説明

薬物送達デバイス用の駆動アセンブリ及び薬物送達デバイス

駆動アセンブリは、ガイドナット(4)、ロッキング手段(9)、及びファスナ(14)を含み、ファスナは、ロッキング手段をガイドナットと係合させる位置内へ、及びその位置から、ロッキング手段に対して可動である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達デバイス用のリセット機構を備えた駆動アセンブリ及びそのような駆動アセンブリを組み込んでいる薬物送達デバイスに関する。
【0002】
携帯型の薬物送達デバイスは、患者による自己投与に好適な医薬流体又は薬剤の投与のために使用される。薬剤注射デバイスは、特に、容易に取り扱うことができ、そしてどこでも利用可能であることが可能なペン形形状が特に有用である。薬物送達デバイスのタイプは、何回も再充填可能で、そして再使用可能であるように構築される。薬剤の用量は、また、投与すべき用量を設定することが可能な駆動機構を用いて送達される。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、プランジャを含む再使用可能ペン本体及び使い捨てカートリッジアセンブリを含有する薬剤送達ペンを開示する。カートリッジアセンブリは、その中の薬剤を使い切り、そして使用したカートリッジアセンブリが代替された後、ペン本体から分解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US第5827232号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薬物送達デバイス用の新しい駆動アセンブリ及び新しい薬物送達デバイスを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、特許請求範囲の請求項1に記載の駆動アセンブリ及び請求項14に記載の薬物送達デバイスにより達成される。更に目的は、従属項に記載の変形体及び実施態様により達成される。
【0007】
駆動アセンブリは、ガイドナットと係合し、並びにガイドナット、及び軸に関して半径方向にロッキング手段を動かすために、及びロッキング手段がガイドナットと係合する位置でロッキング手段を保持するために提供されたファスナの回転を阻止するために、アセンブリの軸に関して半径方向に動くことができるガイドナット、ロッキング手段を有する。
【0008】
ガイドナットは、単独構成部品であり得て、又は二つ又はそれ以上の部分より構成できる。それは、特に、例えば、ねじ山を用いて、ピストンロッドの運動を誘導するために形成することができ、そしてねじ付き円形開口部を有することができる。ガイドナットは、摩擦を用いて、又は、例えば、歯、ねじ溝、若しくはスパイク、又は同様の構造要素を含んでもよい構造化表面(structured surface)を用いて、デバイスの別の構成成分と係合するために提供し得る。
【0009】
ロッキング手段は、ロッキング手段に対して、又はロッキング手段に対して静止しているいかなるデバイス構成部品に対しても、ある方向にガイドナットの運動を阻止するような方法でガイドナットと係合するのに好適ないかなる構成部品であってもよい。ロッキング手段は、次に説明する通り、個々の実施態様の要求性能に基づいて設計できる。ロッキング手段は、例えば、つめ、フック、カンチレバー、又は板バネを含むことができる。それはガイドナットに対して、及び/又は、ファスナに対して弾性的であり、又は弾性的に取り付けられる。
【0010】
ファスナはロッキング手段のガイドナットとの係合に影響を与えるために好適であるいかなる構成部品であってもよい。ファスナは、剛性又は可撓性であってもよく、そして一部品でも形成することができ、又は二つ若しくはそれ以上の部分で組み合わせることもできる。それはデバイスの構成部品の一部であるように形成することができ、又は分離した構成部品として提供することもできる。それはロッキング手段のガイドナットに対する相対的位置を変更するのに好適ないかなる機械的方法でも、ロッキング手段を係合又は連結するように設計することができる。ファスナは、ロッキング手段のガイドナットとの係合がガイドナットの回転を可能にするために解除されるような方法で動かすか、除去することができる、この機能は、特に、リセット操作のために提供できる。
【0011】
駆動アセンブリの実施態様は、更にガイドナット及びロッキング手段が配置された本体を含み得る。本体は、例えば、いかなるハウジング、又はハウジングの部分を形成するいかなる構成部品であってもよい。本体は、また、外部ハウジングと連結するある種のインサートであってもよい。本体は、アセンブリ、又はアセンブリを含むデバイスの安全で、正しい、及び/又は、容易な取扱いを可能にするように設計し得る。本体は、投与機構、カートリッジ、プランジャ、ピストンロッドなどであり得る一つ又は数個の更なる構成部品と係合するように設計し得る。本体は、特に、有害な液体、ちり又はほこりから保護するために、アセンブリ又はデバイスを収納し、固定し、及び/又は、誘導するように意図できる。本体は、管状又は非管状形状の一体又は複数パート構成部材であってもよい。本体は薬剤の用量が投与できるカートリッジを収納し得る。本体は、特に、注射ペンの形状を含むことができる、
【0012】
駆動アセンブリの実施態様において、ガイドナットは、本体に対して回転可能であり得る。ロッキング手段は、ファスナがロッキンギング手段をガイドナットと係合させるとき、本体に対するガイドナットの回転を阻止する。
【0013】
駆動アセンブリの実施態様は、本体に取り付け可能で、本体から取り外し可能なカートリッジホルダと一緒に使用するために提供し得る。そのような実施態様において、ファスナは、カートリッジホルダの一部であってもよく、又はカートリッジホルダに締結されてもよい。ファスナは、カートリッジホルダが本体に締結されるとき、ロッキング手段をガイドナットに係合させる。ファスナは、特に、カートリッジホルダの突出エレメントにより提供できる。
【0014】
カートリッジホルダは、薬剤を含むカートリッジを保持することを意図した一体又は複数パート構成部材であり得る。カートリッジホルダは、例えば、円筒状又は管状形体であってもよい。それは、透明、又は不透明で、剛性又は弾性材料から作られ得る。カートリッジホルダ又はカートリッジホルダのインサートは、例えば、ねじ山、又はバイオネットジョイントなどの係合手段を備えることもできる。それは、ノズル、及び/又は、針若しくはニードルアセンブリを取り付けるための手段を備え得る。
【0015】
駆動アセンブリの実施態様において、ロッキング手段は、本体に締結され得て、そしてカートリッジホルダは、本体に取り付けられ得る。カートリッジホルダの本体に対する回転は、ファスナを、ファスナがロッキンギング手段をガイドナットと係合させる位置へ、又はその位置から動かす。
【0016】
駆動アセンブリの更なる実施態様において、ガイドナットは、歯の間にノッチ又は隙間を有する歯車であってもよく、そしてロッキング手段は、弾性的であり、又は弾性的に取り付けられたつめ、又は端部、又はノッチ若しくは隙間と係合するフックを含むカンチレバーであってもよい。
【0017】
更なる実施態様は、ピストンロッド及びねじ山を含み、ねじ山は、ガイドナット及びピストンロッドを連結させ、そしてピストンロッドをガイドナットに対してらせん運動させることを可能とし、らせん運動は、軸の周囲の回転、及び軸に沿った同時シフトを含む。ガイドナット、ロッキング手段、及びピストンロッドは、本体内に配置され、そして本体のウェブ又はインターフェースは、軸の方向においてガイドナットの動きを阻止するために提供され得るが、一方ロッキング手段がガイドナットと係合しないとき、軸の周囲で本体に対するガイドナットの回転が可能となる。
【0018】
更なる実施態様は、本体内に配置された駆動スリーブを含み、駆動スリーブは、更なるねじ山を用いてピストンロッドと連結する。ねじ山及び更なるねじ山は、反対方向の回転を有することができる。
【0019】
更なる実施態様は、駆動スリーブが解除可能な方法で本体に対して回転ロックできるクラッチを含む。軸に沿って本体に対する駆動スリーブのシフトは、その結果、駆動スリーブが本体に対して回転ロックされ、そしてロッキング手段がガイドナットと係合するとき、本体に対するピストンロッドのらせん運動に転換され得る。
【0020】
本発明は、更にガイドナット、ロッキング手段及びファスナを有する駆動アセンブリを含有する薬物送達デバイスに関し、ファスナは、ロッキング手段をガイドナットに係合させる位置に、及びその位置から、ロッキング手段に対して可動である。薬物送達デバイスは、駆動アセンブリの様々な実施態様に基づく追加の機能を有することができる。そのような薬物送達デバイスは、特に、注射ペン形状を有することができる。
【0021】
薬物送達デバイスは、例えば、インスリン、成長ホルモン、ヘパリン、又はその類似体、及び/又は、その誘導体であり得る薬剤の用量を投与するように設計された使い捨て、又は再使用可能なデバイスであってもよい。デバイスは、手動で、又は電気的に操作するように設計してもよく、及び用量を設定するための機構を含んでもよい。デバイスは、更に、例えば、血糖値レベルなどの生理学的性質を監視するように設計され得る。更にその上、前記のデバイスは針を含んでもよく、又は針無しであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のこれら、及びその他の機能は、次の図面の簡単な記述、詳細な記述、及び添付の特許請求の範囲及び図面から明確になるであろう。同一エレメントは、同一参照番号に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一の操作位置における駆動アセンブリの部分の透視図を示す。
【図2】図1に基づく駆動アセンブリの部分の概略の正面図を示す。
【図3】第二の操作位置における図1の駆動アセンブリの部分の透視図を示す。
【図4】図3に基づく駆動アセンブリの部分の概略の正面図を示す。
【図5】薬物送達デバイスの実施態様の断面図を示す。
【0024】
図1は本発明に記載の駆動アセンブリの実施態様の部分の透視図を示す。ガイドナット4及びロッキング手段9は、互いに隣接して、そしてファスナ14を運ぶカートリッジホルダ2に配置される。図1は、ファスナ14がロッキング手段9をガイドナット4に係合させる位置から外れた状況を示す。
【0025】
ガイドナット4は、その中心に孔5、及び孔5の内壁にねじ山8を有することができ、それは、孔5を通して通過させるピストンロッド又は親ねじを誘導するために提供される。
【0026】
ガイドナット4は、また、あるいは、その中心に孔5を有することができ、そしてピストンロッドとガイドナット4の間の鍵で固定された(keyed)係合を提供する機能を有する。鍵で固定された係合は、ガイドナット4とピストンロッド間の相対的回転運動が阻止されるようなものであってよい。そのような機能は、突出、及び/又は、スロットであり得る。
【0027】
この実施態様のカートリッジホルダ2は、管状であり、そしてカートリッジの区画11及びねじ山12を備えている。カートリッジホルダ2の反対側は、駆動アセンブリの一部ではなく、そして図1で示されていないが、カートリッジからの薬剤の投与のためにノズル又は針を備えることができる。カートリッジがカートリッジ区画11内に挿入された後、カートリッジホルダ2は、駆動アセンブリを含む薬物送達デバイスの本体に取り付けられる。ガイドナット4及びロッキング手段9の構成は、例えば、図1で概略示す通り、適切に切断し、及び曲げられた金属性フレームで形成できる取り付けデバイス10を用いて本体内に取り付けてもよい。
【0028】
図1は、ファスナ14を運ぶデバイスの部分の代表例としてカートリッジホルダ2を示す。図1で示すカートリッジホルダ2の代わりに、他の実施態様は、取り付け可能な、及び交換可能なリザーバ、又は本体の取り外し可能な部分、又はハウジングを一体化されたアンプルと一緒に使用し得る。ねじ山12は、締結のために、バイオネット連結、又は同様の手段で代替できる。ファスナ14を運ぶ部分のそのような詳細に関係なく、この部分及びそれと一緒にファスナ14は、使用者が空のリザーバ又はアンプル又はインサートを新しいカートリッジと変更するとき、ガイドナット4とロッキング手段9の構成に対して動く。
【0029】
ファスナ14が偏心的に位置するとき、ファスナ14の運動は、ロッキング手段9に対する回転であってもよい。これは、ファスナ14がカートリッジホルダ2などの部品のリムに位置する場合であり、それは、ねじ山12を用いて取り付けられ、従って、回転する必要がある。
【0030】
ファスナ14のロッキング手段9に対する運動は、また、回転と直線成分の組合せ、又は純粋に相対的線状運動であってよい。
【0031】
図2は、ファスナ14がロッキング手段9をガイドナット4に係合させる位置から外れているとき、ガイドナット4及びロッキング手段9の構成の概略の正面図を示し、ここで、ファスナ9は、ロッキング手段9をガイドナット4に係合させる。この実施態様において、ロッキング手段9は、弾性エレメントであり、及び、特に、板ばね又は金属片であってもよい。それは、つめ、又は取り付けデバイス10若しくは本体に締結された一端、及びフックを形成する他端を有するカンチレバーの方法で取り付けられる。ロッキング手段9は、ロッキング手段9及びガイドナット4が係合されず、そしてガイドナット4は、自由に回転できるように、ガイドナット4から離れて維持される。ファスナ14は、カートリッジホルダ2が本体にねじで固定されるとき、矢印の方向に動く。
【0032】
図3は、カートリッジホルダ2を取り付けた後、図1に記載の透視図を示す。ファスナ14のロッキング手段9に対する位置は、今、図1と比較する通り、カートリッジホルダ2の回転のために変化する。図3で示す区画及びエレメントは、図1と同様であり、そして同一の参照番号を有する。
【0033】
図4は、ファスナ14がロッキング手段9をガイドナット4と係合させる位置にあるとき、ガイドナット4及びロッキング手段9の配置の概略の正面図を示す。図2との比較は、ファスナ14がガイドナット4と同心円である円上を動き、それ故、ファスナ14は、ロッキング手段9上で摺動を起こさせ、その結果、ロッキング手段をガイドナット4の構造的な外面と係合させることになることを示した。ガイドナット4は、この実施態様においては歯車であり、ガイドナット4及びロッキング手段9は、ロッキング手段9がガイドナット4と係合するとき、少なくとも一方向において、ガイドナット4の回転を阻止する一種のラチェットを形成する。
【0034】
ファスナ14の運動は、ガイドナット4の中心軸に平行なシフトを含み得る。そのようなシフトは、カートリッジホルダ2がらせん運動を発生させるねじ山12を用いて取り付けられる場合、特に、起こるであろう。ファスナ14の機能は、ファスナ14がそれに応じて寸法を決め、そして、図2及び4の面に垂直な方向のある距離において、また、ロッキング手段9上を摺動することができる場合、そのようならせん運動で低下することはない。
【0035】
図1〜4は、本発明がいかにして実現できるかを示す唯一の例を表している。駆動アセンブリは、本発明の範囲を外れることなく、様々な方法で改変することが可能である。
【0036】
薬物送達デバイスで使用されるガイドナット4、ロッキング手段9、及びファスナ14を含む駆動アセンブリは、今、駆動アセンブリの更なる可能な機能及び操作を説明するために図5と併用して記載されるであろう。
【0037】
図5は、薬物送達デバイスの実施態様の断面図を示す。薬物送達デバイス1は、遠位端20及び近位端30、及び遠位端20で取り外し可能なホルダ2を備えた本体3を含む。本体3は薬物送達デバイスの外部ハウジングを形成する。カートリッジホルダ2は、本体3の主要部分のねじ山13と嵌合するねじ山12で取り付けられる。バイオネット結合のようなカートリッジホルダ2を締結する他の手段は排除されない。カートリッジホルダ2は、薬剤を含むカートリッジ6のために提供される。ピストン7は、薬剤を放出するために使用するようにカートリッジ6内に配置される。遠位端20は、ニードルアセンブリを適用するためにねじ山を含むことができるノズル21を備え得る。
【0038】
薬物送達デバイス1は、ピストンロッド17を有する投与機構を含む。ピストンロッド17は、本体3の遠位端20に最も近く、そして摩擦により発生するかもしれない損傷を低下させるために、ピストン7とピストンロッド17間に配置されるピストン7又はベアリング18を係合する遠位端を有する。ピストンロッド17は、ノズル21を通してカートリッジ6から薬剤を放出するために、遠位方向に、即ち遠位端20に向かって、駆動装置、カートリッジ6内でピストン7を押すピストンロッド17を用いることにより可動となる。ピストンロッド17の第一のねじ山15は、遠位端に向かって形成され、そしてピストンロッド17の第二のねじ山16は、ピストンロッド17の近位端により近く形成される。第一のねじ山15及び第二のねじ山16は、この実施態様において、反対方向の回転を有する。これらねじ山15、16の内の一つ又は両方は、らせんの心合わせにおいて、二つ又はそれ以上の一条ねじを含んでもよく、それは、他の機械的デバイスではそれ自体公知である、いわゆる多条ねじを形成する。
【0039】
駆動デバイスは、ピストンロッド17がその中を動く管を形成する駆動スリーブ19を含む。駆動スリーブ19は、一般的に、円筒状であり、そして近位端で半径方向に伸びるフランジ23を運ぶベアリング22を備えている。ピストンロッド17の第二のねじ山16は、ピストンロッド17の駆動スリーブ19に対するらせん相対運動を誘導するために、駆動スリーブ19の内壁上の対応するねじ山に連結する。
【0040】
一般的に円筒状のクラッチ24は、駆動スリーブ19の周囲に配置され、そしてクラッチ24は、少なくとも部分的に、末端停止部28に取り囲まれる。クラッチ24は、駆動スリーブ19の近位端に隣接して位置する。鋸歯29は、クラッチ24の遠位端において、方位シーケンスで配置され、そして更なる鋸歯31は、クラッチ24の近位端において、方位シーケンスで配置される。クラッチ24は、駆動スリーブ19に対するクラッチ24の回転を阻止するスプラインで駆動スリーブ19に鍵で固定される。クラッチ24は、用量ダイアルスリーブ27の内面上の複数のスプラインと係合する複数の可撓性アームを備えている。
【0041】
クラッチプレート25及び付勢手段26は、クラッチ24の遠位端と駆動スリーブ19の遠位端で半径方向に伸びるフランジの間に位置する。付勢手段26は、例えば、らせんスプリングであってもよい。クラッチプレート25は、本体3に対して回転がロックされる。クラッチプレート25の近位端は、用量の設定操作の間クラッチ24の遠位端において鋸歯29と相互作用する鋸歯を備えている。
【0042】
末端停止部28は、駆動スリーブ19と用量ダイアルスリーブ27間に配置される。末端停止部28は、本体3に対して回転ロックされ、そして本体3に関して軸方向に動くことが自由である。この実施態様において、末端停止部28の外面は、用量ダイアルスリーブ27のねじ付きインサート33に係合するらせんねじ溝又はねじ山を備える。インサート33は、用量ダイアルスリーブ27に関して回転方向に、及び軸方向に固定された末端キャップ34を用いて用量ダイアルスリーブ27内に保持される。末端停止部28のスプラインは、クラッチプレート25と係合するために提供され、その結果、クラッチプレート25を本体3に対して回転ロックする。
【0043】
用量ダイアルスリーブ27は、本体3に対して用量ダイアルスリーブ27のらせん運動を誘導する外部らせんねじ山41を備えている。用量ダイアルグリップ46は、用量ダイアルスリーブ27の近位端に配置され、そして中心開口部を備えている。ボタン49は薬物送達デバイス1の近位端30で提供される。ボタン49は、用量ダイアルグリップ46の中心開口部を通して伸び、そして駆動スリーブ19のベアリング22に入る。
【0044】
ピストンロッド17の第一のねじ山15は、ガイドナット4の孔5の内壁上のねじ山8により誘導される。ガイドナット4は、ウェブ32を用いて本体3に対する軸運動を阻止される。ウェブ32は、ピストンロッド17の軸を本体3の内容積内に横方向に伸びる本体3の一体部分により形成されたインターフェース又は突出エレメントにより提供できる。ウェブ32は、代わりに、本体3に締結された分離構成部品により形成することができる。ウェブ32の形体は、本体3に対する軸シフトに対して、ガイドナット4を固定するその機能のみで制限される。この目的のために、ウェブ32は、図5から分かる通り、ガイドナット4の遠位側及び近位側上に位置する部分を含む。
【0045】
ロッキング手段9は、本体3の内壁上に、又は本体3に関して静止しているインサートに取り付けることができる。図5は、カートリッジホルダ2の突出部分としてのファスナ14を示す。ファスナ14は、カートリッジホルダ2がねじ山12、13を用いて本体3にねじ固定されるとき、ロッキング手段9と本体3の間において近位方向に伸び、その結果、カートリッジホルダ2の回転によりロッキング手段2上に摺動するように作ることができる。カートリッジホルダ2が取り付けられたとき、ガイドナット4は、係合されたロッキング手段9により本体3に回転がロックされる。カートリッジホルダ2が取り除かれるとき、ガイドナット4は解除され、そして本体3に対して回転が自由になる。
【0046】
ガイドナット4が本体3に対して回転がロックされるとき、ピストンロッド17の運動は、ピストンロッド17の第一のねじ山15を係合するガイドナット4のねじ山8により誘導される。ピストンロッド17の運動は、その結果、本体3に対するらせん運動を制限することになる。ガイドナット4が本体3に対して回転ロックされないとき、ピストンロッド17の運動は、ガイドナット4により、最早、制限を受けない。ガイドナット4は未だ、ウェブ32のために軸方向に動くことができないので、ピストンロッド17の本体3に対する軸シフトは、ガイドナット4に対して対応するらせん運動を必要とする。このらせん運動は容易に発生する。何故ならば、ガイドナット4のロッキング手段9からの係合を解除することが、ガイドナット4を自由に、そしてピストンロッド17の運動を容認する方法で、本体3に対して低摩擦で回転することが可能となるからである。
【0047】
薬物送達デバイスの記載された実施態様の操作は、次の通りに説明されるであろう。
【0048】
送達されるべき用量を設定するために、使用者は用量ダイアルグリップ46を回転し、それにより、用量ダイアルスリーブ27を回転する。クラッチ24は、クラッチ24の近位端で鋸歯31を用いて用量ダイアルスリーブ27と係合する。この係合、及びクラッチ24と駆動スリーブ19のスプライン係合は、クラッチ24を作り、そして駆動スリーブ19は、用量ダイアルスリーブ27を回転する。クラッチプレート25は、クラッチ24の鋸歯29とクラッチプレート25の鋸歯を接触状態に維持するために、付勢手段26によりクラッチ24に向かって押される。この鋸歯の外郭が、本体3に回転ロックされたクラッチ24及びクラッチプレート25の相対運動を可能にし、そしてこの相対運動が、設定操作の聴覚的、及び触覚的応答を提供する。それにより、用量のユニット又は特定のサブユニットの設定は、鋸歯がそれに応じた寸法にある場合表示できる。
【0049】
設定すべき用量が大きくなればなるほど、用量ダイアルスリーブ27は本体3からより遠くへ動く。用量ダイアルスリーブ27の本体3に対する相対運動はらせん的である。何故ならば、連結がねじ山を用いることにより影響を受けるからである。用量ダイアルスリーブ27の外部らせんねじ山41のピッチ;ピストンロッド17の第二のねじ山16のピッチ;及び用量ダイアルスリーブ27とピストンロッド17の間の連結が、本体3に対する用量ダイアルスリーブ27のらせん運動を可能とするように適合され、一方、ピストンロッド17を本体3に関して静止したままにする。ピストンロッド17は、ピストンロッド17の運動が係合されたガイドナット4により制限されるので、設定操作中その位置を維持する。
【0050】
用量ダイアルスリーブ27に連結されるが、本体3に対する回転を阻止する末端停止部28は、用量ダイアルスリーブ27が本体3から回転するとき、近位方向に動く。用量がカートリッジ6の残存する投与含量に等しく設定されるとき、末端停止部28は、ピストンロッド17の停止手段36に隣接し、それは末端停止部28及び同時に用量ダイアルスリーブ27を更に近位方向に動くことを阻止し、そして設定操作が終了する。
【0051】
設定用量が大きすぎる場合、設定操作は、用量ダイアルグリップ46を反対方向に回転することにより補正される。クラッチ24の逆方向の回転は、クラッチ24の鋸歯がクラッチプレート25の鋸歯を乗り越えさせる。
【0052】
望ましい用量が設定されたとき、それは、ボタン49を遠位方向に押すことにより投与することができる。これはクラッチ24を用量ダイアルスリーブ27に対して遠位方向に変位させ、それにより、クラッチ24及び同時に駆動スリーブ19の用量ダイアルスリーブ27からの連結の解除をおこなう。クラッチ24は、駆動スリーブ19に対して回転ロックされたままになる。用量ダイアルスリーブ27は、駆動スリーブの回転又はらせん運動を起こさせることなく、遠位方向にらせん運動で戻ることが自由になる。クラッチ24の変位が、また、クラッチプレート25が駆動スリーブ19の肩部に隣接するまで、付勢手段26に対して遠位方向にクラッチプレート25を動かす。クラッチ24及びクラッチプレート25は、それにより、クラッチ24のクラッチプレート25に対する回転が阻止されるように係合する。クラッチ24と駆動スリーブ19の本体3に対する回転は、その結果、また、阻止される。何故ならば、クラッチプレート25は、末端停止部28を用いて本体3に対して回転がロックされるからである。クラッチプレート25、クラッチ24及び駆動スリーブ19は、遠位方向に一緒に動くが、本体3に対しては回転しない。
【0053】
駆動スリーブ19の運動は、駆動スリーブ19の内部ねじ山を係合する第二のねじ山16を用いて、本体3に対してピストンロッド17のらせん運動を起こさせる。ピストンロッド17の運動が、また、ガイドナット4の内部ねじ山8を係合する第一のねじ山15により誘導され、そしてガイドナット4が、現在、ロッキング手段9と係合し、その結果、本体3に対して回転がロックされるので、ピストンロッド17のらせん運動がピストンロッド17を遠位方向に前進させる。第一のねじ山15及び第二のねじ山16のピッチ比は、投与操作中、本体3に対して、駆動スリーブ19がシフトする距離とピストンロッド17がシフトする距離の間の望ましい比率に基づき選択できる。遠位方向における用量ダイアルスリーブ27の運動は、末端停止部28を本体3内の初期位置へ後退させる。
【0054】
カートリッジ6が空のとき、それは新しいものと代替し得る。この目的のために、カートリッジホルダ2は、本体3から除去できる。空のカートリッジ6は、カートリッジ区画から取り出され、そして新しいカートリッジが挿入される。カートリッジホルダ2を本体3に取り付ける前に、ピストンロッド17は、カートリッジホルダ2が取り付けられるとき、ピストン7により占められる位置を考慮して適切な出発位置にリセットされる。
【0055】
ピストンロッド17は、近位方向にリセットされる。ピストンロッド17の運動は、ガイドナット4及び駆動スリーブ19をそれぞれ係合する第一のねじ山15及び第二のねじ山16により制限される。ガイドナット4及び駆動スリーブ19の両方が、本体3に対して静止しているとき、ピストンロッド17の本体3に対する運動は可能ではない。何故ならば、第一のねじ山15及び第二のねじ山16が同一ピッチ及び同一回転方向を有していないからである。ピストンロッド17の近位方向における軸方向の運動によるピストンロッド17のリセットは、本体3に対するピストンロッド17の位置及び運動に関係なく、ガイドナット4が本体3に対して回転が自由であり、その結果、ピストンロッド17に対するガイドナット4のらせん運動を可能とするとき、可能である。
【0056】
リセット操作は、従って、ガイドナット4の解除により可能となる。ファスナ14がカートリッジホルダ2と一緒に取り除かれるので、ロッキング手段9は、カートリッジホルダ2が本体3に取り付けられない限り、ガイドナット4から係合を解除される。ピストンロッド17が近位方向にシフトするとき、ガイドナット4は、ピストンロッド17に対するガイドナット4の必要ならせん運動に基づき回転する。ピストンロッド17がリセットされるとき、カートリッジホルダ2が本体3に取り付けられる。ファスナ14は、ガイドナット4が本体3に回転ロックできるように、ロッキング手段9をガイドナット4と係合させる。薬物送達デバイスは、上記の通り、設定及び投与のために準備される。
【0057】
ピストンロッド17のリセットは、手動で実施でき、一方、カートリッジホルダ2は、完全に除去されたままである。リセットは、近位端30に向かってピストンロッド17を押し、又は重力がピストンロッド17をリッセト位置に動かすために、下向きの近位端30を備えたデバイスを保持することにより実施できる。その代りに、ピストンロッド17は、カートリッジホルダ2が取り付けられ、そして近位端30に接近するとき、ピストン7によりリセット位置へ押すことができる。
【0058】
カートリッジホルダ2がねじ山12を備えている場合、それは、取り付け過程中に本体3に対してカートリッジホルダ2の回転毎に近位端30へ徐々に、そして着実に接近する。ねじ山で発生するカートリッジホルダ2の本体3に対するらせん運動は、薬物送達デバイスが使用される前に、ピストン7をシフトさせるかもしれないピストン7上に荷重を蓄積させない利点を有する。カートリッジホルダ2がバイオネット連結を備え、そしてカートリッジホルダ2の円滑な取り付けを制御するためのねじ山が存在しない場合、ピストンロッド17のリセットは、遠位端20に向かってピストン7の早期シフト阻止する手段により支持することができる。
【0059】
ファスナ14は、好ましくは、カートリッジホルダ2の取り付け作業中に、本体3とロッキング手段9の間の隙間に自動的に進入するように設計される。カートリッジホルダ2及びファスナ14の設計は、特に、好ましくは、ファスナ14がロッキング手段9をガイドナット4に係合させる位置に入り込む前に、ピストンロッド17の完全なリセットを確実にするように適合される。
【0060】
薬物送達デバイスの実施態様は、駆動アセンブリを完全に明確にするために、図5と関連させて詳細に記載された。この実施態様の詳細は、全体として、本発明の特別の機能を表すものでなく、及び特許請求範囲の通り、本発明の範囲を制限するものでもない。駆動アセンブリ及び薬物送達デバイスの様々な改良、変更及び置換は、本発明の範囲内にある。
【0061】
薬物送達デバイスは、それらの内、カートリッジの容易な代替、及び、特に、ピストンロッドの容易なリセットを可能にする多くの利点を有する。リセット操作は、それ故、設定及び投与の操作に関する駆動機構の詳細により影響を受ける必要はない。ピストンロッドは、従って、様々な機能を備え、及び様々な異なった実施態様を実現することができ、それらすべては、記載した通り、リセット操作を可能にする。本発明に記載の駆動アセンブリは、駆動機構及びピストンロッドの他の操作と独立して、リセット操作を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動アセンブリの軸の周囲を回転可能である、ガイドナット(4);
ガイドナットと係合し、ガイドナットの回転を阻止するために、軸に対して半径方向に可動である、ロッキング手段(9);及び
ロッキング手段を軸に対して半径方向に動かし、ロッキング手段がガイドナットと係合する位置にロッキング手段を保持するように備え付けられる、ファスナ(14);
を含んでなる、薬物送達デバイス用の駆動アセンブリ。
【請求項2】
ロッキング手段(9)が、薬剤送達のためのガイドナット(4)と係合する、請求項1に記載の駆動アセンブリ。
【請求項3】
ガイドナット(4)及びロッキング手段(9)が配置される本体(3);
本体(3)に取り付け可能で、本体(3)から取り外し可能なカートリッジホルダ(2);
カートリッジホルダの一部であるか、又はカートリッジホルダに締結されるファスナ(14)で、
カートリッジホルダが本体に取り付けられたとき、ロッキング手段(9)をガイドナット(4)に係合させる、該ファスナ(14);
を更に含んでなる、請求項1又は2に記載の駆動アセンブリ。
【請求項4】
ファスナ(14)がカートリッジホルダ(2)の突出エレメントにより提供される、請求項3に記載の駆動アセンブリ。
【請求項5】
ロッキング手段(9)は、カートリッジホルダが本体(3)に取り付けられていない場合、リセット操作中、ガイドナット(4)に係合しない、請求項3又は4に記載の駆動アセンブリ。
【請求項6】
ロッキング手段(9)が、本体(3)に締結され、及びファスナ(14)が、本体に対するカートリッジホルダ(2)の回転により、ロッキング手段をガイドナット(4)と係合させる、請求項3〜5のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ。
【請求項7】
ガイドナット(4)が、歯の間にノッチ又は隙間を有する歯車であり、ロッキング手段(9)が、弾性的な又は弾性的に取り付けられた、ノッチ又は隙間と係合する端部又はフックを含むつめ又はカンチレバーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ。
【請求項8】
ピストン(17);及び
ガイドナット(4)及びピストンロッドを連結させ、ガイドナットに対してピストンロッドの軸の周囲の回転及び軸に沿った同時シフトを含んでなるらせん運動を可能とするねじ山(8、15);
を更に含んでなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の駆動アセンブリ。
【請求項9】
ガイドナット(4)及びロッキング手段(9)が配置される本体(3)、及び
ロッキング手段(9)がガイドナットに係合されていないとき、軸方向へのガイドナット(4)の動きを阻止するが、軸の周囲でガイドナットを回転することを可能とする、本体(3)のウェブ(32);
を更に含んでなる、請求項8に記載の駆動アセンブリ。
【請求項10】
本体(3)内に配置された駆動スリーブ(19)(その駆動スリーブは、更なるねじ山
(16)によってピストンロッド(17)と連結される)、
を更に含んでなる、請求項9に記載の駆動アセンブリ。
【請求項11】
ねじ山(8、15)及び更なるねじ山(16)が反対方向の回転を有する、請求項10に記載の駆動アセンブリ。
【請求項12】
クラッチ(24)(駆動スリーブ(19)が、それにより解除可能な方法で本体(3)に対して回転がロックされる)、
を更に含んでなる、請求項10又は11に記載の駆動アセンブリ。
【請求項13】
軸に沿った本体(3)に対する駆動スリーブ(19)のシフトは、駆動スリーブが本体に対して回転ロックされ、ロッキング手段(9)がガイドナット(4)と係合したとき、本体に対するピストンロッド(17)のらせん運動に変換される、請求項12に記載の駆動アセンブリ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の駆動アセンブリを含む薬物送達デバイス。
【請求項15】
注射ペンの形状を有する請求項14に記載の薬物送達デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−517821(P2013−517821A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549375(P2012−549375)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050898
【国際公開番号】WO2011/089246
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】