説明

薬物供給装置

本発明は薬物供給装置に関する。薬物供給装置は、対向する近位部分(10)と遠位部分(12)とを有する概して細長い管状のハウジングと、ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられる針シールドスリーブ(20)とを有し、スリーブの近位部分はハウジングの近位部分の外側に所定距離だけ突出する。薬物供給装置はさらに、シリンジ担体(36)と、シリンジ(16)と、保持部材(46)とを含むシリンジ担持機構を有する。シリンジ担体(36)は、針シールドスリーブ内に摺動可能に同軸で設けられる。シリンジ(16)は、ストッパ(92)、薬物、および針を有し、同軸でシリンジ担体内に配置される。保持部材(46)は、シリンジ担体に接続される。薬物供給装置はさらに、第一の作動部材(56)と、第二の作動部材(66)と、第一のステップおよび第二のステップにおいてシリンジ担持機構を動かす力を蓄積するよう適合される駆動機構とを備え、第二の作動部材(66)にはユーザに対する注射完了についての可聴フィードバック、視覚フィードバックおよび/または触覚フィードバックを発生させる情報手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物供給装置に関し、特定的には、薬物供給ステップの完了についての情報を提示することが可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市場においては、所定用量の薬物を自動的または半自動的に供給することができる装置がいくつかあり、これらの装置は、所望の機能を得るためのいくつかの相互作用部品を有する。
【0003】
このような供給装置の一種として、所定用量の薬物を供給可能な注射器があり、例えば患者の皮膚を貫通した後に薬物を注入する機能を有する。このような装置の1つが例えばEP134950に開示されており、装置の遠位端にボタンの態様で設けられた始動機構を備える。装置の前端が注射位置に対して押された場合だけ、ボタンは機構を始動させることができる。装置の前端が注射位置に対して押さえつけられてボタンが押されると、注射器の内部にある貫通機構が作動し、針が患者の身体に押し込まれる。この後に、注入が行われる。
【0004】
注入が完了すると、患者は注射位置から針を有する注射器を外す。これにより、針が覆われてロックされるまで針シールドが前方に押される。
【0005】
上述のタイプの注射器については、いつ注入が完了して安全に注射器を外せるのかを知りたいというユーザの要望がある。ユーザに注入の状況を知らせる手法が、いくつか開発されている。
【0006】
US6,221,046には、用量ダイヤル機構の可撓タブ上に延長部を有する「注射終了クリック」を含む注射装置が開示されている。延長部を有するタブは、ハウジング内の溝に落ち込み、注入の終了時にクリック音を発する。US2004/0097883も、同様の注射クリック手法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、薬物供給装置を使用するユーザに情報を伝える手法がいくつか提案されているものの、改良の余地はまだ残っている。特に、薬物供給装置の供給ステップについて改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な説明
本発明の目的は、従来技術による装置の欠点を改善することにある。
【0009】
本発明のこの目的は、独立特許請求項の特徴による薬物供給装置によって解決される。
好適な実施例は、従属特許請求項の主題を形成する。
【0010】
本発明の主要な局面によれば、薬物供給装置は、対向する近位部分と遠位部分とを有する概して細長い管状のハウジングと、ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられる針シールドスリーブとを有する。前記スリーブの近位部分は、ハウジングの近位部分の外側に所定距離だけ突出する。薬物供給装置は、シリンジ担体と、シリンジと、保持部材とを有するシリンジ担持機構を含む。シリンジ担体は、針シールドスリーブ内に摺動可能に同軸で設けられる。シリンジは、ストッパ、薬物、および針を有し、同軸で前記シリンジ担体内に設けられる。保持部材は、シリンジ担体に接続される。さらに、薬物供給装置は、ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられ、前記針シールドスリーブに接続される第一の作動部材と、第一の作動部材内に摺動可能に同軸で設けられる第二の作動部材と、第二の作動部材内に摺動可能に同軸で設けられ、保持部材および第二の作動部材に解除可能に対して接続される駆動機構とを有する。前記駆動機構は、針を注射位置に貫通させる第一のステップにおいて前記シリンジ担持機構を動かし、針を通して薬物を放出するための第二のステップにおいてストッパを動かすための駆動力を蓄積し、前記駆動機構は第一の作動部材および第二の作動部材により制御される。前記第二の作動部材には、薬物が完全に放出された後に、細長い管状のハウジングの遠位部分に設けられた対応する相互作用手段と協働するように配置された情報手段が設けられ、駆動機構の蓄積された駆動力の残りの駆動力が第二の作動部材を細長い管状のハウジングの遠位部分に向かって変位させ、ユーザに対する注射完了についての可聴性のフィードバック、視覚性のフィードバックおよび/または触知性のフィードバックを発生させる。
【0011】
本発明の他の局面によれば、前記情報手段は、第二の作動部材の遠位横断端壁に取り付けられた情報部材を有し、前記対応する相互作用手段は、細長い管状のハウジングの遠位部分の遠位壁に設けられた開口を有する。
【0012】
本発明のさらなる局面によれば、前記情報部材は特徴的な色を有する。
本発明の他の局面によれば、駆動機構は、前記シリンジ内のストッパに作用するように設けられたプランジャ棒と、前記プランジャ棒に付勢して、注射位置に針を貫通させる第一のステップにおいて前記シリンジ担持機構を動かし、針を通して薬物を放出する第二のステップにおいて前記ストッパを動かす力を有する、予め張力がかけられた第一の圧縮ばねとを有する。
【0013】
本発明の他の局面によれば、プランジャ棒は、第二の作動部材内において摺動可能に同軸で設けられ、予め張力のかけられた第一の圧縮ばねは、プランジャ棒内においてプランジャ棒の近位端壁と第二の作動部材の遠位横断端壁との間に同軸で設けられる。
【0014】
本発明のさらなる局面によれば、第二の作動部材は、内側を向いた環状のレッジを有する可撓舌部を有し、保持部材は、内側を向いた環状のレッジを有する可撓舌部を有し、プランジャ棒は、第二の作動部材のレッジと保持部材のレッジとに対して対応する形状を有する周溝を有し、第二の作動部材の内側を向いた環状のレッジおよび保持部材の径方向内側を向いたレッジは溝に嵌まる。
【0015】
本発明の他の局面によれば、プランジャ棒の溝に配置された、第二の作動部材の舌部の内側を向いたレッジと、舌部を囲って径方向外側への移動を防ぐ第一の作動部材とによって、プランジャ棒は予め張力のかけられた第一の圧縮ばねの力に抗して保持されるように設けられる。
【0016】
本発明の他の局面によれば、薬物供給装置は、第一の作動部材の第二の環状リングに支持される環状の近位端と、第二の作動部材の係止レッジの近位面に支持される環状の遠位端とを有する、予め張力のかけられた第二の圧縮ばねをさらに備える。
【0017】
本発明のさらなる局面によれば、針シールドスリーブおよびこれに接続された第一の作動部材は、前記針シールドスリーブの近位部分が注射位置に対して押された時にハウジングおよび第二の動作部材に対して同軸で遠位方向に動くように設けられ、これによって、プランジャ棒の溝から第二の動作部材の舌部の内側を向いたレッジが解除され、予め張力をかけられた第一の圧縮ばねからの力がプランジャ棒を付勢して、第一ステップにおいてシリンジ担持機構を動かし、第二のステップにおいて前記ストッパを動かす。
【0018】
本発明の他の局面によれば、プランジャ棒の遠位端が第二の作動部材のレッジを越えた後に、予め張力のかけられた第一の圧縮ばねの残りの力によって同軸で遠位方向に動くように第二の作動部材が設けられ、これにより、舌部は径方向内側に動き、第二の作動部材の遠位横断端壁が遠位ハウジング部分の遠位壁にあたり、注射が完了した旨および装置を注射位置から安全に取り外せる旨を示す可聴性の合図を示す。
【0019】
本発明の他の局面によれば、第二の作動部材が同軸で遠位方向に動くと、前記情報部材は、前記開口を通って突出し、触知可能および/または視認可能となり、注射が完了した旨および注射位置から装置を安全に取り外すことができる旨を示す触知性情報および/または視覚性情報を提供する。
【0020】
本発明のさらなる局面によれば、針シールドスリーブおよび第一の作動部材は、針シールドスリーブの近位部分が供給位置から外されると、予め張力のかけられた第二の圧縮ばねから第一の作動部材およびこれに接続されて針を覆う針シールドに作用する力によって、ハウジングおよび第二の作動部材に対して同軸で近位方向に動くように設けられる。
【0021】
本発明の他の局面によれば、第一の作動部材の内面には、針シールドスリーブおよび第一の動作部材が同軸で近位方向に動いた後に第二の作動部材の帯状部分と相互作用するように設けられたリブが設けられ、針シールドスリーブが装置の遠位方向に押し込まれることを防ぐ。
【発明の効果】
【0022】
本発明にはいくつかの利点がある。ユーザには注射の完了に関する情報が提供されるため、ユーザは注射が完了したことを知った上で供給位置から薬物供給装置を安全に取り外すことができる。
【0023】
利点は、貫通および注入に使用される圧縮ばね手段の残りの力をユーザに対する情報の提供に使用できることである。
【0024】
この局面において、情報は視覚的に提供することができる。すなわち、例えば窓または孔のような装置の開口を通して、注射が完了したことをユーザが実際に見ることができる。さらに、可視性を向上させるべく、表示部は明るい色および/または装置の他の部分とは異なる色にすることができる。
【0025】
さらに、情報部材は装置のハウジングを通して突出させることができる。これにより、可視情報に加えて、触知性情報をユーザに提供することができる。
【0026】
視覚性情報および/または触知性情報に加え、本発明の装置は可聴性とすることができ、注射が完了した時に特徴的な音を鳴らすことができる。
【0027】
情報部材の好適な構成は、装置の遠位端に設けることにある。情報機能を提供するために第二の作動部材以外の他の部品を必要としないため、設計が容易となる。
【0028】
行われる注射について積極的に伝えるいくつかの方法の全ては、本発明により実現される。
【0029】
本発明のこれらの局面および他の局面、ならびに利点は、以下の発明の詳細な説明および添付の図面により明らかになるであろう。
【0030】
本発明の以下の詳細な説明においては、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明の薬物供給装置の側断面図である。
【図1b】本発明の薬物供給装置の側断面図であって、図1aに対して90°の角度で示した図である。
【図2】図1の薬物供給装置の分解図である。
【図3】本発明の薬物供給装置の側断面図であって、異なる機能的状態を示した図である。
【図4】本発明の薬物供給装置の側断面図であって、異なる機能的状態を示した図である。
【図5】本発明の薬物供給装置の側断面図であって、異なる機能的状態を示した図である。
【図6】本発明の薬物供給装置の側断面図であって、異なる機能的状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本願において、「遠位部分/端」の用語は、装置の使用時において患者への供給位置から最も離れた位置にある装置の部分/端または装置の部材の部分/端を示す。これに対応して、「近位部分/端」の用語は、装置の使用時において患者への供給位置に最も近い位置にある装置の部分/端または装置の部材の部分/端を示す。
【0033】
図1に示されるような薬物供給装置、例えば自動注射器は、対向する近位部分10と遠位部分12とを有する、概して細長い管状のハウジングを含む。近位ハウジング部分10には、薬液を収容するシリンジ16を見るための細長い開口14が設けられる(図2)。遠位部分には、環状の凹部である係合手段が、例えばその内面に設けられる。この内面は、例えば近位部分の近位側の外面の対応する係合手段と対応するように構成されている。
【0034】
本装置は、針シールドスリーブ20をさらに有し(図2)、以下では針シールドという。針シールドは、所定の直径を有する近位部分22と、近位部分よりも大きい直径の遠位部分24を有し、これらの部分は中間円錐部分26(図2)によって接合される。シリンジ16を見るための2つの細長い溝28が針シールドに沿って針シールドの対向する側面に設けられる(図2)。円錐部分26の内面には、周レッジ30が設けられる(図2)。針シールドの遠位端には、2つの開口32が対向して設けられ、各開口には、やや内側に突出する可撓舌部34が設けられる(図2)。針シールドスリーブ20は、摺動可能に同軸でハウジング内に設けられ、前記スリーブの近位部分は、ハウジングの近位部分から所定距離だけ外に突出している。
【0035】
本装置はまた、シリンジ担体36と、シリンジ16と、保持部材46とを有するシリンジ担持機構を含む。シリンジ担体36は、針シールドスリーブ内に摺動可能に同軸で設けられる。シリンジ16は、ストッパ92と、薬物と、針とを有し、シリンジ担体内に同軸で設けられる。保持部材46は、シリンジ担体に接続される。
【0036】
シリンジ担体36は概して管状体の形態を有し、シリンジ担体の近位部分には、より小さい直径を有するネック部38が設けられる(図2)。ネック部と隣接して、両面に切り欠き部が設けられ、ガイド面39が形成される。これらの面は、針シールドの内面の対応する形状と協働し、針シールドに対するシリンジ担体の回転へのストップ機構を実現する。シリンジ担体の遠位端には、遠位方向に延在する2つの舌部40が設けられ、各舌部には、開口42が設けられ、各開口の遠位縁には、内側を向いたレッジが設けられる(図2)。さらに、シリンジ担体の内面には、径方向内側を向いたフランジが設けられ、シリンジ担体壁と、その内側に設置されるシリンジ16との間に空間が形成される。
【0037】
保持部材46(図2)は、その外周に設けられた環状レッジ50を有するリング状体48と、装置の遠位端を向いた複数の可撓舌部52とを有し、各舌部52には、径方向内側を向いたレッジ54が設けられる(図1b)。
【0038】
本装置はまた、以下に記載するように、ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられ、針シールドスリーブ20に結合される第一の作動部材56を有する。第一の作動部材56は、管形状を有し、その外面には、レッジ60で終端する円錐部分58を有する近位端を含む(図2)。レッジ60から所定距離をおいて、第一の環状リング62が外面に設けられる(図2)。第二の環状リング64も、レッジ60からさらに所定距離をおいて設けられる。
【0039】
本装置は、第二の作動部材66をさらに有する。第二の作動部材66は、第一の作動部材56内に摺動可能に同軸で設けられ、その形状は主に管状である。複数の長手方向に延在する切り欠き部68が第二の作動部材の近位側の外面に沿って設けられ、可撓舌部70を形成する(図2)。各可撓舌部70の近位端は、より大きい直径を有する帯状部分72と接する傾斜した移行面を有する(図3)。移行面と隣接する内面には、内側方向を向いた環状のレッジ74が設けられる(図1b)。さらに、第二の作動部材66には、細長い管状のハウジングの遠位部分に設けられた、対応する相互作用手段と協働する情報手段が設けられる。情報手段は、第二の作動部材の遠位横断端壁76に取り付けられた情報部材78を有する。前記対応する相互作用手段は、細長い管状のハウジングの遠位部分の遠位壁82に設けられた開口80を有する(図1a)。
【0040】
本装置は、駆動機構を有する。駆動機構は、第二の作動部材66内で摺動可能に同軸で設けられ、保持部材および第二の作動部材に対して解除可能に接続される。駆動機構は、以下に記載するように、第一の駆動部材および第二の作動部材により制御される。駆動機構は、第一のステップおよび第二のステップにおいてシリンジ担持機構を動かすための駆動力を蓄積し、薬物を完全に出し切った後に第二の作動部材を細長い管状のハウジングの遠位部分に対して付勢することで、ユーザに対して注射の終了に関する可聴性、可視性、および/または触知性のフィードバックを発生させるよう適合されている。
【0041】
駆動機構は、プランジャ棒90と、第一の圧縮ばね94とを有する。プランジャ棒90は、シリンジ16内のストッパ92に作用するように設けられる。第一の圧縮ばね94は、プランジャ棒を付勢することが可能な力を蓄積するように予め張力をかけられ、注射位置に針を貫通させる第一のステップにおいてシリンジ担持機構を動かし、針を介して薬物を放出する第二のステップにおいてストッパを動かす。プランジャ棒は、第二の作動部材内に摺動可能に同軸で設けられ、予め張力をかけられた第一の圧縮ばね94は、プランジャ棒内に同軸で、プランジャ棒の近位端側の壁98と第二の作動部材の遠位端側の横断壁76との間に設けられる。ガイド棒100は、第一の圧縮ばね94の内側に設けられる(図1a)。
【0042】
プランジャ棒90は、使用されるシリンジ体の内径よりもやや小さい外径を有する管として形成される。プランジャ棒90には、第二の作動部材66のレッジ74および保持部材46のレッジ54に対して対応する形状を有する周溝96が設けられる。これにより、第二の作動部材66の内側方向を向いた環状レッジ74および保持部材46の径方向内側を向いたレッジ54は、溝96に嵌まる(図1b)。
【0043】
本装置は、予め張力をかけられた第二の圧縮ばね102をさらに有する。第二の圧縮ばね102は、第一の作動部材56の第二の環状リング64に支持される環状の近位端と、第二の作動部材66の係止レッジ104の近位面に支持される環状の遠位端とを有する(図2)。
【0044】
本発明に係る装置の機能を、図3−図6を参照して説明する。
装置が組み立てられると、遠位ハウジング部分12は、適切な係合手段によって近位ハウジング部分に固着されて長い管状のハウジングを形成し、第一の作動部材および第二の作動部材は同軸で相対的に動くことができる。しかし、装置が非作動位置にある場合、プランジャは、プランジャ90の溝96内に配置された第二の作動部材66の舌部70の内側を向いたレッジ74と、舌部70を囲って径方向外側への動きを防止する第一の作動部材56とによって、予め張力をかけられた第一の圧縮ばね94の蓄積された力に抗して保持される。さらに、保持部材46のレッジ54も溝96内に配置される(図1b)。シリンジ担体36の各開口42の遠位縁の内側を向いたレッジは、保持部材46の環状レッジ50の遠位端面を越え、シリンジ担体を保持部材に接続させる。同時に、針シールド20の舌部34は、第一の作動部材56のレッジ60の遠位面に嵌まり、針シールドを第一の作動部材に接続させる。
【0045】
針シールドスリーブおよびこれに接続される第一の作動部材は、針シールドスリーブの近位部分が注射位置に対して押された時に、予め張力をかけられた第二の圧縮ばね102の力に抗して、ハウジングおよび第二の作動部材に対して同軸で遠位方向に動くように配置される(図3)。第一の作動部材が遠位方向に動くと、第二作動部の帯状部分72が第一の作動部材56の囲いから出て(図3)、作動手段の舌部70の弾力特性によって舌部70の近位端が径方向外側に撓み、レッジ74がプランジャ棒90の溝96から外れる。しかし、保持部材46のレッジ54は未だプランジャ棒の溝96内にあり、近位端面がシリンジ担体36の遠位端に当接していることから、予め張力のかけられた第一の圧縮ばねからの蓄積した力が、第一ステップにおいて前記プランジャ棒を付勢して前記シリンジ担持機構を動かす。これにより、針が注射位置に貫通する。
【0046】
シリンジ担体は、その最も近位側の位置に到達すると止められる。しかし、プランジャ棒にかかる、予め張力のかけられた第一の圧縮ばねの蓄積した力が非常に強いことから、保持部材46のレッジ54がプランジャ棒の溝から外される。
【0047】
予め張力のかけられた第一の圧縮ばねからの蓄積された力は、前記プランジャ棒を付勢し続け、第二のステップにおいてシリンジ内の前記ストッパを動かし、シリンジの内側の近位端にストッパが到達するまで薬液が患者に注入される(図4)。薬液が注入され、プランジャ棒の遠位端が第二の作動部材66のレッジ74を越えると、舌部70は径方向内側に動く。予め張力のかけられた第一の圧縮ばねは第二の作動部材66の横方向の遠位端壁76の内面にも作用し、蓄積された力が残るため、第二の作動部材66は、第二の作動部材66の横方向の遠位端壁76の外面が遠位ハウジング部分12の遠位壁82の内面に当たるまで遠位方向に動く。これにより、供給、たとえば注射が完了した旨、および装置を安全に注射位置から取り外せる旨を示す可聴音を患者に提供する(図5)。
【0048】
さらに、第二の作動部材が遠位方向に同軸で動くと、第二の作動部材66の突起78が開口80を通って突出し、触知可能および/または視認可能となり、注射が完了した旨(図5)および装置が注射位置から安全に取り外すことができる旨の触知性情報および/または視覚性情報が提供される。例えば、ユーザの指が端壁82に位置し、さらに端壁82を通して突起78を見ることができる視覚的表示がある場合が考えられる。可視性を向上するために、突起は明るい色にして装置の他の部分の色と異ならせることができる。
【0049】
針シールドスリーブおよび第一の作動部材は、針シールドスリーブの近位部分が供給位置から外されると(図6)、第一の作動部材とこれに接続される針を覆うための針シールドに作用する、予め張力をかけられた第二の圧縮ばね102からの力によってハウジングおよび第二の作動部材に対して同軸で近位方向に動くように配置されている。
【0050】
第一の作動部材56は、針シールドスリーブおよび第一の作動部材が同軸で近位方向に動かされた後に、第二の作動部材66の帯状部分72と相互に接するように配置されたリブ(図示せず)をその内面に有し、針シールドスリーブが遠位方向に装置内へ押し込まれることを防ぎ、これによって意図せずに針を刺してしまうことを防ぐ。
【0051】
本明細書および図面に示された実施例は本発明群の限定されない例に過ぎず、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物供給装置であって、
−対向する近位部分(10)と遠位部分(12)とを有する概して細長い管状のハウジングと、
−ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられる針シールドスリーブ(20)とを備え、前記スリーブの近位部分はハウジングの近位部分の外側に所定距離だけ突出し、薬物供給装置はさらに、
−針シールドスリーブ内に摺動可能に同軸で設けられるシリンジ担体(36)と、ストッパ(92)、薬物、および針を有し、同軸で前記シリンジ担体内に設けられるシリンジ(16)と、シリンジ担体に接続される保持部材(46)とを含むシリンジ担持機構と、
−ハウジング内に摺動可能に同軸で設けられ、前記針シールドスリーブに接続される第一の作動部材(56)と、
−第一の作動部材内に摺動可能に同軸で設けられる第二の作動部材(66)と、
−第二の作動部材内に摺動可能に同軸で設けられ、保持部材および第二の作動部材に対して解除可能に接続される駆動機構とを備え、前記駆動機構は、針を注射位置に貫通させる第一のステップにおいて前記シリンジ担持機構を動かし、針を通して薬物を放出するための第二のステップにおいてストッパを動かすための駆動力を蓄積するよう適合され、前記駆動機構は第一の作動部材および第二の作動部材により制御され、
前記第二の作動部材(66)には、薬物が完全に放出された後に、細長い管状のハウジングの遠位部分に設けられた対応する相互作用手段と協働するように配置された情報手段が設けられ、駆動機構の蓄積された駆動力の残りの駆動力が第二の作動部材を細長い管状のハウジングの遠位部分に向かって変位させ、ユーザに対する注射完了についての可聴性のフィードバック、視覚性のフィードバックおよび/または触知性のフィードバックを発生させる、薬物供給装置。
【請求項2】
前記情報手段は、第二の作動部材の遠位横断端壁(76)に取り付けられた情報部材(78)を有し、前記対応する相互作用手段は、細長い管状のハウジングの遠位部分の遠位壁(82)に設けられた開口(80)を有する、請求項1に記載の薬物供給装置。
【請求項3】
前記情報部材(78)は特徴的な色を有する、請求項2に記載の薬物供給装置。
【請求項4】
駆動機構は、前記シリンジ(16)内のストッパ(92)に作用するように設けられたプランジャ棒(90)と、前記プランジャ棒(90)に付勢して、注射位置に針を貫通させる第一のステップにおいて前記シリンジ担持機構を動かし、針を通して薬物を放出する第二のステップにおいて前記ストッパ(92)を動かす力を有する、予め張力がかけられた第一の圧縮ばね(94)とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の薬物供給装置。
【請求項5】
プランジャ棒は、第二の作動部材内において摺動可能に同軸で設けられ、予め張力のかけられた第一の圧縮ばね(94)は、プランジャ棒内においてプランジャ棒の近位端壁(98)と第二の作動部材の遠位横断端壁(76)との間に同軸で設けられる、請求項4に記載の薬物供給装置。
【請求項6】
第二の作動部材(66)は、内側を向いた環状のレッジ(74)を有する可撓舌部(70)を有し、保持部材(46)は、内側を向いた環状のレッジ(54)を有する可撓舌部(52)を有し、プランジャ棒は、第二の作動部材(66)のレッジ(74)と保持部材(46)のレッジ(54)とに対して対応する形状を有する周溝(96)を有し、第二の作動部材の内側を向いた環状のレッジ(74)および保持部材の径方向内側を向いたレッジ(54)は溝(96)に嵌まる、請求項5に記載の薬物供給装置。
【請求項7】
プランジャ棒(90)の溝(96)に配置された、第二の作動部材(66)の舌部(70)の内側を向いたレッジ(74)と、舌部(70)を囲って径方向外側への移動を防ぐ第一の作動部材(56)とによって、プランジャ棒は予め張力のかけられた第一の圧縮ばねの力に抗して保持されるように設けられる、請求項6に記載の薬物供給装置。
【請求項8】
第一の作動部材(56)の第二の環状リング(64)に支持される環状の近位端と、第二の作動部材(66)の係止レッジ(104)の近位面に支持される環状の遠位端とを有する、予め張力のかけられた第二の圧縮ばね(102)をさらに備える、請求項7に記載の薬物供給装置。
【請求項9】
針シールドスリーブおよびこれに接続された第一の作動部材は、前記針シールドスリーブの近位部分が注射位置に対して押された時にハウジングおよび第二の動作部材に対して同軸で遠位方向に動くように設けられ、これによって、プランジャ棒(90)の溝(96)から第二の動作部材(66)の舌部(70)の内側を向いたレッジ(74)が解除され、予め張力をかけられた第一の圧縮ばねからの力がプランジャ棒(90)を付勢して、第一ステップにおいてシリンジ担持機構を動かし、第二のステップにおいて前記ストッパ(92)を動かす、請求項8に記載の薬物供給装置。
【請求項10】
プランジャ棒の遠位端が第二の作動部材(66)のレッジ(74)を越えた後に、予め張力のかけられた第一の圧縮ばね(94)の残りの力によって同軸で遠位方向に動くように第二の作動部材が設けられ、これにより、舌部(70)は径方向内側に動き、第二の作動部材(66)の遠位横断端壁(76)が遠位ハウジング部分(12)の遠位壁(82)にあたり、注射が完了した旨および装置を注射位置から安全に取り外せる旨を示す可聴性の合図を示す、請求項9に記載の薬物供給装置。
【請求項11】
第二の作動部材が同軸で遠位方向に動くと、前記情報部材(78)は、前記開口(80)を通って突出し、触知可能および/または視認可能となり、注射が完了した旨および注射位置から装置を安全に取り外すことができる旨を示す触知性情報および/または視覚性情報を提供する、請求項10に記載の薬物供給装置。
【請求項12】
針シールドスリーブおよび第一の作動部材は、針シールドスリーブの近位部分が供給位置から外されると、予め張力のかけられた第二の圧縮ばね(102)から第一の作動部材およびこれに接続されて針を覆う針シールドに作用する力によって、ハウジングおよび第二の作動部材に対して同軸で近位方向に動くように設けられる、請求項11に記載の薬物供給装置。
【請求項13】
第一の作動部材(56)の内面には、針シールドスリーブおよび第一の動作部材が同軸で近位方向に動いた後に第二の作動部材(66)の帯状部分(72)と相互作用するように設けられたリブが設けられ、針シールドスリーブが装置の遠位方向に押し込まれることを防ぐ、請求項12に記載の薬物供給装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507173(P2013−507173A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533113(P2012−533113)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051004
【国際公開番号】WO2011/043714
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(503211493)エス・ホー・エル・グループ・アクチボラゲット (30)
【氏名又は名称原語表記】SHL GROUP AB
【Fターム(参考)】