34)であって、
請求項7記載のインサート(30)のアクセス点(32)に取り付けられるために適する、機械的結合手段(42)および水圧的結合手段(44)、および
水圧的結合手段(44)の無菌性を確実にするために適し、かつ各アクセス点(32)にバイアル(34)を取り付けられるように破壊されまたは除去されることが意図された膜(46)
を含む、前記バイアル(34)。
【請求項9】
インサート(30)のアクセス点(32)に取り付けられるために適する、第一の機械的結合手段(42’)および第一の水圧的結合手段(44’)、および
補充管(116)および/または補助的分岐(120)に取り付けられるために適する、第二の機械的結合手段(42”)および第二の水圧的結合手段(44”)
を含む、請求項8記載のバイアル(34)。
【請求項10】
アクセス点(32)が可動スパイク(48)を含み、該可動スパイクは、請求項8記載のバイアル(34)がアクセス点(32)に取り付けられるとき、
バイアル(34)の膜(46)を破壊するために、および
流れをバイアル(34)内へ偏向するようにインサート(30)の主要ダクト(31)を少なくとも部分的に塞ぐために
適する、請求項7記載のインサート(30)。
【請求項11】
インサート(30)が、標準のヘパリン注入器の挿入のために適する形状および大きさの機器(100)のハウジングに置かれるように、上記標準のヘパリン注入器の形状および大きさを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の配管セット(126)。
【請求項12】
薬物を血液透析器の体外血液回路にデリバリーする方法であって、下記工程:
血液透析器(100)のフィルター(106)へ血液を供給するために血液流出管(102)を患者につなぐこと、
フィルター(106)から患者に血液を戻すために血液流入管(114)を患者につなぐこと、
患者の血液に補充液を供給するために適する補充管(116)を、血液流入管(114)または血液流出管(102)の一方につなぐこと、ここで補充管(116)は、薬物の注入のためのインサート(30)を含む、および
薬物をインサート(30)によって補充液に注入すること
を含む、前記方法。
【請求項13】
薬物を補充液に注入する工程が、バイアル(34)をインサート(30)につなぎ、そして薬物をバイアル(34)から自動的に吸い上げるために補充液の流れを使用する工程を含む、請求項12記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−506471(P2013−506471A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531427(P2012−531427)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064559
【国際公開番号】WO2011/039306
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064559
【国際公開番号】WO2011/039306
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]