説明

薬物応答を予測するための前立腺特異的抗原の使用

対象が薬物に反応する見込みを判定する方法であって、PSA関連障害を患っており、かつ上記PSA関連障害を治療するための薬物を投与されている対象で、少なくとも1つのPSA関連値を測定する工程と、上記PSA関連値をそれぞれの対照値と比較する工程と、上記対象が上記薬物に反応する見込みを判定する工程とを含み、上記PSA関連値が、BPSA量、proPSA量、BPSA対proPSAの比率、BPSA対総PSAの比率、BPSA対遊離PSAの比率、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ上記BPSA量、上記BPSA対proPSAの比率、上記BPSA対総PSAの比率、または上記BPSA対遊離PSAの比率がそれぞれの対照値よりそれぞれの第1既定値高い場合、上記proPSA量がそれぞれの対照値より第2の既定値低い場合、またはこれらの組合せの場合、対象が上記薬物に反応する見込みが高いことを示す方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は概ね、薬物反応の指標としての前立腺特異的抗原(PSA)の使用に関する。詳細には、本発明は、対象における様々な形態のPSAの濃度およびそれらの比率の変化によって、対象が薬物治療に反応するかどうかを予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本出願を通して、様々な参考文献を括弧内に示すか、あるいは直接的に引用する。本発明が属する技術分野の現況をより完全に記述するために、これらの出版物の開示をそれらの全体において参照により本出願に組み込む。これらの参考文献の完全な引用文献目録は、本出願の最後、特許請求の範囲の前に見出すことができよう。
【0003】
PSAは、セリンプロテアーゼのヒトカリクレインファミリーのメンバーであり((1)に広範に概説されている)、キモトリプシン様の酵素活性を有するセリンエンドペプチダーゼである。成熟型PSAは、N末端残基としてイソロイシンを有し、分子量28400Dを有する237アミノ酸残基である(2、3)。
【0004】
PSAは、血清中で遊離型のPSA(遊離PSA、fPSA)として存在しているが、PSAの大部分は、アルファ−1−抗キモトリプシン(ACT)との複合体中に存在している。血清中の遊離PSAは酵素的に不活性であることが一般的に認められている。PSAは、血清プロテアーゼ阻害剤と複合体形成できるセリンプロテアーゼである。ヒト血清は、高レベルのACTおよびアルファ−2−マクログロブリンを含有しており、これらは両方ともPSAと複合体形成することが示されている(4)。血清中における、イムノアッセイで検出できるPSAの70%から95%までがACTとの複合体中に存在する。残りは複合体形成していない遊離PSAである(5、6)。
【0005】
血清中の遊離PSA、すなわち複合体形成していないPSAのレベルによって、前立腺肥大症(BPH)からの前立腺癌の識別を改善できることが実証されている(5、7)。遊離PSA対総PSA(遊離PSAプラス複合体PSA)の比率が高いことは、BPHとさらに強い相関関係にある。最近の研究によって、前立腺の移行領域(TZ)および辺縁領域(PZ)に存在している異なった形態のPSAが同定された。これらの領域は、当技術分野で詳細に定義されている(8)。簡潔には、TZは、緻密な間質中に包埋された小さい単純な腺という特徴を有し、一方、PZは、ゆるい間質中に包埋された小さい腺という特徴を有する。TZ組織は、PZと明確な境界を形成している。癌は主としてPZに局在し、一方、BPHはTZの組織拡大の結果であるため、PZおよびTZは、最も注目される領域である。広域に及んだBPHを有すると、TZが他の前立腺領域の体積の数倍にまで成長する。TZ組織は、近位の前立腺尿道を囲んでおり、これが理由で、尿流量の制限が、しばしばBPHの結果として起こるTZ拡張の症候となっている。
【0006】
組織中のPSA形態の検査によって、遊離PSAは、以下の3つの主要な形態からなることを示した(9)。1)末端欠失型proPSA形態を含めた、前駆体形態のPSA(proPSA)。この形態は、前立腺腫瘍で増大しており、初期および高悪性度の前立腺癌を検出するための良い血清マーカーであることが示されている(10〜12)。2)BPSA。この形態は、結節性過形成の移行領域組織で増大しており(13)、BPHを有する男性の血清中で増大している(14)。3)inPSAとして知られている第3の形態の遊離PSA。この形態は、遊離PSAからBPSA形態およびすべてのproPSA形態を引くことによって計算される(9、15)。inPSAは、BPSAのように内部で切断されたペプチド結合を含有せず、かつproPSA形態のようなプロリーダーペプチドを含有せず、なおそれでも酵素的に不活性であり、したがって血清プロテアーゼ阻害剤と共有結合した複合体を形成しない、完全で不活性なPSAで構成されていると考えられている。ひとたび総proPSA、BPSA、および総遊離PSAがイムノアッセイによって測定されれば、inPSAは、遊離PSAからproPSAおよびBPSAを引くことによって計算される残りの遊離PSAである。したがって、遊離PSAは、proPSAと、癌に、より関連した形態のPSAである末端欠失型アイソフォームのproPSA(12、16)と、BPHに関連した形態のPSAであるBPSAと、inPSAとを含有する。研究によって、proPSAは癌の血清マーカーとして使用できること、そして、BPSAは生検陰性の男性の血清中で増大していることが示されている(14)。
【0007】
臨床的なBPHを患っている男性は、尿流量の制限、膀胱からの不完全な排尿、および頻繁な排尿の必要など、尿流量に関連した医学的症候を有する(17)。症候は、5−アルファ−レダクターゼ阻害剤(5ARI)と呼ばれる薬物、および一般的にアルファ遮断薬と呼ばれるアルファアドレナリン受容体遮断薬で治療できる。アルファ遮断薬は、前立腺のアドレナリン受容体を遮断することによって迅速に作用する。アルファ遮断薬は、数時間以内に症候の軽減をもたらすが、BPH進行の生理学には影響を与えない。したがって、BPHは、何カ月も何年間にもわたって、アルファ遮断薬がもはや無効となるまで進行し続けることができる。一方、5ARIは、テストテスロンがその生理的に活性な形態であるジヒドロテストステロン(DHT)に転換するのを阻止することによって作用する。5ARIは、症候を軽減するのに通常6から12カ月かかるが、この薬物は、前立腺におけるテストテスロン活性化の生化学経路を変化させ、それによって疾患進行の過程を改変することによって作用する。前立腺における主要な活性アンドロゲンであるDHTがないと、多くの生理的経路が影響を受ける。5ARIの投与に起因するDHTレベルの低下によって、前立腺組織が縮小し、それによって、最終的な症候の軽減が一部の男性で得られた。
【0008】
しかし、5ARIは、有益効果が完全に認識されるであろうときまで、最長12カ月までの期間がなければならないので、5ARI治療からの利益享受が見られない男性の12カ月間にわたる薬物の費用に加えて、患者の薬剤服用遵守に関する問題がある。したがって、反応する可能性が最も高い男性を同定するマーカー、または5ARI治療に生化学的に反応する男性、また前立腺の収縮に関連した最終的な症候の軽減を受けることが予期されるであろう男性を示すマーカーを有することが望ましい。現行の診療では、短期と長期とを組み合わせた症候軽減を得るためにアルファ遮断薬と5ARIとを共に与えることができる。
【0009】
PSA発現はアンドロゲンによって調節されているので、5ARIの別の効果は、PSAレベルを、薬物投与前のレベルの約半分に低下させることである。前立腺体積の相関物として、すなわち5ARI治療を男性に与えるべきステージを示すマーカーとして、総PSAが用いられている(18、19)。5ARIの投与は、PSAの血清濃度を治療前のレベルの約半分にまで低下させることが示されている。しかし、薬物治療に反応するであろう男性がどれかを予測する総PSAの能力は中程度であり、改善されたマーカーが必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明は、対象における様々なPSA形態の濃度およびそれらの比率の変化が、ある薬物を用いた治療にその対象が反応する見込みと相関しているという予想外の発見に基づいている。したがって、そのような変化を、その対象が薬物に反応するものであるかどうか予測するのに用いることができる。
【0011】
したがって、本発明の一態様は、対象が薬物に反応する見込みを判定する方法を提供する。この方法は、PSA関連障害を患っており、かつ上記PSA関連障害を治療するための薬物を投与されている対象で、少なくとも1つのPSA関連値を測定する工程と、上記PSA関連値をそれぞれの対照値と比較する工程と、上記対象が上記薬物に反応する見込みを判定する工程とを含む。上記PSA関連値は、BPSA量、proPSA量、BPSA対proPSAの比率、BPSA対総PSAの比率、BPSA対遊離PSAの比率、およびこれらの組合せからなる群から選択される。上記BPSA量、上記BPSA対proPSAの比率、上記BPSA対総PSAの比率または上記BPSA対遊離PSAの比率がそれぞれの対照値よりそれぞれの第1既定値高い場合、上記proPSA量がそれぞれの対照値より第2の既定値低い場合、またはこれらの組合せの場合、上記対象が上記薬物に反応するものとされる。
【0012】
例えば、上記対照値は、薬物投与前に測定された、上記対象における上記PSA関連値でよく、上記PSA関連障害は、前立腺肥大症、前立腺癌、または前立腺炎でよい。
【0013】
薬物投与の12カ月後に上記対象の前立腺体積が10%以上減少している場合、薬物投与の12カ月後に上記対象の国際前立腺症状スコア(IPSS)が2以上減少している場合、あるいは薬物投与の12カ月後に上記対象の最大尿流速が1cc以上増加している場合に、上記対象が上記薬物に反応するものとされる。
【0014】
PSA関連障害を治療するのに用いられる薬物には、5−アルファ−レダクターゼ阻害剤(5ARI)、ビカルタミド、およびフルタミドなどのアンドロゲン遮断薬が含まれるが、これらに限定されない。5ARIの例には、例えば、デュタステライドおよびフィナステリドが含まれる。
【0015】
本発明の目的では、PSA関連値は、対象からの生理学的流体または前立腺組織試料中で測定したものでよい。生理学的流体試料は、例えば、血液、血清、精漿、尿または血漿の試料でよい。
【0016】
一実施形態では、上記第1または第2の既定値が5%以上である。別の実施形態では、上記第1または第2の既定値が、それぞれの第1または第2の既定オッズ比に対応している。例えば、上記第1または第2の既定オッズ比は2以上でよい。
【0017】
上記PSA関連値は、様々な時点、例えば薬物投与の1週間後と3カ月後との間に測定したものでよい。例えば、上記PSA関連値は、薬物投与の1カ月後に測定したものでよい。一実施形態では、上記第1の既定値が、上記BPSA量には86%以上であり、上記BPSA対proPSAの比率には450%以上であり、上記BPSA対総PSAの比率には78%以上であり、上記BPSA対遊離PSAの比率には52%以上である場合、上記第2の既定値が48%以上である場合、またはこれらの組合せの場合に、上記対象が上記薬物に反応する可能性が高い。
【0018】
別の実施形態では、上記第1の既定値が、上記BPSA量には25%以上であり、上記BPSA対proPSAの比率には230%以上であり、上記BPSA対総PSAの比率には59%以上であり、上記BPSA対遊離PSAの比率には44%以上である場合、上記第2の既定値が41%以上である場合、またはこれらの組合せの場合に、上記対象が上記薬物に反応する可能性が高い。
【0019】
さらに別の実施形態では、オッズ比が2以上である場合に、上記対象が上記薬物に反応する可能性が高く、これは、上記BPSA対proPSAの比率に関する第1の既定値が250%以上である場合、または上記BPSA量に関する第1の既定値が20%以上である場合に対応している。
【0020】
上記proPSAは、[−1]proPSA、[−2]proPSA、[−3]proPSA、[−4]proPSA、[−5]proPSA、[−6]proPSA、[−7]proPSA、およびこれらの組合せからなる群から選択したものでよい。
【0021】
別の態様では、本発明は、対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、上記対象の遊離PSA量を測定するための第2の因子と、上記対象の総PSA量またはproPSA量を測定するための第3の因子とを含むキットを提供する。
【0022】
本発明は、対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、上記対象のproPSA量を測定するための第2の因子と、上記対象の総PSA量を測定するための第3の因子と、上記対象の遊離PSA量を測定するための第4の因子とを含むキットをさらに提供する。
【0023】
本発明のキットは、対象が薬物に反応する見込みを上述の方法に従って測定するのに使用できる。上記因子の例には、抗体、例えばモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明は、PSA関連障害を治療するための薬物に対象が反応するかどうか予測するための方法およびキットを提供する。これらの方法およびキットは、上記薬物を用いた継続的な治療を行う対象の初期選択を可能にする。
【0025】
本発明の上述した特徴および他の特徴、ならびにそれらを得る方法は、添付図面と合わせて、以下の説明を参照することによって、より明らかとなり、かつ最も良く理解されるであろう。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本発明の範囲を制限しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血中のBPSAが、5ARI治療約1カ月目に増大しており、また、薬物治療に最終的に反応する男性においてこの増大がより顕著であるという予想外の発見に基づいている。別の驚くべき発見は、proPSAが、5ARI治療約1カ月目に予測されたのよりも早くに有意な低減を示すこと、および薬物治療に最終的に反応する男性においてこの低減がより顕著であることであった。予想外なことに、BPSA対proPSAの比率は、BPSAまたはproPSAのどちらか単独にまさる追加の識別能を生み出す。
【0027】
下記の実施例IおよびIIで示す通り、薬物投与の12カ月後に前立腺体積の10%以上の縮小を示した男性において、薬物投与の約1カ月後におけるBPSA対proPSAの比率は、ベースライン比率より450%増大した。ベースライン比率からの1カ月目比率の識別能の差は、個別のBPSAの増大(86%)またはproPSAの低減(48%)よりも有意に大きい。BPSA対PSAおよびBPSA対遊離PSAの比率はそれぞれ78%および52%増大した。薬物反応の指標として、薬物投与の12カ月後における2以上のIPSS低下を用いる場合、BPSA対proPSAの比率の増大は、ベースラインを230%超えるものであった。BPSA(25%)には有意な増大がなかったが、proPSA(41%)は有意に低減した。BPSA/総PSAおよびBPSA/遊離PSAの比率の増大は、それぞれ59%および44%であった。明らかに、総PSAレベルおよび遊離PSAレベルは比較的一定にとどまり、これらの比率は約1カ月における初期薬物治療では有意に変化せず、そして、これらのレベルは、薬物によるDHT阻害のため、3カ月目に低下する。したがって、BPSA、BPSA対proPSA比、BPSA対総PSA比、およびBPSA対遊離PSA比の有意な増大ならびにproPSAの有意な低減は予想外であった。また、これらのどの変化も薬物反応と有意に相関したものでありうる。
【0028】
したがって、一態様では、本発明は、対象が薬物に反応する見込みを判定する方法を提供する。この方法は、以下の工程、すなわち、(1)PSA関連障害を患っており、かつ上記PSA関連障害を治療するための薬物を投与されている対象で、少なくとも1つのPSA関連値を測定する工程と、(2)上記PSA関連値をそれぞれの対照値と比較する工程と、(3)上記対象が上記薬物に反応する見込みを判定する工程とを含む。上記PSA関連値は、例えば、BPSA量、proPSA量、BPSA対proPSAの比率、BPSA対総PSAの比率、BPSA対遊離PSAの比率、またはこれらの組合せでよい。上記BPSA量、上記BPSA対proPSAの比率、上記BPSA対総PSAの比率もしくは上記BPSA対遊離PSAの比率がそれぞれの対照値より、それぞれの第1既定値高い場合、上記proPSA量がそれぞれの対照値より第2の既定値低い場合、上記対象における上記値変化の任意の組合せが生じた場合に、上記対象が上記薬物に反応する可能性が高い。
【0029】
「BPSA」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1箇所、Lys182に、成熟型PSAアミノ酸配列の切断を含むPSAの一形態を指す。成熟型PSAのアミノ酸配列は参照文献(20)に完全に記載されており、この開示の関連内容を参照により本明細書に組み込む。成熟型PSAは、分子質量28400Dを有する237アミノ酸残基を有する(21)。本発明のBPSAは、上記BPSAのポリペプチド鎖が残基182と183との間で加水分解されていることを除いて、成熟型PSAと同じアミノ酸配列を有する。本発明の実施形態によれば、BPSAは、成熟型PSAのアミノ酸配列におけるIle1、Lys145、およびLys146に1つまたは複数の追加切断を含みうる。本発明の一実施形態では、BPSAは、Lys145およびLys182に2箇所の切断を含む。
【0030】
「proPSA」という用語は、本明細書で使用される場合、PSAの前駆体形態を指す。PSAの完全長前駆体形態は、7アミノ酸のプロペプチド(すなわちリーダーペプチド)、すなわち配列番号1として特定されているAPLILSRと、それに続く237アミノ酸の成熟型PSAタンパク質とを含有する。proPSAの完全長アミノ酸配列は、当技術分野で知られており、その関連内容が参照により本明細書に組み込まれている参考文献(20)に完全に記載されている。本発明の目的では、プロペプチド配列の最終アミノ酸である「R」を、[−1]アミノ酸と数える。例えば、[−7]proPSAは、その末端がプロペプチドの−7アミノ酸で開始しているproPSAである。これは完全長proPSAを含有している。[−5]proPSAは、そのproPSAの末端がプロペプチドの−5アミノ酸で開始することを示し、それはプロペプチド配列の最終5アミノ酸配列を含有している。本発明の目的では、proPSAに、完全長型のproPSAと、上記プロペプチドにおける任意のアミノ酸で末端が開始する末端欠失型のproPSAとの両方が含まれる。すなわち、上記proPSAは、[−1]proPSA、[−2]proPSA、[−3]proPSA、[−4]proPSA、[−5]proPSA、[−6]proPSA、[−7]proPSA、またはこれらの組合せでよい。
【0031】
本発明の目的では、「総PSA」という用語は、遊離PSAおよびACTとのPSA複合体を含めたすべての形態のPSAを指す。「遊離PSA」という用語は、本明細書で使用される場合、ACTと複合体形成していないPSAを指す。
【0032】
「PSA関連値」は、例えば、総PSA、proPSA、遊離PSA、およびBPSAを含めた、PSAファミリーの任意のメンバーの量に数学的に関連したいかなる値も指す。PSA関連値の例には、BPSA量、proPSA量、BPSA対proPSAの比率、BPSA対総PSAの比率、BPSA対遊離PSAの比率などが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
PSA関連値に対応する「対照値」は、例えば、PSA関連障害を患っていない対象、またはPSA関連障害を治療するための薬物を投与されていない対象でそれぞれの値を測定することによって得ることができる。
【0034】
「PSA関連障害」は、ある対象における、対照とする対象と比較して高レベルのPSAに関連した障害を指す。例えば、高レベルのPSAは、血液、血清、または血漿中の総PSAが0.2ng/mlを超えるものでありうる。これには、血液、血清、血漿、精漿もしくは尿などの生理学的流体中における高レベルの総PSAまたはBPSAもしくはproPSAなどの1つもしくは複数の他の形態のPSAも、前立腺組織中のものも含みうる。そのような障害には、BPH、前立腺癌、および前立腺炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
ある対象が薬物に対して「反応する可能性が高い」、もしくは薬物に反応する「見込み」を有するというのは、その対象がその薬物に反応する確率が、対照とする対象、例えばその薬物によって処理されていない対象よりも統計的に高い場合である。例えば、オッズ比が2以上である場合に、対象が薬物に反応する可能性が高い。「オッズ」は、ある群(反応者群または対照群)における、事象(すなわち薬物に反応すること)を伴った対象の数と、同じ群における事象を伴っていない対象の数との比率である。「オッズ比」は、本明細書で使用される場合、反応者群のオッズ対対照群のオッズの比率を指す。
【0036】
「治療する」という用語は、障害、上記障害の症候、上記障害に続発した病態、または上記障害に対する素因を治療、緩和、軽減、治癒、または回復させることを目的とした薬物の投与と定義する。
【0037】
「薬物」という用語は、本明細書で使用される場合、PSA関連障害を治療するためにヒトに投与される化学物質、生物学的産物、または複数の化学物質もしくは生物学的産物の組合せを指す。化学物質または生物学的産物は、低分子量化合物またはより大きな化合物、例えば、限定されるものではないが、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、リポタンパク質、ならびにそれらの改変物および組合せを含めた核酸、アミノ酸、または糖のオリゴマーでよい。
【0038】
PSA関連障害を治療するのに使用できるいかなる薬物も本発明に包含される。詳細には、下記の実施例IおよびIIは、5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドの、BPHを治療するための使用について記述する。5ARIの別の例はフィナステリドである。フィナステリドおよびデュタステライドは、いくつかの異なった薬物動態学的パラメータおよび生化学的特性を有するが、両方とも、DHTの産生を阻害するという同一の特異的作用を有する(22、23)。DHTの阻害、ならびにそれに附随する前立腺組織およびPSA産生への影響が、BPSAの予想外の増大を引き起こしている主要機構であると考えられるので、あらゆる5ARIの使用が本発明に包含される。5ARIはBPHの治療に用いられているが、アンドロゲン産生を阻害し、それによって、テストテスロンおよびDHT産生を阻害する、前立腺癌に使用されている薬物および治療を用いて、BPSAにおける同様な予想外の増大、ならびに予測よりも早いproPSAの低減が予期されよう。詳細には、ビカルタミドおよびフルタミドなどの薬物は完全なアンドロゲン遮断のために使用され、同様に、前立腺のアンドロゲン刺激の生理的供給源すべてを消滅させる去勢へと作用する。これらの薬物は、進行した前立腺癌の場合に使用され、通常は、前立腺におけるPSA産生の完全な消滅をもたらす。これらの場合、BPSAの増大またはproPSAの低減が、5ARIよりさらに顕著であるか、あるいはより急速であろうと予測されよう。したがって、本発明における予想外のBPSAの増大および急速なproPSAの低減は、テストテスロンまたはDHTなどのアンドロゲンを遮断し、かつPSAの発現を有意に低減または消滅させる効果を有するいかなる薬物とも連動している。
【0039】
通常、PSA関連障害と関連しているパラメータまたは症候の、そのような障害を治療する薬物を投与した後におけるいかなる改善も、上記薬物に対する反応を示すのに使用できる。例えば、前立腺体積の減少が、BPH症候の軽減と相関していることが知られている。国際前立腺症状スコア(IPSS)の低下は、有効なBPH治療の別の指標である。下記の実施例IおよびIIに示す通り、薬物治療の約1カ月後における、予想外のBPSAの増大、予想外の早いproPSAの低減、ならびにBPSA対proPSA、BPSA対総PSA、およびBPSA対遊離PSAの比率の増大は、薬物投与の12カ月後における前立腺体積およびIPSSの低減と関連している。したがって、前立腺体積の減少およびIPSSの低下は、BPHの薬物治療に対する反応の有用な指標である。さらに、最大尿流速(Qmax)の増大も、BPHの薬物治療に対する反応の指標として用いることができる。
【0040】
薬物投与の後における、PSA関連値を測定するタイムポイントは、下記の実施例に例示する方法または当技術分野で知られている任意の他の方法を用いて決定できる。例示的実施形態では、PSA関連障害を患っている対象を、上記対象または医療専門家の判断で同定できる。そのような判断は、主観的なもの(例えば意見)でも、客観的なもの(例えば試験または診断方法によって判定可能なもの)でもよい。PSA関連障害を治療するための薬物を投与する前(例えば1週間前)に、上記対象から試料(例えば血液)を収集することができ、各試料のPSA関連値を測定する。その後、薬物またはプラセボを上記対象に投与する。間隔をおいて(例えば薬物投与の1週間後と3カ月後との間に毎週)上記対象から試料を再び収集し、PSA関連値を測定する。薬物で処理された対象は、その後、上述の判断基準(例えば、薬物投与の12カ月後における、BPHを患っている対象の前立腺体積の少なくとも10%の減少またはIPSSの少なくとも2の低下)に従って、反応者群と不反応者群とに分割する。薬物投与の前後におけるPSA関連値は、統計的分析にかけられる。対象が上記薬物に反応する見込みを予測するために、PSA関連値を測定するタイムポイントは、例えば、不反応者群またはプラセボ群と比較して、上記薬物の投与による任意のPSA関連値の変化が反応者群で最も顕著であるタイムポイントあるいは不反応者群またはプラセボ群と比較して、反応者群における任意のPSA関連値の変化の相違が有意となる最も早いタイムポイントを選択することによって決定できる。不反応者群またはプラセボ群と比較して、反応者群におけるPSA関連値の変化の相違が有意となるのは、p値が、例えば0.05以下となる場合である。
【0041】
例えば、対象が上記薬物に反応する見込みを予測するために、BPSA量、proPSA量、またはそれらの比率を、5ARI投与の約1カ月後に測定することができる。下記の実施例IおよびIIに示す通り、薬物投与の約1カ月後における、BPSA対proPSAの比率の有意な増大は、薬物投与の12カ月後における前立腺体積およびBPH症候の低減に相関した、薬物に対する反応を示す。約1カ月の名目上の期間は、理想的には4週間の治療を示すだろうが、4週間の最大5日前または後までの期間も含みうる。しかし、本発明の最も広い定義では、下記に記載の本発明の他の態様に示す通り、意味のある測定は、薬物投与の1週間後から3カ月後のいかなる期間でも可能でありうる。5ARIを用いた5−アルファ−レダクターゼの阻害は、投与後1から2週間以内における、5−アルファ−レダクターゼのレベルに何らかの影響を有することが知られているので、薬物投与開始の1週間後と3カ月後との間における任意のときに、予想外のBPSA血清レベルの増大およびproPSA濃度の予想外に急速な低減の変化の振幅に有意な相違があると仮定しても妥当である。この後者の日は、図1において、BPSAがベースラインレベル下に明確に低減することが示されているときである。BPSAの増大およびproPSAの低減は、1カ月よりもいくらか早いときに始まり、1週間後と3カ月後との間のある時点で最大ピークに達するであろうこと、そして、薬物投与の12カ月後に観測される、異なったタイムポイントでのBPSAおよびproPSAのそれぞれ増大および低減の速度は、異なった速度と、それ故にその薬物反応に対する異なった相関関係パラメータとを与えるであろうことが予期されよう。したがって、予想外のBPSAの増大およびproPSAの低減の効果的な使用は、任意の初期期間を包含しうるが、この期間は、その後では5ARIがDHTの産生に何らかの影響を有することが知られているものであり、その際、薬物治療開始の前にはBPSAがベースライン値より有意に高く、但し3カ月目にはBPSAレベルがベースラインの下まで低下する。
【0042】
対象が薬物に反応する見込みを予測するために、PSA関連値の変化を、それらのそれぞれの既定値(すなわちカットオフ値)と比較する。それらの変化(増大または低減)が既定値以上である場合には、上記対象は、上記薬物に反応する可能性が高いと予測される。通常、上記既定値は、少なくとも5%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%)であり、統計的な有意性を備えている。
【0043】
上記既定値は、下記に記載の方法または当技術分野で知られている任意の他の方法に従って取得できる。例えば、薬物投与後の選択されたタイムポイントにおける、反応者群および対照群のPSA関連値の変化を測定することができる。「対照群」は、例えば、不反応者群またはプラセボで処理された群でありうる。これらの変化を、統計分析、例えば、マンホイットニー検定にかけて、反応者群の変化が、対照群の変化から有意に相違しているかどうか判定する。例えば、p値が0.05以下である場合に、反応者群におけるPSA関連値の平均変化は、対照群におけるそれから統計的に有意に相違しており、薬物治療に反応するであろうものを識別する補助となる既定値として選択できる。
【0044】
例えば、下記の実施例Iに示す通り、薬物投与の1カ月後におけるBPSA濃度の86%の増大は、薬物投与の12カ月後における前立腺体積の10%以上の低下を実感するであろうものの有意な薬物反応の指標である(p=0.045、表1)。同様に、proPSAの48%の減少およびBPSA対proPSAの比率の450%の増大は、統計的に有意であり(それぞれp=0.0002、および<0.0001)、したがって、これらの男性が12カ月目に薬物治療に反応する見込みを有することの指標としてのカットオフ値として使用できる。
【0045】
上記薬物に対する陽性反応を有するオッズ比は、薬物反応の適した指標としてのカットオフ値を決定するのに使用できる。例えば、上記第1または第2の既定値が、2以上の既定オッズ比(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10)に対応している場合、対象が薬物に反応する可能性が高い。
【0046】
例えば、下記の実施例IIに示す通り、BPSA対proPSA比が250%超である場合、250%未満の比率値と比較した、薬物治療の12カ月後にIPSSに2の改善を有するオッズ比は2.27である。したがって、この場合、約1カ月目におけるBPSA対proPSA比の250%の増大は、有意な臨床上の有用性を有するカットオフ値として見ることができる。本発明の好ましい実施形態は、臨床上の有用性を有すると考えられる有意なカットオフ値を確立するために、少なくとも2のオッズ比を用いるであろう。
【0047】
様々な形態のPSAを測定する方法は当技術分野で周知である。例えば、米国特許第6423503号および第6482599号を参照のこと。例えば、BPSA、proPSA、総PSA、または遊離PSAの量は、そのような測定を実施できるものである限り、本明細書に記載されている方法、または当技術分野で知られている方法、または後で開発された方法のいかなるものによってでも測定できる。本発明の一実施形態によれば、試料中に含有されている特定のPSA形態(すなわち標的PSA)の量は、標的PSAに特異的に結合する因子を、上記標的PSAおよび上記因子を含む二元複合体の形成を可能にする条件下で、上記試料と接触させる工程と、上記標的PSAの量の尺度として上記複合体の量を検出および測定する工程とを含む方法によって測定できる。
【0048】
本発明の目的では、因子は、十分な特異性で標的PSAに結合できるものならいかなる分子種であってもよい。結合特異性が十分であるのは、その結合によって、上記因子および上記標的PSAを含む複合体の形成および複合体の量の測定が可能となる場合である。潜在的な分子種の例には、抗体、抗体由来の抗原結合性断片、および限定されるものではないが、アプタマーなどの抗体の等価物が含まれるが、これらに限定されない。本発明の目的では、標的PSAに特異的な因子は、当技術分野で知られている方法によって選択できる。例えば、任意の既知な結合アッセイを用いて、任意の所与の因子の特異的な結合活性が測定できる。
【0049】
組織標本中の抗原を検出するための免疫組織化学法は当技術分野で周知である。例えば、抗原を免疫組織化学的に検出する方法は、全般的に、Taylor、Arch.Pathol.Lab.Med.、102:113(1978年)に記載されている。簡潔には、本発明との関連において、対象から得られた組織標本を、標的PSAを認識する抗体、好ましくはモノクローナル抗体と接触させる。本発明の一実施形態では、組織標本は、対象の前立腺から得られた組織標本である。上記前立腺組織は、例えば、正常な前立腺組織、癌の前立腺組織、または前立腺肥大症組織でよい。
【0050】
同様に、イムノアッセイ手順による、液体試料中の抗原性物質のin vitro検出の一般的な方法も、当技術分野で周知である。例えば、イムノアッセイ手順は、全般的に、Patersonら、Int.J.Can.、37:659(1986年)およびBurchellら、Int.J.Can.、34:763(1984年)に記載されている。本発明の一実施形態では、生物試料中の標的PSAを検出するためのイムノアッセイは、(a)標的PSAに特異的に結合する一定量の因子を、上記因子および上記標的PSAを含む二元複合体の形成を可能にする条件下で、上記試料と接触させる工程と、(b)上記標的PSAの量の尺度として上記複合体の量を測定する工程とを含む。
【0051】
本発明の目的では、上記生物試料は、上記標的PSAを含有するいかなる生理学的流体試料でもよい。生理学的流体試料の例には、血液、血清、精液、尿、および血漿が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の目的では、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は両方とも、そのような抗体が、本発明によって提供された抗原に対する必要な特異性を有する限り使用できる。モノクローナル抗体を使用することが好ましい。
【0053】
モノクローナル抗体は、液相中でも、固相担体に結合した状態でも利用できる。モノクローナル抗体は、多くの異なった担体に結合でき、本発明の標的PSAを測定するのに使用できる。周知の担体の例には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、および磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本発明の目的に応じて、可溶性または不溶性でありうる。不溶性の担体の例には、ビーズおよびマイクロタイタープレートが含まれるが、これらに限定されない。当業者ならば、モノクローナル抗体を結合するための他の適した担体を知っているか、あるいは、そのようなものを通常の実験で確かめることができるだろう。
【0054】
加えて、これらのイムノアッセイにおけるモノクローナル抗体は、様々な方法で検出可能に標識することができる。例えば、本発明のモノクローナル抗体を低分子量ハプテンと結合させることができる。これらのハプテンは、その後、第2の反応によって特異的に検出することができる。例えば、通常は、アビジンと反応するビオチン、または特異的な抗ハプテン抗体と反応できるジニトロフェニル、ピリドキサール、およびフルオレセインなどのハプテンを用いる。加えて、本発明のモノクローナル抗体は、酵素、放射性同位元素、蛍光化合物、金属、化学発光化合物、または生物発光性化合物などの検出可能な標識とも結合できる。さらに、所望の分子へのこれらの標識の結合は、当業者には共通の一般的な技法を用いて実施できる。
【0055】
抗体を検出可能に標識できる方法の1つは、それを酵素に連結することである。次にこの酵素が、後にその基質に暴露された際に、例えば分光光度法または蛍光定量の手段(ELISAシステム)によって検出できる化学部分を産生するように上記基質と反応するであろう。検出可能な標識として使用できる酵素の例には、ホースラディシュペルオキシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファグリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、ブドウ糖酸化酵素、ベータガラクトシダーゼ、RNA分解酵素、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−燐酸塩デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼがある。ELISAシステムの感度を増強させるために、アビジン−ペルオキシダーゼ結合体と反応するビオチン化抗体を用いて、記載した手順を修正することができる。
【0056】
上記抗体を放射性同位元素で標識することによって、抗原の量を測定することもできる。その後、放射性同位元素の存在は、ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用などの手段によって測定されるだろう。特に有用な同位元素は、H、125I、123I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Fe、75Se、111N、99mTc、67Ga、および90Yである。
【0057】
抗原の測定は、上記抗体を蛍光化合物で標識することによっても可能である。蛍光標識された分子は、適切な波長の光に暴露させた際に、色素の蛍光によってその存在を検出することができる。最も重要な蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フトアルデヒド(o−phthaldehyde)、およびフルオレサミンがある。Eu(ユーロピウム)などの蛍光発光金属原子、および他のランタニドを用いることもできる。これらは、DTPAまたはEDTAなどの金属キレート基によって所望の分子に結合させることができる。
【0058】
抗体を検出可能に標識することができる別の方法は、それを化学発光化合物と結合させることである。化学発光タグ付き免疫グロブリンの存在は、その後、化学反応の過程で起こる発光の存在を検出することによって測定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸塩エステルである。
【0059】
同様に、生物発光性化合物も標識として使用できる。生物発光は、生物系で見出される特別なタイプの化学発光である。生物発光では、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増強する。生物発光性分子の存在は、発光の存在を検出することによって測定されるだろう。標識の目的において重要な生物発光性化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンである。
【0060】
試料中にある本発明の標的PSAの定量は、直接的または間接的型式での競合的または非競争的イムノアッセイ手順によって実現できる。そのようなイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチ(イムノメトリック)アッセイである。本発明のモノクローナル抗体を用いた抗原の検出は、生理的試料での免疫組織化学的アッセイを含めたフォワード型、リバース型、または同時型で行われたイムノアッセイを用いて実施できる。当業者ならば、他のイムノアッセイ型式も知っているだろう。あるいは、当業者ならば、過度の実験をしないでも、容易に他のイムノアッセイ型式を識別できる。
【0061】
「イムノメトリックアッセイ」または「サンドイッチイムノアッセイ」という用語には、同時サンドイッチ型、フォワードサンドイッチ型、および逆サンドイッチ型のイムノアッセイが含まれる。これらの用語は、当業者ならば十分に理解しているものであろう。本発明による抗体が、現在知られているか、もしくは将来開発されうる他の変形形態または形式のアッセイでも有用であろうことも、当業者ならば理解するであろう。これらも、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0062】
本発明の別の態様は、上述の方法に従って、対象が薬物に反応する見込みを判定するためのキットを提供する。一実施形態では、上記キットは、対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、上記対象のproPSA量を測定するための第2の因子と、上記対象の総PSA量または遊離PSA量を測定するための第3の因子とを含む。別の実施形態では、上記キットは、対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、上記対象の総PSA量を測定するための第2の因子と、上記対象の遊離PSA量を測定するための第3の因子とを含む。さらに別の実施形態では、上記キットは、対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、上記対象のproPSA量を測定するための第2の因子と、上記対象の総PSA量を測定するための第3の因子と、上記対象の遊離PSA量を測定するための第4の因子とを含む。上記キットは、説明書を伴った挿入物をさらに含有してもよく、この説明書は、PSA関連障害を治療するための薬物に対象が反応する可能性が高いのは、上記BPSA量、上記BPSA対proPSAの比率、上記BPSA対総PSAの比率もしくは上記BPSA対遊離PSAの比率が、上記薬物の投与によって、それぞれの対照値と比較してそれぞれの第1既定値増大している場合、上記proPSA量が、上記薬物の投与によって、それぞれの対照値と比較して第2の既定値低減している場合、またはこれらの組合せの場合であることを示す。
【0063】
上記因子の例は、抗体、例えばモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。様々な形態のPSAに対する抗体は、当技術分野で周知である。例えば、米国特許第6423503号および第6482599号を参照のこと。本発明で使用される場合、「抗体」という用語には、完全な分子、ならびにFab、F(ab’)、およびFvなど、標的PSA上のエピトープ決定基に結合できるその断片が含まれる。これらの抗体断片は、その抗原または受容体に選択的に結合する能力をある程度保持し、以下の通りに定義される。(1)Fab、この断片は、抗体分子の一価抗原結合断片を含有し、抗体全体をパパイン酵素で消化して、1本の完全な軽鎖と、1本の重鎖の一部とを産生することによって産生されうる。(2)Fab’、この抗体分子断片は、抗体全体をペプシンで処理し、それに続いて還元して、1本の完全な軽鎖と1本の重鎖の一部を産生することによって得ることができる。1つの抗体分子あたり2つのFab’断片が得られる。(3)F(ab’)、この抗体断片は、抗体全体をペプシン酵素で処理し、その後に還元しないことによって得られる。F(ab’)は、2本のジスルフィド結合によって結合された2つのFab’断片の2量体である。(4)Fv、2本の鎖として発現された、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含有する遺伝子操作された断片として定義される。(5)一本鎖抗体(「SCA」)、遺伝学的に融合された一本鎖分子として、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、およびそれらを連結する適当なポリペプチドリンカーを含有する遺伝子操作された分子として定義される。これらの断片を作製する方法は当技術分野で知られている(例えば、参照により本明細書に組み込まれているHarlowおよびLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory社、New York(1988年)を参照のこと)。
【0064】
以下の実施例は、特許請求の範囲を限定するものではなく、それを例示するものと意図されている。そのような実施例は、使用されうるものの典型的なものであるが、当業者に知られている他の手順を代替的に用いることもできる。実際、当業者ならば、本明細書における教示に基づいて、過度の実験をしないでも容易に別の実施形態を想起および産生することができる。
【実施例】
【0065】
材料および方法
患者の特徴
BPHを患っている50歳以上の男性からの血清試料の同齢集団を用いた。PSAの範囲は、1.5〜10ng/ml(中央値は3.2ng/ml)であった。参加者の国際前立腺症状スコア(IPSS)は11〜32であった(中程度から重度、中央値は18.5)。Qmax(cc/秒での尿流速)は9.3であった。時間0に、男性に前立腺体積に関するTRUSを行い、その後、盲検様式、1日あたり0.5mgの割合でデュタステライドを投与した。0、1、3、および12カ月目に血清を採取し、総PSA、proPSA、遊離PSA、およびBPSAに関してアッセイした。0、1、および12カ月目にIPSS症状スコアを測定した。前立腺体積に関する追加のTRUSを、薬物治療開始後の12カ月目に行った。
(実施例I)
5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドを用いた治療の後における、前立腺体積の減少と、血清BPSA、proPSA、BPSA対proPSA比、BPSA対総PSA比、およびBPSA対遊離PSA比との関連性
時間0(処理前のベースライン)およびプラセボまたは薬物治療開始の1、3、および12カ月後に、プラセボ男性および薬物処理男性からの血清を、PSA形態のレベルに関して試験した。図1は、総PSA(PSA)、遊離PSA(fPSA)、proPSA、およびBPSAの変化%を示す。このプロットでは、前立腺体積の10%以上の減少を薬物反応の定義として用いた。結果は、薬物治療と比較したプラセボを示す。A)プラセボ処理男性、12カ月後にこの人の前立腺体積は10%以上減少しなかった。B)薬物処理男性、12カ月後に前立腺体積が10%以上減少した(薬物反応者)。
【0066】
この研究からの主要な観察は、薬物治療の1カ月後に、BPHに関連したBPSAレベルは有意に増大しており、一方proPSAレベルは有意に低減したことであった。これは、有意に変化しなかった総PSAレベルおよび遊離PSAレベルとは対照的である。図2は、プラセボおよび薬物治療における、総PSA、遊離PSA、proPSA、およびBPSAの1カ月変化のみを示した図1の再プロットである。
【0067】
表1は、1カ月目における、BPSA血清濃度(ng/ml)の有意な増大(p<0.05)と、proPSAの有意な減少(p=0.0002)とを示す。BPSA対proPSAの比率におけるベースラインから1カ月目までの変化が、最も広幅な分離と最も高い有意性(p<0.00001)とを示した。12カ月の治療の後における前立腺体積の10%以上の低減(薬物反応者)として定義される薬物反応に対応する、1カ月目の総PSA、遊離PSA、または遊離対総PSAの比率における有意な変化はなかった。12カ月目の前立腺体積の減少が10%未満であった薬物処理された男性では、BPSAの有意な増大がなかった。プラセボでは、いかなるPSA関連のパラメータにも有意な変化がなかった。
【0068】
したがって、各パラメータ、すなわち、BPSAの増大、proPSAの低減、BPSA対proPSAの比率の増大、BPSA対総PSAの比率の増大、およびBPSA対遊離PSAの比率の増大は、薬物治療開始の1カ月後に有意な変化を示し、12カ月後における前立腺体積の減少と有意に関連していた。総PSA、遊離PSA、および遊離対総PSAの比率に有意な変化は観察されなかった。
【0069】
表1.12カ月目の前立腺体積に10%以上の減少があった男性における、時間0と、薬物またはプラセボを用いた治療の1カ月後との間の測定の中央値変化の有意性(p値、マンホイットニー検定)。
【0070】
【表1】

反応対薬物治療のオッズ比を図3に示す。この場合、薬物に反応する(12カ月目における前立腺体積の10%以上の低下)オッズが、1カ月目における血清BPSA濃度の増大と共に増大している。1カ月目のBPSA濃度がベースラインより20%以上増大しているものでは、12カ月目に薬物反応を有するオッズに2倍の増大がある。25%以上のBPSA増大は、3倍の、好ましい薬物反応を有する見込みを示している。
(実施例II)
5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドを用いた治療の後における、国際前立腺症状スコア(IPSS)の低下と、血清BPSA、proPSA、BPSA対proPSA比、BPSA対総PSA比、およびBPSA対遊離PSA比の変化との関連性
総PSA、遊離PSA、proPSA、およびBPSAの濃度を時間0(処理前のベースライン)および薬物投与の1カ月後に検査した。12カ月の治療の後に、IPSSの2以上の改善(低下)を有した男性として薬物反応を定義した。表2は、この試料セットでは1カ月目のBPSA濃度の増大が統計的な有意性に達しなかったが、proPSAの低減(p=0.0002)およびBPSA対proPSAの比率の増大(p<0.0001)は有意であったことを示す。BPSA対総PSAの比率およびBPSA対遊離PSAの比率の増大も、極めて顕著であった。プラセボ試料、またはIPSSの改善が2未満である男性(薬物不反応者)はいずれも、いかなるPSA関連のパラメータにも統計的に有意な相違を示さなかった。しかし、薬物治療後におけるBPSA濃度は、1カ月目に、プラセボより有意に増大していた(表3)。同様に、BPSA対総PSAの比率およびBPSA対遊離PSAの比率も、薬物治療の1カ月目に、プラセボより有意に増大していた。これらの結果は、5ARIを用いたBPH薬物治療の1カ月後における、BPSAの増大、proPSAの低減、BPSA対proPSA比の増大、BPSA対総PSA比の増大、BPSA対遊離PSA比の増大が、12カ月目に薬物治療に反応する男性と有意に関連していることを示している。
【0071】
表2.12カ月目の国際前立腺症状スコアに2以上の改善があった男性における、時間0と、薬物またはプラセボを用いた治療の1カ月後と間の測定の中央値変化の有意性(p値、マンホイットニー検定)。
【0072】
【表2】

表3.国際前立腺症状スコアの2以上の低減があった試料における、薬物対プラセボ治療の1カ月目の中央値の有意性(p値、マンホイットニー検定)。<0.05であるp値は、薬物を投与されている男性における、測定されたBPSA、BPSA対総PSA比、またはBPSA対遊離PSA比が、プラセボと比較して有意に相違していることを示す。
【0073】
【表3】

臨床上の有用性があるカットオフ値を決定する別の方法は、1カ月における測定パラメータの変化パーセントに基づいて、12カ月目における薬物治療に対する反応のオッズ比を計算することである。この場合、薬物に反応する(12カ月目におけるIPSSの2以上の低下)オッズが、1カ月目におけるBPSA対proPSAの比率の増大と共に増大している。計算は、1カ月目におけるBPSA対proPSA比が<250%の増大である男性と比較して、1カ月目のBPSA対proPSA比がベースラインより>250%大きい場合、12カ月目に薬物に対して反応を有するオッズ比が2.3であることを示している。1カ月目のBPSA対proPSA比がベースラインより>250%の増大である場合、12カ月目に薬物反応を有するオッズに、少なくとも2倍の増大がある。オッズ比が少なくとも2であるものが、本発明の好ましい実施形態である。BPSA対proPSAの比率の増大に関するカットオフ値を設定する手段としてオッズ比を用いると、250%が好ましいカットオフ値となるであろう。
【0074】
症状スコアの何らかの側面を反映するBPH症候パラメータの1つがQmax、すなわち最大尿流速(1秒あたりの立方センチメートル)である。この研究集団における中央値は1秒あたり9.3ccであった。薬物治療の1カ月後に、BPSAの25%の増大を有した男性は、12カ月目に流速の2ccの増大を有するオッズ比3.3を有する。
(実施例III)
5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドを投与した後1週間から3カ月までの期間における、BPSA、proPSA、およびBPSA対proPSAの比率の変化の診断有用性を判定する方法
前の実施例では、約1カ月目における、予想外のproPSAの低減およびBPSAおよびBPSA対proPSAの比率の増大が、12カ月目における薬物反応と有意に関連づけられた。しかし、5ARIは、投与されて1〜2週間以内に5ARの産生に影響をもち始める。したがって、薬物投与に関連した予想外のBPSPの増大およびproPSAの低減は、約1カ月目とは異なる時点では、異なった速度の変化および振幅を有する可能性がある。薬物に反応するであろう男性を同定するために、相対的なBPSPの増大およびproPSAの低減を使用するには、実施例IおよびIIに示した通りの約1カ月目とは異なる最適な診断有用性が存在するかもしれない可能性がある。予想外のBPSPの増大およびproPSAの低減の付加的または改善された診断有用性を決定するために、実施例IおよびIIで実証したデータ分析を用いて、同じ濃度の薬物を使用し、同一もしくは同様の薬物反応の指標を用いて、同様の実験を合理的に設計することができよう。proPSAの急速な低下の生物学的機構は、DHT産生の阻害と関係しているので、この影響は、すべての形態のproPSAに影響を与えると予測されよう。これは、天然に発現されたproPSAは、7アミノ酸のリーダーペプチドと、末端欠失型のproPSA形態、すなわち、翻訳後プロテアーゼ活性による1から6アミノ酸のリーダーペプチドを含有しているproPSA形態とを含有しているからである。したがって、実施例IおよびIIに示した通り、BPSA対proPSAの比率には、未改変もしくは末端欠失型のproPSAのいかなる単一の形態、またはproPSAの複合形態も含まれうる。
【0075】
この方法の1つの実験的実施例は、以下の工程を含むだろう。すなわち、1)上記の材料および方法セクション中に記載した患者の参加判定規準を満たす男性を同定する。2)デュタステライドまたはフィナステリドを投与する前の1週間以内に血液試料を採取する。3)薬物投与後の1週間目から薬物投与後の3カ月目まで、1週間間隔で血液試料を採取する。4)これらの試料中のBPSAおよびproPSAを測定する。5)どのタイムポイントで、薬物投与前のベースライン値と比較して統計的に有意なproPSAの低減、BPSAの増大、またはBPSA対proPSA比の増大があるか測定する。6)これらのパラメータと、薬物投与の6から12カ月後における薬物反応との関連性に関して、実施例IおよびIIに示した通りにデータを解析する。7)薬物反応は前立腺体積の10%以上の減少、IPSSの2以上の低下、尿流量(Qmax)の増大、または徴候的なBPHと通常関連する他のクオリティオブライフパラメータの改善と定義することができる。8)最高の統計的相関関係を、a)プラセボまたは対照と比較した、proPSAの低減、またはBPSA対proPSAの比率の増大の反応平均または中央値によって、あるいはb)実施例IおよびIIに示した通りに、薬物反応を有するオッズ比によって判定する。9)薬物治療に12カ月目に反応するであろう男性を同定するのに使用でき、実施例IおよびIIに示した通りに計算される、薬物投与後における最適な時間を同定する。
【0076】
薬物治療に反応するであろう男性を同定するのに使用される、薬物投与後における最適な時間を同定するために適用すべき追加要件は、a)薬物反応者を同定することができる、薬物投与の後における最短の時間、b)オッズ比またはこれに匹敵する他の統計的手法によって決定される最大または最高の予測値、c)癌を同定するための前立腺生検と同時に薬物投与が開始された場合には、1カ月目より遅いときが望ましい場合がある。c)の場合には、前立腺生検は、生検による血清PSAレベルの一時的な上昇を引き起こすことが知られており、これらのPSAレベルがBPSA試験を妨害する可能性がある。したがって、場合によっては、前立腺生検を行った男性に最適なときを選択するため、BPSA対proPSAの比率を計算するためのBPSA試験およびproPSA試験を、1カ月より遅い期間において、しかし3カ月目より前に行うことが望ましい場合がある。
【0077】
予想外のBPSAの増大、proPSAの低減、またはBPSA対proPSAの比率の増大の診断有用性の効果的な評価を決定するための判定規準を、実施例IおよびIIで実証した。これらには、少なくとも2つの異なった判定規準が関与する。1)12カ月目に薬物治療に反応する男性の集団の、薬物投与後の所与の時点における、proPSAの低減、BPSAの増大、またはproPSAとの共存比率の平均または中央値は、薬物反応判定規準を満たさなかった男性におけるプラセボ対照レベルの平均または中央値より統計的に有意に高くなければならない。この判定規準を用いて、薬物治療に反応するであろう男性を同定するのに最も役立つ、薬物投与後の所与の時点におけるBPSAおよびproPSAのカットオフ値を確立することができる。2)実施例IおよびIIで実証された第2の方法は、臨床的薬物反応を与えるオッズ比が少なくとも2倍になるproPSAの低減、BPSAの増大、またはBPSA対proPSAの共存比率のパーセンテージを決定することである。この場合、カットオフ値は、少なくとも2倍のオッズ比を与えるBPSAまたはproPSAとのBPSAの共存比率の増大濃度またはパーセントとして定義される。実施例IIでは、BPSA対proPSAの比率における250%の増大が、少なくとも2のオッズ比を与えており、本発明の好ましい実施形態となる。
【0078】
(参考文献リスト)
【0079】
【化1】

【0080】
【化2】

【0081】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、薬物投与の1、3、および12カ月後における、プラセボ群および5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドで処理された群の総PSA(PSA)、遊離PSA(fPSA)、proPSA、およびBPSA血清濃度の、ベースラインからの変化%を示すプロットである。
【図2】図2は、薬物投与の1カ月後における、プラセボ群および5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であるデュタステライドで処理された群の総PSA(PSA)、遊離PSA(fPSA)、proPSA、およびBPSA血清濃度の、ベースラインからの変化%を示すプロットである。
【図3】図3は、薬物治療に対する反応のオッズ比とBPSAの増大との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が薬物に反応する見込みを判定する方法であって、
PSA関連障害を患っており、かつ前記PSA関連障害を治療するための薬物を投与されている対象において、少なくとも1つのPSA関連値を測定する工程と、
前記PSA関連値をそれぞれの対照値と比較する工程と、
前記対象が前記薬物に反応する見込みを判定する工程と
を含み、
前記PSA関連値が、BPSA量、proPSA量、BPSA対proPSAの比率、BPSA対総PSAの比率、BPSA対遊離PSAの比率、およびこれらの組合せからなる群から選択され、かつ
前記BPSA量、前記BPSA対proPSAの比率、前記BPSA対総PSAの比率または前記BPSA対遊離PSAの比率が、それぞれの対照値よりそれぞれの第1既定値高い場合、前記proPSA量がそれぞれの対照値より第2の既定値低い場合、またはこれらの組合せの場合、前記対象が前記薬物に反応する見込みが高いことを示す、方法。
【請求項2】
前記対照値が、薬物投与前に測定された、前記対象のPSA関連値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PSA関連障害が良性前立腺肥大症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
薬物投与の12カ月後に前記対象の前立腺体積が10%以上減少している場合に、前記対象が前記薬物に反応するものとされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
薬物投与の12カ月後に前記対象の国際前立腺症状スコアが2以上減少している場合に、前記対象が前記薬物に反応するものとされる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
薬物投与の12カ月後に前記対象の最大尿流速が1cc以上増加している場合に、前記対象が前記薬物に反応するものとされる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記PSA関連障害が前立腺癌または前立腺炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬物がアンドロゲン遮断薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬物が5−アルファ−レダクターゼ阻害剤(5ARI)、ビカルタミド、およびフルタミドからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記5ARIがデュタステライドまたはフィナステリドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記PSA関連値が、前記対象からの生理学的流体または前立腺組織試料中で測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生理学的流体が、血液、血清、精漿、尿、および血漿からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1または第2の既定値が5%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1または第2の既定値が、それぞれ第1または第2の既定オッズ比に対応している、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1または第2の既定オッズ比が2以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PSA関連値が、薬物投与の1週間後と3カ月後との間に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記PSA関連値が、薬物投与の1カ月後に測定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の既定値が、前記BPSA量には86%以上であり、前記BPSA対proPSAの比率には450%以上であり、前記BPSA対総PSAの比率には78%以上であり、前記BPSA対遊離PSAの比率には52%以上であり、かつ前記第2の既定値が48%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の既定値が、前記BPSA量には25%以上であり、前記BPSA対proPSAの比率には230%以上であり、前記BPSA対総PSAの比率には59%以上であり、前記BPSA対遊離PSAの比率には44%以上であり、かつ前記第2の既定値が41%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の既定値が、前記BPSA対proPSAの比率には250%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の既定値が前記BPSA量には20%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記proPSAが、[−1]proPSA、[−2]proPSA、[−3]proPSA、[−4]proPSA、[−5]proPSA、[−6]proPSA、[−7]proPSA、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、
前記対象の遊離PSA量を測定するための第2の因子と、
前記対象の総PSA量またはproPSA量を測定するための第3の因子と
を含むキット。
【請求項24】
前記因子のうちの1つまたは複数が抗体である、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記抗体のうち1つまたは複数がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
対象のBPSA量を測定するための第1の因子と、
前記対象のproPSA量を測定するための第2の因子と、
総PSA量を測定するための第3の因子と、
前記対象の遊離PSA量を測定するための第4の因子と
を含むキット。
【請求項27】
前記因子のうちの1つまたは複数が抗体である、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記抗体のうち1つまたは複数がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項27に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−537101(P2008−537101A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558285(P2007−558285)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/007709
【国際公開番号】WO2006/094223
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(507293619)ハイブリテック インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】