説明

薬理学的に活性のある薬剤の送達のためのナノ粒子

(a)水不溶性ポリマーまたはコポリマーを含有するコア、および(b)親水性ポリマーまたはコポリマーを含有するシェル;を含有してなるコアシェルナノ粒子であって、前記ナノ粒子が、水溶液中で少なくとも1つの水不溶性スチレン、アクリルまたはメタクリルモノマーおよび特異的親水性モノマーまたはコポリマーを含有する混合物の乳化重合によって得ることが出来る、コアシェルナノ粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、コアシェルナノ粒子、それらを調製する方法、ならびに薬理学的に活性のある物質、特に、天然および修飾(デオキシ)リボヌクレオチド(DNA、RNA)、オリゴ(デオキシ)ヌクレオチド(ODN)を含む核酸およびタンパク質に可逆的に結合して細胞内に送達することができる担体としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
DNAワクチンは、感染症の多くの動物モデルにおいて免疫応答および防御免疫を誘導することが知られている。ヒトの臨床試験において、あるDNAワクチンは、免疫応答を誘導することが示されているが、高用量のDNAの多重免疫化(multiple immunization)を必要とした。したがって、ヒトにおいて防御有効性を提供するために、DNAワクチンの有効性が増大する必要がある。
【0003】
この十年の間に、(遺伝子、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび三重らせん形成オリゴヌクレオチド等の)遺伝物質をインタクトな細胞に導入する新しい治療的アプローチは、遺伝子治療において基礎的および臨床的にともに急速な進歩を示している。リポソーム、ポリマーおよびポリマー粒子を含む多くの型の合成担体が、細胞特異的または非特異的に外因性遺伝物質を細胞内に送達することが研究されている。最近、生分解性または生物適合性ポリマーナノ微粒子が、遺伝物質の潜在的な担体として研究されている。遺伝子送達担体としての生物適合性ポリマー粒子の利点としては、1)比較的不活性で生物適合性であること;2)大きさおよび表面特性を制御することによって生物学的性質を調節し得ること;ならびに3)調製、保存および操作が比較的容易であること、が挙げられる。得られる製剤の大きさおよび形状はまた、リポソームまたはポリカチオンに基づいた製剤と比較して均一および一様であり得る。
【0004】
生物適合性ポリマーからなる制御された送達系は、DNAまたはタンパク質を、それらが予め決められた速度および持続時間で所望の位置へ放出および送達されて最適な免疫応答を生じるまで、分解から潜在的に保護する。緩効性および蓄積効果の組み合わせによって、ワクチン中で用いられる抗原の量が減少し得、多くのワクチン接種の成功に必要なブースター投与が排除され得る。さらに、制御された送達系は、抗原を効率的に抗原提示細胞(APC)に指向させて細胞性および体液性応答の両方を生じさせ得る。
【0005】
Bertlingら(Biotechnol. Appl. Biochem. (1991) 13, 390-405)は、DEAEデキストラン存在下でポリシアノアクリレートからナノ粒子を調製した。プラスミドDNAの生物学的活性は、おそらく粒子へのDNAの強い結合のために観察されなかったが、これらのナノ粒子は、強いDNA結合能力およびDNアーゼI分解に対する耐性を示した。ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子はまた、オリゴヌクレオチド担体としても評価され、その物理的安定性およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの生物学的有効性が、この製剤において大いに増強されることが見出された(Cortesiら、Int. J. Pharm. (1994), 105, 181-186;Chavanyら、Pharm. Res. (1994), 11, 1370-1378)。ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子は、配列特異的アンチセンス効果が、オリゴヌクレオチドがナノ粒子と関連したときにのみ観察される場合に、疎水性相互作用を介して表面でコレステロール−オリゴヌクレオチドコンジュゲートへ吸着させるのに、最近用いられた(Godardら、Eur. J. Biochem. (1995), 232, 404-410)。上述の研究において、粒子の表面の大部分は、おそらくポリ(オリゴ)ヌクレオチドによって占められており、粒子表面をリガンド部分等の機能的分子で修飾して体内分布を調節することは困難であった。
【0006】
ポリ(ラクタイド−コ−グリコライド)(PLG)微粒子は、該ポリマーが生分解性および生物適合性であって、いくつかの薬物送達系の開発に用いられてきたので、ワクチン送達について広範に研究されている。また、PLG微粒子はまた、何年もの間、封入(entrapped)ワクチン抗原のための送達系として用いられてきた。より最近では、PLG微粒子は、封入DNAワクチンのための送達系として記載されている。それにもかかわらず、最近の観察によって、DNAがマイクロカプセル化の間に損傷を受け、スーパーコイルDNAの有意な減少をもたらすことが示された。さらに、カプセル化効率はしばしば低い。O'Haganら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2000), 97(2), 811-816;Journal of Virology (2001), 75, 9037-9043)は、DNAをPLG微粒子の表面に吸着させて、DNAのマイクロカプセル化に関連する問題を避ける新規のアプローチを最初に開発した。ポリマーの脂肪親和性の性質のために、微粒子表面へのDNAの結合を可能にするには懸濁液への疎水性陽イオンの添加が必要である。このアプローチは、モルモットおよびアカゲザル等のいくつかの動物種においてDNAワクチンの潜在能力を増大させることが示された。しかしながら、疎水性陽イオンは微粒子表面に共有結合しない。さらに、必要な高濃度で細胞培養物に毒性を示す。タンパク質を表面に直接吸着させることのできる帯電ポリマー微粒子を生成する方法もまた、O'Haganらによって開発された(J. Control. Release (2000), 67, 347-356)。彼らは、微粒子調製方法において、陽イオン性界面活性剤(detergent)であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を封入することによって、陰イオン性微粒子を調製した。陰イオン性微粒子は、HIV由来の組換えp-55ギャップタンパク質を吸着することができた。再び述べるが、陰イオン性物質は、微粒子の表面に共有結合しない。
【0007】
Duracherら, Langmuir (2000) 16, 9002-9008は、修飾HIV-1カプシドp24タンパク質の熱安定性および陽イオン性コアシェルポリ(スチレン)−ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)粒子への吸着を記載している。二段階の手順を用いて粒子が製造された;第一の工程において、スチレンとN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)とのバッチ重合を行い、第二の工程は、NIPAM、塩酸アミノエチルメタクリレート、および架橋剤としてのメチレンビスアクリルアミドの添加からなる、乳化剤不含エマルジョンおよび沈殿重合を組み合わせた。シェルは架橋され、ヒドロゲルの形態である。
【0008】
(発明の概要)
本発明の1つの狙いは、核酸等の薬理学的に活性のある物質に可逆的に結合してインタクトな細胞に送達することのできる生物適合性のポリマー担体を開発することである。本発明の別の狙いは、食作用細胞による認識を避けて、血流中により長く持続することのできるステルス担体を開発することである。
【0009】
したがって、本発明は、
(a)水不溶性ポリマーまたはコポリマーを含むコア、ならびに
(b)親水性ポリマーまたはコポリマーを含むシェル
を含むコアシェルナノ粒子を提供し、上述のナノ粒子は、水溶液中に少なくとも1つの水不溶性モノマーおよび
(i)式(I)のモノマーであって、:


式中、
R1は水素またはメチルを表し、
R2は-COOAOH、-COO-A-NR9R10または-COO-A-N+R9R10R11X-を表し、ここでAはC1-20アルキレン、R9、R10およびR11はそれぞれ別々に水素またはC1-20アルキルを表し、Xはハロゲン、硫酸、スルホン酸または過塩素酸を表すモノマー、ならびに
式(II)の水溶性ポリマーであって、:

式中、
R3は水素またはメチルを表し、
R4は水素またはC1-20アルキルを表し、
nは、式(I)のポリマーが少なくとも1000の数平均分子量を有するような整数である、ポリマー;または
(ii)式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性コポリマーであって、:


式中、
R5およびR7はそれぞれ別々に水素またはメチルを表し、
R6は水素、-A-NR9R10または-A-N+R9R10R11X-を表し、ここでAはC1-20アルキレンを表し、R9、R10およびR11はそれぞれ別々に水素またはC1-20アルキルを表し、Xはハロゲン、硫酸、スルホン酸または過塩素酸を表し、
R8はC1-10アルキルを表す、コポリマー
の混合物の乳化重合によって得ることができる。
【0010】
本発明はさらに、
−本発明のナノ粒子を調製する方法;
−ナノ粒子の表面に吸着した、治療または診断のために医薬等の薬理学的に活性のある薬剤をさらに含む本発明のナノ粒子(以後「薬理学的に活性のあるナノ粒子」と記載する)。好ましくは、薬理学的に活性のある薬剤は抗原、より好ましくは疾患関連抗原である。かかるナノ粒子は、以後「抗原含有ナノ粒子」と記載する;
−薬理学的に活性のあるナノ粒子、特に本発明の抗原含有ナノ粒子を調製する方法;
−本発明の薬理学的に活性のあるナノ粒子を含む医薬組成物;
−個体において免疫応答を生じる方法であって、上記の方法が本発明の抗原含有ナノ粒子を治療有効量で投与することを含む、方法;
−HIV感染またはAIDSを予防または治療する方法であって、上記の方法が薬理学的に活性のあるナノ粒子、特に本発明の抗原含有ナノ粒子を治療有効量で投与することを含む、方法;
−ヒトまたは動物の体に実施する治療または診断方法によってヒトまたは動物の体を治療する方法における使用のための薬理学的に活性のあるナノ粒子、特に本発明の抗原含有ナノ粒子;
−個体において免疫応答を生じるための医薬を製造するための、本発明の抗原含有ナノ粒子の使用;ならびに
−HIV感染またはAIDSを予防または治療する医薬の製造のための、薬理学的に活性のあるナノ粒子、特に本発明の抗原含有ナノ粒子の使用
を提供する。
【0011】
(配列表の簡単な説明)
配列番号:1は、HTLV-III、BH10 CLONE、CLADE B由来の全長HIV-1 Tatタンパク質をコードする塩基配列を示す。
配列番号:2は、102アミノ酸配列の、HILV、BH10 CLONE CLADE B由来の全長HIV-1 Tatタンパク質を示す。
配列番号:3〜32は、HTLV-III、BH10 CLONE、CLADE Bから単離された全長HIV-1 Tatタンパク質のバリアントの塩基配列およびアミノ酸配列を示す。Tatの長さおよび配列は、ウイルスの分離株によって異なる。
配列番号:3は、短い方(the shorter version)のHIV-1 Tatタンパク質(BH10)をコードする塩基配列を示す。
配列番号:4は、86アミノ酸の、短い方のHIV-1 Tatタンパク質(BH10)を示す。この配列は、配列番号:1の1〜86残基に相当する。
配列番号:5は、BH10(配列番号:4)のシステイン22変異体をコードする塩基配列を示す。
配列番号:6は、86アミノ酸の、BH10(配列番号:4)のシステイン22変異体を示す。
配列番号:7は、BH10(配列番号:4)のリシン41変異体をコードする塩基配列を示す。
配列番号:8は、86アミノ酸の、BH10(配列番号:4)のリシン41変異体を示す。
配列番号:9は、BH10(配列番号:4)のRGDΔ変異体をコードする塩基配列を示す。
配列番号:10は、83アミノ酸の、BH10(配列番号:4)のRGDΔ変異体を示す。
配列番号:11は、BH10(配列番号:4)のリシン41RGDΔ変異体をコードする塩基配列を示す。
配列番号:12は、83アミノ酸の、BH10(配列番号:4)のリシン41RGDΔ変異体を示す。
配列番号:13は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_A-A1-A2バリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:14は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_A-A1-A2バリアントを示す。
配列番号:15は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Bバリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:16は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Bバリアントを示す。
配列番号:17は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Cバリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:18は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Cバリアントを示す。
配列番号:19は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_DバリアントDをコードする塩基配列を示す。
配列番号:20は、86アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Dバリアントを示す。
配列番号:21は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_F1-F2バリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:22は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_F1-F2バリアントを示す。
配列番号:23は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Gバリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:24は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Gバリアントを示す。
配列番号:25は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Hバリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:26は、86アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Hバリアントを示す。
配列番号:27は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_CRF01バリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:28は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_CRF01バリアントを示す。
配列番号:29は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_CRF02バリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:30は、101アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_CRF02を示す。
配列番号:31は、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Oバリアントをコードする塩基配列を示す。
配列番号:32は、115アミノ酸の、HIV-1 Tatタンパク質のコンセンサス_Oバリアントを示す。
配列番号:33は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の1〜20残基に相当する。
配列番号:34は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の21〜40残基に相当する。
配列番号:35は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の36〜50残基に相当する。
配列番号:36は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の46〜60残基に相当する。
配列番号:37は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の56〜70残基に相当する。
配列番号:38は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の52〜72残基に相当する。
配列番号:39は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の65〜80残基に相当する。
配列番号:40は、抗Tat IgGエピトープマッピングに用いられる合成ペプチドの1つを示す。この配列は、配列番号:2および4の73〜86残基に相当する。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は特定の薬理学的に活性のある薬剤または抗原に限定されないことが理解されよう。また、開示される方法の異なる適用が当該分野の特定の必要性のために調整され得ることも理解されよう。また、本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の態様のみを説明する目的であり、限定を意図しないことも理解されよう。
【0013】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容によって明らかに指示されない限りは、複数の指示物を含む。そのため、例えば、「1つの抗原(an antigen)」への言及は、2つ以上のかかる抗原の混合物を含み、「1つのナノ粒子(a nanoparticle)」への言及は、2つ以上のナノ粒子の混合物への言及を含み、その逆もまた同じであって、「1つの標的細胞(a target cell)」への言及は、2つ以上のかかる細胞の混合物等を含む。
【0014】
本明細書中に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上記のものであれ下記のものであれ、その全体が参照によって本明細書中に援用される。
【0015】
本発明は、標的細胞への、薬理学的に活性のある薬剤、特に抗原の送達に用いられ得るナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、その外表面に薬理学的に活性のある薬剤を吸着または固定され得る。
【0016】
本発明のナノ粒子は、内部のコアが水不溶性ポリマーまたはコポリマーを含み、外側のシェルが親水性ポリマーまたはコポリマーを含む、コアシェル構造を有する。シェルは、帯電した、またはイオンの、もしくはイオン性の官能基を含む。好ましくは、それらは生理学的pH、例えば7.2〜7.6の範囲、好ましくは約7.4のpHでイオンまたはイオン性である。ナノ粒子は、式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーを含有する、または式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性コポリマーを含有する水溶液中の水不溶性モノマーの乳化重合によって得ることができる。水不溶性モノマーは、重合されてコアを形成する。シェルは、式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーによって、または式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性コポリマーによって形成される。外側のナノ粒子表面は、典型的には、イオンの、またはイオン性の化学基を含む親水性のシェルである。ナノ粒子表面は、全体として正または負の電荷を有し得る。ナノ粒子は好ましくはその外表面全体にわたって、正味の正または負の電荷を有する。表面電荷密度は、典型的には、ナノ粒子の表面を挟んで異なる。
【0017】
ナノ粒子のシェルおよびコアは、生物適合性および生分解性のポリマー物質で構成される。用語「生物適合性ポリマー物質」は、動物にとって毒性がなく、発癌性でないポリマー物質として定義される。該物質は、好ましくは、インビボで体の過程によって、体によって容易に排出可能な産物に分解されて体内に蓄積しないはずであるという意味で、生分解性である。一方、ナノ粒子が、天然に生物によって捨てられる(shed)組織(例えば、皮膚の脱落)に挿入される場合、該物質は生分解性である必要はない。
【0018】
本発明のナノ粒子のコアで用いられる水不溶性ポリマーまたはコポリマーは、少なくとも1つの水不溶性スチレン、アクリルまたはメタクリルモノマーの乳化重合によって得ることができる任意の水不溶性ポリマーまたはコポリマーであり得る。適切な物質としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリスチレンならびにアクリルまたはメタクリルまたはスチレンコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。コアが水不溶性コポリマーを含む場合、乳化重合過程は、1つより多いコモノマーを用い得る。
【0019】
したがって、コア中の水不溶性ポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、少なくとも1つの、式Vのモノマーであって、:


式中、R12は水素またはメチルを表し、
R13はフェニル、-COOR14、-COCNまたはCNを表し、
ここでR14は水素またはC1-20アルキルである、モノマー
の重合から形成される。
【0020】
用語「ポリ(メト)アクリレート」は、本明細書中で用いられる場合、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートの両方を包含する。同様に、用語「(メト)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を包含する。
【0021】
コア物質として用いられ得る好ましいポリ(メト)アクリレートとしては、ポリ(アルキル(メト)アクリレート)、特にポリ(C1-10アルキル(メト)アクリレート)、ならびに好ましくは、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)およびポリ(エチルメタクリレート)等のポリ(C1-6アルキル(メト)アクリレート)が挙げられる。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)が、コア物質として特に好ましい。PMMAは、50年より長い間外科手術に用いられており、ナノ粒子の形態でゆっくりと生分解され得る(一年あたり約30%〜40%のポリマー)。
【0022】
本発明の第一の態様において、本発明のナノ粒子は、式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーを含有する水溶液中の少なくとも1つの水不溶性モノマーの乳化重合によって得ることができる。これらのナノ粒子の構造を、添付の図面の図1に模式的に示す。シェルは、コアの周りにコロナ(corona)を形成する。コロナ構造は、DNA等の大きい分子を吸着する場合に拡張することができる。式(I)のモノマーを組み込むことによって、核酸をナノ粒子の表面に結合させることができる、ナノ粒子の表面上の陽イオン性基の存在がもたらされる。式(II)のポリマーを組み込むことによって、高度に親水性の外側のシェルを生じる、ナノ粒子中のポリ(エチレングリコール)(PEG)鎖の存在がもたらされる。
【0023】
式(I)のモノマーにおけるR1は、水素またはメチルであり、好ましくはメチルである。
【0024】
式(I)のモノマーにおけるR2は、-COOAOH、-COO-A-NR91010または-COO-A-N+R9R10R11X-であり得、好ましくは-COO-A-NR9R10または-COO-A-N+R9R10R11X-である。
【0025】
式(I)のモノマーにおけるAはC1-20アルキレンであり、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンまたはヘキシレン基またはそれらの異性体である。エチレンが好ましい。
【0026】
式(I)のモノマーにおけるR9は水素またはC1-20アルキルであり、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらにより好ましくはC1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルもしくはtert-ブチル基、またはペンチルもしくはヘキシル基、またはそれらの異性体である。メチルおよびエチルが好ましく、特にメチルが好ましい。
【0027】
式(I)のモノマーにおけるR10は水素またはC1-20アルキルであり、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらにより好ましくはC1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルもしくはtert-ブチル基、またはペンチルもしくはヘキシル基、またはそれらの異性体である。メチルおよびエチルが好ましく、特にメチルが好ましい。
【0028】
式(I)のモノマーにおけるR11は水素またはC1-20アルキルであり、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC4-C16アルキル基、さらにより好ましくはC6-10アルキル基、例えばヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルもしくはデシル基またはそれらの異性体である。n-オクチルが好ましい。
【0029】
本発明で用いられ得る式(I)のモノマーの例は、下記の式(1)を有する2-(ジメチルオクチル)アンモニウムエチルメタクリレートブロミン:


である。
【0030】
式(II)のポリマーにおけるR3は水素またはメチルであり、好ましくはメチルである。
【0031】
式(II)のポリマーにおけるR4は水素またはC1-20アルキルであり、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらにより好ましくはC1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルもしくはtert-ブチル基、またはペンチルもしくはヘキシル基、またはそれらの異性体である。メチルおよびエチルが好ましく、特にメチルが好ましい。
【0032】
nは、式(II)のポリマーが少なくとも1000の数平均分子量を有するような整数である。式(II)のポリマーの数平均分子量が少なくとも1000である場合、ナノ粒子は核酸に可逆的に結合できることがわかる。数平均分子量が1000未満である場合、ナノ粒子は、例えばプラスミドDNAに結合する能力が減少する。DNA結合能に関して、式(II)のポリマーの数平均分子量は、好ましくは1000〜6000、より好ましくは1500〜3000、最も好ましくは1900〜2100である。
【0033】
本発明で用いられ得る式(II)のポリマーの例は、およそ2000の数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートである。適切なポリマーは、Aldrichから市販されており、下記の式(2)を有する:
本発明の第二の態様において、本発明のナノ粒子は


式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性ポリマーを含有する水溶液中の水不溶性モノマーの乳化重合によって得ることができる。
【0034】
式(III)の反復単位におけるR5は水素またはメチルである。
【0035】
特定の態様において、式(II)のモノマーにおけるR6は水素または-A-NR9R10を表す。
【0036】
式(III)の反復単位におけるA、R9、R10およびR11の好ましい値は、式(I)について前述したものと同じである。
【0037】
式(IV)の反復単位におけるR7は水素またはメチルである。
【0038】
式(IV)の反復単位におけるR8はC1-10アルキルであり、好ましくはC1-6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルもしくはtert-ブチル基、またはペンチルもしくはヘキシル基、またはそれらの異性体である。メチル、エチルおよびブチルが好ましい。
【0039】
式(I)のモノマーまたは式(III)の反復単位におけるXは、ハロゲン、硫酸、スルホン酸または過塩素酸であり得る。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは臭素またはヨウ素、最も好ましくは臭素であり得る。
【0040】
本発明で用いられ得る式(III)および(IV)の反復単位を含むコポリマーの例は、メタクリルおよびエチルアクリレートのコポリマー、例えば、遊離カルボキシル基のエステル基に対する比がおよそ1:1である統計学的コポリマーである。適切なコポリマーは、Rohm Pharmaから、Eudragit(登録商標)L 100-55という商品名で市販されている。
【0041】
本発明で用いられ得る式(III)および(IV)の反復単位を含むコポリマーのさらなる例は、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートおよびC1-6アルキルメタクリレートのコポリマー、例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、メチルメタクリレートおよびブチルメタクリレートのコポリマーである。適切なコポリマーは、Rohm Pharmaから、Eudragit(登録商標)E 100という商品名で市販されている。
【0042】
本発明は、コアシェル構造および調整された表面を有するポリマーナノ粒子に基づく、核酸等の薬理学的に活性のある物質のための、新しい重合体の送達系を提供する。内部のコアは、主に、ポリ(メチルメタクリレート)等の、水不溶性ポリマーまたはコポリマーから構成され、親水性の外側のシェルはイオンの、またはイオン性の官能基を有する加水分解可能なコポリマーによって構成される。例えば、陽イオン性ポリマーは、ODNおよびDNAに可逆的に結合することができる。陰イオン性ポリマーは、Tat等の塩基性タンパク質に可逆的に結合し、保護および送達することができる。さらに、ナノ粒子は、生物適合性を高めるPEG鎖ブラシ(PEG chain brushes)を含み得る。本発明の第一の態様のナノ粒子は、比較的多量のプラスミドPCV0-tat DNA(5〜6% w/w)に結合して別の速度論的経路でそれらを放出することができることがわかる。
【0043】
本発明の第一の態様のナノ粒子におけるPEGベースのシェルは、細網内皮系(RES)の食細胞による体からのナノ粒子のクリアランスを防ぐか、少なくとも減少させる。実際、外来ナノ粒子の捕捉は、最初に血漿タンパク質(オプソニン)の吸着によって媒介され、食細胞による認識をもたらすと考えられている。ナノ粒子表面に位置するPEG鎖の親水性は、粒子表面の立体的安定性およびオプソニン異常の効果(dysopsonic effect)の誘導の両方に関与し、担体の存在を、RESの認識から隠す。オプソニン化を避けることによって、ポリマーナノ粒子は、単核食細胞系による排除を克服し得、そのため、延長された時間の間、循環における薬物の遅く一定した放出を有する目的、および薬物の薬物動態学的性能を向上させる目的を達成する。
【0044】
本発明のナノ粒子は、薬理学的に活性のある物質、特にDNA、ODNなどの核酸およびタンパク質を可逆的に結合し、細胞内に送達し得る。外側のシェルにおける結合が、インビトロおよびインビボの双方で、薬理学的に活性のある物質の分解を防ぎ、生物学的活性のある形態で、その放出を可能にするため、望ましい。
【0045】
本発明のかかるナノ粒子は、エマルション安定剤として官能化コモノマーを用いて、乳化重合により合成される。通常の乳化剤なしの乳化重合系は周知であり(Gilbertら, Emulsion Polymerization, A Mechanistic Approach, Academic Press: London, 1995; Wuら, Macromolecules (1997), 30, 2187; Liuら, Langmuir (1997), 13, 4988; Schoonbroodら, Macromolecules (1997), 30, 6024; Cochinら, Macromolecules (1997), 30, 2287-2287; Xuら, Langmuir (2001), 17, 6077-6085; Delairら, Colloid Polym. Sci. (1994), 272, 962)、本質的にはエマルション配合を安定化する作用をするある反応性成分、すなわち「サーフマー(surfmer)」または「重合可能な界面活性剤」を含有する。
【0046】
水溶性コモノマーを含む多数の乳化重合系に関して報告されたように(Gilbertら, Emulsion Polymerization, A Mechanistic Approach, Academic Press: London, 1995; Delairら, Colloid Polym. Sci. (1994), 272,962)、複合粒子形成機構は、均質な核形成を必要とする。反応は、水溶性オリゴラジカルの形成をもたらし水溶性コモノマーに富む水相で、それらが溶解度の限界に到達し、沈殿してモノマーおよびコモノマーの取り込みにより成長し得る一次粒子を形成するまで、起こる。水溶性単位は選択的にナノ粒子表面に位置し、ラテックス安定化に盛んに関与する。かかる方法でナノ粒子は、使用したコモノマーの化学構造によって決定される、適した表面を有して得られ得る。
【0047】
本発明のナノ粒子を調製する乳化重合プロセスにおいて、モノマーおよび存在する場合、ポリマーは、好ましくは乳化重合が起こる前に混合される。これは、図1に示されるようにコアの周りにコロナを形成するシェルを有するナノ粒子のコアシェル構造の生成を可能にする。
【0048】
具体的には、本発明のナノ粒子は、
(i) 式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマー、または
(ii) 式(III)および(IV)の繰り返し単位を含む親水性コポリマー
を含有する水溶液内の水不溶性モノマーの乳化重合によって調製され得る。
【0049】
重合反応は、典型的には、式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーを含有する、または式(III)および(IV)の繰り返し単位を含む親水性コポリマーを含有する水溶液中に水不溶性モノマーを、好ましくは滴下して、導入することにより行われる。反応は好ましくは、窒素などの不活性雰囲気の下で、好ましくは継続的に攪拌して行われる。水溶液はアセトンなどのさらなる溶媒を含有し得る。例えば、90/10 容量%の水/アセトン混合物が用いられ得る。
【0050】
水不溶性モノマーの添加の後、系は好ましくは、遊離基開始剤の添加の前に、しばらくの間、例えば10〜60分間、好ましくは15〜40分間放置され、安定化する。適当な遊離基開始剤の例としては、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウムの陰イオンおよび2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(AIBA)の陽イオンが挙げられる。遊離基開始剤は典型的には水溶液の形態で添加される。
【0051】
重合は典型的には50〜100℃、好ましくは65〜85℃の温度で、少なくとも90分間行われる。反応は20時間以上要する場合がある。
【0052】
反応終了時に、生成物は公知の方法により精製され得る。例えば、生成物は濾過され、透析を繰り返すこと(例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミドの水溶液に対して10回以上、およびその後水に対して10回以上)により精製され得る。
【0053】
エマルションからナノ粒子を単離した後、ナノ粒子は、空気にさらすことにより、または凍結乾燥、真空乾燥、乾燥剤上での乾燥などの他の通常の乾燥法により乾燥され得る。薬理学的に活性のある薬剤を吸着させる前に、ナノ粒子は適当な液体に再分散され、一時的に保存され得る。当業者は、本発明のナノ粒子がどのような条件下で保存され得るかを理解する。典型的には、ナノ粒子は低温、例えば約4 Cで保存される。
【0054】
不ぞろいな形状のナノ粒子も存在し得るが、ナノ粒子は通常は球形状を有する。したがって顕微鏡で見た場合、ナノ粒子は典型的には回転楕円体状であるが、楕円形、形が不ぞろいであるか、または環状体であり得る。ある態様において、ナノ粒子は、図2に示されるようなラズベリー様の形態を有する。
【0055】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の出発物質は市販されているか、または公知の方法により調製され得る。例えばR2が-A-N+R9R10R11X-を表す式(I)のモノマーは、式(VI):
H2C=C(-R1)-COO-A-NR9R10 (VI)
の化合物を式R11Xの化合物と反応させることにより調製され得る。
【0056】
本発明のナノ粒子は、一般に、1100 nm未満、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは50〜500 nm、例えば50〜300 nmの、走査電子顕微鏡により測定される数平均粒子径を有する。粒子径は、ナノ粒子の合成の間に用いられる遊離基開始剤によることが見出される。例えば、遊離基開始剤としてAIBAを用いて得られる試料は、一般に、KPSを用いて得られる試料より低い数平均粒子径を有する。サイズが縮小することは、より大きな表面積が薬理学的に活性のある物質の吸着に利用し得、したがって投与するために要するポリマーの量を減少させることを意味するため、有利である。
【0057】
粒径は顕微鏡技術(ここで粒子は統計的に集団とするのではなく、直接かつ個別に分級される)、ガス吸収、または透過法などの通常の技術を用いて測定され得る。希望により、平均粒径を確認するために、自動粒径計測器が用いられ得る(例えばCoulter Counter、HIAC Counter、またはGelman Automatic Particle Counter)。
【0058】
実際のナノ粒子の密度は、ヘリウムピクノメトリーなどの公知の定量技術を用いて容易に確認し得る。あるいは、粒子組成物の密度を評価するためにエンベロープ(「タップ」)密度測定が用いられ得る。エンベロープ密度の情報は不ぞろいのサイズおよび形状の目的物の密度を特徴づけるのに特に有用である。エンベロープ密度、すなわち「嵩密度」は、目的物の、その容積で除した質量であり、ここで容積はその細孔および小空洞の容積を含む。個々の粒子の密度と相関する他の間接的な方法が利用できる。エンベロープ密度を測定するいくつかの方法は、当該分野で公知であり、ワックス浸漬、水銀置換、水吸収、および見かけ比重法を含む。エンベロープ密度を測定するために、いくつかの適当な装置、例えばMicromeritics Instrument Corp.から入手し得るGeoPycTM Model 1360もまた利用できる。試料の医薬組成物の絶対密度とエンベロープ密度との差は、試料の全孔隙率および比細孔容積についての情報を与える。
【0059】
ナノ粒子の形態、特に粒子の形状は、標準的な光学または電子顕微鏡法を用いて容易に評価され得る。粒子は球状の、または少なくとも実質的に球の形状を有することが好ましい。粒子は2以下すなわち2:1から1:1の軸比を有し、棒または針形状の粒子が存在しないようにすることがまた好ましい。かかる同様の顕微鏡技術はまた、粒子表面の特性、例えば表面空隙の量および程度または多孔度を評価するために用いられ得る。
【0060】
本発明のナノ粒子はまた、蛍光発色団を含有し得る。例えば、ナノ粒子の合成の間に、フルオレセインをベースとするアリルモノマー(3):


を重合反応混合物に添加することにより黄緑色の蛍光ナノ粒子が得られ得る。蛍光モノマー(3)は、用いた反応条件下で重合し、蛍光ナノ粒子を生じ得る。かかるナノ粒子の調製手順は、高度に蛍光性である疎水性発色団がナノ粒子のコアに取り込まれることを可能にする。色素分子が共有結合することにより、高い蛍光強度、極小の消光、および良好な光安定性を有するナノ粒子が生じ、そのため光への曝露がその光電子放出を減少させない。
【0061】
蛍光発色団を含有するナノ粒子は、細胞系およびインビボにおけるコアシェルナノ粒子の取り込みに関する情報を得るためにプローブとして用いられ得る。
【0062】
本発明のナノ粒子は、その表面に吸着された薬理学的に活性のある薬剤を有し得る。用語「吸着」または「固定」は、薬理学的に活性のある薬剤がナノ粒子のシェルの外表面に付着することを意味する。吸着または固定は、好ましくは静電気引力により起こる。静電気引力は、2つ以上の逆帯電した、またはイオンの化学基の間に生じる引力または結合である。吸着または固定は典型的には可逆的である。
【0063】
薬理学的に活性のある薬剤は、好ましくはナノ粒子のイオンの、またはイオン性の親水性シェルにそれを引きつける正味電荷を有する。薬理学的に活性のある薬剤は、典型的には1つ以上の帯電した化学またはイオン基を有する。薬理学的に活性のある薬剤がペプチドである場合、薬理学的に活性のある薬剤は典型的には1つ以上の帯電したアミノ酸残基を有する。薬理学的に活性のある薬剤は典型的には正または負の正味電荷を有する。薬理学的に活性のある薬剤は好ましくはナノ粒子の親水性シェルの電荷と反対の正味電荷を有する。
【0064】
薬理学的に活性のある薬剤は、薬理学的に活性のある薬剤の溶液をナノ粒子の液体懸濁液と混合することにより、ナノ粒子に吸着され得る。薬理学的に活性のある薬剤およびナノ粒子は、典型的には適当な液体、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの生理的緩衝液の中で混合される。混合物は、薬理学的に活性のある薬剤の保存、および薬理学的に活性のある薬剤とナノ粒子との間の結合の形成に適した条件下で、しばらくの間放置され得る。かかる条件は当業者に理解される。吸着は通常は0℃〜37℃、好ましくは4℃〜25℃の温度で行われる。吸着は暗所で起こり得る。吸着は典型的には30分間から、および180分間行われる。吸着の後、本発明のナノ粒子は、当該分野で公知の方法、例えば遠心分離により吸着液体から分離され得る。ナノ粒子は、次に個体への投与に適した液体中に再懸濁され得る。
【0065】
本発明において有用な薬理学的に活性のある薬剤
「薬理学的に活性のある薬剤」は、生体(ヒトまたは動物被験体)に投与されたときに、局所および/または全身作用による所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘導する物質の任意の化合物または組成物を含む。そのため該用語は、伝統的に薬物、生物医薬品(ペプチド、タンパク質、核酸などの分子を含む)、ワクチン、および遺伝子治療(例えば遺伝子コンストラクト)とみなされる化合物または化学薬品を包含する。
【0066】
本発明において有用な薬理学的に活性のある薬剤としては、シナプスおよび神経効果器接合部で作用する薬物(コリン作動薬、抗コリンエステラーゼ剤、アトロピン、スコポラミン、および関連する抗ムスカリン性薬、カテコールアミンおよび交感神経様作用薬、ならびにアドレナリン受容体アンタゴニスト);中枢神経系に作用する薬物;オータコイド(炎症の薬物治療);腎臓機能および電解質代謝に影響を及ぼす薬物;心臓血管薬;胃腸機能に影響を及ぼす薬物;腫瘍性疾患の化学療法;血液および造血器官に作用する薬物;ならびにホルモンおよびホルモンアンタゴニストが挙げられる。したがって、本発明において有用な薬剤としては、限定されないが、抗生物質および抗ウイルス剤などの抗感染薬;鎮痛薬および鎮痛剤の組み合わせ;局所および全身麻酔薬;食欲抑制薬;抗関節炎薬;抗喘息剤;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症剤;制吐薬;抗片頭痛剤;抗腫瘍薬;止痒薬;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;心臓血管用薬(カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、ベータ作動薬および抗不整脈薬(antiarrythmics)を含む);抗高血圧薬;利尿薬;血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;感冒薬;鬱血除去薬;診断薬;ホルモン;骨成長刺激薬および骨吸収抑制薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;精神興奮薬;鎮静薬;精神安定薬;タンパク質、ペプチドおよびその断片(天然に存在するもの、化学的に合成されたもの、または組換えにより産生されたものかは問わず);ならびに核酸分子(2つ以上のヌクレオチドの重合形態であって、二本鎖および一本鎖分子、ならびにスーパーコイルまたは縮合分子、遺伝子コンストラクト、発現ベクター、プラスミド、アンチセンス分子などを含む、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかが挙げられる。
【0067】
本発明において有用な薬物の特別な例としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β-ラクタム抗生物質、およびγ-アミノ酪酸(GABA)様化合物が挙げられる。代表的なACE阻害薬はGoodmanおよびGilman, 第8版 757〜762ページに論じられており、これは本明細書中に参照によって援用されている。これらとしては、キナプリル、ラミプリル、カプトプリル、ベナゼプリル(benzepril)、ホシノプリル、リシノプリル、エナラプリルなど、およびそのそれぞれの薬学的に許容され得る塩が挙げられる。β-ラクタム抗生物質は、一般に抗生物質の構造中のβ-ラクタム環の存在を特徴とするもので、GoodmanおよびGilman, 第8版 1065〜1097ページに論じられており、これは本明細書中に参照によって援用されている。これらとしてはペニシリン、ならびにアモキシシリンおよびセファロスポリンなどのその誘導体が挙げられる。GABA様化合物はまた、GoodmanおよびGilmanにおいて見出され得る。他の化合物としては、カルシウムチャネル遮断薬(例えばベラパミル、ニフェジピン、ニカルジピン、ニモジピンおよびジルチアゼム);テオフィリンなどの気管支拡張薬;フェニルプロパノールアミン塩酸塩などの食欲抑制薬;デキストロメトルファンおよびその臭化水素塩、ノスカピン、カルベタペンタンシトラート、ならびに塩酸クロフェダノールなどの鎮咳薬;テルフェナジン、酒石酸フェニンダミン(phenidamine tartrate)、ピリラミンマレイン酸塩、ドキシラミンスクシナート、およびクエン酸フェニルトロキサミンなどの抗ヒスタミン薬;フェニレフリン塩酸塩、フェニルプロパノールアミン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、クロロフェニラミンマレアート、エフェドリン、フェニレフリン、クロルフェニラミン、ピリラミン、フェニルプロパノールアミン、デクスクロルフェニラミン、フェニルトキサミン(phenyltoxamine)、フェニンダミン、オキシメタゾリン、メトスコポラミン(methscopalamine)、プソイドエフェドリン、ブロムフェニラミン、カルビノキサミン、ならびに塩酸塩、マレイン酸塩、タンニン酸塩などのこれらの薬学的に許容され得る塩、(プロパノロール、ナダロール、チモロール、ピンドロール、ラベタロール、メトプロロール、アテノロール、エスニオロール(esniolol)、およびアセブトロールなどの)βアドレナリン作用性レセプターアンタゴニストなどの鬱血除去薬;モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬;メチルフェニダート塩酸塩などの中枢神経系(CNS)刺激薬;フェノチアジン、三環系(trycyclic)抗うつ薬およびMAO阻害薬などの抗精神病薬または向精神薬; アルプロゾラム、ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン(benzadiazepines);など;ならびに、サリチル酸、アスピリン、サリチル酸メチル、ジフルニサール、サルサラート、フェニルブタゾン、インドメタシン、オキシフェンブタゾン、アパゾン、メフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ピロキシカム、ジクロフェナク、エトドラック、ケトロラク、アセクロフェナク、ナブメトンなどのある非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、(例えばサリチラート、ピラゾロン、インドメタシン、スリンダク、フェナマート、トルメチン、プロピオン酸誘導体); プロテアーゼ阻害薬、特にサキナビル、リトナビル、アンプレナビル、インジナビル、ロピナビルおよびネルフィナビルなどのHIVプロテアーゼ阻害薬が挙げられる。
【0068】
本発明において有用な別の薬理学的に活性のある薬剤は抗原、すなわち宿主の免疫系を刺激して、細胞性抗原特異性免疫応答または体液性抗体応答を生じさせる一つ以上のエピトープを含有する分子である。したがって抗原としては、タンパク質、ポリペプチド、抗原性タンパク質断片、オリゴ糖、多糖などが挙げられる。抗原は、任意の公知のウイルス、細菌、寄生生物、植物、原生動物、または真菌に由来し得、生物体の全体またはその免疫原性部分、例えば細胞壁成分であり得る。抗原はまた、腫瘍に由来し得る。DNA免疫化の応用におけるような抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドもまた、抗原の定義に含まれる。合成抗原、例えば、ハプテン、ポリエピトープ、フランキングエピトープ、および他の組換え体もしくは組換え体、または合成由来の抗原もまた、抗原の定義に含まれる(Bergmannら (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777-2781; Bergmannら (1996) J. Immunol. 157:3242-3249; Suhrbier, A. (1997) Immunol. And Cell Biol. 75:402-408; Gardnerら (1998) 第12回世界AIDS会議, Geneva, Switzerland (1998年6月28日〜7月3日)。
【0069】
抗原は好ましくは疾患関連抗原である。したがって、疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激し、疾患に対する細胞性抗原特異性免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含有する分子である。そのため疾患関連抗原は、予防または治療の目的で用いられ得る。
【0070】
本発明において用いる抗原としては、限定されないが、数ある中でピコルナウイルス科(例えばポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸合胞体ウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルスA、BおよびC型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(Retroviradae)(例えばHTLV-I; HTLV-II; HIV-1; およびHIV-2);サル免疫不全ウイルス(SIV)の科を構成するものを含む、またはそれに由来するものが挙げられる。さらに、ウイルス性抗原は、乳頭腫ウイルス(例えばHPV);ヘルペスウイルス、すなわち単純ヘルペス1型および2型;肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ(D)型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)、ならびにダニ媒介脳炎ウイルス;天然痘、パラインフルエンザウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(cytomeglavirus)、エプスタイン‐バー、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、乳頭腫ウイルス、ポリオウイルス、ムンプス、風疹、コクサッキーウイルス、ウマ脳脊髄炎、日本脳炎、黄熱、リフトバレー熱、リンパ球性脈絡髄膜炎などに由来し得る。これらおよび他のウイルスの記載については、例えばVirology, 第3版(W.K. Joklik編 1988); Fundamental Virology, 第2版(B.N. FieldsおよびD.M. Knipe, 編 1991)参照。
【0071】
細菌性抗原としては、限定されないが、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎、ならびに髄膜炎菌A、B、およびC、ヘモフィルスインフルエンザ(Hemophilus influenza)菌B型(HIB)、およびヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyrogenes)、ジフテリア菌、リステリア菌、炭疽菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、髄膜炎菌、淋菌、ミュータンス菌、緑膿菌、チフス菌、パラインフルエンザ菌、百日咳菌、野兎病菌、ペスト菌、コレラ菌、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)菌、ヒト型結核菌、らい菌、梅毒トレポネーマ、レプトスピラ・インテロガンス(Leptspirosis interrogans)、ライム病菌、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)などを含む他の病態を引き起こす生物を含む、またはそれに由来するものが挙げられる。
【0072】
抗寄生虫性抗原の例としては、マラリアおよびライム病を引き起こす生物に由来するものが挙げられる。クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、カンジダトロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、リケッチア・リケッチ(Rickettsia ricketsii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydial psittaci)、トラコーマクラミジア(Chlamydial trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)などの、かかる真菌、原生動物、および寄生生物体の抗原がある。
【0073】
特に好ましい態様では、ナノ粒子に吸着された抗原は、全長のHIV Tatタンパク質もしくはその免疫原性断片、tat DNAもしくは他のDNA、またはHIV抗原であるタンパク質である。適切な配列の例を配列表に示す。
【0074】
疾患関連抗原は、癌に関連するものであり得る。癌関連抗原は、宿主の免疫系を刺激し、癌に対する細胞性抗原特異性免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含有する分子である。癌関連抗原は、典型的には個体が癌を有する場合に、個体の体内に見出される。癌関連抗原は、好ましくは腫瘍に由来する。癌関連抗原としては、限定されないが、癌関連抗原(CAA)、例えば乳CAA、卵巣CAAおよび膵臓CAA;メラノサイト分化抗原、例えばMelan A/MART-1、チロシナーゼおよびgp100;癌生殖細胞(CG)抗原、例えばMAGEおよびNY-ESO-1;変異抗原、例えばMUM-1、p53およびCDK-4;過剰発現自己抗原、例えばp53およびHER2/NEU、および非一次オープンリーディングフレームmRNA配列に由来する腫瘍タンパク質、例えばLAGE1が挙げられる。
【0075】
本明細書中で言及される抗原または抗原の免疫原性断片は、典型的には一つ以上のT細胞エピトープを含有する。「T細胞エピトープ」は、一般にT細胞応答を誘導し得るペプチド構造を特徴とするものである。この点については、T細胞エピトープがMHC分子のペプチド結合間隙内で拡張立体配座をとる線状ペプチド決定基を含有することが当該分野において認められている(Unanueら (1987) Science 236: 551-557)。本明細書中で用いられる場合、T細胞エピトープは一般に約8〜15、好ましくは5〜10以上のアミノ酸残基を有するペプチドである。
【0076】
本発明のナノ粒子は、「ワクチン組成物」とみなされ得、したがって、抗原を含有し、被験体における疾患または状態を予防または治療するために用いられ得る任意の医薬組成物を含む。該用語は、サブユニットワクチン、すなわち抗原が性質において係わっている生体全体から分離した別々の抗原を含有するワクチン組成物、ならびに完全に死なせた、弱毒化した、または不活性化した細菌、ウイルス、寄生体または他の微生物を含む組成物の双方を包含する。ワクチンはまた、ワクチンの効果をさらに向上させ得るサイトカインを含有し得る。
【0077】
本発明において使用する適切なヌクレオチド配列は、任意の治療学的に関連のあるヌクレオチド配列を含む。したがって、本発明は、欠損のある、もしくは標的細胞ゲノムから欠失した、タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子、あるいは所望の生物学的もしくは治療学的効果(例えば抗ウイルス機能)を有する非天然タンパク質、またはアンチセンスもしくはリボザイム機能を有する分子に相当する配列をコードする1つ以上の遺伝子を送達するために用いられ得る。本発明はまた、免疫性を提供し得るヌクレオチド配列、例えば被験体において体液性および/または細胞性応答を誘発するはたらきをする免疫原性配列を送達するために用いられ得る。
【0078】
送達され得る適切な遺伝子としては、AIDS、癌、神経系疾患、心臓血管疾患、高コレステロール血症(hypercholestemia)などの疾患を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、慢性疾患および感染症;種々の貧血症、サラセミアおよび血友病を含む、種々の血液疾患;嚢胞性線維症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、気腫などの遺伝性欠陥の治療に用いられるものが挙げられる。癌に対する、およびウイルス性疾患に対するアンチセンス療法において有用な、いくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えばmRNAの翻訳開始部位(AUGコドン)の辺りの配列に相補的な短いオリゴヌクレオチド)は、当該分野で記載されてきた。例えば、Hanら 1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 4313; Uhlmannら (1990) Chem. Rev. 90: 543; Heleneら (1990) Biochim. Biophys. Acta. 1049: 99 ; Agarwalら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 7079; およびHeikkilaら (1987) Nature 328:445参照。本明細書中の使用に適切ないくつかのリボザイムもまた、記載されてきた。例えば、Checら (1992) J. Biol. Chem. 267: 17479 およびGoldbergらの米国特許第5,225,347号参照。
【0079】
例えば固形腫瘍の治療のための方法において、毒性ペプチドをコードする遺伝子(すなわちリシン、ジフテリア毒素、およびコブラ毒因子などの化学療法剤)、p53などの癌抑制遺伝子、腫瘍壊死因子(TNF)および他のサイトカイン、または形質転換癌遺伝子のトランスドミナントネガティブ突然変異体(transdominant negative mutants)などの形質転換癌遺伝子、抗腫瘍性ペプチドに対してアンチセンスであるmRNA配列をコードする遺伝子は、腫瘍部位での、またはその付近での発現のために送達され得る。
【0080】
同様に、抗ウイルスおよび/または抗菌活性を示すか、または宿主の免疫系を刺激することが公知のペプチドをコードする遺伝子もまた、投与され得る。したがって、インターロイキン、インターフェロン、およびコロニー刺激因子などの多数の種々のサイトカイン(またはその機能的断片)をコードする遺伝子は、本発明での用途が見出されるであろう。かかる物質のいくつかの遺伝子配列は公知である。
【0081】
遺伝的障害の治療のために、特定の障害において欠損していることが公知の遺伝子に相当する機能的遺伝子は、被験体に投与され得る。本発明はまた、アンチセンス療法における、例えば特異的な相補配列にハイブリダイズし、それによりかかる配列の転写および/または翻訳を阻害し得るオリゴヌクレオチドの送達のための用途が、見出されるであろう。したがって、特定の疾患の進行に要するタンパク質をコードするDNAまたはRNAが標的化され、それにより疾患の進行を中断させ得る。アンチセンス療法、および病原遺伝子の発現を阻害または調節するためにある核酸標的配列に特異的におよび予測通りに結合し得る多数のオリゴヌクレオチドは、当業者に公知であり、容易に利用され得る。Uhlmannら(1990) Chem Rev. 90:543, Neckersら(1992) Crit. Rev. Oncogenesis 3:175; Simonsら(1992) Nature 359:67; Bayeverら(1992) Antisense Res. Dev. 2:109; Whitesellら(1991) Antisense Res. Dev. 1: 343; Cookら (1991) Anti-cancer Drug Design 6:585; Eguchiら (1991) Annu. Rev. Biochem. 60:631。したがって、宿主細胞の標的配列に選択的に結合し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス療法における使用のために本明細書中で提供される。
【0082】
本発明のナノ粒子は、約0.01〜約99重量%、例えば約0.01〜10重量%、典型的には2〜8重量%、例えば5〜6重量%の抗原から構成され得る。実際の量は、薬理学的に活性のある薬剤の性質、所望の用量、および当業者に容易に理解される他の変数を含むいくつかの要因による。
【0083】
薬理学的に活性のある薬剤が抗原である場合、本発明のナノ粒子の投与は、個体において免疫応答を生じる。ナノ粒子の外表面への抗原の吸着は、抗原の生物学的活性を維持する;抗原のナノ粒子への吸着は、抗原の免疫原性に影響を及ぼさない。ナノ粒子への抗原の吸着は、免疫応答を生じるのに要する抗原の量を減少させ、必要とされる追加抗原注射の数をなくすか、または減少させ、抗原の取り扱いまたは貯蔵期間を向上させる。
【0084】
薬理学的に活性のある薬剤が薬物、生物医薬品、または遺伝子治療である場合、本発明のナノ粒子の投与は、治療されるヒトまたは動物における疾患または状態を防ぐか、もしくは改善し、またはかかる疾患または状態の診断において補助する。
【0085】
したがって、本発明はまた、本発明のナノ粒子を利用した予防または治療の方法に関する。薬理学的に活性のある薬剤が抗原である場合、かかる予防または治療の方法は、本発明のナノ粒子を用いて、個体において免疫応答を生じさせることを含む。したがって、本発明のナノ粒子は、個体に投与されて、その個体において免疫応答を生じ得る。あるいは、ナノ粒子は、個体における状態を診断、治療、または予防するための、特に個体において免疫応答を生じさせるための医薬の製造に用いられ得る。
【0086】
用語「投与する」または「送達する」は、ナノ粒子と標的細胞または組織とを接触させる任意の送達方法をいうものとする。用語「組織」は、本明細書中に定義されるような動物、患者、被験体などの柔組織のことをいい、この用語は、限定されないが、皮膚、粘膜組織(例えば口腔の、結膜の、歯肉)、膣のものなどを含む。しかし、骨、例えば骨折も本発明の粒子によって処置され得る。
【0087】
投与が処置のためである場合、投与は予防または治療のいずれかのためであり得る。予防的に提供される場合、薬理学的に活性のある薬剤は任意の症状に先立って提供される。薬理学的に活性のある薬剤の予防的投与は、任意の後に起こる症状を防ぐかまたは弱めるのに役立つ。治療的に提供される場合、薬理学的に活性のある薬剤は症状の開始時に(またはすぐ後に)提供される。薬理学的に活性のある薬剤の治療のための投与は任意の実際の症状を弱めるのに役立つ。投与、およびしたがって本発明の方法はインビボまたはインビトロで行われ得る。
【0088】
用語「動物」、「個体」、「患者」、および「被験体」は、限定されないが、
チンパンジーならびに他の類人猿およびサルの種などの非ヒト霊長類動物を含むヒトおよび他の霊長類の動物;ウシ科の動物、例えばウシなどの家畜;ヒツジ科の動物、例えばヒツジ;ブタ科の、例えばブタ;ウサギ、ヤギおよびウマ;イヌおよびネコなどの飼いならされた哺乳動物;野生動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯動物を含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウおよび他のキジ類の鳥、アヒル、ガチョウなどの飼い慣らされた鳥、野生の鳥、および猟鳥を含む鳥などを含む、脊索動物(cordata)亜門を構成する任意のものを含む生物体のサブセットをいうのに、本明細書中で同義に用いられる。該用語は、特定の年齢を示さない。したがって成体および新生の個体の双方を包含するものとする。一つの態様では、個体は典型的にはHIVに感染していることがあり得る。
【0089】
本発明は、本明細書中に記載されるナノ粒子を、かかる処置が必要な被験体に投与することにより、被験体における状態を診断、治療、または予防する方法を含む。本明細書中に用いられる場合、用語「処置」または「処置すること」は、次の任意のもの:感染または再感染の予防;症状を軽減することまたはなくすこと;および病原体を減少させることまたは完全に除去することを含む。処置は、予防的に(感染の前に)、または治療的に(感染の後に)もたらされ得る。本発明の方法はまた、ナノ粒子の投与により、生体において変化をもたらすことを含む。
【0090】
本発明の方法は、抗原に関連する疾患のリスクのある個体において行われ得る。典型的には、本発明の方法は、微生物感染、または抗原と関連する、もしくは抗原に引き起こされた癌のリスクのある個体において行われる。好ましい態様では、本発明の方法は、HIVの感染またはAIDSの発症のリスクのある個体において行われる。
【0091】
本明細書中に記載される方法は、疾患によって生じた、または悪化した、疾患および/または任意の状態の治療および/または予防のための特定の抗原に対する免疫応答を誘発する。本明細書中に記載される方法は、典型的には、微生物感染または癌により生じた、または悪化した、微生物感染もしくは癌および/または任意の状態の治療および/または予防のための特定の抗原に対する免疫応答を誘発する。特定の態様では、本明細書中に記載される方法は、AIDSなどのHIV感染により生じた、または悪化した、HIV感染および/または任意の状態の治療および/または予防のための特定の抗原に対する免疫応答を誘発する。
【0092】
本発明の方法は、適切な免疫応答を促すために行われ得る。適切な免疫応答によって、該方法が、増大した抗体の産生および/または抗原に対して特異的なBおよび/またはTリンパ球の産生を特徴とする免疫応答を免疫した被験体にもたらし得ることが意味され、ここで免疫応答は被験体を後に起こる感染から保護し得る。好ましい態様では、該方法は増大した抗体の産生および/またはHIV-1 Tatに対して特異的なBおよび/またはTリンパ球の産生を特徴とする免疫応答を免疫した被験体にもたらし得、ここで免疫応答は被験体を続いて起こるHIVの同種または異種の株の感染から保護し、ウイルス負荷を減少させ、非免疫被験体に比してより短い時間で感染の消散をもたらすか、AIDSの症状などの病徴の臨床的発現を妨げるか、または減少させ得る。
【0093】
本発明のこの態様の目的は、個体において免疫応答を生じさせることである。好ましくは、抗原に対する抗体は個体において産生される。好ましくは、抗原に対するIgG、IgAまたはIgM抗体が産生される。抗体応答は,ラジオイムノアッセイ、ELISAなどの当該分野で周知の標準的なアッセイを用いて測定し得る。
【0094】
好ましくは、細胞性免疫が生じ、特にCD8 T細胞応答が生じる。この場合、ナノ粒子の投与は、例えば抗原経験CD8 T細胞のレベルを増大させ得る。CD8 T細胞の応答は、ELISPOTアッセイ、好ましくはIFN-γ ELISPOTアッセイ、CTLアッセイ、またはペプチド増殖アッセイなどの任意の適切なアッセイを用いて測定され得る(そのためかかるアッセイにおいて検出され得る)。好ましくは、CD4 Th1の応答などのCD4 T細胞の応答もまた生じる。したがって抗原経験CD4 T細胞のレベルもまた増大し得る。かかる増大したCD4 T細胞のレベルは増殖分析などの適切なアッセイを用いて検出され得る。
【0095】
本発明はさらに、薬学的に許容され得る賦形剤をまた含有する医薬組成物における本発明の薬理学的に活性のあるナノ粒子を提供する。かかる「賦形剤」は一般に、非毒性であり、組成物の他の成分と有害に相互作用しない、実質的に不活性な物質のことをいう。
【0096】
かかる賦形剤、ビヒクルおよび補助物質は、一般に組成物を受ける個体において、それ自体は免疫応答を誘導せず、かつ過度な毒性なしで投与され得る製薬剤である。
【0097】
薬学的に許容され得る賦形剤としては、限定されないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられる。ここに薬学的に許容され得る塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩が挙げられ得る。
【0098】
必要とはしないが、薬理学的に活性のあるナノ粒子を含有する医薬組成物は、特にペプチド、またはタンパク質などに対して安定剤としてはたらく薬学的に許容され得る担体を含むことがまた好ましい。ペプチドに対して安定剤としてもまた作用する適切な担体の例としては、限定されないが、医薬品グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられる。他の適切な担体としては、また限定されないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、およびその組み合わせが挙げられる。帯電した脂質および/またはデタージェントを用いることもまた有用であり得る。適切な帯電した脂質としては、限定されないが、ホスファチジルコリン(レシチン)などが挙げられる。デタージェントは、典型的には非イオン性、陰イオン、陽イオン、または両性の界面活性剤である。適切な界面活性剤の例としては、例えばTergitol(登録商標)およびTriton(登録商標)界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics, Danbury, CT)、ポリオキシエチレンソルビタン、例えばTWEEN(登録商標)界面活性剤(Atlas Chemical Industries, Wilmington, DE)、ポリオキシエチレンエーテル、例えばBrij、薬学的に許容され得る脂肪酸エステル、例えばラウリル硫酸およびその塩(SDS)、ならびに類似の物質が挙げられる。
【0099】
薬学的に許容され得る賦形剤、担体、安定剤、および他の補助物質の詳細な論述は、本明細書中に参照によって援用されるREMINGTONS PHARMACEUTICAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N. J. 1991)において入手できる。
【0100】
被験体における免疫応答を増大させるために、本明細書中に記載される組成物および方法は、さらに薬理学的薬剤、サイトカインなどの補助的物質/アジュバントを含み得る。適切なアジュバントは、本発明のナノ粒子に付着した抗原に対する被験体の免疫応答を高める任意の物質を含む。これらは任意の数の経路に影響を及ぼすことにより、例えば抗原/MHC複合体を安定させることにより、より多くの抗原/MHC複合体を細胞表面に存在させることにより、APCの成熟を高めることにより、またはAPCの寿命を長期化させること(例えばアポトーシスを阻害すること)により、免疫応答を高め得る。
【0101】
典型的にはアジュバントはワクチンまたはナノ粒子と同時投与される。本明細書中に用いられる場合、用語「アジュバント」は、抗原の作用などを高める任意の物質のことをいう。
【0102】
したがって、アジュバントの一例は「サイトカイン」である。本明細書中に用いられる場合、用語「サイトカイン」は、例えば成長、増殖、または成熟を含む、細胞に種々の効果を及ぼす多数の要因のいずれかをいう。あるサイトカイン、例えばTRANCE、flt-3L、およびCD40Lは、APCの免疫促進能を高める。単独で、または組み合わせて用いられ得るサイトカインの制限のない例としては、インターロイキン-2 (IL-2)、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン3 (IL-3)、インターロイキン6 (IL-6)、インターロイキン12 (IL-12)、G-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-1α (IL-1a)、インターロイキン-11 (IL-11)、MIP-la、白血病抑制因子(LIF)、c-kitリガンド、トロンボポエチン(TPO)、CD40リガンド(CD40L)、腫瘍壊死因子関連活性化誘導性サイトカイン(TRANCE)、およびflt3リガンド(flt-3L)が挙げられる。サイトカインは、例えばGenzyme (Framingham, MA), Genentech (South San Francisco, CA), Amgen (Thousand Oaks, CA), R & D Systems and Immunex (Seattle, WA)などのいくつかの業者から市販されている。
【0103】
多数のかかる分子の配列はまた、例えばGenBankデータベースから入手することができる。必ずしも明白には述べないが、野生型または精製されたサイトカイン(例えば組換えにより産生された、またはその変異体の)のような類似の生物学的活性を有する分子およびかかる分子をコードする核酸は、本発明の趣旨および範囲内で用いられるものとする。
【0104】
本発明のナノ粒子およびアジュバントを含有する組成物、またはアジュバントと同時投与される本発明のワクチンもしくはナノ粒子は、それが、アジュバントなしで投与される同等の量のワクチンにより誘発される免疫応答よりも、より高い免疫応答の誘発能を有する場合、「増大した免疫原性」を示す。かかる増大した免疫原性は、アジュバント組成物およびナノ粒子の対照を動物に投与し、ラジオイムノアッセイ、ELISA、CTLアッセイなどの当該分野で周知の標準的アッセイを用いて、該二つの抗体価および/または細胞媒介免疫性を比較することにより測定され得る。
【0105】
薬理学的に活性のあるナノ粒子は、アジュバントとして機能し得る。例えば、それらは抗原とともに投与される場合、抗原の単独での投与に比して、免疫応答を増大し得る。したがって、かかる態様のナノ粒子は抗原とは、別個に、同時に、または連続して投与され得る。
【0106】
本発明の方法において、本発明のナノ粒子は典型的には液体形態で送達されるか、または粉末化形態で送達される。本発明のナノ粒子を含有する液体は典型的には懸濁液である。本発明のナノ粒子は、個体へ送達するために許容し得る液体で投与し得る。典型的には液体は滅菌緩衝液、例えば滅菌リン酸緩衝液食塩水(PBS)である。
【0107】
本発明のナノ粒子は典型的には、非経口によって送達され、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内または注入技術のいずれかによって送達される。医師は各々の特定の患者に対して、必要とされる投与の経路を決定し得る。
【0108】
ワクチンまたはナノ粒子は、典型的には経皮的に送達される。用語「経皮的な」送達とは、皮内(例えば、真皮中にまたは表皮中に)、経皮的(例えば「経皮の」)および経粘膜投与、例えば皮膚もしくは粘膜(例えば口腔、結膜または歯肉)組織の中へまたはそれらを通して薬剤が通過することによる送達を意図する。例えば、Transdermal Drug Delivery: Developmental Issues and Research Initiatives, HadgraftおよびGuy(編), Marcel Dekker, Inc., (1989); Controlled Drug Delivery: Fundamentals and Applications, RobinsonおよびLee(編), Marcel Dekker Inc., (1987);ならびにTransdermal Delivery of Drugs, Vols. 1-3, KydonieusおよびBerner(編), CRC Press, (1987)参照。
【0109】
送達は、ナノ粒子微粒子を含有する液状懸濁液に対し、従来の注射針および注射器を介するものであり得る。さらに、種々の液体噴射式注射器が当該分野において公知であり、ナノ粒子を投与するために使用され得る。投与の最も効果的な手段および投薬量を決定する方法は当業者にとって周知であり、送達ビヒクル、治療の構成内容、標的細胞および処置を受ける被験体によって変わる。単回および複数回投与は、担当医師によって選択される用量レベルおよびパターンにより実行され得る。液体組成物は、投薬製剤と適合性がある手法で、および予防および/または治療学的に効果のある量で、処置を受ける被験体に投与される。
【0110】
微粒子組成物(例えば粉末)におけるナノ粒子自体はまた、適当な経皮粒子送達技術を使用して、経皮的に脊椎動物組織へ送達され得る。目的の物質の投与に適した種々の粒子送達装置は当該分野で公知であり、本発明の実行における使用法を見出す。経皮的粒子送達系は、典型的には針の無い注射器を使用し、制御された用量における固体粒子を無傷な皮膚および組織の中へならびにそれらを通して送達(fire)する。粒子を媒介する送達技術に適した種々の粒子送達装置は当該分野で公知であり、本発明の実行における使用にすべて適している。現在の装置設計は爆発性、電気性またはガス状の放出物を使用し、コーティングされたコア担体粒子を標的細胞に向かって推進させる。コーティング粒子は、それ自体が放出されるように可動担体シートと結合し得るか、または取り外し可能なように、ガスの流れが沿って通過する表面と結合し得、粒子を表面から持ち上げてそれらを標的に向かって加速させる。例えば、針の無い注射器について記載される米国特許第5,630,796号を参照。他の針の無い注射器の構造は当該分野において公知である。
【0111】
かかる粒子送達装置からの粒子の送達は、一般的に0.05〜250μmの範囲のおおよそのサイズを有する粒子によって実行される。送達される粒子が標的表面を貫通する実際の距離は、粒子の大きさ(例えば、おおよそ球状な粒子のジオメトリーを取る名目上の粒子の直径)、粒子の密度、粒子が表面に衝突する初速度、ならびに標的化皮膚組織の密度および運動粘性率に依存する。この点において、針の無い注射に使用される最適な粒子の密度は、一般的に約0.1〜25g/cm3の間、好ましくは約0.9〜1.5g/cm3の間の範囲であり、注入速度は一般的に約100〜3,000m/secの間かそれより大きい範囲である。適切なガス圧力によって、粒子は推進させる(driving)ガスの流れの超音波のスピードに近づく速度でノズルを通して加速され得る。
【0112】
粉末化組成物は、投薬製剤と適合性がある手法で、および予防および/または治療学的に効果のある量で、処置を受ける被験体に投与される。
【0113】
本明細書中に記載された薬理学的に活性のあるナノ粒子は、上記の粒子送達装置を介して、治療有効量で任意の適当な標的組織に送達され得る。例えば、組成物は筋肉、皮膚、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨軟骨(bone cartilage)、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、目、腺および結合組織に送達され得る。
【0114】
「治療有効量」は、所望の生物学的または薬理学的効果を与えるのに必要とされる量として非常に広く規定される。この量は、送達される薬理学的に活性な薬剤の相対活性により変化し、送達される薬理学的に活性な薬剤の公知の活性に基づいた臨床検定を通して容易に決定され得る。“Physicians Desk Reference” および“Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics” は、公知の医薬剤の場合において必要とされる量を決定する目的のために有用である。投与されるナノ粒子の量は、生物体(例えば動物種)、薬理学的に活性な薬剤、投与経路、処置時間の長さ、ならびに動物の場合、動物の体重、年齢および健康に依存する。当業者は、特定の動物を薬理学的に活性な薬剤で処置するために必要とされる投薬量について十分承知している。
【0115】
一般にナノ粒子はミリグラム量、例えば1μg〜5mg、より典型的には1〜50μgの薬理学的に活性な薬剤で投与される。適切な有効量は、本明細書を読む際当業者によって容易に決定され得る。
【0116】
異なる型のナノ粒子の混合集団は、単一投薬形態に組み合わされ得、かつ同時投与され得る。例えばナノ粒子は、それらに吸着される異なる薬理学的に活性な薬剤を有し得る。同一の薬理学的に活性な薬剤は、最終製剤に併用される異なるナノ粒子の型に組み込まれ得るか、または同時投与され得る。かくして、同一の薬理学的に活性な薬剤の多面的送達が達成され得る。
【0117】
以下は、本発明を実行するための特定の態様の実施例である。実施例は実例目的のためのみに提供され、いかなる手段において本発明の範囲を制限する意図は無い。
【0118】
(実施例)
実施例において、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、1-ブロモオクタン、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Mn=2080)(2)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、フルオレセインおよび塩化アリルをAldrichから購入した。過硫酸カリウム(KPS)をCarlo Erbaから購入した。250000の数平均分子量Mnによって特徴付けられたポリ(メタクリル酸、エチルアクリレート)1:1統計コポリマー(商品名Eudragit(登録商標)L 100-55)、および150,000の数平均分子量Mnによって特徴付けられたポリ(ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート)1:2:1統計コポリマー(商品名Eudragit E100)は、Roehm Pharmaの好意により供給される。
【0119】
全てのこれらの製品はさらなる精製なしで使用された。メチルメタクリレート(MMA)をAldrichから購入し、使用する直前に真空下で蒸留した。
【0120】
電位差滴定を、ATCプローブおよびIngold Ag 4805-S7/120連結銀電極を装備した卓上pHメーターCyberScan pH 1000によって行った。ナノ粒子のグラムあたりの第四アンモニウム基量を、完全なイオン交換の後に得られる臭化物イオンの電位差滴定により決定した。イオン交換は、室温で48時間、ビーカー中0.5gのナノ粒子試料を25mlの1M KNO3に分散させることで達成された。これらの条件において、定量的イオン交換が達せられた。次いで、混合物を希H2SO4でpH=2に調整し、溶液中の臭化物イオンを0.01MのAgNO3溶液で滴定した。
【0121】
ナノ粒子の大きさを、10-30kVの加速電圧でJEOL JSM-35CF走査型電子顕微鏡(SEM)により測定した。試料は、薄い層(10-30Å)の金により真空下でスパッターコーティングした。倍率は、各々の顕微鏡写真のスケールで示される。SEM写真をKodakフォトCDシステムを使用してデジタル化し、NIHイメージ(バージョン1.55、パブリックドメイン)イメージプロセシングプログラムにより精巧に作成した。150〜200のそれぞれのナノ粒子の直径を各々の光学顕微鏡写真に対して測定した。
【0122】
Z-平均粒子の大きさおよび多分散系指数(PI)を、25℃にて、10mV He−Neレーザーおよびウィンドウズ用PCSソフトウェア(バージョン1.34、Malvern, U.K.)を使用したZetasizer 3000 HS (Malvern,U.K.)システムによる動的光散乱測定装置(DLS)によって決定した。データ分析に対し、25℃での純水の粘度および屈折率を使用した。器具を直径が200nmの標準的なポリスチレンラテックスでチェックした。~ζポテンシャルを25℃の温度にて、Zetasizer 3000 HS (Malvern,U.K.)およびウィンドウズ用PCSソフトウェア(バージョン1.34、Malvern,U.K.)により測定した。器具を公知の~ζポテンシャルによるラテックスを使用してチェックした。
【0123】
式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーを含む水溶液中において、水不溶性モノマーの乳化重合により入手し得るコアシェルナノ粒子構造の概略図の描写は、図1で示される。
【0124】
参考例1
イオンモノマー(1)の合成
イオンモノマー2-(ジメチルオクチル)アンモニウムエチルメタクリレートブロミン(1)は、DMAEMAと1-ブロモオクタンとの直接反応により得られた。DMAEMA(0.166mol)を、任意のさらなる溶媒無しで1-ブロモオクタン(0.083mol)と混合した。最後のラジカル重合反応を阻害するために少量のヒドロキノンを添加した後、混合物を50℃で24時間攪拌した。そのようにして得られた固体生成物を過剰なDMAEMAの除去のために乾燥ジエチルエーテルで洗浄した。最終的に室温にて真空下で乾燥させた。生成物の純度を1HNMRスペクトルで検定した。反応収率は55〜65%の範囲であった。
【0125】
参考例2
蛍光性モノマー(3)の合成
2.0gのフルオレセイン(6.0mmol)、2.0gの炭酸カルシウムおよびヒドロキノン(微量)を100mlのDMFに溶解させ、溶液を60℃で温めた。塩化アリルをゆっくりと滴下し、反応を暗所で30時間進行させた。溶媒の真空蒸発の後、生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;溶離液としてジエチルエーテル−エチルアセテート80:20)により精製した。収率53%、(m.p.=123-125℃); MS, m/z(%): 412(M+, 100), 371(10), 287(20), 259(15), 202(7); 1H-NMR(CD3OD): d4.44(dd, J=5.9および1Hz, 2H, O-CH2-CH=), 4.75(dd, J=5.9および1Hz, 2H, O-CH2-CH=), 5.08(m, 2H, CH2=CH), 5.40(m, 2H, CH2=CH), 5.58(m, 1H, CH2=CH), 6.10(m, 1H, CH2=CH), 6.60(m, 2H, Ar), 6.98(m, 3H, Ar), 7.25(d, J=1 Hz, 1H, Ar), 7.45(dd, J=7.5および1Hz, 1H, Ar), 7.85(m, 2H, Ar), 8.30(dd, J=7.5および1Hz, 1H, Ar)。
【実施例1】
【0126】
ナノ粒子調製
典型的な乳化重合反応において、6.0ml(56.2mmol)のメチルメタクリレートを120mlの参考例1で得られたイオンモノマー(1)および非イオンポリマー(2)の水溶液を含有するフラスコ中に導入した。フラスコに30分間継続的攪拌の下で窒素を流し(flux)、次いで水に溶解した陰イオンKPSまたは陽イオンAIBAを添加した。種々の試料における開始剤およびコモノマーの最終量を表1に記載する。
【0127】
継続的攪拌の下80±1.0℃にて2〜4時間行った重合中に、フラスコに窒素を流した。反応の終わりにおいて、生成物を濾過し、臭化セチルトリメチルアンモニウムの含水溶液に対して残留メチルメタクリレートを除去するために少なくとも10回、次いで水に対して残留コモノマーを除去するために少なくとも10回、繰り返し透析を行って精製した。メチルメタクリレートおよび水溶性コモノマーの総量に関して、ナノ粒子収率は50および60%の間に含まれた。
【0128】
特異的に設計された反応性表面活性剤およびコモノマーの存在下におけるメチルメタクリレートの乳化重合反応は、コアシェル構造および適した表面をもつ単分散ナノ粒子を導くことが見出された。内側のコアは主としてポリ(メチルメタクリレート)から構成されている。反応の終わりにおいて、水溶性単位はナノ粒子表面にて共有結合し、盛んにラテックスの安定化に関与する。この方法において、ナノ粒子は使用されたコモノマーの化学的構造によって規定される適した表面で得られうる。
【0129】
これらのナノ粒子を、モノマーとしてのメチルメタクリレート、ならびに2つの水溶性コモノマー(プラスに帯電したアンモニウム基をもつイオンモノマー(1)および数平均分子量Mn=2080のPEG鎖をもつ非イオンポリマー(2))を使用した乳化重合によって調製した。表1は重合反応混合物の組成を報告し、一方表2は得られた試料の物理的特徴を報告する。意外にも図2に示されるように、これらの試料はラズベリー様形態を表した。
【0130】
遊離基開始剤が、ナノ粒子の特徴、特に大きさに及ぼす影響を明らかにするために、2つの異なる開始剤を使用した。すなわち陰イオンKPSおよび陽イオンAIBAである。遊離基供給源としてのAIBAにより得られた試料は、KPSによって得られた試料に対して、明らかに低い平均直径を示した。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【実施例2】
【0133】
ナノ粒子調製
表3は重合反応混合物の組成を報告する。表4は得られた試料の物理的特徴を報告する。
【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
表4は得られたナノ粒子のいくつかの物理化学的特徴を報告する。典型的な例として、図3は試料ZP2のSEMイメージを例証し、一方図4は非イオンポリマー2濃度の関数としてのPCSによって評価された直径の傾向を例証する。
【0137】
ナノ粒子試料は連続する220〜260nmの範囲の平均直径を示す。すべての場合において非常に狭い大きさの分布が得られ、非イオンポリマー2濃度が増加するのに伴いナノ粒子の大きさは規則的に減少する(図4)。
【0138】
ナノ粒子のグラムあたりのイオンコモノマー単位量を、滴定データから評価した。図5は、非イオンコモノマー2濃度の関数としての試料系列における、グラムあたりの第四アンモニウム基量の傾向を例証する。各々の系列を通じて、ナノ粒子のグラムあたりの第四アンモニウム基量は、増加するコモノマー2濃度に対して直線的に減少する。
【実施例3】
【0139】
ナノ粒子調製
典型的な乳化重合反応において、適切な量のEudragit(登録商標)L100-55を200mlの水またはNaOHでpH8.0に調整した水/アセトン90/10 vol%(表5参照)の混合物を含有するフラスコ中に導入した。フラスコに継続的の攪拌下で窒素を流し、次いで25.0ml(234mmol)のMMAを滴下して加えた。系を20分間安定にさせ、次いで2mlの水に溶解した21.0mg(77.7μmol)のKPSを添加した。重合を70±1.0℃で17時間行った。反応の終わりにおいて、生成物を濾過し、水に対しての繰り返し透析によって精製した。メチルメタクリレートに関して、ナノ粒子収率は75および90%の間に含まれた。蛍光性ナノ粒子の試料を大きいスケールの合成で調製した:7.5gのEudragit(登録商標)L100-55をNaOHでpH8.0に調整した500mlの水(表5参照)を含有する1Lの5つ口の反応器(five-neck reactor)に導入した。反応器に継続的攪拌下で窒素を流し、次いで参考例2で得られ62.0ml(580mmol)のMMAに溶解した39mgの蛍光性モノマー(3)を滴下して加えた。系を20分間安定化させ、次いで3mlの水に溶解した52.5mg(194μmol)のKPSを添加した。重合を70±1.0℃で17時間行った。反応の終わりにおいて、生成物を上記したように精製した。
【0140】
典型的な例として、試料M1のSEM顕微鏡写真は図6で報告され、一方表5はSEMおよびPCSで計算された数平均直径を含む試料の、いくつかの物理化学的特徴をまとめる。さらにζζポテンシャル値が報告されている。ナノ粒子の大きさは小さく120〜140nmの範囲である。SEMおよびPCSによる直径の比較から観察され得るように、コアシェル性質に従う表面におけるEudragit(登録商標)L100−55の存在のため、ナノ粒子の大きさは水中で増大する。この結果はまた、安定剤のマイナスに帯電したカルボキシル基の存在のために、負のζζポテンシャル値によって支持される。
【0141】
かくして、ナノメートルのスケールの範囲におけるポリメチルメタクリレートコアシェル粒子は、乳化重合によって調製され得る。外層の性質は安定剤Eudragit(登録商標)L100−55により規定され、それは:
1)立体構造の安定をラテックスに提供する;
2)RESによる粒子捕捉を減少させ、粒子の生体内分布に影響を及ぼし得る親水性外層を得ることを提供する;および
3)特異的または非特異的相互作用を介してTatと相互に作用し得るカルボキシル基を提供する。
【0142】
【表5】

【実施例4】
【0143】
典型的な乳化重合反応において、2.0gのEudragit E 100をHClでpH3.0に調整した500mlの水を含有する1Lの5つ口の反応器に導入した。反応器に継続的攪拌下で窒素を流し、次いで75.0ml(702mmol)のMMAを滴下して加えた。系を20分間安定化させ、次いで3mlの水に溶解した62.0mg(229μmol)のKPSを添加した。重合を70±1.0℃で17時間行った。反応の終わりにおいて、生成物を実施例3で記載したように精製した。試料MC3を直径67nmで得た。
【実施例5】
【0144】
ナノ粒子調製
典型的な乳化重合反応において、2.0gのEudragit L100-55またはEudragit E 100を500mlの水(表6参照)を含有するフラスコ中に導入した。
Eudragit L100-55の場合はNaOHでpH8.0に調整し、またはEudragit E 100の場合は塩酸でpH2に調整した。フラスコに継続的攪拌下で窒素を流し、次いで適切な量のMMA(表6参照)を滴下して加えた。系を20分間安定化させ、次いで2mlの水に溶解した62.0mgのKPSを添加した。重合を80±1.0℃で4時間行った。反応の終わりにおいて、生成物を濾過し、水に対して少なくとも10回、繰り返し透析によって精製した。メチルメタクリレートに関して、ナノ粒子収率は75および90%の間に含まれた。
【0145】
【表6】

【0146】
表6は、得られたナノ粒子のいくつかの物理化学的特徴を報告する。典型的な例として、図7は試料MA7のSEMイメージを例証する。図8Aおよび8Bは、MMA濃度の関数として両試料系列のPCSによって評価された直径の傾向を例証する。
【0147】
ナノ粒子試料は、MAn系列で84〜289nmの範囲の平均直径およびMCn系列で26〜98nmの範囲の平均直径を有する。すべての場合において非常に狭い大きさの分布が得られ、両系列に対して、MMA濃度が増加するのに伴いナノ粒子の大きさは規則的に増大する(図8A)。さらに対数スケールを使用して、フィット直線が互いにほぼ平行線となる、直線状の大きさ対MMA濃度の関係が得られた。これはナノ粒子の大きさが、MCn系列で0.360およびMAn系列で0.355という結果を生じる非常に類似した動力降下(power low)係数による動力降下によってMMA濃度と関係があることを意味する。これにより、初めのMMA濃度によってナノ粒子の大きさをあらかじめ決定できる。TAT送達系としてのナノ粒子MAnに対する特別な関心の観点において、さらなる特徴がこの試料系列に対して調査された。MAn系列に属するいくつかの試料に対し、ナノ粒子の大きさの関数として図9で例証されるように、カルボキシル基量はまた、逆滴定およびその傾向により決定された。
【0148】
ナノ粒子上のカルボキシル基量は、ナノ粒子の直径が増加するのに伴い規則的に減少し、かくして種々の試料における一定のカルボキシル基の表面密度を示唆する。ナノ粒子試料の表面特徴に関する情報を得るために、試料MA7のZポテンシャルが異なるpH値で決定された。カルボキシル基の完全なる電離に一致して、ζポテンシャルは最初急激に減少し、次いで6より大きいpHにおいて45mVの制限値に達するまでpHが増加するのに伴い、より緩やかに減少する。これは生理的pHにおけるナノ粒子表面が、正に帯電したタンパク質および特にTATタンパク質との静電的相互作用によって相互に作用し得ることを示す。
【0149】
実施例6〜8
これらの実施例において、細胞遊離系での結合−放出実験が上記に記載されたように調製された以下のナノ粒子を使用して実行された:
【0150】
【表7】

【実施例6】
【0151】
ペグ化ナノ粒子上でのODN/DNA吸着実験
ODN吸着実験として、5.0mgの凍結乾燥したナノ粒子を0.5mlの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、15分間超音波処理した。次いで、適切な量の濃縮ODN水溶液を最終濃度(10-200μM)に達するように添加した。いくつかのオリゴマー(18のオリゴマー〜22のオリゴマー)を検定し、ナノ粒子との相互作用は配列特異性でないことが見出された。実験は三部構成で行われた(SD≦10%)。懸濁液を25℃で2時間連続して攪拌した。約9000rpmで5分間遠心分離した後、ODN−ナノ粒子複合体の定量的沈殿が得られ、上澄み液部分(10-50μm)を取り、Millex GV4フィルターユニットで濾過し、リン酸ナトリウム緩衝液で希釈した。最終的にλ=260nmにおけるUV吸光度を測定した。吸着効率(%)を100x(投与されたODN)−(非結合ODN)/(投与されたODN)で計算した。モデルオリゴ(デオキシ)ヌクレオチド(ODN)の存在下での吸着実験は、PEG1、PEG2、PEG3、およびPEG4に対して同様の反応を示した(図10)。ZP3およびPEG32試料上でのODN吸着を図11で示す。同様にDNA吸着実験を、適切な量の濃縮DNA水溶液を最終濃度(10-250μg/ml)に達するよう添加することによって行った。再度、プラスミドDNAの吸着が配列特異性でないことが見出された。図12に示されるように、100μg/mlまでの濃度で与えられる場合、pCV0プラスミドDNAはペグ化粒子表面上で定量的に吸着され得る。PEG32およびZP3ナノ粒子は、比較的大きい量のプラスミドpCV-tat DNAと結合し得る。DNA/PEG32複合体は生理的緩衝液中で安定である(図13)。
【実施例7】
【0152】
ペグ化ナノ粒子上でのODN/DNA放出実験
ナノ粒子試料(5.0mg/0.5ml)を適当な量のODNおよびDNAで負荷した。攪拌および遠心分離の下、室温で2時間後、ペレットを緩衝液で2回洗浄した。放出されたDNA吸光度(λ=260nm)の直接測定によって、種々のNaCl濃度リン酸緩衝液(20mM、pH7.4)の存在下、室温で2時間後、放出をモニターした。実験は三部構成で行われた(SD≦10%)。ODNのPEG32表面との相互作用は可逆的である:1M NaClリン酸緩衝液(pH7.4)中室温で2時間後、PEG32ナノ粒子から放出されるODNは多量なもの(87%)であるが、一方同じ実験条件の下、およそ50%までの結合DNAが即座に放出される。図14は、高塩分リン酸緩衝液(pH7.4)の存在下、経時的にPEG32ナノ粒子からのDNA放出を示す。
【実施例8】
【0153】
ナノ粒子上でのタンパク質吸着/放出
タンパク質の増加量を、10mMリン酸緩衝液液(pH7.4)中、室温にてナノ粒子懸濁液(5mg/ml)に添加した。試料を連続攪拌の下、室温で2時間インキュベートした。14000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を濾過(0.2μm)し、280nmでのUV吸光度検出の前または比色検定(Bradford)によりリン酸緩衝液で希釈した。実験は三部構成で行われた(SD≦10%)。図15に示されるように、広範囲に及ぶトリプシン吸着が高い効率で生じる。
【0154】
水中におけるMA7酸性ナノ粒子表面上でのモデル塩基タンパク質(すなわちトリプシン)吸着の効果を、動的光散乱技術によって調査した。少量のタンパク質の結合は粒子の流体力学的直径の大きさに影響を与えないが、一方それはタンパク質が結合する際に、表面カルボキシル基の部分中和化によって期待されたζポテンシャル値における有意な減少を促進させる。図16は、MA7ナノ粒子上でのトリプシン(TRY)の結合によって、どのようにPCSおよびゼータポテンシャルが変化するかを示す。
【0155】
実施例9〜13および参考例3
PEG3およびPEG32
これらの実施例において、インビトロおよびインビボ実験を以下のナノ粒子(その調製法は前に記載された)により実行し、DNAワクチン接種に対する送達系としての機能を果たす能力を評価した。
【0156】
【表8】

【0157】
プラスミド
アデノウイルスの主要後期プロモーターおよび空のプラスミドpCV-0の転写制御下、HIV-1 tat cDNA(HLTV-III、BH10クローン)を発現するプラスミドpCV-tatは、Arya S.K.ら, Science 229:69-73, 1985によって記載されている。ヒトサイトメガロウイルスの転写制御下、ルシフェラーゼ遺伝子cDNAを発現するプラスミドpGL2-CMV-Luc-basicをPromega(Milan, Italy)より購入した。標準的な手続にしたがい、プラスミドDNAを2つのCsCl勾配によって精製し、滅菌されたリン酸緩衝液化食塩水(PBS)においてカルシウムおよびマグネシウムなしで再懸濁した。
【0158】
細胞培養
HeLaおよびHL3T1細胞の単層培養物(後者はプラスミドHIV-1-LTR-CATの組み込まれた複製を含有し、ここでHIV-1 LTRプロモーターによってクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)リポーター遺伝子の発現が推進される)が、American Type Cell culture collection(ATCC)により得られ、10%FBS(Hyclone, Logan, UT)を含有するDMEM(Gibco, Grand Island, NY)中で生育された(Wright CM,ら, Science 234:988-92, 1986)。プラスミドpRP-neo-cまたはpRP-neo-Tatそれぞれによって安定にトランスフェクトされたBALB/c 3T3およびBALB/c 3T3-Tatマウス線維芽細胞(aplotype H2kd)は、Caputoら, J. Acquir, Immune Defic. Syndr. 3:372-379, 1990によって記載され、10%FBSが補給されたDMEM中で生育された。マウス肥満細胞腫(mastocytome)由来のP815細胞(aplotype H2kd)がATCCによって得られ、10%FBSを含有するRPMI1640(Gibco)中で生育された。
【実施例9】
【0159】
無細胞吸着/放出実験
粒子表面上へのDNA吸着を評価するために、冷凍乾燥ナノ粒子を、500μlの容量の20mMリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)中で懸濁し(10mg/ml)、5分間攪拌した。次いで、増加する量のpCV-0 プラスミド DNA(10〜250μg/ml)を加えた。懸濁液を室温で、2時間連続的に攪拌した。15分間9000rpmでの遠心分離の後、上澄み液を収集し、Filtek RC4 フィルターユニット(0.2μm, Chemtek, Germany)を通して濾過し、UV吸光度を260nmで測定し、非結合DNAの量を決定した。吸着効率(%)を、100x[(投与されたDNA)-(非結合DNA)/(投与されたDNA)]として計算した。該実験を、3回行った(SD≦10%)。
【0160】
DNA放出実験に対して、DNA/PEG3ナノ粒子複合体を、20mM リン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)の25μgのDNA/mgのPEG3 ナノ粒子/mlの比を使用して調製した。DNA/PEG32ナノ粒子複合体を、20mM リン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)の10および100μgのpCV-0 プラスミド DNA/10 mgのPEG32/mlを使用して調製した。室温での2時間のインキュベーションの後、PEG3/ および PEG32/DNA複合体を、遠心分離で収集し、複合体アセンブリ(assembly)に対して使用される、同様の容量の1M NaCl/20 mMリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)で再懸濁し、連続的な攪拌下で37℃にてインキュベートした。異なる時間間隔で、試料を15分間9000rpmで回転させ、上澄み液を、アガロースゲル電気泳動で分析し、複合体から放出されたDNAの量を決定した。DNA定量化を、それぞれのゲル中で移動したプラスミドDNAの公知の量と比較して、密度計ゲル分析器(Quantity-One, BioRad Laboratories, Milan, Italy)を使用して行った。複合体から放出されたDNAの割合を、100x(放出されたDNA/結合されたDNA)として決定した。該実験を、3回行った(SD≦10%)。
【0161】
吸着傾向を、図17A中(吸着効率)および図17B(DNA充填)中で示す。試料PEG3は、少なくとも10-250μg/mlの範囲の濃度において、最も高い吸着効率と共に、最も高いDNA結合能力(25μg/mgまで)を示した。逆に言えば、試料 PEG 32に対して、表面飽和が、より低いDNA濃度(100μg/ml)で起こり、より低い負荷値(≡8μg/mg)へと導いた。PEG 3およびPEG 32の間の異なる吸着反応は、表面電荷密度中の差異と関連があり、吸着が主にDNA分子の陰性電荷およびコアシェルナノ粒子表面の陽性電荷の間の静電気相互作用によりドライブされることを示す。
【0162】
ナノ粒子表面上へ吸着されたDNAが、次いで放出されるかどうかを評価するために、PEG3/およびPEG32/DNA複合体を、1M NaCl/20 mMリン酸バッファ(pH 7.4)の存在下で、異なる時間間隔で37℃にてインキュベートした。インキュベーションの後、複合体を遠心分離し、DNA(それぞれの上澄み液中で放出された)を、アガロースゲル電気泳動により分析した。図17C(PEG3 複合体)および図17E(PEG 32複合体)中で示されるように、高い塩濃度の存在下で、DNAは、PEG3およびPEG32から時間依存様式で放出される。この結果は、静電気相互作用が、これらのコアシェルナノ粒子上/からのDNA吸着および放出に対する主要な駆動力を表わすことを確認する。しかしながら、DNA放出の動態は、PEG3およびPEG32の間の差異を明らかにする。特に、PEG32ナノ粒子からのDNA放出の効率は、1および10μgの両方の用量にて時間によって増加し、結合DNAの量に関連するように考えられ、10μgで充填された試料からよりも大きい。最終的に、これらの実験の結果は、PEG3(図17D)およびPEG32(図17F)ナノ粒子の両方から放出されたDNAが、その構造上の完全性を保持したことを示した。実際に、スーパーコイル化およびコイル化プラスミドDNA立体配座の比は、対照プラスミドDNAと比較して、変化しないままであった。結論として、これらの結果は、DNAが粒子表面上/から効率的に吸着され、および放出されること、ならびに吸着および放出過程の間に分解され損害を与えられなかったことを明らかにする。
【実施例10】
【0163】
インビトロ細胞毒性の分析
HL3T1細胞(1×104/100μl)を、96-ウェルプレート中で接種し、37℃で24時間培養した。次いで、培地を、増加する濃度のPEG3(20〜400μg/ml)およびPEG32(50〜500μg/ml)ナノ粒子を含む100μlの培地で交換した。それぞれの試料を、6倍にしたウェル中で分析した。細胞を37℃で96時間インキュベートし、細胞増殖を、比色定量の細胞増殖キットI(MTTベースの)(Roche, Milan, Italy)を使用して測定した。
【0164】
図18中に示されるように、未処置の細胞と比較して、細胞生存力の著しい減少(p>0.05)は、PEG3およびPEG32の両方で処置された試料中で、96時間のインキュベーションの後観察されなかった。同様な結果が、DNA/ナノ粒子複合体で得られた(データは示されない)。
【実施例11】
【0165】
細胞の取り込み
細胞からのpCV-0 DNA/ナノ粒子複合体の内在化を、PEG3-フッ化ナノ粒子を使用して評価した。HL3T1細胞(5×104/ウェル)を、12-mm カバーガラスを含む24-ウェルプレート中で接種し、37℃で培養した。24時間後、pCV-0/PEG3-フッ化複合体(実施例9で記載のように、25μg/mg/mlの比で調製し、10% FBSを含む200μlのDMEM中で再懸濁した)を、細胞に加えた。対照物を、未処置の細胞およびPEG3-フッ化非充填ナノ粒子でインキュベートされた細胞で表わした。異なる時間間隔で、細胞をPBSで洗浄し、4%冷却パラホルムアルデヒドで固定し、共焦点レーザー走査型顕微鏡 LSM410(Zeiss, Oberkochen, Germany)で観察した。イメージの捕捉、記録、およびフィルタリング(filtering)を、例えば Betti ら, Vaccine 19:3408-3419,2001に記載のように、Indy 4400 グラフィックワークステーション(Silicon Graphics, Mountain View, CA)を使用して行った。
【0166】
7週齢のメスのBDFマウス(n=3)に、左側後ろ足の大腿四頭筋にて、100μlのPBS中で再懸濁された1mgのPEG-フッ化ナノ粒子を注射した。対照として、マウスに、右側後ろ足の大腿四頭筋にて、100μlのPBS単独を注射した。注射の15分および30分後、マウスに、1mgのInoketan(Virbac, Milan, Italy)、および200μgのRompun(Bayer, Milan, Italy)を含む100μlの等張液によって、腹膜内で麻酔をかけ、犠牲にした。注射の部位の筋肉試料を取り除き、すぐに1分間液体窒素中に浸漬し、-80℃で保存した。5μmの凍結切片を調製し、室温で10分間、新鮮な4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄し、10分間DAPI(0.5μg/ml;Sigma)によって染色した(これは核を染色する)。PBSによる1回の洗浄の後、該切片をエタノールで乾燥させ、退色を遅らせるために1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを含むグリセロール/PBSで標本を作製し、蛍光顕微鏡(Axiophot 100, Zeiss)で観察した。緑色蛍光(ミクロスフェア)を、450〜490λ、フロースルー510λ、およびロングパス520λフィルターで観察し、青色蛍光(DAPI)を、バンドパス365λ、フロースルー395λおよびロングパス397λフィルターで観察した。同様の顕微鏡のフィールドに対して、緑色および青色のイメージを、Cool-Snap CCD カメラ(DAPI)で撮影し、バンドパス365λ、フロースルー395λおよびロングパス397λフィルターで観察した。同様の顕微鏡のフィールドに対して、緑色および青色のイメージを、Cool-Snapp CCD カメラ(RS-Photometrics, Fairfax, VA)で撮影した。次いで、該イメージを、Adobe Photoshop5.5プログラムを使用してオーバーラップした。
【0167】
かくして、細胞により吸収されるナノ粒子の能力を評価するために、蛍光コアシェルナノ粒子試料(すなわちPEG-フッ化物)を調製した。単純な色素吸着により得られる蛍光粒子は、それらの表面で、色素の脱着および蛍光放出の損失を起こし得るので、続く光への曝露およびインビトロ実験の間、該試料を、反応性蛍光誘導体(モノマー3)を使用して調製した。アリルモノマーは、ラジカル重合を経ないが、それらはコポリマーし得るかまたは少なくとも末端基としてポリマー鎖中に含まれ得る。従って、ナノ粒子試料PEG3-フッ化物を、少量の蛍光モノマー3の添加による、PEG3試料と同様の実験条件において、乳化重合反応を行うことによって調製した。SEM顕微鏡検査により決定された、627±38nmの平均直径および10.9μmolm-2の表面電荷密度を有するナノ粒子得た(表2)。この試料は、535nm(λexc=488nm)の最大放出および良好な光-安定性を提供する。従来の精製手順の後に、少量のPEG-フッ化物をクロロホルム中に溶解させ、メタノール中で沈殿させた。重合材料は蛍光を発生し、一方沈殿培地中では蛍光の痕跡が全く観察されず、かくして蛍光ユニットはモノマー3に由来し、ナノ粒子の内部コアを構成するPMMAに共有結合することが実証された。更に、30日間光に曝露されたナノ粒子の蛍光強度は、不変のままであった。
【0168】
細胞により内在化されるこれらのナノ粒子の能力をPEG-フッ化物試料を使用して評価した。HL3Tl細胞を、PEG-フッ化物単独でインキュベートし、またはpCV-0プラスミドDNAにより合成し、パラホルムアルデヒドによって固定し、2および24時間のインキュベーションの後に分析した。共焦点顕微鏡分析は、2時間のインキュベーションの後、非常に少ない量のナノ粒子単独(図19A)およびDNA/ナノ粒子複合体(図19C)の両方が、細胞中で検出されたことを示した。しかしながら、24時間後、ナノ粒子(図19B)およびDNA/ナノ粒子複合体(図19D)を、類似するトランフェクション(tranfection)効率で、細胞によって完全に内在化した。
【0169】
最終的に、ナノ粒子がインビボで、細胞によって吸収されるかどうかを決定するために、マウスへPEG3-フッ化試料を筋肉内注射し、これらのナノ粒子が、DNAワクチン適用に対する有用な送達系を表わし得るということを示唆する部位で、筋肉の蛍光顕微鏡による分析のために、注射の後15分または30分後、犠牲にした。
【実施例12】
【0170】
インビトロの遺伝子発現の評価
DNA/ナノ粒子複合体からのプラスミドpGL2-CMV-Luc-塩基性の取り込み、放出、および発現を、HeLa 細胞中で評価した。細胞(5×10)を、60mmペトリ皿中で接種し、37℃で培養した。24時間後、細胞をDNA/ナノ粒子複合体でインキュベートし、実施例9に記載のように調製し、10%FBSを含む100μlのDMEM中で再懸濁した。対照物を、裸のDNAでインキュベートされた細胞、またはカルシウムリン酸共沈技術を使用した1μgのDNAによりトランスフェクトされた細胞、および未処置の細胞によって表わした。1μgのDNAでトランスフェクトした。48時間後、リポーター遺伝子の発現を、前記のように(Betti M,ら,前出)、全タンパク質内容物に標準化された細胞抽出物の量で測定した。ルシフェラーゼの発現を、製造業者の指示に従って、Luciferase Assay Systems,(E1500,Promega)を使用して評価し、TD-20/20 Luminometer(TurnerDesigns, Sunnyvale, CA)で読み取った。
【0171】
DNA/ナノ粒子製剤の安定性を評価するために、いくつかの実験において、実施例9に記載のように、pGL2-CMV-1uc-塩基性/PEG32複合体を調製し、凍結乾燥し、1時間室温(25〜30℃)にて粉末形態で保存し、適切な容量の20mMナトリウムリン酸バッファ中で再懸濁した。1時間の攪拌の後、複合体を細胞に加え、上記のように遺伝子発現を評価した。
【0172】
DNAを放出する、および細胞内で発現させるDNA/ナノ粒子複合体の能力を、PEG3(25μg/mg/mlの比)またはPEG32(10または100μg/10mg/mlの比)ナノ粒子に対して裸であるまたは付随するpGL2-CMV-Luc プラスミド DNA(1または10μg)で、48時間インキュベートしたHeLa 細胞中で評価した。図21A中に示されるように、ルシフェラーゼ遺伝子発現は、裸のDNAによってインキュベートされた細胞と比較して、DNA/ナノ粒子複合体によってインキュベートされた細胞中で、より高かった。これらの結果は、複合体が細胞によって吸収され、機能的なDNAを放出することを示す。
【0173】
最終的に、DNA/ナノ粒子複合体が、室温での貯蔵の後、安定であるかどうかを決定するために、pGL2-CMV-Lucプラスミド DNA/PEG32 ナノ粒子製剤(100μg/10mg/mlの比)を冷凍乾燥し、1ヶ月間室温で保存し、20 mMリン酸バッファ中で再懸濁し、細胞発現に対してテストした。対照物を、新鮮に調製された同様の製剤によって処置された細胞によって表わした。結果(図21B中で示される)は、リン酸バッファを示し、細胞発現に対してテストした。対象物を、新鮮に調製された同様の製剤によって処置された細胞によって表わした。該結果(図21B中で示される)は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現が、凍結乾燥され、室温で1ヶ月間保存された同様の製剤で処置された細胞と比較して、新鮮に調製され、該細胞にすぐに加えられた製剤により処置された細胞中で類似していることを示した。これらの結果は、DNA/ナノ粒子複合体が、室温にて粉末形態で安定であることを実証する。
【0174】
参考例3
Tatタンパク質およびペプチド
86-aa長Tatタンパク質(HTLVIIIB, BH-10 クローン)を、大腸菌(Escherichia coli)中で発現させ、高圧クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーの連続する一巡で単離した(Chang H.C.ら,AIDS 11:1421-1431, 1997;Chang HC ら, J.Biom.Sci 2:189-202, 1995; Ensoli B.ら, Nature 345:84-86, 1990; Ensoli B.ら, J. Virol. 67:277-87, 1993; Fanales-Belasio E. ら, J. Immunol. 168: 197-206, 202 参照)。精製されたTat タンパク質は、SDS-PAGEおよびHPLC分析によってテストされる場合、>95%純粋である。Tatが7つのシステインを含むために容易に起こる酸化を防止するために、Tatタンパク質を、-80℃で凍結乾燥して保存し、使用前にすぐに、脱気減菌 PBS(2mg/ml)中で再懸濁した。更に、Tatには感光性および感熱性であるので、Tatの取り扱いは、常に暗闇および氷上で行われた。ペプチドを、UFPeptides s.r.l(Ferrara, Italy)によって合成した。ペプチドストックを、10-2 M濃度においてDMSO中で調製し、-80℃に保ち、使用前にすぐにPBSで希釈した。Tat予測CTLエピトープを、ペプチド結合予測プログラム(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind)を使用して選択した。
【実施例13】
【0175】
マウス免疫化および免疫応答の分析
動物使用は、国内のガイドラインおよび規定の政策に従った。7週齢のメスBALB/c(H2kb)マウス(Harlan, Udine, Italy)を、100μlのプラスミドpCV−tat(1μg)(単独またはPEG32ナノ粒子(1mg)で合成された)によって免疫化した。免疫原は、後足の大腿四頭筋中にて両側の筋肉内(i.m)注射(50μl/足)によって与えられた。対照動物は、単独またはナノ粒子に付随するプラスミドpCV-0(1μg)を注射されたマウスを含んだ。動物をDNA/ナノ粒子複合体またはDNA単独で、0および4週目にて免疫化し、第1の免疫化の後、8および16週目にて、Alum中でTatタンパク質(1μg)によってブーストした。マウスを、最終ブーストの10日後、犠牲にし、体液性および細胞性応答の分析のための、ならびに組織学的、組織化学的、および免疫組織化学的(immunoistochemical)調査のための血液および器官を採集した。実験の進行の間、動物を、1週間に2回、注射の部位で、およびその一般的な状態(元気さ、食物摂取、活力、体重、運動性、毛の光沢)に対して制御した。局所または全身性の有害反応の徴候は、裸のDNAによってワクチン化されたマウスまたは未処置マウスと比較して、DNA/ナノ粒子複合体を受け入れるマウス中では観察されなかった。実験を、2回行った。
【0176】
Tatに対する血清学上の応答を、4℃で16時間、100μl/ウェルのTatタンパク質(0.05M炭酸バッファpH9.6〜9.8中1μg/ml)により被膜された96-ウェル免疫プレート(Nunc-immunoplate F96 PolySorb, Nalge Nunc International, Hereford, UK)を使用する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって測定した(参考例3参照)。ウェルを、自動洗浄機(Immunowash 1575, BioRad Laboratories)で、PBS中0.05% Tween 20(PBS-Tween) によって洗浄し、37℃で90分間、3% BSA(Sigma, St.Louise, MI)を含むPBSでブロックした。血清を、3% BSAを含むPBS中で希釈した。最も低い血清希釈液は、1:100であった(2倍のウェル)。徹底的な洗浄の後、100μlアリコートを各々のウェルへ2倍で添加し、37℃にて90分間インキュベートした。プレートを洗浄し、100μl/ウェルのホースラディッシュぺルオキシダーゼ-接合ヒツジ抗-マウス IgG(Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)(1% BSAを含むPBS-Tween中で、1:1000に希釈される)を、加えた。室温での90分間のインキュベーションの後、プレートを洗浄し、室温で40分間、ペルオキシダーゼ基質(ABTS)(Roche)でインキュベートした。反応は、0.1M クエン酸でブロックされ、吸光度を、自動プレート読み読み取り機(ELX-800, Bio-Tek Instruments, Winooski, UT)により、405nmで測定した。カットオフは、対照マウス(3つの独立したアッセイ中でテストされた)の血清の平均OD405(+3SD)に一致した。
【0177】
抗-Tat IgG アイソタイピングに対して、プレートを、Tatプロテインで被膜し、上記のように、1:100および1:200で希釈したマウス血清によってインキュベートした。洗浄の後、100μlのヤギ 抗-マウス IgG1またはIgG2a(Sigma)(1% BSAを含むPBS-Tween中で1:100にて希釈された)を、それぞれのウェルに加えた。免疫複合体を、上記のように、1% BSAを含むPBS-Tween中で1:7500にて希釈されたホースラディッシュペルオキシダーゼ-標識-ウサギ 抗-ヤギ IgG(Sigma)によって検出した。それぞれのIgG亜綱に対するカットオフは、PBSによって注射された対照マウス(3つの独立したアッセイ中でテストされた)の血清の平均OD405(+3SD)に一致した。
【0178】
抗-Tat IgGエピトープマッピングに対して、Tat(HTLVIII-BH10)の異なる部位を表わす8つの合成ペプチド(aa 1-20、21-40、36-50、46-60、56-70、52-72、65-80、73-86)を10μg/mlで0.1M炭酸バッファ(pH9.6)において希釈し、96-ウェル免疫プレートを、100μl/ウェルで被膜した。アッセイを、上記のようにして行った。それぞれのペプチドに対するカットオフは、PBSを注射された対照マウス(3つの独立したアッセイ中でテストされた)の血清の平均OD405(+3SD)に一致した。
【0179】
抗-Tat特異的抗体の存在を、ELISA アッセイにより評価した。抗-Tat IgGを、pCV-tat DNA/PEG32複合体(平均力価2738±2591)による免疫化の後に検出した。同様のプライム/ブースト養生法(regimen)によって、しかし裸のDNA(平均力価4686±5261)によって免疫化されたのと類似した様式であった(p<0.05)(表9)。
【0180】
【表9】


マウスを、pCV-tat DNA/PEG32複合体またはpCV-tat DNA単独で、0および4週目にて筋肉内(i.m)で、免疫化し、8および16週目にてAlum中のTatタンパク質(1μg)でブーストした。抗-Tat IgG 力価を、単体マウス血清上の第1(III免疫化)および第2タンパク質ブースト(IV免疫化)の後にテストした。結果は、実験群あたりのマウス血清の平均力価(±SD)に一致する。IgGアイソタイプの分析を、第二タンパク質ブースト(IV免疫化)の後に行った。結果は、実験群あたりのマウスIgG1/IgG2の平均OD405nm値の間の比を表わす。
【0181】
IgGアイソタイプ分析は、同様の IgG1/IgG2a比、および裸のDNAまたはDNA/ナノ粒子複合体によって免疫化されたマウスの両方の群中のわずかにより高いIgG1の有病率によって、IgG1およびIgG2aサブクラスの両方の存在を示した(表9)。抗体のエピトープ反応性は、主としてTatのアミノ-末端(aa 1〜20)およびカルボキシ-末端(aa65〜80)部位に対して、向けられた(表10)。
【0182】
【表10】




マウスを、pCV-tat DNA/PEG32複合体またはpCV-tat DNA単独で、0および4週間目にて筋肉内(i.m)で、免疫化し、8および16週目にて、Alum中のTatタンパク質(1μg)によってブーストした。IgGエピトープ反応性の分析を、第2タンパク質ブースト(IV免疫化)の後に行った。結果は、実験群あたりのマウス血清の平均OD405nm値(±SD)に一致する。それぞれのペプチドに対するカットオフ値は、≦0.02であった。
【0183】
Tat-特異的 T 細胞増殖
脾細胞を、フィルター(Cell Strainer, 70 μm, Nylon, Becton Dickinson)上で圧搾された脾臓から精製した。室温にて4分間、154mM NH4Cl、10mM KHCO3および0.1 mM EDTA(5ml/脾臓)による赤血球溶解に続いて、細胞を、3% FBS(Hyclone)を含むRPMI 1640によって希釈し、1200rpmで10分間回転させ、10% FBSを含むRPMI 1640中で再懸濁し、抗原-特異的細胞免疫応答の分析に対して使用した。それぞれの実験群あたりの貯留の脾臓を使用した。
【0184】
脾細胞(2.5×105/100μl)を、37℃で4日間、アフィニティー-精製 Tat タンパク質(0.1、1、または5μg/ml)またはコンカナバリンA(2μg/ml、Sigma)の存在下で、96-ウェルプレートで培養した。[メチル-H]-チミジン(2.0 Ci/mmol, NEN-DuPont, Boston, MA)を、それぞれのウェル(0.5μCi)に加え、細胞を37℃で16時間、インキュベートした。[H]-チミジン取り込みを、β-カウンター( Top count, Packard)で測定した。6つのウェルの抗原-刺激細胞の平均カウント/分を、抗原の不在下における同様の細胞成長の平均カウント/分で割ることによって、刺激指数(SI)を計算した。
【0185】
Tatに応答するCD4+ T-細胞増殖を、マウス脾細胞を使用することによって評価し、0.1、1および5μg/mlのTatタンパク質の存在下で5日間培養した。抗原-刺激T-細胞増殖([H]チミジン取り込みによって決定される)を、pCV-tat/PEG32およびpCV-tat単独で免疫化されたマウスの両方の群で、同様に検出した(表11)。
【0186】
【表11】

【0187】
CTLアッセイ
CTLアッセイを、B-除去脾細胞上で行った。Bリンパ球の除去を、製造業者の指示に従って、抗-CD19磁性ビーズ(Becton Dickison, Milan,Italy)を使用して行った。蛍光-活性化細胞ソーター(FACS)分析を、1% BSA(洗浄バッファ)を含むPBS(カルシウムおよびマグネシウムなしで)によって洗浄した細胞(1×10)上で行った。細胞のペレットを4℃で2分間、10μlのマウス免疫前血清でプレインキュベートし、非特異的結合を飽和し、次いで、4℃で45分間、1μgのラット 抗-マウスモノクローナル抗体(α-CD19、α-CD3、α-CD4、α-CD8)(Becton Dickinson)によってインキュベートした。徹底的な洗浄の後、細胞を30分間、1μgのヤギ-抗ラットFITC-接合抗体(Becton Dickinson)によってインキュベートし、洗浄して400μlの洗浄バッファ中で再懸濁した。いくつかの実験において、細胞を、蛍光色素(fluorocrome)-接合一次抗体(α-CD19-PE、α-CD3-FITC、α-CD8-PE、Becton Dickinson)によって染色した。蛍光試料を、Becton DickinsonからのFACSCaliburを使用して測定した。脾細胞を、Balb/c 3T3 Tat 細胞(5:1の比)によって共培養し、30 Gy(137Cs)であらかじめ照射した。3日後、rIL-2(10U/ml)(Roche)を加え、細胞を37℃で更に3日間、共培養した。次いで、死んだ細胞を、Ficol 勾配(Histopaque, Sigma)によって取り除いた。CTL活性を、様々なエフェクター/標的比で、あらかじめ37℃で90分間51Cr(25μCi/3×106細胞;NEN-DuPont)によって標識化され、37℃で1時間、Tatコンピュータ予測CTLエピトープを含むTatペプチド(1×10-5M)によって適用された、同系のP815標的細胞を使用する、標準51Cr放出アッセイによって決定した。37℃での5時間のインキュベーションの後、51Cr放出の割合を、培地中で決定した。特異的溶解の割合(%)を、100×(cpm試料−cpm培地)/(cpm Triton-X100−cpm培地)として計算した。自発的放出は、10%以下であった。
【0188】
図22中に示されるように、特異的 抗-Tat CTL 活性(コンピュータ予測CTLエピトープを含むTatペプチドを適用したP815標的細胞に対して向けられる)を、tat/PEG32およびtat DNA単独で免疫化されたマウスの両方の群で検出した。しかしながら、CTL応答は、裸のDNAによってワクチン化されたマウスと比較して、tat/PEG32複合体でワクチン化されたマウスにおいて、一般的により高く(特異的溶解の割合による)より広かった(標的エピトープによる)。
【0189】
組織学的、組織化学的および免疫組織化学的手順
犠牲にする動物を、検死に供した。12〜24時間の10%ホルマリン中での固定、およびパラフィンでの包埋の後、注射の位置における皮膚、皮下組織および骨格筋の試料ならびに他の器官(肺、心臓、腸、腎臓、脾臓および肝臓)の試料を採取し、組織学的、組織化学的および免疫組織化学的検査のために処理した。3つの5μmパラフィン包埋切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンによって染色し、ジアスターゼ(Sigma)処置によってまたは無しで、過ヨウ素酸-Shiff(PAS)反応、およびフェリック鉄(ferric iron)に対するパールの反応に供した。アビジン-ビオチン-ぺルオキシダーゼ複合体技術を、パラフィン切片上で行われる免疫組織化学的調査のために使用した。抗体のパネルは、S-100(DAKO, Glostrup, Denmark)、α-アクチンの検出のためのHH-F 35(DAKO)、マクロファージの検出のためのCD68およびMac387(DAKO)を含んだ。簡潔に、脱パラフィン化および再水化後、内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中0.3% H2O2によってブロックした;次いで、試料を4℃で10〜12時間、一次抗体によってインキュベートした。ビオチン化(Biotinilated)-抗-マウスおよび抗-ウサギ免疫グロブリン(Sigma)を第二の抗体として活用した。特異的反応を、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼの接合化およびジアミノベンジジン(Sigma)の発達によるインキュベーションに続いて検出した。
【0190】
これらの新規のコアシェルナノ粒子の安全性を評価するために、マウスを注射の部位で、およびそれらの一般的な健康状態に対して、1週間につき2回の免疫化の後、制御した。局所のまたは全身性の有害反応の徴候は、裸DNAを注射された対照マウスまたは未処置マウスと比較して、tat/PEG32複合体を受け入れるマウス中は観察されなかった。注射の部位での炎症性の反応(主に、マクロファージ浸潤により特徴付けられる)は、pCV-tat/PEG32およびpCV-0/PEG32複合体によって処置されたマウスの、それぞれ87.5%および85.7%で観察され、裸のpCV-tatおよびpCV-0 DNAによって免疫化されたマウスの、それぞれ75%および80%で観察され、裸のDNAを接種された動物と比較して、複合体を注射されたマウスにおいて、炎症性反応(筋肉内レベルにおいて)の頻度の差異は存在しないことが示された。図23中で示されるように、変化する強度によるマクロファージ浸潤は、注射の部位における筋肉線維の周りの線維脂肪組織の組織中および筋肉繊維の間で観察された(図23A)。筋肉炎症性湿潤は時折明るく、筋肉炎症性湿潤は時折明るく、筋肉線維の退行性の変質なしであった(図23B)。時折それは、退行性の変化に付随した(図23C)。時折、マクロファージは注射部位を取り囲む脂肪組織の組織中で観察された(図23D)。最終的に、裸のDNAを注射されたマウスと比較して、DNA/ナノ粒子複合体の注射と関連し得る特異的変質は、他の検査された器官中で報告されなかった。
【0191】
該結果の統計的な分析において、スチューデントt検定を、生物学的調査での統計の原理および実行に従って行った。
【0192】
本発明者は、DNAの送達のための、実施例9〜13中に記載のものなどを、新規のアニオンのコアシェルナノ粒子の乳化重合によって設計し、合成した。これらのナノ粒子は、ポリ(メチルメタクリレート)ならびに陽性電荷官能基を生じる水溶性コポリマー(可逆的にDNAを結合することが出来る)、およびポリエチルグリコール鎖ブラシ(それらの生物適合性を増大することが出来る)によって構成される、高度に親水性の外殻により構成される、内部ハードコアを有する。重合機構の結果として、本調査中に記載されるコアシェルナノ粒子において、帯電した高分子は、単純に吸着されなく、粒子表面に共有結合し、かくして遊離表面活性剤および/または界面活性剤を含むワクチン製剤と関連する物理的脱着および/または不安定性/毒性欠点を回避する。
【0193】
実施例9〜13の結果は、DNAが高効率(ナノ粒子によって初期にインキュベートされた80%〜100%のDNA)でナノ粒子表面上に吸着されたことを示す。インビトロでのDNA放出は、37℃で10分間の複合体インキュベーションの後にすでに起こり、それは時間依存的であり、長期に渡る。最終的に、DNAは、その構造上の完全性を保持する。
【0194】
組織培養系における調査は、それらが細胞によって吸収され、DNA/ナノ粒子複合体の細胞内在化が、ナノ粒子単独のものと類似することを示し、ナノ粒子表面上へのDNAの存在は、細胞内在化によって干渉しないことを示した。更に、細胞培養中の調査は、これらのナノ粒子/DNA複合体が機能的なDNAを放出することを実証した。最終的に、DNA/ナノ粒子製剤が少なくとも1ヶ月間室温で、粉末形態で安定であることが示された。実際に、生理学的バッファでの粉末の懸濁の後、DNA/ナノ粒子複合体は、新鮮に調製されたDNA-ナノ粒子製剤に類似する様式で、細胞により吸収され、機能的DNAを放出する、という能力を保持した。安全性の調査は、それらが、高用量(1mg)の複数の投与の後でさえ、インビトロまたはマウス中で無毒性であることを示した。最終的に、免疫原性の調査は、低用量(1μg)のプラスミドDNAおよびプライム-ブースト養生法によるワクチン化が、Th1およびTh2型の両方の抗原に対して、広い体液性および細胞性の応答を顕在化させることを示した。注として、DNA/ナノ粒子複合体による免疫化は、エピトープ反応性の特異的溶解の割合に関する、より広いCTL応答を顕在化させる。
【0195】
結論として、結果は、これらの革新的なナノ粒子が、低コスト、増大する貯蔵寿命、安全性、スケールアップおよびGMP産生に対する適合性、投与の安易さおよび発展途上国への技術移転のための実行可能性によって特徴付けられる、新規および安定なDNAワクチンの発達のための有望なツールを表わすことを示す。
【実施例14】
【0196】
ZP3ナノ粒子
インビトロでの細胞毒性の分析
HL3T1細胞の単層培養物を、American Type Cell culture collection(ATCC)を通じて得、10%FBS(Hyclone, Logan, UT)を含むDMEM(Gibco, Grant Island, NY)中で成長させた[Wright C M Science 234:988-92, 1986]。細胞(1×10/100μl)を、96-ウェルプレート中で接種し、24時間、37℃で培養した。次いで、培地を、増加する濃度のZP3 ナノ粒子(500〜10,000μg/ml)の含む100μlの培地で交換した。それぞれの試料を、6倍のウェル中で評価した。細胞を37℃で96時間インキュベートし、細胞増殖を、製造業者の指示に従って、未処置の細胞のものと比較して、比色定量細胞増殖キットI(MTTベースの)(Roche, Milan, Italy)を使用して測定した[Mossman T.ら, 前出]。統計上の分析(t-スチューデント)を行った。
【0197】
図24中に示されるように、細胞の生存能力の著しい減少(p>0.05)は、未処置細胞と比較して、ZP3で両方処置された試料中で、96時間のインキュベートの後、2500μg/mlまで観察されなかった。細胞の生存能力の25%および76%の減少が、ZP3のそれぞれ5mg/mlおよび10mg/mlの存在下で観察された。これらの結果は、ZP3ナノ粒子が、非常に高い用量(ミリグラム範囲で)でさえ、細胞に対して有毒でないことを示す。
【実施例15】
【0198】
MA7ナノ粒子
インビトロでの細胞毒性の分析
HL3T1細胞の単層培養(プラスミドHIV-1-LTR-CATの完全なコピーを含み、ここでクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)リポーター遺伝子の発現が、HIV-1 LTR プロモーターによってドライブされる)は、American Type Cell culture collection(ATCC)を通じて得られ、10% FBS(Hyclone, Logan, UT)を含むDMEM(Gibco, Grand Island, NY)中で成長した。細胞(4×10/100μl)を、96-ウェルプレート中で接種し、37℃で24時間培養した。ナノ粒子単独(10〜500μg/ml)またはTat(1μg/ml)に結合したナノ粒子を含む100μlの培地を、6倍のウェル中の細胞に加えた。未処置細胞およびTat単独で成長させた細胞を、対照として使用した。37℃に96時間のインキュベーションの後、細胞の生存能力を、Roche(Milan, Italy)により提供される比色定量細胞増殖キットI(MTTベースの)を使用して測定した。吸光度を、630nm(OD 570/630)の参照波長によって、570nmでプレートを読み取ることによって、測定した。t-スチューデント検定を行った。
【0199】
かくして、未処置細胞と比較して、増加する量のナノ粒子(10〜500μg/ml)でのインキュベーションに続いて、MA7の細胞毒性を、HL3T1細胞中で分析した。図25中で示されるように、未処置の細胞と比較して、MA7で処置された試料中での96時間のインキュベーションの後に、細胞生存能力の著しい減少は観察されなかった。これらの結果は、MA7ナノ粒子が細胞に対して無毒性であることを示す。
【0200】
ナノ粒子/Tatタンパク質複合体製剤およびTatタンパク質活性の評価
86-aa長Tatタンパク質(HTLVIIIB, BH-10 クローン)を、参考例3に記載のように、大腸菌中で発現させ、高圧クロマトグラフィーおよびイオン-交換クロマトグラフィーの連続する一巡で単離した。精製されたTat タンパク質は、SDS-PAGEおよびHPLC分析によってテストされる場合、>95%純粋である。Tatが7つのシステインを含むために容易に起こる酸化を防止するために、Tatタンパク質を、-80℃で凍結乾燥して保存し、使用前にすぐに、脱気減菌 PBS(2mg/ml)中で再懸濁した。更に、Tatには感光性および感熱性であるので、Tatの取り扱いは、常に暗闇および氷上で行われた。
【0201】
ナノ粒子(凍結乾燥された粉末)を、使用前に少なくとも24時間、2mg/mlの減菌したPBS中で再懸濁した。Tatおよびナノ粒子の適切な容量を、混合し、60分間、暗闇および氷上でインキュベートした。インキュベーションの後、試料を10分間、15,500rpmで回転させた。ペレット(Tat-ナノ粒子複合体)を、適切な容量の脱気減菌PBSで再懸濁し、すぐに使用した。
【0202】
HL3T1細胞(5×105)を、6-ウェルプレート中で接種した。24時間後、細胞を、1mlの新鮮な培地と交換し、Tat単独(0.125, 0.5 および1μg/ml)または100μMのクロロキン(Sigma, St. Louise, MI)の存在下においてナノ粒子と結合するTat(30μg/ml)によってインキュベートした。CAT活性を、前記のように、全タンパク質内容物への標準化の後、細胞抽出物中で48時間後に測定した。
【0203】
ワクチン発達における送達系としてのこれらの適用のために、重合体のミクロスフェアは、その生物学的に活性な立体配座において、タンパク質を結合しおよび放出するべきである。これは、天然タンパク質が、ワクチン効能のために必要とされているので、Tatにとって特に重要である。従って、その生物学的に活性な立体配座において、HIV-1 Tatタンパク質を結合しおよび放出するナノ粒子の能力は、HL3T1細胞中で決定され、HL3T1細胞は、レポータープラスミド HIV-1 LTR-CATの完全なコピーを含んでいる。これらの細胞において、CAT遺伝子の発現は、生物活性Tatの存在下のみで起こる。この目的のために、HL3T1細胞を、Tat増加する量のTat単独またはMA7上で吸着されたのによってインキュベートした。結果を、図26中に描写する。CATの発現は、MA7/TatおよびTat単独でインキュベートされた試料の間で高くおよび類似していた。これらの結果は、ナノ粒子が生物学的に活性なTatタンパク質を吸着および放出し、ミクロスフェアに結合するTatがその本来の立体配座および生物学的活性を維持することを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】図1は、式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマーを含有する水溶液中の水不溶性モノマーの乳化重合によって得ることのできるコアシェルナノ粒子の構造の略図である。
【図2】図2は、実施例1で得られたナノ粒子試料PEG32の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例2で得られた試料ZP2のSEM顕微鏡写真である。
【図4】図4は、ナノ粒子の大きさを、実施例2の非イオン性ポリマー2の濃度の関数として示す。
【図5】図5は、実施例2の連続した試料中のナノ粒子1 gあたりの第四アンモニウム基の量を、非イオン性コモノマーの濃度の関数として示す。
【図6】図6は、実施例3で得られたナノ粒子試料M1の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例5で得られた試料MA7のSEM顕微鏡写真である。
【図8】図8Aおよび8Bは、実施例5のナノ粒子に対するMMA濃度の関数としてのナノ粒子の大きさの線形(図8A)および対数プロット(図8B)である。
【図9】図9は、実施例5の連続したナノ粒子試料MAn上のカルボキシル基の量を、ナノ粒子の直径の関数として示す。
【図10】図10は、実施例6で得られたナノ粒子のODNの吸着を、ODN濃度の関数として図解する。
【図11】図11は、PEG化ナノ粒子ZP3およびPEG32上のODNの吸着を示す。
【図12】図12は、PEG 32およびZP3上のDNAの吸着を示す。
【図13】図13は、PBSバッファー中のDNA/PEG32複合体の安定性を示す。
【図14】図14は、1M NaClリン酸バッファー(pH 7.4)存在下でのPEG 32ナノ粒子からのDNAの経時的放出を示す。
【図15】図15は、MA7ナノ粒子上でトリプシンの吸着がどのように変動するかを示す。
【図16】図16は、PCSおよびζポテンシャルが、モデルタンパク質(トリプシン)のMA7酸性ナノ粒子への結合に伴ってどのように変動するかを示す。
【図17】図17は、DNA/ナノ粒子吸着および放出速度論を示す。吸着速度論のために、ナノ粒子PEG3およびPEG32を、20 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.4)中10 mg/mlで再懸濁し、量の増大するpCV-0プラスミドDNA(10〜250μg/ml)とともにインキュベートし、室温で2時間攪拌し、遠心分離した。上清を回収し、濾過して、260 nmでUV吸光度を測定して、結合していないDNAの量を決定した。結果を、(A)100 x [(投与されたDNA)−(結合していないDNA)/(投与されたDNA)]として計算した吸着効率(%)、および(B)ナノ粒子1 mgあたりに負荷したDNA(μg)として表す。放出速度論のために、20 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 7.4)中、25μgのDNA/mgのナノ粒子/ml(DNA/PEG3)の比率で、10および100μgのDNA/10 mgのナノ粒子/ml(DNA/PEG32)を用いて、DNA/ナノ粒子複合体を調製した。インキュベーション後、遠心分離によって複合体を回収し、1 M NaCl/20 mMリン酸ナトリウムバッファーに再懸濁し37℃でインキュベートした。種々の時間間隔で、試料を遠心分離して、アガロースゲル電気泳動によって上清を分析してPEG3(C、D)およびPEG32(E、F)複合体から放出されたDNAの量を測定した。結果は、100 x (放出されたDNA/結合したDNA)として決定した、複合体から放出されたDNAの割合(%)を表す(C、E)。1μgのDNAを用いて調製された、各DNA/ナノ粒子複合体から放出されたDNAの1つの代表的なゲルを示す(D、F)。プラスミドpCV-0(0.1および0.5μg)を対照として各ゲルに流した。
【図18】図18は、PEG3およびPEG32ナノ粒子存在下での細胞増殖の評価を示す。HL3T1細胞を96時間、量の増大するPEG3(20〜400μg/ml)およびPEG32(50〜500μg/ml)とともに培養し、比色定量MTTベースのアッセイを用いて細胞増殖を測定した。対照は、未処理細胞によって表した(なし)。結果を、6倍のものの平均(±標準偏差)として表す。
【図19】図19は、細胞取り込みの解析を示す。HL3T1細胞を、PEG3-fluoナノ粒子(40μg)のみ(AおよびB)の存在下で、または1μgのpCV-tatDNA(CおよびD)とともに培養した。2(AおよびC)および24(BおよびD)時間のインキュベーションの後、パラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定し、共焦点レーザー走査型顕微鏡で観察した。
【図20】図20は、接種後15(パネルA)および30(パネルB)分のPEG3-fluoナノ粒子の細胞取り込みの、注入部位での解析を示す。同じ顕微鏡視野に関して、緑色(ナノ粒子)および青色(核)像を撮影し、材料および方法に記載されるように重複させた。倍率100X。
【図21】図21は、ポリマーナノ粒子が機能的DNAを細胞内で送達および放出することを示す。(A)HeLa細胞を、1または10μgのpGL2-CMV-Luc基礎DNAのみとともにインキュベートするか、またはPEG3(25μg/mg/mlの比率)およびPEG32(10または100μg/10 mg/mlの比率)ナノ粒子に吸着させた。材料および方法に記載したように複合体を調製し、直ちに細胞に加えた。(B)細胞を、10μgのpGL2-CMV-Luc基礎DNAのみとともにインキュベートするか、または材料および方法に記載したように調製したPEG32(100μg/10 mg/mlの比率)ナノ粒子に吸着させ、直ちに細胞に加えるか(新鮮なDNA/PEG32)、または凍結乾燥し、室温で1ヶ月保存し、室温で1時間再懸濁して細胞に加えた(凍結乾燥したDNA/PEG32)。AおよびBにおいて、48時間後に、材料および方法に記載したように、総タンパク質含量に対して正規化された細胞抽出物に関して、ルシフェラーゼ遺伝子発現を測定した。結果は、2つの独立した実験の平均値であり、ルシフェラーゼ光単位として表す。
【図22】図22は、Tatに対するCTL応答の解析を示す。B欠乏性脾臓細胞を、Balb/c 3T3-Tat発現細胞とともに5日間共培養し、コンピュータで予測したCTLエピトープを含むTatペプチドを適用したP815標的細胞に対する細胞溶解活性について試験した。特異的溶解の割合(%)を報告する。
【図23】図23は、筋肉内経路によるDNA/PEG32複合体の注射後の組織学的知見を示す。筋内膜(endomysial)結合組織において、変動する強度で炎症反応が観察され(パネルA、B、C)、筋肉線維の変性変化を伴わない軽度のマクロファージ細胞の浸潤が見られるか(パネルB)、または、退行性変化を引き起こす、より強度の高い単核細胞浸潤が見られることもあった(パネルC)。マクロファージはまた、注射部位の周囲の脂肪組織に見られることもあった(パネルD)。ヘマトキシリン−エオシン染色。倍率:5X(パネルA);20X(パネルBおよびC);10X(パネルD)。
【図24】図24は、ZP3ナノ粒子存在下での細胞増殖の評価を示す。HL3T1細胞を、量が増大するZP3(500〜10.000μg/ml)とともに96時間培養し、比色定量MTTベースのアッセイを用いて細胞増殖を測定した。対照を、未処理細胞によって表す(なし)。結果を、平均(±標準偏差)として表す。
【図25】図25は、MA7ナノ粒子のインビトロ細胞毒性の解析を表す。HL3T1細胞を、量の増大するMA7のみ(10〜500μg/ml)の存在下で(左側のパネル)、またはTatタンパク質(1μg/ml)に結合した同じ用量のMA7とともに(右側のパネル)、96時間培養した。対照を、未処理細胞(なし)、またはTatのみ(1μg/ml)とともに培養した細胞(Tat)によって表す。結果は、6倍のウェルの平均(±標準偏差)である。
【図26】図26は、MA7ナノ粒子と複合体化したTatの生物学的活性の解析を示す。HL3T1細胞はプラスミドHIV-1-LTR-CATの、組み込まれたコピーを含み、ここでクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子の発現がHIV-1 LTRプロモーターによって駆動され、生物学的に活性のあるTatタンパク質の存在下でのみ起こるが、このHL3T1細胞を、MA7ナノ粒子(30μg/ml)に結合した、量の増大するTat(0.125、0.5および1μg/ml)とともに(上のパネル)、または同じ用量のTatのみとともに(下のパネル)、100μMクロロキン存在下でインキュベートした。対照を、未処理細胞(なし)によって表す。48時間後、同じタンパク質含量に対して正規化された細胞抽出物に関して、CAT活性を測定した。結果は、3つの独立した実験の平均(±標準偏差)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水不溶性ポリマーまたはコポリマーを含むコア、および
(b)親水性ポリマーまたはコポリマーを含むシェル;
を含むコアシェルナノ粒子であって、該ナノ粒子が、水溶液中に少なくとも1つの水不溶性スチレン、アクリルまたはメタクリルモノマーおよび:
(i)式(I)のモノマーであって、:


式中、
R1は水素またはメチルを表し、
R2は-COOAOH、-COO-A-NR9R10または-COO-A-N+R9R10R11X-を表し、ここでAはC1-20アルキレン、R9、R10およびR11はそれぞれ別々に水素またはC1-20アルキルを表し、Xはハロゲン、硫酸、スルホン酸または過塩素酸を表す、モノマー、ならびに
式(II)の水不溶性ポリマーであって、


式中、
R3は水素またはメチルを表し、
R4は水素またはC1-20アルキル基を表し、
nは式(I)のポリマーが少なくとも1000の数平均分子量を有するような整数である、ポリマー;または
(ii)式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性コポリマーであって、:


式中、
R5およびR7はそれぞれ別々に水素またはメチルを表し、
R6は水素、-A-NR9R10または-A-N+R9R10R11X-を表し、ここでAはC1-20アルキレン、R9、R10およびR11はそれぞれ別々に水素またはC1-20アルキルを表し、Xはハロゲン、硫酸、スルホン酸または過塩素酸を表し、
R8はC1-10アルキルを表す、コポリマー
を含有する混合物の乳化重合によって得ることができる、コアシェルナノ粒子。
【請求項2】
コアがポリ(C1-10アルキル(メト)アクリレート)、ポリスチレン、またはアクリル、メタクリルまたはスチレンモノマーであるモノマーから形成されるコポリマーを含む、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
コアがポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項1または2記載のナノ粒子。
【請求項4】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートおよび2-(ジメチルオクチル)アンモニウムエチルメタクリレートブロミンを含有する水溶液中のメチルメタクリレートの乳化重合によって得ることができる、請求項1〜3いずれか記載のナノ粒子。
【請求項5】
メタクリル酸およびエチルアクリレートのコポリマーを含有する水溶液中のメチルメタクリレートの乳化重合によって得ることができる、請求項1〜3いずれか記載のナノ粒子。
【請求項6】
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートおよびC1-6アルキルメタクリレートのコポリマーを含有する水溶液中のメチルメタクリレートの乳化重合によって得ることができる、請求項1〜3いずれか記載のナノ粒子。
【請求項7】
50〜1000 nmの走査型電子顕微鏡検査によって測定される数平均粒子径を有する、前の請求項のいずれか記載のナノ粒子。
【請求項8】
蛍光発色団をさらに含む、前の請求項のいずれか記載のナノ粒子。
【請求項9】
前の請求項のいずれか記載のナノ粒子を調整する方法であって、前記方法が、
(i)式(I)のモノマーおよび式(II)のポリマー、または
(ii)式(III)および(IV)の反復単位を含む親水性コポリマー
を含む水溶液中の水不溶性モノマーの乳化重合を含む、方法。
【請求項10】
ナノ粒子の表面に吸着した少なくとも1つの薬理学的に活性のある薬剤をさらに含む、請求項1〜8いずれか記載のナノ粒子。
【請求項11】
薬理学的に活性のある薬剤が疾患関連抗原である、請求項10記載のナノ粒子。
【請求項12】
抗原がデオキシリボ核酸、リボ核酸、オリゴデオキシヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質である、請求項11記載のナノ粒子。
【請求項13】
抗原が微生物抗原または癌関連抗原である、請求項11または12記載のナノ粒子。
【請求項14】
抗原がヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)抗原である、請求項11〜13いずれか記載のナノ粒子。
【請求項15】
抗原がHIV-1 Tatタンパク質またはその免疫原性断片である、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項16】
請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子を調整する方法であって、前記方法が、請求項1〜8いずれか記載のナノ粒子の表面に薬理学的に活性のある薬剤を吸着させることを含む、方法。
【請求項17】
請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子および薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
被験体において状態を診断、治療または予防する方法であって、前記方法が、有効量の、請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子または請求項17記載の医薬組成物を、かかる処置の必要な被験体に投与することを含む、方法。
【請求項19】
被験体において免疫応答を生じさせる方法であって、前記方法が、請求項11〜15いずれか記載のナノ粒子を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項20】
HIV感染またはAIDSを予防または治療する方法であって、前記方法が、請求項11〜15いずれか記載のナノ粒子を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項21】
ヒトまたは動物の体に施される治療または診断方法によるヒトまたは動物の体の治療の方法における使用のための、請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子または請求項17記載の医薬組成物。
【請求項22】
被験体における状態を診断、治療または予防するための医薬の製造のための、請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子の使用。
【請求項23】
HIV感染またはAIDSの予防または治療のための医薬の製造のための、請求項10〜15いずれか記載のナノ粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2007−509902(P2007−509902A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537242(P2006−537242)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012420
【国際公開番号】WO2005/048997
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
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【出願人】(506119132)
【Fターム(参考)】